説明

ブラシ清掃作業車

【課題】 作業効率の向上を図ることができるとともに、回送時等に車幅以上の道路であれば支障なく走行できるブラシ清掃作業車を提供する。
【解決手段】 ブラシ清掃作業車1を、進行方向の前部に作業用の前部ブラシ装置7を設けるとともに、進行方向に向かって車体の少なくとも一方の側面に前部ブラシ装置7と略同様の構造の側部ブラシ装置10を設けて構成し、側部ブラシ装置10を、その長手方向と車体2の長手方向とをほぼ平行として、且つ前部ブラシ装置7の、進行方向と直交する直線上での長手方向両端部間を最大車幅Wとする当該最大車幅W内に納まる格納姿勢Aと、最大車幅W外に張り出して作業を行う作業姿勢Bとに切り換え可能な構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシ清掃作業車に係り、一般の道路や、飛行場の滑走路等の広い面積の路面の清掃や、除雪等の作業を行うブラシ清掃作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
図8に示すように、一般に路面の清掃を行う清掃作業車100は、回転駆動するロール状のブラシロール133を備えたブラシ装置110を、走行車体102の前部に装着して構成されている。
このような清掃作業車1は、ブラシロール133を路面に接触させた状態で回転させながら走行させて路面の清掃を行っている。
【0003】
ブラシ装置110は、ブラシ体131と、このブラシ体131を支持する支持体135よりなり、支持体135には、路面C上に接地する支持タイヤ136が設けられている。また、ブラシ体131にブラシロール133が支持され、このブラシロール133は油圧モータ137により回転駆動されるようになっている。さらに、ブラシ体131は旋回軸(垂直方向の軸)123を中心に水平面内で左右に旋回可能となっている。
【0004】
以上の構成のブラシ清掃作業車1により、清掃作業時(除雪を含む)には、ブラシ装置110のブラシ体131を車体102の進行方向に対して斜めに傾け、ブラシロール133を回転することによりゴミ(雪)等を斜め前方へ掃き出す。これにより、車体102の前のゴミ(雪)等は側方へ掃き寄せられる。また、車体102の回送時には、ブラシ体131を路面より持ち上げて走行する。
【0005】
ところで、例えば飛行場の滑走路等、広い面積での清掃作業を行うには、ブラシ装置のブラシ体を可能な限り長くすると、一度の走行で清掃幅を広くとることができて有効である。
ところが、ブラシ体を長くすると、ブラシ装置の自重が重くなる。その結果、回送時にブラシ装置を地上から上げるとき、トラックシャーシの前軸加重が大きくなる等、設計上の制限、問題があり、ブラシ体を長くすることには自ずと限度がある。
また、ブラシ体を長くすると、回送時の車両の全長、全幅が大きくなり、車庫等広い場所が必要となる、という問題が生じる。さらに、路面は通常緩やかに中央部が凸状となっているので、ブラシ体が長くなると、接地が不均一となる、という問題も生じる。
【0006】
そこで、前記一般的な清掃作業車の各問題点を解決するものとして、除雪車両の下面に設けた支持フレームを介して、前部スノーブラシ装置および後部スノーブラシ装置を連結し、作業幅の拡大を図ったスノーブラシ装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
図7に示すように、この特許文献1に開示されたスノーブラシ装置210では、車体の前部にスノープラウ207を備える他、前部スノーブラシ装置211および後部スノーブラシ装置212を備え、これらのブラシ装置211,212は、それぞれ油圧シリンダ226,227で、除雪車両200の外側へ移動する作業姿勢に、あるいは除雪車両200の内側へ移動する格納姿勢への変更が可能となっている。
これにより、除雪(清掃)作業においては、幅広の除雪(清掃)が可能となるとともに、回送時には、車幅を小さくして、トンネル等の通過に支障をきたすことがない。
【0007】
