説明

プラットホームの高さ及び離れを計測する計測器及びその計測方法

【課題】鉄道構造物であるプラットホームのホームの高さ及びホームの離れを簡易、迅速、安価に計測することができる計測器及び計測方法を提供すること。
【解決手段】本発明の計測器は、プラットホーム端に設置する第1のL型部材と、棒と、鉄道線路の内側レールに設置する棒の下部に取り付けられたレール取付け用部材と、棒に取り付けられた目盛りを有するゲージと、棒に取り付けられた傾斜計とを備え、レール取付け用部材は、第2のL型部材と、棒を取り付ける構造を備える棒取付け部材と、レール取付け部材を回転可能にする軸と、第2のL型部材と棒取付け部材とを接続して軸を回転可能にする軸受け部とを有し、内側レールの頭面中心から軸の中心までの水平方向の距離が第1のL型部材の水平方向の厚みと一致しており、かつ内側レールの頭面中心から軸までの垂直方向の距離が第1のL型部材の垂直方向の厚みと一致していることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道構造物のプラットホームの高さ及び離れを計測する計測器及びその計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道構造物について、安全な輸送及び安定的な輸送の確保を図るために、「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」は、鉄道の建築限界の基準を規定している。この基準に基づいて鉄道構造物であるプラットホームの高さ及び離れの距離が管理されている。鉄道の事業主は、この計測で検出した危険箇所について補修工事を行い、利用者の安全を確保するように努めている。
【0003】
ホームの離れ及びホームの高さの計測方法については、通常、ホームの離れはGL(地面)と水平に計測し、ホームの高さは左右のレールそれぞれの中心点を結ぶ直線に対して直角となる垂線を計測する。
【0004】
従来、簡易な計測方法として、図5に示すような、直角定規を使用した計測方法が行われてきた。この直角定規を使用した場合の計測方法を図6に示す。図6は、ホームの離れ及びホームの高さの計測方法を示した図である。ホームの離れ及びホームの高さの計測方法は、直角定規を使用する場合、GL(地面)と水平に計測する必要がり、内側のレール(二本のレールの内のホーム側のレール)に直角定規を乗せて計測する。
【0005】
また、レーザ、ミリ波等を用いてプラットホームから非接触式で鉄道における建築限界を計測する方法及び装置が既に公知となっている。特許文献1では、プラットホームの端面にレーザ、ミリ波等を利用した非接触式の計測器の基盤をレールと平行に配設し、この位置で計測器を回動させてレールまでの距離と角度を検知すると共に、同様にして計測対象物までの距離と角度を検知する装置が公開されている。距離と角度は、レーザ、ミリ波等を計測対象物へ照射し、その反射波から計測対象物までの距離とそのときの角度を計測するものである。
【0006】
また、特許文献2では、レーザ変位計の計測位置を上下方向に移動させて、レーザ変位計が計測可能位置と計測不可能位置との境界を検出し、この境界をプラットホームの高さとして計測し、レーザ変位計の下方に別のレーザ変位計を設け、このもう一つのレーザ変位計によりホーム離れを計測する方法が公開されている。図8は、従来のレーザを使用したプラットホーム計測装置の構成を示すブロック図である。
【0007】
【特許文献1】特開2001−50734号公報
【特許文献2】特開2002−71320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の直角定規を使用した計測方法は、L型(直角)の定規であったため、幅、高さともに大きいなものとなり、持ち運びの不便があった。また、計測するために水準と水平を出す必要があり、水平レベル調整等の調整作業が多く、手間取るという欠点があった。さらに、定規の置き方、スケールの読み取りにより計測者により誤差が生じることが多かった。またさらに、カントのある場所では定規がホームの下部に接触することによりホームの高さを計測することができないこともあった。
【0009】
次に、レーザ、ミリ波等を用いてプラットホームから非接触で鉄道における建築限界を計測する方法及び装置は、人が線路内に立ち入ることなく計測することが可能であるものの、装置が高価であるといった欠点があった。
【0010】
そこで、本発明は、簡易、迅速、安価に鉄道構造物のプラットホームの高さおよび離れを計測するプラットホーム計測器およびプラットホーム計測方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の計測器は、
