プリンタのロール紙着脱機構
【課題】印刷媒体としてのロール紙の着脱作業を容易とするプリンタのロール紙着脱機構を提供する。
【解決手段】ロール紙11を印刷媒体とするプリンタ1のロール紙着脱機構において、ロール紙11の芯部に挿通されるロールホルダ9aと、ロールホルダ9aの両端部に回転自在に軸支されるガイドコロ80と、ロール紙11をプリンタ1の所定位置に収めるためにロールホルダ9aを支持する2枚の板状フレーム70L,70Rとを具備する。板状フレーム70L,70Rには、ガイドコロ80が係合して転動することでロールホルダ9aの水平方向への移動を可能とする水平上端面70Uが形成されており、ロール紙11を所定位置に収めるためにロールホルダ9aを支持する2つの保持ローラ73を、水平上端面70Uより下方の位置に設ける。保持ローラ73は、ロールホルダ9aの直径より短い間隔で水平方向に配設される。
【解決手段】ロール紙11を印刷媒体とするプリンタ1のロール紙着脱機構において、ロール紙11の芯部に挿通されるロールホルダ9aと、ロールホルダ9aの両端部に回転自在に軸支されるガイドコロ80と、ロール紙11をプリンタ1の所定位置に収めるためにロールホルダ9aを支持する2枚の板状フレーム70L,70Rとを具備する。板状フレーム70L,70Rには、ガイドコロ80が係合して転動することでロールホルダ9aの水平方向への移動を可能とする水平上端面70Uが形成されており、ロール紙11を所定位置に収めるためにロールホルダ9aを支持する2つの保持ローラ73を、水平上端面70Uより下方の位置に設ける。保持ローラ73は、ロールホルダ9aの直径より短い間隔で水平方向に配設される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタのロール紙着脱機構に係り、特に、長尺かつ幅広のロール紙を印刷媒体としたプリンタのロール紙着脱機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷ヘッドからインクの微細な粒子を印刷面に吹き付けることで印刷を行なうインクジェットプリンタにおいて、印刷媒体の搬送方向に対して印刷ヘッドが直角方向に往復動しながら印刷を行うシリアル型ヘッド方式ではなく、印刷ヘッドを固定したまま印刷用紙を搬送することで用紙全体への印刷を可能とするライン型ヘッド方式を適用した製品が知られている。
【0003】
特許文献1には、ライン型ヘッド方式を適用すると共に、印刷媒体をロール紙とするインクジェットプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−006535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、印刷媒体をロール紙とした場合には、1つのロール紙への印刷が終了すると、印刷済の排紙ロールを取り外すと共に新しいロール紙をプリンタの所定の位置にセットする作業が必要となるが、例えば、400m巻きで約25kgの重量があるロール紙の着脱は作業者の負担が大きく、印刷工程全体の所要時間に与える影響が大きかった。特許文献1には、ロール紙の着脱作業を容易にするための機構等に関しては、何らの検討も示唆もされていなかった。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、印刷媒体としてのロール紙の着脱作業を容易とするプリンタのロール紙着脱機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、ロール紙(11)を印刷媒体とするプリンタ(1)のロール紙着脱機構において、前記ロール紙(11)の芯部に挿通されるロールホルダ(9a)と、前記ロールホルダ(9a)の両端部に回転自在に軸支されるガイドコロ(80)と、前記ロール紙(11)をプリンタ(1)の所定位置に収めるために前記ロールホルダ(9a)を支持する2枚の板状フレーム(70L,70R)とを具備し、前記板状フレーム(70L,70R)には、前記ガイドコロ(80)が係合して転動することで前記ロールホルダ(9a)の水平方向への移動を可能とする水平上端面(70U)が形成されており、前記ロール紙(11)を所定位置に収めるために前記ロールホルダ(9a)を支持する支持部材(73)が、前記水平上端面(70U)より下方の位置に設けられている点に第1の特徴がある。
【0008】
また、前記支持部材(73)は、前記板状フレーム(70L,70R)に回転自在に取り付けられると共に、前記ロールホルダ(9a)の直径より短い間隔で水平方向に配設された片側2つの保持ローラであり、前記ロール紙(11)は、前記2つの保持ローラ(73)が前記ロールホルダ(9a)を下方から支持することで所定位置に収まる点に第2の特徴がある。
【0009】
また、前記ロール紙(11)が所定位置に収まることにより、前記ロールホルダ(9a)に設けられたギヤ(78)が、プリンタ(1)に設けられたモータ(85)の動力が出力されるギヤ(81)と上下方向で噛合するように構成されている点に第3の特徴がある。
【0010】
また、前記保持ローラ(73)は、移動板(89)に支持されており、前記移動板(89)は、前記板状フレーム(70L,70R)に対して水平方向に移動可能に構成されている点に第4の特徴がある。
【0011】
また、前記移動板(89)には、前記ロールホルダ(9a)の一端部に設けられた規制円盤(79)に当接することで、前記ロールホルダ(9a)が所定位置から移動しないようにする規制板(71)が取り付けられている点に第5の特徴がある。
【0012】
また、前記水平上端面(70U)に、前記ガイドコロ(80)の転動を抑制する凹み(70a)が形成されている点に第6の特徴がある。
【0013】
さらに、前記ロールホルダ(9a)は、前記ロール紙(11)の幅方向に両端が突出する円柱形状とされており、前記ガイドコロ(80)は、前記ロールホルダ(9a)より小径で、かつ前記水平上端面(70U)と係合する溝が形成された円盤状とされる点に第7の特徴がある。
【発明の効果】
【0014】
第1の特徴によれば、ロール紙の芯部に挿通されるロールホルダと、ロールホルダの両端部に回転自在に軸支されるガイドコロと、ロール紙をプリンタの所定位置に収めるためにロールホルダを支持する2枚の板状フレームとを具備し、板状フレームには、ガイドコロが係合して転動することでロールホルダの水平方向への移動を可能とする水平上端面が形成されており、ロール紙を所定位置に収めるためにロールホルダを支持する支持部材が、水平上端面より下方の位置に設けられているので、ロールホルダのガイドコロを板状フレームの水平面と係合させることで、ロールホルダを回転させることなくロール紙を水平方向に移動させることが可能となる。これにより、ロール紙を持ち上げた状態で水平方向に移動させる必要がなく、ロール紙を所定位置に収める際の労力を低減することができる。また、ロールホルダを支持する支持部材が水平上端面より下方に配置されているので、ロール紙を水平方向に移動させるだけで、ガイドコロが水平上端面から離間して、ロール紙を所定位置に収めることができる。これにより、ロール紙を長尺化しても脱着作業の負担増が少なく、印刷速度の高速化をより有効活用することが可能となる。
【0015】
第2の特徴によれば、支持部材は、板状フレームに回転自在に取り付けられると共に、ロールホルダの直径より短い間隔で水平方向に配設された片側2つの保持ローラであり、ロール紙は、2つの保持ローラがロールホルダを下方から支持することで所定位置に収まるので、ガイドコロの転動によりロール紙を水平移動させることで、ガイドコロが板状フレームの水平面から滑り落ちると同時にロールホルダが保持ローラに支持されて、ロール紙が所定位置に収まるように構成することができる。
【0016】
第3の特徴によれば、ロール紙が所定位置に収まることにより、ロールホルダに設けられたギヤが、プリンタに設けられたモータの動力が出力されるギヤと上下方向で噛合するので、ロール紙を所定位置に収めることで、ロールホルダをモータ動力で駆動することが可能となる。
【0017】
第4の特徴によれば、保持ローラは、移動板に支持されており、移動板は、板状フレームに対して水平方向に移動可能に構成されているので、プリンタ本体に対するロールホルダの位置を水平方向に微調整することが可能となる。
【0018】
第5の特徴によれば、移動板には、ロールホルダの一端部に設けられた規制円盤に当接することで、ロールホルダが所定位置から移動しないようにする規制板が取り付けられているので、ロール紙を所定位置に確実に収めることが可能となる。
【0019】
