説明

ブラケットおよびこれを備えた給湯システム

【課題】所望の設置対象機器を浴室内の狭いスペースに対しても作業性よく適切に設置することを可能とするブラケットを提供する。
【解決手段】浴室内において起立した壁面からその前方に突出した管状または軸状の部材、およびこの部材に外嵌された部材のうち、いずれかの部材をブラケット装着対象の固定部材22として利用し、所望の設置対象機器5を浴室内に設置するのに用いられるブラケットBであって、設置対象機器5が取り付け可能とされたブラケット本体6を有し、このブラケット本体6には、固定部材22の挿入用の開口部60が設けられ、かつこの開口部60の縁部には、固定部材22が開口部60に挿入されたときに、固定部材22に当接し、ブラケット本体6を固定部材22に掛止させることを可能とする掛止用の当接部61aが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室内に所望の設置対象機器を設置するのに用いられるブラケット、およびこのブラケットを備えた給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般家庭において給湯装置を買い換えるような場合、非潜熱回収型のものから潜熱回収型のものに変更する場合が多い。潜熱回収型の給湯装置においては、潜熱回収に伴うドレイン(凝縮水)が大量に発生するために、ドレインの排水処理用の施工が必要である。ただし、たとえば集合住宅などにおいては、給湯装置が設置されるパイプスペース内にドレイン用の排水口が設けられていない場合がある。
【0003】
このような場合に対処し得る給湯システムとして、たとえば特許文献1に記載されたものがある。同文献に記載された給湯システムでは、給湯装置において発生したドレインを浴室内に導き浴室の排水パンに流し込むように構成している。このような構成を具体的に実現するための手段として、浴槽の循環アダプタに、三方弁を配管接続している。この三方弁は、給湯装置からドレインが送られてきたときには、このドレインを排水パンに流し込む一方、給湯装置から湯水が送られてきたときには、この湯水を浴槽の循環アダプタに流れるように切り替え制御される。このような構成によれば、給湯装置が設置される箇所にドレイン専用の排水口が設けられていない場合であっても、浴室の排水パンを利用してドレインの廃棄処理を適切に行なうことが可能である。
【0004】
しかしながら、給湯装置の買い換えなどに伴い、前記したような給湯システムを構築する場合、浴室内に三方弁を設置する必要がある。この三方弁は、遠隔操作が可能なたとえば電磁方式であり、ある程度のサイズおよび重量があるため、浴槽の循環アダプタに直接組み付けることは容易ではなく、また循環アダプタについてもそのようなことに適合しない場合が殆どである。そこで、三方弁を循環アダプタから離間した位置に設置し、これらを配管することが考えられるが、従来においては、前記した三方弁などの機器を浴室内において容易に設置し得るためのブラケットは提案されていないのが実情である。前記した三方弁は、たとえば浴槽と浴室の壁部との間の領域に設置されることが好ましいが、従来では、そのような狭い領域に三方弁などの機器を容易に設置することができず、その設置作業に苦慮することとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−101075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、所望の設置対象機器を浴室内の狭いスペースに対しても作業性よく適切に設置することを可能とするブラケット、およびこのブラケットを備えた給湯システムを提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明の第1の側面により提供されるブラケットは、浴室内において上下高さ方向に起
立した壁面からその前方に突出した管状または軸状の部材、およびこの部材に外嵌された部材のうち、いずれかの部材をブラケット装着対象の固定部材として利用し、所望の設置対象機器を前記浴室内に設置するのに用いられるブラケットであって、前記設置対象機器が取り付け可能とされたブラケット本体を有し、このブラケット本体には、前記固定部材の挿入用の開口部が設けられ、かつこの開口部の縁部には、前記固定部材が前記開口部に挿入されたときに、前記固定部材に当接し、前記ブラケット本体を前記固定部材に掛止させることを可能とする掛止用の当接部が設けられていることを特徴としている。
