説明

フルカラーLEDのHLS色空間に基づく調光制御

【課題】 フルカラーLEDでHLS色空間に基づく調光制御を行い使用上問題となる点の改善を行う。
【解決手段】 フルカラーLEDで拡散制御を発展させた色相拡散制御により色相を調光する。色相拡散制御と明度拡散制御より出力された別々の制御配列を基に、拡散周期に比べ長い周期で制御配列を分散配置する中間色制御により制御配列による色の中間色を出力する。色相拡散制御と中間色制御により色相と彩度と明度という色の3つの構成要素をその要素ごとに調整可能にして、人間の感覚に近いHLS色空間に基づく調光制御を実施する。また調光時に点灯する単色LEDをひとつに制限して、色の調整機能を高めると同時に、単体の単色LEDに比べ使用電流が大きい点とLEDの諸特性の違いによる色の再現性の悪さを改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数色の単体LEDで構成されるフルカラーLEDの調光制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来ではフルカラーLEDで色を出力するときRGB色空間に基づく加法混色により実施している。本願ではその方式をRGB合成方式と呼ぶ。RGB合成方式とはフルカラーLEDを構成する単色LEDの輝度を個別に調整して目的とする色を出力する方式である。色の表現方法では人間の色感覚を主眼にしたHLS色空間があり、色相(Hue)、明度(Lightness)、彩度(Saturation)の各要素を持つ。特許文献1に記載している拡散制御はフルカラーLEDを構成する単色LEDの輝度を調整しているのでRGB合成方式となる。本願ではフルカラーLEDではなく単色の色を表示するLEDを単体の単色LEDと区別して呼び、単に単色LEDと呼ぶものはフルカラーLEDを構成する単色LEDとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4740377号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フルカラーLEDの使用で構成する単色LEDの輝度を調整するRGB合成方式により目的とする色を調光することは難しい。RGB合成方式ではなく、色相、彩度、明度の各要素を持つ人間の感覚に近いHLS色空間に基づく調光を安い製造コストで実施する。
【0005】
フルカラーLEDを使用するとき、単体の単色LEDに比べ使用する電流が大きい、複数のフルカラーLEDで異なる諸特性により色の再現性が悪いという問題を改善する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
フルカラーLEDを使用して出力する色を、固定された周期内で、色相を決定するために必要なフルカラーLEDを構成する単色LEDを対象にして、単色LEDの選択と点灯時期及び点灯する割合を調整する要素を持つ時系列で並ぶ単独の配列により、どのような色相のときも点灯する単色LEDをひとつに制限して色の調整機能を高めながら、その周期の繰り返しにより目的の色相を発光する。
【0007】
フルカラーLEDを使用して特定の色を発光するために整えられた時系列で並ぶ要素を持つ色相もしくは明度を表現できる単独の配列があり、その配列を固定された周期で繰り返しフルカラーLEDを構成する単色LEDの点灯を制御する調光において、固定された周期で繰り返す配列をさらに長い周期において適時別な配列と入れ替えて複数の配列によりもたらされる中間色を出力し、点灯する単色LEDをひとつに制限して色の調整機能を高めながら、フルカラーLEDの色をHLS色空間の要素である色相と彩度と明度で調節して発光する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1と請求項2により、フルカラーLEDの調光が人間の感覚に近いHLS色空間に基づく色相、彩度、明度の各要素により調整できる。さらに使用する方式は請求項1と請求項2とも複雑な回路を必要としないので製造コストが安い。
【0009】