第6の特徴によれば、水平上端面に、ガイドコロの転動を抑制する凹みが形成されているので、板状フレームの水平上端面にロールホルダを一時的に置く場所が確保され、ロール紙の着脱作業をスムーズに実行することができる。
【0020】
第7の特徴によれば、ロールホルダは、ロール紙の幅方向に両端が突出する円柱形状とされており、ガイドコロは、ロールホルダより小径で、かつ水平上端面と係合する溝が形成された円盤状とされるので、簡単な構造部品を付加することで、ロール紙の着脱作業を容易にすることができる。また、ロールホルダの両端部分をつかむことで比較的容易にロール紙を持ち上げることができる構造なので、例えば、この両端部を把持する専用フックを用いてロール紙の着脱作業を省力化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタの全体斜視図である。
【図2】インクジェットプリンタの内部構造を示す正面図である。
【図3】インクジェットプリンタの内部構造を示す上面図である。
【図4】図2,3のH方向視図である。
【図5】図4のA方向視図である。
【図6】図4のB方向視図である。
【図7】図4のC方向視図である。
【図8】本体外装カバーを取り付けた状態のインクジェットプリンタの正面図である。
【図9】図8の給紙ロール周辺の拡大図である。
【図10】インクジェットプリンタを背面側から見た場合の給紙ロール周辺の拡大図である。
【図11】給紙ロールの着脱途中状態を示す説明図である。
【図12】図8のJ方向視図である。
【図13】給紙ロールの着脱途中状態を示す図8のK方向視図である。
【図14】給紙ロールが所定位置に収まった状態における図8のK方向視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタ1(以下、単にプリンタと示すこともある)の全体斜視図である。プリンタ1は、給紙ロール9から排紙ロール10へと搬送されるロール紙に対して所定位置を保持したまま印刷を行うライン型の印刷ヘッドを備え、さらに、紫外線の照射により硬化するUVインク(紫外線硬化型インク)を使用すると共にこれを短時間で硬化させる紫外線照射装置を備えることで、高速印刷を可能としたものである。印字速度は、例えば、最大50m/分とされ、400mを超える長さのロール紙が使用可能に構成されている。なお、ロール紙には、種々のラベル用紙(TAC紙)、合成紙、PET用紙等を適用することができる。印刷後は所定の大きさに切断加工されて、ラベルなどとして商品に貼着使用される。
【0023】
プリンタ1は、主に、印刷前の給紙ロール9が収納される給紙部5と、印刷後に巻き取られた排紙ロール10が収納される排紙部6と、中央部の制御系収納部7とからなる3分割構造を有する。制御系収納部7の上部には、印刷ヘッド等が収納される印刷ヘッド収納部2と、印刷面に吹き付けられたUVインクを硬化定着させる紫外線照射装置等が収納される定着部3とが設けられている。定着部3の上部には、印刷時に発生する臭気を排出するための排気ダクト4が取り付けられており、印刷ヘッド収納部2の前面には、プリンタ1の各種操作を行う操作パネル8が設けられている。操作パネル8には、各種の操作スイッチのほか、ロール紙の搬送速度や各種警告等を表示する表示部が含まれる。なお、プリンタ1の本体外装カバーには、その所定の箇所に透明素材を使用したり覗き窓を設けることで、ロール紙の搬送状態や印刷状態を目視で確認可能に構成することができる。
【0024】
図2および図3は、プリンタ1の内部構造を示す正面図および上面図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。プリンタ1の本体は、ロール紙の搬送方向(図示左右方向)に沿って長い形状とされ、例えば、図示左右方向の最大寸法が約3m、図示前後方向の最大寸法が約1mの大きさに構成される。プリンタ1の下面には複数のキャスター25が設けられており、組立状態において設置箇所を移動することができる。
【0025】
印刷ヘッド収納部2には、印刷ヘッド16aを有する印刷ヘッドユニット16およびメンテユニット26が収納されている。
【0026】
印刷ヘッドユニット16の下部には、負圧によってロール紙11を下方に吸引して印刷ヘッドユニット16と印刷面との隙間を一定に保つためのサクションボックス16bが配設されている。また、印刷ヘッドユニット16には、ロール紙11の浮き上がりを検知するセンサが設けられており、浮き上がりを検知すると印刷を開始しないように設定することができる。
【0027】
定着部3には、印刷されたUVインクを定着硬化させるための紫外線照射装置17のほか、インクボトル18およびインク供給ポンプ28が収納されている。
【0028】
制御系収納部7には、ロール紙の搬送機構や印刷ヘッドユニット16等を駆動制御する制御ユニット21、紫外線照射装置17の電源装置22、廃液ボトル23、サクションブロア24が収納されている。なお、プリンタ1は、USBインターフェース等を介してクライアントPCから受信した画像データをそのまま印刷することができる。また、図1に示した排気ダクト4は、紫外線照射装置17に対してやや図示左側、すなわち、ロール紙11の搬送方向の下流側に設けられている。
【0029】
給紙ロール9から搬送されたロール紙11は、給紙部5よりやや上方の印刷ヘッド収納部2へと搬送され、次に、印刷ヘッドユニット16で印刷が行われると、定着部3の紫外線照射装置17でUVインクが硬化定着され、最後に、排紙部6で印刷済の排紙ロール10として巻き取られる。以下、ロール紙11の搬送経路に沿って各部の構造を説明する。
【0030】
まず、給紙部5には、給紙ロール9のロールホルダ9aが着脱可能に取り付けられている。ロールホルダ9aは、図示しない治具によって容易に持ち上げ可能に構成されている。給紙ロール9を給紙部5へ装着する際には、ロールホルダ9aを給紙部5の水平上端面(図11参照)の上部に持ち上げた後、水平方向に移動させることで所定位置に装着可能に構成されている。また、給紙部9には、給紙ロール9の残量検知システムが設けられており、残量が規定値未満になるとアラームを発したり自動停止することが可能に構成される。
【0031】
給紙ロール9から略水平に引き出されたロール紙11は、押さえローラ対60の間を通り、メディア切り張りステージ12の上面に導かれる。メディア切り貼りステージ12は、ロール紙を交換する際に、現在セットされているロール紙11の後端に新しい給紙ロール9の先端を貼り付けるための作業台であり、切り貼り作業中にロール紙11の後端を固定するクランプ機構が設けられている。この切り貼り作業を行うことで、給紙ロール9を交換する毎にロール紙を搬送経路に沿って通す作業が不要となる。
【0032】
メディア切り張りステージ12の下流側には、所定位置に固定されて自由回転する第1案内ローラ61aが配置されている。第1案内ローラ61aによって下方側に案内されたロール紙11は、自由回転可能でかつ上下方向に移動可能に構成されたダンサーロール14によって上方側に案内される。ダンサーロール14は、上下方向に移動することによってロール紙11の張力変化を吸収する機能を有する。給紙部5には、弛み量検知センサも設けられている。ダンサーロール14で上方に案内されたロール紙11は、第2案内ローラ61bによって図示左上方向に案内される。
【0033】
本発明に係るプリンタ1は、ダンサーロール14と第2案内ローラ61bとの間に、ロール紙11を加熱するためのヒータ30を備えている。ヒータ30は、印刷面に対して裏面側からロール紙11に接触するように構成されている。ヒータ30の出力は、ロール紙11の材質や厚み、搬送速度等に応じて、印刷ヘッドユニット16の直下で所定温度(例えば、50度)となるように制御ユニット21によって管理される。
【0034】
このヒータ30で印刷前のロール紙を加熱することにより、インク粒がロール紙に着弾する際のインク粘度を下げて、インク粒の広がり不足を解消することができる。これにより、ロール紙11の性質の差異に起因するドットサイズの差異をコントロールし、安定した出力画像を得ることが可能となる。ヒータ30はアルミ等の金属で形成し、各案内ロールは硬質樹脂等で形成することができる。ヒータ30の取付構造の詳細は後述する。
【0035】
第2案内ローラ61bによって図示左上方向に案内されたロール紙11は、次の案内ローラ61によって略水平方向に案内された後、屑除去ローラ15に接触する。
【0036】
