プラズマ処理装置
【課題】高電圧の高周波を基板載置電極に印加し堆積性の強い処理条件を用いて基板を処理するエッチング装置において、基板載置電極のエッジの堆積物の除去の効率を上げる。
【解決手段】本発明は真空処理容器内に被処理基板を載置し、高周波電力を印可する手段を備えた下部電極と、下部電極と対向する位置に配置され、高周波電力を印可する手段を備えた上部電極と、プラズマ処理に用いるガスを導入するガス導入機構と、真空処理容器内を所望の圧力に保持できる排気機構とを有するプラズマエッチング装置において、下部電極の外側の電極エッジ部に導体線路を形成し、プラズマクリーニング時に、この導体線路に電力供給を行い、電極エッジ部を加熱することによりプラズマクリーニングの効率化を図る。
【解決手段】本発明は真空処理容器内に被処理基板を載置し、高周波電力を印可する手段を備えた下部電極と、下部電極と対向する位置に配置され、高周波電力を印可する手段を備えた上部電極と、プラズマ処理に用いるガスを導入するガス導入機構と、真空処理容器内を所望の圧力に保持できる排気機構とを有するプラズマエッチング装置において、下部電極の外側の電極エッジ部に導体線路を形成し、プラズマクリーニング時に、この導体線路に電力供給を行い、電極エッジ部を加熱することによりプラズマクリーニングの効率化を図る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体製造装置に係り、特に基板載置用電極を備えたプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマエッチング装置において、例えばフロロカーボン系ガス(C4F8,C4F6,C5F8等)を用いた堆積性の強い処理条件の場合に、半導体基板などの被処理基板処理と処理室内のプラズマクリーニングを交互に行うことが通常行われている。
【0003】
この処理室内のプラズマクリーニングは、性能安定化のためや堆積物が蓄積すると剥がれて異物を発生するという問題を抑制するために実施される。プラズマクリーニングにおいて、基板載置用電極のエッジ部は、ラジカルは入射するが、イオンの入射は半導体基板により妨げられているため堆積物が多く、除去するのに時間がかかる場所のひとつである。また、近年、基板載置用電極に3kW以上の大電力を投入し、Vppが3kV以上の条件でエッチングするプロセスもあり、電極の耐電圧設計に十分な考慮が必要になっている。
【0004】
この課題に対して、特許文献1として、半導体基板の保持台の周辺にガス排気口を有し、隙間内に存在する反応生成物を、ガス排気孔を通じてチャンバー外に排出する方法が公開されている。
【0005】
特許文献2としては、ウエハステージ(基板保持台)とその外周に設置されたフォーカスリングの高さが相対的に変位できるような機構を有し、ウェハステージの外周面またはフォーカスリングの内周面の露出度を増すために、ウェハステージとフォーカスリングとを相対的に変位させ、チャンバー内に発生させたプラズマによりクリーニングする方法が公開されている。
【0006】
特許文献3としては、クリーニング時の反応生成物の電極への付着の問題に対して、クリーニング時に試料台を負電位とし電極のクリーニング効果を高める方法が公開されている。
【0007】
特許文献4としては、半導体基板が載置される第1の電極の他に第2の局所電極を儲け、クリーニング時に高周波を印加し堆積物を局所的にクリーニングする方法が公開されている。
【0008】
特許文献5としては、Al系材料層のドライエッチングにおいて、対レジスト選択比とアフターコロージョン耐性を向上させる方法として、冷却手段と加熱手段を有する2重構造の基板載置電極を備えたECRプラズマの例が公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】:特開2007−273824号公報
【特許文献2】:特開2006−278821号公報
【特許文献3】:特開平8−85886号公報
【特許文献4】:特開2001−244239号公報
【特許文献5】:特開平5−114590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1の方法においては、堆積性の高い反応生成物の場合にはガス排気孔内に堆積し除去し難くなるという問題があり、特許文献2の方法においては、基板保持台とフォーカスリングを相対的に動かす機構が必要であった。また、両者の場合においても、基板載置電極に数kWの電力を印加する場合には排気孔や上下機構の隙間で異常放電が発生しやすいという懸念がある。特許文献3の方法においては、電極表面が通常の絶縁膜の場合には、表面が帯電してしまい負電位の効果が遮蔽されてしまうか、導電性の場合はエッジに関わらず電極表面の損傷が進行する可能性があり、特許文献4の方法においては、第2の局所電極を電極エッジ付近に設けることは示唆されていないが、仮に基板載置電極とは別部品として電極の外周部に第2の電極を有した場合、電極エッジそのものとは別部品であるため、電極エッジに付着した堆積物を効率的に除去することができない。また、特許文献5の方法においては、特許文献1,2の方法と同様に特許文献5を実現する構造において異常放電が発生しやすいのではという懸念や、電極自体の温度応答性の遅さによりスループットが落ちる可能性がある。
【0011】
本発明の目的は、電極エッジの堆積物のプラズマクリーニングの効率化が可能なプラズマ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明においては、プラズマ処理により被処理基板を処理するプラズマ処理装置であって、真空処理容器と、この真空処理容器内に設置され、被処理基板を載置し、高周波印加部を備えた下部電極と、真空処理容器内の下部電極と対向する位置に配置され、高周波印加部を備えた上部電極と、
プラズマ処理に用いるガスを導入するガス導入部と、真空処理容器内を所望の圧力に保持できる排気部とを備え、下部電極は、その外側に形成された導体線路を有するプラズマ処理装置を提供する。
【0013】
また、本発明において、導体線路に電力を印加する導体線路用電源と、この導体線路に接続された切り替え部を更に有し、この切替え部は、導体線路を下部電極本体あるいは下部電極の高周波印加部の電極給電ラインに短絡した状態と、導体線路用電源に接続した状態を切り替えるプラズマ処理装置を提供する。
【0014】