本発明においては、前記浴室の壁面から突出する管状または軸状の部材に外嵌されたナットを、ブラケット装着対象の固定部材として用いることが可能である。
【0009】
このような構成によれば、ブラケット本体の開口部に所定の固定部材を挿入させることにより、この固定部材にブラケット本体を掛止し、浴室内におけるブラケットの固定装着を容易かつ的確に行なうことができる。ブラケットの装着に際し、このブラケット自体をネジ類や工具類を用いて浴室の壁面に直接取り付ける必要はなく、たとえば浴槽エプロン内や、浴槽と浴室の壁部との隙間などの狭いスペースであっても、ブラケットを固定部材に対して容易に装着することが可能である。したがって、このブラケットを利用した設置対象機器の設置作業も容易に行なうことができる。
浴室の壁部には、浴室外部の給湯装置と浴槽とを配管接続するための浴室貫通具(浴室貫通金具)が設けられているのが通例であり、この浴室貫通具は、配管接続用の管体部に加え、この管体部に外嵌されたナットなどの付属部品も備えている。本発明では、浴室貫通具のそのような部分または部品を、ブラケットの装着対象とすることが可能である。したがって、ブラケット装着用の固定部材を浴室に新たに設けるといった手間もなく、または殆どなく、便利である。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記開口部に前記固定部材が挿入された状態において、前記固定部材を押圧可能な押圧手段をさらに備えており、この押圧手段と前記掛止用の当接部とによって前記固定部材を挟圧可能な構成とされている。
【0011】
このような構成によれば、固定部材にブラケットを装着した際のブラケットのがたつきや位置ずれを防止するのに好ましいものとなる。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記掛止用の当接部として、前記開口部の左右幅方向の両側に位置して互いに対向する一対の当接部を有し、かつこれら一対の当接部は、上部から下部に進むにしたがってこれら一対の当接部の相互間の幅が大きくなるように傾斜している。
【0013】
このような構成によれば、固定部材の上部の左右2箇所に掛止用の当接部を当接させることが可能となる。したがって、たとえば固定部材の上部の1箇所のみに当接部を当接場合と比較すると、固定部材に対してブラケット本体をより安定した状態で掛止させることができ、ブラケットのがたつきなどを防止するのにより好ましいものとなる。
【0014】
本発明において、好ましくは、前記ブラケット本体には、前記開口部の周縁から前方に向けて起立し、かつ先端側が互い接近する方向に屈曲した形態を有する一対の屈曲起立片が設けられており、これら一対の屈曲起立片の先端部が、前記一対の当接部とされている。
【0015】
このような構成によれば、掛止用の当接部と固定部材との当接箇所が、開口部の形成箇所よりも前方に位置することとなる。これは、固定部材の外面のうち、浴室の壁面寄りの位置に、ブラケットと固定部材とを接触させる際の障害となる部分(たとえば、コーキング材)が存在する場合に、この部分を回避するようにして、この部分よりも前方において
固定部材と掛止用の当接部とを適切に当接させるのに役立つ。
【0016】
本発明において、好ましくは、前記開口部は、その一部分が前記ブラケット本体の外周縁のいずれかの位置に切欠き部を形成する切欠き開口状に形成されている。
【0017】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。すなわち、ブラケット装着対象の固定部材の前方に、たとえば配管部材が延びた状態に接続されていることに起因して、ブラケットの開口部に固定部材を直接挿入させることができない場合がある。これに対し、前記構成によれば、前記配管部材を切欠き部から開口部に進入させることによって、前記配管部材とブラケットとの不当な干渉を回避し、ブラケットの開口部に固定部材を挿入させることが可能となる。その結果、前記配管部材を固定部材の前方から取り外す必要がなくなり、ブラケットの装着作業を容易とする上でより好ましいものとなる。
【0018】
本発明において、好ましくは、前記ブラケット本体は、正面視略矩形の外形形状とされ、かつ四隅部分のそれぞれにネジ孔が設けられ、前記ブラケット本体に前記設置対象機器をネジ止めする場合には、前記四隅部分のいずれの位置のネジ孔を用いるかを選択できるように構成されている。