屑除去ローラ15を通過したロール紙11は、サクションボックス16bに吸引された状態で、印刷ヘッドユニット16からUVインクが吹き付けられる。印刷後のロール紙11aは、2つの押さえローラ62によってやや下方に案内される間に紫外線が照射される。紫外線照射装置17を通過した後は、ロール紙11の搬送動力を発生する搬送ローラ19によって下方に案内される。搬送ローラ19には、2つの押さえローラ62が設けられている。なお、ロール紙11を搬送する動力は、給紙ロール9、搬送ローラ19、排紙ロール10の3箇所で発生され、それぞれの回転速度は、回転速度センサや弛み量検知センサ等の出力に応じて自動制御される。
【0037】
搬送ローラ19によって下方に案内されたロール紙11は、2つの案内ローラ61を介して排紙部6に搬送される。この排紙部6にも、印刷後のロール紙11aにかかる張力を調整する2つめのダンサーロール20が配設されている。ダンサーロール20によって上方に案内された印刷後のロール紙11aは、さらに、案内ロール61によって水平方向に案内され、押さえローラ対63を介して排紙ロール10として巻き取られる。なお、排紙ロール10のロールホルダ10aも、給紙ロール9と同様の構造とされており、排紙部6に対して簡単に着脱することができる。
【0038】
図4は、図2,3のH方向視図である。また、図5は図4のA方向視図、図6は図4のB方向視図、図7は図4のC方向視図である。本実施形態に係るヒータ30は、給紙部5に配設されたダンサーロール14の下流側かつ第2案内ローラ61bの上流側の位置で、印刷面に対して裏面側に接触するように配設される板状部材である。
【0039】
ここで、ロール紙11を印刷媒体とするプリンタ1において、第1案内ローラ61a、ダンサーロール14および第2案内ローラ61bは、給紙部5におけるロール紙11の張力を調整するために元々必要な構成であり、これに伴って、ダンサーロール14と第2案内ローラ61bとの間には、ある程度の高低差が確保されている。一方、高速で搬送されるロール紙11を素早く加熱するためには、ヒータ30を搬送方向に長くすることが有効であるが、例えば、このような大型のヒータ30を水平方向に設置すると、プリンタ本体の大型化を招くこととなる。これに対し、本実施形態では、ダンサーロール14と第2案内ローラ61bとの間のスペースに、略鉛直方向に向けてヒータ30を配設することで、プリンタ本体の大きさを変えずにヒータの大型化を実現している。
【0040】
また、ロール紙11を確実に加熱するため、5本のフリーローラ31を用いてヒータ30にロール紙11を圧着させる機構を有すると共に、ロール紙11の停止時等に速やかに加熱を停止可能とするために、アクチュエータによって接触位置(第1の位置)と離間位置(第2の位置)との間を任意に移動可能とする機構が設けられている。
【0041】
さらに、ヒータ30をロール紙11の裏面側に配設することにより、印刷面側を加熱する構成に比して、印刷面が所定温度に達するまでの時間を長く設定することが可能となる。これにより、加熱ムラを防いで印刷面を所定の温度に加熱することが容易となる。ヒータ30の出力は、予め実験等で求められたデータに基づいて、ロール紙の種類や速度に応じて自動的に設定することができる。また、印刷ヘッド16aの近傍に印刷面の温度を検知するセンサを設けることもできる。
【0042】
電気式の薄板状のヒータ30は、ロール紙11との接触面側に凸形状の湾曲面をなすように形成されている。ヒータ30は、ロール紙11の幅方向に一対の取付支柱38によって、ヒータ取付台37に固定されている。ヒータ30は、アクチュエータとしてのモータ39の駆動力によって、図5,6に示す接触位置(実線)および離間位置(2点鎖線)との間を移動可能に構成されている。
【0043】
一方、5本のフリーローラ31は、ロール紙11の幅方向に一対のフレーム(図4参照)35に支持されている。具体的には、フリーローラ31の回転軸32は、加圧バネ33を介して、回転軸32の軸方向に一対のローラ取付板36に支持されている。そして、この一対のローラ取付板36が、支柱34を介して、それぞれフレーム35に固定されている。この構成によれば、ヒータ30を接触位置に駆動することで、加圧バネ33の付勢力によってロール紙11がヒータ30に押しつけられることとなる。なお、ヒータ30の駆動機構を支持するフレーム35は、給紙部5の外壁に固定されている。
【0044】
一方、フレーム35の下方には、ヒータ30の駆動機構を支持するためのベース50が固定されている。ベース50には、ヒータ取付台37を支持する一対のレバー44と、ステッピングモータからなるモータ39とが取り付けられている。レバー44の下端側は、ベース50に固定された支点軸取付台46に対して、支点軸45によって揺動自在に取り付けられている。一方、レバー44の上端側は、ヒータ取付台37に対して、作動軸42によって揺動自在に取り付けられている。
【0045】
モータ39は、モータ取付板43を介してベース50の上面に固定されている。また、モータ39の出力軸48には、揺動アーム40が固定されている。そして、この揺動アーム40の先端側の連結軸47と、前記レバー44の上端側の作動軸42とがヒータアーム41で連結されることによって、ヒータ30を駆動するクランク機構が構成される。各アームやレバー等はアルミ等の金属で形成することができる。
【0046】
ヒータ30は、モータ39が駆動力を生じていない時には、ヒータ戻しバネ49の付勢力によってロール紙11と接触しない離間位置(第1の位置)に戻るように構成されている。ヒータ戻しバネ49は、モータ取付板43と作動軸42との間に掛け渡されている。
【0047】
ベース50とヒータ取付台37との間には、ヒータ取付台37が前記レバ−44が揺動しても同じ傾斜角で移動するためのタイミングベルト機構が設けられている。タイミングベルト機構は、ヒータ取付台37に回転不能に固定された第1プーリ52、ベース50に回転不能に固定された第2プーリ53および両プーリ52,53間に巻き掛けられた無端状のタイミングベルト51からなり、ヒータ30の往復動作を同じ傾斜角をもって移動することが可能である。
【0048】
上記したように、本発明に係るインクジェットプリンタによれば、ロール紙の搬送経路における印刷ヘッドユニットの上流側に、ロール紙を加熱するヒータを設けたので、インク粒がロール紙に着弾した際の広がりが少ない状態であっても、このインク粒の広がりを適正値に補正することができる。これにより、ロール紙の性質が変更されたことに起因してインク粒の広がりが足りなくなった場合でも、インクを変更することなく良好な印刷が可能となる。
【0049】
以下、図8ないし図14を参照して、給紙ロールおよび排紙ロールの脱着機構を説明する。図8は、本体外装カバーを取り付けた状態のインクジェットプリンタ1の正面図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。2点鎖線で示す給紙ロール9および排紙ロール10は、それぞれ所定位置に配設されている。給紙ロール9および排紙ロール10は、それぞれ、その芯部に挿通されるロールホルダ9a,10aが板状フレーム70L,70Rの間に支持されることによって所定位置に収められている。板状フレーム70L,70Rは、樹脂や金属等で形成することができる。なお、ロールホルダ9aの外径は、ロール紙を巻き付けた紙管の内径より小さく形成されており、ロールホルダ9aをロール紙の芯部に挿入した後、ロールホルダ9aの外周長手方向から爪(不図示)を突起させることで、内側からロール紙を固定するように構成されている。
【0050】
図9は、図8の給紙ロール9の周辺の拡大図である。図10は、インクジェットプリンタ1を背面側から見た場合の給紙ロール9の周辺の拡大図である。また、図11は給紙ロール9の着脱途中状態を示す説明図であり、図12は図8のJ方向視図である。
【0051】
給紙ロール9は、ロール紙11の芯部に円柱状のロールホルダ9aを挿通してなり、図9,10に示す所定位置に収められた状態では、ロール紙の搬送方向左側に位置する左側板状フレーム70L(図8の図示手前側)に軸支される2つの保持ロール73と、ロール紙の搬送方向右側に位置する右側板状フレーム70R(図8の図示奥側)に軸支される2つの保持ロール73とによって回転自在に保持されている。また、所定位置に収められた状態において、ロールホルダ9aの搬送方向右側の端部に形成された従動ギヤ78が、右側板状フレーム70R側に軸支された駆動ギヤ81と噛合するように構成されている。
【0052】
図12を参照して、駆動ギヤ81と従動側プーリ82は一体構造に連結されており固定軸91に回転自在に軸支されている。この従動側プーリ82と、駆動モータ85の出力軸に固定された駆動側プーリ84との間に、無端ベルト90が巻き掛けられている。これにより、駆動モータ85の出力によって給紙ロール9を回転駆動することが可能となる。
【0053】