あるいは、本発明において、導体線路に電力を印加する導体線路用電源と、この導体線路に接続された切り替え部を更に有し、この切り替え部は、導体線路の一端が下部電極本体に短絡し、導体線路の他端が下部電極の電極給電ラインに短絡した状態と導体線路用電源に接続した状態とを切り替えるプラズマ処理装置を提供する。
【0015】
上記目的を達成するために、本発明のプラズマ処理装置においては、より好適には下部電極の外側のエッジ部に導体線路を形成する。これを用いてクリーニング中に直接電極のエッジ部を加熱、あるいはプラズマ密度の増加により堆積物の除去速度を上げる。さらに、このままでは基板載置電極に高電圧が印加されるエッチング中のエッジ導体線路と電極本体間の耐電圧を増すため、単に絶縁性の膜を厚くすることは、電極基材の径を小さくし、電極エッジのウエハの冷却特性を劣化させるか、ウエハより外径が大きくなりイオンにより損傷する問題が発生するため、エッジ導体線路が高周波を印加した基板載置電極と同一電位になるようにエッジ導体線路の両端を基板載置電極の電極給電ラインと短絡した状態と基板載置電極に高周波を印加せずエッジ導体線路に電力を印加した状態の2つの状態を切り替え可能な機能を設け、エッチング処理中はエッジ導体線路を基板載置電極と同電位にし、プラズマクリーニング中は、エッジ導体線路にのみ電力を消費するよう運用する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のプラズマ処理装置を用いれば、プラズマクリーニング中にすばやく電極エッジ部の表面温度を上げることができ、プラズマクリーニング中の除去速度を上げ、プラズマクリーニング時間が短縮される。その結果、エッチング装置の稼働率が向上する。さらに、電極と一体構造であるので、隙間を極力避けられ、異常放電を抑制できる。また、電極エッジの小さい領域にのみ限定して加熱し、電極との熱伝導も良いため、エッチング時にはエッジ部はすばやく電極の制御温度に戻すことができる。
【0017】
更にまた、エッチング時には高電圧を印加する電極とエッジ部の導体線路を同じ電位にできるため、これらの導体間での異常放電を抑制できる。
【0018】
また更に、プラズマクリーニング時は、基板載置電極の中央部には高周波を印加せず電極エッジでのみ電力を消費するように印加するため、電極中央部の損傷を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施例に係わる、電極エッジ部を示した断面図である。
【図2】第1の実施例の電極エッジ部導体に電力を印加する構造を示した図である。
【図3】第1の実施例の導体への電力供給と切り替えを行うユニットの変形例を示した図である。
【図4】第2の実施例に係わる、電極エッジ部を示した断面図である。
【図5】第2の実施例の電極エッジ部の導体に電力を印加する構造を示した図である。
【図6】第3の実施例の電極エッジ部の導体に電力を印加する構造を示した概略図である。
【図7】第4の実施例の電極エッジ部の導体に高周波電力を印加する構造を示した図である。
【図8】各実施例の導体埋め込み電極を搭載したエッチング装置の概略図を示す図である。
【図9】エッチングとプラズマクリーニングを交互に実施する場合の運用例を示したフローチャートを示す図である。
【図10】導体埋め込み電極のエッジ部の温度変化の一例を示した図である。
【図11】堆積物付着部の温度と堆積物の除去速度の関係を示したグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1から図11を用いて、本発明の種々の実施例を説明する。
【実施例1】
【0021】
まず、図8を用いて、基板載置用電極を備えたプラズマエッチング装置の一実施例の全体構成を説明する。
【0022】
本実施例のプラズマエッチング装置は、処理容器800の内部に、基板載置用の下部電極の電極本体である電極基材101と、電極基材101と対向する位置に設置された上部電極801を備える。また、この上部電極801は処理容器800外部に設置されたプラズマ生成用の高周波印加部を構成する高周波電源802に接続され、処理容器800外部からプラズマ生成用のガスを導入するガス導入部であるマスフローコントローラ(Mass Flow Controller:MFC)803を備える。また、電極基材101は製品基板処理中に生成したプラズマからイオンを引き寄せ基板処理を行うためのバイアス印可用の高周波印加部である高周波電源207(400k〜20MHz)と、処理中に被処理基板である半導体基板102を電極基材101に吸着するための、フィルタ回路804を持つ直流電源805に接続される。尚、フィルタ回路804は高周波のノイズ除去のためのものである。また、処理容器800はMFC803から導入されたガス及び各種プラズマ処理により発生した反応生成物を排気し、処理室内800を所定の圧力に保つことの出来る排気部である排気系806を備える。
【0023】
以上が、本実施例のエッチング装置の全体構成である。上記の構成において、ガス導入部であるMFC803は、上部電極801に設置されているが、これに限定することなく、処理容器800の他の部位に設置されて良い。なお、このエッチング装置の構成は、後で説明する実施例2〜5においても同様に利用される。
【0024】
図1は、実施例1に係る基板載置用電極の電極エッジ部の拡大断面を示したものである。本実施例の基板載置用電極はアルミ合金からなる電極基材101の表面に、半導体基板102と接触する表面とその周辺部には酸化アルミを主成分とする絶縁性の溶射皮膜103が形成されている。電極基材101内には、エッチング処理中の半導体基板102の冷却を行うために冷媒(図示せず)を循環させて−10℃から30℃に温調してあり、エッチング中とプラズマクリーニング中にかかわらず、一定の温度に制御している。図1では冷媒流路等の冷却部は図示・説明を省略した。
【0025】
電極エッジ部104において、第1層の溶射皮膜103の上にW(タングステン)を主成分とするエッジ部の導体線路(エッジ導体線路)105が所望の抵抗値になる様な厚み及び線幅で溶射及びブラスト加工により形成され、さらにその上に再び絶縁性の溶射被膜106が形成されている。エッジ導体線路105は、材質としてはSiCなどのセラミック、Ni、Ag、SUSなどの金属や合金でも良く、熱膨張率の小さいものがより好ましい。また配線形成方法は蒸着やウェットエッチングにより形成することができる。
【0026】
