説明

フロー状況の計測方法

本発明は、光学的に検出可能な粒子を注入された流体が貫流する測定空間内のフロー状況を計測する方法に関する。ここでは、複数の時点で、それぞれ粒子分布の複数の二次元画像を作成して、その画像から、予想される粒子分布を求めて、三次元の変位ベクトル場を算出する。本発明では、先ずは、使用する画像検出器に関して、画像検出器によって実際の分布をマッピングするための伝達関数を決定する。次に、大まかに想定した初期分布を出発点とし、伝達関数を用いて、予想分布の仮想的な画像を計算して、それぞれ対応する実際の画像と比較する。繰り返される方法において、仮想的な画像と実際の画像の十分な一致に到達するまで、予想分布を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的に検出可能な粒子を注入された流体が貫流する測定空間内のフロー状況を計測する方法であって、
a)第一の撮影時点で、空間的に互いにずらして配置された複数の画像検出器を用いて、それと同数の、粒子の実際の三次元分布に関する第一の複数の実際の二次元画像を同時に撮影する工程と、
b)少なくとも一回の第二の撮影時点で、工程a)を繰り返す工程と、
c)撮影時点毎に、実際の画像に基づき、粒子の予想される三次元分布を計算する工程と、
d)それらの予想分布を比較することによって、三次元の変位ベクトル場を算出する工程と、
を有する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような方法は、3D−PTV(三次元粒子追跡流速測定)法として知られている。その詳細は、例えば、非特許文献1により周知である。3D−PTV法は、異なる時点での測定空間内における複数の粒子の個々の位置を三角測量により個別に計測するとの基本的な考えに基づいている。そのようにして異なる時点で算出した分布を比較することによって、個々の粒子毎に、二回の測定時点の間の粒子の動きを表す変位ベクトルを決定することができる。特に、複数の、典型的には、三台又は四台のカメラによって、異なる観測角から測定空間を同時に撮影する。撮影した各二次元画像において、撮影されている粒子毎に、二次元の粒子位置を求める。次に、各観測角を既知として、異なる画像の組み合せから、撮影されている粒子毎に、測定空間内の三次元の粒子位置を求める。そのような工程は、一般的に三角測量と呼ばれている。そのような方法は、少なくとも二回の連続する時点で実施され、その結果測定空間内の粒子の中の少なくとも幾つかの位置は、撮影時点の間に、測定空間内の流れのために僅かではあるが明らかに測定可能な程変化する。しばしば「追跡」と称される工程において、異なる時点で算出された対応する粒子位置を互いに関連付ける。互いに関連付けた粒子位置を比較すると、測定空間内の粒子毎、或いは所定の大きさの単位空間毎に、観測時点の間の流れを原因とする変位をそれぞれ表すベクトルから成る変位ベクトル場が算出される。そのような方法の欠点は、測定空間内の粒子数及び粒子密度が比較的小さい場合に限定されることである。粒子密度が大きいと、三次元測定空間へのマッピング時に、撮影したカメラ画像内の粒子のマッピングが何重にも重なり合うこととなり、その結果二次元の粒子位置の計測が不正確で誤ったものとなる。そのため、三角測量の場合、三次元の粒子位置を計測する時に大きな誤りが生じてしまう。例えば、存在する粒子が発見されなかったり、存在しない粒子、所謂「ゴースト粒子」が「発見」されることとなる。
【0003】
異なる空間位置に多数の検出器を採用して、異なる観測角から測定空間を観察することによって、部分的な解決策を実現することができる。しかし、スペースとコストの理由から、そのような試みは、限定的にしか実施することができない。更に、検出器の数が多くなる程、即ち、三角測量で考慮すべき画像の数が多くなる程、計算負荷とそのため測定時間が大幅に増加する。しかし、そのような数学的な単純さから得られる速さは、まさに3D−PTV法の特に有利な特性であり、一般的に断念したくない特性である。
【0004】