【0019】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。すなわち、設置対象機器をブラケット本体にネジ止めする場合において、ブラケット本体の四隅部分のいずれのネジ孔を利用するかによって、設置対象機器の取り付け位置を変更することができる。設置対象機器を浴室内に設置する場合、その取り付け方によっては、設置対象機器が浴室内の配管部材やその他の部材と干渉したり、あるいは設置対象機器への配管作業が困難になるといった不具合を生じる場合があるが、前記構成によれば、そのような不具合を回避するのに好適である。なお、ブラケット本体への設置対象機器のネジ止め作業は、作業スペースの広い場所で予め行なうことにより、その作業は容易となる。
【0020】
本発明の第2の側面により提供される給湯システムは、浴室の外部に設置された給湯装置と、前記浴室の壁部に取り付けられて、前記給湯装置に一端が接続された配管と前記浴室内の配管とを接続させるのに利用され、かつ前記浴室の壁部から浴室内に突出する管体部にナットが装着された構成を有する浴室貫通具と、を備えている、給湯システムであって、前記浴室貫通具の前記ナットに、本発明の第1の側面によって提供されるブラケットが装着され、かつこのブラケットに、所望の設置対象機器が取り付けられていることを特徴としている。
好ましくは、前記給湯装置から湯水が送られてくるときには、この湯水を浴槽に向かわせる一方、前記給湯装置において発生したドレインが前記給湯装置から送られてくるときには、このドレインを浴室の排水パンに排水させるための流路切り替え機能を有するドレイン排水ユニットを、さらに備えており、このドレイン排水ユニットが、前記設置対象機器とされている。なお、排水パンに排水させるとは、排水パンに設けられた排水口にドレインを直接排出させる場合も含む。
【0021】
このような構成によれば、本発明の第1の側面によって提供されるブラケットについて述べたのと同様な効果が得られ、浴室貫通具にブラケットを装着することによって、浴室内における設置対象機器の設置作業を容易かつ適切に行なうことが可能である。
【0022】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る給湯システムの一例を模式的に示す概略説明図である。
【図2】図1に示す給湯システムにおいてドレイン排出動作が実行される場合を模式的に示す要部概略説明図である。
【図3】図1に示す給湯システムおいて用いられるドレイン排水ユニット、ブラケット、およびその取り付け対象部位を示す斜視図である。
【図4】(a)は、図3に示すブラケットの正面図であり、(b)は、(a)のIVa−IVa断面図であり、(c)は、(a)のIVb−IVb断面図であ。
【図5】図3に示すドレイン排水ユニットの設置状態の一例を示す斜視図である。
【図6】(a)は、図5の要部正面図であり、(b)は、(a)のVIb−VIb断面図である。
【図7】図3に示すブラケットに対するドレイン排水ユニットの取り付け状態の他の例を示す概略正面図である。
【図8】図3に示すブラケットに対するドレイン排水ユニットの取り付け状態の他の例を示す斜視図である。
【図9】本発明に係るブラケットの他の例を示す要部正面図である。
【図10】本発明に係るブラケットを配管部材に適用する場合の一例を示す要部正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0025】
図1に示す給湯システムSは、屋外に設置された給湯装置1、この給湯装置1と浴槽4の循環アダプタ40とを繋ぐ湯水流路Ra,Rb、ドレイン排水ユニット5、およびこのドレイン排水ユニット5を浴室内に設置するためのブラケットBを備えている。
ドレイン排水ユニット5は、本発明でいう設置対象機器の一例に相当し、後述する三方弁50を備えている。図1および図2では、理解の容易のため、ドレイン排水ユニット5がブラケットBに取り付けられていない状態に示されているが、このドレイン排水ユニット5は、後述するように、ブラケットBに取り付けられ、かつこのブラケットBは、浴室貫通具2(厳密には、浴室貫通具2のナット22)に装着される。
【0026】
給湯装置1は、一般給湯機能および風呂給湯機能を有する潜熱回収型のガス給湯装置として構成されている。この給湯装置1は、その基本的な構成自体は従来既知のものと同様であり、ガスバーナ10a,10b、ファン11、ガスバーナ10a,10bによって発生された燃焼ガスから顕熱および潜熱を回収する熱交換器12a,12b、潜熱回収に伴って発生し、かつ流路37を介して送られてくる強酸性のドレインを中和する中和器13、および中和処理を終えたドレインを貯留するためのドレインタンク14を備えている。この給湯装置1の一般給湯動作では、入水口30aに供給された水が配管部30を介して熱交換器12aに供給されて加熱され、この加熱により生成された湯が配管部31,32を介してカラン33などに供給される。
