説明

プラバスタチンを調製するための方法

本発明は、配列番号3、配列番号6または配列番号43〜59に従うアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供する。本発明はまた、これらのポリペプチドをコードするDNA配列を含んでなるポリヌクレオチド、およびコンパクチンからプラバスタチンへの変換を改善することが可能なポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを単離するための方法を提供する。さらに加えて、本発明は、プラバスタチンを産生させるための方法、およびプラバスタチンを含んでなる医薬組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、プラバスタチンの産生のための方法に関する。
【0002】
[発明の背景]
スタチン系薬剤は、3−ヒドロキシ−3−メチルブチリルコエンザイムAレダクターゼ、コレステロール生合成における律速酵素の既知のインヒビターである。従って、スタチン系薬剤は、ヒトを含むさまざまな哺乳動物において血漿コレステロールレベルを減少することが可能であり、従って、化合物は、高コレステロール血症の治療に有効である。市場には、いくらかのタイプのスタチン系薬剤、中でも、アトルバスタチン、プラバスタチン、コンパクチン、ロバスタチンおよびシンバスタチンが存在する。前者は化学合成を介して作製される一方、後者の4つは、直接発酵または前駆体発酵のいずれかを介して産生される。これらの(前駆体)発酵は、ペニシリウム(Penicillium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属およびモナスカス(Monascus)属の真菌によって行われる。
【0003】
プラバスタチンは、2つの順次発酵で産生される。まず、ペニシリウム・シトリヌム(Penicillium citrinum)がコンパクチンを産生し、そのラクトン環を化学的に加水分解し、続いて、得られる生成物を、これをプラバスタチンにヒドロキシル化するストレプトマイセス・カルボフィラス(Streptomyces carbophilus)の培養に供給する。本発明に関して、用語「加水分解されたコンパクチン」は、非ラクトン型のコンパクチン(即ち、水との反応によりラクトン環が開裂した(図1))を指し;同様に、用語「コンパクチンの加水分解」は、ラクトン環の開裂を指す。これらの代謝物の産生のための産業用の種およびプロセスは、異なる方法を使用して最適化される。それ故、ペニシリウム・シトリナム(Penicillium citrinum)によるコンパクチン産生は、本来の40mg/lから5g/lに増加された。生体触媒変換のために、80%変換収率を伴う3g/lのメバスタチンに対する耐性を伴うストレプトマイセス(Streptomyces)変異株がMetkinenにより得られた(Metkinen News、2000年3月、Metkinen Oy、フィンランド;マンゾーニ(Manzoni)およびロリーニ(Rollini)、2002年、Appl.Microbiol.Biotechnol.58:555−564により検討された)。商業的には成り立つものの、コンパクチン力価は、例えば、産業用アミノ酸またはペニシリンG産生と比較して低いため、このプロセスは、最適な状態からはかけ離れている;さらに、コンパクチンは、生体変換に使用されるストレプトマイセス(Streptomyces)株に対する毒性効果を防止するため、希釈しなければならず(ホソブチ(Hosobuchi)ら、1983年、J.Antibiot.36:887−891)、そして供給される20%のコンパクチンがストレプトマイセス(Streptomyces)株によって変換されない。
【0004】
コンパクチンからプラバスタチンへの変換は、ストレプトマイセス・カルボフィラス(Streptomyces carbophilus)のp450酵素によって触媒される(マツオカ(Matsuoka)ら、1989年、Eur.J Biochem.184:707−713を参照のこと)。ストレプトマイセス(Streptomyces)細菌は糸状に増殖するため、高い粘度を伴う培養を生じ、低い酸素移動速度、従って、より低い発酵生産性をもたらすため、それらの細菌では、一般的に問題が存在する。最適には、大腸菌(Escherichia coli)(大規模生体触媒において広範に使用される宿主)のような産業的に十分に装備された種が有用であるが、この種は、p450酵素も、またp450酸化還元再生系も有さない。これまでのところ、コンパクチンからプラバスタチンへの変換における大腸菌(Escherichia coli)のような発酵および酵素産生に適切な種の使用については、報告されていない。
【0005】
別の問題は、p450酵素には補因子の再生が必要であることであり、典型的に、宿主細胞に存在する特定の対のタンパク質によって実現される。この系が最適でない場合、全体的な変換は、コンパクチンの例のように、実質的に100%未満である。代替的種を単離するための様々な試みが行われているが、100%の変換率を有するものは認められていない(米国特許第6,905,851号明細書、米国特許第6,365,382号明細書、米国特許出願公開第2005/0153422号明細書、米国特許出願公開第2004/0253692号明細書および米国特許出願公開第2004/0209335号明細書を参照のこと)。さらに、これらのうち、ストレプトマイセス・カルボフィラス(Streptomyces carbophilus)について現実的な改善を示すものはない。コンパクチンに対して極度に高い耐性を伴う種も報告されているが、変換の効率は不十分である(米国特許第6,306,629号明細書、米国特許第6,750,366号明細書)。他は、既知のp450酵素の変換率を改善する方法としてファミリーシャッフリングを使用することを示唆しているが、p450酵素は、極めて基質特異的であり、それほど高い配列相同性を有さず、そして補因子再生のための1組の特定の酵素を必要とし得るため、これは極めて困難であることから、何らデータを示していない(米国特許第6,605,430号明細書)。変換のための異なる酵素を使用する種を単離することによって、この後者の問題を解決することが試されている。この分野における1つの特定の例は、78%の最大変換率でコンパクチンをプラバスタチンに変換することが可能なアクチノマジュラ(Actinomadura)種である(ポン(Peng)およびドマン(Demain)(1998年、J.Ind.Microbiol.Biotechnol.20:373−375;米国特許第6,274,360号明細書))。そのため、あらゆる取組みにもかかわらず、僅か80%変換率しか伴わないストレプトマイセス・カルボフィラス(Streptomyces carbophilus)がなお、プラバスタチンの形成のための選好される産業的種として使用され、そして改善が非常に望まれている。
【0006】
[発明の説明]
本発明に関して、用語「保存的置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられる置換を意味することが意図される。これらのファミリーは、当該技術分野において公知であり、そして塩基側鎖(例えば、リジン、アルギニンおよびヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン類、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β−分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)ならびに芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニントリプトファン、ヒスチジン)を伴うアミノ酸を含む。
【0007】
本明細書において使用する用語「単離されたポリヌクレオチドまたは核酸配列」は、他の核酸配列を本質的に含まない、例えば、アガロース電気泳動によって決定されるように、少なくとも20%純粋、好ましくは少なくとも40%純粋、より好ましくは少なくとも60%純粋、さらにより好ましくは少なくとも80%純粋、最も好ましくは少なくとも90%純粋であるポリヌクレオチドまたは核酸配列を指す。例えば、単離された核酸配列は、その天然の局在由来の核酸配列を、それが再生される、異なる部位に再局在化するために、遺伝子操作において使用される標準的なクローニング手順によって得ることができる。
【0008】
用語「プラバスタチン」は、αもしくはβ−配置、またはαおよびβ−配置の両方の混合を伴うコンパクチンの6’−ヒドロキシル変種として規定される。ここで、科学文献において、プラバスタチンという用語は、コンパクチンの6’−ヒドロキシル変種のβ−配置についてのみ使用される一方、α変種はエピプラバスタチンと命名されることを述べることが重要である。しかし、本発明は、コンパクチンの6−ヒドロキシル変種を作製するための一般に効率的な方法について記載した。従って、プラバスタチンという用語は、αおよびβ型の両方に当てはまる。
【0009】
本発明の目的は、コンパクチンをプラバスタチンに変換する有効かつ産業的適用可能な方法を提供することである。本発明の別の目的は、コンパクチンをプラバスタチンに変換するためのアミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)由来の新規のp450酵素を使用することである。本発明は、コンパクチンのヒドロキシル化は、大腸菌(Escherichia coli)において効率的に実施されるプロセスを提供することによって、先行技術のプロセスにおいて遭遇する問題を解決する。コンパクチンのヒドロキシル化が100%変換で実施されるプロセスもまた、提供される。より具体的には、アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)の細胞全体または無細胞抽出物のいずれかとコンパクチンとを接触させることによって、コンパクチンを(cmpH遺伝子によってコードされる)アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)コンパクチンヒドロキシラーゼ酵素と接触させるプロセスが提供される。好ましくは、コンパクチンヒドロキシラーゼ(cmpH)がアミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)から得られ、そして別の宿主種に移されるプロセスが提供される。好ましくは、本宿主は、高レベルのコンパクチンに耐性であり、そしてコンパクチン産生が可能である。
【0010】
第1の態様では、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド、および配列番号3の配列に実質的に相同であるアミノ酸を有するポリペプチドからなる群から選択されるポリペプチドが提供され、ポリペプチドは、コンパクチンヒドロキシラーゼ活性を示す。
【0011】
第1の実施形態では、前記ポリペプチドは、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、なおより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは99%の効率でコンパクチンをヒドロキシル化する。好ましくは、前記ヒドロキシル化の生成物はプラバスタチンである。
【0012】