【特許文献1】特開平9−316842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記公報のスノーブラシ装置では、前部ブラシ装置および後部ブラシ装置を、除雪車両の下面の中央付近に設けた支持フレームを介して格納するため、作業時の車両の側方への張り出し幅が小さくなり、除雪(清掃)等の作業幅を大きくできず、作業効率が悪いという問題がある。
また、格納姿勢において、前部ブラシ装置、および後部ブラシ装置のブラシロールの長手方向が、ほぼ車幅方向あるいは斜め方向のため、車幅内に納めきれない場合がある。そのため、回送時等に道路脇の障害物と接触する恐れが大きい、という問題もある。
さらに、前部ブラシ装置、および後部ブラシ装置が車体の下面に格納されるため、路面とのクリアランスが小さくなり、回送時に路面上の障害物と接触する恐れが大きい、という問題もある。
【0009】
このため、本発明では、上記従来例の不都合を改善し、作業効率の向上を図ることができるとともに、回送時等に車幅以上の道路であれば支障なく走行できるブラシ清掃作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明であるブラシ清掃作業車を、進行方向の前部に作業用の前部ブラシ装置を備えたブラシ清掃作業車において、進行方向に向且つ車体の少なくとも一方の側面に側部ブラシ装置を装備し、この側部ブラシ装置を、格納時には車体にほぼ平行で且つ前記前部ブラシ装置を含む最大車幅内に配置すると共に、作業時には前記前部ブラシ装置とほぼ同一の設置状態で且つ前記最大車幅外に張り出した作業姿勢に切り換え可能とした。
【0011】
以上の本発明において、作業は、除雪作業および清掃作業を含む概念である。
また、最大車幅とは、進行時の所定角度に設定された前部ブラシ装置の、進行方向と直交する直線上での長手方向両端部間をいう。
【0012】
このような構成にすることにより、車体の少なくとも一方の側面に設けた側部ブラシ装置が、前部ブラシ装置を含む最大車幅外へ張り出した作業姿勢にすることができるので、その側部ブラシ装置の張り出し分だけ作業幅が拡大する。その結果、前部ブラシ装置と共に作業することで、作業幅を拡大することができ、作業効率の効率を図ることができる。
【0013】
このとき、前記側部ブラシ装置を、前記車体のフレーム部材にブラシ取り付け手段を介して保持すると共に、このブラシ取り付け手段を、前記側部ブラシ装置を上下動自在に且つ水平面内で回動自在に保持するアーム機構と、このアーム機構を駆動させる油圧機構とを備えて構成したことが好ましい。
【0014】
このような構成にすることにより、アーム機構により側部ブラシ装置を上昇させることができるので、上昇させて格納姿勢とすれば、路面上の障害物との干渉の恐れが少なくなり、悪路の走行にも支障がない。また、側部ブラシ装置を車体側方に、最大車幅内に格納できるため、回送時等に車幅以上の道路であれば支障なく走行できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上のように構成され機能するので、作業時に、車体の側面に外方へ張り出した側部ブラシ装置と、前部ブラシ装置とで作業できる。そのため、作業幅をより大きくでき、清掃等の作業効率が上がる。
また、ブラシ装置の格納時は最大車幅内に格納することが可能となるので、回送時等に車体が通る道路であれば支障なく走行できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1〜5には、本発明のブラシ清掃作業車(以下、単に作業車という)1が示されている。図1は作業車1の全体平面図、図2は作業車1の全体側面、図3は図1のIII−III線に沿った図、図4は図1のIII−III線に沿った図で側部ブラシ装置を上げた格納状態、図5は図1のIII−III線に沿った図で側部ブラシ装置の作業姿勢図である。
【0017】
図1,2に示すように、作業車1は、車体2を備え、この車体2は、進行方向に長く延びたフレーム部材である車体フレーム3を有している。
車体フレーム3の前部には運転室4が設けられ、車体フレーム3の下部には、それぞれ複数の前部走行車輪5、後部走行車輪6が設けられている。
【0018】
前記運転室4の前方には、前記車体フレーム3の最前部に取り付けられて前部ブラシ装置7が設けられている。また、車体2の車体フレーム3の両側面には、例えば、前部ブラシ装置7とほぼ同様の構造の側部ブラシ装置10が設けられている。
