説明

フロント作業機

【課題】油圧配管の配管作業を簡便化し得るフロント作業機を提供する。
【解決手段】先端に作業用アタッチメント12が装着され、作業車両としての農業用トラクタ1に対して回動可能に支持されるリフトアーム11と、リフトアーム11を回動させるための油圧アクチュエータとしてのリフトシリンダ13とを備え、リフトシリンダ13にトラクタ1から延びる油圧配管が接続されるフロント作業機10である。リフトアーム11は、その内部に油圧配管を挿通可能な筒状をなし、特に、トラクタ1の上下方向に沿って長軸を配置した断面オーバル状をなす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の作業車両に装着され、作業車両の前方で各種作業を行うフロント作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、トラクタ等の作業車両には、その前方で整地、除雪等を行うドーザや、農作業、荷役、運搬作業等を行うローダ等のいわゆるフロント作業機を装着する場合がある。この種のフロント作業機としては、例えば図8に示す構成のものが公知である。同図に示すフロント作業機51は、作業車両50に対して回動可能に支持されるリフトアーム52と、該リフトアーム52の先端に装着されたバケット等の作業用アタッチメント53と、リフトシリンダ54等の油圧アクチュエータを備える。リフトシリンダ54には作業車両50の本体から延びる図示しない油圧配管が接続され、リフトシリンダ54のシリンダロッドは、油圧配管を介してリフトシリンダ54の油室に供給される作動油によって伸長および短縮動作する。そして、リフトアーム52は、リフトシリンダ54のシリンダロッドの伸長および短縮動作により、作業車両50に対して回動(昇降)する。
【0003】
上記のとおり、この種のフロント作業機は作業車両に対して回動するため、作業車両の本体から延び、先端が油圧アクチュエータに接続される油圧配管は、フロント作業機の動作に追従するようにして回動させる必要がある。従い、油圧配管は、屈曲可能な油圧ホースで構成されると共に、結束バンドや固定金具等の固定具でリフトアームに固定される場合が多い(以上、例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−226138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来構成では、作業車両にフロント作業機を装着する際、結束バンド等の固定具を用いて油圧配管をいちいちリフトアームに固定しなければならない一方、フロント作業機を作業車両から離脱する際には固定具を切断等しなければならない。そのために、油圧配管の配管作業、ひいてはフロント作業機の着脱作業が煩雑であるという問題がある。
【0006】
また、作業車両の走行動作に伴い、特に作業用アタッチメントに隣接するリフトアームには土砂や雪等が飛散する。このとき、上記のように、油圧配管がリフトアームに固定されて外部に露出していると、土砂等の飛散物によって油圧配管が損傷するおそれがある。また、飛散物によって油圧配管が直接的に損傷しない場合でも、飛散物が油圧配管上に堆積し、このような外的負荷を油圧配管が受けることによって油圧配管が劣化・損傷等し易くなるという問題がある。
【0007】
本発明の課題は、油圧配管の配管作業を簡便化し、もって作業車両に対する着脱を簡便に行い得るフロント作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、先端に作業用アタッチメントが装着されるリフトアームと、リフトアームを作業車両に対して回動させる油圧アクチュエータとを備え、油圧アクチュエータに作業車両から延びる油圧配管が接続されるフロント作業機において、リフトアームを筒状に形成し、油圧配管を挿通可能としたことを特徴とするフロント作業機を提供する。
【0009】
上記の構成を採用すれば、作業車両から延びる油圧配管のうち、リフトアームに沿って伸びる部分をリフトアーム内に挿通することができる。そのため、リフトアームの内壁面で油圧配管の動作範囲を規制することができるので、油圧配管のうち、少なくともリフトアームに沿って延びる部分は、従来のように結束バンド等の固定具を用いてリフトアームに固定する必要がなくなる。従い、油圧配管の配管作業を簡便化することができる。
【0010】