本発明の部分として、現在利用可能なコンパクチンヒドロキシラーゼの産業的適用がアクチノマイセテス(Actinomycetes)のクラス由来の種に限定され;即ち、それらは、大腸菌(Escherichia coli)または糸状菌例えば、アスペルギルス(Aspergillus)もしくはペニシリウム(Penicillium)種のような産業規模での発酵により従う種に移すことができることが実証される。本発明によって記載されるコンパクチンヒドロキシラーゼ遺伝子は、この問題を有さない。従って、これらの遺伝子によってコードされる新規のポリペプチドの活性は、次のように特徴付けることができる:それらは、アクチノマイセテス(Actinomycetes)以外の種、例えば、大腸菌(Escherichia coli)における適用を可能にし、および/またはそれらは、少なくとも80%の変換効率を伴うコンパクチンからプラバスタチンへの効率的なヒドロキシル化を可能にする。本発明に関して、少なくとも80%の効率は、少なくとも80%のコンパクチンがプラバスタチンに変換されることを意味する。
【0013】
配列番号3に実質的に相同であるアミノ酸配列を伴うポリペプチドは、特定されたアミノ酸配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%、なおより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、なお最も好ましくは少なくとも97%、究極的に少なくとも98%、なおより究極的に少なくとも99%の同一性の程度でアミノ酸配列を伴うポリペプチドとして規定され、実質的に相同なペプチドは、コンパクチンヒドロキシラーゼ活性を示す。実質的に相同なポリペプチドは、異なる集団由来の細胞または天然の対立遺伝子または株内の変動による集団内に存在し得る多型を包含する。実質的に相同なポリペプチドは、さらに、特定されたアミノ酸および/またはDNA配列を生じる種以外の種から誘導してもよく、または人工的に設計および合成されたDNA配列によってコードされてもよい。特定されたDNA配列に関連し、そして遺伝子暗号の縮重によって得られるDNA配列もまた、本発明の部分である。相同体はまた、なおコンパクチンヒドロキシラーゼ活性を示す全長配列の生物学的に活性なフラグメントを包含する。
【0014】
2つのアミノ酸配列間の同一性の程度は、2つの配列間で同一であるアミノ酸の百分率を指す。同一の程度は、ラッチド(Latched)ら(1990年、J.Mol.Biol.215:403−410)において記載されているBLASTアルゴリズムを使用して決定される。BLAST解析ソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を介して公的に入手することができる。BLASTアルゴリズムパラメータW、TおよびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTプログラムは、デフォルトとして、11のワード長(W)、BLOSUM62スコアリングマトリックス(ヘニコフ(Henikoff)およびヘニコフ(Henikoff)(1989年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:10915を参照のこと)50のアラインメント(B)、10の期待値(E)、M=5およびN=4を使用する。
【0015】
実質的に相同なポリペプチドは、単に、特定されたアミノ酸配列の1つ以上のアミノ酸の保存的置換または非必須アミノ酸の置換、挿入もしくは欠失を含有してもよい。従って、非必須アミノ酸は、生物学的機能を実質的に変更することなく、これらの配列の1つにおいて変更することができる残基である。例えば、表現型性サイレントアミノ酸置換の作製方法に関する指針は、ボウイ(Bowie)ら、(1990年、Science247:1306−1310)に提供されており、アミノ酸配列の変更に対する忍容性を研究するための主な2つのアプローチが存在することを示している。第1の方法は、変異が天然の選択によって許容されるかまたは拒絶されるかのいずれかである進化のプロセスに依存する。第2のアプローチは、遺伝子操作を使用して、クローニングされた遺伝子の特定の位置におけるアミノ酸変化を誘導し、そして選択またはスクリーニングして、機能性を維持する配列を同定する。これらの研究は、タンパク質がアミノ酸置換に驚くほど忍容性であることを示しており、そしてタンパク質の所定の位置においてどの変化が許容性である可能性があるかを示す。例えば、ほとんどの埋没されるアミノ酸残基は非極性側鎖を必要とするが、表面側鎖の特徴は、一般的にほとんど保存されない。他のそのような表現型性サイレント置換については、ボウイ(Bowie)ら、および本明細書において引用した参考文献に記載されている。
【0016】
第2の実施形態では、改善された触媒機能(即ち、コンパクチンからプラバスタチンへの変換)をもたらす変種は、コンパクチンヒドロキシラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を改変することによって、入手し得る。そのような改変は:
・コドンがコンパクチンヒドロキシラーゼを発現させるために使用される宿主種に適応されるような方法で、コドン使用頻度を改善すること。
・コドンがコンパクチンヒドロキシラーゼを発現させるために使用される宿主種に適応されるような方法で、コドン対使用頻度を改善すること。
・半減期が増加したmRNA分子を生じるコンパクチンヒドロキシラーゼをコードする遺伝子情報への安定化配列の付加。
・無作為変異を誘導するためのエラープローンPCR、それに続く、得られる変種のスクリーニング(実施例4において本質的に記載されている)および改善された動態特性を伴う変種の単離。
・コンパクチンヒドロキシラーゼの関連変種のファミリーシャッフリング、それに続く、得られる変種のスクリーニング(実施例4において本質的に記載されている)および改善された動態特性を伴う変種の単離。
【0017】
改善された動態特性を伴う変種を伴う好適な方法については、国際公開第03010183号パンフレットおよび国際公開第0301311号パンフレットに記載されている。
【0018】
改善された機能性を伴うコンパクチンヒドロキシラーゼをコードする改善されたポリヌクレオチドが得られる場合、改善された触媒機能が得られる。本発明の部分として、意外なことに、コンパクチンの6−ヒドロキシル変種のβ−配置(即ち、薬学的に活性なプラバスタチン異性体)とコンパクチンの6−ヒドロキシル変種のα−配置との間の比は、配列番号19、20、21、22、23、24、25もしくは26またはこれらに実質的に相同な配列の改善されたポリペプチド配列を使用して、有意に改善し得ることが見出されている。
【0019】
加えて、本発明の第1の態様のポリペプチドの配列内の所定のストレッチは、コンパクチンのヒドロキシル化の触媒機構に直接関与することが確立された。配列番号43、44、45、46および47が存在する。改善された触媒機能は、配列番号43〜47のいずれかまたはすべてに改変を導入することによって入手し得る。好ましくは、配列番号43〜47のいずれかまたはすべては、単一アミノ酸、2アミノ酸、3アミノ酸または多くても4アミノ酸を置き換えることによって、改変される。以下の改変は、改善された触媒機能をもたらすことが確立されている。配列番号43では、好適な改変は配列番号48、49および50であり、配列番号44では、好適な改変は配列番号51、52および53であり、配列番号45では、好適な改変は配列番号54であり、配列番号46では、好適な改変は配列番号55であり、そして配列番号47では、好適な改変は配列番号56、57、58および59である。コンパクチンのヒドロキシル化に寄与するのに適切なストレッチはまた、配列番号43〜59であり、ここで、1、2、もしくは3アミノ酸は、代替的アミノ酸で置き換えられる。
【0020】
第3の実施形態では、上記のポリペプチドをコードするDNA配列を含んでなるポリヌクレオチドまたは核酸配列が提供される。これは、ゲノム、cDNA、RNA、半合成、合成由来であるか、またはこれらのいずれかの組み合わせの単離されたポリヌクレオチドであり得る。特に、配列番号3のポリペプチドをコードする特定のDNA配列、即ち、配列番号1もしくは2が提供される。より好ましくは、配列番号19〜26のポリペプチドをコードする特定のDNA配列、即ち、配列番号11〜18が提供される。他で示さない限り、本明細書に記載のDNA分子を配列決定することによって決定されるすべてのヌクレオチド配列は、自動化DNAシークエンサーを使用して決定され、そして本明細書において決定されるDNA分子によってコードされるポリペプチドのすべてのアミノ酸配列は、上記で決定したDNA配列の翻訳によって推定した。従って、この自動化アプローチによって決定される任意のDNA配列では、決定される任意のヌクレオチド配列は、いくつかのエラーを含有してもよい。自動化によって決定されるヌクレオチド配列は、配列決定されたDNA分子の実際のヌクレオチド配列に対して、典型的には、少なくとも約90%同一、より典型的には、少なくとも約95%〜少なくとも約99.9%同一である。実際の配列は、手動のDNA配列決定方法を含む他のアプローチによって、より正確に決定することができる。また、当該分野においても既知であるとおり、挿入または欠失のポイントから開始して、決定されたヌクレオチド配列によってコードされる推定アミノ酸配列が、配列決定したDAN分子によって実際にコードされるアミノ酸配列とは完全に異なるように、実際の配列と比較して、決定されたヌクレオチド配列におけるそのような単一の挿入または欠失は、ヌクレオチド配列の翻訳においてフレームシフトを生じる。当業者であれば、そのように誤って同定される塩基を同定することが可能であり、そのようなエラーを補正する方法を知っている。
【0021】
ポリペプチドおよび本発明の第1の態様のコーディング核酸配列は、任意の原核細胞、好ましくは、アクチノマイセテス(Actinomycetes)から得ることができる。好適なアクチノマイセテス(Actinomycetes)種として、ストレプトマイセス(Streptomyces)、アミコラトプシス(Amycolatopsis)、シュードノカルジア(Pseudonocardia)、ミクロモノスポア(Micromonospora)、ノカルジア(Nocardia)およびアクチノキネオスポラ(Actinokineospora)の株が挙げられるが、これらに限定されない。好適な実施形態では、本発明のポリペプチドをコードする核酸配列は、アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)の株から得られる。
【0022】
本発明のDNA配列は、ハイブリダイゼーションによって同定してもよい。変種(例えば、天然の対立遺伝子変種)に対応する核酸分子、および本発明のDNAの相同体は、好ましくは、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、標準的なハイブリダイゼーション技術に従うハイブリダイゼーションプローブとしてこれらの核酸またはその適切なフラグメントを使用して、本明細書に開示した核酸に対するそれらの相同性に基づいて、単離することができる。あるいは、利用可能なゲノムデータベースを介してインシリコで適用し得る。ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当業者によって容易に決定することができる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーのさらなる詳細および説明については、オースベル(Ausubel)ら(1995年、Current Protocols in Molecular Biology,Wiley Interscience Publishers)を参照のこと。
