説明

フライ乾燥食品

【課題】フライ乾燥が困難であった穀物類のような食品についても、フライ乾燥によって食感を改善し、また吸湿性を可及的に低く保って保存性をよくし、風味の長持ちするフライ乾燥食品とすることである。
【解決手段】加熱加圧されかつ圧力開放によって膨張されると共に乾燥した穀物などの膨化食品をフライ処理を完全に行わせるために再度吸湿させた後オイルフライによって乾燥したフライ乾燥食品とする。その製法として、食品素材を加熱加圧処理し、次いで圧力開放して水分を瞬間的に気化させ、このとき膨張されかつ乾燥した膨化食品をオイルフライによって乾燥させるフライ乾燥食品の製造方法を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばスナック食品、珍味、健康食品またはアイスクリームのトッピングやスープ等の即席食品の具、その他に保存性のある乾燥食品として利用されるフライ乾燥食品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な食品が保存性を高める加工をして利用されており、例えばフライ処理によって乾燥された野菜や穀物などからなるフライ乾燥食品は、スナック、珍味、健康食品などに利用されており(特許文献1)、また副材料としてアイスクリームのトッピングやスープ等の即席食品の具などにも利用されている。
【0003】
また、フライ乾燥食品は、そのまま食するばかりでなく、即席麺等のように熱湯を注ぐだけで可食状態に復元できるインスタント食品として利用されており、利用形態も様々である。
【0004】
【特許文献1】特開平8−332046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本来、長期保存が可能な穀物類は表面が硬く、しかも内部の水分は少なくてフライ処理によって穀粒の内部まで充分に油を浸透させることが困難なものもあり、そのため、このような生では可食困難である素材を可食状態に加工し、かつ長期間保存が可能な状態にまでフライ乾燥することは困難である。
【0006】
また、表面が硬く、しかも内部の水分が少ないといった、生では可食困難である、いずれの食品にしても、フライ処理する工程のみによって、充分な乾燥処理と共に嗜好性を高めるような好ましい食感が得られるようにすることは容易なことではない。
【0007】
ところで、穀類を柔らかい食感の食品に加工した例として、我が国では古くから知られた通称「ぽん菓子」とも呼ばれる「膨化米」があり、このものは「穀類膨張機」のような圧力容器に米を封入し、加熱して澱粉をアルファ化すると共に、頃合を見て一瞬で圧力を大気圧下に解放して減圧し、その際に米の内部の水分を気化させて米粒を膨らませ、その際に乾燥と組織破壊を行なうと共に素材に砂糖などを振りかけて味付けして製造される。
膨化米を応用した食品として、麦やトウモロコシなどを膨化してチョコレートなどで被覆した菓子類も市販され、これらは「膨化食品」と総称されている。
【0008】
しかし、穀類膨張機で膨化するという処理工程によると、穀類を多孔質化されたやわらかな状態にすることはできるが、吸湿しやすくなり、例えば即席食品やアイスクリームのように液体または液状化しやすい食品のトッピングとすると、歯応えがなくなり好ましくなく、また保存性も低下する。
【0009】
また、乾燥すると共に多孔質化している膨化食品は、かなり低比重であるためにフライ油に投入しても浮揚してしまい、油中を潜らせて充分にフライ油と接触させることが容易ではなく、これでは、オイルフライ処理によって食品素材の内部までフライ油を浸み込ませて、食品内部の水分を蒸発させてフライ油と置換させるというフライ乾燥処理が効率よく充分に行なえないという問題点がある。
【0010】
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決して、フライ乾燥処理が困難な穀物類などを素材とした膨化食品について、充分にフライ油が浸透しフライ乾燥が確実にできるようにし、嗜好性に優れた歯応えがあると共に、吸湿し難い特性が得られ、嗜好性や保存性に優れ、副食材等にも広く利用できるフライ乾燥食品とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、この発明は、加熱加圧状態からの圧力開放によって膨張され水分の減少した膨化食品に対し、フライ処理促進用に水分を補ってからオイルフライにて乾燥させてなるフライ乾燥食品としたのである。