なお、側部ブラシ装置10は、前部ブラシ装置7とほぼ同様の構造でなくてもよく、作業幅をより大きくでき、清掃等の作業効率が上がる構成で、公知の任意のブラシ装置を用いてもよい。
【0019】
前記前部ブラシ装置7は、車体2のキャブ前部に、上下方向移動可能、且つ水平面内で回動可能に設けられている。そして、作業時には、進行方向に対して所定の角度で斜めに傾けられた状態とされ、作業車が進行すると斜め前方に、ゴミや雪を掃き出しながら路面を清掃することができる構成となっている。また、回送時には、前部ブラシ装置7を上昇させ、地上から離して走行する構成となっている。
【0020】
前記側部ブラシ装置10は、図1に示すように、車体2の一方側側面(進行方向に向且つて左側)に取り付けられた第1ブラシ装置11と、車体2の他方側側面(右側)に取り付けられた第2ブラシ装置12とで構成されている。この第1ブラシ装置11、第2ブラシ装置12は、前部ブラシ装置7とほぼ同様の構造となっている。
【0021】
そして、第1ブラシ装置11と、第2ブラシ装置12とは、最大車幅W内にほぼ納まる格納姿勢(図1において進行方向右側の状態)と、車幅外に張り出して作業を行う作業姿勢(図1において進行方向左側の状態)との、2姿勢に切り換え可能に構成されている。
ここで、最大車幅Wとは、前述のように、進行時の所定角度に設定された前部ブラシ装置7の、進行方向と直交する直線上での長手方向両端部間をいう。
【0022】
また、第1ブラシ装置11および第2ブラシ装置12は、ほぼ左右対称に配置されているが、構造は同一であるため、以下には、代表して第1ブラシ装置11で説明を行う。
【0023】
(第1ブラシ装置11の取り付け)
第1ブラシ装置11は、図3,4に詳細を示すように、ブラシ取り付け手段15を介して前記車体2の車体フレーム3に取り付けられている。
ブラシ取り付け手段15は、一端が上記車体フレーム3に連結されると共に、他端が第1ブラシ装置11に連結されるアーム機構24と、このアーム機構24を駆動させる油圧機構25とを備えて構成されている。
そして、第1ブラシ装置11は、ブラシ取り付け手段15によって、車体2に対して上下動自在となっており、また、本体部31と連結体20との間に架けわたされた2本の第3油圧シリンダ28,28によって水平面内で回動自在とされている。
【0024】
アーム機構24は、アーム体16と、一端にこのアーム体16を連結するとともに、他端に第1ブラシ装置11を連結した連結体20とを備えて構成されている。
アーム体16は、図3に示すように、車体フレーム3の側面に固着されたブラケット8に取り付けられている。
すなわち、アーム体16は、上下に配置された第1リンク17、および第2リンク18からなる平行四辺形リンクで構成され、第1リンク17、第2リンク18の基端が前記ブラケット8に、先端が前記連結体20にそれぞれ取り付けられている。これら第1リンク17、第2リンク18は平面視二股状に構成されている
【0025】
第1リンク17の上面には、ブラケット8側に延びたシリンダ用ブラケット21が固着されている。このシリンダ用ブラケット21には、アーム体16の上方位置において、前記油圧機構25を構成する第1油圧シリンダ26の一端が枢着されている。第1油圧シリンダ26の他端は台座22に枢着されており、この台座22は車体フレーム3の上面に固着されている。
そして、この第1油圧シリンダ26が伸縮することにより、アーム体16、連結体20等の全体が上下に回動自在となる。
【0026】
また、アーム体16等を上方へ回動させるために第3リンク19、および第2油圧シリンダ27が設けられている。すなわち、第3リンク19は、その基端が第1リンク17の下部に枢着され、先端が第2油圧シリンダ27の一端に枢着されている。そして、第2油圧シリンダ27の他端は、前記ブラケット8に枢着されている。
なお、この第2油圧シリンダ27は、現場内での移動等、第1ブラシ装置11を、回送時のように格納姿勢Aに設定するまでもないときに用いられる。
【0027】
