説明

ブロック配線用電線管ケーブル固縛金具

【課題】配線および固縛作業時間が短縮し、かつ、溶接作業から電線を保護するブロック配線用電線管を提供する。
【解決手段】ブロック配線用電線管ケーブル固縛金具1において、船舶をブロック毎に建造する各ブロックの電線布設用の電線管の一端または両端に接合される当該電線管の内径と略面一または電線管の内径より小さい内径を有する丸棒からなる端部リング3aと管端リング3bの二つのリングと、これら二つのリング間を所定の間隔で接合し、その延長した電線管側の接合部が前記電線管の外径サイズに合致するようにクランク状に形成された複数のフラットバー4a,4b,4c,4dと、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の建造におけるブロック配線用の電線管ケーブル固縛金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶内の電気配線に関しては、例えば、特開平6-127467号公報に開示のものが知られている。当該特開平6-127467号公報の開示は、「船舶内の配線方法」に係り、「足場が不要であり、高所作業がなく、整線作業が少ない、船舶内の配線方法を提供すること」を目的として(同公報明細書段落番号0003参照)、「中空円筒状の複数の電線管を、端部を互いに間隔を隔てて船舶内に固定し、前記電線管の内部を通して電線を所定の位置まで配線する、こと」により(同公報特許請求の範囲)請求項1の記載参照)、「(1)仮設足場が不要になる、(2)高所作業がなくなる、(3)整線作業が少なくなる」等の効果を有するものである(同公報明細書段落番号0013参照)。
【0003】
図7は、当該特開平6-127467号公報に図1として開示される同公報開示の発明を実施した舵機室内の配線の側面図であり、図7において、符号111は、舵機室甲板、112は、舵機室床面、113は、ピラー、120は、電線管、122は、電線を示す(符号は、同公報の図1の符号11〜22を111〜122として示した。)。これらの部材により、同公報の開示は、要するに、「ピラー113の間に水平に固定された複数の中空円筒状電線管120を備え」た配線を実施するというものである(同公報明細書段落番号0009参照)。
【0004】
しかしながら、同公報に開示ものは、いわゆるブロック工法における電線の配線ではなく、ブロック工法にそのまま応用できるものでははない。
この種のブロック工法におけるブロック配線用としては、例えば、機関室の3rdデッキからLower Floorへの配線について、図6に示すように、機関室の3rdデッキからLower Floorのピラーの立下り電線敷設用に組立式電路を使用するものが知られている。図6は、従来のブロック構築における電線配線の概略を示す図であり、機関室の3rdデッキからLower Floorへの配線概略を示すものである。図6において、符号101は、船側外板、102は、機関室上部ブロック、103は、機関室下部ブロック、104は、2ndデッキ、105は、3rdデッキ、106は、Lowere Floor、107、108は、組立式電路、109は、両面電路、110は、電線貫通金物である。
【0005】
図6に示されるように、知られているブロック工法におけるブロック構築における電線配線は、例えば、前記機関室下部ブロック103の3rdデッキ105からLower Floor106のピラー113に立下り電線敷設用に前記組立式電路107を布設し、当該ピラー113沿いに前記組立式電路107を設け、それを前記3rdデッキ105上に前記電線貫通金物110を取り付けて、ブロック搭載後に電線をLower Floor106に下ろして構築するというものである。そして、従来の前記組立式電路107は配線後電線が交差しないようにバインド線で仮止めを行い、その後300ミリメートルピッチで固縛バンドを掛けるようにしていたため、配線および固縛作業に時間が掛かるという問題があった。また、前記ピラー113、113は、電線敷設作業以外の溶接作業と重なることがあり、この場合には、布設した電線が溶接によって焼かれて再敷設をしなければならないため、ピラーに沿っては電線敷設ができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-127467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の問題点に鑑み、本発明は、配線および固縛作業時間が短縮し、かつ、溶接作業から電線を保護するブロック配線用電線管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本願請求項1に係る発明は、ブロック配線用電線管ケーブル固縛金具において、船舶をブロック毎に建造する各ブロックの電線布設用の電線管の一端または両端に接合される当該電線管の内径と略面一または電線管の内径より小さい内径を有する丸棒からなる端部リングと管端リングの二つのリングと、これら二つのリング間を所定の間隔で接合し、その延長した電線管側の接合部が前記電線管の外径サイズに合致するようにクランク状に形成された複数のフラットバーと、からなることを特徴とする。
また、本願請求項2に係る発明は、前記請求項1に係るブロック配線用電線管ケーブル固縛金具において、前記フラットバーは、前記二つのリングの内側に設けられたことを特徴とする。
さらに、本願請求項3に係る発明は、円筒電線管において、前記請求項1又は2に記載のブロック配線用電線管ケーブル固縛金具が端部に配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上述のとおり構成されているので、次の効果を奏する。
(1)組立式電路の代わりに電線管を使って電線敷設を行うので、バインド線による仮止めや固縛バンドを掛けるという作業が不要となり、配線および固縛作業の短縮という効果を有する。