また、リフトアームに油圧配管を挿通させれば、作業車両の走行動作に伴ってリフトアームに土砂等が飛散・堆積等したとしても、油圧配管のうち、少なくともリフトアームに挿通された部分は、外的負荷を受けることがない。これにより、油圧配管が劣化、損傷等する可能性を減じることができ、油圧配管のメンテナンスに要する手間を減じることが可能となる。
【0011】
この種のフロント作業機の特性上、リフトアームには主として鉛直方向の曲げ荷重が作用する。そのため、上記リフトアームは、作業車両の上下方向(鉛直方向)に沿って長軸を配置した断面オーバル状をなすものとするのが望ましい。上記の曲げ荷重に対する剛性を高めて、フロント作業機の信頼性向上を図ることができるからである。なお、ここでいう「オーバル」とは、真円ではなく、かつ、少なくとも一箇所線対称な部分を有する閉曲線を意味し、例えば卵形、角丸長方形(二つの等しい長さの平行線と二つの円弧とからなるもの)、楕円形等を含む概念である。
【0012】
筒状をなす(中空状の)リフトアームは、溶接等によって繋ぎ合わされた複数の筒体で構成することも可能であるが、この場合、リフトアームの内部に溶接痕が突起状に形成される。これでは、油圧配管の挿通作業に支障をきたすおそれがある他、挿通時に油圧配管を損傷させるおそれがある。かかる事態に鑑み、筒状のリフトアームは、一本のパイプ材からなるものとするのが望ましい。
【0013】
上記フロント作業機のリフトアームは、作業車両に設けた回動支持部に対して着脱可能に装着することができる。このとき、リフトアームを回動支持部に連結する連結ピンと、この連結ピンの抜け止めを行う抜け止めピンとを用いてリフトアームを回動支持部に装着するようにすれば、2つのピンを挿通するだけで、回動支持部からのリフトアームの離脱を防止しつつ、回動支持部(作業車両)に対するリフトアームの取り付けを完了することができる。これとは逆に、抜け止めピンを抜き取った後、連結ピンを抜き取るだけで揺動支持部からリフトアームを離脱することができる。従い、作業車両に対するリフトアームの着脱に際して工具を用いる必要がなくなり、作業車両に対するフロント作業機の着脱作業の簡便化を図ることができる。
【0014】
なお、上記の回動支持部に対するリフトアームの取り付け構造は、筒状のリフトアーム(中空部を有するリフトアーム)を具備するフロント作業機のみならず、板状のリフトアーム(中空部を有さないリフトアーム)を具備するフロント作業機にも好適に採用可能である。
【0015】
また、上記課題を解決するため、本発明では、作業車両に対して回動可能に装着されるフロント作業機であって、該フロント作業機は、先端に作業用アタッチメントが装着されるリフトアームと、リフトアームを作業車両に対して回動させる油圧アクチュエータと、油圧アクチュエータに作動油を供給する油圧配管とを備え、リフトアームおよび油圧配管が、作業車両に対して着脱可能であることを特徴とするフロント作業機を提供する。
【0016】
かかる構成によれば、リフトアームと油圧配管とを一組のアセンブリとして取り扱うことができる。そのため、従来のように、フロント作業機の着脱毎に、油圧配管をリフトアームに固定および離脱させる必要がなくなる。従い、配管作業、ひいては作業車両に対するフロント作業機の着脱作業を簡便化することができる。
【0017】
以上に述べた本発明に係るフロント作業機を装着する作業車両としては、農業用トラクタを挙げることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上より、本発明に係るフロント作業機によれば、油圧配管の配管作業、ひいては作業車両に対する着脱作業を簡便化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るフロント作業機を装着してなる作業車両の前方側左側面図である。
【図2】同正面図である。
【図3】同上面図である。
【図4】(a)図は図1中のA部拡大矢視図であり、(b)図は図1中のB部拡大矢視図である。
【図5】(a)図は、本発明に係るフロント作業機を作業車両に対して取り付ける直前の状態を示す部分正面図、(b)図は(a)図をX1方向から見た図、(c)図は第2ピンを示す斜視図、(d)図は図1中のC部拡大矢視図、(e)図は(d)図をX2方向から見た図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係るフロント作業機を装着してなる作業車両の前方側左側面図である。
【図7】(a)図は図6のD部拡大矢視図であり、(b)図は(a)図の上面図である。
