説明

プラスチック容器入り組換えヒト血清アルブミン製剤

組換えヒト血清アルブミンの液状製剤を収容するプラスチック容器と、当該プラスチック容器を包装するエチレン−ビニルアルコール共重合体を含む層を少なくとも有するガスバリア性外包装材とを備えるプラスチック容器入り組換えヒト血清アルブミン製剤であって、長期間保存安定性に優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、プラスチック容器入り組換えヒト血清アルブミン製剤に関する。
【背景技術】
アルブミン、特にヒト血清アルブミン(HSA)は血漿中に最も多く含まれる蛋白質であり、肝臓中で作られ、血流中で正常な浸透圧を維持したり、栄養物質や代謝物質と結合してこれらを運搬するなどの機能をもっている。そのため、HSAは出血性ショック患者、熱傷患者等の外傷に関連する症状、低アルブミン血症や胎児性赤芽球症に罹っている患者の治療に有効とされている。このようなHSAは精製水に溶解させた液状製剤として、臨床現場においてヒト体内へ注射または点滴により投与されている。
HSA製剤を収容する容器としては、従来からガラス製容器が使用され、例えば、脱アルカリ処理した軟質ガラス容器中で保存することが提案されている(例えば、特開平4−210648号公報を参照)。また、タイプIIガラスバイアル、例えば、標準表面処理を施されたケイ酸塩ガラス(アンモニウム塩または酸化イオウ処理、タイプIIのガラス)にHSA製剤を収容することも提案されている(例えば、特開平9−221431号公報を参照)。これらのガラス容器はいずれも、ガラス容器からのアルミニウムの遊離を回避することを目的とする。しかしながら、これらのガラス容器は、重い、壊れやすいなどの欠点を有する。また、これらのHSA製剤のガラス容器への注入に際しては、容器内のHSA製剤中に大気中の細菌、その他の夾雑物質が混入する危険があり、汎用的ではない。
近年、緊急時の医薬品の使用においてガラス容器と好適に代替し得る容器として、軽量で割れないプラスチック容器が検討されている。例えば、特開2000−189492号公報には、プラスチック容器を使用し、かつ、HSA製剤を大気中の夾雑物質と接触しない系で該容器内部に注入し、比較的低温度で該容器開口端を密封することによって、アルブミン加熱変性物の生成を完全に抑制したHSA製剤収容プラスチック容器を提供できることが開示されている。また特開2003−10287号公報には、温度25℃、相対湿度60%における水蒸気透過量が特定の範囲になるようにプラスチック材料を成型加工して低水蒸気透過性を有する容器を用いることにより、充填されたHSA製剤は長期間変性もほとんどなく、その性状を維持できることが開示されている。さらにこの特開2003−10287号公報には、同条件における酸素透過量が特定の範囲になるようにプラスチック材料を成型加工して低酸素透過性を有する外包装材を併せて使用することも開示されている。
ところで、従来、HSAは、ヒトから採取した血液を分画することによって製造されていたが、かかる製造法は不経済であり、血液の供給が困難であるという問題があった。また、血液は肝炎ウィルスのように好ましくない物質を含んでいるため、HSAに代替し得る原料の開発が望まれていた。
そこで近年、遺伝子操作によるアルブミン(組換えヒト血清アルブミン;rHSA)の大量生産、精製技術の研究開発が進み、遺伝子組換えによる治療薬も市販されようとしている。
しかし、rHSA製剤の場合、上記プラスチック容器にて製剤化(プラスチック容器入り組換えヒト血清アルブミン製剤)すると、50℃で60日間の保存により、外観変化、二量体以上のrHSAの重合体の形成、アンモニア含有量の増加というような現象が起こるということが、本発明者等の試験によって新たに判った。
これらの現象が起こる理由の詳細は不明であるが、当該試験は酸素存在下で実施されていることから酸素暴露による影響が懸念される。
上記試験は、当該製剤の長期保存時の安定性を短期間で予測するために行ったものである。この外観変化、重合体の形成、アンモニア含有量の増加という現象は、本試験結果のレベルであれば必ずしも安全性に影響を与えるものではないが、品質面からみると、製造直後の品質状態を保存期間中ほぼ一定に保つことが望ましいと考えられる。
以上のように、本発明者等は、外観変化、重合体形成ならびにアンモニア含有量増加を極力抑制でき、長期間の保存安定性に優れるプラスチック容器入り組換えヒト血清アルブミン製剤の開発が必要であることを、解決すべき新たなる課題として見出した。
【発明の開示】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、長期間保存安定性に優れた新規なプラスチック容器入り組換えヒト血清アルブミン製剤を提供することである。
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下のとおりである。
(1)組換えヒト血清アルブミンの液状製剤を収容するプラスチック容器と、当該プラスチック容器を包装するエチレン−ビニルアルコール共重合体を含む層を少なくとも有するガスバリア性外包装材とを備えるプラスチック容器入り組換えヒト血清アルブミン製剤。
(2)プラスチック容器と外包装材との間に脱酸素剤が収容されてなることを特徴とする上記(1)に記載の製剤。
(3)外包装材のエチレン−ビニルアルコール共重合体を含む層の厚みが5〜50μmである上記(1)または(2)に記載の製剤。
(4)外包装材の厚みが5〜1000μmである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の製剤。
(5)外包装材の酸素透過量が、温度25℃、相対湿度60%において、50cm/m/日・1013.25hPa未満である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の製剤。
