説明

プラズマの機械的閉じ込めのための磁気による改善

【課題】基板を処理するプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】チャンバ壁を持つプラズマ処理チャンバが提供される。基板支持部が前記チャンバ壁内に提供される。少なくとも1つの閉じ込めリングが提供され、前記閉じ込めリングおよび前記基板支持部はプラズマ空間を定義する。前記少なくとも1つの閉じ込めリングによって提供される物理的閉じ込めを磁気的に向上させる磁界を発生する磁界源が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉じ込めリングを持つプラズマ処理チャンバに関する。
【背景技術】
【0002】
2000年2月1日に発行されたEric H. Lenzによる「Cam-Based Arrangement For Positioning Confinement Rings In A Plasma Processing Chamber」と題された米国特許第6,019,060号は、プラズマをある容積内に閉じ込めるために閉じ込めリングを用いるプラズマ処理エッチングチャンバを開示する。閉じ込めリングは、プラズマチャンバ壁内に置かれ、プラズマおよび他のガスがチャンバ壁に到達する量を減らし、閉じ込めリング内の圧力を維持し、閉じ込めリングを越えるガスのフローを制御する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
さまざまなプラズマ処理のあいだ、チャンバ壁に到達するプラズマおよび他のガスの量を最小化しつつ、閉じ込めリングを越えるガスのフローを増すことが望ましいこともありえる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前述のことを達成するために、本発明の目的にしたがって、基板を処理する方法が提供される。処理チャンバ中に前記基板が置かれる。前記処理チャンバにガス源からのガスが供給される。前記処理チャンバ中で前記ガスからプラズマが発生される。前記プラズマの物理的閉じ込めを提供するために、少なくとも1つの閉じ込めリングに隣接するギャップを通して前記ガスが流れる。前記プラズマの前記物理的閉じ込めを向上させるために前記プラズマの磁気的閉じ込めを提供される。
【0005】
本発明の他の実施形態において、基板を処理するプラズマ処理装置が提供される。チャンバ壁を持つプラズマ処理チャンバが提供される。基板支持部が前記チャンバ壁内に提供される。少なくとも1つの閉じ込めリングが提供され、前記閉じ込めリングおよび前記基板支持部はプラズマ空間を定義する。前記少なくとも1つの閉じ込めリングによって提供される物理的閉じ込めを磁気的に向上させる磁界を発生する磁界源が提供される。
【0006】
本発明のこれらおよび他の特徴は、本発明の詳細な説明において、添付の図を参照して以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態において用いられえるプラズマプロセスチャンバの概略図である。
【図2】図1に示される実施形態中の閉じ込めリングおよび上部磁石の上面概略図である。
【図3】第1ペアの磁石を持つ閉じ込めリングの一部の拡大図である。
【図4】閉じ込めリングの一部の上面図である。
【図5】本発明の他の実施形態の上面図である。
【図6】本発明の他の実施形態の概略断面図である。
【図7】図6に示される実施形態の閉じ込めリングおよび上部磁石リングの上面概略図である。
【図8】閉じ込めリング付近の局所プラズマ密度および/または電子温度を上昇させる磁界を用い、よって閉じ込めリングにおけるプラズマの密度を減らし、物理的閉じ込めを向上させるプロセスチャンバの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、添付の図面の図において、限定によってではなく、例示によって示され、図中で同様の参照番号は同様の要素を示す。
【0009】