プラットホーム端に設置する第1のL型部材と、
棒と、
鉄道線路の内側レールに設置する前記棒の下部に取り付けられたレール取付け用部材と、
前記棒に取り付けられた目盛りを有するゲージと、
前記棒に取り付けられた傾斜計と
を備え、
前記レール取付け用部材は、
第2のL型部材と、前記棒を取り付ける構造を備える棒取付け部材と、前記レール取付け部材を回転可能にする軸と、前記第2のL型部材と前記棒取付け部材とを接続して前記軸を回転可能にする軸受け部と
を有し、
前記内側レールの頭面中心から前記軸の中心までの水平方向の距離が前記第1のL型部材の水平方向の厚みと一致しており、かつ前記内側レールの頭面中心から前記軸までの垂直方向の距離が前記第1のL型部材の垂直方向の厚みと一致していることを特徴としている。
【0012】
また、前記目盛りを有するゲージは、電子表示であってもよい。
【0013】
また、前記棒は、絶縁体を材料としてもよい。
【0014】
また、前記棒の上部に前記第1のL型部材が取り付けられてもよい。
【0015】
また、前記棒と前記目盛りを有するゲージが一体として形成されていてもよい。
【0016】
また、前記傾斜計は、ロータリーエンコーダを用いた方式であって、前記軸に取り付けられて、前記軸の回転角度を検出するようにしてもよい。
【0017】
また、本発明の計測方法は、
プラットホーム端に設置する第1のL型部材と、
棒と、
前記棒の下部に取り付けられたレール取付け用部材と、
前記棒に取り付けられた目盛りを有するゲージと、
前記棒に取り付けられた傾斜計と
を備え、
前記レール取付け用部材は、
第2のL型部材と、前記棒を取り付ける構造を備える棒取付け部材と、前記レール取付け部材を回転可能にする軸と、前記第2のL型部材と前記棒取付け部材とを接続して前記軸を回転可能にする軸受け部と
を有し、
前記内側レール頭面中心から前記軸の中心までの水平方向の距離が前記第1のL型部材の水平方向の厚みと一致しており、かつ前記内側レール頭面中心から前記軸までの垂直方向の距離が前記第1のL型部材の垂直方向の厚みと一致している計測器を用いた計測方法であって、
前記第1のL型部材を前記プラットホーム端に設置し、
前記レール取付け用部材を前記内側レールに取り付けて、
前記棒の上部を前記第1のL型部材に接触するように倒した状態で、前記棒の長さと傾斜計が示す傾斜角度からホームの高さとホームの離れを計測することを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡易、迅速、かつ、安価に鉄道構造物のプラットホームの高さおよび離れを計測することが可能な計測器及びその計測方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の望ましい実施形態を詳細に説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0020】
図1乃至図4は、本発明に係る計測器の一例を示すものである。本発明の計測器は、図1に示すように棒104を中心として構成されている。プラットホームの高さ114及びプラットホームの離れ115の計測は、プラットホーム端122から内側レール頭面中心136までの長さ及び棒104とプラットホーム端の垂直線124との傾斜角度αから三角関数により算出する方法により行われる。
【0021】
図1は、本発明の一実施例の計測器を示す全体の構成図であり、図2は、プラットホーム端と同箇所に設置される第1のL型部材103を示した図であり、図3は、内側レールに設置するレール取付け用部材130を示した図であり、図4は、棒104上部に取り付けられたゲージ101及び傾斜計102を示した図である。
【0022】
プラットホーム120に設置する第1のL型部材103について、図2を用いて説明する。図2に示すように、プラットホームの先端は、通常鈍角になっている。ホームの離れの計測は、プラットホーム凸部121が測定基準点となる。他方、ホームの高さの計測は、プラットホーム上面部123が測定基準点となる。そこで、第1のL型部材103を用いることによって、プラットホーム凸部121の地面に対して垂直方向線上とプラットホーム上面部123の地面に対して水平方向線上との交点となるプラットホーム端122を得る。
【0023】
第1のL型部材103は、垂直方向に厚みBと水平方向に厚みAを有しているため、第1のL型部材103とゲージ101とが接触する接点117は、プラットホーム端122との間に高さB及び幅Aのオフセットが生じることとなる。そこで、これらB及びAをオフセットとして扱う。そして、このB及びAのオフセットに対応して棒104の下部に取り付けられるレール用取付け部材130にも同様の高さBと幅Aのオフセットを設ける。