第2油圧シリンダ27の駆動により、第3リンク19は第1リンク17に対して上下方向の回動自在であり、第2油圧シリンダ27を伸張させることにより、第3リンク19が第1リンク17の下面に当接した状態から、さらに伸張すると、第3リンク19を介してアーム体16の全体が上方に回動することになる。
【0028】
連結体20は、略角ブロック形状に形成されるとともに、アーム体16と前記第1ブラシ装置11との間に配置され、両者16、11と連結されている。
【0029】
第1ブラシ装置11は、本体部31と、この本体部31を支持する脚部32、および本体部31に支持され、路面C清掃、または除雪するブラシロール33を備えて構成されている。
【0030】
本体部31は、例えば中空の角状部材で形成され、ブラシロール33の長さより長くなっており、本体部31の長さ方向両端側には脚34が支持部材35を介して設けられ、脚34には、タイヤ36が取り付けられている。
そして、ここにおいて、前記脚34、支持部材35、およびタイヤ36を含み前記脚部32が構成されている。
【0031】
また、本体部31の長さ方向両端は下方に折り曲げられた形状の垂下部31Aとなっている。
前記ブラシロール33は垂下部31A間に支持されるとともに、その長手方向の中央部が垂直軸23を介して前記連結体20に取り付けられている。また、垂下部31Aの下端には油圧モータ37が取り付けられ、この油圧モータ37の駆動によりブラシロール33が回転自在となっている。
【0032】
図1にも示されるように、第1ブラシ装置11の本体部31と連結体20との間には、2本の第3油圧シリンダ28,28が架けわたされている。
すなわち、2本の第3油圧シリンダ28,28は、それぞれの一端が本体部31に枢着され、それぞれの他端が連結体20の側面対称位置に枢着されている。そして、これら2本の第3油圧シリンダ28,28の伸縮により、本体部31およびブラシロール33が垂直軸23を中心に回動することになる。
【0033】
次に、図6に基づいて、第1ブラシ装置11を駆動する第1、第2油圧シリンダ26,27の油圧回路を説明する。
【0034】
第1、第2油圧シリンダ26,27に圧油を供給する第1油圧ポンプ40は、管路41を介して上記油圧シリンダ26,27に圧油を供給する。
管路41の途中には、第1、第2切換弁42,43が配置されている。第1切換弁42は2位置切換弁であり、第2切換弁43は3位置切換弁である。
そして、第1切換弁42を、ソレノイドの励磁により左の位置42Aに切り換えたとき、管路57,58を介してタンク44へ連通し、また、第1油圧ポンプ40からの圧油もタンク44へ連通する。
【0035】
第1切換弁42をソレノイドの励磁により右の位置42Bに切り換えたとき、第1油圧ポンプ40からの圧油を第1油圧シリンダ26のロッド側室26Aに第1パイロットチェック弁45を介して供給する。このとき、タンク44へ連通する管路58とは非連通状態となる。
【0036】
第1油圧シリンダ26のボトム側室26Bは、管路59,58を介して、常時タンク44と連通している。また、管路61の途中には、第3切換弁46が配置されている。
この第3切換弁46は2位置切換弁であり、ソレノイドを励磁して左の位置46Aに切り換えたときは、第1パイロットチェック弁45のパイロット管路60を、上記ボトム側室26Bと連通している管路59を介してタンク44へ連通させている。
【0037】
第3切換弁46を右の位置46Bに切り換えると、第2油圧ポンプ47からの圧油により管路61を介して第1パイロットチェック弁45のチェック弁を開くと、第2油圧シリンダ27のロッド側室27Aから第1切換弁42側への圧油の流れを許容する。
【0038】
前記第2切換弁43は3位置切換弁であり、ソレノイドを励磁して中立位置43Cに切り換えたとき、第1油圧ポンプ40からの圧油が第1切換弁42へ直接送られ、右の位置43Bに切り換えたとき、管路62、第3パイロットチェック弁51を介して第2油圧シリンダ27のボトム側室27Bに送られ、左の位置27Aに切り換えたとき、管路63、第2パイロットチェック弁50を介して第2油圧シリンダ27のロッド側27Aに送られる。
【0039】
第2油圧シリンダ27のロッド側室27A、ボトム側室27Bに圧油が供給される際に、ロッド側室27A、およびヘッド側室27Bからの圧油が排出される各管路62,63にある第2パイロットチェック弁50、第3パイロットチェック弁51は、圧油の供給側の管路62,63に生じる圧力により開かれ、切換弁側への流れを許容する。