本発明は、添付の図面に示されるように、そのいくつかの好ましい実施形態を参照して詳細に説明される。以下の記載において、本発明の完全な理解を提供するために多くの具体的な詳細が述べられる。しかし当業者には、本発明はこれら具体的な詳細の一部または全てがなくても実施できることが明らかだろう。他の場合には、本発明の趣旨を不必要にぼかさないために、よく知られたプロセスステップおよび/または構成は詳細に記載されていない。
【0010】
理解を促すために、図1は、本発明の実施形態において用いられえるプラズマプロセスチャンバ100の概略図である。プラズマ処理チャンバ100は、閉じ込めリング102、上側電極104、下側電極108、ガス源110、および排気ポンプ120を備える。プラズマ処理チャンバ100内で、ウェーハ180は、下側電極108上に配置され、これはウェーハの支持を形成する。下側電極108は、基板ウェーハ180を保持するための適切な基板チャッキングメカニズム(例えば静電、機械的クランピングなど)を組み込んでいる。リアクタ上部128は、下側電極108にすぐに対向して配置される上側電極104を組み込んでいる。チャンバ空間(chamber volume)は、チャンバ壁152、チャンバシーリング107およびフロア109によって定義される。チャンバ空間内で、上側電極104、下側電極108、および閉じ込めリング102は、閉じ込めプラズマ空間(confined plasma volume)140を定義する。
【0011】
複数の磁石112、114、116、118は、閉じ込めリング102の領域内に磁界を形成するように閉じ込めリング102の周りに配置される。磁石112、114、116、118は、閉じ込めリング群の領域内に磁界を提供するように配置される。この実施形態において、これは、磁石をペアで提供することによって達成される。磁石112、114の第1ペアは、示されるように、閉じ込めリング102の反対側に互いに間隔が置かれて配置される。磁石116、118の第2ペアは、示されるように、閉じ込めリング102の反対側に互いに間隔が置かれて配置される。図2は、閉じ込めリング102および上部磁石112、116、204の上面概略図である。第1ペアの磁石の上部磁石112は、閉じ込めリング102の周縁の一部であるように上で示される。第2ペアの磁石の上部磁石116は、第2ペアの磁石の上部磁石112から延びる閉じ込めリング102の直径の反対側にある閉じ込めリング102の周縁の一部であるように上で示される。追加上部磁石204は、示されるように閉じ込めリング102の周縁上の円形を形成する。この実施形態において、上部磁石の全ての上部の極は、N極であり、よって磁石は隣接する磁石間で交互にはならない。閉じ込めリング102は、内側直径D1および外側直径D2を有する。上部磁石112、116、204によって形成されるリングは、直径D3を有する。この実施形態において、上部磁石112、116、204によって形成されるリングD3は、閉じ込めリング102の外側直径D2よりも小さく、閉じ込めリングの内側直径D1も大きい。
【0012】
ガスは、ガス源110によって閉じ込めプラズマ空間に供給され、閉じ込めリング102を通して閉じ込めプラズマ空間から、排気ポンプ120を通して排気ポートへ排気される。第1RF源144は、電気的に上側電極104に接続される。第2RF源148は、電気的に下側電極108に接続される。第1RF源144および第2RF源148は、27MHz電力源および2MHz電力源を備えうる。RF電力を電極に接続する異なる組み合わせが可能である。本発明の好ましい実施形態において用いられえる追加の磁石で変更されたカリフォルニア州、FremontのLAM Research Corporation(登録商標)によって作られたExelan HPの場合、両方のRF源は、下側電極に接続され、上側電極は接地される。コントローラ149は、ガス源、第1および第2RF電力源144、148、閉じ込めリング102、および排気ポンプ120に制御可能に接続されえる。
【0013】
動作において、高いガスフローレートが望ましいエッチングが用いられる。閉じ込めリング102は、閉じ込めリング102によって生じるフロー抵抗を低減するために、閉じ込めリング間で大きなギャップを提供するよう調整され、これは閉じ込めリング102を通って排気ポンプ120へのガスのフローレートを増す。閉じ込めリングを通してのガスのフローの増加で、イオンおよび汚染物質の増加も閉じ込めリングを通って流れて、チャンバ壁152を汚染する。