【0023】
核酸配列は、例えば、問題の微生物のゲノムまたはcDNAライブラリーをスクリーニングすることによって、単離してもよい。一旦、本発明に従う活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を、例えば、配列番号2から誘導されるプローブによって検出したら、配列は、当業者に公知の技術(サンブルック(Sambrook)ら、1989年、Molecular Cloning,A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor,New Yorkを参照のこと)を利用して、単離またはクローニングすることができる。また、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づく方法、または発現ライブラリーの抗体スクリーニングを使用することによって、そのような(ゲノム)DNA由来の本発明の核酸配列のクローニングを行って、共有する構造特徴を伴うクローニングされたDNAフラグメントを検出することができる(例えば、イニス(Innis)ら、1990年、PCR:A Guide to Methods and Application,Academic Press,New York.を参照のこと)。
【0024】
本明細書において提供される配列情報は、誤って同定される塩基の夾在を要するようにし、あまりに限られた範囲で解釈すべきではない。本明細書において開示する特定の配列を使用して、アクチノマイセテス(Actinomycetes)、特に、アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)由来の完全な遺伝子を容易に単離し、次いで、さらなる配列分析に容易に供し、それによってシークエンスエラーを同定することができる。
【0025】
他で示さない限り、本明細書に記載のDNA分子を配列決定することによって決定されるすべてのヌクレオチド配列は、自動化DNAシークエンサーを使用して決定され、そして本明細書において決定されるDNA分子によってコードされるポリペプチドのすべてのアミノ酸配列は、上記で決定したDNA配列の翻訳によって推定した。従って、このアプローチによって決定される任意のDNA配列について当該分野において公知であるように、本明細書において決定される任意のヌクレオチド配列は、エラーを含有してもよい。自動化によって決定されるヌクレオチド配列は、配列決定されたDNA分子の実際のヌクレオチド配列に対して、典型的には、少なくとも約90%同一、より典型的には、少なくとも約95%〜少なくとも約99.9%同一である。実際の配列は、当該分野において周知の手動のDNA配列決定方法を含む他のアプローチによって、より正確に決定することができる。また、当該分野においても既知であるとおり、挿入または欠失のポイントから開始して、決定されたヌクレオチド配列によってコードされる推定アミノ酸配列が、配列決定したDAN分子によって実際にコードされるアミノ酸配列とは完全に異なるように、実際の配列と比較して、決定されたヌクレオチド配列におけるそのような単一の挿入または欠失は、ヌクレオチド配列の翻訳においてフレームシフトを生じる。当業者であれば、そのように誤って同定される塩基を同定することが可能であり、そのようなエラーを補正する方法を知っている。
【0026】
第4の実施形態では、本発明は、配列番号3のポリペプチドをいわゆるレダクターゼドメインに融合して、配列番号6のポリペプチドを形成し、そしてコンパクチンヒドロキシラーゼ活性を示すことによって、改善したコンパクチンヒドロキシラーゼ酵素を提供する。本発明の範囲は、この特定のアミノ酸配列に限定されるものではなく、特定されたアミノ酸配列に対して、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、なおより好ましくは少なくとも85%、なおより好ましくは少なくとも90%、なおより好ましくは少なくとも95%、なおより好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%の同一性の程度を所有するアミノ酸配列を有するポリペプチドとして規定され、配列番号6の配列に「実質的に相同」であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含み、実質的に相同なペプチドは、コンパクチンヒドロキシラーゼ活性を示す。実質的に相同なポリペプチドは、異なる集団由来の細胞または天然の対立遺伝子または株内の変動による集団内に存在し得る多型を包含し得る。実質的に相同なポリペプチドは、さらに、特定されたアミノ酸および/またはDNA配列を生じる種以外の種から誘導してもよく、または人工的に設計および合成されたDNA配列によってコードされてもよい。特定されたDNA配列に関連し、そして遺伝子暗号の縮重によって得られるDNA配列もまた、本発明の部分である。相同体はまた、なおコンパクチンヒドロキシラーゼ活性を示す全長配列の生物学的に活性なフラグメントを包含し得る。当業者は、この融合タンパク質のヒドロキシラーゼ部分は、ストレプトマイセス・カルボフィラス(Streptomyces carbophilus)p450sca−2遺伝子のようなコンパクチンをヒドロキシル化することが可能な他のp450酵素のような非相同であるが、なお機能的に均等な配列と交換してもよいが、但し、融合タンパク質は、コンパクチンヒドロキシル化プラバスタチンを示すことを理解するであろう。また、レダクターゼドメインを、非相同であるが、なお機能的に均等な配列、例えば、フェレドキシンおよびフェレドキシンレダクターゼと交換することができるが、但し、融合タンパク質は、コンパクチンのプラバスタチンへのヒドロキシル化を示す。使用することができる代替的レダクターゼドメインは、例えば、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、P450 BM3、NCBIジェンバンク(GenBank)受託番号gi142797由来の自己充足(self−sufficient)P450酵素のレダクターゼドメインである。好適な融合ポリペプチドは、配列番号19〜26の改善されたポリペプチドの同類物、即ち、配列番号35、36、37、38、39、40、41もしくは42またはこれらに実質的に相同な配列である。加えて、また、配列番号34〜42のポリペプチドをコードする特定のDNA配列、即ち、配列番号27〜34も本発明の部分である。あるいは、第2の実施形態に記載の触媒機能の改善はまた、レダクターゼ領域において実施してもよい。
【0027】
第2の態様では、本発明は、組み換え宿主株における第1の態様のポリヌクレオチドの使用を開示する。より詳細には、以下の工程を含んでなる、プラバスタチンを産生させるための方法を開示する:
(i)コンパクチンヒドロキシラーゼをコードする目的の遺伝子を含んでなるポリヌクレオチドで宿主細胞を形質転換すること、
(ii)形質転換された細胞のクローンを選択すること、
(iii)前記選択された細胞を培養すること、
(iv)場合により、前記培養細胞を処理する(即ち、固定化する)こと、
(v)コンパクチンを前記培養細胞に供給すること、
(vi)前記培養からプラバスタチンを単離すること。
【0028】
本発明の方法における宿主細胞の選択は、ポリペプチドをコードする目的の核酸配列(遺伝子)の供給源に大いに依存する。好ましくは、宿主細胞は原核細胞である。好適な実施形態では、原核宿主細胞は、第1もしくは第2の態様のポリヌクレオチドが入手され得る種として例示される種の細胞であって、例えば、ストレプトマイセス(Streptomyces)種(即ち、ストレプトマイセス・カルボフィラス(Streptomyces carbophilus)、ストレプトマイセス・フラビドビレンス(Streptomyces flavidovirens)、ストレプトマイセス・コエリカラー(Streptomyces coelicolor)、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)、ストレプトマイセス・エクスフォリアタス(Streptomyces exfoliatus)またはアミコラトプシス(Amycolatopsis)種(即ち、アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis))があるが、これらに限定されない。最も好適な状況では、宿主細胞は、大規模発酵に適切な宿主細胞であって、例えば、ストレプトマイセス(Streptomyces)種(即ち、ストレプトマイセス・アバーミチリス(Streptomyces avermitilis)、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)、ストレプトマイセス・クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus))またはバチルス(Bacillus)種(即ち、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilus)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis))またはコリネバクテリウム(Corynebacterium)種(即ち、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum))またはエシェリキア(Escherichia)種(即ち、大腸菌(Escherichia coli))があるが、これらに限定されない。さらにより好ましくは、宿主細胞は、サッカロマイセス(Saccharomyces)、アスペルギルス(Aspergillus)またはペニシリウム(Penicillium)種のような真核細胞であって、適切な例として、酵母サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)または糸状菌アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)またはペニシリウム・シトリナム(Penicillium citrinum)がある。
【0029】
核酸構築物、例えば、発現構築物は、選択マーカー遺伝子および本発明のポリヌクレオチド(コンパクチンヒドロキシラーゼ)を含有してもよく、それぞれが1つ以上の制御配列に作動可能に連結され、適切な発現宿主においてコードされたポリペプチドの発現を指令する。核酸構築物は、個別のフラグメント上にあってもよく、または好ましくは、1つのDNAフラグメント上にあってもよい。発現は、ポリペプチドの産生に関与する任意の工程を含むことが理解され、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾および分泌を含み得る。核酸構築物が、特定の宿主生物体におけるコーディング配列の発現のために要求されるすべての制御配列を含有する場合、用語「核酸構築物」は、用語「発現ベクター」または「カセット」と同義である。用語「制御配列」は、本明細書において、ポリペプチドの発現に必要または有利であるすべての成分を含むものと規定される。各制御配列は、ポリペプチドをコードする核酸配列に生来または外来性であってもよい。そのような制御配列として、プロモーター、リーダー、(コザック(Kozak)、1991年、J.Biol.Chem.266:19867−19870に記載のような)最適な翻訳開始配列、分泌シグナル配列、プロペプチド配列、ポリアデニル化配列、転写ターミネーターが挙げられ得るが、これらに限定されない。少なくとも、制御配列は、プロモーター、ならびに転写および翻訳停止シグナルを含む。用語「作動可能に連結」は、本明細書において、制御配列が、ポリペプチドの産生を指令するようなDNA配列のコーディング配列に対する位置に、制御配列が適切に配置される配置形態として規定される。