【0012】
この発明のフライ乾燥食品に用いる膨化食品は、原材料とする食品素材の加熱加圧処理中に圧力が一挙に開放された際、加熱され軟化した食品素材が膨張すると同時に含有水分が水蒸気となって揮散する。その際に多数の気孔が形成され、食品素材は多孔質化して膨張すると共に水分が減少し、低比重で乾燥した膨化食品になる。
【0013】
そして、このような水分の減少した膨化食品に対し、フライ処理を円滑に行なえるように、フライ処理促進用の水分を吸湿等によって補うことにより、膨化食品の比重が高められてフライ油に投入した際に油中を潜らせやすくなり、充分にフライ油と接触させることができる。また、膨化食品の内部に補充された水分は、フライ油で加熱されて蒸発してフライ油と置換され、このような油と水の置換によって乾燥がよく進行し、オイルフライによる乾燥処理が促進されて効率よく充分に乾燥する。
【0014】
フライ乾燥処理の対象となる膨化食品としては、米、麦、粟、ヒエ、キビ、トウモロコシおよび豆類から選ばれる一種以上の穀物等が代表的なものとして挙げられるが、その他の膨化処理の可能な食品であっても採用可能である。すなわち、フライ乾燥処理によって保存性が良く食感の良い食品を製造するために、処理対象となる食品素材は適宜選択的に採用されるが、特に通常のフライ処理では、内部まで充分に油を浸透させることが困難な穀物などの食品素材に対して、この発明の効果は効果的に奏されると言える。
【0015】
また、上述のように食品素材を加熱加圧処理し、次いで圧力開放して水分を瞬間的に気化させ、このとき膨張され水分が減少した膨化食品に対してフライ処理促進用に水分を補充した後、オイルフライによって乾燥させることからなるフライ乾燥食品の製造方法を採用することができる。
【0016】
前記の加圧条件は、3〜15気圧であれば、圧力開放によって膨張と共に乾燥が充分に行なわれやすく、結果的に好ましい食感と吸湿性の低い食品が得られるようにフライ乾燥を行なえる。
【0017】
また食品素材が、水分値10〜40%、好ましくは10〜25%に調整された乾燥度合の食品素材を用いることにより、圧力開放した際に水分全量を瞬間的に気化させやすく、食品素材を効率よく乾燥し多孔質化することができる。また、その結果得られた膨化食品については、フライ処理を完全かつ速やかに行わせるために、フライ処理促進用に、膨化食品100重量部に対して30〜230重量部の水分量であるように水分を補填した後、フライ乾燥によって、さらによく乾燥させて保存性を高め、かつ食感の良い食品とするために好ましい。
膨化食品100重量部に対して30重量部未満の水分量であるように水分を補填した場合、膨化食品に対する水分量が少ないため、フライ乾燥が不十分となる。また、膨化食品100重量部に対して230重量部を超える水分量であるように水分を補填した場合、膨化食品に対する水分量が多すぎるため、素材本来の形状が失われてしまう。このような傾向からみて、膨化食品100重量部に対して50〜150重量部の水分量を補充することは、より好ましいことである。
【0018】
また、水分を補充する際、調味料または着色料を含む水分を補充して調味処理または着色処理を並行して行なうことにより、水分の補充と同じ工程で需要者に好みの味付けや色づけをすることもでき、多様なフライ処理食品の需要に効率よく対応することができる。
【0019】
さらにまた、汎用の食品加工装置を用いて食品素材を加熱加圧処理し、次いで圧力開放して水分を瞬間的に気化させるためには、穀類膨張機を用いて食品素材中の水蒸気を瞬時に気化させれば、簡単で効率のよいフライ乾燥食品の製造方法となる。
【発明の効果】
【0020】
本願のフライ乾燥食品に係る発明は、水分の減少した膨化食品にフライ処理促進用に水分を補うと共にオイルフライにて乾燥させたので、膨化食品が、膨化およびオイルフライという複数回の乾燥処理を経て充分に乾燥し、適度に歯応えのある食感に改善され、また充分にフライ乾燥されていて吸湿性が低く保たれていて保存性がよく、嗜好性や保存性に優れ、副食材等としても広く利用できるフライ乾燥食品になる利点がある。
【0021】
また、本願の製造方法に係る発明では、膨化食品に対してフライ処理促進用に、所定量の水分を補充した後、オイルフライによって乾燥させるので、膨化食品のフライ乾燥処理後の食感が改善され、食品の吸湿性を可及的に低く保って保存性がよく、また素材の風味も長く持続するようにフライ乾燥食品を製造できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