【0014】
磁石の目的は、閉じ込めリングと共に働いて、帯電粒子(イオンおよび/または電子)の閉じ込めを増し、一方で、中性ガスの高いフローレートを許すことである。この例では、増加された閉じ込めは、閉じ込めリングと衝突する帯電粒子のパーセンテージだけ磁界を増すようにすることによって達成される。
【0015】
図3は、本発明のこの実施形態の一般的な動作を示す第1ペアの磁石112、114を持つ閉じ込めリング102の一部の拡大図である。本発明の背景にある理論のより詳細な記載は、後で提供される。磁石112、114間の磁力線304が示される。磁力線304は、閉じ込めリング102を通る。
【0016】
帯電粒子のさまざまな例が示される。第1帯電粒子軌跡320は、下側閉じ込めリング102に衝突するよう導かれる。そのような場合、磁界304は、そのような粒子の閉じ込めにおいて役立つためには必要とされない。プラズマが閉じ込めリングを通って通過することを防ぐことは、閉じ込めリング(物理的閉じ込め)だけによってなされる。第2帯電粒子軌跡324は、閉じ込めリング間を通過する粒子の通常のパス長(normal path length)内で閉じ込めリング102に衝突するようには導かれず、閉じ込めリング102と平行ではなく、よって粒子は閉じ込めリングのうちの一つに近づく。そのため、磁界304を通過する粒子は、粒子パスの軌跡が曲げられる。この実施形態においては、軌跡は曲げられ、閉じ込めリング102間の粒子パス長(particle path length)は増す。増されたパス長は、粒子が閉じ込めリングと衝突することを引き起こすだけ充分に、粒子の閉じ込めリングへの接近を生じる。したがって、これら帯電粒子が閉じ込めリング間を通過することを防ぐことが磁界によって高められる。第3帯電粒子軌跡328は、ほとんど閉じ込めリング102に平行である。そのために、磁界304を通過する粒子は、粒子パスの軌跡が曲げられる。この軌跡は曲げられ、閉じ込めリング102間の粒子パス長を増す。これら粒子は、閉じ込めリング102に充分に平行であるので、増されたパス長にもかかわらず、これら粒子は閉じ込めリングと衝突しない。したがって、閉じ込めリングの物理的閉じ込めおよび磁気の増強は、これら粒子が閉じ込めリングと衝突することを引き起こさない。これら粒子は、他の粒子と衝突しえ、それらの軌跡において変更を生じ、これはそれらが閉じ込めリング102と衝突することを引き起こしえる。
【0017】
さまざまな方式の下で、物理的閉じ込めは充分であるが、これは閉じ込めリングが充分に近くに維持され、その結果、帯電粒子の充分な数が閉じ込めリングと衝突するからである。しかし、あるプロセスにおいては、中性ガスの高いフローが望まれる。そのような場合、閉じ込めリングは、中性ガスのより高いフローがギャップ内を排気ポンプ120へ通過することを許すよう、より大きなギャップを形成するよう分離される。より大きなギャップは、閉じ込めリングとの衝突から帯電粒子のより低い割合を生む。磁界の存在は、閉じ込めリングと衝突する帯電粒子の割合を増す。プラズマ消滅線(plasma extinction line)332は、プラズマが消える境界である。示されるように、プラズマは、閉じ込めリング102間で消え、よって閉じ込めリング102を越えては延びず、プラズマチャンバの壁には届かず、これはプラズマがプラズマチャンバの壁に障害を与えたり、汚染したりすることを防ぐ。プラズマの閉じ込めは、ポリマーの堆積物の閉じ込めにつながることがわかっている。閉じ込めリング102と衝突する帯電粒子の割合が増えるにつれ、ポリマーガスを用いるプロセスについては、閉じ込めリング336上に形成するポリマーの割合が増え、プラズマチャンバの壁上に形成するポリマーの割合が減ることがわかっている。これは、チャンバ壁からの汚染の量を減らすのに望ましい。
【0018】