本実施例のエッチング装置にあっては、このエッジ導体線路105には、プラズマクリーニング中に周方向に直流あるいは交流(50Hzあるいは60Hz)の電力を供給して電極エッジ部104を加熱し、プラズマクリーニング速度を上げるよう動作させる。これにより、電極エッジ部に付着した堆積物を効率的に除去することができる。このエッジ部に設置した導体線路の形成位置は、好適には電極エッジ部の堆積物を除去するため、電極エッジ部とすることが望ましいが、下部電極の外側の周縁部であって、電極エッジ部が加熱できる位置であれば他の位置でも良い。なお、図1には電極外周に設置してあるリング状部品であるフォーカスリング107も示した。
【0027】
図2は本実施例のプラズマクリーニング用の電極エッジ部の導体線路に給電する構造を示している。図2において明らかなように、エッジ導体線路105への電力印加回路の一部を、電極基材101への高周波電力の電極給電ライン201と共有している。本実施例では、エッジ導体線路105は抵抗体で、電極基材101への電極給電ライン201は抵抗が非常に低く、電極エッジ部104に形成したエッジ導体線路105の抵抗を高く作成してある。このため、プラズマクリーニング時において、エッジ導体線路105へ電力を印加した場合にほとんどがエッジ導体線路105で電力を消費する。
【0028】
本実施例では、エッジ導体線路105は図2のように一方向への電流と反対方向への電流のラインが近くを平行して流れるように形成してある。このことにより、線幅の細線化と線路長の延長により抵抗の増加が可能である。抵抗の終端の片方203aは電極基材101に接続してあり、もう一方の端203bは電極基材101内を貫通するアルミナなどの絶縁円筒204の中を通って、電極基材101下部へ引き出し線209を引き出し、切り替え部であるエッジ電力・切り替えユニット202a、202bに接続されている。
【0029】
エッジ電力・切り替えユニット202a,202bは、エッチング処理時は、同図の(b)の202bに示したようにエッジ導体線路105が電極基材101と同電位になるよう導通した状態にスイッチ206a、206bを切り替え、プラズマクリーニング時は、同図の(a)の202aに示すとおり、導体線路105側に電力を供給できるように、スイッチ206a、206bを切り替える。スイッチ206a、206bは機械的、あるいは固体素子などの通常の切替え部品を用いることができる。
【0030】
以上の構成により、エッチング処理中は電極エッジ部104の導体線路105は電極電位と電位差がなく、電極基材101とエッジ導体線路105間の異常放電の発生を抑制し、かつ電流が流れないため、エッジ導体線路105の不要な加熱がない。なお、図2では、直流電源208によりエッジ導体線路105に電力を供給する構造を示したが、図3に示した変形例の302のように、例えば50Hzあるいは60Hzの低周波電源301を用いても良い。この構成においては、プラズマクリーニング中は基板と接触する電極表面がプラズマに晒されるため、損傷を避けるため、電極本体101には高周波電力を供給しない。
【実施例2】
【0031】
図4、図5に、エッチング装置の第2の実施例に係る、基板載置用電極とそのエッジ部導体に電力を印加する構造を示した。本実施例は電極基材101の電極エッジ部404のエッジ導体線路405を周方向に1重に配置したものである。本実施例の場合も第1の実施例と同様の方法でエッジ導体線路405を形成し、電力を供給することでエッジ部404のクリーニング効率をあげることができる。なお、図5においては、電極基材101の裏面に通じる絶縁管や、バイアス印加用高周波電源207、直流電源208、引き出し線209等の図示を省略したが、実施例1と同様の構成を取ることはいうまでもない。
【0032】
本実施例の図4、図5の形状の線路は、第1の実施例に比べて形成が容易であり、断線などの安定性が高いという利点がある。
【実施例3】
【0033】
図6に第3の実施例に係る電極エッジ部導体、及び導体に電力を印加する構成を示す。本実施例では、エッジ導体線路605が抵抗体で構成され、周方向に分割した構造であり、エッジ導体線路605の両端が電極基材101に常に短絡しており、エッジ導体線路605の中間点603、604が引き出し線601を介して、エッジ電力・切り替えユニット602に接続されている。エッジ導体線路605の中間点603、604にエッジ電力・切り替えユニット602が接続されていないと、分割されたそれぞれのエッジ導体線路605の抵抗が異なり、周方向の加熱分布が不均一となるため、周方向の加熱分布が均一となるように中間点603、604に接続している。このように分割構造にする意図は、電極基材101への供給ライン201とエッジ導体線路605との経路の長さの差をより小さくすることで、エッチング時に電極基材101に供給する高周波によるエッジ導体線路605での発熱をより小さくすることができる。なお、エッジ電力・切り替えユニット602の内部構成の説明を省略したが、エッジ電力・切り替えユニット202、302などと同様に構成できることは言うまでもない。
【実施例4】
【0034】
図7に第4の実施例として、エッジ導体線路に高周波を引加する構成を示す。本実施例では、エッジ導体線路705はアルミニウム材質により抵抗を低く形成してあり、プラズマクリーニング中にこのエッジ導体線路705に、高周波電源207とは別個に設置された導体線路用高周波電源708より電力を印加することで、電極基板101のエッジ部のプラズマ密度を増加させ、クリーニングを促進することができる。
【0035】
さらに本実施例では、電極基材101への電極給電ライン201とは別に、電極下部にエッジ導体線路用の2個の端子704a、704bが引き出してあり、プラズマクリーニング中にエッジ導体線路705に高周波を印加する場合に、電極基材101に高周波が印加されないようにしてある。このようにプラズマクリーニング中は、同図の(a)の702aに示すように、電極基材101とエッジ導体線路705の高周波印加回路を独立とすることにより、電極表面のプラズマによる損傷を抑制している。エッチング処理中には、同図の(b)のエッジ電力・切り替えユニット702bに示したようにスイッチ706を切り替えてエッジ導体線路705と電極基材101を同電位にし、異常放電を抑制する。なお、エッジ導体線路705は、上述したアルミニウム以外の材質の金属を用いることができることは言うまでもない。
【実施例5】
【0036】
