説明

フレキシブルダイ

【課題】マグネットローラ等の円筒状のローラに「ベースの浮き」のない状態で巻き付けることが可能なフレキシブルダイを提供する。
【解決手段】一対のフレキシブルベース2a,2bを、対向配置される一対の円筒状のローラにそれぞれ巻き付け、これら一対のローラ間に加工対象シートSを通過させてエンボス加工を行うエンボス加工装置に使用され、一対のフレキシブルベース2a,2bは、互いに雌雄嵌合する雌側フレキシブルベース2aと雄側フレキシブルベース2bとから構成され、雌側フレキシブルベース2aにはエンボス加工を行う加工パターンの輪郭に対応する線状の凸部3aが形成されており、雄側フレキシブルベース2bには雌側フレキシブルベースの線状の凸部3aにて囲われる領域内に、当該線状の凸部3aの内周面に対し間隔をあけて嵌まり合う凸部3bが形成されているとともに、この凸部3bには凹部30が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば紙シートやプラスチックシート(フィルム)などのシート材(加工対象シート)のエンボス加工に用いられるフレキシブルダイ(シート状刃板)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、打抜加工やハーフカットなどの加工を行う方法としては、ベニヤ板等のダイボードに、打抜パターンに応じた溝切加工を行い、その加工した溝に帯状の刃(トムソン刃)を嵌め込んだダイを作製し、このダイをプレス加工機などに装着して紙シートやプラスチックシート等の打抜加工やハーフカットを行うという方法が採られている。
【0003】
最近では、フレキシブルベース(強磁性体)の片面に、カッティングラインの形状に応じたパターンの押切刃を有するフレキシブルダイを作製し、このフレキシブルダイを、図12に示すようなロータリ加工装置300のマグネットローラ301に巻き付けて、紙シートやプラスチックシートなどの打抜加工やハーフカットを行うという方法も採用されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。なお、マグネットローラ301には、フレキシブルダイを安定して磁気吸着させるために、外周面に多数の永久磁石が埋め込み配置されている。
【0004】
また、紙シートやプラスチックシート(フィルム)などのシート材の表面にエンボスを加工する方法においても、フレキシブルベース(強磁性体)の片面に、所定パターンのエンボス加工用凹凸を有するフレキシブルダイを作製し、このフレキシブルダイを同様にロータリ加工装置300のマグネットローラ301に巻き付けてプラスチックシートなどの表面にエンボス加工を行うという方法が採用されている。なお、エンボス加工を行うフレキシブルダイとしては、フレキシブルベースの表面に所定パターンの加工用凸部を形成したフレキシブルダイ、または、フレキシブルベースの表面に所定パターンの加工用凹部を形成したフレキシブルダイ、あるいは、それら加工用凸部と加工用凹部とを組み合わせたフレキシブルダイなどがあるが、通常、面状のパターンに形成された加工用凸部を備えたフレキシブルダイが用いられている。
【0005】
そして、以上のようなフレキシブルダイは機械加工やエッチングにて製作されており、エッチングにより製作されたものは一般にエッチングダイと呼ばれている。
【特許文献1】特開2000−190284号公報
【特許文献2】特開2002−221220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記した面状のパターンに形成された加工用凸部を備えたフレキシブルダイにおいては、フレキシブルダイのマグネットローラへの巻き付け性が悪くなり、フレキシブルベースの一部がマグネットローラの外周面から浮くという「ベースの浮き」が生じることがある。
【0007】
例えば、図13、図14に示すような加工パターンPのエンボス加工用凸部403がフレキシブルベース402の表面に形成されたフレキシブルダイ401では、エンボス加工用凸部403の形成部分の剛性(ローラ巻き付け方向Rの曲げ剛性)が高くて曲がり難くなる。このため、図15に示すように、フレキシブルダイ401をマグネットローラ301に巻き付ける際に、エンボス加工用凸部403の加工パターンPとPとの間に「ベースの浮き」が生じてしまい、正確なエンボス加工を行うことができなくなる。