【0030】
制御配列は、転写制御配列を含有する適切なプロモーター配列を含んでもよい。プロモーターは、変異、短縮型、およびハイブリッドプロモーターを含む細胞において転写調節活性を示す任意の核酸配列であってもよく、そして細胞外もしくは細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から入手してもよい。プロモーターは、細胞もしくはポリペプチドに対して同種または異種のいずれであってもよい。原核細胞の好適なプロモーターは、当該技術分野において公知であり、そして例えば、高レベルのメッセンジャーRNAを確実にする強力なプロモーターであり得る。本発明に従う発現カセットにおいて使用されるプロモーターは、すべての芳香族アミノ酸(aro)の生合成に共通の酵素をコードするラクトースオペロン(lac、lacUV5)、アラビノースオペロン(ara)、トリプトファンオペロン(trp)、およびオペロンのような高度に発現されるオペロン/遺伝子の周知の組の誘導性プロモーター、またはこれらの機能的ハイブリッド(例えば、trpおよびlacプロモーターの融合であるtacプロモーター(アマン(Amann)ら、1983年、Gene25:161−178))から選択してもよい。あるいは、細胞周期(cell’s life)全体を通してメッセンジャーRNAの一定の供給を提供する構成性プロモーターを使用することもできる。他の任意の有用なプロモーターは、とりわけ、NCBIウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/)において見出すことができる。
【0031】
好適な実施形態では、プロモーターは、高度に発現される(本明細書において、少なくとも0.5%(w/w)の全細胞mRNAを伴うmRNA濃度として規定される)遺伝子から誘導され得る。別の好適な実施形態では、プロモーターは、中程度に発現される(本明細書において、少なくとも0.01%〜0.5%(w/w)の全細胞mRNAを伴うmRNA濃度として規定される)遺伝子から誘導され得る。好適な実施形態では、プロモーターは、低度で発現される(本明細書において、0.01%(w/w)未満の全細胞mRNAを伴うmRNA濃度として規定される)遺伝子から誘導され得る。
【0032】
なおより好適な実施形態では、遺伝子、およびそれ故、所定の転写レベルおよび調節を有するそれらの遺伝子のプロモーターを選択するために、マイクロアレイデータが使用される。この方法では、遺伝子発現カセットを、それが機能すべき条件に至適に適応することができる。
【0033】
あるいは、本発明のポリヌクレオチドの前方にランダムDNAフラグメントをクローニングし得る。これらは、いわゆる直接選択アプローチを介して単離することができる。プロモーター−レス選択マーカー遺伝子(即ち、カナマイシン耐性)を使用して、この遺伝子の前方にランダムDNAフラグメントをクローニングして、そして活性なプロモーター(これらはカナマイシンを含有する培地における増殖を容易にすべきであるため)について容易にスクリーニングすることができる。これらのDNAフラグメントは、多くの供給源、即ち、異なる種から、PCR増幅、合成などによって誘導することができる。続いて、配列を単離し、そして本発明のポリヌクレオチドの前方にクローニングすることができる。同様のストラテジーを使用して、recDNA方法論を介して、高度に翻訳された伸長因子Tuタンパク質をコードするtuf遺伝子、またはトリプトファンオペロンの改変されたもしくは合成変種から入手可能なもののような効率的に翻訳されたメッセンジャーRNA由来の5’−非翻訳リーダー領域を導入することによって、メッセンジャーRNAプールの翻訳を改善することができる。
【0034】
制御配列はまた、適切な転写ターミネーター配列、転写を終結するために原核細胞によって認識される配列を含んでもよい。ターミネーター配列は、ポリペプチドをコードする核酸配列の3’末端と操作可能に連結される。細胞において機能的であるいずれのターミネーターも本発明において使用することができる。原核細胞の好適なターミネーターは、発現させようとする生来の遺伝子またはrRNA遺伝子もしくはウイルスオペロンのような供給源のいずれかから入手され、例えば、リボソームRNAターミネーター、またはfdターミネーター(サンブルック(Sambrook)ら、1989年、Molecular Cloning第2版;CSH Press)がある。
【0035】
ポリペプチドの分泌のための制御配列は、コードされるポリペプチドを細胞の分泌経路に向けることができる、ポリペプチドのアミノ末端に連結されたアミノ酸配列をコードするシグナルペプチドコード領域を含んでもよい。コード配列の5’末端は、分泌されるポリペプチドをコードするコード領域のセグメントを伴う翻訳リーディングフレームにおいて天然に連結されるシグナルペプチドコード領域を本質的に含有してもよい。あるいは、コード配列の5’末端は、コード配列に対して外来性であるシグナルペプチドコード領域を含有してもよい。外来性のシグナルペプチドコード領域は、コード配列がシグナルペプチドコード領域を天然には含有しない場合に要求され得る。あるいは、外来性シグナルペプチドコード領域は、ポリペプチドの増強された分泌を得るために、天然のシグナルペプチドコード領域と単純に置き換わってもよい。
【0036】
核酸構築物は、発現ベクターであってもよい。発現ベクターは、組換えDNA手順に簡便に供され得、ポリペプチドをコードする核酸配列の発現をもたらし得るいずれのベクター(例えば、プラスミドまたはウイルス)であってもよい。ベクターの選択は、典型的に、ベクターと、ベクターを導入しようとする細胞との適合性に依存する。ベクターは、線状であってもまたは閉環状プラスミドであってもよい。
【0037】
別の実施形態では、前述の発現カセットは、本来のプロモーターのtrpプロモーターまたはaroプロモーターによる置換によって、さらに改変される。発現効率の基本的改善を十分に利用するために、増加した遺伝子発現、メッセンジャーRNA翻訳およびプラスミド安定性に関与するさらなる改変を、実際の産生株を作製するために使用されるrecDNA構築物に適用してもよい(例えば、ファージfdの転写ターミネーターの付加、またはプラスミドpSC101由来の分配機能parの導入)(チャーチワード(Churchward)ら、1983年、Nucl.Acid.Res.11:5645−5659)。
【0038】
所望されるタンパク質の産生を増加するために、プラスミドColE1、ColD、R1162、RK2のような染色体外因子上の発現カセット、または所定の低コピー数もしくはしばしば、動的に高コピー数で存在するおよび例えば、大腸菌(Escherichia coli)株HB101、B7、RV308、DH1、HMS174、W3110、BL21における増殖または自律複製が可能である誘導体を挿入することができる。
【0039】
ベクターは、自律的複製型ベクター、即ち、その複製が染色体複製とは独立する細胞外染色体実体として存在するベクター、例えば、プラスミド、染色体外エレメント、ミニ染色体、または人工染色体であってもよい。あるいは、ベクターは、細胞に導入される場合、ゲノムに組込まれ、それが組込まれている染色体と共に複製するものであってもよい。組込みクローニングベクターは、宿主細胞の染色体の無作為または所定の標的遺伝子座に組込み得る。本発明の好適な実施形態では、組込みクローニングベクターは、この所定の座位へのクローニングベクターの組込みを標的化するための宿主細胞のゲノムにおける所定の標的遺伝子座のDNA配列に相同であるDNAフラグメントを含んでなる。標的化組込みを促進するために、クローニングベクターは、好ましくは、宿主細胞の形質転換の前に線状化される。線状化は、好ましくは、少なくとも1つ、但し、好ましくは、クローニングベクターのいずれか一方の末端が標的遺伝子座に相同な配列によって隣接されるように、実施される。標的遺伝子座に隣接する相同配列の長さは、好ましくは、少なくとも0.1kb、なお好ましくは、さらに少なくとも0.2kb、より好ましくは、少なくとも0.5kb、さらにより好ましくは、少なくとも1kb、最も好ましくは少なくとも2kbである。ベクターシステムは、宿主細胞のゲノムに導入しようとする全DNAを共に含有する単一のベクターまたはプラスミドあるいは2つ以上のベクターまたはプラスミドであってもよい。
【0040】
DNA構築物は、エピソームベクター上で使用してもよい。好ましくは、構築物は、宿主株のゲノムに組込まれる。
【0041】
別の実施形態では、本発明のポリペプチドの適用は、プラバスタチン産出を制限する酵素をコードする宿主株のゲノムから内因性遺伝子の1つ以上を欠失することによって、改善することができる。そのような酵素の例には、コンパクチンまたはプラバスタチンの側鎖を加水分解する酵素があるが、これらに限定されない。
【0042】
好適な実施形態では、cmpH遺伝子(配列番号1)、すべての相同配列、レダクターゼドメインへのcmpH融合(配列番号4)およびコンパクチンヒドロキシラーゼをコードするすべての機能的な均等物を、コンパクチン産生宿主細胞において発現させて、プラバスタチンを産生させることができる。原核生物宿主の場合、上記のような宿主において機能的発現のすべての態様を適用することができる。真核宿主細胞の場合、好ましくは、そのような宿主における効率的発現に対して発現構築物を適用する。好ましくは、宿主細胞は真菌であり、より好ましくは、糸状菌であり、最も好ましくは、真菌宿主細胞は、スタチン系薬剤、好ましくは、コンパクチンを産生する細胞である。それらの例には、アスペルギルス(Aspergillus)種(即ち、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus))、またはペニシリウム(Penicillium)種(即ち、ペニシリウム・シトリナム(Penicillium citrinum)もしくはクリソゲナム(chrysogenum))、またはモナスカス(Monascus)種(即ち、モナスカス・ルバー(Monascus ruber)もしくはパキシー(paxii))があるが、これらに限定されない。
【0043】
糸状菌細胞に好適なプロモーターは、当該技術分野において公知であり、そして例えば、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼgpdAプロモーター、pepA、pepB、pepCのようなプロテアーゼプロモーター、グルコアミラーゼglaAプロモーター、アミラーゼamyA、amyBプロモーター、カタラーゼcatRまたはcatAプロモーター、グルコースオキシダーゼgoxCプロモーター、β−ガラクトシダーゼlacAプロモーター、α−グルコシダーゼaglAプロモーター、翻訳伸長因子tefAプロモーター、xlnA、xlnB、xlnC、xlnDのようなキシラナーゼプロモーター、eglA、eglB、cbhAのようなセルラーゼプロモーター、areA、creA、xlnR、pacC、prtTなどのような転写調節因子のプロモーターなどであり得、そしてとりわけ、NCBIウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/)において見出すことができる。
【0044】