(6)外包装材が、ポリエチレンにて形成された最内層、エチレン−ビニルアルコール共重合体にて形成された中間層、ならびにナイロンにて形成された最外層を有する多層構造である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の製剤。
(7)組換えヒト血清アルブミンの液状製剤中の組換えヒト血清アルブミン濃度が1〜500mg/mLである、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の製剤。
(8)プラスチック容器の材料が、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、またはエチレン−酢酸ビニル共重合体である、上記(1)記載の製剤。
(9)組換えヒト血清アルブミンの液状製剤が、プラスチック容器中に、無菌状態で密封されている、上記(1)記載の製剤。
(10)成型金型内においてプラスチック容器が成型された後、該プラスチック容器がまだ成型金型内にある間に、該プラスチック容器内に組換えヒト血清アルブミンの液状製剤が注入され、かつ、開口部が金型によって押圧されて密封されている、上記(9)記載の製剤。
(11)組換えヒト血清アルブミンの液状製剤中の二量体以上の組換えヒト血清アルブミン重合体の含有量が3.8%以下である、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の製剤。
(12)組換えヒト血清アルブミンの液状製剤中のアンモニア含有量が4.60μg/mL以下である、上記(1)〜(11)のいずれかに記載の製剤。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明における好ましい一例のプラスチック容器入り組換えヒト血清アルブミン製剤1を簡略化して示す図である。図中における符号は、1:プラスチック容器入り組換えヒト血清アルブミン製剤、2:プラスチック容器、3:rHSA製剤、15:外包装材、をそれぞれに示している。
図2は、本発明におけるrHSA製剤を収容したプラスチック容器の製造方法の好ましい一例を段階的に示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明のプラスチック容器入り組換えヒト血清アルブミン製剤は、組換えヒト血清アルブミンの液状製剤(rHSA製剤)を収容するプラスチック容器と、当該プラスチック容器を包装するエチレン−ビニルアルコール共重合体を含む層を少なくとも有するガスバリア性外包装材とを備える。
かかる構成を備える本発明によって、組換えヒト血清アルブミンの液状製剤をプラスチック容器に収容して製剤化した構成でありながら、長期間の保存安定性に優れるプラスチック容器入り組換えヒト血清アルブミン製剤を提供することができる。
ここで、「長期間の保存安定性に優れる」とは、上記プラスチック容器入りrHSA製剤を室温(30℃以下、具体的には10〜30℃)で2年間保存した場合に、外観、重合体形成、アンモニア含有量を含めた品質・性状に保存開始時と比較して大きな変化が認められないことを意味する(生物学的製剤基準に則ったHSA製剤(血漿由来)の有効期間に準拠)。
また、この長期保存安定性を予測する手段として、当該プラスチック容器入り組換えヒト血清アルブミン製剤(5(w/v)%)を50℃、75%RHの条件下に60日間放置後、rHSA製剤の外観が淡黄色澄明であり、rHSA製剤中に含有される二量体以上のrHSA重合体が3.8%以下、好ましくは2.4%以下、rHSA製剤中のアンモニア含有量が4.60μg/mL以下、好ましくは3.35μg/mL以下であれば、上記長期間の保存安定性と同等の効果が得られるものと推測することができる。
なお、上記放置後のrHSA製剤中の重合体形成は、HPLCゲル濾過法によって二量体以上の高分子量画分をrHSAの重合体として算出することによって測定することができる。また、上記放置後のrHSA製剤中のアンモニア含有量は、rHSA製剤の5倍希釈液を、限外濾過膜(分子量3万カット)にて限外濾過し、得られた濾液を試料溶液とした後、日局・一般試験法のアンモニア試験法によって、インドフェノール(λmax、640nm)の吸光度を測定して定量することによって、算出することができる。
以下、本発明を構成する〔1〕組換えヒト血清アルブミン製剤、〔2〕プラスチック容器、〔3〕外包装材、についてそれぞれ詳述する。
〔1〕組換えヒト血清アルブミン製剤(rHSA製剤)
本発明において使用される組換えヒト血清アルブミン(rHSA)は、遺伝子工学的手法によって生産された、分子量約67,000のヒト血清アルブミンである。rHSAとしては、ヒト血清アルブミンをコードする遺伝子を単離し、適当なベクターに組み込み、得られた組換えベクターを適当な宿主に導入して形質転換体を得て、該形質転換体を培養し、培養後に培養抽出物を種々の精製手法により精製したrHSAなどが例示される。
本発明において、上記rHSAを従来公知の方法にて製剤化してなる組換えヒト血清アルブミンの液状製剤(rHSA製剤)が、プラスチック容器内に収容される。かかるrHSA製剤は、例えば注射用水に溶解したrHSA濃度が1〜500mg/mL(好ましくは、10〜100mg/mL)の溶液である。本発明におけるrHSA製剤には、アセチルトリプトファン塩、炭素数6〜18の有機カルボン酸またはその塩等の安定化剤が含有されていることが好ましい。このような安定化剤、例えばアセチルトリプトファンはrHSA製剤中に含有されるrHSA1g当り、約20〜60mgであることが好ましい。炭素数6〜18の有機カルボン酸としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸等が例示され、その塩としてはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム等のアルカリ土類金属塩が挙げられる。