時間的な観点を重視しない場合、別の周知の方法、特に、Tomo−PIV法と略して呼ばれる断層再構成式PIV(粒子画像流速測定)法に頼ることができる。特許文献1により周知である、そのような方法では、同様に、異なる撮影角度から異なる時点で三次元測定空間の二次元画像を対として撮影する。Tomo−PIV法の場合、PTV法と比較して、著しく大きな粒子密度で測定空間への注入を行うことができる。しかし、個々の粒子を個別に観察して、その位置を三角測量で求めることはできない。むしろ、測定空間を多数の所定の単位体積に分割して、正味の集中度分布を算出する断層再構成方法を用いている。そして、単位体積をベースとする三次元の集中度分布に相互相関技術を適用することによって、三次元の変位ベクトル場を計算している。Tomo−PIV法の利点は、得られた三次元の変位ベクトル場において、変位ベクトルの高い密度を実現できることである。しかし、その方法は、非常に計算量が多く、そのため時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第1517150号明細書
【特許文献2】ドイツ特許公開第102006055746号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Th. Dracos (ed.), Three Dimensional Velocity and Vorticity Measuring and Image Analysis Techniques, 209-227 (1996) Kluver Academic Publishers
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、周知の3D−PTV技術を出発点として、測定空間内で、より大きな粒子密度を取り扱うことができるように、そのため、得られる三次元の変位ベクトル場内で、より大きな密度の変位ベクトルを実現することができるように、冒頭で述べた形式の方法を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本課題は、請求項1の上位概念の特徴と組み合わせて、工程c)の前に、
e)画像検出器毎に、画像検出器によって実際の分布をマッピングするための光学的な伝達関数を決定する工程を実行することと、
大まかに予想した初期分布を予想分布として工程c)を開始し、その後、
c1)工程e)で決定した伝達関数に基づき、予想分布の仮想的な二次元画像を計算する部分工程と、
c2)仮想的な画像とそれぞれ対応する実際の画像の間の違いを比較して算出する部分工程と、
c3)算出した違いに基づき、予想分布を変更する部分工程と、
を繰り返し実行し、所定の停止判断基準に到達した場合に、この繰り返しを終了する、
ことと、
によって解決される。
【0009】
本発明の基本的な考えは、周知の方法を制限している画一的な三角測量による測定空間内の粒子分布の計算を再構成方法の繰り返しと置き換えることである。従って、3D−PTV法において、多数の不確かな二次元の粒子位置から三次元の粒子分布を如何にして正確に計算するかという試みを初めて行うものでは決してない。むしろ、先ずは、測定空間内の粒子分布の大まかな予想を行う。そのための簡単な手法は、従来技術に基づく3D−PTV法と関連して前述した通り、大まかな三角測量の結果を初期分布として選択することである。そのような数値予想は、注入プロセスの既知のパラメータに基づき行うことができる。ここで、初期分布と呼ばれる大まかな予想を得るための別の方法も考えられる。初期分布を得るための特別な手法は、本発明に関して重要ではない。
【0010】
ここで、初期分布を出発点として、仮想的な二次元画像、即ち、その初期分布が測定空間内の実際の粒子分布と一致するとした場合(このような場合は通常有り得ない)に検出器で撮影されると考えられる画像を計算する。それに応じて、仮想的な画像と実際の画像、即ち、検出器で実際に撮影された画像との違いが得られる。仮想的な画像と実際の画像の間の違いは、仮定した初期分布の誤差を表しており、その結果仮定した初期分布のパラメータ、例えば、一つ以上の粒子の数、位置、大きさ、輝度などを変更して、予想分布を改善する、即ち、予想分布を実際の分布に近付けることができる。そのようにして変更した予想分布は、次の繰り返し工程のベースとなる。そのことは、即ち、変更した予想分布が実際の分布と一致するとした場合に検出器によって撮影されると考えられる二次元画像が新たに仮想的な画像と呼ばれることを意味する。