右側板状フレーム70Rには、2本の固定軸90によって固定板77が固定されており、樹脂等で形成された保持ローラ73は、この固定板77に回転自在に軸支されている。一方、左側板状フレーム70Lには、2本の固定軸75及び2本の支持軸74によって固定板72が固定されており、この固定板72と左側板状フレーム70Lの中間に、2つの保持ローラ73が取り付けられた移動板89が支持軸74と固定軸75に沿って移動可能に支持されている。移動板89は、ピニオン軸76aと嵌合し、ピニオン軸76aに連結されたツマミ76を回転させることで、移動板89の左側板状フレーム70Lからの距離が変わりロールホルダ9aのセット位置を移動させることでロール紙の中心位置が移動しロール紙に印刷される位置を微調整できる。
【0054】
また、移動板89には、ロールホルダ9aの左端部に設けられた規制円盤79と当接する規制板71が固定されている。この規制板71に規制円盤79の溝を勘合させることにより、給紙ロール9を確実に所定位置に停止させることができる。
【0055】
給紙ロール9は、ロールホルダ9aの両端部に係合する専用フック100によって容易に持ち上げることができる。専用フック100は、図11に示されているように円柱状の取手101と、取手101に連結された左右一対の板状アーム102とからなり、この板状アーム102の先端に、ロールホルダ9aを引っかける鉤状のフック部103を形成した専用部品である。専用フック100は、樹脂やアルミ等の金属等によって形成できる。
【0056】
ロールホルダ9aの両端部には、板状フレーム70L,Rの水平上端面70Uと係合する溝部が形成されたガイドコロ80が回転自在に軸支されている。そして、給紙ロール9を所定位置にセットする際には、専用フック100を用いて給紙ロール9を持ち上げ、ガイドコロ80を水平上端面70Uに係合させる。このとき、制御系収納部7から離れた位置であって、水平上端面70Uに形成された凹部70aにガイドコロ80を乗せるようにすると、給紙ロール9が不用意に動いてしまうことがなく作業をスムーズに実行することができる。
【0057】
そして、ガイドコロ80と板状フレーム70L,70Rの水平上端面70Uとを係合させた後は、給紙ロール9を搬送方向に水平に、つまり制御系収納部7に近づくように押すだけで、給紙ロール9を所定位置に収めることができる。具体的には、回転軸86を介してロールホルダ9aに取り付けられたガイドコロ80は、ロールホルダ9aに対して回転自在に軸支されているので、給紙ロール9を水平方向に押すと、ロールホルダ9aを回転させることなく、ガイドコロ80の転動によって給紙ロール9を水平方向に移動させることができる。これにより、例えば、専用フック100で給紙ロール9を持ち上げたまま所定位置まで移動させる方法に比して、給紙ロール9をセットする作業の労力を大幅に低減することができる。
【0058】
そして、ガイドコロ80を転動させることによって給紙ロール9を水平方向に移動させていくと、給紙ロール9の所定位置が近づいたところで、板状フレーム70L,70Rの上端面が下り坂形状となる。ここで、ガイドコロ80が下り坂にさしかかると、ガイドコロ80と板状フレーム70L,70Rとの係合状態が解除されると共に、計4つの保持ロール73によるロールホルダ9aの保持に切り替わり、これにより、給紙ロール9が所定位置に収まることとなる。また、同時に、ロールホルダ9aの従動ギヤ78が駆動ギヤ81と噛合し、ロールホルダ9aの規制円盤79と移動板89の規制板71とが係合する。
【0059】
図13は、給紙ロール9の着脱途中状態を示す図8のK方向視図である。また、図14は、給紙ロール9が所定位置に収まった状態における図8のK方向視図である。図13では、板状フレーム70L,70Rの水平上端面70Uにガイドコロ80が係合した状態を示している。この状態になれば、専用フック100で給紙ロール9を引っ張るように水平方向に移動させて所定位置に収めることができるが、専用フック100を取り外して作業を行うこともできる。専用フック100の板状アーム102は、給紙ロール9を安定して持ち上げるため、給紙ロール9の幅より少しだけ大きい寸法に設定されている。
【0060】
ガイドコロ80が水平上端面70Uに係合している間(図13参照)は、ロールホルダ9aと保持ロール73は接触していない。片側2つの保持ロール73は、ロールホルダ9aの直径より短い間隔で水平方向に配設されており、ガイドコロ80と水平上端面70Uとの係合が解除されると同時に、ロールホルダ9aの下面に2つの保持ローラ73が当接することでロールホルダ9aが所定位置に保持される。なお、給紙ロール9を所定位置から取り外す際には、専用フック100を用いて上方に持ち上げればよい。また、排紙ロール10の着脱部も、給紙側と同様の構造とすることができる。
【0061】
なお、ヒータおよびヒータ駆動装置の構造、ロール紙の搬送経路における各部の構造、印刷ヘッドユニットの構造やインクの種類、給紙ロールおよび排紙ロールの脱着機構等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。例えば、ヒータを駆動するアクチュエータには、各種モータに代えてソレノイドを用いてもよい。また、印刷に用いるインクは4色に限られず、白色等も含む多色インクを用いることも可能である。
【符号の説明】
【0062】
1…インクジェットプリンタ(プリンタ)、2…印刷ヘッド収納部、3…定着部、5…給紙部、6…排紙部、7…制御系収納部、9…給紙ロール、9a…ロールホルダ、10…排紙ロール、10a…ロールホルダ、11…ロール紙、14…ダンサーロール、16…印刷ヘッドユニット、17…紫外線照射装置、30…ヒータ、31…フリーローラ、33…ヒータ戻しバネ、39…モータ(アクチュエータ)、61a…第1案内ローラ、61b…第2案内ローラ、70a…凹部、70L,70R…板状フレーム、70U…水平上端面、71…規制板、72,77…固定板、73…保持ローラ(支持部材)、80…ガイドコロ、89…移動板
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタのロール紙着脱機構に係り、特に、長尺かつ幅広のロール紙を印刷媒体としたプリンタのロール紙着脱機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷ヘッドからインクの微細な粒子を印刷面に吹き付けることで印刷を行なうインクジェットプリンタにおいて、印刷媒体の搬送方向に対して印刷ヘッドが直角方向に往復動しながら印刷を行うシリアル型ヘッド方式ではなく、印刷ヘッドを固定したまま印刷用紙を搬送することで用紙全体への印刷を可能とするライン型ヘッド方式を適用した製品が知られている。
【0003】
特許文献1には、ライン型ヘッド方式を適用すると共に、印刷媒体をロール紙とするインクジェットプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−006535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、印刷媒体をロール紙とした場合には、1つのロール紙への印刷が終了すると、印刷済の排紙ロールを取り外すと共に新しいロール紙をプリンタの所定の位置にセットする作業が必要となるが、例えば、400m巻きで約25kgの重量があるロール紙の着脱は作業者の負担が大きく、印刷工程全体の所要時間に与える影響が大きかった。特許文献1には、ロール紙の着脱作業を容易にするための機構等に関しては、何らの検討も示唆もされていなかった。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、印刷媒体としてのロール紙の着脱作業を容易とするプリンタのロール紙着脱機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、ロール紙(11)を印刷媒体とするプリンタ(1)のロール紙着脱機構において、前記ロール紙(11)の芯部に挿通されるロールホルダ(9a)と、前記ロールホルダ(9a)の両端部に回転自在に軸支されるガイドコロ(80)と、前記ロール紙(11)をプリンタ(1)の所定位置に収めるために前記ロールホルダ(9a)を支持する2枚の板状フレーム(70L,70R)とを具備し、前記板状フレーム(70L,70R)には、前記ガイドコロ(80)が係合して転動することで前記ロールホルダ(9a)の水平方向への移動を可能とする水平上端面(70U)が形成されており、前記ロール紙(11)を所定位置に収めるために前記ロールホルダ(9a)を支持する支持部材(73)が、前記水平上端面(70U)より下方の位置に設けられている点に第1の特徴がある。