本発明におけるrHSAは、具体的には、以下のような方法にて調製され、製剤化される。
(i)遺伝子操作によるrHSAの調製
本発明において用いられる遺伝子操作により調製されるrHSA産生宿主は、遺伝子操作を経て調製されたものであれば特に限定されず、既に公知文献記載のものの他、今後開発されるものであっても適宜利用することができる。具体的には、遺伝子操作を経てrHSA産生性とされた菌(例えば、大腸菌、酵母、枯草菌等)、動物細胞などが例示される。特に、宿主として酵母、中でもサッカロマイセス属〔例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)〕、もしくはピキア属〔例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)〕を用いることが好ましい。また、栄養要求性株や抗生物質感受性株を用いてもよい。さらに好適には、サッカロマイセス・セレビシエAH22株(a,his 4,leu 2,can 1)、ピキア・パストリスGTS115株(his 4)が用いられる。
これらのrHSA産生宿主の調製方法、該宿主を培養することによるrHSAの生産方法及び培養物からのrHSAの分離採取方法は、公知ならびにそれに準じた手法を採用することによって実施できる。rHSA産生宿主の調製方法としては、例えば、通常のHSA遺伝子を用いる方法(特開昭58−56684号公報、特開昭58−90515号公報、特開昭58−150517号公報を参照)、新規なHSA遺伝子を用いる方法(特開昭62−29985号公報、特開平1−98486号公報を参照)、合成シグナル配列を用いる方法(特開平1−240191号公報を参照)、血清アルブミンシグナル配列を用いる方法(特開平2−167095号公報を参照)、組換えプラスミドを染色体上に組み込む方法(特開平3−72889号公報を参照)、宿主同士を融合させる方法(特開平3−53877号公報を参照)、メタノール含有培地で変異を起こさせる方法、変異型AOX2プロモーターを用いる方法(特開平6−90768号公報、特開平4−299984号公報を参照)、枯草菌によるHSAの発現(特開昭62−25133号公報を参照)、酵母によるHSAの発現(特開昭60−41487号公報、特開昭63−39576号公報、特開昭63−74493号公報を参照)、ピキア酵母によるHSAの発現(特開平2−104290号公報を参照)が例示される。
このうち、メタノール含有培地中で変異を起こさせる方法は具体的には以下のように行う。すなわち、まず適当な宿主、好ましくはピキア酵母、具体的にはGTS115株(NRRL寄託番号Y−15851)のAOX1遺伝子領域に常法によりAOX1プロモーター支配下にHSAが発現する転写ユニットを有するプラスミドを導入して形質転換体を得る(特開平2−104290号公報を参照)。この形質転換体はメタノール培地中での増殖能は弱い。そこで、この形質転換体をメタノール含有培地中で培養して変異を起こさせ、生育可能な菌株のみを回収する。この際、メタノール濃度としては、0.0001〜5%程度が例示される。培地は人工培地、天然培地のいずれでもよい。培養条件としては15〜40℃、1〜1000時間程度が例示される。
またrHSA産生宿主の培養方法としては、上記の各公報に記載された方法の他に、フェッドバッチ培養(半回分培養)により、高濃度のグルコース或いはメタノール等を適度に少量ずつ供給し、産生菌体に対する高濃度基質阻害を避けて高濃度の菌体と産生物を得る方法(特開平3−83595号公報を参照)、培地中に脂肪酸を添加してrHSAの産生を増強する方法(特開平4−293495号公報を参照)等が例示される。
(ii)rHSAの精製
培養処理により産生されたrHSAを宿主細胞に由来する成分および培養成分等から、十分な精度をもって単離・精製する方法が各種研究されている。例えば、従来行われている方法としてrHSAを含有する酵母培養液を、圧搾→限外濾過膜処理→加熱処理→限外濾過膜処理に供した後、陽イオン交換体、疎水性クロマト、陰イオン交換体のカラムクロマトグラフィー処理等の工程に供する方法が挙げられる(特開平5−317079号公報,Biotechnology of Blood Proteins.1993,Vol.227,293−298を参照)。また、上記従来法の後で、さらにキレート樹脂処理またはホウ酸・塩処理の工程に供する方法も報告されている(特開平6−56883号公報、特開平6−245789号公報を参照)。また、当該酵母培養液を加熱処理後に吸着流動床技術を用いたストリームライン法等を用いることもできる(特開平8−116985号公報を参照)。すなわち、rHSAの産生宿主を含有する培養液を加熱処理し、該加熱処理液を流動床中に浮遊する吸着体粒子に接触させ、その吸着画分を回収することを特徴とするものである。
(iii)高度精製されたrHSAの性状
本発明におけるrHSAは、分子量約67,000、等電点約4.9の単一物質である。当該rHSAは単量体および微量の二量体からなり、三量体以上の重合体、分解物を実質的に含まない。ここで、上記「実質的に含まない」とは、少なくとも製造直後のものでは、当該分野で汎用される手法(SDS−PAGE、ゲル濾過、逆相クロマトなど)により上記三量体以上の重合体、分解物が検出されないことを意味する。また本発明におけるrHSAは、産生宿主に由来する夾雑成分も実質的に含まない。具体的にはrHSA25(w/v)%溶液の場合で、宿主由来の抗原性を有する夾雑成分は1ng/mL以下が例示される。パイロジェンは同様の場合で1EU/mL以下が例示される。