【図8】公知のフロント作業機の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図1〜7に基づいて説明する。なお、図1は、作業車両としての農業用トラクタ1(以下、単に「トラクタ1」と言う)に、本発明の一実施形態に係るフロント作業機10を装着した状態を示す左側面図(トラクタ1の運転者から見て左側の側面を示す図)であり、図2は同正面図、また図3は同上面図である。また、以下では方向性を示すべく「幅方向」、「上下方向」、および「前後方向」なる語句を使用する場合があるが、これらはそれぞれ、トラクタ1の幅方向、トラクタ1の上下方向、およびトラクタ1の前後方向を意味する。
【0021】
トラクタ1は、車体上に、運転席、エンジン、およびエンジンで駆動される油圧ポンプを含む油圧回路等を備え、油圧回路からは油圧配管が延びている(何れも図示は省略)。トラクタ1のフロント部には、フロント作業機10を支持するための支持フレーム2が固定的に設けられる。支持フレーム2は、幅方向に離隔して配置され、前後方向に沿って延びるフロントステー3,3と、各フロントステー3,3の前端部から上方に延びるフロントホルダー4と、フロントステー3,3の後端部に設けられた回動支持部としてのブラケット5,5とを主要部とする。フロントホルダー4は、上下方向に延びる左右一対の柱部4a,4aと、両柱部4a,4aの上端部間で幅方向に延びる幅方向部4bとを備える。
【0022】
フロント作業機10は、左右一対のリフトアーム11,11と、リフトアーム11の先端に装着された作業用アタッチメント12と、リフトアーム11をトラクタ1に対して回動させる油圧アクチュエータとしてのリフトシリンダ13とを主要部とし、トラクタ1の支持フレーム2に対して着脱可能に装着される。図示例の作業用アタッチメント12は、ブレード(あるいはグレーダ)と称されるものであり、幅方向に沿って延び、主に整地作業や除雪作業を担うものである。この種の作業用アタッチメント12を備えるフロント作業機10はフロントドーザとも称される。
【0023】
作業用アタッチメント12は、連結部材14を介してリフトアーム11の先端に装着される。連結部材14には、トラクタ1からフロント作業機10を離脱させたときに、フロント作業機10を自立(起立)状態で保持するためのスタンド機構15が設けられている。スタンド機構15は、リフトアーム11に対して回動可能にその基端部が連結部材14に固定されており、フロント作業機10の使用状態においては、リフトアーム11の長手方向に沿って収容可能となっている。
【0024】
リフトシリンダ13は、図1および図2に示すように、トラクタ1の幅方向略中央部に、上下方向に沿って1つ設けられており、その上端部(シリンダロッド13aの先端部)がフロントホルダー4の幅方向部4bに固定されると共に、その下端部が作業用アタッチメント12の背面側に固定される。詳細な図示は省略しているが、このリフトシリンダ13の油室には、トラクタ1の車体上に設けた油圧回路から延びる油圧配管の先端が接続されている。なお、リフトシリンダ13は、トラクタ1の幅方向複数箇所に設けることも可能である。
【0025】
リフトアーム11は、トラクタ1の車体と前輪6との間に配置されており、前輪6を支持する車軸等との干渉を避けるため、その長手方向の中間部分が上方に湾曲した円弧状をなす。このリフトアーム11は、筒状体、より詳細には、上下方向に長軸を配置した断面オーバル状の筒状体で構成される(図4(a)(b)中の点線を参照)。本実施形態におけるリフトアーム11の断面形状は、二つの等しい長さの平行線と二つの円弧とからなる、いわゆる角丸長方形である。かかる形態をなすリフトアーム11は、例えば、SS400(圧延鋼材)からなる一本の丸パイプにプレス加工および曲げ加工を施すことにより、もしくは、一本のオーバルパイプに曲げ加工を施すことによって得ることができる。
【0026】
図4(a)(b)に拡大して示すように、筒状をなすリフトアーム11の後端側および先端側開口部は、蓋部材16,17によってそれぞれ閉塞される。これにより、トラクタ1の走行動作に伴って、筒状をなすリフトアーム11内へ土砂や雪等が浸入するのを可及的に防止することができる。但し、後述するように、両リフトアーム11,11のうち、何れか一方(本実施形態では左側。図3で言えば下側)のリフトアーム11には、トラクタ1の車体上に設けられた油圧回路から延びる図示しない油圧配管が挿通される。そのため、左側のリフトアーム11の開口部を閉塞する蓋部材16,17には、油圧配管を通すことができる程度の穴16a,17aがそれぞれ設けられる。なお、本実施形態において、後端側に固定した蓋部材16の穴16aは縦50mm×横30mmの角穴とされ、また、先端側に固定した蓋部材17の穴17aは縦30mm×横40mmの角穴とされる。もちろん、穴16a,17aの形態や大きさは油圧配管を通すことができるのであれば特段の限定はなく、また、穴16a,17aは、右側のリフトアーム11の両端開口部を閉塞する蓋部材16,17に設けても良い。