それに続いて、その新しい仮想的な画像と実際の画像との更なる比較が行われて、その偏差が繰り返し工程毎に低減して行く。所定の停止判断基準に到達するまで、そのような繰り返しが行われる。それは、例えば、偏差が所定の許容限界を下回る場合とすることができる。そして、それは、予想分布が所定の許容範囲内で実際の分布と一致することを意味する。そのようにして、三角測量計算を行うことなく、所望の精度内で実際の分布を求めることができる。それに代わって、或いはそれに追加して、所定の回数の繰り返し工程が停止判断基準としての役割を果たすことができる。その場合、そのようにして算出された全ての測定時点での粒子分布を用いて、周知の3D−PTV法に戻って、追跡又は別の方法によって、三次元の変位ベクトル場を計算することができる。
【0011】
本発明による方法の改善構成では、実施する変更が粒子分布の予想を所望の通り改善することに寄与することを保証するために、部分工程c2)において、即ち、仮想的な画像と実際の画像とを比較する際に、異なる繰り返し工程での仮想的な画像の間の違いを更に求めるものと規定することができる。そのベースとなる考えは、具体的な粒子の位置を補正する例で説明する。例えば、所与の偏差の段階的な低減を具体的な粒子の直線的な位置移動と関連付けて、その粒子のそれまでの動向に対して最後に行った移動が観測された偏差を拡大させていると確認された場合、そのことは、粒子の直線的な移動による位置の補正が最大値を上回ってしまい、従って、その粒子と関連して別の補正を行うべきこと、例えば、大きさや位置を補正する方向の変更などを示唆していると解釈することができる。言い換えると、繰り返しの収斂を改善するために、その時点の仮想的な画像とそれに対応する実際の画像の間の偏差だけでなく、一回以上の実施済みの繰り返し工程の考察によってのみ検知可能な傾向をも考慮することを提案する。
【0012】
本発明の有利な改善構成では、測定空間の撮影を繰り返す工程を一回を上回る第二の撮影時点で実施して、予想分布を変更する工程において、周縁部に位置しない粒子は測定空間から消えることはないとの仮定の下で、予想分布の変更に対して、それぞれ妥当性の検査を行うものと規定する。即ち、例えば、本発明による第一と第二の時点で撮影した画像の処理に基づき、予想分布の変更として粒子の除去又は追加を行うものと規定されるのに対して、本発明による第一と第三の時点で撮影した画像の処理に基づき、そのような措置を実施しないものと規定することができる。この場合、そのような措置は必要ではなく、第二の撮影時点では別の粒子によって粒子に陰影が生じていたことを意味している。そして、そのような妥当性の検査によって、所定の措置を中止又は修正することができる。しかし、周縁部の領域では、実際に粒子が拡散して出たり入ったりすることが起こり得るので、そのような妥当性の検査は、測定空間の周縁部から十分に離れている場合にのみ有効である。
【0013】
光学的な伝達関数の決定が重要な課題となる。この光学的な伝達関数は、それぞれ測定空間内の実際の粒子分布を具体的な検出器の二次元の検出器平面上にマッピングすることを規定している。そのため、検出器毎に固有の伝達関数が得られる。
【0014】
光学的な伝達関数は、特に、二つの側面を有する。多くの場合に「マッピング」と称される第一の側面は、測定空間内の三次元の位置を撮影した画像内の二次元の位置に幾何学的に対応付けることと関連する。第二の側面は、無限小の光点を「回折スライス」としてマッピングすることと関連する。そのような第二の側面は、多くの場合光学的な変調伝達関数(MTF)と称され、例えば、球面又はスペクトルの収差又は非点収差による歪をも考慮したものである。ここでは、二つの側面が、一緒になって光学的な伝達関数と称され、本発明の具体的な実施形態では、得られた光学的な伝達関数における個々の側面の重みが異なる場合が有る。
【0015】