着色度は25(w/v)%のrHSA製剤の場合で、A350/A280が、通常、0.015以下、好ましくは0.013以下である(具体的には、A350/A280が0.01〜0.015程度が例示される。)。なお、公知の精製方法をさらに適宜組み合わせて用いることにより、さらに着色度が抑えられた、すなわちA350/A280の値が低いrHSAを得ることができる。
(iv)製剤化
得られたrHSAは、公知の手法(例えば、50〜80℃で30分間以上の加熱滅菌処理、限外濾過、除菌濾過、分注、凍結乾燥等)により製剤化することができる。製剤としては、具体的にはrHSAを5〜25(w/v)%溶液(rHSA量として5〜12.5g)となるように含有し、pHは6.4〜7.4程度、浸透圧比は1程度(生理食塩水に対する比として)の液状製剤が例示される。本発明におけるrHSA製剤には、安定化剤としてカプリル酸ナトリウムおよび/またはアセチルトリプトファンが配合されることが好ましい。安定化剤の添加量としては各々rHSA1g当たり20〜60mg程度が例示される。また、ナトリウム含量は3.7mg/mL以下が例示される。当該安定化剤の添加時期は、通常、加熱滅菌処理、限外濾過、除菌濾過、分注、凍結乾燥等の処理前である。かくして、rHSAはその保存安定性のみならず、当該製剤化工程における安定化も図られる。
〔2〕rHSA製剤を収容するプラスチック容器
図1は、本発明における好ましい一例のプラスチック容器入り組換えヒト血清アルブミン製剤1を簡略化して示す断面図である。本発明において、rHSA製剤3を収容するプラスチック容器2の形状は、液状物を収容し得る内部空間を有するものであれば、特には制限されるものではないが、一方にのみ開口端4を有する筒状の容器で実現される(プラスチック容器において開口端4を除く部分を「容器本体5」と呼ぶことがある。)。ここで、本発明におけるプラスチック容器2の開口端4は、rHSA製剤を該容器内に収容するための開口端であり、後述するように密閉されて容器頭部6を形成してもよい(用時には、開口端4が開口され、この部分よりrHSA製剤が供される)。本発明におけるプラスチック容器2は、容器本体5が、開口端4の近辺において容器本体5の断面積が徐々に小さくなるように形成された部分(以下、「肩部7」と称する。)および上記肩部7に連なって同程度の断面積で開口端4にまで伸びる部分(以下、「首部8」と称する。)とを有するように形成されるのが好ましい。また、肩部7と首部8との間、あるいは首部8に、外方に突出するようなフランジ9が周方向にわたって形成されていてもよい。本発明におけるプラスチック容器2においては、首部8および開口端4は、容器本体と一体的に形成されていてもよい、別体的に(例えば、容器本体とは異なる樹脂材料にて)形成されていてもよい。
本発明におけるプラスチック容器2は、首部8の長さD(首部7の肩部側端から開口端までの距離)と容器本体の長さL(容器底部から肩部7の首部8側端までの距離(好ましくは、容器底部からフランジ9までの距離))の比、D/Lが、好ましくは0.1〜0.5、より好ましくは0.1〜0.3、特に好ましくは0.1〜0.15である。
また、容器本体5と開口端4の水平切断面との比は、目的とするrHSA製剤3の収容量により種々異なるが、好ましくは0.01〜0.5、より好ましくは、0.1〜0.2、もっとも好ましくは0.1〜0.15である。
本発明におけるプラスチック容器2の容器本体5および開口端4の水平切断面に特に制限はなく、円形状(真円形状、楕円形状)、方形状(正方形状、長方形状)などが挙げられるが、中でも円形状または方形状が好ましい。本発明におけるプラスチック容器2の大きさにも特に制限はなく、収容するrHSA製剤3の量によって、種々選択できるが、例えば、容器本体5の水平断面形状が真円形状である場合、その直径が、10〜150mmであるのが好ましく、50〜100mmであるのがより好ましく、60〜80mmであるのが特に好ましい。また、容器本体の水平断面形状が楕円形状である場合、その長軸/短軸比が1.1以上であるのが好ましく、1.5〜5.0であるのがより好ましく、2.0〜3.0であるのが特に好ましい。また、容器本体5の水平断面形状が方形状である場合、その長辺/短辺比は、1.1以上であるのが好ましく、1.5〜5.0であるのがより好ましく、2.0〜3.0であるのが特に好ましい。
さらに容器本体5の肉厚は、通常、0.2〜2.5mm、好ましくは0.3〜1.5mm、もっとも好ましくは0.4〜0.7mmであり、容器首部8の肉厚は、通常、0.3〜3.0mm、好ましくは0.8〜2.0mm、もっとも好ましくは1.0〜1.5mmである。
プラスチック容器2は、単層でも多層構造でもよく、その形成材料としては特に制限されず公知の樹脂材料を適宜使用することができるが、rHSA製剤の加熱滅菌の温度(40〜60℃)に耐えるとともに、rHSA製剤3を収容したプラスチック容器2の開口端内面温度40〜70℃の温度で、後述するように頭部金型による押圧により密封しうる樹脂材料が好ましい。かかる樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が例示される。具体的には、融点が90〜140℃であり、密度が0.890〜0.940である低密度ポリエチレンなどのポリオレフィンが挙げられる。