【0008】
また、前記支持部材(73)は、前記板状フレーム(70L,70R)に回転自在に取り付けられると共に、前記ロールホルダ(9a)の直径より短い間隔で水平方向に配設された片側2つの保持ローラであり、前記ロール紙(11)は、前記2つの保持ローラ(73)が前記ロールホルダ(9a)を下方から支持することで所定位置に収まる点に第2の特徴がある。
【0009】
また、前記ロール紙(11)が所定位置に収まることにより、前記ロールホルダ(9a)に設けられたギヤ(78)が、プリンタ(1)に設けられたモータ(85)の動力が出力されるギヤ(81)と上下方向で噛合するように構成されている点に第3の特徴がある。
【0010】
また、前記保持ローラ(73)は、移動板(89)に支持されており、前記移動板(89)は、前記板状フレーム(70L,70R)に対して水平方向に移動可能に構成されている点に第4の特徴がある。
【0011】
また、前記移動板(89)には、前記ロールホルダ(9a)の一端部に設けられた規制円盤(79)に当接することで、前記ロールホルダ(9a)が所定位置から移動しないようにする規制板(71)が取り付けられている点に第5の特徴がある。
【0012】
また、前記水平上端面(70U)に、前記ガイドコロ(80)の転動を抑制する凹み(70a)が形成されている点に第6の特徴がある。
【0013】
さらに、前記ロールホルダ(9a)は、前記ロール紙(11)の幅方向に両端が突出する円柱形状とされており、前記ガイドコロ(80)は、前記ロールホルダ(9a)より小径で、かつ前記水平上端面(70U)と係合する溝が形成された円盤状とされる点に第7の特徴がある。
【発明の効果】
【0014】
第1の特徴によれば、ロール紙の芯部に挿通されるロールホルダと、ロールホルダの両端部に回転自在に軸支されるガイドコロと、ロール紙をプリンタの所定位置に収めるためにロールホルダを支持する2枚の板状フレームとを具備し、板状フレームには、ガイドコロが係合して転動することでロールホルダの水平方向への移動を可能とする水平上端面が形成されており、ロール紙を所定位置に収めるためにロールホルダを支持する支持部材が、水平上端面より下方の位置に設けられているので、ロールホルダのガイドコロを板状フレームの水平面と係合させることで、ロールホルダを回転させることなくロール紙を水平方向に移動させることが可能となる。これにより、ロール紙を持ち上げた状態で水平方向に移動させる必要がなく、ロール紙を所定位置に収める際の労力を低減することができる。また、ロールホルダを支持する支持部材が水平上端面より下方に配置されているので、ロール紙を水平方向に移動させるだけで、ガイドコロが水平上端面から離間して、ロール紙を所定位置に収めることができる。これにより、ロール紙を長尺化しても脱着作業の負担増が少なく、印刷速度の高速化をより有効活用することが可能となる。
【0015】
第2の特徴によれば、支持部材は、板状フレームに回転自在に取り付けられると共に、ロールホルダの直径より短い間隔で水平方向に配設された片側2つの保持ローラであり、ロール紙は、2つの保持ローラがロールホルダを下方から支持することで所定位置に収まるので、ガイドコロの転動によりロール紙を水平移動させることで、ガイドコロが板状フレームの水平面から滑り落ちると同時にロールホルダが保持ローラに支持されて、ロール紙が所定位置に収まるように構成することができる。
【0016】
第3の特徴によれば、ロール紙が所定位置に収まることにより、ロールホルダに設けられたギヤが、プリンタに設けられたモータの動力が出力されるギヤと上下方向で噛合するので、ロール紙を所定位置に収めることで、ロールホルダをモータ動力で駆動することが可能となる。
【0017】
第4の特徴によれば、保持ローラは、移動板に支持されており、移動板は、板状フレームに対して水平方向に移動可能に構成されているので、プリンタ本体に対するロールホルダの位置を水平方向に微調整することが可能となる。
【0018】
第5の特徴によれば、移動板には、ロールホルダの一端部に設けられた規制円盤に当接することで、ロールホルダが所定位置から移動しないようにする規制板が取り付けられているので、ロール紙を所定位置に確実に収めることが可能となる。
【0019】
第6の特徴によれば、水平上端面に、ガイドコロの転動を抑制する凹みが形成されているので、板状フレームの水平上端面にロールホルダを一時的に置く場所が確保され、ロール紙の着脱作業をスムーズに実行することができる。
【0020】
第7の特徴によれば、ロールホルダは、ロール紙の幅方向に両端が突出する円柱形状とされており、ガイドコロは、ロールホルダより小径で、かつ水平上端面と係合する溝が形成された円盤状とされるので、簡単な構造部品を付加することで、ロール紙の着脱作業を容易にすることができる。また、ロールホルダの両端部分をつかむことで比較的容易にロール紙を持ち上げることができる構造なので、例えば、この両端部を把持する専用フックを用いてロール紙の着脱作業を省力化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタの全体斜視図である。
【図2】インクジェットプリンタの内部構造を示す正面図である。
【図3】インクジェットプリンタの内部構造を示す上面図である。
【図4】図2,3のH方向視図である。
【図5】図4のA方向視図である。
【図6】図4のB方向視図である。
【図7】図4のC方向視図である。
【図8】本体外装カバーを取り付けた状態のインクジェットプリンタの正面図である。
【図9】図8の給紙ロール周辺の拡大図である。
【図10】インクジェットプリンタを背面側から見た場合の給紙ロール周辺の拡大図である。
【図11】給紙ロールの着脱途中状態を示す説明図である。
【図12】図8のJ方向視図である。
【図13】給紙ロールの着脱途中状態を示す図8のK方向視図である。
【図14】給紙ロールが所定位置に収まった状態における図8のK方向視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタ1(以下、単にプリンタと示すこともある)の全体斜視図である。プリンタ1は、給紙ロール9から排紙ロール10へと搬送されるロール紙に対して所定位置を保持したまま印刷を行うライン型の印刷ヘッドを備え、さらに、紫外線の照射により硬化するUVインク(紫外線硬化型インク)を使用すると共にこれを短時間で硬化させる紫外線照射装置を備えることで、高速印刷を可能としたものである。印字速度は、例えば、最大50m/分とされ、400mを超える長さのロール紙が使用可能に構成されている。なお、ロール紙には、種々のラベル用紙(TAC紙)、合成紙、PET用紙等を適用することができる。印刷後は所定の大きさに切断加工されて、ラベルなどとして商品に貼着使用される。
【0023】
プリンタ1は、主に、印刷前の給紙ロール9が収納される給紙部5と、印刷後に巻き取られた排紙ロール10が収納される排紙部6と、中央部の制御系収納部7とからなる3分割構造を有する。制御系収納部7の上部には、印刷ヘッド等が収納される印刷ヘッド収納部2と、印刷面に吹き付けられたUVインクを硬化定着させる紫外線照射装置等が収納される定着部3とが設けられている。定着部3の上部には、印刷時に発生する臭気を排出するための排気ダクト4が取り付けられており、印刷ヘッド収納部2の前面には、プリンタ1の各種操作を行う操作パネル8が設けられている。操作パネル8には、各種の操作スイッチのほか、ロール紙の搬送速度や各種警告等を表示する表示部が含まれる。なお、プリンタ1の本体外装カバーには、その所定の箇所に透明素材を使用したり覗き窓を設けることで、ロール紙の搬送状態や印刷状態を目視で確認可能に構成することができる。
【0024】
図2および図3は、プリンタ1の内部構造を示す正面図および上面図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。プリンタ1の本体は、ロール紙の搬送方向(図示左右方向)に沿って長い形状とされ、例えば、図示左右方向の最大寸法が約3m、図示前後方向の最大寸法が約1mの大きさに構成される。プリンタ1の下面には複数のキャスター25が設けられており、組立状態において設置箇所を移動することができる。
【0025】
印刷ヘッド収納部2には、印刷ヘッド16aを有する印刷ヘッドユニット16およびメンテユニット26が収納されている。
【0026】
印刷ヘッドユニット16の下部には、負圧によってロール紙11を下方に吸引して印刷ヘッドユニット16と印刷面との隙間を一定に保つためのサクションボックス16bが配設されている。また、印刷ヘッドユニット16には、ロール紙11の浮き上がりを検知するセンサが設けられており、浮き上がりを検知すると印刷を開始しないように設定することができる。