好適な実施形態では、プロモーターは、高度に発現される(本明細書において、少なくとも0.5%(w/w)の全細胞mRNAを伴うmRNA濃度として規定される)遺伝子から誘導され得る。別の好適な実施形態では、プロモーターは、中度に発現される(本明細書において、少なくとも0.01%〜0.5%(w/w)の全細胞mRNAを伴うmRNA濃度として規定される)遺伝子から誘導され得る。別の好適な実施形態では、プロモーターは、低度で発現される(本明細書において、少なくとも0.01%(w/w)の全細胞mRNAを伴うmRNA濃度として規定される)遺伝子から誘導され得る。
【0045】
なおより好適な実施形態では、遺伝子、ひいては、所定の転写レベルおよび調節を有するそれらの遺伝子のプロモーターを選択するために、マイクロアレイデータが使用される。この方法では、遺伝子発現カセットを、それが機能すべき条件に至適に適応することができる。
【0046】
制御配列はまた、適切な転写ターミネーター配列、転写を終結するために糸状菌細胞によって認識される配列を含んでもよい。ターミネーター配列は、ポリペプチドをコードする核酸配列の3’末端と操作可能に連結される。細胞において機能的であるいずれのターミネーターも本発明において使用することができる。糸状菌細胞のための好適なターミネーターは、麹菌(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)グルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニダランス(Aspergillus nidulans)アントラニル酸シンターゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)α−グルコシダーゼ、trpC遺伝子およびフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)トリプシン様プロテアーゼをコードする遺伝子から入手される。
【0047】
制御配列はまた、適切なリーダー配列、糸状菌細胞による翻訳に重要であるmRNAの非翻訳領域を含んでもよい。リーダー配列は、ポリペプチドをコードする核酸配列の5’−末端と作動可能に連結される。細胞において機能的であるいずれのリーダー配列も本発明において使用することができる。糸状菌細胞のための好適なリーダーは、麹菌(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼおよびアスペルギルス・ニダランス(Aspergillus nidulans)トリオースリン酸イソメラーゼおよびアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)glaAをコードする遺伝子から得られる。
【0048】
制御配列はまた、核酸配列の3’末端に作動可能に連結され、転写される場合、転写されるmRNAにポリアデノシン残基を付加するためのシグナルとして糸状菌細胞に認識されるポリアデニル化配列を含んでもよい。細胞において機能的ないずれのポリアデニル化配列も本発明において使用することができる。糸状菌細胞のための好適なポリアデニル化配列は、麹菌(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)グルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニダランス(Aspergillus nidulans)アントラニル酸シンターゼ、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)トリプシン様プロテアーゼ、およびアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)α−グルコシダーゼをコードする遺伝子から得られる。
【0049】
核酸構築物は、発現ベクターであってもよい。発現ベクターは、組換えDNA手順に簡便に供され得、ポリペプチドをコードする核酸配列の発現をもたらし得るいずれのベクター(例えば、プラスミドまたはウイルス)であってもよい。ベクターの選択は、典型的に、ベクターと、ベクターを導入しようとする細胞との適合性に依存する。ベクターは、線状であってもまたは閉環状プラスミドであってもよい。
【0050】
ベクターは、自律的複製型ベクター、即ち、その複製が染色体複製とは独立する細胞外染色体実体として存在するベクター、例えば、プラスミド、染色体外エレメント、ミニ染色体、または人工染色体であってもよい。糸状菌の自律的に維持されるクローニングベクターは、AMA1配列を含んでなり得る(例えば、アレクセンコ(Aleksenko)およびクラッターバック(Clutterbuck)(1997年)、Fungal Genet.Biol.21:373−397を参照のこと)。あるいは、ベクターは、細胞に導入される場合、ゲノムに組込まれ、それが組込まれている染色体と共に複製するものであってもよい。組込みクローニングベクターは、宿主細胞の染色体の無作為または所定の標的遺伝子座に組込み得る。好ましくは、組込みクローニングベクターは、この所定の座位へのクローニングベクターの組込みを標的化するための宿主細胞のゲノムにおける所定の標的遺伝子座のDNA配列に相同であるDNAフラグメントを含んでなる。標的化組込みを促進するために、クローニングベクターは、好ましくは、宿主細胞の形質転換の前に線状化される。線状化は、好ましくは、少なくとも1つ、但し、好ましくは、クローニングベクターのいずれか一方の末端が標的遺伝子座に相同な配列によって隣接されるように、実施される。標的遺伝子座に隣接する相同配列の長さは、好ましくは、少なくとも0.1kb、なお好ましくは、さらに少なくとも0.2kb、より好ましくは、少なくとも0.5kb、さらにより好ましくは、少なくとも1kb、最も好ましくは少なくとも2kbである。ベクターシステムは、宿主細胞のゲノムに導入しようとする全DNAを共に含有する単一のベクターまたはプラスミドあるいは2つ以上のベクターまたはプラスミドであってもよい。
【0051】
DNA構築物は、エピソームベクター上で使用してもよい。好ましくは、構築物は、宿主株のゲノムに組込まれる。
【0052】
真菌細胞は、同時形質転換を使用して形質転換される(即ち、目的の遺伝子に伴って、選択マーカー遺伝子も形質転換される)。これは、目的の遺伝子(即ち、プラスミド上)または個別のフラグメント上のいずれかに物理的に連結することができる。トランスフェクション後、形質転換体を、この選択マーカー遺伝子の存在についてスクリーニングし、続いて、目的の遺伝子の存在について分析する。選択マーカーは、殺生物剤またはウイルスに対する耐性、重金属に対する耐性、栄養要求体に原栄養性などを提供する産物である。有用な選択マーカーとして、amdS(アセトアミダーゼ)、argB(オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ)、bar(ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ)、hygB(ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)、niaD(硝酸レダクターゼ)、pyrG(オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ)、sCもしくはsutB(硫酸アデニルトランスフェラーゼ)、trpC(アントラニル酸シンターゼ)、ble(フレオマイシン耐性タンパク質)、またはそれらの均等物が挙げられる。
【0053】
得られる宿主細胞は、プラバスタチンを産生させるために使用してもよい。
【0054】
第3の態様では、本発明は、以下の工程を含んでなる第2の態様のコンパクチンからプラバスタチンへの変換を改善することが可能なポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを単離するための方法を提供する:
(i)本発明の第1の態様のポリヌクレオチドで宿主細胞を形質転換すること;
(ii)形質転換細胞のクローンを、コンパクチンをヒドロキシル化するそれらの能力について選択すること;
(iii)これらの単離されたクローンを、様々なポリヌクレオチドで再形質転換すること;
(iv)形質転換細胞のクローンを、コンパクチンをヒドロキシル化するそれらの改善された能力について選択すること;
(v)プラスミドを単離すること;
(vi)プラスミドの挿入物を配列決定すること。
【0055】
工程(iii)の様々なポリヌクレオチドは、いくらかの供給源から入手することができる。それは、ゲノムDNA、コピーDNA、RNA、半合成または合成由来であり得る。それは、真核生物または原核生物宿主由来であり得る。それは、環状または線状ポリヌクレオチドとして提供され得る。それは、特異的ポリヌクレオチド(即ち、遺伝子もしくは遺伝子ファミリーまたは遺伝子から誘導されるエラープローンライブラリー)であり得るか、あるいはそれは、ランダムポリヌクレオチド(即ち、メタゲノムライブラリーまたは無作為に消化されたゲノムDNA)であり得る。それは、それ自体のプロモーターから発現され得るか、またはそれは、工程(i)の工程において機能的なプロモーターの後方にクローニングすることができる。
【0056】
コンパクチンヒドロキシラーゼ活性を改善するポリペプチドをコードするそのような核酸配列は、例えば、第1の態様のポリヌクレオチドのドナー微生物のゲノムまたはcDNAライブラリーをスクリーニングすることによって、単離してもよい。一旦、配列番号2から誘導されるプローブに相同な核酸配列を検出したら、配列およびその周囲のDNAは、当業者に公知の技術(サンブルック(Sambrook)ら、1989年、Molecular Cloning,A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor,New Yorkを参照のこと)を利用して、単離またはクローニングすることができる。
【0057】
この方法では、増強された機能を伴うポリペプチドをコードする変種ポリヌクレオチド、またはコンパクチンヒドロキシラーゼ酵素の機能化を支援もしくは容易にするポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、またはコンパクチンヒドロキシラーゼ遺伝子より前方のプロモーターを活性化するポリヌクレオチドをクローニングすることが可能である。
【0058】