本発明におけるプラスチック容器2は、圧力1013.25hPa下において、表面積1m、24時間当りの水蒸気透過量が、温度25℃および相対湿度60%において、1.5g/m/日・1013.25hPa以下(すなわち、6.25×10−3mg/cm/時・1013.25hPa以下)であることが好ましい。水蒸気透過量がこの値を越える容器においては、長期間、例えば800日以上の保存において、rHSA製剤中のrHSA濃度が、表示量に対して110%以上の過剰濃度となり、好ましくない。上記水蒸気透過量の測定は、ASTM E 96の規定に準拠した重量法によって行うことができる。このような水蒸気透過量を実現し得る材料としては、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体などから選ばれる少なくとも1種の樹脂材料が挙げられ、中でもポリエチレンが好ましく、さらには直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの樹脂混合物が好ましい。
さらにヒートシールによって当該プラスチック容器を密封形成する場合には、最内の層が、比較的低温度(約40〜70℃程度)にて熱融着できる材料、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体から形成されることが望ましい。また、rHSA製剤をプラスチック容器に収容した後に、これを蒸気、熱水滅菌を行うこともあり得るが、その場合rHSAを変性させない温度(70℃以下)であることが要求される。
プラスチック容器の製法としては、ブロー成型法とインフレーション法(押出成型法)があるが、本発明のプラスチック容器を製造するには、いずれの製造方法を採用してもよい。rHSA製剤のプラスチック容器の注入は、該製剤を変性させない温度下で、プラスチック容器がrHSA製剤を収容し得る状態であるならば、プラスチック容器の製造時、製造後のいずれの段階で行ってもよいが、特開2000−189492号公報に記載された下記の方法によって、プラスチック容器の成形とrHSA製剤の注入とを一緒に行うのが好ましい。
図2は、特開2000−189492号公報に記載された方法を段階的に示す図である。
まず、(1)一端が閉鎖された円筒状プラスチック成形体(パリソン)21を溶融成形し、(2)該成形体21を本体金型22内部に設置し(図2(a),(b))、(3)マンドレル23を成形体21の上部開口端から押し込み、該成形体21内部に圧縮ガスを吹き込んで容器24を成形し(図2(c))、(4)該成形した容器24の開口端から薬液注入用ノズル25をマンドレル23に挿入して、容器24の底部にまで下降させ、rHSA製剤3を注入し(図2(d))、次いで、(5)得られた容器24の開口端を頭部金型26により押圧して密封する。なお、上記圧縮ガスを吹き込んで容器を成形する工程に代えて、頭部金型26の吸引孔27より本体金型22内を真空にして容器を成形することも可能である。
上述のように型開きした本体金型22内に円筒状プラスチック成形体21を溶融押出し、その一端を金型内で閉鎖した円筒状プラスチック成形体(パリソン)を作製し、該本体金型22内で該成形体21内部に圧縮ガスを吹き込むか、あるいは本体金型22内部を真空にして容器24を成形し、該容器24が未だ本体金型22内にある間に、rHSA製剤3を容器開口端から内部に注入することで、rHSA製剤3が大気にほぼ触れることなく、無菌状態でrHSA製剤3をプラスチック容器に収容することが可能となる。さらに本体金型22の冷却によって容器本体24を急冷した後、プラスチック容器の開口端を頭部金型26により押圧して密封し、頭部金型26の冷却により容器頭部を冷却することで、アルブミン加熱変性物の生成を完全に抑制して、rHSA製剤を収容したプラスチック容器を形成することができる。
上記rHSA製剤を収容したプラスチック容器を製造する方法を行うための装置としては、例えばロメラグ社のボトルパック機などのブローフィルシールシステムが例示されるが、無論これに限定されるものではない。
該容器を製造する条件としては、例えば、以下のとおりである。
(1)一端が閉鎖された円筒状プラスチック成形体21を溶融成形するには、まず、材料であるプラスチックを溶融温度以上に加熱し、筒状のオリフィスを有する押出機から押出し、開かれた金型の間に垂下するように押し出す。
(2)該成形体21を本体金型22内部に設置するには、本体金型22および頭部金型26を有する金型の本体金型22内に、上記溶融した円筒状プラスチック成形体21を重力により垂下させて、設置する。このとき、本体金型22および頭部金型26の温度は、通常、5〜30℃に制御されている。したがって、溶融状態で垂下した円筒状プラスチック成形体21は約100〜150℃に低下している。
(3)該成形体21内部に圧縮ガスを吹き込んで容器24を成形するには、上記円筒状プラスチック成形体21の開口端から圧縮ガス、例えば、空気を吹き込み、上記成形体21を膨張させ、本体金型22内面に接触させて容器24を成形する。このとき、本体金型22の温度が通常、5〜30℃に制御されているから、円筒状プラスチック成形体21本体の温度は、例えば、10〜70℃に低下する。しかしながら、該円筒状プラスチック成形体21の上部であって、本体金型22に接触しない部分(開口端)は、通常、100〜150℃の状態にある。または金型内部を真空にして成形するには、常法に従う。この場合においても、該円筒状プラスチック成形体21の上部であって、本体金型22に接触しない部分(開口端)は、通常、100〜150℃の状態にある。
(4)該成形した容器24の開口端からrHSA製剤3を注入するには、上記円筒状プラスチック成形体から容器を成形した後、できるかぎり速やかに行う。注入するrHSA製剤3の温度は通常、5〜25℃に近いから、該rHSA製剤の注入により、成形された容器本体の温度は、10〜60℃である。しかし、容器開口部の内面温度は、50〜90℃の状態のままである。
(5)得られたプラスチック容器の開口端を頭部金型26により押圧して密封する。これは、容器開口端の内面温度が40〜70℃であるときに行うことが好ましい。