磁界は、プラズマチャンバの内側シーリング107およびフロア109と衝突するイオンおよび電子のパーセンテージを増しえることに注意されたい。内側シーリング107およびフロア109は、閉じ込めリング102と共に、これらの実施形態においては、ガスが排気されえる3つのギャップを提供することによって、物理的閉じ込めシステムを形成し、これらは内側シーリング107および閉じ込めリングの上部表面の間の第1ギャップ、閉じ込めリング群102間の第2ギャップ、およびフロア109および閉じ込めリングの下部表面の間の第3ギャップである。最も広いギャップは、閉じ込めリング群102間のものである。
【0019】
磁石の追加と共に本発明が実施されえる装置の例は、カリフォルニア州、FremontのLAM Research Corporation(登録商標)によって作られたExelan HPである。そのような装置について、フローレートは、好ましくは100および300sccmの間である。
【0020】
上述の磁気軌跡伸長(Magnetic Trajectory Extension、MTE)の後ろにある基本原理は、閉じ込めは、閉じ込めリング群の間のプラズマの消滅に主に依るという考えに基づく。この考えは、もし固定された閉じ込めリングギャップのままで、閉じ込めリングの実効長が伸ばされるなら、閉じ込めが向上するということを示唆する。これは、リングの表面での衝突によって失われるより多くの機会を有するイオンおよび電子による。プラズマがリング間で伝搬するとき、損失は結局大きくなり、プラズマは最後には消える。もしこの行程長(length of travel)が伸長されえるなら、閉じ込めが向上されえると期待できる。この概念は、実効的にイオンおよび電子の両方の軌跡を伸ばし、それによってリング間のプラズマ損失の機会が増されるようにするために、上述のように磁石によって作られた磁界を用いる。図4に示されるように、これら磁石は磁界を作り、これはイオンおよび電子が半径ρ(すなわち「ラーマー」半径ρ)を持つ湾曲した軌跡に従うことを引き起こす。図4は、閉じ込めリング102の一部の上面図である。磁力線304は、示されるように紙面から出てくる。磁界は、軌跡パス408を持つ粒子が、円412のパスに従って湾曲した軌跡を移動するようにさせる。軌跡416は、もし磁界が存在しなかったら生じるであろう軌跡である。見られるように、磁界から円412に沿った軌跡のパスは、もし磁界が存在しなかったなら、軌跡416より大きい。これは、イオンおよび電子が閉じ込めリングを横切るのに必要する時間を延長することにつながる。この例では、目的は、実際に磁気的にプラズマを閉じ込めることではない。もし半径ρが閉じ込めリング長とほぼ同じであるなら、閉じ込めリング滞在時間(つまり実効的閉じ込めリング長)の大幅な増加が見込める。
【0021】
例示目的で、閉じ込めリングは、0.06メートルの幅で、これは閉じ込めリング群の内側半径および外側半径間の差である。イオンは、450°Kの温度を有するものと仮定される。平均してイオンは、イオン熱速度を持って閉じ込めリング領域に入ると仮定される。450°Kの温度において、イオン熱速度は、
【数1】

である。
よって必要とされる最小磁界は
【数2】

で与えられる。
ここでρiは、軌道の半径、eはイオンの電荷(単一のイオン化が仮定される)。この例示的計算の目的では、アルゴンが仮定される。アルゴンは、40×1.67×10-27kgの質量を有する。
【0022】
この同じ磁界は、電子に影響も与えることに注意されたい。電子の振る舞いを考慮するために、平均的には電子は、閉じ込め領域に電子熱速度で入ると仮定される。電子は、4eV(46,400°K)の温度を有すると仮定される。4eVの温度において、電子の熱速度は、
【数3】

である。30ガウスにおいて、電子軌跡の曲率半径ρeは、
【数4】

によって与えられる。
【0023】
これは、0.06メートルのイオン半径よりずっと小さい。これは電子の質量が軽いという事実の結果に他ならない。さらに、電子は閉じ込め領域により高い速度で入り、よってより大きい磁力の影響を受ける。上述の結果を調べることによって、閉じ込め向上のために、イオン軌跡が充分に曲げられるなら、電子軌跡はもっと大きく曲げられることは明らかである。よって、この議論の残りについては、イオン閉じ込め向上に必要とされる磁界だけが考慮される。
【0024】