続いて、図9、図10および図11を用いて、上述した導体埋め込み電極を用いたエッチング装置の運用動作の一実施例、およびその効果を説明する。本実施例において、電極基材101のエッジ部104に、10〜100Ωの抵抗の回路となるエッジ導体線路105が埋め込まれており、この抵抗の一端は電極基材101の金属部に接続され、もう一端は引き出し線209を通じてエッジ電力・切り替えユニット202に接続されている。エッジ電力・切り替えユニット202は、上述した実施例のとおり、内部にエッジ導体線路105に電力を供給するエッジ導体線路用電源を持ち、また、引き出し線209を、電極基材101の電極給電ライン201に接続するかエッジ導体線路用電源に接続するかを切り替えられる構成を有する。
【0037】
図9は、本実施例のエッチング処理装置を運用する場合のフローチャートの一例を示している。
【0038】
本実施例の電極を載置したエッチング装置では、図示を省略した冷却部により、その下部電極の冷媒温度は30℃から−20℃の間で一定に制御してあり、エッチング処理中とプラズマクリーニング中では同一温度設定に保っている。本実施例は20℃で実施した。
【0039】
まず最初に、ステップ1(S1)として、エッジ導体線路105の引き出し線209と電極給電ライン201を接続し、半導体基板102を電極基材101上に導入し、次に、エッチング処理であるステップ2(S2)を図9に示す条件で行った。すなわち、処理室にAr,O2,フロロカーボン系ガスを導入し真空排気系806により調圧した後、プラズマソース電源802の出力を1700Wとし、プラズマを発生させ、電極基材101に5kW の電力を供給した。電極エッジのエッジ導体線路105には電力を供給せず、電極基材101と同電位にした。エッチング条件は高アスペクトの絶縁膜のホール加工を行う条件とした。このプロセス条件では、処理室内と電極エッジ部に堆積物が付着した。
【0040】
この後、ステップ3として、半導体基板102を電極基材101上から搬出し、導体線路用電源を接続するように回路を切り替え、エッジ導体線路105に200Wの電力供給を開始した(S3)。
【0041】
その後、ステップ4として、処理室800にO2ガスを導入し、ソース電源802の出力を800Wとし、プラズマを発生させ、処理室800内をプラズマクリーニングした(S4)。クリーニング終了後、エッジ導体線路105への電力を停止した。
【0042】
図10は本実施例の導体埋め込み電極のエッジ部の温度変化の一例を示した図である。図中に示したONの区間T1が電極エッジ導体線路105に電力を印加した区間である。この時、電極基材101の温度は20℃で温度調節していたが、電極エッジの温度は60℃程度に上昇した。また、温度の変化に要する時間は10s程度で有り、スループットを損なうことはなかった。このように運用した処理室800においては、処理室内の電極エッジの堆積物は低減されていた。
【0043】
また、図11に実験的に調査した堆積物付着部の温度とO2プラズマクリーニングによる堆積物の除去速度の関係を示した。堆積物はAr,O2とフロロカーボン系ガスによるプラズマで生成したものである。この関係からは、20℃から60℃に温度を上げることで約40%のクリーニング効率がアップすることが分かった。
【0044】
上述のように本実施例により、高バイアスパワーを印加する堆積性の強いプラズマを用いるエッチング装置において、電極エッジのデポ物のクリーニング速度を向上させ、プラズマクリーニング時間を短縮することができる。
【0045】
以上詳述した本発明は、エッチング装置だけでなく、プラズマ処理を用いたCVD装置,スパッタ装置,アッシング装置などにも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は半導体製造分野で利用されるプラズマ処理装置、その基板載置用電極の発明として有用である。
【符号の説明】
【0047】
101…電極基材、
102…半導体基板、
103、106…溶射皮膜、
104、404…電極エッジ部、
105、405、605,705…エッジ導体線路、
107…フォーカスリング、
201…電極給電ライン、
202、202a、202b、302、602、702a、702b…エッジ電力・切り替えユニット、
203a、203b、703a、703b…端子、
204、704a、704b…絶縁管、
206a、206b、706a、706b…切り替えスイッチ、
207…大容量高周波電源、
208…直流電源、
209、601…引き出し線、
301…交流電源、
603、604…中間点、
708…導体線路用高周波電源、
801…上部電極、
802…高周波電源、
803…ガス導入機構、
804…フィルタ回路、
805…直流電源、
806…真空排気系。
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体製造装置に係り、特に基板載置用電極を備えたプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマエッチング装置において、例えばフロロカーボン系ガス(C4F8,C4F6,C5F8等)を用いた堆積性の強い処理条件の場合に、半導体基板などの被処理基板処理と処理室内のプラズマクリーニングを交互に行うことが通常行われている。
【0003】
この処理室内のプラズマクリーニングは、性能安定化のためや堆積物が蓄積すると剥がれて異物を発生するという問題を抑制するために実施される。プラズマクリーニングにおいて、基板載置用電極のエッジ部は、ラジカルは入射するが、イオンの入射は半導体基板により妨げられているため堆積物が多く、除去するのに時間がかかる場所のひとつである。また、近年、基板載置用電極に3kW以上の大電力を投入し、Vppが3kV以上の条件でエッチングするプロセスもあり、電極の耐電圧設計に十分な考慮が必要になっている。
【0004】
この課題に対して、特許文献1として、半導体基板の保持台の周辺にガス排気口を有し、隙間内に存在する反応生成物を、ガス排気孔を通じてチャンバー外に排出する方法が公開されている。
【0005】
特許文献2としては、ウエハステージ(基板保持台)とその外周に設置されたフォーカスリングの高さが相対的に変位できるような機構を有し、ウェハステージの外周面またはフォーカスリングの内周面の露出度を増すために、ウェハステージとフォーカスリングとを相対的に変位させ、チャンバー内に発生させたプラズマによりクリーニングする方法が公開されている。
【0006】
特許文献3としては、クリーニング時の反応生成物の電極への付着の問題に対して、クリーニング時に試料台を負電位とし電極のクリーニング効果を高める方法が公開されている。
【0007】
特許文献4としては、半導体基板が載置される第1の電極の他に第2の局所電極を儲け、クリーニング時に高周波を印加し堆積物を局所的にクリーニングする方法が公開されている。