【0024】
図3に示すように、棒104の下部には、内側レールに設置するためのレール取付け用部材130が取り付けられている。このレール取付け用部材130は、棒104を取付け固定する棒取付け部材131と、棒取付け部材131を回転自在にするための軸132及び軸受け部材133と、さらに、第2のL型部材134とから構成される。
【0025】
前記第1のL型部材103の水平方向の厚みAと、内側レール頭面中心136から前記軸132の中心までの水平方向の距離Aが一致するように、軸受け部材133及び棒取付け部材131を形成する。
【0026】
また、前記第1のL型部材103の垂直方向の厚みBと、内側レール頭面中心136から前記軸132の中心までの垂直方向の距離Bが一致するように、軸受け部材133及び第2のL型部材134を形成する。
【0027】
次に、図4に示すように、棒104の上部には、棒の長さを示す目盛り106を有するゲージ101と、棒の傾斜角度を示す傾斜計102とが取り付けられている。傾斜計102とゲージ101とは、傾斜計取付け板105によって一定の傾斜角度βを保ち固定されている。
【0028】
傾斜計102は、一般に市販されている傾斜計でよい。ゲージ101に付された目盛り106は、軸132の中心からの長さを示すように付されている。接点117と接する目盛り106の値が棒計測距離116(L)となるように、ゲージ101の接触面141と棒の側面142との間のオフセット距離Cを考慮しなければならない。このオフセット距離Cの誤差を無くすために、図3に示すように、軸132の中心から棒104の側面142までの距離をオフセット距離Cと同一になるように棒受け部材131の棒を取り付ける部分を加工する。
【0029】
図1に示すように、棒104とプラットホーム端の垂直線124との傾斜角度αは、前記傾斜計102とゲージ101との傾斜角度βから傾斜計102が示す傾斜計角度γを控除した角度となる(α=β−γ)。ここで、プラットホーム端122から内側レール上部中心136までの長さ棒計測距離116をLとする。そうすると、ホームの高さ114はLcosαとなり、ホームの離れはLsinα+固定値(標準の軌間の1/2+スラック(Slack:レール軌道の曲線部分における拡張幅))となる。
【0030】
以上のように、第1のL型部材を用いて、第1のL型部材103の垂直方向の厚みBと水平方向の厚みAに対応するオフセット距離をレール取付け部材130にも設けることにより、プラットホーム端122から内側レール頭面中心136までの長さ及び棒104とプラットホーム端の垂直線124との傾斜角度αから三角関数によりホームの高さ及びホームの離れを計測することが可能となる。
【0031】
以上に述べた傾斜計102は、重力加速度の方向を検出したり、あるいは重力加速度の傾斜方向成分を検出することにより、傾斜角度を得る方式ものである。
【0032】
これに対し、ロータリーエンコーダを用いる方式であっても良い。ロータリーエンコーダは、回転物体の回転量や回転方向等の回転情報を得る計測器である。図8は、傾斜角度の計測にロータリーエンコーダを用いた場合のロータリーエンコーダ取付け部分を示した図である。軸132にロータリーエンコーダ181を取り付ける。この軸132の回転量から棒104が傾斜した角度を割り出す。ロータリーエンコーダ181が計測する傾斜角度の基準となる基準線は、棒104が地面に対して垂直となった時の軸132の垂直線183とする。この垂直線183から、棒をホーム端に向けて倒したときの軸の回転量から、傾斜角度を計測する。図8では傾斜角度表示部182を棒取付け部材131と棒104の下部に取付けてあるが、ロータリーエンコーダのケーブル184に長いものを用いれば、棒の上部に取り付けることもできる。
【0033】
なお、図示しないが、ゲージ101の表示は電子的に表示されるものでよい。また、プラットホーム端に設置する第1のL型部材は、予め棒104と一体として形成してあってもよい。さらに、図1に示す実施例では、前記棒104に前記目盛り106を有するゲージ101を取り付け固定する方法が採られているが、予め一体として形成してあってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施例の計測器を示す全体の構成図
【図2】プラットホーム端と同箇所に設置される第1のL型部材を示した図
【図3】内側レールに設置するレール取付け用部材を示した図
【図4】棒上部に取り付けられたゲージ及び傾斜計を示した図