【0008】
また、対向配置される一対の円筒状のローラにフレキシブルダイをそれぞれ巻き付けて、これら一対のローラ間に加工対象シートを通過させてエンボス加工を行うエンボス加工装置も従来から提供されている。このエンボス加工装置に使用されるフレキシブルダイにおいても、フレキシブルベースに形成されているエンボス加工用凸部が面状に形成されているために、エンボス加工用凸部403の加工パターンPとPとの間に「ベースの浮き」が生じてしまい、正確なエンボス加工を行うことができなくなるといった問題が生じていた。
【0009】
本発明はそのような実情を考慮してなされたもので、マグネットローラなどの円筒状のローラに「ベースの浮き」のない状態で巻き付けることが可能なフレキシブルダイの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、一方の面にエンボス加工用凸部が形成された一対のフレキシブルベースを、対向配置される一対の円筒状のローラにそれぞれ巻き付け、これら一対のローラ間に加工対象シートを通過させてエンボス加工を行うエンボス加工装置に使用されるフレキシブルダイであって、前記一対のフレキシブルベースは、互いに雌雄嵌合する雌側フレキシブルベースと雄側フレキシブルベースとから構成され、前記雌側フレキシブルベースにはエンボス加工を行う加工パターンの輪郭に対応する線状の凸部が形成されており、雄側フレキシブルベースには雌側フレキシブルベースの線状の凸部にて囲われる領域内に、当該線状の凸部の内周面に対し間隔をあけて嵌まり合う凸部が形成されているとともに、この凸部には凹部が形成されていることを特徴としている。
【0011】
この発明によれば、雌側フレキシブルベースに形成されたエンボス加工用凸部が、エンボス加工を施す加工パターンの輪郭に対応する線状の凸部で形成されているので、エンボス加工用凸部の形成部分の剛性(ローラ巻き付け方向Rの曲げ剛性)が面状のパターンに形成された加工用凸部よりも極めて低くなるため、曲がり易くなる。したがって、フレキシブルダイをローラに「ベースの浮き」のない状態で装着することが可能になり、精度の高いエンボス加工を行うことができる。
【0012】
また、雄側フレキシブルベースには、雌側フレキシブルベースの線状の凸部にて囲われる領域内に、当該線状の凸部の内周面に対し間隔をあけて嵌まり合う凸部が形成されているとともに、この凸部には凹部が形成されているので、雄側フレキシブルベースに形成されたエンボス加工用凸部も、線状に形成されている。したがって、エンボス加工用凸部の形成部分の剛性(ローラ巻き付け方向Rの曲げ剛性)が面状のパターンに形成された加工用凸部よりも極めて低くなるため、曲がり易くなる。したがって、フレキシブルダイをローラに「ベースの浮き」のない状態で装着することが可能になり、精度の高いエンボス加工を行うことができる。しかも、凸部が一方のフレキシブルベースに形成された線状の凸部が形成されている領域に間隔をあけて嵌まり合うように形成されているので、一方のフレキシブルベースとこの他方のフレキシブルベースとが互いに嵌まり合うことにより、精度が高く明りょうなエンボス加工を行うことができる。
【0013】
本発明は、上記構成のフレキシブルダイにおいて、前記フレキシブルベースのエンボス加工用凸部が形成された面の裏面には、少なくとも前記エンボス加工用凸部が形成されている領域の裏側に相当する部分に凹条が形成されていることを特徴としている。
【0014】
本発明において、フレキシブルベースの他方の面(裏面)に形成する凹条は1条であってもよい。また、フレキシブルベースの他方の面(裏面)に、複数の凹条をフレキシブルダイのローラへの巻き付け方向に沿って所定のピッチで形成しておいてもよい。なお、複数の凹条を形成する場合、フレキシブルベースの他方の面(裏面)のほぼ全域にわたって形成しておいてもよい。また、凹条は、ローラ巻き付け方向Rと交差する方向、特にローラ巻き付け方向Rと直交する方向に沿って延びるように形成しておくのが望ましい。
【0015】