本発明において、rHSA製剤を収容したプラスチック容器は、必要により加熱滅菌に供して、rHSA製剤中に混入する虞のある微生物等を不活性化することが必要である。滅菌条件としては、50〜80℃で30分間以上の加熱を行うことが望ましい。
rHSA製剤を収容したプラスチック容器の保存条件としては、凍結や変性をさけるため、温度5℃〜50℃、相対湿度10%以上であることが望ましい。
本発明におけるプラスチック容器は、図1に簡略化して示す例のように、容器頭部6の上面にゴム状弾性体10が固着されていてもよい。上記のように肩部7と首部8との間、あるいは首部8に、外方に突出するフランジ9を周方向にわたって有する場合には、かしめ部材12を使用し、当該かしめ部材12の底端と溶着し、ゴム状弾性体10を容器頭部6に固着するようにしてもよい。rHSA製剤3を収容するプラスチック容器2の容器頭部の上面にゴム状弾性体10が固着されると、穿刺針がゴム状弾性体10および容器頭部に穿刺してもゴム状弾性体10に穿刺された針穴は閉塞する方向に復元力が作用するので、穿刺針が針穴と当接しrHSA製剤3が外部に漏れることはないという利点がある。ゴム状弾性体10を設ける場合、当該ゴム状弾性体10の外面が熱収縮性保護フィルム11にて被覆されているのが好ましい。これによりゴム状弾性体10への大気汚染物質の付着を防止することができる。上記ゴム状弾性体10の形成材料としては、ブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、シリコーンゴム、エチレン−ポリプロピレンゴム等の合成ゴムまたは天然ゴム等が挙げられる。また、上記熱収縮保護フィルム11の形成材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート、スチレン、塩化ビニル、二軸延伸ポリプロピレンなどを用いることができ、中でもポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。また、かしめ部材12の材料としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等のプラスチックが好ましいが、アルミニウム、ステンレス等の金属、セラミック等でもよい。
〔3〕外包装材
本発明において上記プラスチック容器2を包装する外包装材15は、エチレン−ビニルアルコール共重合体を含む層を少なくとも有するプラスチック製のものであって、ガスバリア性を有することが特徴である。かかるエチレン−ビニルアルコール共重合体を含む層を少なくとも有する外包装材15を用いることによって、上述したような長期の保存安定性に優れたプラスチック容器入り組換えヒト血清アルブミン製剤を得ることができる。ここで、本発明における外包装材15は、圧力1013.25hPa下、温度25℃、相対湿度60%における酸素透過量が、通常、50cm/m/日・1013.25hPa未満であり、好ましくは5cm/m/日・1013.25hPa未満、さらに好ましくは1cm/m/日・1013.25hPa未満である。かかる酸素透過量は、JIS K 7126の規定に準拠した差圧法によって測定することができる。
また、エチレン−ビニルアルコール共重合体を含む層を少なくとも有する外包装材15を使用することによって、比較的小さな厚みでもガスバリア性を示すため、他のガスバリア性材料と比較しても取り扱い性(操作性)がよく、しかも安価に上述のような長期の保存安定性に優れるプラスチック容器入り組換えヒト血清アルブミン製剤を得ることができる、という利点がある。
当該外包装材15は、上記エチレン−ビニルアルコール共重合体を含む層を少なくとも有しているならば、このエチレン−ビニルアルコール共重合体で形成された単層であってもよいし、他の樹脂材料で形成された層をさらに有する複数層であってもよい。
外包装材15が単層からなる場合には、エチレン−ビニルアルコール共重合体のみで調製されていてもよく、また、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、架橋エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリブテン、ポリエステル、エチレン共重合体から選ばれる少なくとも1種(好ましくは、2種以上)とエチレン−ビニルアルコール共重合体との混合物から調製されていてもよい。なお、エチレン−ビニルアルコール共重合体のみで形成された単層の外包装材は、その厚みにもよるが、他のガスバリア性材料で形成した場合と比較して透明性に優れるという利点もある。
また外包装材15が複数層である場合には、エチレン−ビニルアルコール共重合体を含む(樹脂)層は、最外層、最内層、中間層のいずれに位置していてもよい(中間層が複数ある場合には、そのいずれの位置でもよい)。かかる場合、エチレン−ビニルアルコール共重合体を含む層以外の層の形成材料としては、上述したエチレン−ビニルアルコール共重合体と混合されてもよい樹脂として上記例示したものを好適に使用することができる。外包装材が複数層である場合、具体的には、ポリエチレンにて形成された最内層、エチレン−ビニルアルコール共重合体にて形成された中間層、ならびにナイロンにて形成された最外層を有する多層構造の外包装材が好適なものとして例示される。
また、上記のように外包装材15が複数層(最内層、最外層、および必要に応じ1または複数の中間層)である場合、各層の厚みは、種々選択することができるが、少なくともエチレン−ビニルアルコール共重合体で形成された層について、上述した酸素透過量を満足するようにその厚みを選択する(好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜30μm)。