【0027】
給湯装置1と浴槽4の循環アダプタ40とを繋ぐ湯水流路Ra,Rbは、次のような構成である。すなわち、この湯水流路Ra,Rbにおいては、一端が給湯装置1に接続されている外部配管35a,35bの他端が、浴室貫通具2が具備する一対の管体部20を介して、浴室内の配管部材36a,36bと接続されている。なお、図1において、符号43は、家屋の外壁を示し、符号42は、浴室の壁部を示す。配管部材36bの一端は、循環アダプタ40の吸込口40bに連通する接続口に接続されている。配管部材36aの一端は、ドレイン排水ユニット5に接続されており、かつこのドレイン排水ユニット5を介して循環アダプタ40の吐出口40aに連通する接続口に間接的に繋がっている。ドレイン排水ユニット5は、図3に示すように、ポートP1〜P3を有する三方弁50が、ケース51内に収容されて保護された構造である。ケース51の外周縁には、複数のネジ体挿通の孔58が設けられている。三方弁50は、電磁弁であり、ケース51の外部には、電
力供給用および信号用の電気配線52が引き出されている。
【0028】
図1においては、風呂追い焚き動作時の湯水流通経路が太線で示されている。この風呂追い焚き動作時においては、給湯装置1の内部配管38bに設けられた循環ポンプPが駆動することにより、浴槽4の湯水が湯水流路Rbおよび内部配管38bに汲み上げられてから熱交換器12bに供給される。この熱交換器12bによって加熱された湯水は、内部配管38aおよび湯水流路Raを介して浴槽4に戻される。その際、ドレイン排水ユニット5は、ポートP1,P2間が連通していることにより、ドレイン排水ユニット5から循環アダプタ40への湯水流通が可能である。ポートP3は閉状態にある。また、ドレイン貯留用のタンク14と内部配管38bとの接続部に位置する三方弁V2については、タンク14側が閉状態にあり、タンク14から内部配管38bへのドレインの流れ込みが阻止されている。なお、浴槽4への湯張り動作は、給湯装置1に設けられている開閉弁V1を開状態として、配管部31,34から内部配管38bに湯水を供給し、流路Ra,Rbに流れさせることにより実行することができる。
【0029】
図2においては、ドレイン排出動作時のドレイン流通経路が太線で示されている。この動作時においては、三方弁V2は、ドレイン用のタンク14側が開状態にあり、循環ポンプPが駆動すると、タンク14内のドレインは、内部配管38b,38aおよび湯水流路Raを通過してドレイン排水ユニット5に送られる。ドレイン排水ユニット5は、ポートP1,P2間が不通状態にあり、ポートP3が開状態にある。このため、前記ドレインは、ポートP3から浴室の排水パン41に排出される。ドレイン排水ユニット5は、実際には、ブラケットBによって支持されて浴室貫通具2の上方に設置されているために、ポートP3には、図示されていないホースが接続され、かつこのホースを介して排水パン41へのドレイン排出がなされる。この給湯システムSでは、前記したドレイン排出動作を完了した後には、先のドレイン流通経路に湯水流通を行なわせて、その経路を洗浄する動作も実行可能である。ただし、その詳細は省略する。
【0030】
図3に示すように、浴室貫通具2は、一対の管体部20が固定プレート21に貫通して接合された構成を有している。これらの管体部20は、水平方向に間隔を隔てて並んでおり(ただし、図1および図2では便宜上、上下に並んだ状態に示している)、浴室の壁部42を貫通した状態に取り付けられる。各管体部20の先端部は、浴室の壁部42から浴室内に突出しているが、この部分には、ナット22が螺合装着されている。このナット22は、本発明でいう「ブラケット装着対象の固定部材」の一例に相当し、たとえば六角ナットである。このナット22は、本来的には、浴室貫通具2を壁部42に固定させるためのものである。ナット22を締め付けると、このナット22と固定プレート21とによって浴室の壁部42が挟み付けられ、浴室貫通具2の固定が図られる。
【0031】
図3および図4に示すように、ブラケットBは、外形が正面視略矩形状に形成されたブラケット本体6と、押圧用片7とを具備している。押圧用片7は、本発明でいう押圧手段の一例に相当する。
【0032】