この発明によれば、フレキシブルベースの他方の面(エンボス加工用凸部の形成面の裏側面)に、複数の凹条(もしくは1条の凹条)を形成しているので、その凹条形成部の曲げ剛性が弱くなり、エンボス加工用凸部の形成部分が曲がり易くなる。従って、押切刃やエンボス加工用凸部が部分的に集中するようなパターンや、ローラ巻き付け方向に沿って延びるエンボス加工用凸部が多く存在するパターンであっても、それらエンボス加工用凸部の裏面側に複数の凹条(もしくは1条の凹条)を形成しておくことで、フレキシブルダイをローラに巻き付けるときに、エンボス加工用凸部の形成部分がローラの外周面に沿って曲がり易くなるので、フレキシブルダイをローラに「ベースの浮き」のない状態で装着することが可能になる。
【0016】
なお、本発明は、マグネットローラに装着して使用されるフレキシブルダイのほか、マグネット(永久磁石)を備えていないローラに装着されるフレキシブルダイにも適用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のフレキシブルダイによれば、当該フレキシブルダイをマグネットローラなどの円筒状ローラに「ベースの浮き」のない状態で巻き付けることが可能になり、エンボス加工を正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明のフレキシブルダイの一例を示す正面図である。図2はそのフレキシブルダイの要部縦断面図である。
【0020】
この例のフレキシブルダイ1は、一方の面にエンボス加工用凸部が形成され、互いに雌雄嵌合する雌側フレキシブルベース2aと、雄側フレキシブルベース2bとを対向配置される一対の円筒状のローラ301a、301bにそれぞれ巻き付けて使用されるものである。このうち、雌側フレキシブルベース2aにはエンボス加工を施す加工パターンPの輪郭に対応する線状の凸部3aが形成されており、雄側フレキシブルベース2bには当該線状の凸部3aにて囲われる領域内に、当該線状の凸部3aの内周面に対し間隔をあけて嵌まり合う凸部3bが形成されているとともに、この凸部3bには凹部30が形成されている(図3参照)。
【0021】
本実施の形態において、加工パターンPは、ハート形の形状となっている。加工パターンP・・Pは、フレキシブルダイ1のマグネットローラ301への巻き付け方向R(以下、ローラ巻き付け方向Rともいう)と直交する方向及びローラ巻き付け方向Rに沿う方向の各方向にそれぞれ複数配置されている。
【0022】
以上の構造のフレキシブルベース2は、図4、図5に示すようにロータリ加工装置のロータリマグネット301(301a,301b)に巻き付けて使用される。
【0023】
すなわち、雌側フレキシブルベース2a、雄側フレキシブルベース2bは、対向配置される一対の円筒状のローラ301a、301bにそれぞれ巻き付けられており、これら一対のローラ間301a、301bに加工対象シートSを通過させ、雌側フレキシブルベース2aのエンボス加工用凸部3aと、雄側フレキシブルベース2bのエンボス加工用凸部3bとがシートSを挟んで雌雄嵌合し、シートSが圧接されることによりエンボス加工が行われる(図5、図6参照)。
【0024】
この場合において、シートSはエンボス加工用凸部3a、3b間に挟まれ圧接されることにより延伸されるとともに、図6に示すように、雄フレキシブルベース2bのエンボス加工用凸部3bにおいてシートSが延伸された状態でこの凸部3b間にわたって(すなわち、凹部30に)架け渡される。
【0025】
なお、本実施形態では、雄側フレキシブルベース2bのエンボス加工用凸部3bの凹部30は開口した空間とされているが、この凹部30にスポンジ材やゴム部材などを埋設してもよい。
【0026】
ここで、雌雄嵌合するエンボス加工用凸部3a、3bの間のクリアランスc、すなわち、雌側フレキシブルベース2aの凸部3aの内周面に対する雄側フレキシブルベース2bの凸部3bの外周面の間隔は、加工対象シートSの厚さの20%から200%の範囲に設定されていることが好ましい。
【0027】
このクリアランスcの設定範囲は、以下のような実験結果に基づいており、シートSの材質・厚さなどを考慮して適宜決定される。
【0028】
例えば、クラフト紙で形成された厚さ0.12mmのシートSで実験した結果、クリアランスcが当該紙厚の40%の厚さ(約0.05mm)よりも小さい場合はシートSが破断してしまい、一方、クリアランスcが当該紙厚の200%の厚さ(0.24mm)よりも大きい場合は明りょうなエンボス加工を行うことができなくなった。また、PET(ポリエチレンテレフタレート)で形成された厚さ0.1mmのフィルム状シートSで実験した結果、クリアランスcが当該シート厚の20%の厚さ(約0.02mm)よりも小さい場合はシートSが破断してしまい、一方、クリアランスcが当該シート厚の200%の厚さ(0.2mm)よりも大きい場合は明りょうなエンボス加工を行うことができなくなった。