本発明の請求項1と請求項2に共通する点灯する単色LEDをひとつに制限する制御により、フルカラーLEDで使用する電流がどのような色を調光しても単体の単色LEDと同等になる。このことはフルカラーLEDを使用する機器で使用する電源の容量を小さくする。
【0010】
本発明の請求項1と請求項2に共通する点灯する単色LEDをひとつに制限する制御により、複数のLEDで異なる諸特性により問題となる色の再現性を良くする。このことは一般的に複数のフルカラーLEDを使用する機器を製造する過程で、使用するLEDを選別し色の同一性を確保している工程を簡素化する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の全体構成を示す構成図
【図2】色相拡散制御による制御配列の説明図
【図3】歪んだ色相環を再現目標とする色相拡散制御による制御配列の説明図
【図4】分散周期と中間色制御の説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1で本発明の全体構造を示す。フルカラーLEDを構成する各単色LEDを含み、そのLEDを駆動する回路を赤LED駆動回路(LED−R)、緑LED駆動回路(LED−G)、青LED駆動回路(LED−B)とし、マイクロチップからの制御信号と接続する。また本願では、マイクロチップとはプログラム構造を定義でき、そのプログラム制御により外部に対しての制御信号を処理できるものを呼ぶ。
【0013】
マイクロチップより出力される制御信号によりLED−R、LED−G、LED−Bの各LED駆動回路は、それぞれのLEDを点灯と消灯の2値で制御する。また本願ではLEDの点灯をON,消灯をOFFと呼ぶ。
【0014】
マイクロチップ内のプログラム構造により拡散制御の技術を基本とする発展技術で調光制御を行う。拡散制御とは特許文献1で記載している制御方式で、フルカラーLEDを構成する単色LEDを内部で保持した固定周期で繰り返される配列により単色LEDごとにONとOFFで輝度を調整し目的とする色を出力する。またこのとき使用するONとOFFの時系列に並ぶ配列を拡散形式と呼び、拡散形式が繰り返される周期を拡散周期と呼ぶ。
【0015】
拡散制御はフルカラーLEDを構成する各単色LEDを同期制御する。その制御を発展させて特定の色相を得るために必要な単色LEDを排他的に点灯する。
【0016】
拡散制御により決定したONの時期は色相を決定する2色のうち片方の単色LED出力を点灯し、OFFの時期は色相を決定するもうひとつの単色LEDを点灯する。つまり拡散制御では単色LEDの輝度を調整するために行っていたONとOFFの制御を2つの単色LEDを切り替えて点灯する制御に変更し、単色LEDごとに行っていた拡散制御を統合的にひとつにまとめて単独な制御配列として出力する。制御配列とは制御対象とする単色LEDの選択と点灯時期および点灯する割合を決定するための要素を時系列で並べたもので、拡散制御で使用する単色LEDごとに用意したONとOFFによる配列の拡散形式とは異なる。また制御配列を繰り返す周期は拡散周期と同じ考え方なので、制御配列を繰り返す周期を拡散周期と呼ぶ。この制御で重要な点は点灯する単色LEDをひとつに制限して調光することである。この本発明の請求項1に当たる制御方式を色相拡散制御と呼び、図1の色相拡散制御1として示す。 また色相拡散制御2も同様な方式で制御するが、目的とする色相は色相拡散制御1とは異なる。赤(R)と青(B)を対象とする色相拡散制御により、3つの配合割合で実施した制御配列を例として図2に示す。
【0017】