【0027】
定着部3には、印刷されたUVインクを定着硬化させるための紫外線照射装置17のほか、インクボトル18およびインク供給ポンプ28が収納されている。
【0028】
制御系収納部7には、ロール紙の搬送機構や印刷ヘッドユニット16等を駆動制御する制御ユニット21、紫外線照射装置17の電源装置22、廃液ボトル23、サクションブロア24が収納されている。なお、プリンタ1は、USBインターフェース等を介してクライアントPCから受信した画像データをそのまま印刷することができる。また、図1に示した排気ダクト4は、紫外線照射装置17に対してやや図示左側、すなわち、ロール紙11の搬送方向の下流側に設けられている。
【0029】
給紙ロール9から搬送されたロール紙11は、給紙部5よりやや上方の印刷ヘッド収納部2へと搬送され、次に、印刷ヘッドユニット16で印刷が行われると、定着部3の紫外線照射装置17でUVインクが硬化定着され、最後に、排紙部6で印刷済の排紙ロール10として巻き取られる。以下、ロール紙11の搬送経路に沿って各部の構造を説明する。
【0030】
まず、給紙部5には、給紙ロール9のロールホルダ9aが着脱可能に取り付けられている。ロールホルダ9aは、図示しない治具によって容易に持ち上げ可能に構成されている。給紙ロール9を給紙部5へ装着する際には、ロールホルダ9aを給紙部5の水平上端面(図11参照)の上部に持ち上げた後、水平方向に移動させることで所定位置に装着可能に構成されている。また、給紙部9には、給紙ロール9の残量検知システムが設けられており、残量が規定値未満になるとアラームを発したり自動停止することが可能に構成される。
【0031】
給紙ロール9から略水平に引き出されたロール紙11は、押さえローラ対60の間を通り、メディア切り張りステージ12の上面に導かれる。メディア切り貼りステージ12は、ロール紙を交換する際に、現在セットされているロール紙11の後端に新しい給紙ロール9の先端を貼り付けるための作業台であり、切り貼り作業中にロール紙11の後端を固定するクランプ機構が設けられている。この切り貼り作業を行うことで、給紙ロール9を交換する毎にロール紙を搬送経路に沿って通す作業が不要となる。
【0032】
メディア切り張りステージ12の下流側には、所定位置に固定されて自由回転する第1案内ローラ61aが配置されている。第1案内ローラ61aによって下方側に案内されたロール紙11は、自由回転可能でかつ上下方向に移動可能に構成されたダンサーロール14によって上方側に案内される。ダンサーロール14は、上下方向に移動することによってロール紙11の張力変化を吸収する機能を有する。給紙部5には、弛み量検知センサも設けられている。ダンサーロール14で上方に案内されたロール紙11は、第2案内ローラ61bによって図示左上方向に案内される。
【0033】
本発明に係るプリンタ1は、ダンサーロール14と第2案内ローラ61bとの間に、ロール紙11を加熱するためのヒータ30を備えている。ヒータ30は、印刷面に対して裏面側からロール紙11に接触するように構成されている。ヒータ30の出力は、ロール紙11の材質や厚み、搬送速度等に応じて、印刷ヘッドユニット16の直下で所定温度(例えば、50度)となるように制御ユニット21によって管理される。
【0034】
このヒータ30で印刷前のロール紙を加熱することにより、インク粒がロール紙に着弾する際のインク粘度を下げて、インク粒の広がり不足を解消することができる。これにより、ロール紙11の性質の差異に起因するドットサイズの差異をコントロールし、安定した出力画像を得ることが可能となる。ヒータ30はアルミ等の金属で形成し、各案内ロールは硬質樹脂等で形成することができる。ヒータ30の取付構造の詳細は後述する。
【0035】
第2案内ローラ61bによって図示左上方向に案内されたロール紙11は、次の案内ローラ61によって略水平方向に案内された後、屑除去ローラ15に接触する。
【0036】
屑除去ローラ15を通過したロール紙11は、サクションボックス16bに吸引された状態で、印刷ヘッドユニット16からUVインクが吹き付けられる。印刷後のロール紙11aは、2つの押さえローラ62によってやや下方に案内される間に紫外線が照射される。紫外線照射装置17を通過した後は、ロール紙11の搬送動力を発生する搬送ローラ19によって下方に案内される。搬送ローラ19には、2つの押さえローラ62が設けられている。なお、ロール紙11を搬送する動力は、給紙ロール9、搬送ローラ19、排紙ロール10の3箇所で発生され、それぞれの回転速度は、回転速度センサや弛み量検知センサ等の出力に応じて自動制御される。
【0037】
搬送ローラ19によって下方に案内されたロール紙11は、2つの案内ローラ61を介して排紙部6に搬送される。この排紙部6にも、印刷後のロール紙11aにかかる張力を調整する2つめのダンサーロール20が配設されている。ダンサーロール20によって上方に案内された印刷後のロール紙11aは、さらに、案内ロール61によって水平方向に案内され、押さえローラ対63を介して排紙ロール10として巻き取られる。なお、排紙ロール10のロールホルダ10aも、給紙ロール9と同様の構造とされており、排紙部6に対して簡単に着脱することができる。
【0038】
図4は、図2,3のH方向視図である。また、図5は図4のA方向視図、図6は図4のB方向視図、図7は図4のC方向視図である。本実施形態に係るヒータ30は、給紙部5に配設されたダンサーロール14の下流側かつ第2案内ローラ61bの上流側の位置で、印刷面に対して裏面側に接触するように配設される板状部材である。
【0039】
ここで、ロール紙11を印刷媒体とするプリンタ1において、第1案内ローラ61a、ダンサーロール14および第2案内ローラ61bは、給紙部5におけるロール紙11の張力を調整するために元々必要な構成であり、これに伴って、ダンサーロール14と第2案内ローラ61bとの間には、ある程度の高低差が確保されている。一方、高速で搬送されるロール紙11を素早く加熱するためには、ヒータ30を搬送方向に長くすることが有効であるが、例えば、このような大型のヒータ30を水平方向に設置すると、プリンタ本体の大型化を招くこととなる。これに対し、本実施形態では、ダンサーロール14と第2案内ローラ61bとの間のスペースに、略鉛直方向に向けてヒータ30を配設することで、プリンタ本体の大きさを変えずにヒータの大型化を実現している。
【0040】
また、ロール紙11を確実に加熱するため、5本のフリーローラ31を用いてヒータ30にロール紙11を圧着させる機構を有すると共に、ロール紙11の停止時等に速やかに加熱を停止可能とするために、アクチュエータによって接触位置(第1の位置)と離間位置(第2の位置)との間を任意に移動可能とする機構が設けられている。
【0041】
さらに、ヒータ30をロール紙11の裏面側に配設することにより、印刷面側を加熱する構成に比して、印刷面が所定温度に達するまでの時間を長く設定することが可能となる。これにより、加熱ムラを防いで印刷面を所定の温度に加熱することが容易となる。ヒータ30の出力は、予め実験等で求められたデータに基づいて、ロール紙の種類や速度に応じて自動的に設定することができる。また、印刷ヘッド16aの近傍に印刷面の温度を検知するセンサを設けることもできる。
【0042】
電気式の薄板状のヒータ30は、ロール紙11との接触面側に凸形状の湾曲面をなすように形成されている。ヒータ30は、ロール紙11の幅方向に一対の取付支柱38によって、ヒータ取付台37に固定されている。ヒータ30は、アクチュエータとしてのモータ39の駆動力によって、図5,6に示す接触位置(実線)および離間位置(2点鎖線)との間を移動可能に構成されている。
【0043】
一方、5本のフリーローラ31は、ロール紙11の幅方向に一対のフレーム(図4参照)35に支持されている。具体的には、フリーローラ31の回転軸32は、加圧バネ33を介して、回転軸32の軸方向に一対のローラ取付板36に支持されている。そして、この一対のローラ取付板36が、支柱34を介して、それぞれフレーム35に固定されている。この構成によれば、ヒータ30を接触位置に駆動することで、加圧バネ33の付勢力によってロール紙11がヒータ30に押しつけられることとなる。なお、ヒータ30の駆動機構を支持するフレーム35は、給紙部5の外壁に固定されている。
【0044】