【0029】
一方、雌雄嵌合した状態におけるエンボス加工用凸部3a、3bの上端縁同士の高低差(段差)hは、シートSの材質・厚さ、および上記したクリアランスcなどを考慮して任意に決定される。
【0030】
なお、本発明で使用されるシートSは、紙、プラスチックシートなどの樹脂製シートをはじめ、裏面に剥離紙が貼着されたラベルなど種々のシートが使用できるものである。
【0031】
また、フレキシブルベース2(2a,2b)の他方の面(エンボス加工用凸部3a、3bの形成面とは反対側の面(裏面))の少なくともエンボス加工用凸部3a,3bが形成されている領域の裏側に相当する部分に、ローラ巻き付け方向Rと直交する方向に沿って延びる複数のスリット状の凹条4・・4を、ローラ巻き付け方向Rに沿って所定のピッチで形成してもよい(図7、図8参照)。この場合、凹部群の形成部の曲げ剛性が弱くなり、エンボス加工用凸部の形成部分が曲がり易くなる。したがって、フレキシブルダイをローラに巻き付けるときに、エンボス加工用凸部の形成部分がローラに外周面に沿ってより一層曲がり易くなるので、フレキシブルダイをローラに「ベースの浮き」のない状態で装着することが可能になる。
【0032】
このように、フレキシブルベース2(2a,2b)の他方の面(裏面)に、ローラ巻き付け方向Rと直交する方向に沿って延びる複数のスリット状の凹条(スリット状の溝)4・・4を形成しておくと、フレキシブルベース2(2a,2b)をマグネットローラ301(301a,301b)に「ベースの浮き」のない状態で巻き付けることが可能になる。この点について以下に説明する。
【0033】
まず、図1に示すような加工パターンPでエンボス加工用凸部3が形成されたフレキシブルダイ1では、エンボス加工用凸部3(3a,3b)の形成部分の剛性が高くて曲がり難いため、フレキシブルベース2(2a,2b)の裏面に凹条が形成されていない場合、マグネットローラ301に巻き付けたときに、図15に示すように、エンボス加工用凸部3(403)の形成部分は殆ど変形せず、加工パターンPとPとの間に「ベースの浮き」が生じる。
【0034】
これに対し、エンボス加工用凸部3の形成部分の曲げ剛性が高くても、エンボス加工用凸部3の形成部分の裏面にローラ巻き付け方向Rと直交する方向に沿って延びる複数の凹条4・・4を形成しておくと、フレキシブルダイ1をマグネットローラ301に巻き付けるときに各凹条4の形成部が曲げ変形する。これによってエンボス加工用凸部3の形成部分がマグネットローラ301の外周面に沿って湾曲変形するようになり、フレキシブルダイ1をマグネットローラ301に「ベースの浮き」のない状態で装着することが可能になる。その結果として、正確なエンボス加工を実現することができる。
【0035】
ここで、フレキシブルベース2の裏面に形成するスリット状の凹条4の幅・深さ、及び凹条4のローラ巻き付け方向Rにおけるピッチは、フレキシブルダイ1をマグネットローラ301に巻き付けたときに「ベースの浮き」が生じないように、フレキシブルベース2の厚さ、エンボス加工用凸部3の形成部分の曲げ剛性、及び、マグネットローラ301の外周面の曲率などを考慮して、実験・計算等により決定するようにすればよい。
【0036】
なお、図7、図8に示す例では、複数の凹条4・・4をフレキシブルベース2の裏面のうち、エンボス加工用凸部3の形成部分の裏側に相当する部分のみに凹条4・・4を形成しているが、これに限られることなく、フレキシブルベース2の裏面のほぼ全域にわたって形成するようにしてもよい。また、凹条4の断面形状は四角形に限られることなく、半円形や三角形などの他の任意の形状であってもよい。
【0037】
さらに、図7、図8に示す例では、複数の凹条4・・4をフレキシブルベース2の裏面に形成しているが、例えばエンボス加工用凸部の巻き付け方向Rのパターン幅が小さい場合には、そのエンボス加工用凸部の形成部分の裏側に1条の凹条4を形成してもよい。
【0038】
さらにまた、凹条4は、ローラ巻き付け方向Rと直交する方向に沿って延びる複数のスリット状のものに限られることなく、例えばローラ巻き付け方向Rと交差する方向に沿って形成されているものでもよい。