ブラケット本体6は、ステンレスなどの金属製であり、1枚の薄手の金属板にプレス加工などを施すことによって全体が一体に形成されている。ブラケット本体6は、左右幅方向の略中央部に設けられた開口部60、掛止用の当接部61aを形成している左右一対の屈曲起立片61、および複数のネジ孔62a〜62dを具備している。開口部60は、浴室貫通具2のナット22を挿入させるための部分であり、この開口部60の中央部分は、ナット22の外形に対応する略六角形またはこれに類する形態とされている。ただし、この開口部60は、ブラケット本体6の上縁部に切欠き部60aを形成する上部切欠き状とされている。切欠き部60aは、後述するように、ナット22へのブラケットBの装着時において、配管部材36bとの干渉を回避するのに役立つ。
【0033】
一対の屈曲起立片61は、開口部60の周縁のうち、左右幅方向に離間した2箇所の位置からブラケット本体6の前方に向けて起立し、かつこの起立部分の先端側が互い接近する方向に屈曲した平面断面略L字状である。各屈曲起立片61のうち、内側(開口部60の幅方向中心側)を向いた先端部が、ナット22との当接が図られる掛止用の当接部61aであり、開口部60を挟んで左右一対に設けられている。これら一対の当接部61aは、正面視略ハ字状であり、上部から下部に進むにしたがってこれらの間隔が徐々に広がるように傾斜している。当接部61aは、好ましくは、波形状に形成され、ナット22に強く当接させた際にはナット22の外面に食い込ませることが可能である。
【0034】
押圧用片7は、開口部60に挿入されたナット22を上向きに押圧するための部分であり、金属製の小片状である。この押圧用片7は、開口部60の下縁部に取り付けられたネジ体(ビス)70の軸部に支持されており、このネジ体70の締め付け、およびその解除操作に伴って回転し、開口部60内への突出寸法が変化するようになっている。具体的には、この押圧用片7は、ネジ体70を締め付けていない場合には、図3および図4に示すように、開口部60内への突出寸法が小さいものの、ネジ体70を締め付けると、図6に示すように回転し、突出寸法が大きくなる。このことによって、ナット22の下面部に押圧用片7を当接させて、ナット22を上向きに押圧することが可能である。なお、ネジ体70や押圧用片7が取り付けられている開口部60の下縁部分は、ブラケット本体6の前方に張り出しており、押圧用片7がブラケット本体6の背後に不当に突出した状態とならないように構成されている。これは、ブラケット本体6を浴室の壁部42に接触または接近させた際に、ネジ体70の軸部や押圧用片7が浴室の壁部42に接触することを防止する上で好ましい。
【0035】
複数のネジ孔62a〜62dは、ドレイン排水ユニット5をネジ止め(ビス止め)するためのものであり、ブラケット本体6の四隅部分のそれぞれに設けられている。これは、図7を参照して後述するように、ドレイン排水ユニット5の取り付け位置を変更可能とする利点をもたらす。なお、ブラケット本体6の四隅部分は、ブラケット本体6の前方に向けて部分的に張り出した形態とされ、ネジ孔62a〜62dにネジ体を螺合させた際に、このネジ体がブラケット本体6の背面側に大きく突出しないようになっている。ブラケット本体6には、比較的小径の複数の孔部69も設けられている。これら複数の孔部69は、ブラケットBをナット22に掛止させるのではなく、たとえば浴室の壁部42に直接ネジ止めする場合に、ネジ体挿通用の孔部として利用可能である。
【0036】
次に、前記した給湯システムSの作用について説明する。
【0037】
ドレイン排水ユニット5を浴室内に設置するには、図5および図6に示すように、ブラケットBを浴室貫通具2のナット22に装着する。ブラケットBの装着対象となるナット22は、浴室貫通具2の一対のナット22のうち、いずれであってもよい。ナット22にブラケットBを装着するには、開口部60にナット22を挿入させてから、一対の当接部61aをナット22の上面部(ナット22の上面側に位置する2つの面)に当接させればよい。このことにより、ブラケットBをナット22から脱落しないようにナット22に掛止させることができる。一対の掛止用の当接部61aは、既述したように、正面視略ハ字状に傾斜しており、ナット22の上面側に形成されている2つの面に対応しているために、一対の当接部61aをそれら2つの面に沿わせるようにして安定的に当接させることができる。また、ブラケットBを下方に押圧した場合には、一対の当接部61aの上部寄りの幅狭となっている部分にナット22が挟み込まれる作用を生じさせることもできる。したがって、ナット22への当接部61aの当接状態をより安定させることが可能となる。
