説明

プリンタ

【課題】クロックパルス転送時の電磁障害を解消できるプリンタ装置を提供する。
【解決手段】プリンタ1は、記録ヘッド4と記録ヘッド制御部3とを接続したフラットケーブル5にデータ転送ラインと2本のクロックパルス転送ライン5aとを少なくとも配置し、これらクロックパルス転送ライン5b,5bに正位相、逆位相のクロックパルスを転送するとともに、これらクロックパルス転送ラインをフラットケーブルのクロック用リターングランドライン5cを挟むように配置している。この構成により、クロックパルス転送時に各クロックパルス転送ラインに電流が流れると電磁界(電波)が発生するが、位相差が180°となる上に、流れた電流は共通のクロック用リターングランドラインに逆向きに流れるので、電流はキャンセルされ、ここからの電磁界ひいては放射ノイズの発生も抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録紙に画像情報、文字情報等の印刷情報を印刷する記録ヘッドと記録ヘッド制御部とをフラットケーブルにより接続したプリンタに関するもので、特に電磁障害を防止できるプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、記録紙に画像情報、文字情報等の印刷情報を印刷する記録ヘッドが設けられたプリンタにあっては、記録ヘッドの位置に応じたドット単位の印刷情報を転送する記録ヘッド制御部と記録ヘッドとはフラットケーブルにより接続されている。このフラットケーブルにより電磁障害はある程度防止されているが、最近のデータ転送の高速化にともない、データ転送時のクロック周波数を上げる必要のあることから、さらなる電磁障害の防止対策が種々開発されている。その一つの技術として、特許文献1に記載の画像形成装置がある。この画像形成装置51は、図6に示すようにパソコン、CAD装置等でなる外部装置52が接続された制御装置51aと記録紙に画像情報、文字情報等の印刷情報を印刷する2台の記録ヘッド54,54と記録ヘッド54,54の位置情報を記録ヘッド制御部53に送るリニアスケール55とを有している。
【0003】
前記制御装置51aは、記録ヘッド制御部53と画像情報を記憶する画像メモリ56とCPU57aおよびROM57bを備えた印字制御部57とからなっている。また、前記制御装置51aは外部装置52から印刷情報が転送されると、印字制御部57であらかじめ記憶された制御プログラムに従って記録ヘッド制御部53を駆動し、記録ヘッド54,54にドット単位の印刷情報および印字制御情報を転送するように構成されている。
【0004】
前記記録ヘッド54,54と記録ヘッド制御部53とはフラットケーブル58,58により接続されており、このフラットケーブル58,58には図7に示すように2本のデータ転送ライン58c,58cと2本のクロックパルス転送ライン58b,58bとが配置されている。前記クロックパルス転送ライン58b,58bには、それぞれ各記録ヘッド54,54に印刷情報を送る際の同期を取るクロックパルスが転送されるように構成されており、しかもこれらクロックパルスは180°の位相差を持つように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−69377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この画像形成装置51では、クロックパルス転送時にクロックパルス転送ライン58b,58bに電流が流れると、磁界が発生し、続いて電界が発生し、それによりまた磁界が発生し、電磁界(電波)が発生し、これが放射ノイズの原因となるが、クロックパルスが180°の位相差を持っている。そのため、一方のクロックパルス転送ライン58bの周囲の電磁誘導により発生する電磁界(電波)と他方のクロックパルス転送ライン58bの周囲に発生する電磁界(電波)との位相差も180°となって、お互い電磁界(電波)が打消し合い、ある程度電磁ノイズの影響を排除している。しかしながら、この画像形成装置51では各クロックパルス転送ライン5b、5bがデータ転送ライン58c,58cに隣接して配置されているため、電流が流れる時に発生する磁界の影響を排除しきれず、放射ノイズの発生を完全に抑制するのは困難となっており、フラットケーブル58,58に配置されたデータ転送ライン58c,58cに電磁障害を招く等の欠点が生じている。
【0007】
本発明の第1の目的は、このような欠点を除去することであり、記録ヘッドと記録ヘッド制御部とをケーブルにより接続したプリンタであって、クロックパルス転送時の電磁障害を防止できるプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1の目的を達成するために、記録ヘッドと記録ヘッドに印刷情報を転送する記録ヘッド制御部とをフラットケーブルにより接続し、このフラットケーブルにデータ転送ラインと2本のクロックパルス転送ラインとを少なくとも配置し、これらクロックパルス転送ラインに正位相,逆位相のクロックパルスを転送するように構成し、さらにこれらクロックパルス転送ラインをフラットケーブルのクロック用リターングランドラインを挟むように配置したことを特徴とする。
【0009】
このように構成すると、クロックパルス転送時に各クロックパルス転送ラインに電流が流れると電磁界(電波)が発生するが、位相差が180°となる上に、クロックパルス転送ラインに流れた電流は共通のクロック用リターングランドラインに逆向きに流れるので、電流はキャンセルされ、ここからの電磁界ひいては周辺のデータ転送ラインに悪影響を及ぼす放射ノイズの発生も抑制することができる。
【0010】
また、本発明はデータ転送ラインをクロックパルス転送ラインと対をなす2組に分割し、分割された一方のデータ転送ラインにおいて対応するクロックパルスの転送と同期してデータ転送を行い、他方のデータ転送ラインには対応するクロックパルスの転送と同期するデータ転送は行わない構成としたことを特徴とする。