−製造方法−
次に、図7、図8に示すフレキシブルダイの製造方法の一例を図9を参照しながら説明する。
【0039】
なお、雌側フレキシブルベース2aと雄側フレキシブルベース2bとは、その凸部3a,3bが形成される平面形状パターンの大きさが異なるのみであって、製造方法は同様であるため、以下に示す製造方法は、雌側フレキシブルベース2aと雄側フレキシブルベース2bに共通しているので、以下の説明では便宜上フレキシブルベース2、凸部3としている。
【0040】
(1)まず、図1のエンボス加工用凸部3(3a,3b)の形状に対応する露光パターン23aを有するフォトマスク(ネガフィルム)23を製版しておく。また、フレキシブルベース2(2a,2b)の裏面のスリット状の凹条4・・4に対応する形状の露光パターンを有するフォトマスク(ポジフィルム)24aを製版しておく。
【0041】
(2)図9(A)に示すように、金属板10の表面にフォトレジストを一様に塗布し、さらに、金属板10の裏面にフォトレジストを一様に塗布して、金属板10の表面及び裏面にそれぞれフォトレジスト膜21,22を形成する。
【0042】
(3)図9(B)に示すように、金属板10の表面のフォトレジスト膜21上にフォトマスク(ネガフィルム)23を配置・位置決めするとともに、金属板10の裏面のフォトレジスト膜22上に前記フォトマスク(ポジフィルム)24を配置・位置決めする。なお、金属板10の表面側のフォトマスク23と裏側のフォトマスク24とはレジストマークを基準として相互に位置合わせした状態で、それらフォトマスク23,24の一端部を粘着テープTにて接合する。
【0043】
(4)金属板10の表裏のフォトレジスト膜21,22の露光と現像を行ってレジストパターン21aと、複数の凹条4・・4に相当する位置に開口部22b・・22bを有するレジストパターン22aとを形成する(図9(C))。
【0044】
(5)金属板10の表裏のレジストパターン21a,22aをマスクとして金属板10のエッチングを開始し、エッチングの進行が、凹条4の深さに相当する量に達した時点でエッチングを一度停止する(図9(D))。この1度目のエッチングにより、フレキシブルベース2の裏面に、ローラ巻き付け方向Rと直交する方向に沿って延びる複数のスリット状の凹条4・・4が、ローラ巻き付け方向Rに沿って一定のピッチで形成される。このように、凹条4のエッチングを先に実施することにより、凹条4の深さを精度よくコントロールすることができるので、凹条4の形成部分の曲げ剛性を容易に調整することができる。
【0045】
(6)図9(E)に示すように、金属板10の裏面にマスキングシート25を貼着して、先のエッチングで形成したスリット状の凹条4・・4をエッチング液に対して保護し、この状態で、再度エッチングを開始する。この2度目のエッチングの進行が、所定深さ([エンボス加工用凸部3(3a,3b)の高さ]−[凹条4の深さ]を考慮した深さ)に達した時点でエッチングを停止する。このようなエッチングにより、図9(F)に示すように、フレキシブルベース2(2a,2b)及び断面台形状の突部(突条)つまりエンボス加工用凸部3(3a,3b)が形成される。このエッチングの完了後にマスキングシート25を剥がしておく。また、フレキシブルベース2の上面側及び裏側に残ったレジストパターン21a,22aを除去しておく。
【0046】
なお、エッチングによりエンボス加工用凸部3(3a、3b)を形成した後(図9(F)の工程が終了した後)、必要であれば、NC加工機等を使用して、エンボス加工用凸部3(3a、3b)の両側面等に切削工具にて切削するという工程(仕上工程など)を付加してもよい。
【0047】
以上の例では、フレキシブルベース2(2a、2b)の裏面の複数のスリット状の凹条4・・4をエッチングにより加工しているが、これに限られることなく、各凹条4を微細な機械加工によって形成してもよい。
−他の実施形態−
エンボス加工用凸部3(3a、3b)の形状は、図10(A)に示すようにその上端の左右の縁部が角張って形成されているものに限られるものではない。
【0048】
例えば図10(B)に示すように、エンボス加工用凸部3(3a、3b)の上端の左右の縁部がアール状に形成されたものや、図10(C)に示すように面取りが施されたものであってもよい。このようにエンボス加工用凸部3(3a、3b)の上端の左右の縁部がアール状あるいは面取り加工されているとシートSが破断されにくくなるため、好適である。