イオン閉じ込め向上のために上で決定された磁気的値は技術的に達成が容易であることに注意されたい。例えば、2,000ガウスの磁界と見積もられるサマリウムコバルト磁石を見つけるのはふつうである。この応用例について必要とされる磁界の小ささは、さらなる利点を示唆する。任意の磁気的閉じ込めの概念を考慮するとき、地磁気のようにウェーハにわたっての磁界が同じオーダーの大きさであるよう、磁界を構成することがふつうは望まれる。地磁気の磁界は0.6ガウスである。もし小さい磁界で始めるなら、この要件を得ることにおける困難さは減る。
【0025】
用いられる永久磁石は、実質的に磁気ダイポールとして構成される。そのような磁界は、ダイポール的な性質を有することになる。よって、磁石の中心線から離れる距離の3乗に反比例してB磁界が減衰することが予想されよう。そのような数字を用いると、以下の関係を用いることによって空間減衰を推定できる。
【数5】

これは、実際の磁界空間減衰の近似でありえるが、この分析は本発明の一般的な動作を反映する。
【0026】
さらなる関心は、イオン中性衝突レート(ion-neutral collision rate)である。イオン中性衝突レートは、ここで概要が説明された概念を用いるシステムについて圧力に上限を設定する効果を有する。もし歪められたイオンが、その曲げられた軌跡の大部分を完了することなく、中性粒子と多くの衝突を経るなら、それは上で仮定されたような湾曲した軌道に実際に従うかがあやしくなる。望まれる効果は、経るか、または失われるかである。この効果は、中性−中性衝突平均自由行程は、イオン−中性衝突平均自由行程を最もよく予想することを仮定することによって、予測されえる。作用ガスは、50mTの圧力におけるアルゴンであると仮定される。イオン−中性衝突平均自由行程は、
【数6】

と予測される。剛体球断面σhardsphere=9.73×10-16cm2が仮定されている。閉じ込めリングが6cm幅である仮定すると、閉じ込めリングを横切るあいだに約10衝突が予想される。これはかなり大きな数字であり、50mTより上の圧力においては、磁気向上の効果は大きく損なわれることを示唆する。ラーマー半径が衝突長にほぼ等しいように磁界を増すことによって、この効果は減らされる。50mTの場合について、ラーマー半径0.6cmが用いられえる。この曲率半径を達成するために、210ガウスのB磁界が必要とされる。
【0027】
図5は、本発明の他の実施形態の上面図である。図5は、複数の磁石112、114、116、118、204が、閉じ込めリング102の上の内側リング磁石504と置き換えられ、下側リング磁石が閉じ込めリングの下に配置される点を除いて、配置図1〜4に示されるのと同じプロセスチャンバを用いえる。上側リング磁石504は、前の実施形態における上側磁石の領域を通る。下側リング磁石は、前の実施形態における下側磁石を通る。そのような構成は、より均一な磁界を提供するだろう。
【0028】
図6は、本発明の他の実施形態の概略断面図である。この実施形態におけるプロセスチャンバ600は、勾配付き磁界が与えられることを除いて、図1のプロセスチャンバと同じであってもよい。したがって、この実施形態において、複数の磁石は、リング形状の上部磁石612およびリング形状の下部磁石614を備え、上部磁石612の直径は、下部磁石614の直径より大きい。その結果、磁力線608は、上側磁石612および下側磁石614の間で作られ、これは、閉じ込めリング102の最も大きな表面に対して勾配が付けられている(垂直ではない)。
【0029】
図7は、閉じ込めリング102および上部磁石リング612の上面概略図である。上部磁石リング612は、閉じ込めリング102の周縁の一部の上にあるものとして示される。この実施形態においては、上部磁石リング612は、閉じ込めリング102の内側端の近くにあり、一方、底部磁石リング614は、閉じ込めリング102の外側端の近くにある。この概念は、閉じ込めリング102間で移動する距離を増すことだけに頼るだけでなく、帯電粒子を閉じ込めリング102へ磁気的に曲げることによって、帯電粒子のリングへの衝突レートを増す。
【0030】