測定空間内の仮定した粒子分布から本発明で重要な仮想的な画像を計算するためには、光学的な伝達関数が既知でなければならない。光学的な伝達関数が既知である精度は、本発明による方法の精度を決める。簡単な手法では、較正によって、特に、測定空間内における一つ以上の既知の物体の実際の画像を撮影して、既知の物体と撮影した画像を比較することによって、光学的な伝達関数を求めることができる。そのために、例えば、大きさと構成が既知の標識を有する較正用プレートを測定空間内の異なる位置に配置して、それぞれ撮影することができる。得られた画像から、如何にして測定空間の異なる領域をマッピングするのかを正確に決定することができる。較正用プレートの代わりに、較正用格子、即ち、大きさと構成が既知の標識の三次元分布を使用することもできる。較正用プレート又は較正用格子上の標識が十分に小さい場合、「マッピング」とMTFの決定を同時に行うことができる。標識が大きい場合、「マッピング」とMTFの決定は、典型的には、別個の較正工程で行われる。そのような較正用物体に追加して、既知の大きさと既知の輝度の実際の粒子を伝達関数の補正のために使用することができる。それに対応する補正方法は、特許文献2により周知である。そのような変化形態では、典型的には、「マッピング」とMTFの決定が同時に行われる。
【0016】
以下の特別な記述と図面から、本発明の更なる特徴と利点が明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】3D−PTV方法の模式図
【図2】図1の方法の本発明による個別工程の模式図
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、表示された一般的な形態で当業者に周知の3D−PTV方法の模式図を図示している。光学的に検出可能な粒子を注入された流体が貫流する測定空間を表す実際の空間VRを出発点とする。有利には、蛍光を発する、或いは反射する粒子が使用され、それらの粒子は、有利には、同じ形態、或いは少なくとも同様の形態で構成され、その密度は、特に、流体の濃度と適合している。例えば、中空又は中実のガラス又はプラスチック製の小球、或いは(特に、ガスフロー内では)液滴を使用することができる。しかし、基本的には、例えば、煤の粒子などの不揃いな粒子を使用することも可能である。
【0019】
測定空間VRは、実際の画像を作成するための複数の画像検出器12,14によって撮影される。図示されている実施構成では、二台の検出器12,14が図示されている。しかし、同様に、二台を上回る検出器を使用することができる。検出器の中の少なくとも二台が異なる観測角で測定空間を撮影することが必要である。二台の検出器12,14を用いた実施構成に基づき、以下の記述を行うが、普遍性を制限するものではなく、ここで開示する考えを二台を上回る検出器による実施構成に転用することは当業者には容易なことである。
【0020】
各検出器12,14は、二回の異なる時点t0とt1で、それぞれ実際の測定空間VRの実際の二次元画像を撮影する。その画像から、少なくとも四つの実際の画像R10,R11,R20,R22が得られる。添え字は、実際の画像R10が第一の検出器12によって時点t0で撮影され、実際の画像R11が第一の検出器12によって時点t1で撮影され、実際の画像R20が第二の検出器14によって時点t0で撮影され、実際の画像R21が第二の検出器14によって時点t1で撮影されたことを表している。次に、各時点tj(ここで、j=0又は1)に関して、それぞれ対応する画像のペアR10,R20又はR11,R21の結合16が行われる。この結合16は、ここでは、仮想的な、或いは虚構の空間VIjと呼ばれる、測定空間VRの二つの仮想的な再構成形態を生み出し、仮想的な空間VI0は、時点t0での測定空間VRを表し、仮想的な空間VI1は、時点t1での測定空間VRを表す。
【0021】
それに続く基本的に当業者に周知の結合18によって、三次元の変位ベクトル場VVが生成される。その変位ベクトル場VVは、位置の個別的な比較による仮想的な空間VIjの粒子のマッピングに相当する。従って、それは、測定空間VR内における時点t0と時点t1の間の個々の各粒子の位置の変化を表している。
【0022】
そのような基本的に周知の方法の本発明による変化形態は、実際の画像R1j,R2jから仮想的な空間VIjを計算するための結合16の特別な実施構成である。そのような結合16は、図2に模式的に図示されている。
【0023】