【0040】
また、管路59,61間には、回路内の圧力を設定値に保持する第1リリーフ弁54が設けられ、また、管路41,58間には、回路内の圧力を設定値に保持する第2リリーフ弁55が設けられている。
なお、第1切換弁42および第2切換弁43は、実施形態において直列に接続されているが、並列に接続されてもよい。
【0041】
次に、本実施形態の作用を説明する。
まず、作業車1の回送時について説明する。以下には、作業として清掃作業を行う例で説明するが、作業には除雪作業も含むものである。
回送時において、第1ブラシ装置11は、車体2の側面に車体2長手軸線Y−Y(図1参照)に沿って、且つ、前部ブラシ装置7の幅方向両端部で決定される前記最大車幅Wと一致するか、あるいはほぼ収まるように格納される。
【0042】
ここでは、図1に示すように、進行方向に向かって右側の第2ブラシ装置12が回送時を含む格納姿勢Aであり、左側の第1ブラシ装置11が作業姿勢Bである。この左側の第1ブラシ装置11も回送時には、右側の第2ブラシ装置12と同様な格納姿勢Aをとる。
格納姿勢Aの状態は、図3に示すように、路面Cから上昇した状態である。
【0043】
以上の格納姿勢Aは、第1油圧シリンダ26を最縮小状態にし、つまり図6で示されるように、第1切換弁42を、ソレノイドの励磁により左の位置42Aに切り換え、第1パイロットチェック弁45により圧油を第1油圧シリンダ26のロッド側室26Aの圧油を封じ込めることにより、保持される。
【0044】
次に、作業姿勢Bの説明をする。ここでは、左側の第1ブラシ装置11について説明する。
作業車1が清掃現場に到着した後、図3の格納姿勢Aから、図6において、第3切換弁46をソレノイドの励磁により右の位置46Bに切り換えると、第2油圧ポンプ47からの圧油で第1パイロットチェック弁45を開き、第1油圧シリンダ26のロッド側室26Aの油が第1切換弁42を介してタンク44へ戻す。
これにより、第1ブラシ装置11の自重で第1油圧シリンダ26が伸長し、その結果、アーム体16が下方へ回動して、第1ブラシ装置11が下方へ、且つ車幅外方へ張り出す。
【0045】
その後、路面Cにブラシロール33が接地する少し手前で、第3切換弁46をソレノイドの励磁により左の位置46Aに戻して、第1ブラシ装置11を清掃面から浮いた状態に保持する。次いで、第3油圧シリンダ28の駆動により、本体部31を連結体20に対して垂直軸23を中心に回動させ、図4に示すように第1ブラシ装置11を作業姿勢Bにする。
この作業姿勢Bは、作業車1に対し前部ブラシ装置7とほぼ同じ角度に設定する。そして、ここでは、図1、図2に示すように、作業車1の斜め左前方へゴミや雪を掃き出すように設定する。
【0046】
次に、図5に示すように、ブラシロール33を接地する。
ブラシロール33の接地は、第3切換弁46をソレノイドの励磁により右の位置46Bに切り換え、第1油圧シリンダ26のロッド側室26Aの油をタンク44に戻し、第1油圧シリンダ26をさらに伸長することにより行われる。
【0047】
一方、前部ブラシ装置7も、前記と同様の作動により接地させ、前部ブラシ装置7および第1ブラシ装置11のブラシロール33を油圧モータ37により回転させ、作業車1の走行により、清掃作業を行う。
【0048】
以上により、従来、前部ブラシ装置のみで清掃または除雪作業を行っていた清掃幅または除雪幅が、前部ブラシ装置7と第1ブラシ装置11、あるいは前部ブラシ装置7と第2ブラシ装置12をともに使用することにより、作業車1の1回での清掃または除雪幅が広くなり、除雪効率が高まる。
【0049】
作業が終了して回送するときは、作業開始時とは逆に、第1切換弁42のソレノイドを励磁して右の位置42Bに切り換え、第1油圧ポンプ40からの圧油を第1油圧シリンダ26のロッド側室26Aに供給して第1油圧シリンダ26を縮小し、アーム体16を上方、且つ車体2側へ回動させ、ブラシロール33が路面Cより完全に離れるまで、第1ブラシ装置11を上昇させた後、第1切換弁42を左の位置42Aに切り換える。
【0050】