【図5】従来技術の一例の直角定規を示した図
【図6】従来技術の一例の直角定規を用いたホームの離れ及びホームの高さの計測方法を示した図
【図7】従来のレーザを使用したプラットホーム計測装置の構成を示すブロック図
【図8】傾斜角度の計測にロータリーエンコーダを用いた場合のロータリーエンコーダ取付け部分を示した図
【符号の説明】
【0035】
A 水平方向の厚み
B 垂直方向の厚み
C 棒とゲージとの間のオフセット距離
α 地面に垂直な線と棒との傾斜角度
β 傾斜計の取付け角度
γ 傾斜計角度 100 計測器
101 ゲージ
102 傾斜計
103 第1のL型部材
104 棒
105 傾斜計取付け板
106 目盛り
114 ホームの高さ(Lcosα)
115 内側レールの中心までのホーム離れ(Lsinα)
116 棒計測距離(L)
117 接点
120 プラットホーム
121 プラットホーム凸部
122 プラットホーム端
123 プラットホーム上面部
124 プラットホーム端の垂直線
130 レール取付け用部材
131 棒取付け部材
132 軸
133 軸受け部材
134 第2のL型部材
135 内側レール
136 内側レール頭面中心
141 接触面
142 棒の側面
181 ロータリーエンコーダ
182 傾斜角度表示部
183 垂直線
184 ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホーム端に設置する第1のL型部材と、
棒と、
鉄道線路の内側レールに設置する前記棒の下部に取り付けられたレール取付け用部材と、
前記棒に取り付けられた目盛りを有するゲージと、
前記棒に取り付けられた傾斜計と
を備え、
前記レール取付け用部材は、
第2のL型部材と、前記棒を取り付ける構造を備える棒取付け部材と、前記レール取付け部材を回転可能にする軸と、前記第2のL型部材と前記棒取付け部材とを接続して前記軸を回転可能にする軸受け部と
を有し、
前記内側レールの頭面中心から前記軸の中心までの水平方向の距離が前記第1のL型部材の水平方向の厚みと一致しており、かつ前記内側レールの頭面中心から前記軸までの垂直方向の距離が前記第1のL型部材の垂直方向の厚みと一致していることを特徴とする計測器。
【請求項2】
前記目盛りを有するゲージは、電子表示であることを特徴とする請求項1に記載の計測器。
【請求項3】
前記棒は、絶縁体を材料とすることを特徴とする請求項1に記載の計測器。
【請求項4】
前記棒の上部に前記第1のL型部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の計測器。
【請求項5】
前記棒と前記目盛りを有するゲージが一体として形成されていることを特徴とする請求項1に記載の計測器。
【請求項6】
前記傾斜計は、ロータリーエンコーダを用いた方式であって、前記軸に取り付けられて、前記軸の回転角度を検出することを特徴とする請求項1に記載の計測器。
【請求項7】
プラットホーム端に設置する第1のL型部材と、
棒と、
前記棒の下部に取り付けられたレール取付け用部材と、
前記棒に取り付けられた目盛りを有するゲージと、
前記棒に取り付けられた傾斜計と
を備え、
前記レール取付け用部材は、
第2のL型部材と、前記棒を取り付ける構造を備える棒取付け部材と、前記レール取付け部材を回転可能にする軸と、前記第2のL型部材と前記棒取付け部材とを接続して前記軸を回転可能にする軸受け部と
を有し、
前記内側レール頭部中心から前記軸の中心までの水平方向の距離が前記第1のL型部材の水平方向の厚みと一致しており、かつ前記内側レール頭面中心から前記軸までの垂直方向の距離が前記第1のL型部材の垂直方向の厚みと一致している計測器を用いた計測方法であって、
前記第1のL型部材を前記プラットホーム端に設置し、
前記レール取付け用部材を前記内側レールに取り付けて、
前記棒の上部を前記第1のL型部材に接触するように倒した状態で、前記棒の長さと傾斜計が示す傾斜角度からホームの高さとホームの離れを計測することを特徴とする計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−183215(P2007−183215A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2653(P2006−2653)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(000003388)株式会社トキメック (103)
【出願人】(504412451)株式会社トキメックレールテクノ (14)
【Fターム(参考)】