【0008】
特許文献5としては、Al系材料層のドライエッチングにおいて、対レジスト選択比とアフターコロージョン耐性を向上させる方法として、冷却手段と加熱手段を有する2重構造の基板載置電極を備えたECRプラズマの例が公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】:特開2007−273824号公報
【特許文献2】:特開2006−278821号公報
【特許文献3】:特開平8−85886号公報
【特許文献4】:特開2001−244239号公報
【特許文献5】:特開平5−114590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1の方法においては、堆積性の高い反応生成物の場合にはガス排気孔内に堆積し除去し難くなるという問題があり、特許文献2の方法においては、基板保持台とフォーカスリングを相対的に動かす機構が必要であった。また、両者の場合においても、基板載置電極に数kWの電力を印加する場合には排気孔や上下機構の隙間で異常放電が発生しやすいという懸念がある。特許文献3の方法においては、電極表面が通常の絶縁膜の場合には、表面が帯電してしまい負電位の効果が遮蔽されてしまうか、導電性の場合はエッジに関わらず電極表面の損傷が進行する可能性があり、特許文献4の方法においては、第2の局所電極を電極エッジ付近に設けることは示唆されていないが、仮に基板載置電極とは別部品として電極の外周部に第2の電極を有した場合、電極エッジそのものとは別部品であるため、電極エッジに付着した堆積物を効率的に除去することができない。また、特許文献5の方法においては、特許文献1,2の方法と同様に特許文献5を実現する構造において異常放電が発生しやすいのではという懸念や、電極自体の温度応答性の遅さによりスループットが落ちる可能性がある。
【0011】
本発明の目的は、電極エッジの堆積物のプラズマクリーニングの効率化が可能なプラズマ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明においては、プラズマ処理により被処理基板を処理するプラズマ処理装置であって、真空処理容器と、この真空処理容器内に設置され、被処理基板を載置し、高周波印加部を備えた下部電極と、真空処理容器内の下部電極と対向する位置に配置され、高周波印加部を備えた上部電極と、
プラズマ処理に用いるガスを導入するガス導入部と、真空処理容器内を所望の圧力に保持できる排気部とを備え、下部電極は、その外側に形成された導体線路を有するプラズマ処理装置を提供する。
【0013】
また、本発明において、導体線路に電力を印加する導体線路用電源と、この導体線路に接続された切り替え部を更に有し、この切替え部は、導体線路を下部電極本体あるいは下部電極の高周波印加部の電極給電ラインに短絡した状態と、導体線路用電源に接続した状態を切り替えるプラズマ処理装置を提供する。
【0014】
あるいは、本発明において、導体線路に電力を印加する導体線路用電源と、この導体線路に接続された切り替え部を更に有し、この切り替え部は、導体線路の一端が下部電極本体に短絡し、導体線路の他端が下部電極の電極給電ラインに短絡した状態と導体線路用電源に接続した状態とを切り替えるプラズマ処理装置を提供する。
【0015】
上記目的を達成するために、本発明のプラズマ処理装置においては、より好適には下部電極の外側のエッジ部に導体線路を形成する。これを用いてクリーニング中に直接電極のエッジ部を加熱、あるいはプラズマ密度の増加により堆積物の除去速度を上げる。さらに、このままでは基板載置電極に高電圧が印加されるエッチング中のエッジ導体線路と電極本体間の耐電圧を増すため、単に絶縁性の膜を厚くすることは、電極基材の径を小さくし、電極エッジのウエハの冷却特性を劣化させるか、ウエハより外径が大きくなりイオンにより損傷する問題が発生するため、エッジ導体線路が高周波を印加した基板載置電極と同一電位になるようにエッジ導体線路の両端を基板載置電極の電極給電ラインと短絡した状態と基板載置電極に高周波を印加せずエッジ導体線路に電力を印加した状態の2つの状態を切り替え可能な機能を設け、エッチング処理中はエッジ導体線路を基板載置電極と同電位にし、プラズマクリーニング中は、エッジ導体線路にのみ電力を消費するよう運用する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のプラズマ処理装置を用いれば、プラズマクリーニング中にすばやく電極エッジ部の表面温度を上げることができ、プラズマクリーニング中の除去速度を上げ、プラズマクリーニング時間が短縮される。その結果、エッチング装置の稼働率が向上する。さらに、電極と一体構造であるので、隙間を極力避けられ、異常放電を抑制できる。また、電極エッジの小さい領域にのみ限定して加熱し、電極との熱伝導も良いため、エッチング時にはエッジ部はすばやく電極の制御温度に戻すことができる。
【0017】
更にまた、エッチング時には高電圧を印加する電極とエッジ部の導体線路を同じ電位にできるため、これらの導体間での異常放電を抑制できる。
【0018】
また更に、プラズマクリーニング時は、基板載置電極の中央部には高周波を印加せず電極エッジでのみ電力を消費するように印加するため、電極中央部の損傷を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施例に係わる、電極エッジ部を示した断面図である。
【図2】第1の実施例の電極エッジ部導体に電力を印加する構造を示した図である。
【図3】第1の実施例の導体への電力供給と切り替えを行うユニットの変形例を示した図である。
【図4】第2の実施例に係わる、電極エッジ部を示した断面図である。
【図5】第2の実施例の電極エッジ部の導体に電力を印加する構造を示した図である。
【図6】第3の実施例の電極エッジ部の導体に電力を印加する構造を示した概略図である。
【図7】第4の実施例の電極エッジ部の導体に高周波電力を印加する構造を示した図である。
【図8】各実施例の導体埋め込み電極を搭載したエッチング装置の概略図を示す図である。
【図9】エッチングとプラズマクリーニングを交互に実施する場合の運用例を示したフローチャートを示す図である。
【図10】導体埋め込み電極のエッジ部の温度変化の一例を示した図である。
【図11】堆積物付着部の温度と堆積物の除去速度の関係を示したグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1から図11を用いて、本発明の種々の実施例を説明する。