測定空間VR内の大まかに推定した粒子分布を出発点とする。言い換えると、仮想的な空間VIstartを前提条件として与える。この前提条件は、例えば、一定数の予想される粒子の理論的に計算した分布とすることができ、実験構成から既知の粒子密度から数値予測を得ることができる。しかし、例えば、撮影した実際の画像R10,R11,R20,R22に基づく別の予測メカニズムを用いることもできる。特に、(速いが、それに応じて正確ではない)予め実施した3D−PTV測定法の結果を初期分布として使用することもできる。仮想的な初期空間VIstartを前提条件とする具体的な根拠は、本発明では重要ではない。本発明では、そのような初期の前提条件を出発点として、繰り返しプロセスを開始する。先ずは、その時点の仮想的な空間VIj(ここで、jは当該の時点tjを表す)としてVIstartを設定する。その時点の仮想的な空間VIjから、仮想的な空間VIjによって表される通りの粒子分布が実際の空間VR内の実際の分布と一致するとした場合に、検出器12,14によって時点tjで撮影されると考えられる実際の画像に相当する仮想的な画像I1jとI2jを計算する。そのような仮想的な画像I1j,I2jの計算は、それぞれ第一の検出器12又は第二の検出器14の検出器平面上への空間VRのマッピングを表す光学的な伝達関数F1,F2をベースとする。
【0024】
次の工程20では、仮想的な画像I1j,I2jを実際の画像R1j又はR2jと比較する。添え字が表す通り、それぞれ所与の検出器によって撮影された実際の画像とその特別な検出器の光学的な伝達関数に基づき得られた仮想的な画像との比較だけが行われ、この方法は、各時点t0,t1に関して別々に実施される。そのような比較は、各仮想的な画像I1j,I2jがそれぞれ対応する実際の画像R1j又はR2jと一致するか、或いは仮想的な画像I1j,I2jの中の少なくとも一つがそれに対応する実際の画像R1j又はR2jと一致しないという結果を生じさせる可能性が有る。図2の工程20の数式表現中の等号「=」は、厳密な意味で等しいことを表すものと解釈してはならない。むしろ、比較結果「はい」とは、実際の画像と仮想的な画像が所定の許容範囲内で互いに一致する場合である。それとは逆に、比較結果「いいえ」とは、仮想的な画像と実際の画像の間に所定の許容範囲を上回る違いが生じている場合である。
【0025】
一致しているとする方が優勢となった場合、その時点の仮想的な空間VIjが結合16による結合結果として出力されて、変位ベクトル場VVの計算18に関する基本的な位置としての役割を果たす。
【0026】
それ以外の場合、その時点の仮想的な空間VIの変更が行われる。図2で等式VIj=VIJ+Δによって表される、そのような変更は、空間内の少なくとも一つの粒子の位置、大きさ、輝度又はその他のパラメータと関連付けることができる。そのようして変更された仮想的な空間は、その時点の新しい仮想的な空間VIとして、次の繰り返し工程を受ける。そのような繰り返しは、実際の画像と仮想的な画像の間の十分な一致が達成されるまで続けられる。それは、その時点の仮想的な空間VIが十分な精度で実際の空間VRと一致することの指標と看做される。
【0027】
この方法は、各時点t0,t1で実施され、その結果算出された仮想的な空間VI0とVI1が得られ、次に、それらの空間から、結合18によって、変位ベクトル場が計算される。
【0028】
当然のことながら、上記の記述で考察した、図面に図示された実施構成は、本発明を説明するための単なる実施例である。当業者には、ここでの開示に照らして、広範な変化形態の可能性が有ることを理解している。特に、検出器の数と構成は、任意に変更することができる。光学的な伝達関数の特別な決定も、個々の事例の実情に合わせることができる。
【符号の説明】
【0029】
10 3D−PTV法
12 第一の検出器
14 第二の検出器
16 本発明による結合工程
18 変位ベクトル場に関する結合工程
20 比較工程
22 変更工程
VR 実際の空間
t0 第一の時点
t1 第二の時点
R1j 時点tjで検出器12を用いて撮影した実際の空間VRの実際の画像
R2j 時点tjで検出器14を用いて撮影した実際の空間VRの実際の画像
VIj 時点tjを表す仮想的な空間
VV 変位ベクトル場
F1 検出器12の光学的な伝達関数
F2 検出器14の光学的な伝達関数