【0038】
一方、押圧用片7については、ナット22の下面部に当接させ、このナット22が上向
きに押圧されるように設定する。このような設定を行なえば、ナット22は、上下高さ方向において一対の当接部61aと押圧用片7とによって挟圧されることとなり、ブラケットBがナット22に対して一層確実かつ強固に装着される。
【0039】
図6(b)に示すように、ナット22の外周には、コーキング材42aが設けられている場合が多い。これに対し、当接部61aは、ブラケット本体6に屈曲起立片61を設けることにより形成されており、ブラケット本体6を浴室の壁部42に接触または接近させた状態であっても、当接部61aについては、浴室の壁部42よりも前方に配置させることができる。その結果、ナット22の外面のうち、コーキング材42aが設けられていない箇所に対し、当接部61aを適切に当接させることが可能である。
【0040】
ブラケットBの装着に際しては、浴室貫通具2を有効に利用しており、ブラケットBを浴室の壁部42にネジ止めするような必要はない。既述したように、ブラケットBをナット22に装着する作業は、簡単に行なうことが可能である。ブラケットBの装着箇所は、浴槽4と浴室の壁部42との間の狭いスペースであるが、このような狭いスペースであっても、ブラケットBを適切に取り付けることが可能である。
【0041】
ブラケットBをナット22に装着する場合、管体部20には、たとえば配管部材36bが既に接続されている場合がある。この場合、開口部60にナット22を挿入させるには、まず配管部材36bを切欠き部60aから開口部60内に進入させる。このことにより、配管部材36bとブラケットBとの干渉を回避することができ、その後は開口部60にナット22を適切に挿入させることができる。このような手順によれば、配管部材36bを管体部20から取り外す必要が無くなり、ブラケットBの装着作業がさらに簡単となる。切欠き部60aの幅は、この切欠き部60aの両側縁部を前後に位置ずれさせるようにブラケット本体6を変形させることによって適宜拡大させることが可能である。したがって、ブラケット本体6を変形させていない通常状態における切欠き部60aの幅が配管部材36bの外径よりも小さくされている場合であっても、この切欠き部60aに配管部材36bを進入させることが可能である。
【0042】
図5に示すように、ブラケットBには、ネジ体59を利用してドレイン排水ユニット5が取り付けられる。ブラケットBに対するドレイン排水ユニット5の取り付けは、ブラケットBをナット22に装着する前に行なうことが可能であるために、ブラケットBに対するドレイン排水ユニット5のネジ止め作業に苦慮するといった不具合はない。
【0043】
図5においては、ブラケットBの下部に位置する2つのネジ孔62c,62dがネジ止めに利用され、ドレイン排水ユニット5がブラケットBの下側に配置された例が示されている。ただし、これとは異なる取り付け配置とすることが可能である。すなわち、図7に示すように、ドレイン排水ユニット5のネジ体挿通用の孔58は、ドレイン排水ユニット5の上部、下部、および左右両側部の各所に一対ずつ設けられている。同図の実線に示すように、ドレイン排水ユニット5をブラケットBの左側に配置した場合には、ブラケットBの左側のネジ孔62a,62cを利用してドレイン排水ユニット5をネジ止めすることが可能である。同様に、同図の仮想線で示すように、ドレイン排水ユニット5を上側に配置する場合にはネジ孔62a,62bを利用し、右側に配置する場合にはネジ孔62b,62dを利用して、ドレイン排水ユニット5を好適に取り付けることができる。ドレイン排水ユニット5を浴室内に設置する場合、このドレイン排水ユニット5と浴室内の他の部材や機器との干渉を回避したり、あるいはドレイン排水ユニット5への配管接続作業の容易化を図ることを目的とし、ドレイン排水ユニット5の設置箇所を選択し、または変更したい場合があるが、本実施形態では、そのような要請にも的確に応えることが可能である。
【0044】
ドレイン排水ユニット5は、図8に示すような態様でブラケットBに取り付けることも可能である。同図では、円筒状のステー57を介してドレイン排水ユニット5をブラケットBにネジ止めしており、ドレイン排水ユニット5は、図5や図7に記載された先の取り付け態様とは左右反転している。先の取り付け態様では、ポートP1〜P3がドレイン排水ユニット5の左寄りに位置し、ポートP1が左向きであるのに対し、図8では、ポートP1〜P3が右寄りに位置し、ポートP1が右向きである。施工作業者は、ポートP1〜P3への配管接続作業性などを考慮し、先の取り付け態様と図8に示す取り付け態様とのいずれかを適宜選択できることとなるために、ドレイン排水ユニット5の設置作業性を良好とする上でより好ましいものとなる。