フルカラーLEDを構成する3つの単色LEDのうちいずれかの2つの単色LEDによる色相拡散制御では、すべての色がそろった色相環が再現目標となる。この色相環を本願では通常の色相環と呼ぶ。2つの単色LED以外の組合せによる色相拡散制御では、通常の色相環とは別の一部色相が欠落した偏った色相環が再現目標となる。この色相環を本願では歪んだ色相環と呼ぶ。通常の色相環から歪んだ色相環に再現目標を切り替えることにより独特な色彩効果が得られる。歪んだ色相環を再現目標とするときの組合せの中に複数の単色LEDをひとつに扱った点灯時期が含まれるが、色相拡散制御では点灯する単色LEDをひとつに制限するため、この複数の単色LEDをひとつに扱った点灯時期では順番に単色LEDを点灯する。例として緑(G)を使用せず赤(R)と青(B)を使用した歪んだ色相環を再現目標とする色相拡散制御により、3つの配合割合で実施した制御配列を図3で示す。このとき赤(R)と青(B)は単色で扱われ、それに赤+青(R+B)という組み合わせを緑(G)の代わりに使用する。図2と似ているが単色LEDが配合される割合と点灯する時期が異なる。また別な例として単色LEDの代わりにすべて単色LED2色をひとつに扱った組合せ、赤+青(R+B)、青+緑(B+G)、緑+赤(G+R)により色相拡散制御を実施するとパステルカラーの歪んだ色相環が再現目標となる。
【0018】
フルカラーLEDで中間色を調光するときRGB合成方式で2色を同時点灯すると輝度が上昇して彩度が低下する。中間色を表示するときもフルカラーLEDとして色相を保ちながら輝度の上昇を抑えることが彩度を上げる効果を持つ。本発明の請求項1に当たる色相拡散制御では点灯する単色LEDをひとつに制限するので、RGB合成方式では彩度が下がる現象を抑制する。
【0019】
本発明の請求項1に当たる色相拡散制御では、ONとOFFで単色LEDの輝度調整を行う方式に比べ色相の調整範囲が広い。つまり色相拡散制御は色相を構成する片方の単色LEDが連続点灯する状態から、もう片方の単色LEDが連続点灯する状態まで常にいづれかのLEDを点灯させながら調光する。この単色LEDを消灯しないで調光することは、単色LEDの輝度が連続点灯で最大となることにより色相の調整範囲を拡大する。
【0020】
本発明の請求項1に当たる色相拡散制御では、点灯する単色LEDをひとつに制限することで使用する電流を単体の単色LEDと同等にする。つまり複数の単色LEDにより構成されているフルカラーLEDでも単体の単色LEDを使用するときと同じ電源容量で動作する。
【0021】
RGB合成方式では単色LEDの輝度の合成として目的としている色を決定しているため、フルカラーLEDを構成する単色LEDの輝度のばらつきにより、複数のフルカラーLEDを使用する機器において同一の色相を得ることは難しい。点灯する単色LEDをひとつに制限し、目的とする色相を単色LEDの切り替えで調整する本発明の請求項1に当たる色相拡散制御は、単色LEDの輝度差による色相への影響を少なくし色の再現性を良くする。
【0022】
明度調整には色相拡散制御で出力する制御配列とは別の目的を持つ制御配列が必要になる。ひとつはフルカラーLEDを構成するすべての単色LEDを消灯し最低明度を出力する制御配列Bと、もうひとつはフルカラーLEDを構成する単色LEDをすべて同一の割合で点灯し最高明度を出力する制御配列Wになる。この明度調整に必要な制御配列を作成する制御を明度拡散制御と呼び、図1に示す。明度拡散制御は色相拡散制御により出力された制御配列に明度調整をする目的で実施する。明度拡散制御により制御配列Wを出力するときは色相拡散制御と同じく、点灯する単色LEDをひとつに制限する。本願ではフルカラーLEDが表示する輝度とは関係なく制御配列Wによる色を明度100%、制御配列Bによる色を明度0%とする。
【0023】
色相拡散制御1と色相拡散制御2及び明度拡散制御で作成された別々の制御配列を次の中間色制御に渡す。本発明の請求項2に当たる中間色制御とは色相拡散制御1と色相拡散制御2及び明度拡散制御で作成した制御配列を拡散周期より長い固定周期において分散配置することで制御配列間の中間色を出力する制御方式を呼び、図1の中間色制御として示す。この制御の重要な点は既に色相や明度の要素を持つ制御配列から中間色を出力することである。制御配列を配合する割合は目的とする色彩効果により決定する。このときの制御配列を分散配置する周期を分散周期と呼び、分散周期は最大でも含まれる制御配列が別々の色として認識できなくなるまで短くする必要がある。例として制御配列Aと制御配列Bにより3つの配合割合で実施した中間色制御と分散周期を図4で示す。
【0024】