一方、フレーム35の下方には、ヒータ30の駆動機構を支持するためのベース50が固定されている。ベース50には、ヒータ取付台37を支持する一対のレバー44と、ステッピングモータからなるモータ39とが取り付けられている。レバー44の下端側は、ベース50に固定された支点軸取付台46に対して、支点軸45によって揺動自在に取り付けられている。一方、レバー44の上端側は、ヒータ取付台37に対して、作動軸42によって揺動自在に取り付けられている。
【0045】
モータ39は、モータ取付板43を介してベース50の上面に固定されている。また、モータ39の出力軸48には、揺動アーム40が固定されている。そして、この揺動アーム40の先端側の連結軸47と、前記レバー44の上端側の作動軸42とがヒータアーム41で連結されることによって、ヒータ30を駆動するクランク機構が構成される。各アームやレバー等はアルミ等の金属で形成することができる。
【0046】
ヒータ30は、モータ39が駆動力を生じていない時には、ヒータ戻しバネ49の付勢力によってロール紙11と接触しない離間位置(第1の位置)に戻るように構成されている。ヒータ戻しバネ49は、モータ取付板43と作動軸42との間に掛け渡されている。
【0047】
ベース50とヒータ取付台37との間には、ヒータ取付台37が前記レバ−44が揺動しても同じ傾斜角で移動するためのタイミングベルト機構が設けられている。タイミングベルト機構は、ヒータ取付台37に回転不能に固定された第1プーリ52、ベース50に回転不能に固定された第2プーリ53および両プーリ52,53間に巻き掛けられた無端状のタイミングベルト51からなり、ヒータ30の往復動作を同じ傾斜角をもって移動することが可能である。
【0048】
上記したように、本発明に係るインクジェットプリンタによれば、ロール紙の搬送経路における印刷ヘッドユニットの上流側に、ロール紙を加熱するヒータを設けたので、インク粒がロール紙に着弾した際の広がりが少ない状態であっても、このインク粒の広がりを適正値に補正することができる。これにより、ロール紙の性質が変更されたことに起因してインク粒の広がりが足りなくなった場合でも、インクを変更することなく良好な印刷が可能となる。
【0049】
以下、図8ないし図14を参照して、給紙ロールおよび排紙ロールの脱着機構を説明する。図8は、本体外装カバーを取り付けた状態のインクジェットプリンタ1の正面図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。2点鎖線で示す給紙ロール9および排紙ロール10は、それぞれ所定位置に配設されている。給紙ロール9および排紙ロール10は、それぞれ、その芯部に挿通されるロールホルダ9a,10aが板状フレーム70L,70Rの間に支持されることによって所定位置に収められている。板状フレーム70L,70Rは、樹脂や金属等で形成することができる。なお、ロールホルダ9aの外径は、ロール紙を巻き付けた紙管の内径より小さく形成されており、ロールホルダ9aをロール紙の芯部に挿入した後、ロールホルダ9aの外周長手方向から爪(不図示)を突起させることで、内側からロール紙を固定するように構成されている。
【0050】
図9は、図8の給紙ロール9の周辺の拡大図である。図10は、インクジェットプリンタ1を背面側から見た場合の給紙ロール9の周辺の拡大図である。また、図11は給紙ロール9の着脱途中状態を示す説明図であり、図12は図8のJ方向視図である。
【0051】
給紙ロール9は、ロール紙11の芯部に円柱状のロールホルダ9aを挿通してなり、図9,10に示す所定位置に収められた状態では、ロール紙の搬送方向左側に位置する左側板状フレーム70L(図8の図示手前側)に軸支される2つの保持ロール73と、ロール紙の搬送方向右側に位置する右側板状フレーム70R(図8の図示奥側)に軸支される2つの保持ロール73とによって回転自在に保持されている。また、所定位置に収められた状態において、ロールホルダ9aの搬送方向右側の端部に形成された従動ギヤ78が、右側板状フレーム70R側に軸支された駆動ギヤ81と噛合するように構成されている。
【0052】
図12を参照して、駆動ギヤ81と従動側プーリ82は一体構造に連結されており固定軸91に回転自在に軸支されている。この従動側プーリ82と、駆動モータ85の出力軸に固定された駆動側プーリ84との間に、無端ベルト90が巻き掛けられている。これにより、駆動モータ85の出力によって給紙ロール9を回転駆動することが可能となる。
【0053】
右側板状フレーム70Rには、2本の固定軸90によって固定板77が固定されており、樹脂等で形成された保持ローラ73は、この固定板77に回転自在に軸支されている。一方、左側板状フレーム70Lには、2本の固定軸75及び2本の支持軸74によって固定板72が固定されており、この固定板72と左側板状フレーム70Lの中間に、2つの保持ローラ73が取り付けられた移動板89が支持軸74と固定軸75に沿って移動可能に支持されている。移動板89は、ピニオン軸76aと嵌合し、ピニオン軸76aに連結されたツマミ76を回転させることで、移動板89の左側板状フレーム70Lからの距離が変わりロールホルダ9aのセット位置を移動させることでロール紙の中心位置が移動しロール紙に印刷される位置を微調整できる。
【0054】
また、移動板89には、ロールホルダ9aの左端部に設けられた規制円盤79と当接する規制板71が固定されている。この規制板71に規制円盤79の溝を勘合させることにより、給紙ロール9を確実に所定位置に停止させることができる。
【0055】
給紙ロール9は、ロールホルダ9aの両端部に係合する専用フック100によって容易に持ち上げることができる。専用フック100は、図11に示されているように円柱状の取手101と、取手101に連結された左右一対の板状アーム102とからなり、この板状アーム102の先端に、ロールホルダ9aを引っかける鉤状のフック部103を形成した専用部品である。専用フック100は、樹脂やアルミ等の金属等によって形成できる。
【0056】
ロールホルダ9aの両端部には、板状フレーム70L,Rの水平上端面70Uと係合する溝部が形成されたガイドコロ80が回転自在に軸支されている。そして、給紙ロール9を所定位置にセットする際には、専用フック100を用いて給紙ロール9を持ち上げ、ガイドコロ80を水平上端面70Uに係合させる。このとき、制御系収納部7から離れた位置であって、水平上端面70Uに形成された凹部70aにガイドコロ80を乗せるようにすると、給紙ロール9が不用意に動いてしまうことがなく作業をスムーズに実行することができる。
【0057】
そして、ガイドコロ80と板状フレーム70L,70Rの水平上端面70Uとを係合させた後は、給紙ロール9を搬送方向に水平に、つまり制御系収納部7に近づくように押すだけで、給紙ロール9を所定位置に収めることができる。具体的には、回転軸86を介してロールホルダ9aに取り付けられたガイドコロ80は、ロールホルダ9aに対して回転自在に軸支されているので、給紙ロール9を水平方向に押すと、ロールホルダ9aを回転させることなく、ガイドコロ80の転動によって給紙ロール9を水平方向に移動させることができる。これにより、例えば、専用フック100で給紙ロール9を持ち上げたまま所定位置まで移動させる方法に比して、給紙ロール9をセットする作業の労力を大幅に低減することができる。
【0058】
そして、ガイドコロ80を転動させることによって給紙ロール9を水平方向に移動させていくと、給紙ロール9の所定位置が近づいたところで、板状フレーム70L,70Rの上端面が下り坂形状となる。ここで、ガイドコロ80が下り坂にさしかかると、ガイドコロ80と板状フレーム70L,70Rとの係合状態が解除されると共に、計4つの保持ロール73によるロールホルダ9aの保持に切り替わり、これにより、給紙ロール9が所定位置に収まることとなる。また、同時に、ロールホルダ9aの従動ギヤ78が駆動ギヤ81と噛合し、ロールホルダ9aの規制円盤79と移動板89の規制板71とが係合する。
【0059】
図13は、給紙ロール9の着脱途中状態を示す図8のK方向視図である。また、図14は、給紙ロール9が所定位置に収まった状態における図8のK方向視図である。図13では、板状フレーム70L,70Rの水平上端面70Uにガイドコロ80が係合した状態を示している。この状態になれば、専用フック100で給紙ロール9を引っ張るように水平方向に移動させて所定位置に収めることができるが、専用フック100を取り外して作業を行うこともできる。専用フック100の板状アーム102は、給紙ロール9を安定して持ち上げるため、給紙ロール9の幅より少しだけ大きい寸法に設定されている。
【0060】