(2)また、前述のケーブル固縛用金物を電線管の両端部に設けることにより、電線を溶接作業や擦れから保護することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明に係るブロック配線用電線管ケーブル固縛金具を実施するための一実施例であるブロック配線用電線管のケーブル固縛金物1を示す図、
【図2】図2は、本実施例1に係るケーブル固縛金物1を電線管の端部部に設置した図、
【図3】図3は、両端部に本実施例1に係るケーブル固縛金物1を接合した電線管2を、前述の機関室下部ブロック103の3rdデッキ105からLower Floorのピラー113の立下り電線敷設する場合の配置例を示す図、
【図4】図4は、端部に本実施例1に係るケーブル固縛金具1が接合された電線管2に電線を敷設して電線管2の端部に電線を固縛する状態を示す図、
【図5】本願の図(ブロック配線をした状態)
【図6】図6は、従来のブロック構築における電線配線の概略を示す図、
【図7】図7は、当該特開平6-127467号公報に図1として開示される従来の舵機室内の配線の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るブロック配線用電線管を実施するための最良の形態の一実施例を図面に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明に係るブロック配線用電線管ケーブル固縛金具を実施するための一実施例であるブロック配線用電線管のケーブル固縛金物1を示す図であり、図1(a)は、図1(b)のB−B断面図、図1(b)は、図1(a)のA−A断面図である。図1(a)(b)において、3aは、端部リング、3bは、管端リング、4a、4b、4c、4dは、両リング3a、3bの内径を所定の間隔で接合し、管側端部を図示外電線管の外径に接合するフラットバー、5は、当該フラットバー4a、4b、4c、4dの図示外電線管との接合部であり、電線管の外径サイズに合致するようにクランクを設けている。
【0013】
本実施例1に係るケーブル固縛金具1は、前記端部リング3aと管端リング3bの間の長さ100mm、前記管端リング3bと前記各フラットバー4a、4b、4c、4dの端部までの長さを50mmとし、本実施例1に係るケーブル固縛金具1は、合計で150mmの長さのものである。また、本実施例1に係るケーブル固縛金具1は、約170mm径の電線管に接合することを予定するものであり、かつ、前記電線管の内径と略面一に、あるいは、前記電線管の内径より小さく形成されるため、リング内径約150mm程度のものとした。
【0014】
図3は、本実施例1に係るケーブル固縛金物1を電線管の端部に設置した図であり、図3において、符号2は、電線管であり、その余の部材については、図1に示した同一の部材は図1と同一の符号で示している。
図1、図3から明らかなように、上述するように、本実施例1に係るケーブル固縛金物1は、前記電線管2の端部に接合され、前記フラットバー4a、4b、4c、4dの内面は、前記電線管2の内径と略面一に、あるいは、前記電線管2の内径より小さく形成される一方、前記接合部5は、前記電線管2の外径に接合するように形成される。また、前記両リング3a、3bは、6mm径の丸棒をリング状に形成し、これが、上述するように、約170mm径の前記電線管2の外径に接合される。
【0015】
このように、本実施例1に係るケーブル固縛金具1は、前記電線管2の両端部に接合される端部リング3a、管端リング3bからなる2つのリングを4つのフラットバー4a、4b、4c、4dにて溶着し、さらに、前記フラットバー4a、4b、4c、4dの前記接合部5を電線管2の外径サイズに合致するようにクランク状に形成される。
【0016】
図3は、このような両端部に本実施例1に係るケーブル固縛金物1を接合した電線管2を、前述の機関室下部ブロック103の3rdデッキ105からLower Floorのピラー113の立下り電線敷設する場合の配置例を示す図であり、図3において、符号1は、前記ケーブル固縛金具、2は、電線管であり、その余の部材は、図6に示した同一の部材は同一の符号で示している。すなわち、ブロック毎に構築する船舶のブロック工法において、例えば、図3に示すような機関室上部ブロック102及び機関室下部ブロック103を搭載する際に、これらのブロック搭載後に、前記ピラー113に両端に本実施例1に係るケーブル固縛金具1を配置した電線管2を敷設する。この場合、予め、両端に本実施例1に係るケーブル固縛金具1を接合した所定長さの電線管2を敷設しても良いが、両端に配置前の電線管にあっては、当該電線管2の下側部分を約600mm程度カットし、このカット部分に本実施例1に係るケーブル固縛金具1を接合するようにしても良い。
【0017】
このようにすることにより、デッキ間に電線を敷設する場合にも、電線(図示外)は、電線管2の端部開口に直接当接することがなく、前記端部リング3aに当接するため、電線布設に際して電線被覆が擦れて損傷することがなくなる。
また、前記電線管2内に敷設された電線は、前記、前記フラットバー4a、4b、4c、4dに容易にどの方向からも固縛することができ、電線を端部で固定することができるので、作業性が向上する。
【0018】
図4は、端部に本実施例1に係るケーブル固縛金具1が接合された電線管2に電線を敷設して電線管2の端部に電線を固縛する状態を示す図であり、図4において、符号1は、本実施例1に係るケーブル固縛金具、2は、電線管、6は、電線、7は、電線固縛用バンドである。図4に示しように、敷設された電線は、電線管2の端部において、前記前記フラットバー4a、4b、4c、4dのいずれかに前記電線固縛用バンド7によりしっかりと固縛される。
【0019】