【0049】
また、エンボス加工用凸部3(3a、3b)の形状は、図11(A)に示すように断面がテーパ状に形成されていてもよい。この場合においても、その上端の左右の縁部が角張って形成されているものに限られることなく、例えば図11(B)に示すように、上端の左右の縁部がアール状に形成されたものや、図11(C)に示すように面取りが施されたものであってもよい。このようにエンボス加工用凸部3(3a、3b)の上端の左右の縁部がアール状あるいは面取り加工されているとシートSが破断されにくくなるため、好適である。
【0050】
以上、本発明の実施の形態について例示したが、フレキシブルダイに形成するエンボス加工用凸部(加工パターン)は図1に示すような形状に限られることなく、例えば、三角形、四角形や丸形状、あるいは、動物・アニメーションのキャラクタ等の図柄、花柄模様、文字等の他の任意の形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明のフレキシブルダイの一例を示す正面図である。
【図2】図1のフレキシブルダイの要部縦断面図である。
【図3】本発明のフレキシブルダイを示す断面図である。
【図4】本発明のフレキシブルダイをローラに巻き付けた状態の概略を示す斜視図である。
【図5】本発明のフレキシブルダイをローラに巻き付けた状態の概略を示す概略断面図である。
【図6】本発明のフレキシブルダイを示す断面図である。
【図7】本発明のフレキシブルダイを示す断面図である。
【図8】図7のフレキシブルダイの裏面図である。
【図9】本発明のフレキシブルダイの製造方法の一例を模式的に示す図である。
【図10】本発明のフレキシブルダイの他の例を示す断面図である。
【図11】本発明のフレキシブルダイの他の例を示す断面図である。
【図12】ロータリー加工装置の一部を模式的に示す斜視図である。
【図13】従来のフレキシブルダイの一例を示す正面図である。
【図14】図13のフレキシブルダイの要部縦断面図である。
【図15】図13のフレキシブルダイをマグネットローラに巻き付ける際に発生する問題点を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 フレキシブルダイ
2、2a、2b フレキシブルベース
3、3a、3b エンボス加工用凸部
30 凹部
4 スリット状の凹条
P 加工パターン
R ローラ巻き付け方向
301、301a、301b マグネットローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面にエンボス加工用凸部が形成された一対のフレキシブルベースを、対向配置される一対の円筒状のローラにそれぞれ巻き付け、これら一対のローラ間に加工対象シートを通過させてエンボス加工を行うエンボス加工装置に使用されるフレキシブルダイであって、
前記一対のフレキシブルベースは、互いに雌雄嵌合する雌側フレキシブルベースと雄側フレキシブルベースとから構成され、
前記雌側フレキシブルベースにはエンボス加工を行う加工パターンの輪郭に対応する線状の凸部が形成されており、雄側フレキシブルベースには雌側フレキシブルベースの線状の凸部にて囲われる領域内に、当該線状の凸部の内周面に対し間隔をあけて嵌まり合う凸部が形成されているとともに、この凸部には凹部が形成されていることを特徴とするフレキシブルダイ。
【請求項2】
請求項1記載のフレキシブルダイにおいて、
前記フレキシブルベースのエンボス加工用凸部が形成された面の裏面には、少なくとも前記エンボス加工用凸部が形成されている領域の裏側に相当する部分に凹条が形成されていることを特徴とするフレキシブルダイ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2009−143176(P2009−143176A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324866(P2007−324866)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(391002568)株式会社塚谷刃物製作所 (14)
【Fターム(参考)】