【実施例1】
【0021】
まず、図8を用いて、基板載置用電極を備えたプラズマエッチング装置の一実施例の全体構成を説明する。
【0022】
本実施例のプラズマエッチング装置は、処理容器800の内部に、基板載置用の下部電極の電極本体である電極基材101と、電極基材101と対向する位置に設置された上部電極801を備える。また、この上部電極801は処理容器800外部に設置されたプラズマ生成用の高周波印加部を構成する高周波電源802に接続され、処理容器800外部からプラズマ生成用のガスを導入するガス導入部であるマスフローコントローラ(Mass Flow Controller:MFC)803を備える。また、電極基材101は製品基板処理中に生成したプラズマからイオンを引き寄せ基板処理を行うためのバイアス印可用の高周波印加部である高周波電源207(400k〜20MHz)と、処理中に被処理基板である半導体基板102を電極基材101に吸着するための、フィルタ回路804を持つ直流電源805に接続される。尚、フィルタ回路804は高周波のノイズ除去のためのものである。また、処理容器800はMFC803から導入されたガス及び各種プラズマ処理により発生した反応生成物を排気し、処理室内800を所定の圧力に保つことの出来る排気部である排気系806を備える。
【0023】
以上が、本実施例のエッチング装置の全体構成である。上記の構成において、ガス導入部であるMFC803は、上部電極801に設置されているが、これに限定することなく、処理容器800の他の部位に設置されて良い。なお、このエッチング装置の構成は、後で説明する実施例2〜5においても同様に利用される。
【0024】
図1は、実施例1に係る基板載置用電極の電極エッジ部の拡大断面を示したものである。本実施例の基板載置用電極はアルミ合金からなる電極基材101の表面に、半導体基板102と接触する表面とその周辺部には酸化アルミを主成分とする絶縁性の溶射皮膜103が形成されている。電極基材101内には、エッチング処理中の半導体基板102の冷却を行うために冷媒(図示せず)を循環させて−10℃から30℃に温調してあり、エッチング中とプラズマクリーニング中にかかわらず、一定の温度に制御している。図1では冷媒流路等の冷却部は図示・説明を省略した。
【0025】
電極エッジ部104において、第1層の溶射皮膜103の上にW(タングステン)を主成分とするエッジ部の導体線路(エッジ導体線路)105が所望の抵抗値になる様な厚み及び線幅で溶射及びブラスト加工により形成され、さらにその上に再び絶縁性の溶射被膜106が形成されている。エッジ導体線路105は、材質としてはSiCなどのセラミック、Ni、Ag、SUSなどの金属や合金でも良く、熱膨張率の小さいものがより好ましい。また配線形成方法は蒸着やウェットエッチングにより形成することができる。
【0026】
本実施例のエッチング装置にあっては、このエッジ導体線路105には、プラズマクリーニング中に周方向に直流あるいは交流(50Hzあるいは60Hz)の電力を供給して電極エッジ部104を加熱し、プラズマクリーニング速度を上げるよう動作させる。これにより、電極エッジ部に付着した堆積物を効率的に除去することができる。このエッジ部に設置した導体線路の形成位置は、好適には電極エッジ部の堆積物を除去するため、電極エッジ部とすることが望ましいが、下部電極の外側の周縁部であって、電極エッジ部が加熱できる位置であれば他の位置でも良い。なお、図1には電極外周に設置してあるリング状部品であるフォーカスリング107も示した。
【0027】
図2は本実施例のプラズマクリーニング用の電極エッジ部の導体線路に給電する構造を示している。図2において明らかなように、エッジ導体線路105への電力印加回路の一部を、電極基材101への高周波電力の電極給電ライン201と共有している。本実施例では、エッジ導体線路105は抵抗体で、電極基材101への電極給電ライン201は抵抗が非常に低く、電極エッジ部104に形成したエッジ導体線路105の抵抗を高く作成してある。このため、プラズマクリーニング時において、エッジ導体線路105へ電力を印加した場合にほとんどがエッジ導体線路105で電力を消費する。
【0028】
本実施例では、エッジ導体線路105は図2のように一方向への電流と反対方向への電流のラインが近くを平行して流れるように形成してある。このことにより、線幅の細線化と線路長の延長により抵抗の増加が可能である。抵抗の終端の片方203aは電極基材101に接続してあり、もう一方の端203bは電極基材101内を貫通するアルミナなどの絶縁円筒204の中を通って、電極基材101下部へ引き出し線209を引き出し、切り替え部であるエッジ電力・切り替えユニット202a、202bに接続されている。
【0029】
エッジ電力・切り替えユニット202a,202bは、エッチング処理時は、同図の(b)の202bに示したようにエッジ導体線路105が電極基材101と同電位になるよう導通した状態にスイッチ206a、206bを切り替え、プラズマクリーニング時は、同図の(a)の202aに示すとおり、導体線路105側に電力を供給できるように、スイッチ206a、206bを切り替える。スイッチ206a、206bは機械的、あるいは固体素子などの通常の切替え部品を用いることができる。
【0030】
以上の構成により、エッチング処理中は電極エッジ部104の導体線路105は電極電位と電位差がなく、電極基材101とエッジ導体線路105間の異常放電の発生を抑制し、かつ電流が流れないため、エッジ導体線路105の不要な加熱がない。なお、図2では、直流電源208によりエッジ導体線路105に電力を供給する構造を示したが、図3に示した変形例の302のように、例えば50Hzあるいは60Hzの低周波電源301を用いても良い。この構成においては、プラズマクリーニング中は基板と接触する電極表面がプラズマに晒されるため、損傷を避けるため、電極本体101には高周波電力を供給しない。
【実施例2】
【0031】
図4、図5に、エッチング装置の第2の実施例に係る、基板載置用電極とそのエッジ部導体に電力を印加する構造を示した。本実施例は電極基材101の電極エッジ部404のエッジ導体線路405を周方向に1重に配置したものである。本実施例の場合も第1の実施例と同様の方法でエッジ導体線路405を形成し、電力を供給することでエッジ部404のクリーニング効率をあげることができる。なお、図5においては、電極基材101の裏面に通じる絶縁管や、バイアス印加用高周波電源207、直流電源208、引き出し線209等の図示を省略したが、実施例1と同様の構成を取ることはいうまでもない。