一実施形態では、p450酵素に必要な酸化還元再生系(ピリペンコ(Pylypenko)およびシュリヒティンク(Schlichting)、2004年、Annu.Rev.Biochem.73:991−1018)を単離し、そしてこれを、コンパクチンヒドロキシラーゼ発現宿主細胞に導入することによって、コンパクチンからプラバスタチンへの変換の効率を改善する方法を開示する。そのような系を宿主細胞に導入する一般的方法は、コンパクチンヒドロキシラーゼの導入に関する説明と同じであり、上記で概説している。そのような酸化還元再生系は、第2の態様のポリヌクレオチドが入手され得るか、または異種発現され得る種として例示される種から入手され得;その例には、ストレプトマイセス(Streptomyces)種(即ち、ストレプトマイセス・カルボフィラス(Streptomyces carbophilus)、ストレプトマイセス・フラビドビレンス(Streptomyces flavidovirens)、ストレプトマイセス・コエリカラー(Streptomyces coelicolor)、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)、ストレプトマイセス・エクスフォリエーテス(Streptomyces exfoliates)、ストレプトマイセス・アバーミチリス(Streptomyces avermitilis)、ストレプトマイセス・クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus))またはアミコラトプシス(Amycolatopsis)種(即ち、アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis))またはバチルス(Bacillus)種(即ち、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilus)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis))またはコリネバクテリウム(Corynebacterium)種(即ち、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum))またはエシェリキア(Escherichia)種(即ち、大腸菌(Escherichia coli))があるが、これらに限定されない。また、代替的系を適用することもできる。代替的系の例には、本発明のコンパクチンヒドロキシラーゼをクラスIVp450系に組込み、それによって、それを酸化還元パートナーに融合すること(ロバーツ(Roberts)ら、2002年、J.Bacteriol.184:3898−3908およびクボタ(Kubota)ら、2005年、Biosci.Biotechnol.Biochem.69:2421−2430)、または亜リン酸デヒドロゲナーゼのようなNAD(P)H生成非p450連結酵素(ヨハネス(Johannes)ら、2005年、Appl Environ Microbiol.71:5728−5734)、または非酵素的手段(ホールマン(Hollmann)ら、2006年、Trends Biotechnol24:163−171)があるが、これらに限定されない。
【0059】
本発明の第4の態様では、第3の態様の方法に従って産生されるプラバスタチンは、医薬組成物内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】cmpH遺伝子の産物、コンパクチンヒドロキシラーゼによって触媒される変換を示す。説明:[C]=コンパクチン;[P]=プラバスタチン。
【図2】プラスミドpZERO−Ao−11H9を示す。説明:ORF−1=第1のオープンリーディングフレーム、ORF−2=第2のオープンリーディングフレーム、zeo=ゼオシンに対する耐性をコードする遺伝子、kan=カナマイシンに対する耐性をコードする遺伝子。
【図3】プラスミドpZERO−Ao−11H9dを示す。説明:ORF−1=第1のオープンリーディングフレーム、zeo=ゼオシンに対する耐性をコードする遺伝子、kan=カナマイシンに対する耐性をコードする遺伝子。
【図4】プラスミドpACYC−taqScp450を示す。説明:Sc−p450=コンパクチンヒドロキシラーゼp450をコードするストレプトマイセス・カルボフィラス(Streptomyces carbophilus)遺伝子、cat=クロラムフェニコールに対する耐性をコードする遺伝子。
【図5】プラスミドpACYC−taqAop450を示す。説明:A0−cmpH=コンパクチンヒドロキシラーゼp450をコードするアミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)遺伝子、cat=クロラムフェニコールに対する耐性をコードする遺伝子。
【0061】
[実施例]
[一般的方法]
標準的なDNA手順および原核生物培養は、その他(サンブルック,J(Sambrook,J.)ら、1989年、Molecular cloning:a laboratory manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York)に記載のとおりに行った。DNAは、プルーフリーディング酵素Phusionポリメラーゼ(Finnzymes)を使用して、増幅した。制限酵素は、InvitrogenまたはNew England Biolabs製であった。コンパクチンを、20mg/mlの最終濃度でエタノールに溶解することによって、コンパクチンの加水分解を行った。NaOHを、4Mストックから、0.1Mの最終濃度まで添加した。溶液を、50℃で1〜2時間、加熱し、続いて、室温まで冷却した。この溶液は、室温で3箇月間、貯蔵することができる。両方の化合物を20mg/mlでエタノールに溶解することによって、プラバスタチンおよび非加水分解コンパクチンストック溶液を作製した。
【0062】
[実施例1]
[効率的な全細胞のコンパクチンからプラバスタチンへの生体変換のスクリーニング]
多様な原核および真菌種(表1)を試験して、加水分解されたコンパクチンからの改善された変換を伴う種を単離した。すべての種を、1〜3日間(種の増殖速度に依存する)、25mlの2×YT培地中でプレ培養し、洗浄し、そして25ml新鮮2×YT培地中に懸濁した。280rpmおよび30℃で振盪しながら数時間の順応期間後、加水分解したコンパクチンを、0.1、0.2、0.5および1mg/mlの最終濃度で添加した。24時間のインキュベーション後、振盪フラスコの内容物を50mlグライナーチューブに移すことによって、ブロスを回収した。サンプルを−20℃で凍結し、続いて、凍結乾燥した。1〜2mlメタノールの凍結乾燥サンプルへの添加、それに続く、ボルテックス撹拌の反復によって、スタチン系薬剤を抽出した。遠心分離によって、液相から固体を分離した。200μlのメタノール抽出物をHPLCバイアルに移し、続いて、以下のようなHPLC分析を行った:
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
表1において認められ得るように、4つの種の試験した組:アクチノキネオスポラ・リパリア(Actinokineospora riparia)、シュードノカルジア・アルニ(Pseudonocardia alni)、ストレプトマイセス・カルボフィラス(Streptomyces carbophilus)およびアミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)によって、プラバスタチンを合成した。
【0066】
[実施例2]
[コンパクチンの生物学的加水分解]
実施例1に記載の種がまた、コンパクチンをラクトン型で加水分解および/またはヒドロキシル化するかどうかを確立するために、選択した4つの種を、1〜3日間(種の増殖速度に依存する)、25mlの2×YT培地中でプレ培養し、洗浄し、そして25ml新鮮2×YT培地中に再懸濁した。280rpmおよび30℃で振盪しながら数時間の適応後、非加水分解コンパクチンを、0.2mg/mlで添加した。24時間のインキュベーション後、振盪フラスコの内容物を50mlグライナーチューブに移すことによって、ブロスを回収した。サンプルを−20℃で凍結し、続いて、凍結乾燥した。1〜2mlメタノールの添加、それに続くボルテックス撹拌の反復によって、スタチン系薬剤を抽出した。遠心分離によって、液相から固体を分離した。200μlのメタノール抽出物をHPLCバイアルに移し、続いて、実施例1に記載のようにHPLC分析を行った。4つのすべての種(アクチノキネオスポラ・リパリア(Actinokineospora riparia)、大腸菌(Escherichia coli)、ストレプトマイセス・カルボフィラス(Streptomyces carbophilus)およびアミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis))は、コンパクチンを加水分解するが、これは、プラバスタチン形成に不可欠ではない。アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)は、プラバスタチンを合成するのに最も効率的な種であった。
【0067】
【表3】

【0068】
[実施例3]
[アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)は、極めて効率的なコンパクチンヒドロキシル化を有する]
実施例1から、アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)は、コンパクチンヒドロキシル化について、ストレプトマイセス・カルボフィラス(Streptomyces carbophilus)より優れていると結論付けた。さらなる研究のために、両方の種を、24時間、25mlの2×YT培地中でプレ培養し、洗浄し、そして25ml新鮮2×YT培地に再懸濁した。280rpmおよび30℃で振盪しながら数時間後、加水分解コンパクチンを、0.1および0.2mg/mlで添加した。24時間のインキュベーション後、振盪フラスコの内容物を50mlグライナーチューブに移すことによって、ブロスを回収した。サンプルを−20℃で凍結し、続いて、凍結乾燥した。1〜2mlメタノールの乾燥サンプルへの添加、それに続く、ボルテックス撹拌の反復によって、スタチン系薬剤を抽出した。遠心分離によって、液相から固体を分離した。200μlのメタノール抽出物をHPLCバイアルに移し、続いて、実施例1に記載のようにHPLC分析を行った。表3において認められ得るように、アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)は、100%の効率でコンパクチンをプラバスタチンに変換することが可能であり、ここで、ストレプトマイセス・カルボフィラス(Streptomyces carbophilus)では認められない。
【0069】
【表4】

【0070】
[実施例4]
[コンパクチンをプラバスタチンに変換する生体触媒をコードする遺伝子フラグメントの単離]
[アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)の遺伝子ライブラリー]