【0045】
図9および図10は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付している。
【0046】
図9に示す実施形態においては、開口部60の下縁部に、前方に突出した突出片72が設けられ、この突出片72にネジ体7Aが上下に貫通した状態で螺合装着されている。このネジ体7Aは、いわゆる止ネジとして機能するものであり、このネジ体7Aを回転操作して上昇させると、その先端部がナット22の下面部に当接し、ナット22を上方に押圧することとなる。このネジ体7Aは、本発明でいう押圧手段の具体例に相当する。固定部材を押圧するための手段としては、このようなネジ体を用いることも可能である。また、図示説明は省略するが、開口部の下部側にバネを設けておき、開口部内に固定部材が挿入されたときには、前記バネが固定部材によって下向きに圧縮され、かつその弾発力によって固定部材が上向きに押圧されるといった構成を、本発明の押圧手段として採用することも可能である。なお、本発明でいう押圧手段の押圧方向は上向き以外の構成とすることもできる。
【0047】
図10に示す実施形態においては、浴室貫通具2の管体部20が開口部60に挿入されて、ブラケットBがこの管体部20に掛止されている。管体部20は、円筒状であるものの、掛止用の一対の当接部61aについては、管体部20の上面側に対して適切に当接させることができ、この当接作用によって、ブラケットBを管体部20に対して適切に掛止させることが可能である。
本実施形態から理解されるように、本発明に係るブラケット装着対象の固定部材としては、浴室貫通具のナットに代えて、浴室貫通具の管体部を利用することが可能である。さらに、本発明では、浴室貫通具とは別の部材をブラケット装着対象とすることも可能である。たとえば浴室貫通具とは別の配管部材、電気配線挿通用の管体、浴室の壁部に取り付けられているボルトやその他の軸体をブラケット装着対象とすることが可能である。
【0048】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係るブラケット、およびこれを備えた給湯システムの各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0049】
本発明でいう掛止用の当接部は、ブラケット本体に屈曲起立片を形成することなく設けることも可能である。したがって、ブラケット本体に設けられた固定部材の挿入用の開口部の縁部の一部分を、そのまま掛止用の当接部とすることが可能である。また、掛止用の当接部については、開口部の左右幅方向の両側に左右一対で設けられた構成に代えて、1箇所のみ設けられた構成とすることもできる。たとえば、固定部材を挿入させるための開口部を非切欠き状に形成した場合において、円筒状の配管部材を前記開口部に挿入させたときには、この開口部の上縁部の1箇所のみが、配管部材の上面部に当接することとなり、この部分が掛止用の当接部に相当する。本発明においては、このように掛止用の当接部が1箇所のみとされた構成とすることも可能である。
【0050】
ブラケット本体は、設置対象機器を取り付け可能であればよく、設置対象機器がブラケット本体に直接取り付けられている場合に限らず、たとえば図8に示した実施形態からも理解されるように、ステーやその他の部材を介して間接的に取り付けられていてもよい。設置対象機器の取り付け手段は、ネジ止め(ビス止め)に限らず、ワイヤやベルトを利用した拘束など、種々の手段を適用することが可能である。
【0051】
設置対象機器としては、ドレイン排水ユニット以外の機器を適用することができる。たとえば、浴槽の自動洗浄装置の駆動機器ユニットや、浴槽の栓を遠隔操作によって開閉させるための駆動機器などを設置対象機器とすることが可能であり、その種類は問わない。なお、本発明でいうドレイン排水ユニットは、必ずしも三方弁がケースに収容されたものに限らない。たとえば、三方弁を容器に収容させることなく、三方弁単独部品をドレイン排水ユニットとすることもできる。本発明は、浴室内の狭い領域に設置対象機器を取り付けるのに好適であるが、その設置箇所は狭い領域に限らず、洗い場などの広い領域においても使用することができる。本発明に係る給湯システムでは、給湯装置の具体的な種類や構成は限定されず、種々のタイプの給湯装置を適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