このとき、第3切換弁46を、ソレノイドの励磁により左の位置46Aに切り換えておけば、第1パイロットチェック弁45は閉じ、第1油圧シリンダ26のロッド側室26Aの油が封じ込められ、第1油圧シリンダ26は伸長せず、これにより、第1ブラシ装置11は上昇位置を保持する。
【0051】
次に、2本の油圧シリンダ28,28を互いに反対方向に駆動させ、本体部31を、垂直軸23を中心として連結体20に対して回動させ、車体2の長手方向軸線Y−Yにほぼ平行にする。
この後、第1切換弁42を、ソレノイドの励磁により右の位置42Bに切り換え、第1油圧ポンプ42からの圧油を第1油圧シリンダ26のロッド側室26Aに供給して、アーム体16を上方且つ車体2側へ回動させることにより、第1ブラシ装置11を最大車幅W内に、且つ車体2の長手方向軸線Y−Yにほぼ平行に格納する。
【0052】
回送時には、第1油圧シリンダ26を最縮小にすると、第1ブラシ装置11 は最上位、且つ最内側の格納姿勢Aをとるが、第1パイロットチェック弁45により、第1油圧シリンダ26のロッド側室26Aは封じ込まれているので、格納姿勢Aを保持できる。
【0053】
現場内での移動等、第1ブラシ装置11を、回送時のように格納姿勢Aに設定するまでもないときには、第2油圧シリンダ27を駆動させ、第1ブラシ装置11を作業姿勢Aのまま作業位置より上昇させる。
【0054】
すなわち、第1ブラシ装置11を、図5に示す接地姿勢から、第2切換弁43をソレノイドの励磁により右の位置43Bに切り換えて、第2油圧シリンダ27を伸長することにより、リンク18を他のリンク17の下面に当接させるとともに、さらに伸張することにより、アーム体16全体を上方に回動させ、図4に示すように路面Cから離れた状態とする。
【0055】
作業を開始するときは、上記とは逆に、第2切換弁43をソレノイドの励磁により左の位置43Aに切り換えて、第2油圧シリンダ27を縮小することにより、アーム体16を下方に回動させ、ブラシロール33を路面Cに接地すればよい。
これにより、第1ブラシ装置11を、そのブラシロール33が作業車1の現場内移動時に路面C上の障害物と干渉することなく、また、ブラシロール33を清掃または除雪作業以外のために引きずることがないので、そのブラシロール33の不用意な破損や磨耗を防止できる。
【0056】
前述のように、アーム体16を下方に回動させ、ブラシロール33を路面Cに接地させるとき、第1油圧シリンダ26はアーム体16の第1リンク17の動きに追随させて伸縮する必要がある。
このときは、第3切換弁46をソレノイドの励磁により右の位置46Bに切り換えて、第1パイロットチェック弁45を開き状態に保持することにより、第1油圧シリンダ26のロッド側室26Aおよびボトム側室26Bをタンク44へ連通させるため、アーム体16の回動の支障とならない。
【0057】
第2油圧シリンダ27の伸長側、つまりアーム体16の上昇側のストロークエンドは、作業車1の走行に支障がない位置に第1ブラシ装置11が位置するように設定されている。
【0058】
第1油圧シリンダ26により第1ブラシ装置11が上昇作動するときは、アーム体16の第1リンク17が第2油圧シリンダ27と連結した第3リンク19から離れる方向に回動することになるので、第2油圧シリンダ27の駆動により第1油圧シリンダ26の作動が妨げられることがない。
【0059】
また、第1ブラシ装置11が下降作動するときには、第2切換弁43を左の位置43Aに切り換えて、第2油圧シリンダ27を縮小させ、第3リンク19をアーム体16の第1リンク17と干渉しない位置まで下げればよい。
【0060】
なお、第2リンク18は平面視二股状に構成されているので、第2油圧シリンダ27や第3リンク19の上下方向の回動が、アーム体16の動きに何らの支障を及ぼすことがない。
【0061】
以上のような実施形態によれば、次のような効果が得られる。
(1)車体2の側面に設けた例えば第1ブラシ装置11が、前部ブラシ装置7を含む最大車幅外へ張り出し可能となっているので、その第1ブラシ装置11の張り出し分だけ作業幅が拡大する。その結果、第1ブラシ装置11と前部ブラシ装置7とが共に作業することで、作業幅を拡大することができ、作業効率の効率を図ることができる。
【0062】