予備的分析の目的で、磁石は、B磁界が閉じ込めリングによって形成される平面に45°の角度を作るように配置されえると仮定される。さらに、閉じ込めリング間のギャップ間隔は、1.12cm(約1/2インチ)であると仮定され、これは、非常にアグレッシブなギャップであり、商業的に典型的にしばしば用いられてきたものよりもずっと大きい。
【0031】
必要とされる磁界の計算は、閉じ込めリングの平面の法線方向において約0.5cmのラーマー半径が望ましいことにまず注意することによって始まる。再び、450°Kの温度が仮定される。イオンは、閉じ込めリング領域に、イオン熱速度に等しい平均速度で入るとも仮定される。450°Kの温度において、イオン熱速度は、
【数7】

である。したがって、必要とされる最小磁界は(0.5cmをメートルに変換して)、
【数8】

であり、ここでρiは、軌道の半径、eはイオンの電荷(単一のイオン化が仮定される)である。この例示的計算の目的では、アルゴンが仮定される。アルゴンは、40×1.67×10-27kgの質量を有する。
【0032】
仮定されたラーマー半径は、上で50mTの中性圧力について計算されたイオン−中性衝突長より小さい。これらの値から、50mTまでの圧力については、衝突は大きくこのアプローチに影響しないかもしれないことが推測されえる。100mTにおいて、イオン−中性衝突長は、約0.3cmの値に減らされえる。よって100mTにおいては、閉じ込めリングと衝突する前に、1つか2つの衝突しか予想されえない。この衝突レートは、磁気的偏向の振る舞いにわずかに影響を与えうるだけで、向上された閉じ込めはやはり観測されえる。
【0033】
もしより高い圧力における改善された閉じ込めパフォーマンスが望まれるなら、より大きい磁界は必ずしも役には立たないが、それは所望の閉じ込めリング間隔の1/2よりも小さいラーマー半径が望まれないからである。
【0034】
図1および図6に示される実施形態において、磁界は、閉じ込めリング102を通り、そこでは磁界は閉じ込めリングと交差する。加えて、これら実施形態は、閉じ込めリングと衝突する帯電イオンまたは電子のパーセンテージを増すために、磁界を用いる。閉じ込めリングと衝突するイオンまたは電子のパーセンテージを増すためには、さまざまな他の磁気的構成が用いられえる。例えば、隣接磁石は、交互の磁界を有しえ、つまり磁気ペアを形成する磁石は、それらの磁極が反対方向に配置されえる。これら実施形態においては、磁石リングあるいは複数の磁石が用いられようとも、磁石は半径方向について対称であることが望ましい。これらの実施形態において、磁石は閉じ込めリングの上または下に配置される。これは、中の詰まったリングとして、または環状に配置されたより小さい磁石としてのいずれかで、リング内に磁石群を形成することによってなされえる。磁石によって形成されるリング形状の直径は、閉じ込めリングの外側直径よりも小さく、閉じ込めリングの内側直径よりも大きい。
【0035】
図8は、閉じ込めリング付近の局所プラズマ密度および/または電子温度を上昇させる磁界を用い、よって閉じ込めリングにおけるプラズマの密度を減らし、物理的閉じ込めを向上させるプロセスチャンバ800の概略図である。この実施形態において、磁石812、814は、図8に示されるように、閉じ込めリング内の領域の上および下に位置に動かされる。磁石付近の密度の局所的増加は、そうでなければ存在するはずの磁石および閉じ込めリングの間のより急速なプラズマ減衰につながりえ、リングの前面における低減された密度を生む。代替として、このアプローチは、磁石位置におけるプラズマ電位も上昇しえる。これは、局所プラズマ電子温度を上昇させるホットエレクトロンの優先的閉じ込めのためであろう。これは、「正の」(イオン閉じ込めの)向きにおけるプラズマ電位の局所上昇を生みえる。それからこれはプラズマ閉じ込めを助けうる。プラズマ密度および/または電子温度の局所上昇を達成するためには、電子軌跡は、向上を得ようとしている領域のスケールサイズよりも小さい曲率半径(すなわち「ラーマー半径」)を有しなければならない。予想としては、そのような電子は、失われる前にいくつかのジャイロ軌道を完了し、よって中性ガスの局所イオン化を向上させる。
【0036】