液体培地(10g/lグルコース、5g/l酵母抽出物、20g/lデンプン、1g/lのCaCOおよび0.5g/lカザミノ酸、バッフルフラスコ)中にアミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)のコロニーを28℃で、OD=2.0まで増殖させた。一部を使用して、グリセロールストックを調製し、そして一部を使用して、ゲノムDNA単離のための細胞の調製のために50mlの液体培地を伴うフラスコに播種(比1/50)した。28℃で16時間後、ゲノムDNAを単離するために、培養を使用した。それに対し、インキュベーションの最後の1時間の間に、アンピシリンを200μg/mlの最終濃度で添加した。細胞を、遠心分離(8000rpmで15分間)に回収し、そしてペレットを50mMのEDTAを伴うpH8.0に調整した5mlの50mMのTris−HClに再懸濁した。100μlのリゾチーム(100mg/ml)および40μlプロテイナーゼK(20mg/ml)を添加した後、懸濁液を30分間、37℃でインキュベートした。Promega製のNuclei Lysis Solution(6ml)を添加した。80℃で15分間、および65℃で30分間のインキュベーションにより、ほぼ完全な細胞溶解物がもたらされた。RNase処置(10μlの100mg/mlのRNaseA溶液)の後、2mlのPromega製のProtein Precipitation Solutionを添加し、混合物をボルテックス撹拌(20秒間)し、そして氷上でインキュベート(15分間)した。遠心分離(5000rpmで15分間)後、上清を、0.1容積のNaAc(3M、pH5)および2容積のEtOH(96%)と混合した。沈殿したゲノムDNAの目視で認められる複合体をパスツールピペットで移し、そして500μlの10mMのTris(pH8.0)に溶解した。第2のプロテイナーゼK処置(10μlの20mg/mlストック溶液を200μlのサンプルあたりに使用し、続いて、37℃で30分間のインキュベーションを行った)を適用して、残留するタンパク質を取り出した。プロテイナーゼK工程後、500μlのフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(PCI、25:24:1)を添加し、そして混合物を14,000rpmで5分間、遠心分離した。上相を新しいバイアルに移し、そして微量に残留するフェノールを取り出すために、500μlのPCI(24:1)を添加した。相を遠心分離により分離し、そしてDNAの沈殿のために、上相を0.1容積のNaAc(3M、pH5)および2容積のEtOH(96%)と混合した。ゲノムDNAをピペットで採取し、70%冷EtOHで洗浄し、そして500μlのTris−EDTA緩衝液に溶解した。これにより、1.85のA260nm/A280nmを伴う134μgの精製されたゲノムDNAを生じた。Sau3AI(0.067単位/μgのDNA)を使用して、単離されたアミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)DNAを部分的に消化して、4〜10kbの範囲のより小さなフラグメントを得た。ゲノムDNA(50μg)を消化し、そしてQiagen QIAquick抽出キットを使用して、調製用0.6%アガロースゲルから4〜10kbの間のフラグメントを単離し、そして最終的に20μlの10mMのTris、pH8.0に溶解した。これらのフラグメントをBamHIで消化したpZErO−2(Invitrogen)に連結し、そして大腸菌(Escherichia coli)DH10Bに形質転換して、約39,000個のコロニーを得た。20個の個々のコロニーを使用して、10mlの2×YT培地に播種して、ライブラリーの多様性を確認し、そして平均的な挿入物のサイズを決定した。19のプラスミドが異なるサイズの挿入物を含有した一方、1個のコロニーが挿入物を有さなかった(自己連結ベクター5%)。pZErO−2におけるgDNAフラグメントの平均挿入物サイズは、約3.8kbであった。得られたすべての形質転換体をプレートから回収し、そしてカナマイシンを伴う液体2×YT培地に再懸濁し、そして8%(v/v)の最終濃度でグリセロールを添加し、そして−80℃で貯蔵した。
【0071】
[アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)遺伝子ライブラリーのスクリーニング]
アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)遺伝子ライブラリーを2×YT寒天+カナマイシン(50mg/L)上にプレート化し、そして72時間、室温でインキュベートした。ほぼ12,000個のコロニーを使用して、0.2mlの2×YT培地+35mg/Lカナマイシンを含有する120枚の96ウェルマイクロタイタープレート(MTP)に播種した。MTPを、25℃、500rpmで48時間、インキュベートした。各ウェルから、140μlの細胞懸濁液を、10分間、3,000rpmで遠心分離し、そしてプレートをティッシュペーパー上で軽くたたくことによって上清を廃棄した(培養物の残りを50μlの20%グリセロールに添加し、そして−80℃で貯蔵した)。1ウェルあたり250μlの基質溶液(加水分解されたコンパクチン、200mg/L;グルコース、2g/l;リン酸緩衝液、50mM;pH6.8を伴う2×YT培地)。ウェル中の細胞ペレットを懸濁し、そして48時間、30℃で、280rpmでインキュベートした。1ウェルあたり0.35mlメタノールの添加後、スタチン系薬剤を抽出し、そして1時間、280rpmで混合した。細胞破砕物を、15分間、2750rpmの遠心分離によって取り出した。100μlのサンプルを、LC−MSによって分析した。
【0072】
[アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)遺伝子ライブラリーのLC−MS分析]
ヘリウム雰囲気2における撹拌下、1晩中MeOH中1.5MのNaOH(1:2)によるメバスタチン(A.G.Scientific、ロット番号A7413、純度99.36%)の加水分解によって、コンパクチン標準を調製した。pHをHCl(4M)の添加によって減少し、そして標準物を水でさらに希釈する。サンプルを、ACT(Advanced Chromatography Technologies)製のショート(20mm)CNカラムを伴うWaters LC/MSシステム上、移動相として水およびアセトニトリル(両者は0.1%ギ酸を伴う)で分析する。LC−部分の詳細は以下のとおりである:
【0073】
【表5】

【0074】
ポジティブモード(ES+)のMSエレクトロスプレーイオン化を使用し、そして化合物を3つの化合物の選択されたイオン(SIR)を伴うナトリウム付加物([M+Na]+)として分析する。MS−部分の詳細は以下のとおりである:
【0075】
【表6】

【0076】
スキャンマス範囲(m/z)200〜600amu、スキャン期間0.20秒間、スキャン間遅延0.05秒間;3チャンネルのSIR:413.30、431.3、447.3、ドエル0.07秒間、スキャン間遅延0.05秒間。
【化1】

【0077】
この装備により、4種の最も重要な分子、コンパクチン、加水分解されたコンパクチンならびに6−ヒドロキシ−コンパクチン2つの立体異性体、即ち、β−変種プラバスタチン(構造については上記を参照のこと)およびα−変種エピ−プラバスタチンを区別することが可能である。
【0078】
【表7】

【0079】
それらは、プラバスタチンの位置で小さいが、有意なピークを示したため、いくらかのクローンを候補として同定した。例として表4において、1個のクローンがバックグランドを超えるシグナルを生じる(ウェル位置B1のクローン)結果のサブセットを示す。
【0080】
[実施例5]
[コンパクチンからプラバスタチンへの生体触媒をコードする遺伝子の同定]
[アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)由来の推定コンパクチンヒドロキシラーゼの再試験]
実施例4の分析を、推定クローンとして第1ラウンドにおいて同定した4個のクローンで反復した。しかし、今回、クローンを、MTPの代わりに振盪フラスコにおいて増殖させ、そしていくつかの培養培養条件を変動させた。クローンを、推定コンパクチンヒドロキシラーゼを含有する大腸菌(Escherichia coli)細胞を播種した10mlの2×YT中でプレ培養し、そして24時間、30℃、280rpmで増殖させた。続いて、0.1〜0.5mMのIPTGおよび0.5mMのδ−アミノレブリン酸を添加し、そして培養物を22℃で、280rpm、12時間、インキュベートした。細胞を回収し、洗浄し、そして(加水分解されたコンパクチン、200mg/L;グルコース、2g/l;リン酸緩衝液、50mM;pH6.8で補充した)新鮮2×YT培地中でボルテックス撹拌することによって、再懸濁した。細胞懸濁液を、30または37℃のいずれか、24または48時間、280rpmでインキュベートした。スタチン系薬剤を抽出し、そして実施例4に記載のように分析した。
【0081】
【表8】

【0082】
表5において認められ得るように、唯一のクローン11H9が真の有意なコンパクチンからプラバスタチンへの変換を有する。従って、この1つは、さらなる分析のために選択した。
【0083】
[配列決定および配列解析]
大腸菌(Escherichia coli)クローン11H9を、カナマイシンを伴う2×YTにおいて培養し、そしてQiagen QIAprepepキットを使用して、プラスミドDNAを単離し、そしてpZERO−2プラスミドにおけるアミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)ゲノム挿入物の配列を決定した。挿入物の配列は、2545ヌクレオチド長(配列番号1を参照のこと)である。DNA配列の分析を実施して、そして2つのオープンリーディングフレーム(ORF)を同定することができた(図2)。第1のORFは、既知のp450酵素(即ち、最良は、ストレプトマイセス・ツベルシジクス(Streptomyces tubercidicus)由来のシトクロムP450モノオキシゲナーゼCYP105S2である)にいくつかの相同性を有する401アミノ酸(配列番号2および3)の推定タンパク質をコードする。第2のORFはいくつかの膜貫通領域を有し、そしてATP型Binding Cassette(ABC)タンパク質をコードし得る。
【0084】
[構造遺伝子、cmpHの同定]
コンパクチンを加水分解することが可能な構造遺伝子を同定するために、SalIおよびXhoIによる二重消化を介して、pZERO−Ao−11H9からORF−2を欠失させた。続いて、4.9kbフラグメントを単離し、そして自己連結させた。得られるプラスミドpZERO−Ao−11H9は、完全ORFとしてただ1つのORF−1を含有する(図3)。このクローンは、クローンpZERO−Ao−11H9と同じ変換率を有し、ORF−1がcmpHと命名される機能的なコンパクチンヒドロキシラーゼをコードすることを示す。
【0085】
[比較例6]
[大腸菌(Escherichia coli)におけるストレプトマイセス・カルボフィラス(Streptomyces carbophilus)コンパクチンヒドロキシラーゼの活性]
[p450−SCA大腸菌(E.coli)発現クローンの構築]
ストレプトマイセス・カルボフィラス(Streptomyces carbophilus)p450をコードする遺伝子を、配列番号7および配列番号8のプライマーを使用して、株FERM−BP1145から単離したゲノムDNAからPCR増幅した。PCRフラグメントを、供給者の指示書(Invitrogen)に従って、pCR2.1TOPO/TAベクターにおけるクローンであった。発現クローンを、pACYC−taq(Kraemer,M.,2000.Untersuchungen zum Einfluss erhoehter Bereitstellung von Erythrose−4−Phosphat und Phosphoenolpyruvat auf den Kohlenstofffluss in den Aromatenbiosyntheseweg von Escherichia coli. Berichte des Forschungszentrums Juelich 3824,ISSN 0944−2952,PhD Thesis,University of Duesseldorf)を、Acc65Iで消化し、そしてpCR2.1TOPO/TAベクターから単離したAcc65Iフラグメントに連結することによって、構築し、pACYC−taqScp450(図4)を得た。
【0086】
[大腸菌(Escherichia coli)抽出物における活性決定]
pACYC−taqScp450を含有する大腸菌(Escherichia coli)細胞を、クロラムフェニコールを伴う10mlの2×YTにおいて培養した。細胞懸濁液を、基本的に処理し、そして実施例5に記載のようにコンパクチンと共にインキュベートした。この場合、培養温度は37℃であり、そしてクロラムフェニコールおよびIPTG(0.1mM)を、反応混合物に添加した。反応物を、30℃および220rpmでインキュベートした。サンプルを様々な時点で採取し、そして実施例1に記載のようなHPLCプロトコルを使用して、分析した。24時間後、プラバスタチンを決定することができなかった。