I1j 光学的な伝達関数F1を用いた仮想的な空間VIjの仮想的な画像
I2j 光学的な伝達関数F2を用いた仮想的な空間VIjの仮想的な画像
Δ 仮想的な空間VIJの変更分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的に検出可能な粒子を注入された流体が貫流する測定空間(VR)内のフロー状況を計測する方法であって、
a)第一の撮影時点(t0)で、空間的に互いにずらして配置された複数の画像検出器(12,14)を用いて、それと同数の、粒子の実際の三次元分布に関する第一の複数の実際の二次元画像(R10,R20)を同時に撮影する工程と、
b)少なくとも一回の第二の撮影時点(t1)で、工程a)を繰り返す工程と、
c)撮影時点(t0,t1)毎に、実際の画像に基づき、粒子の予想される三次元分布(VI0,VI1)を計算する工程と、
d)それらの予想した分布(VI0,VI1)を比較することによって、三次元の変位ベクトル場(VV)を算出する工程と、
を有する方法において、
工程c)の前に、
e)画像検出器(12;14)毎に、画像検出器(12;14)によって実際の分布(VR)をマッピングするための光学的な伝達関数(F1;F2)を決定する工程、
を実行することと、
大まかに想定した初期分布(VIstart)を予想分布(VIj)として工程c)を開始し、その後、
c1)工程e)で決定した伝達関数(F1,F2)に基づき、予想分布の仮想的な二次元画像(I1j,I2j)を計算する部分工程と、
c2)仮想的な画像(I1j,I2j)とそれぞれ対応する実際の画像(R1j,R2j)の間の違いを比較して算出する部分工程と、
c3)算出した違いに基づき、予想分布(VIj)を変更する部分工程と、
を繰り返し実行し、所定の停止判断基準に到達した場合に、この繰り返しを終了することと、
を特徴とする方法。
【請求項2】
当該の繰り返しが、算出した違いが所定の許容値を下回った場合に終了されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
部分工程c3)において、予想分布(VIj)が、粒子の数、少なくとも一つの粒子の位置、大きさ及び集中度の中の一つ以上、或いはその両方に関して変更されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
部分工程c2)において、異なる繰り返し工程での仮想的な画像(I1j;I2j)の間の違いを更に求めることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
工程b)が、一回を上回る第二の時点で実施され、部分工程c3)において、周縁部に位置しない粒子は測定空間から消えることはないとの仮定の下で、予想分布の変更に対して、それぞれ妥当性の検査を行うことを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
工程e)において、測定空間内の一つ以上の既知の物体の実際の画像を撮影して、その既知の物体と撮影した画像を比較することによって、光学的な伝達関数(F1,F2)を決定することを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
当該の既知の物体が、較正用プレート又は較正用格子であることを特徴とする請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−518177(P2012−518177A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550436(P2011−550436)
【出願日】平成22年1月11日(2010.1.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000082
【国際公開番号】WO2010/094370
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(511201071)ラヴィジオン・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (2)
【Fターム(参考)】