本発明のプラスチック容器入り組換えヒト血清アルブミン製剤1は、上記rHSA製剤3を収容したプラスチック容器2を、上記外包装材15にて包装する。ここで「包装」とは、外包装材が、rHSA製剤を収容したプラスチック容器の少なくとも容器本体を、好適にはプラスチック容器全体を、完全にその内部に収容するように覆い、包み込んでなることを指す。外包装材15の形状については特に制限されるものではないが、取扱い性の観点から、薄膜であることが好ましい。その厚み(多層の場合には、全ての層の厚みの総計)は、5〜1000μmであるのが好ましく、10〜500μmであるのがより好ましい。
外包装材15は、従来公知の適宜の製造方法、例えば、ブロー成型法、インフレーション法(押出成型法)などを用いて製造することができる。また、rHSA製剤3を収容するプラスチック容器2を外包装材15にて包装する方法としては、従来公知の適宜の方法、例えば、プラスチック容器を収容後に外包装材の開口部をシールする方法などが挙げられる。
本発明においては、上記のようにrHSA製剤3を収容するプラスチック容器2を外包装材15にて包装する際に、rHSA製剤3に対する酸素の影響をさらに抑制すべく、プラスチック容器2と外包装材15との間の空間部16に脱酸素剤が収容されてなるのが好ましい。脱酸素剤としては、従来公知の適宜の市販品、たとえば、エージレス(三菱ガス化学株式会社製)、タモツ(王子タック株式会社製)などを特に制限なく使用することができる。さらに酸素による暴露を受けたかどうかを確認するために酸素検知剤(商品名:エージレスアイ(三菱ガス化学株式会社製))などを収容していてもよい。
【実施例】
次に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(1)rHSAの調製
rHSA産生酵母菌ピキアパストリスの取得およびその培養については、特開平5−317079号公報に記載された方法に準じて行った。得られた培養液からrHSAを回収・精製するには、特開平8−116985号公報に記載された方法に準じて、培養液の加熱処理→吸着体粒子処理(ストリームラインSP処理)→加熱処理→疎水性クロマト処理→陰イオン交換体処理→キレート樹脂処理→ホウ酸・塩処理を行った。
調製されたrHSAは5(w/v)%溶液に調整し、さらにカプリル酸ナトリウムおよびアセチルトリプトファンナトリウムを当該溶液100mL当たり各々66.5mgおよび107.3mg添加した後に、0.22μmフィルター(ミリポア社製)を用いて除菌濾過することにより、rHSAを注射剤として使用することができる。その組成は、塩化ナトリウム含量3.7mg/mL以下、pH6.4〜7.4、浸透圧比約1(生理食塩水に対する比)であった。
(2)精製rHSA(含有組成物)の性状
〔HPLC分析〕
rHSAをHPLCゲル濾過により分析した。ゲル濾過分析は下記の条件で行った。
(a)カラム:TSK gel G3000SW(東ソー社製)
(b)展開液:0.1M KHPO/0.3M NaCl緩衝液
(c)検出:波長280nmでの吸光度
精製rHSA含有組成物における主ピークはrHSAのモノマーに相当するものであった。
〔酵母由来成分分析〕
HSA非産生酵母の培養上清を本法と同様の方法で粗精製したものをウサギに免疫し、得られた抗血清を用いて精製rHSA含有組成物中に存在する酵母由来成分の検出を行った。測定は酵素免疫測定法(EIA法)で行った。酵母由来成分量はrHSA250mg当たり1ng未満であった。
〔分子量〕
分子量測定は前述のHPLCゲル濾過法によった。本発明の精製rHSA含有組成物中の、rHSAの分子量は約67000であった。
〔等電点〕
等電点は薄層ポリアクリルアミドゲルを用い、Allenらの方法[J.Chromatog.,146,p1(1978)]に準じて測定した。本発明の精製rHSA含有組成物中の、rHSAの等電点は約4.9であった。
〔着色度〕
着色度は280nm、350nm、450nm、500nmでの吸光度を測定し、A350/A280、A450/A280、A500/A280を算出した。本発明の精製rHSA含有組成物の着色度はA350/A280で約0.015、A450/A280は約0.01、A500/A280は約0.002であった。
〔パイロジェンの測定〕
生化学工業のエンドスペシーを用いて測定したところ、パイロジェン量はrHSA250mg当たり0.5EU未満であった。
(3)プラスチック容器の成形およびrHSA製剤の注入
密度0.906g/cmの低密度ポリエチレン(DEFD−1137、日本ユニカー社製)を溶融し、押出しノズルから押出温度190℃で円筒状に押出し、一端が閉鎖した円筒状成形体21(パリソン)を製造した。このパリソン21を割金型の間に下降させ(図2(a))、本体金型22を型締めした(図2(b))。次いで、マンドレル23をパリソン21の上部開口端から押し込み、圧力3kg/cmで加圧空気をブローし、容器本体24を成形した。この時の本体金型22の温度は50℃であった(図2(c))。その後、薬液注入用ノズル25をその先端が容器本体24の底部まで下降させ、5(w/v)%rHSA水溶液250mLを容器本体24に注入した(図2(d))。次いで、薬液注入用ノズル25を上昇させ、開口端内面温度40℃において、頭部金型26を型締めし、吸引孔27から真空成形して容器頭部6を形成するとともに容器開口端4を密封した(図2(e),図2(f))。
(4)外包装材による包装
第1層(最内層)直鎖状低密度ポリエチレン50μm、第2層エチレン−ビニルアルコール共重合体15μm、第3層(最外層)ナイロン15μm、の3層からなる外包装材(藤森工業製、外寸:約160mm×260mm(シール幅:10mm)、内寸:約140mm×240mm)を準備した。本外包装材はガスバリア性(25℃、60%相対湿度(RH)における酸素透過量が約0.5cm/m・24hr・1013.25hPa以下(JIS K 7126の規定に準拠した差圧法にて測定))を有する。上記(3)で作製した、5(w/v)%のrHSA製剤50mLを収容したプラスチック容器を、当該外包装材にて包装し、さらにその際、プラスチック容器と外包装材との間に脱酸素剤(エージレスZH100、三菱ガス化学株式会社製)を収容した。