(2)回送時に第1ブラシ装置11を上昇させて格納姿勢Aとすることができるため、路面C上の障害物との干渉の恐れが少なくなり、悪路の走行にも支障がない。
【0063】
(3)回送時に、第1ブラシ装置11を車体2の側方に、最大車幅W内に格納できるため、回送時等に作業車1の最大車幅W以上の道路であれば支障なく走行できる。
【0064】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、現場内での移動等、第1ブラシ装置11を、回送時のように格納姿勢Aに設定するまでもないときに、第2油圧シリンダ27を用いていたが、この第2油圧シリンダ27は必ずしも必要なものでない。作業車1の走行(移動)に支障のない第1ブラシ装置11の上昇位置を検出装置により検出し、第1油圧シリンダ26によりその位置まで上昇させ保持してもよい。また、この場合でも検出装置は必ずしも必要ではなく、他の作業員の目視による上昇位置の設定でもよい。
【0065】
また、第1油圧シリンダ26による格納姿勢Aの保持は、第1パイロットチェック弁45の他に、機械的なロック機構、例えばピンでもよいし、また、これらを併用してもよい。
【0066】
さらに、前記実施形態では、前部ブラシ装置7と第1ブラシ装置11とを、同じ向き、且つ同じ角度で傾けて、進行方向の左前方にゴミ、または雪を掃き出すように設定したが、進行方向の右前方にゴミ、または雪を掃き出すように前部ブラシ装置7と第1ブラシ装置11との向きを設定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、道路の清掃や、除雪作業を行う際に利用でき、特に、飛行場の滑走路等、広い面積の清掃や、除雪作業を行う際に利用すると好適である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明のブラシ清掃作業車を示す全体平面図である。
【図2】本発明のブラシ清掃作業車を示す全体側面図である。
【図3】図1におけるIII−III線に沿った矢視図で第1ブラシ装置の格納状態図である。
【図4】図1におけるIII−III線に沿った矢視図で第1ブラシ装置の上げ状態図である。
【図5】図1におけるIII−III線に沿った矢視図で第1ブラシ装置の作業姿勢状態図である。
【図6】本発明のブラシ清掃作業車における第1ブラシ装置の油圧駆動回路図である。
【図7】従来のスノーブラシ装置を備えた除雪車を示す平面図である。
【図8】ブラシロールを備えた一般的な清掃作業車を示す平面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 ブラシ清掃作業車
2 車体
3 車体フレーム
7 前部ブラシ装置
10 側部ブラシ装置
11 第1ブラシ装置
12 第2ブラシ装置
15 ブラシ取り付け手段
16 アーム体
20 連結体
24 アーム機構
25 油圧機構
26 第1油圧シリンダ
27 第2油圧シリンダ
31 本体部
33 ブラシロール
A 格納姿勢
B 作業姿勢
C 路面
W 最大車幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
進行方向の前部に作業用の前部ブラシ装置を備えたブラシ清掃作業車において、
進行方向に向且つ車体の少なくとも一方の側面に側部ブラシ装置を装備し、
この側部ブラシ装置を、格納時には車体にほぼ平行で且つ前記前部ブラシ装置を含む最大車幅内に配置すると共に、作業時には前記前部ブラシ装置とほぼ同一の設置状態で且つ前記最大車幅外に張り出した作業姿勢に切り換え可能としたことを特長とするブラシ清掃作業車。
【請求項2】
前記側部ブラシ装置を、前記車体のフレーム部材にブラシ取り付け手段を介して保持すると共に、このブラシ取り付け手段を、前記側部ブラシ装置を上下動自在に且つ水平面内で回動自在に保持するアーム機構と、このアーム機構を駆動させる油圧機構とを備えて構成したことを特長とする請求項1記載のブラシ清掃作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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