【0027】
リフトアーム11は、その後端に設けた接続部18を介してトラクタ1(厳密には、回動支持部としてのブラケット5)に対して回動可能に取り付けられる。そして、リフトシリンダ13のシリンダロッド13aが短縮動作すると、接続部18とブラケット5の連結部を支点としてリフトアーム11および作業用アタッチメント12が一体的に上方に回動する。一方、これとは逆にシリンダロッド13aが伸長動作するとリフトアーム11および作業用アタッチメント12が一体的に下方に回動する。なお、リフトアーム11の回動中、リフトシリンダ13の姿勢は変化しない。
【0028】
次に、本実施形態に係るフロント作業機10のトラクタ1に対する取り付け構造について、ブラケット5に対するリフトアーム11の取り付け構造、および油圧配管の配管構造を中心に述べる。
【0029】
ブラケット5に対するリフトアーム11の取り付けは、図5(a)および図5(d)に示すように、リフトアーム11の後端に設けた接続部18とブラケット5とを連結ピン21で連結した後、連結ピン21に抜け止めピン22を挿通して連結ピン21の抜け止めを行うことにより完了する。より詳細には、以下のとおりである。
【0030】
図5(a)に示すように、ブラケット5は、幅方向に離隔して設けられた一対の側板5a,5bを有し、幅方向外側に位置する側板5bの外側面には厚肉部5cが設けられている。このブラケット5には、厚肉部5cの中心を通って幅方向に延びる第1貫通穴5dと、厚肉部5cを上下方向に貫通し、第1貫通穴5eの延在方向と直交する方向に延びる第2貫通穴5fとが設けられている。一方、リフトアーム11の接続部18の下端には、幅方向に延びる貫通穴18a1を有する軸受部18aが設けられている。そして、リフトアーム11の軸受部18aを、貫通穴18a1がブラケット5の第1貫通穴5dと同心になるようにしてブラケット5の側板5a,5b間に配置した後、各貫通穴5d,18a1に連結ピン21を挿通させる。これにより、リフトアーム11がブラケット5に連結されると共に、リフトアーム11がブラケット5に対して回動可能となる。
【0031】
ここで、連結ピン21は、ピン部を径方向に貫通する貫通穴21aと、ピン部の径方向外側に延びる把手部21bとを有する。貫通穴21aは、当該連結ピン21をブラケット5の第1貫通穴5dおよびリフトアーム11の軸受部18aの貫通穴18a1に挿通したときに、ブラケット5の第2貫通穴5dと同心配置されるようにして、連結ピン21の挿通方向所定位置に形成されている。把手部21bは、貫通穴21aよりも挿通方向後ろ側で、貫通穴21aの延在方向に沿って延びるようにして設けられている(図5(b)を参照)。
【0032】
上記のようにして連結ピン21をブラケット5およびリフトアーム11に挿通すると共に、図5(b)に示すように、ブラケット5に設けた第2貫通穴5eと連結ピン21の貫通穴21aとの方向性を一致させた後、両貫通穴5e,21aに抜け止めピン22を挿通する。これにより、連結ピン21の移動が規制され、ブラケット5からの連結ピン21の抜け止めが図られる(図5(d)を参照)。なお、連結ピン21には、貫通穴21aの延在方向に沿って延びる把手部21bが設けられていることから、図5(b)に示すように、把手部21bを上下方向に沿うかたちで配置するだけで、両貫通穴5e,21aの方向性合わせを完了することができる。
【0033】
図5(c)に示すように、本実施形態で用いる抜け止めピン22は、頭部22bに回動可能な略半円状の把手部22cを有するものであり、この把手部22cには、これをピン部22aに接近する方向に回動させたときに、ピン部22aを通過させることができる程度の幅のスリット部22c1が設けられている。従い、抜け止めピン22を貫通穴5e,21aに挿通させる際には、把手部22cをブラケット5の厚肉部5cと干渉しない状態とする一方、抜け止めピン22の挿通が完了した後には、把手部22cを回動させて把手部22cの先端部を頭部22aと略180°位相を異ならせた位置に配置する(図5(e)を参照)。これにより、抜け止めピン22の把手部22cがブラケット5の厚肉部5cと係合するので、抜け止めピン22自体の抜け止めが図られる。
【0034】