その後、60℃で30分間の加熱滅菌を施し、本発明のプラスチック容器入り組換えヒト血清アルブミン製剤を得た。
比較例1
外包装材でプラスチック容器を包装しなかったこと以外は、実施例1と同様にした。
〔評価試験〕
実施例1、比較例1にて作製したプラスチック容器入り組換えヒト血清アルブミン製剤を、50℃、相対湿度75%条件下に60日間放置した後、以下の3項目について評価した。
・外観
目視により外観を評価した。
・rHSA重合体の含有量
各rHSA製剤について、上述のHPLCゲル濾過法により測定し、二量体以上の高分子量画分を重合体として算出した。
・アンモニア含有量
各rHSA製剤の5倍希釈液を限外ろ過膜(分子量3万カット、アミコン社製セントリコン−30)で限外濾過し、得られた濾液を試料溶液とした。試験は、日局・一般試験法のアンモニア試験法により行い、インドフェノール(λmax、640nm)の吸光度測定により定量した。
結果を表1に示す。なお、表中のNDは、定量限界(1.68μg/mL)以下であり、定量できなかったことを意味する。

結果、脱酸素剤とともにガスバリア性の外包装材で包装することにより外観の変化、アンモニア含有量および重合体含有量の増加を抑制することができた。すなわち、この効果は酸素暴露の影響を抑えたことによるものであると推察された。
また、rHSA製剤ではなく、血漿由来HSAを使用した以外は、上記実施例1、比較例1とそれぞれ同様のサンプルを作製し、これらについて同様の評価試験を行ったところ、外装材の有無は、重合体含量に影響しなかった。
産業上の利用分野
本発明によれば、外包装材として、エチレン−ビニルアルコール共重合体を含む層を有するガスバリア性、特に低酸素透過性、のプラスチック製のものを使用し、さらに脱酸素剤と組み合わせることにより、遺伝子組換え技術を用いて調製した組換えヒト血清アルブミン製剤をプラスチック容器に収容して製剤化しても組換えヒト血清アルブミン製剤の重合体形成、ならびにアンモニア含有量の増加を従来よりも格段に抑制することができ、長期間安定に保存することが可能となった。したがって、より利便性に優れた組換えヒト血清アルブミン製剤を医療の場に提供することができる。
本出願は、日本で出願された特願2003−195191を基礎としておりそれらの内容は本明細書に全て包含される。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えヒト血清アルブミンの液状製剤を収容するプラスチック容器と、当該プラスチック容器を包装する、エチレン−ビニルアルコール共重合体を含む層を少なくとも有するガスバリア性外包装材とを備えるプラスチック容器入り組換えヒト血清アルブミン製剤。
【請求項2】
プラスチック容器と外包装材との間に脱酸素剤が収容されてなることを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
外包装材のエチレン−ビニルアルコール共重合体を含む層の厚みが5〜50μmである請求項1または2に記載の製剤。
【請求項4】
外包装材の厚みが5〜1000μmである請求項1〜3のいずれかに記載の製剤。
【請求項5】
外包装材の酸素透過量が、温度25℃、相対湿度60%において、50cm/m/日・1013.25hPa未満である、請求項1〜4のいずれかに記載の製剤。
【請求項6】
外包装材が、ポリエチレンにて形成された最内層、エチレン−ビニルアルコール共重合体にて形成された中間層、ならびにナイロンにて形成された最外層を有する多層構造である、請求項1〜5のいずれかに記載の製剤。
【請求項7】
組換えヒト血清アルブミンの液状製剤中の組換えヒト血清アルブミン濃度が1〜500mg/mLである、請求項1〜6のいずれかに記載の製剤。
【請求項8】
プラスチック容器の材料が、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、またはエチレン−酢酸ビニル共重合体である、請求項1記載の製剤。
【請求項9】
組換えヒト血清アルブミンの液状製剤が、プラスチック容器中に、無菌状態で密封されている、請求項1記載の製剤。
【請求項10】
成型金型内においてプラスチック容器が成型された後、該プラスチック容器がまだ成型金型内にある間に、該プラスチック容器内に組換えヒト血清アルブミンの液状製剤が注入され、かつ、開口部が金型によって押圧されて密封されている、請求項9記載の製剤。
【請求項11】
組換えヒト血清アルブミンの液状製剤中の二量体以上の組換えヒト血清アルブミン重合体の含有量が3.8%以下である、請求項1〜10のいずれかに記載の製剤。
【請求項12】
組換えヒト血清アルブミンの液状製剤中のアンモニア含有量が4.60μg/mL以下である、請求項1〜11のいずれかに記載の製剤。

【国際公開番号】WO2005/004902
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【発行日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511583(P2005−511583)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010064
【国際出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【出願人】(000006725)三菱ウェルファーマ株式会社 (92)
【Fターム(参考)】