【0032】
本実施例の図4、図5の形状の線路は、第1の実施例に比べて形成が容易であり、断線などの安定性が高いという利点がある。
【実施例3】
【0033】
図6に第3の実施例に係る電極エッジ部導体、及び導体に電力を印加する構成を示す。本実施例では、エッジ導体線路605が抵抗体で構成され、周方向に分割した構造であり、エッジ導体線路605の両端が電極基材101に常に短絡しており、エッジ導体線路605の中間点603、604が引き出し線601を介して、エッジ電力・切り替えユニット602に接続されている。エッジ導体線路605の中間点603、604にエッジ電力・切り替えユニット602が接続されていないと、分割されたそれぞれのエッジ導体線路605の抵抗が異なり、周方向の加熱分布が不均一となるため、周方向の加熱分布が均一となるように中間点603、604に接続している。このように分割構造にする意図は、電極基材101への供給ライン201とエッジ導体線路605との経路の長さの差をより小さくすることで、エッチング時に電極基材101に供給する高周波によるエッジ導体線路605での発熱をより小さくすることができる。なお、エッジ電力・切り替えユニット602の内部構成の説明を省略したが、エッジ電力・切り替えユニット202、302などと同様に構成できることは言うまでもない。
【実施例4】
【0034】
図7に第4の実施例として、エッジ導体線路に高周波を引加する構成を示す。本実施例では、エッジ導体線路705はアルミニウム材質により抵抗を低く形成してあり、プラズマクリーニング中にこのエッジ導体線路705に、高周波電源207とは別個に設置された導体線路用高周波電源708より電力を印加することで、電極基板101のエッジ部のプラズマ密度を増加させ、クリーニングを促進することができる。
【0035】
さらに本実施例では、電極基材101への電極給電ライン201とは別に、電極下部にエッジ導体線路用の2個の端子704a、704bが引き出してあり、プラズマクリーニング中にエッジ導体線路705に高周波を印加する場合に、電極基材101に高周波が印加されないようにしてある。このようにプラズマクリーニング中は、同図の(a)の702aに示すように、電極基材101とエッジ導体線路705の高周波印加回路を独立とすることにより、電極表面のプラズマによる損傷を抑制している。エッチング処理中には、同図の(b)のエッジ電力・切り替えユニット702bに示したようにスイッチ706を切り替えてエッジ導体線路705と電極基材101を同電位にし、異常放電を抑制する。なお、エッジ導体線路705は、上述したアルミニウム以外の材質の金属を用いることができることは言うまでもない。
【実施例5】
【0036】
続いて、図9、図10および図11を用いて、上述した導体埋め込み電極を用いたエッチング装置の運用動作の一実施例、およびその効果を説明する。本実施例において、電極基材101のエッジ部104に、10〜100Ωの抵抗の回路となるエッジ導体線路105が埋め込まれており、この抵抗の一端は電極基材101の金属部に接続され、もう一端は引き出し線209を通じてエッジ電力・切り替えユニット202に接続されている。エッジ電力・切り替えユニット202は、上述した実施例のとおり、内部にエッジ導体線路105に電力を供給するエッジ導体線路用電源を持ち、また、引き出し線209を、電極基材101の電極給電ライン201に接続するかエッジ導体線路用電源に接続するかを切り替えられる構成を有する。
【0037】
図9は、本実施例のエッチング処理装置を運用する場合のフローチャートの一例を示している。
【0038】
本実施例の電極を載置したエッチング装置では、図示を省略した冷却部により、その下部電極の冷媒温度は30℃から−20℃の間で一定に制御してあり、エッチング処理中とプラズマクリーニング中では同一温度設定に保っている。本実施例は20℃で実施した。
【0039】
まず最初に、ステップ1(S1)として、エッジ導体線路105の引き出し線209と電極給電ライン201を接続し、半導体基板102を電極基材101上に導入し、次に、エッチング処理であるステップ2(S2)を図9に示す条件で行った。すなわち、処理室にAr,O2,フロロカーボン系ガスを導入し真空排気系806により調圧した後、プラズマソース電源802の出力を1700Wとし、プラズマを発生させ、電極基材101に5kW の電力を供給した。電極エッジのエッジ導体線路105には電力を供給せず、電極基材101と同電位にした。エッチング条件は高アスペクトの絶縁膜のホール加工を行う条件とした。このプロセス条件では、処理室内と電極エッジ部に堆積物が付着した。
【0040】
この後、ステップ3として、半導体基板102を電極基材101上から搬出し、導体線路用電源を接続するように回路を切り替え、エッジ導体線路105に200Wの電力供給を開始した(S3)。
【0041】
その後、ステップ4として、処理室800にO2ガスを導入し、ソース電源802の出力を800Wとし、プラズマを発生させ、処理室800内をプラズマクリーニングした(S4)。クリーニング終了後、エッジ導体線路105への電力を停止した。
【0042】
図10は本実施例の導体埋め込み電極のエッジ部の温度変化の一例を示した図である。図中に示したONの区間T1が電極エッジ導体線路105に電力を印加した区間である。この時、電極基材101の温度は20℃で温度調節していたが、電極エッジの温度は60℃程度に上昇した。また、温度の変化に要する時間は10s程度で有り、スループットを損なうことはなかった。このように運用した処理室800においては、処理室内の電極エッジの堆積物は低減されていた。
【0043】
また、図11に実験的に調査した堆積物付着部の温度とO2プラズマクリーニングによる堆積物の除去速度の関係を示した。堆積物はAr,O2とフロロカーボン系ガスによるプラズマで生成したものである。この関係からは、20℃から60℃に温度を上げることで約40%のクリーニング効率がアップすることが分かった。
【0044】
上述のように本実施例により、高バイアスパワーを印加する堆積性の強いプラズマを用いるエッチング装置において、電極エッジのデポ物のクリーニング速度を向上させ、プラズマクリーニング時間を短縮することができる。
【0045】
以上詳述した本発明は、エッチング装置だけでなく、プラズマ処理を用いたCVD装置,スパッタ装置,アッシング装置などにも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は半導体製造分野で利用されるプラズマ処理装置、その基板載置用電極の発明として有用である。