この実施形態の例では、21ガウス磁界が電子ラーマー半径0.23cmを与えると予想される。プラズマ向上が望まれる領域は、この例では、1.5から2cmの範囲である。よって、21ガウスの磁界なら充分だろう。
【0037】
磁界が閉じ込めリング内に形成された開口を通るこの実施形態および磁界が閉じ込めリングを通る前の実施形態において、磁界は、閉じ込めリングの領域を通るものとして一般に定義されえる。
【0038】
この実施形態において、磁石リングまたは複数の磁石が用いられるにかかわらず、磁石は半径方向に対称的であるのが望ましい。この実施形態において、磁石は、閉じ込めリングの上および下に配置される。これは、中の詰まったリング、またはリング形状に配置されたより小さい磁石群のいずれかとして、磁石をリング内に形成することによってなされる。磁石によって形成されるリング形状の直径は、閉じ込めリングの内側直径よりも小さい。チャンバは、さまざまな向きにおいて配置されえるので、磁石の配置は、閉じ込めリングの第1の側、および第1の側と反対の閉じ込めリングの第2の側上にあるものとして、より一般的に記載されえ、ここで閉じ込めリングの上および下に磁石を配置することは、そのような配置の一例である。
【0039】
一般に、プラズマチャンバは、電極ギャップに対する高いウェーハ直径比を有する。典型的なウェーハサイズは300mmでありえる。一般に、下部電極は、ウェーハとほぼ同じサイズであり、したがって下部電極も約300mmである。そのようなウェーハ直径について、典型的な電極ギャップは、約2cmである。したがって、電極ギャップに対するウェーハまたは下部電極直径の比は、この例では300:20、つまり15:1になる。典型的な電極ギャップに対するウェーハ直径の比は、6:1から60:1になる。
【0040】
磁界は、物理的閉じ込めを向上させるが、物理的閉じ込めを閉じ込めしないので、好ましくは磁石は、閉じ込めリング間のギャップ内部へと延びず、または閉じ込めリング間のギャップを越えない。より好ましくは、さまざまな実施形態に示されるように、磁石は、チャンバ内へ延びず、よって上部磁石は、チャンバシーリングの下に延びず、下部磁石はチャンバフロアの上に延びない。
【0041】
本発明の他の実施形態は、閉じ込めリングを用いる物理的閉じ込めへ追加の磁気的閉じ込めを提供する他の磁石構成を有しえる。上述のように、磁石は、代替の磁界を提供するように配置されえる。これは、閉じ込めリングの表面に平行な磁力線を作りえ、これは帯電粒子を閉じ込めリング表面内へと導きえる。
【0042】
他の閉じ込めリング構成も提供されえる。例えば、単一の閉じ込めリングまたは3つの閉じ込めリングのような閉じ込めリングの他の個数も用いられえる。好ましくは、少なくとも1つの閉じ込めリングは、プロセス圧力の変化を可能にするために移動可能である。閉じ込めリングの構成によっては、単一の移動可能な閉じ込めリングを備えうる。
【0043】
本発明は、いくつかの好ましい実施形態について説明されてきたが、本発明の範囲に含まれる変更、組み合わせ、および等価物が存在する。また本発明の方法および装置を実現する多くの代替手段が存在ことにも注意されたい。したがって添付の特許請求の範囲は、全てのそのような変更、組み合わせ、改変、およびさまざまな代替等価物を本発明の真の精神および範囲に含まれるものとして解釈されるべきであることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理するプラズマ処理装置であって、
チャンバ壁を持つプラズマ処理チャンバ、
前記チャンバ壁内の基板支持部、
少なくとも1つの閉じ込めリングであって、前記閉じ込めリングおよび前記基板支持部はプラズマ空間を定義する、閉じ込めリング、
前記少なくとも1つの閉じ込めリングによって提供される物理的閉じ込めを磁気的に向上させる磁界を発生する磁界源