ガイドコロ80が水平上端面70Uに係合している間(図13参照)は、ロールホルダ9aと保持ロール73は接触していない。片側2つの保持ロール73は、ロールホルダ9aの直径より短い間隔で水平方向に配設されており、ガイドコロ80と水平上端面70Uとの係合が解除されると同時に、ロールホルダ9aの下面に2つの保持ローラ73が当接することでロールホルダ9aが所定位置に保持される。なお、給紙ロール9を所定位置から取り外す際には、専用フック100を用いて上方に持ち上げればよい。また、排紙ロール10の着脱部も、給紙側と同様の構造とすることができる。
【0061】
なお、ヒータおよびヒータ駆動装置の構造、ロール紙の搬送経路における各部の構造、印刷ヘッドユニットの構造やインクの種類、給紙ロールおよび排紙ロールの脱着機構等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。例えば、ヒータを駆動するアクチュエータには、各種モータに代えてソレノイドを用いてもよい。また、印刷に用いるインクは4色に限られず、白色等も含む多色インクを用いることも可能である。
【符号の説明】
【0062】
1…インクジェットプリンタ(プリンタ)、2…印刷ヘッド収納部、3…定着部、5…給紙部、6…排紙部、7…制御系収納部、9…給紙ロール、9a…ロールホルダ、10…排紙ロール、10a…ロールホルダ、11…ロール紙、14…ダンサーロール、16…印刷ヘッドユニット、17…紫外線照射装置、30…ヒータ、31…フリーローラ、33…ヒータ戻しバネ、39…モータ(アクチュエータ)、61a…第1案内ローラ、61b…第2案内ローラ、70a…凹部、70L,70R…板状フレーム、70U…水平上端面、71…規制板、72,77…固定板、73…保持ローラ(支持部材)、80…ガイドコロ、89…移動板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール紙(11)を印刷媒体とするプリンタ(1)のロール紙着脱機構において、
前記ロール紙(11)の芯部に挿通されるロールホルダ(9a)と、
前記ロールホルダ(9a)の両端部に回転自在に軸支されるガイドコロ(80)と、
前記ロール紙(11)をプリンタ(1)の所定位置に収めるために前記ロールホルダ(9a)を支持する2枚の板状フレーム(70L,70R)とを具備し、
前記板状フレーム(70L,70R)には、前記ガイドコロ(80)が係合して転動することで前記ロールホルダ(9a)の水平方向への移動を可能とする水平上端面(70U)が形成されており、
前記ロール紙(11)を所定位置に収めるために前記ロールホルダ(9a)を支持する支持部材(73)が、前記水平上端面(70U)より下方の位置に設けられていることを特徴とするロール紙着脱機構。
【請求項2】
前記支持部材(73)は、前記板状フレーム(70L,70R)に回転自在に取り付けられると共に、前記ロールホルダ(9a)の直径より短い間隔で水平方向に配設された片側2つの保持ローラであり、
前記ロール紙(11)は、前記2つの保持ローラ(73)が前記ロールホルダ(9a)を下方から支持することで所定位置に収まることを特徴とする請求項1に記載のロール紙着脱機構。
【請求項3】
前記ロール紙(11)が所定位置に収まることにより、前記ロールホルダ(9a)に設けられたギヤ(78)が、プリンタ(1)に設けられたモータ(85)の動力が出力されるギヤ(81)と上下方向で噛合するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のロール紙着脱機構。
【請求項4】
前記保持ローラ(73)は、移動板(89)に支持されており、
前記移動板(89)は、前記板状フレーム(70L,70R)に対して水平方向に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載のロール紙着脱機構。
【請求項5】
前記移動板(89)には、前記ロールホルダ(9a)の一端部に設けられた規制円盤(79)に当接することで、前記ロールホルダ(9a)が所定位置から移動しないようにする規制板(71)が取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載のロール紙着脱機構。
【請求項6】
前記水平上端面(70U)に、前記ガイドコロ(80)の転動を抑制する凹み(70a)が形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のロール紙着脱機構。
【請求項7】
前記ロールホルダ(9a)は、前記ロール紙(11)の幅方向に両端が突出する円柱形状とされており、
前記ガイドコロ(80)は、前記ロールホルダ(9a)より小径で、かつ前記水平上端面(70U)と係合する溝が形成された円盤状とされることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のロール紙着脱機構。
【請求項1】
ロール紙(11)を印刷媒体とするプリンタ(1)のロール紙着脱機構において、
前記ロール紙(11)の芯部に挿通されるロールホルダ(9a)と、
前記ロールホルダ(9a)の両端部に回転自在に軸支されるガイドコロ(80)と、
前記ロール紙(11)をプリンタ(1)の所定位置に収めるために前記ロールホルダ(9a)を支持する2枚の板状フレーム(70L,70R)とを具備し、
前記板状フレーム(70L,70R)には、前記ガイドコロ(80)が係合して転動することで前記ロールホルダ(9a)の水平方向への移動を可能とする水平上端面(70U)が形成されており、
前記ロール紙(11)を所定位置に収めるために前記ロールホルダ(9a)を支持する支持部材(73)が、前記水平上端面(70U)より下方の位置に設けられていることを特徴とするロール紙着脱機構。
【請求項2】
前記支持部材(73)は、前記板状フレーム(70L,70R)に回転自在に取り付けられると共に、前記ロールホルダ(9a)の直径より短い間隔で水平方向に配設された片側2つの保持ローラであり、
前記ロール紙(11)は、前記2つの保持ローラ(73)が前記ロールホルダ(9a)を下方から支持することで所定位置に収まることを特徴とする請求項1に記載のロール紙着脱機構。
【請求項3】
前記ロール紙(11)が所定位置に収まることにより、前記ロールホルダ(9a)に設けられたギヤ(78)が、プリンタ(1)に設けられたモータ(85)の動力が出力されるギヤ(81)と上下方向で噛合するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のロール紙着脱機構。
【請求項4】
前記保持ローラ(73)は、移動板(89)に支持されており、
前記移動板(89)は、前記板状フレーム(70L,70R)に対して水平方向に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載のロール紙着脱機構。
【請求項5】
前記移動板(89)には、前記ロールホルダ(9a)の一端部に設けられた規制円盤(79)に当接することで、前記ロールホルダ(9a)が所定位置から移動しないようにする規制板(71)が取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載のロール紙着脱機構。
【請求項6】
前記水平上端面(70U)に、前記ガイドコロ(80)の転動を抑制する凹み(70a)が形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のロール紙着脱機構。
【請求項7】
前記ロールホルダ(9a)は、前記ロール紙(11)の幅方向に両端が突出する円柱形状とされており、
前記ガイドコロ(80)は、前記ロールホルダ(9a)より小径で、かつ前記水平上端面(70U)と係合する溝が形成された円盤状とされることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のロール紙着脱機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−25496(P2012−25496A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163224(P2010−163224)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000000181)岩崎通信機株式会社 (133)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000000181)岩崎通信機株式会社 (133)
【Fターム(参考)】
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