図5は、さらに、機関室上部ブロック102に両端に本実施例1に係るケーブル固縛金具1が接合された電線管2内に電線6を敷設した後に、これを機関室下部ブロック103を3rdデッキ105上に搭載する際の電線敷設例を示す図である。
【0020】
当該機関室上部ブロック102には、図5に示すように、予め、2ndデッキ104からの両面電路109からLower Floorまで引き下ろす長さの電線6を両端に本実施例1に係るケーブル固縛金具1が接合された前記電線管2の上端から内部に敷設し、下端から引き出し、これを、例えば、図5に示すように、巻き込み束ねて、前記ピラー113等に仮設置しておく。この状態で、前記機関室上部ブロック102を前記機関室下部ブロック103の3rdデッキ105上に搭載し、その後、前記巻き込み束ねて、前記ピラー113等に仮設置しておいた電線6の巻き込みを解いて、前記スリーブ110を通して、下方に配置される前記機関室下部ブロック103内に引き降ろす。引き下ろされた電線6は、前記機関室下部ブロック103内において、当該機関室下部ブロック103で使用する配線を引き出し、また、さらにLower Floorまで引き下ろす電線6は、当該機関室下部ブロック103内に配置される電線管2内に引き込む。
【0021】
このように、予め、両端に本実施例1に係るケーブル固縛金具1を配置した電線管2を用いた各ブロックを構築するので、ブロック内で電線6を敷設する場合にも、従来のように、電線管2の開口角部分で電線を損傷することがなくなる。さらに、これに加え、各ブロック間への電線6を配線するために、後に、電線6を両端に本実施例1に係るケーブル固縛金具1を配置した前記電線管2内に電線6を挿通し、また、電線6を引き出して布設する場合にも、従来のように、その開口の角部で電線表面に損傷を与えることがなくなる。
【0022】
なお、本実施例1に係るケーブル固縛金具1は、内径約150mm程度、前記端部リング3aと管端リング3bの間の長さ100mm、前記管端リング3bと前記各フラットバー4a、4b、4c、4dの端部までの長さを50mm、合計で150mmの長さのものとして説明したが、これは、約170mm径の前記電線管2に使用することを前提とした大きさであって、この数値に限るものではないことは当然である。また、600mm程度をカットする工法においても、建造する船舶の大きさやどのようにブロックを構成して建造するかによって異なるものであり、例えば、全長が約180m程度の船舶建造を前提とした場合には、ブロック内の前記電線管2はおよそ8m程度の長さのものとなり、もっと小さい船舶にあっては、小さい口径の電線管を使用する場合には、切断長さやリング径等が小さくて良いことは当然である。
【0023】
また、本実施例1に係るケーブル固縛金具1においては、前記フラットバー4a、4b、4c、4dは、前記端部リング3a及び前記管端リング3bの内側に設けたが、これは、前記フラットバー4a、4b、4c、4dを前記端部リング3a及び前記管端リング3bの外側に設けた場合には、前記電線6と当該フラットバー4a、4b、4c、4dを電線固縛バンド7で固縛する際に、当該リング3a、3bの近傍で電線6が曲がる率が高くなり、このため電線6が劣化するという問題が生じうる。したがって、本実施例1に係るケーブル固縛金具1においては、前記フラットバー4a、4b、4c、4dは、前記端部リング3a及び前記管端リング3bの内側に設けたものである。このように、前記フラットバー4a、4b、4c、4dを前記端部リング3a及び前記管端リング3bの内側に設けることにより、図4に示すように、電線6とフラットバー4a、4b、4c、4dを電線固縛バンド7にて電線を損傷することがなく、かつ、どの方向からも固縛敷設することができることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、船舶の電線布設、特に、ブロック工法による電線布設の際に利用する。
【符号の説明】
【0025】
1 ケーブル固縛金具
2 電線管
3a 端部リング
3b 管端リング
4a、4b、4c、4d フラットバー
5 接合部
6 電線
7 電線固縛用バンド
101 外板
102 機関室上部ブロック
103 機関室下部ブロック
107 組立式電路
109 両面電路
110 スリーブ
111 舵機室甲板
112 舵機室床面
113 ピラー
114 コーミング
115 組立式電路
120 中空円筒状電線管
122 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶をブロック毎に建造する各ブロックの電線布設用の電線管の一端または両端に接合される当該電線管の内径と略面一または電線管の内径より小さい内径を有する丸棒からなる端部リングと管端リングの二つのリングと、
これら二つのリング間を所定の間隔で接合し、その延長した電線管側の接合部が前記電線管の外径サイズに合致するようにクランク状に形成された複数のフラットバーと、
からなることを特徴とするブロック配線用電線管ケーブル固縛金具。
【請求項2】
前記フラットバーは、前記二つのリングの内側に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のブロック配線用電線管ケーブル固縛金具。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載のブロック配線用電線管ケーブル固縛金具が端部に配置されたことを特徴とする円筒電線管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−218546(P2012−218546A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85338(P2011−85338)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000146814)株式会社新来島どっく (101)