S 給湯システム
B ブラケット
1 給湯装置
2 浴室貫通具
4 浴槽
5 ドレイン排水ユニット(設置対象機器)
6 ブラケット本体
7 押圧用片(押圧手段)
7A ネジ体(押圧手段)
22 浴室貫通具のナット(固定部材)
40 循環アダプタ
42 浴室の壁部
60 開口部
60a 切欠き部
61 屈曲起立片
61a 掛止用の当接部
62a〜62d ネジ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室内において上下高さ方向に起立した壁面からその前方に突出した管状または軸状の部材、およびこの部材に外嵌された部材のうち、いずれかの部材をブラケット装着対象の固定部材として利用し、所望の設置対象機器を前記浴室内に設置するのに用いられるブラケットであって、
前記設置対象機器が取り付け可能とされたブラケット本体を有し、
このブラケット本体には、前記固定部材の挿入用の開口部が設けられ、かつこの開口部の縁部には、前記固定部材が前記開口部に挿入されたときに、前記固定部材に当接し、前記ブラケット本体を前記固定部材に掛止させることを可能とする掛止用の当接部が設けられていることを特徴とする、ブラケット。
【請求項2】
請求項1に記載のブラケットであって、
前記固定部材は、前記浴室の壁面から突出する管状または軸状の部材に外嵌されたナットである、ブラケット。
【請求項3】
請求項1または2に記載のブラケットであって、
前記開口部に前記固定部材が挿入された状態において、前記固定部材を押圧可能な押圧手段をさらに備えており、
この押圧手段と前記掛止用の当接部とによって前記固定部材を挟圧可能な構成とされている、ブラケット。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のブラケットであって、
前記掛止用の当接部として、前記開口部の左右幅方向の両側に位置して互いに対向する一対の当接部を有し、かつこれら一対の当接部は、上部から下部に進むにしたがってこれら一対の当接部の相互間の幅が大きくなるように傾斜している、ブラケット。
【請求項5】
請求項4に記載のブラケットであって、
前記ブラケット本体には、前記開口部の周縁から前方に向けて起立し、かつ先端側が互い接近する方向に屈曲した形態を有する一対の屈曲起立片が設けられており、
これら一対の屈曲起立片の先端部が、前記一対の当接部とされている、ブラケット。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のブラケットであって、
前記開口部は、その一部分が前記ブラケット本体の外周縁のいずれかの位置に切欠き部を形成する切欠き開口状に形成されている、ブラケット。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のブラケットであって、
前記ブラケット本体は、正面視略矩形の外形形状とされ、かつ四隅部分のそれぞれにネジ孔が設けられ、前記ブラケット本体に前記設置対象機器をネジ止めする場合には、前記四隅部分のいずれの位置のネジ孔を用いるかを選択できるように構成されている、ブラケット。
【請求項8】
浴室の外部に設置された給湯装置と、
前記浴室の壁部に取り付けられて、前記給湯装置に一端が接続された配管と前記浴室内の配管とを接続させるのに利用され、かつ前記浴室の壁部から浴室内に突出する管体部にナットが装着された構成を有する浴室貫通具と、
を備えている、給湯システムであって、
前記浴室貫通具の前記ナットに、請求項1ないし7のいずれかに記載のブラケットが装着され、かつこのブラケットに、所望の設置対象機器が取り付けられていることを特徴とする、給湯システム。
【請求項9】
請求項8に記載の給湯システムであって、
前記給湯装置から湯水が送られてくるときには、この湯水を浴槽に向かわせる一方、前記給湯装置において発生したドレインが前記給湯装置から送られてくるときには、このドレインを浴室の排水パンに排水させるための流路切り替え機能を有するドレイン排水ユニットを、さらに備えており、
このドレイン排水ユニットが、前記設置対象機器とされている、給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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