以上のようにして、ブラケット5に対するリフトアーム11の取り付けが完了する。以上に示す取り付け構造を採用すれば、工具等を用いることなく、簡便に、トラクタ1のブラケット5に対するリフトアーム11の取り付け作業を行うことができる。一方、ブラケット5からリフトアーム11を離脱させる際には、抜け止めピン22の把手部22cを回動させて把手部22cとブラケット5の厚肉部5cとの係合状態を解除した後、抜け止めピン22を抜き取り、さらに連結ピン21を抜き取れば良い。ピン21,22の抜き取り時には、これらに設けた把手部21b,22cを把持することができるので、ピン21,22の抜き取り作業も工具等を用いることなく簡便に行い得る。
【0035】
なお、詳細な図示は省略するが、フロントホルダー4の幅方向部4bに対するリフトシリンダ13のシリンダロッド13aの取り付け構造も、ブラケット5に対するリフトアーム11の取り付け構造と同様である。
【0036】
以上のようにして、トラクタ1にフロント作業機10を装着した後、油圧配管の配管作業を行い、フロント作業機10を使用可能な状態とする。本実施形態における油圧配管の配管作業は、油圧配管を左側のリフトアーム11の基端部に固定した蓋部材16の穴16a→左側のリフトアーム11→左側のリフトアーム11の先端部に固定した蓋部材17の穴17aの順に挿通させた後、油圧配管を作業用アタッチメント12の背面に沿って配置し、油圧配管の先端をリフトシリンダ13の油室に接続することによって完了する。
【0037】
以上に示すように、本発明では、リフトアーム11を筒状に形成し、油圧配管をリフトアーム11に挿通可能としたことから、トラクタ1から延びる油圧配管のうち、リフトアーム11に沿って伸びる部分をリフトアーム11内に挿通することができる。この場合、リフトアーム11の内壁面で油圧配管の動作範囲を規制することができるので、油圧配管のうち、少なくともリフトアーム11に沿って延びる部分は、従来のように結束バンド等の固定具を用いてリフトアーム11に固定する必要がなくなる。そのため、油圧配管の配管作業を簡略化することができる。
【0038】
また、リフトアーム11に油圧配管を挿通させれば、トラクタ1の走行動作に伴ってリフトアーム11に土砂等が飛散・堆積等したとしても、油圧配管のうち、少なくともリフトアーム11に挿通された部分は、堆積した土砂等による外的負荷を受けることがない。これにより、油圧配管が劣化、損傷等する可能性を減じることができ、油圧配管のメンテナンスに要する手間を減じることが可能となる。特に本実施形態のように、リフトアーム11を、その長手方向の中間部分が上方に湾曲した円弧状とすれば、例えばリフトアーム11を車軸(前輪6を支持する部材)の下側を通す場合に比べて、トラクタ1の走行動作に伴ってリフトアーム11に土砂が飛散・堆積等する可能性を減じることができる。そのため、油圧配管の損傷可能性を一層効果的に減じることができる。
【0039】
但し、筒状をなすリフトアーム11を、溶接等によって繋ぎ合わされた複数の筒状体で構成すると、リフトアーム11の内部に溶接痕が突起状に形成される。これでは油圧配管の挿通作業に支障をきたすおそれがある他、挿通時に油圧配管を損傷させるおそれがある。これに対し、リフトアーム11を、上記のように、一本のパイプ材から得るようにすれば、突起状の溶接痕が形成されることがなくなるので、上記の問題点を効果的に防止することができる。
【0040】
また、筒状をなすリフトアーム11を、上下方向に沿って長軸を配置した断面オーバル状に形成したことから、曲げ荷重に対する剛性を高めて、フロント作業機10の信頼性向上を図ることができる。
【0041】
図6は、本発明の他の実施形態に係るフロント作業機10を装着してなるトラクタ1の前方部分の左側面図である。同図に示すフロント作業機10は、トラクタ1に対するリフトシリンダ13(油圧アクチュエータ)の取り付け態様を異ならせた点において、以上で説明した実施形態と構成を異にしている。
【0042】
詳細には、図7(a)(b)に示すような幅方向に延びる固定部材19を介してリフトシリンダ13(の本体)を両リフトアーム11,11に固定すると共に、リフトシリンダ13のシリンダロッド13aの先端部をトラクタ1の前方で幅方向に延びる固定軸20(図6を参照)に固定している。また、これに伴い、トラクタ1の支持フレーム2は、フロントホルダー4を省略したものとなる。かかる構成を採用した場合、シリンダロッド13aの伸長および短縮動作に伴い、シリンダロッド13aの先端部を支持点としてリフトアーム11および作業用アタッチメント12がリフトシリンダ13と一体にトラクタ1に対して回動する。より詳細には、シリンダロッド13aが伸長動作すると、図6中二点鎖線で示すようにリフトアーム11および作業用アタッチメント12が上方に回動する一方、シリンダロッド13aが短縮動作するとリフトアーム11および作業用アタッチメント12が下方に回動する(原点復帰する)。