この発明に用いる膨化食品は、加熱によって軟化することができるものであり、特に異方性なく全方向に体積膨張し、多孔質化を均質にするために澱粉等の糖類を含む炭水化物が主成分の食品を素材として採用することが好ましいものである。
【0023】
フライ乾燥食品として利用困難であった炭水化物含有の食品素材としては、米、麦、粟、ヒエ、キビ、トウモロコシおよび豆類から選ばれる一種以上の穀物を素材とすることもできる。豆類としては、例えば大豆、小豆、ソラマメ、エンドウ豆などの周知の食用豆類が挙げられる。
【0024】
食品素材は、水分値(含有量)が40%以下、好ましくは10〜40%、より好ましくは10〜25%に調整された乾燥度合の食品素材であることが好ましい。なぜなら、この範囲の水分値ならば、圧力開放した際に水分全量を瞬間的に気化させやすく、食品素材を効率よく多孔質化することができるからである。
なお、この発明でいう水分値は、「食品衛生検査指針 理化学編」、財団法人 日本食品衛生協会発行、(1991年)に規定された数値である。
【0025】
水分値が10%未満では、所定の圧力を大気圧に開放して水分を瞬間的に気化させても気孔が不足して充分に形成されず多孔質化が不充分になり好ましくない。また、その後のフライ処理によっても食品内部にまで加熱油を充分に浸透させることが難しくなり、フライ乾燥も充分でなくなる。
また、水分値が40%を超える多量では、加熱処理によって水分が表面に滲み出し、素材同士がくっつき、餅状の塊になってフライ乾燥処理が困難になる。
【0026】
このような水分値は、食品に応じて適当に加減し、乾燥方法については、熱風乾燥や自然乾燥などの適当な方法で良い。さらに減圧による水分の揮散を調節するために、食品の表面をアルカリ液で洗ったり蛋白分解酵素に接触させたりするなどの方法により変化させることも有効である。
【0027】
このようにして水分値を調整された食品は、例えば穀類膨張機などに収容し、加熱して圧力を上げる。加熱は、対象素材の加熱調理温度であればよく、電熱やガスなどの燃焼などで100〜200℃程度に加熱し、焦げない程度の時間と温度の条件で加熱すればよい。
【0028】
加圧処理は、いわゆるポン菓子のように容積の増加だけを目的としているものではなく、あくまでも加熱されて気化した水分による圧力の急激な低下により瞬間的に水分を気化させることにより多孔質化することにある。このような水分の低下を伴う処理により当然食品の重量(水分量)は低下する。
【0029】
すなわち、加圧条件は、3〜15気圧(3039.75〜15198.8hPa)程度であれば、大気に圧力開放することによって膨張と共に水分の気化(蒸発)が充分に行なわれやすく、結果的に好ましい食感と低吸湿性の得られるフライ乾燥処理を行なうために好ましい。このような理由によってより好ましい加圧条件は、8〜12気圧(8106〜12159hPa)程度である。
【0030】
加圧後の圧力開放の好ましい条件は、前記の加圧状態から食品素材が、適度に膨張されると共に多孔質化される圧力差があればよく、適度な気圧に減圧されればよい。そのような減圧は、通常、大気(例えば1気圧=1013.25hPa程度)に対して開放することにより行なえばよい。
このようにして加工する食品を高圧下の状態から急激に減圧することにより、その食品中の水分を効果的に減少せしめると共に多孔質化による体積膨張、すなわち膨化を起こさせることができる。
【0031】
膨化は、体積を増大させかつ気孔を多く形成することにより、多孔質化を充分に進めるように、例えば3〜20倍、好ましくは8〜12倍程度の体積膨張を起こさせることが、その後のフライ乾燥の効率からみて好ましい。そして膨化した食品にフライ処理を完全に行わせるために、膨化食品100重量部に対して30〜230重量部の水分を吸湿等により補充することが好ましい。
【0032】
その後、油脂を用いてフライ乾燥処理を行い、膨化食品に残存する水分を除去して乾燥させ、また水分と置換した油分によって吸湿を長期間防止する。膨化処理された食品を油脂によりフライ処理することによって、膨化食品の表面は油脂で被覆されて吸湿性が低くなり、また内部の多孔空間が油脂で充足されるから、噛んだときの食感も改良される。
【0033】