【符号の説明】
【0047】
101…電極基材、
102…半導体基板、
103、106…溶射皮膜、
104、404…電極エッジ部、
105、405、605,705…エッジ導体線路、
107…フォーカスリング、
201…電極給電ライン、
202、202a、202b、302、602、702a、702b…エッジ電力・切り替えユニット、
203a、203b、703a、703b…端子、
204、704a、704b…絶縁管、
206a、206b、706a、706b…切り替えスイッチ、
207…大容量高周波電源、
208…直流電源、
209、601…引き出し線、
301…交流電源、
603、604…中間点、
708…導体線路用高周波電源、
801…上部電極、
802…高周波電源、
803…ガス導入機構、
804…フィルタ回路、
805…直流電源、
806…真空排気系。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理により被処理基板を処理するプラズマ処理装置であって、
真空処理容器と、
前記真空処理容器内に設置され、前記被処理基板を載置可能な、高周波印加部を備えた下部電極と、
前記真空処理容器内の前記下部電極と対向する位置に配置され、高周波印加部を備えた上部電極と、
プラズマ処理に用いるガスを導入するガス導入部と、
前記真空処理容器内を所望の圧力に保持する排気部とを備え、
前記下部電極は、その外側に形成された導体線路を有する、
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1記載のプラズマ処理装置であって、
前記導体線路に電力を印加する導体線路用電源と、前記導体線路に接続された切り替え部を更に有し、
前記切り替え部は、
前記導体線路を前記下部電極本体あるいは前記下部電極の前記高周波印加部の電極給電ラインに短絡した状態と、前記導体線路用電源に接続した状態を切り替える、
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項2記載のプラズマ処理装置であって、
前記導体線路は抵抗体であり、前記導体線路用電源は前記抵抗体に接続される直流電源あるいは低周波の交流電源である、
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項3記載のプラズマ処理装置であって、
前記導体線路の一端が前記下部電極本体に短絡し、
前記切り替え部は、前記導体線路の他端が前記下部電極の前記電極給電ラインに短絡した状態と前記導体線路用電源に接続した状態とを切り替える、
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項3記載のプラズマ処理装置であって、
前記導体線路の両端が前記下部電極本体に短絡しており、
前記切り替え部は、前記導体線路の中間点を前記下部電極の前記電極給電ラインに短絡した状態と前記導体線路用電源に接続した状態との2つの状態を切り換える、
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項2記載のプラズマ処理装置であって、
前記導体線路用電源が高周波電源であり、前記導体線路に前記導体線路用電源から電力を印加する状態において、前記下部電極本体および前記下部電極の前記電極給電ラインと前記導体線路は開放している、
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項1】
プラズマ処理により被処理基板を処理するプラズマ処理装置であって、
真空処理容器と、
前記真空処理容器内に設置され、前記被処理基板を載置可能な、高周波印加部を備えた下部電極と、
前記真空処理容器内の前記下部電極と対向する位置に配置され、高周波印加部を備えた上部電極と、
プラズマ処理に用いるガスを導入するガス導入部と、
前記真空処理容器内を所望の圧力に保持する排気部とを備え、
前記下部電極は、その外側に形成された導体線路を有する、
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1記載のプラズマ処理装置であって、
前記導体線路に電力を印加する導体線路用電源と、前記導体線路に接続された切り替え部を更に有し、
前記切り替え部は、
前記導体線路を前記下部電極本体あるいは前記下部電極の前記高周波印加部の電極給電ラインに短絡した状態と、前記導体線路用電源に接続した状態を切り替える、
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項2記載のプラズマ処理装置であって、
前記導体線路は抵抗体であり、前記導体線路用電源は前記抵抗体に接続される直流電源あるいは低周波の交流電源である、
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項3記載のプラズマ処理装置であって、
前記導体線路の一端が前記下部電極本体に短絡し、
前記切り替え部は、前記導体線路の他端が前記下部電極の前記電極給電ラインに短絡した状態と前記導体線路用電源に接続した状態とを切り替える、
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項3記載のプラズマ処理装置であって、
前記導体線路の両端が前記下部電極本体に短絡しており、
前記切り替え部は、前記導体線路の中間点を前記下部電極の前記電極給電ラインに短絡した状態と前記導体線路用電源に接続した状態との2つの状態を切り換える、
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項2記載のプラズマ処理装置であって、
前記導体線路用電源が高周波電源であり、前記導体線路に前記導体線路用電源から電力を印加する状態において、前記下部電極本体および前記下部電極の前記電極給電ラインと前記導体線路は開放している、
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−34994(P2011−34994A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176776(P2009−176776)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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