【0043】
なお、その他の構成については、上述した実施形態と実質的に同一であるから詳細な説明を省略する。
【0044】
以上では、リフトアーム11を断面角丸長方形状の筒体で構成した場合について説明を行ったが、リフトアーム11は、卵形、楕円形等、その他の断面オーバル状をなす筒体で構成することも可能である(図示は省略する)。
【0045】
また、図5を参照して詳細に述べたフロント作業機10の取り付け構造は、筒状をなすリフトアーム11をトラクタ1のブラケット5(作業車両の回動支持部)に取り付ける場合のみならず、中空部を有さない板状のリフトアーム11をトラクタ1のブラケット5に取り付ける場合にも好適に採用可能である。
【0046】
また、以上では、リフトアーム11および作業用アタッチメント12をトラクタ1に対して回動させるためのリフトシリンダ13に、トラクタ1の本体から延びる油圧配管を介して作動油を供給する構成のフロント作業機10について説明を行ったが、本発明では、リフトアーム11および油圧配管をトラクタ1に対して着脱可能に構成してなるフロント作業機10、換言すると、予め油圧配管が接続されたリフトシリンダ13を有するフロント作業機10も併せて提供する。かかる構成のフロント作業機10であれば、リフトアーム11と油圧配管とを一組のアセンブリとして取り扱うことができる。そのため、従来のように、フロント作業機10の着脱毎に、油圧配管をリフトアーム11に固定および離脱させる必要がなくなる。従い、配管作業、ひいてはトラクタ1に対するフロント作業機10の着脱作業を簡便化することができる。
【0047】
かかる構成を採用した場合、リフトアーム11は上述したような中空部を有する筒状体で構成しても良いし、中空部を有さない板状体で構成しても良い。また、かかる構成のフロント作業機10であっても、図5を参照して述べたトラクタ1(の回動支持部)に対するリフトアーム11の取り付け構造を採用し得る。
【符号の説明】
【0048】
1 農業用トラクタ(作業車両)
2 支持フレーム
5 ブラケット(回動支持部)
10 フロント作業機
11 リフトアーム
12 作業用アタッチメント
13 リフトシリンダ(油圧アクチュエータ)
15 スタンド機構
16,17 蓋部材
21 連結ピン
22 抜け止めピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に作業用アタッチメントが装着されるリフトアームと、該リフトアームを作業車両に対して回動させる油圧アクチュエータとを備え、該油圧アクチュエータに前記作業車両から延びる油圧配管が接続されるフロント作業機において、
前記リフトアームを筒状に形成し、前記油圧配管を挿通可能としたことを特徴とするフロント作業機。
【請求項2】
前記リフトアームは、前記作業車両の上下方向に沿って長軸を配置した断面オーバル状をなす請求項1に記載のフロント作業機。
【請求項3】
前記リフトアームが、前記作業車両に設けた回動支持部に対して着脱可能に装着される請求項1又は2に記載のフロント作業機。
【請求項4】
前記リフトアームを前記回動支持部に連結する連結ピンと、該連結ピンの抜け止めを行う抜け止めピンとにより、前記リフトアームが前記回動支持部に対して着脱可能に装着される請求項3に記載のフロント作業機。
【請求項5】
作業車両に対して回動可能に装着されるフロント作業機であって、
前記フロント作業機は、先端に作業用アタッチメントが装着されるリフトアームと、該リフトアームを前記作業車両に対して回動させる油圧アクチュエータと、該油圧アクチュエータに作動油を供給する油圧配管とを備え、
前記リフトアームおよび前記油圧配管が、前記作業車両に対して着脱可能であることを特徴とするフロント作業機。
【請求項6】
前記作業車両が農業用トラクタである請求項1〜5の何れか一項に記載のフロント作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−189966(P2010−189966A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36903(P2009−36903)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000177184)三陽機器株式会社 (26)
【Fターム(参考)】