なお、膨化食品を膨化食品100重量部に対して30〜230重量部の水分を吸湿などで補充してからフライ乾燥処理した食品は、適度に硬くなってクリスプ感などの歯応えが生じており、また吸湿し難いために即席食品やアイスクリームのトッピングとして利用しても食感や風味が持続して好ましいものである。膨化した食品に対して再度の吸湿処理を行わなければその後のフライ処理は難しくて不完全なものになる。
【0034】
また、この発明では穀類膨張機で膨張させた食品を、例えば醤油、みりん、化学調味料や昆布カツオ等の天然だしなどの水溶の調味液等を用いて着味し、その着味に伴って加湿されて適当な水分量に調整されてもよく、その後に食用油脂を用いてフライ処理して脱水して製品とすることもできる。
【実施例1】
【0035】
水分値13%の精白米150gを小型穀類膨張機にセットし、内圧を10気圧まで上昇させ、一気に打ち出すことで、120gの膨化米を得た。この膨化米を醤油、みりん混合の調味液600g(水分97%含有)に浸漬・攪拌し、20秒後にザルなどを用いて素早く引き上げた。着味後の大きさは殆ど変わらず、重量は540gになった。
着味した膨化米に対し、パーム油を用いて130℃で10分間フライ処理した。フライ処理後の米粒の大きさは精白米よりも少し大きい程度であり、重量は144gであった。
得られたフライ乾燥食品を、以下の評価試験に供し、以下の基準で評価した結果をまとめて表1中に示した。
【0036】
<食感についての官能評価>
試食の際、食感としてのカリカリとした歯応えが良いものを3とし、湿ったような状態でカリカリとした歯応えのないものを1とし、その中間評価を2とする3段階評価を行なった。
【0037】
<吸湿性についての評価>
10gのサンプルをシャーレに直接入れ、25℃のインキュベーター内に静置し、重量測定、触手による検品、試食という三項目でチェックした。吸湿し易いものを1とし、吸湿し難いものを3とし、その中間評価を2とする3段階評価を行なった。
【0038】
<風味についての官能評価>
試食の際、風味としての素材の味や香りが良いものを3とし、風味のないものを1とし、その中間評価を2とする3段階評価を行なった。
【0039】
【表1】

【実施例2】
【0040】
膨化米50gを予め澱粉等でとろみを付けた調味液50g(水分90%含有)と混合・攪拌した。一粒当たりの大きさは精白米の3〜5倍になった。着味し水分を補充した膨化米はパーム油を用いて130℃で10分間フライした。フライ後の大きさは、精白米よりも少し大きい程度であり、重量は64gであった。
得られたフライ乾燥食品を、前記の評価試験に供し、その結果を同様の基準で評価し、表1中に併記した。
【実施例3】
【0041】
水分値13%の精白米150gを小型穀類膨張機にセットし、内圧を3気圧まで上昇させ、一気に打ち出すことで、132gの膨化米を得た。
この膨化米を醤油、みりん混合の調味液600g(水分97%含有)に浸漬・攪拌し、20秒後にザルなどを用いて素早く引き上げた。
着味した膨化米に対し、パーム油を用いて130℃で10分間フライ処理し、得られたフライ乾燥食品を、実施例1と同じ評価試験に供し、その結果を表1中に併記した。なお、サイズにややバラつきはあるが、食感は優れたものであった。
【実施例4】
【0042】
水分値13%の精白米150gを小型穀類膨張機にセットし、内圧を15気圧まで上昇させ、一気に打ち出すことで、115gの膨化米を得た。この際に得られた膨化米のサイズは、内圧が10気圧で打ち出したものと変わらなかった。
この膨化米を醤油、みりん混合の調味液600g(水分97%含有)に浸漬・攪拌し、20秒後にザルなどを用いて素早く引き上げた。
着味した膨化米に対し、パーム油を用いて130℃で10分間フライ処理し、得られたフライ乾燥食品を、実施例1と同じ評価試験に供し、その結果を表1中に併記した。なお、食感・吸湿性、共に良好であった。
【実施例5】
【0043】
水分値13%のとうもろこし150gを小型穀類膨張機にセットし、内圧を10気圧まで上昇させ、一気に打ち出すことで、116gの膨化とうもろこしを得た。この際に得られた膨化とうもろこしのサイズは、元の8〜11倍であり、着味や油ちょう処理に適した組織を持つものであった。
この膨化とうもろこしを醤油、みりん混合の調味液600g(水分97%含有)に浸漬・攪拌し、20秒後にザルなどを用いて素早く引き上げた。