を備える装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ処理装置であって、前記磁界源は、前記少なくとも1つの閉じ込めリングの第1側に配置された第1磁気要素、および前記少なくとも1つの閉じ込めリングの第2側に配置された第2磁気要素を備えるプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載のプラズマ処理装置であって、前記磁界は、前記少なくとも1つの閉じ込めリングとの帯電粒子の衝突を増すプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマ処理装置であって、前記磁界は前記閉じ込めリングを通るプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマ処理装置であって、前記第1磁気要素は、直径を持つリング形状を形成し、前記第2磁気要素は、直径を持つリング形状を形成し、前記閉じ込めリングは、内側直径および外側直径を有し、前記第1磁気要素および前記第2磁気要素は、前記閉じ込めリングの前記外側直径よりも小さく、前記閉じ込めリングの前記内側直径よりも大きいプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載のプラズマ処理装置であって、前記第1磁気要素の前記直径は、前記第2磁気要素の前記直径に等しくないプラズマ処理装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のプラズマ処理装置であって、前記磁界は前記閉じ込めリングの前記領域を通るプラズマ処理装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のプラズマ処理装置であって、前記閉じ込めリングは、可変ギャップを定義するよう移動可能であり、前記可変ギャップは前記プラズマ空間中の圧力を変えるよう用いられるプラズマ処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載のプラズマ処理装置であって、前記第1磁気要素および第2磁気要素は、前記可変ギャップに交わらないプラズマ処理装置。
【請求項10】
基板を処理する方法であって、
処理チャンバ中に前記基板を置くこと、
前記処理チャンバにガス源からのガスを供給すること、
前記処理チャンバ中で前記ガスからプラズマを発生すること、
前記プラズマの物理的閉じ込めを提供するために、少なくとも1つの閉じ込めリングに隣接するギャップを通して前記ガスを流すこと、および
前記プラズマの前記物理的閉じ込めを向上させるために前記プラズマの磁気的閉じ込めを提供すること
を含む方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記磁気的閉じ込めを提供することは、前記閉じ込めリングの前記領域中に磁界を提供することを含む方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記磁界は、前記閉じ込めリングとの帯電粒子の衝突を増す方法。
【請求項13】
請求項11〜12のいずれかに記載の方法であって、前記磁界は前記少なくとも1つの閉じ込めリングを通る方法。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれかに記載の方法であって、更に、前記少なくとも1つの閉じ込めリングを移動させて、プラズマ圧力を制御する方法。
【請求項15】
請求項10〜14のいずれかに記載の方法であって、前記磁気的閉じ込めは、半径方向に対称的な磁界を提供する方法。
【請求項16】
請求項10に記載の方法によって製造される半導体デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−84925(P2012−84925A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−14832(P2012−14832)
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【分割の表示】特願2006−517222(P2006−517222)の分割
【原出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(592010081)ラム リサーチ コーポレーション (467)
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
【Fターム(参考)】