【0087】
[実施例7]
[大腸菌(Escherichia coli)におけるアミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)コンパクチンヒドロキシラーゼの活性]
[Ao−cmpH大腸菌(Escherichia coli)発現クローンの構築]
アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)p450をコードする遺伝子を、配列番号9および配列番号10のプライマーを使用して単離したゲノムDNAからPCR増幅した。PCRフラグメントを、供給者の指示書(Invitrogen)に従って、pCR2.1TOPO/TAベクターにクローニングした。発現クローンを、pACYC−taq(Kraemer,2000)をAcc65Iで消化し、そしてpCR2.1TOPO/TAベクターから単離したAcc65Iフラグメントを連結することによって、構築し、pACYC−taqAop450(図5)を得た。
【0088】
[大腸菌(Escherichia coli)抽出物における活性決定]
pACYC−taqAop450(図5)を含有する大腸菌(Escherichia coli)細胞を、クロラムフェニコールを伴う2×YT(10ml)において培養した。細胞懸濁液を、実施例5に記載のようにコンパクチンと共にインキュベートした。培養温度は37℃であり、そしてクロラムフェニコールおよびIPTG(0.1mM)を添加した。反応物を、30℃および220rpmでインキュベートした。サンプルを様々な時点で採取し、そして実施例1に記載のようなHPLCプロトコルを使用して、分析した。24時間後、プラバスタチンの大きなピークを検出した。この結果は、アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)p450酵素が他のp450よりも大腸菌(Escherichia coli)においてコンパクチンを加水分解するのにかなり良好に適切であることを明確に実証する。
【0089】
【表9】

【0090】
[実施例8]
[大腸菌(Escherichia coli)におけるアミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)コンパクチンヒドロキシラーゼの誘導体の活性]
遺伝子配列番号11〜18、27〜34を合成的に生成し、そして(配列番号9について)attB1および(配列番号10について)attB2が付加された組み換え部位を伴うオリゴヌクレオチド配列番号9および10によるPCR反応のテンプレートとして使用した。BP反応(Invitrogen Corporation)を実施することによって、PCRフラグメントを、Gateway pDONR221ベクター(Invitrogen Corporation、オランダ)にクローニングした;配列をDNA配列決定によって確認して、PCR関連のエラーを排除した。Gateway LR reactionを使用して、遺伝子を、pDONR221ベクターからpET−DEST42ベクターにトランスファーし、最終発現ベクターpET−DEST42−P450を得た。pET−DEST42−P450(挿入物として配列番号11〜18、27〜34)を所有する大腸菌(Escherichia coli)BL21 DE3を、カナマイシンを伴う10mlの2×YT中、30℃でOD600=0.5〜1.0まで培養した。続いて、培養物を0.1〜0.3mMのIPTGおよび0.5mMのδ−アミノレブリン酸で補充し、そして22℃、280rpmで12時間、インキュベートした。細胞を回収し、洗浄し、そして(加水分解されたコンパクチン、200mg/L;グルコース、2g/l;リン酸緩衝液、50mM;pH6.8で補充した)新鮮2×YT培地に再懸濁した。細胞懸濁液を、30または37℃のいずれか、24または48時間、280rpmでインキュベートした。スタチン系薬剤を抽出し、そして実施例4に記載のように分析した。24時間後、極めて大きなプラバスタチンピークを同定することができた。実施例7に記載の実験とは対照的に、配列番号3または配列番号6によってコードされるコンパクチンヒドロキシラーゼ酵素と比較する場合、生成したプラバスタチンの大部分は、それぞれ配列番号19〜26および配列番号35〜42の酵素の有意に変化した立体特異性の証拠を示すβ−変異である。
【0091】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3、配列番号6、配列番号43〜59に従うアミノ酸配列を有するポリペプチド、配列番号3に対して少なくとも50%の同一性の程度を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド、配列番号6に対して少なくとも60%の同一性の程度を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド、および配列番号43〜59と3アミノ酸以下異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドからなる群から選択される、ポリペプチド。
【請求項2】
配列番号3、配列番号6、配列番号19〜26もしくは配列番号35〜59に記載のアミノ酸配列を有するか、または配列番号3、配列番号6、配列番号19〜26もしくは配列番号35〜59に対して少なくとも90%の同一性の程度を有するアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
少なくとも50%の効率でコンパクチンをプラバスタチンに変換することが可能なポリペプチド。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするDNA配列を含んでなるポリヌクレオチド。
【請求項5】
配列番号1、2、4または5である、請求項4に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
プラバスタチンを産生させるための方法であって、以下の工程:
(i)産生宿主において請求項4または5に記載のポリヌクレオチドを発現させる工程と;
(ii)工程(i)において得られる産生宿主を増殖させる工程と;
(iii)工程(ii)において得られる混合物からプラバスタチンを単離する工程と、
を含んでなる、方法。
【請求項7】
コンパクチンからプラバスタチンへの変換を改善することが可能なポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを単離するための方法であって、以下の工程:
(i)請求項4または5に記載のポリヌクレオチドで宿主細胞を形質転換する工程と;
(ii)形質転換細胞のクローンを、コンパクチンをヒドロキシル化するそれらの能力について選択する工程と;
(iii)これらの単離されたクローンを、様々なポリヌクレオチドで再形質転換する工程と;
(iv)形質転換細胞のクローンを、コンパクチンをヒドロキシル化するそれらの改善された能力について選択する工程と;
(v)プラスミドを単離する工程と;
(vi)プラスミドの挿入物を配列決定する工程と、
を含んでなる、方法。
【請求項8】
工程(i)において得られた産生宿主において請求項7に記載の単離されたポリヌクレオチドを共発現させる工程をさらに含んでなる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
コンパクチンは、前記産生宿主の増殖中に添加される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記産生宿主は、真菌細胞または細菌細胞である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記真菌細胞は酵母または糸状菌細胞であり、そして前記細菌細胞は、アクチノマイセテス(Actinomycetes)およびプロテオバクテリア(Proteobacteria)からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記酵母はサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クリュイベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)またはピキア・パストリス(Pichia pastoris)であり、そして前記糸状菌細胞はアスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、アスペルギルス・ニダランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、ペニシリウム・シトリナム(Penicillium citrinum)、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)、モナスカス・ルバー(Monascus ruber)またはモナスカス・パキシー(Monascus paxii)であり、そして前記アクチノマイセテス(Actinomycetes)はストレプトマイセス(Streptomyces)、アミコラトプシス(Amycolatopsis)またはアクチノマジュラ(Actinomadura)であり、そして前記プロテオバクテリア(Proteobacteria)はエシェリキア(Escherichia)またはバチルス(Bacillus)である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ストレプトマイセス(Streptomyces)はストレプトマイセス・カルボフィラス(Streptomyces carbophilus)、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)、ストレプトマイセス・コエリカラー(Streptomyces coelicolor)またはストレプトマイセス・クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus)であり、そして前記アミコラトプシス(Amycolatopsis)はアミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)であり、そして前記エシェリキア(Escherichia)は大腸菌(Escherichia coli)であり、そして前記バチルス(Bacillus)はバチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)または枯草菌(Bacillus subtilis)である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項6および8〜13のいずれか一項に従って得られるプラバスタチンを含んでなる、医薬組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2010−512733(P2010−512733A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540741(P2009−540741)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063638
【国際公開番号】WO2008/071673
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】