着味した膨化とうもろこしに対し、パーム油を用いて130℃で10分間フライ処理し、得られたフライ乾燥食品を、実施例1と同じ評価試験に供し、その結果を表1中に併記した。なお、食感・吸湿性、共に良好であった。
【0044】
[比較例1]
膨化していない精白米50gをパーム油で130℃、10分間フライした。フライ後の大きさは、精白米よりも少し大きい程度であり、重量は60gであった。
得られたフライ乾燥食品を、前記の評価試験に供し、その結果を同様の基準で評価し、表1中に併記した。
【0045】
[比較例2]
膨化米50gに60℃のシーズニングオイル20gを絡めて10分間攪拌し、馴染ませた後、脱油した。大きさは膨化後と変わらず、重量は58gであった。
得られたフライ乾燥食品を、前記の評価試験に供し、同様の基準で評価した結果を表1中に併記した。
【0046】
[比較例3−1]
家庭用炊飯器にて炊飯した米(水分値65%)を乾燥させたもの(水分値30%)を、穀類膨張機を用いて、10気圧まで昇圧し、一気に開放したところ、米粒同士がくっつき原型を留めず餅状の塊になったため、以後の試験を中止した。
【0047】
[比較例3−2]
家庭用炊飯器にて炊飯した米(水分値65%)を乾燥させたもの(水分値30%)を、穀類膨張機を用いて、2気圧まで昇圧し、一気に開放したところ、水分が気化し切らず米粒同士がくっつき、団子状の塊になったため、以後の試験を中止した。
【0048】
[比較例3−3]
家庭用炊飯器にて炊飯した米(水分値65%)を乾燥させたもの(水分値13%)を、穀類膨張機を用いて、10気圧まで昇圧し、一気に開放したところ、膨化していない精白米の3−6倍の大きさの膨化米が得られた。但し、この時膨化米の表面にひび割れが目立つことや水分値調整の手間を考慮し、以後の試験を中止した。
【0049】
[比較例4]
水分値13%の精白米150gを小型穀類膨張機にセットし、内圧を10気圧まで上昇させ、一気に打ち出すことで、120gの膨化米を得た。
この膨化米に対し、パーム油を用いて130℃で10分間フライ処理した。フライ処理後の米粒の大きさは膨化直後と同等であり、重量は132gであった。
得られたフライ乾燥食品を、前記の評価試験に供し、同様の基準で評価した結果を表1中に示した。
【0050】
表1、2の結果からも明らかなように、膨化食品を用いなかった比較例1では、食感や吸湿性の試験結果が悪く、オイルフライを行なわなかった比較例2では、食感が好ましくなかった。
これに対して、条件を満足する実施例では、フライ乾燥食品の食感が改善されると共に、吸湿性は低く保たれて保存性がよく、風味も長く持続した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱加圧状態からの圧力開放によって膨張され水分の減少した膨化食品に対し、フライ処理促進用に水分を補ってからオイルフライにて乾燥させてなるフライ乾燥食品。
【請求項2】
膨化食品が、米、麦、粟、ヒエ、キビ、トウモロコシおよび豆類から選ばれる一種以上の穀物を素材とする膨化食品である請求項1に記載のフライ乾燥食品。
【請求項3】
食品素材を加熱加圧処理し、次いで圧力開放して水分を瞬間的に気化させ、このとき膨張され水分が減少した膨化食品に対してフライ処理促進用に水分を補充した後、オイルフライによって乾燥させることからなるフライ乾燥食品の製造方法。
【請求項4】
フライ処理促進用に補充する水分量が、膨化食品100重量部に対して30〜230重量部の水分量である請求項3に記載のフライ乾燥食品の製造方法。
【請求項5】
加圧条件が、3〜15気圧である請求項3に記載のフライ乾燥食品の製造方法。
【請求項6】
食品素材が、水分値10〜40%の食品素材である請求項3に記載のフライ乾燥食品の製造方法。
【請求項7】
水分を補充する際、調味料または着色料を含む水分を補充して調味処理または着色処理を並行して行なう請求項3に記載のフライ乾燥食品の製造方法。
【請求項8】
穀類膨張機を用いて食品素材中の水分を瞬間的に気化させる請求項3に記載のフライ乾燥食品の製造方法。

【公開番号】特開2009−219368(P2009−219368A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64330(P2008−64330)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000189970)植田製油株式会社 (18)
【Fターム(参考)】