本発明の請求項2に当たる中間色制御に色相として近い色を出力する2つの制御配列を渡して、2つの色相間をさらに細分化する。このことでフルカラーLED全体の表示色変化を滑らかにしたり、目的とする色相の分解能を上げる。
【0025】
本発明の請求項2に当たる中間色制御に色相として離れた色を出力する2つの制御配列を渡して彩度調整を行う。それは色相環上の色は極端な配合比として成り立っているが、離れた2つの色相の中間色では中庸な配合比に移行し彩度が下がると捉えられる。色相の組合せで彩度調整に一番効果的なのは補色関係にあたる色相同士の中間色で、配合する割合が半分付近で彩度が最大に下がる。
【0026】
本発明の請求項2に当たる中間色制御にひとつの色相を出力する制御配列と明度を調整するために用意した制御配列Bまたは制御配列Wを渡して、その色相を維持したまま明度を調整する。本願では色相拡散制御により出力される色を50%の明度として、制御配列Bと中間色制御を実施することで50%以下の明度を調整し、制御配列Wと中間色制御を実施することで50%以上の明度を調整する。通常の色相環を再現目標とする色相拡散制御ではフルカラーLEDを構成する単色LEDのOFFはないが、制御配列Bとの中間色制御を実施して初めて単色LEDのOFFが発生する。
【0027】
本発明の請求項2に当たる中間色制御は3つ以上の制御配列からでも機能するが、3つ以上の制御配列で実施した中間色制御は2つの制御配列による中間色制御に比較して同じ色彩効果を得るには分散周期が長くなる。その為目的とする色彩効果を選択し、2つの制御配列から実施する中間色制御が基本となる。
【0028】
本発明の請求項1に当たる色相拡散制御と本発明の請求項2に当たる中間色制御により色相と彩度と明度を調整する。これらの要素で調光する方式はHLS色空間として捉えられる。HLS色空間の要素調整によってフルカラーLEDの色が決定する本発明の調光制御方式は、感覚的に色を判断しやすくRGB合成方式による調光制御方式に比べ優位性がある。
【0029】
本発明の請求項2に当たる中間色制御から導かれた制御信号をマイクロチップから出力し、LED−R、LED−G、LED−Bの駆動回路によりフルカラーLEDを点灯させる。
【符号の説明】
【0030】
1...色相拡散制御1、2...色相拡散制御2、3...明度拡散制御、4...中間色制御、5....赤LED駆動回路(LED−R)、6...緑LED駆動回路(LED−G)、7...青LED駆動回路(LED−B)、8...マイクロチップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルカラーLEDを使用して出力する色を、固定された周期内で、色相を決定するために必要なフルカラーLEDを構成する単色LEDを対象にして、単色LEDの選択と点灯時期及び点灯する割合を調整する要素を持つ時系列で並ぶ単独の配列により、どのような色相のときも点灯する単色LEDをひとつに制限して色の調整機能を高めながら、その周期の繰り返しにより目的の色相を発光する調光制御方式。
【請求項2】
フルカラーLEDを使用して特定の色を発光するために整えられた時系列で並ぶ要素を持つ色相もしくは明度を表現できる単独の配列があり、その配列を固定された周期で繰り返しフルカラーLEDを構成する単色LEDの点灯を制御する調光において、固定された周期で繰り返す配列をさらに長い周期において適時別な配列と入れ替えて複数の配列によりもたらされる中間色を出力し、点灯する単色LEDをひとつに制限して色の調整機能を高めながら、フルカラーLEDの色をHLS色空間の要素である色相と彩度と明度で調節して発光する調光制御方式。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−114865(P2013−114865A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259151(P2011−259151)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(710000778)
【Fターム(参考)】