【0011】
この構成により、データ転送ラインが奇数本であっても、そのうちの1本を上記のように分割すれば、同様に放射ノイズの発生を抑制することができる。
【0012】
さらに、本発明はデータ転送ラインをクロックパルス転送ラインと対をなす2組に分割し、分割された一方のデータ転送ラインにおいて対応するクロックパルスの転送と同期してデータ転送を行い、他方のデータ転送ラインにおいても対応するクロックパルスの転送と同期してデータ転送を行う構成としたことを特徴とする
【0013】
この構成により、データ転送ラインが奇数本であっても、そのうちの1本を上記のように分割すれば、同様に放射ノイズの発生を抑制することができるばかりか、データ転送ラインにおいても放射ノイズの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明した本発明によれば、記録ヘッドとその制御部とをケーブルにより接続したプリンタであって、クロックパルス転送時の電磁障害を解消できるプリンタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態にかかるプリンタの制御部を示す概略ブロック図
【図2】本発明の実施形態にかかる記録ヘッド制御部と記録ヘッドとの接続状態を示す接続図
【図3】本発明の実施形態にかかるデータ転送を説明するタイミングチャート
【図4】本発明の実施形態にかかるフラットケーブルに生じる電磁誘導の模式図
【図5】本発明の他の実施形態にかかるデータ転送を説明するタイミングチャート
【図6】従来の画像形成装置を説明する概略ブロック図
【図7】従来の画像形成装置にかかる記録ヘッド制御部と記録ヘッドとの接続状態を示す接続図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。この実施形態のプリンタ1は、図1および図2に示すようにパソコン、CAD装置等でなる外部装置2が接続された記録ヘッド制御部3と記録紙に画像情報、文字情報等の印刷情報を印刷する記録ヘッド4とを有している。前記記録ヘッド制御部3は、外部装置2から印刷情報が転送されると、記録ヘッド4の位置に応じたドット単位の印刷情報および印字制御情報を記録ヘッド4に転送するように構成されている。
【0017】
前記記録ヘッド制御部3と記録ヘッド4とはフラットケーブル5により接続されており、このフラットケーブル5にはデータ転送ライン5a、2本のラッチ信号ライン5d、5dおよびクロック用リターングランドライン5c並びにストローブ信号ライン(図示せず)が配置されている。前記データ転送ライン5aはn/2本を一組として2分割され、一方のデータ転送ライン5aに図3(a)に示す正規データが後記クロックパルス転送ライン5bの一方に転送されるクロックパルスに同期して転送されるように構成されている。また、他方のデータ転送ライン5aには図3(e)に示すようにデータが転送されず、このデータ転送ライン5aがダミーデータ転送ラインとなるように構成され、データ転送ラインが奇数本であっても、そのうちの1本を分割することで、クロックパルス転送ラインと対をなすことができるように構成されている。
【0018】
さらに、前記ラッチ信号ライン5d,5dの一方には図3(c)に示すラッチ信号が転送されるように構成されており、他方には図3(g)に示すようにラッチ信号が転送されないように構成されている。
【0019】
しかも、前記ストローブ信号ラインの一方は、図3(d)に示すようにラッチ用ストローブ信号を転送するように構成されており、他方は図3(h)に示すようにラッチ用ストローブ信号が転送されないように構成されている。
【0020】
前記フラットケーブル5には2本のクロックパルス転送ライン5b,5bが前記クロック用リターングランドライン5cを挟む位置に配置されており、クロックパルス転送ライン5b,5bを通りさらにクロック用リターングランドライン5cを通って帰還する閉ループを流れる電流の向きが当該クロック用リターングランドライン5cの両側の閉ループで逆向きとなるように構成されている。
【0021】
前記2本のクロックパルス転送ライン5b,5bには図3(b)および図3(f)に示すように180°の位相差を持つ正位相,逆位相のクロックパルスが転送されるように構成されており、これらクロックパルスの一方は正規データの転送の同期信号となり、他方はデータ転送を伴わないダミークロックパルスとなっており、正規データの転送に際して支障のないように構成されている。
【0022】
上記プリンタでは、外部装置2から印刷情報が記録ヘッド制御部3に送られると、記録ヘッド制御部3からクロックパルスに同期してドット単位の印刷情報がフラットケーブル5の2分割されたデータ転送ライン5a,5aの一方を通って記録ヘッド4に送られる。この時、2本のクロックパルス転送ライン5b,5bに正位相,逆位相のクロックパルスが転送され(図2中、クロック用リターングランドライン5c付近の矢印参照)、正位相のクロックパルスに同期して正規データの転送が行われるが、2分割されたデータ転送ライン5b,5bの他方にはデータを転送しない。すなわち、このデータ転送ラインに対応するクロックパルス転送ライン5bで転送するクロックパルスは逆位相のクロックパルスとする。これら正位相,逆位相のクロックパルスでは、位相がそろって出力されるので、すなわち一方のクロックパルスの立ち上がり時と他方のクロックパルスの立ち下り時とが同期するので、その時の記録ヘッド制御部3と記録ヘッド4との間に生じる電位差により各クロックパルス転送ラインを電流が同時に、かつお互い逆方向に流れる。また、クロックパルス転送ライン5b,5bに高い周波数のクロックパルスが転送されると、2本のクロックパルス転送ライン5b,5bに前述した電流が流れ、その周囲に磁界が発生し、続いて電界が発生し、それによりまた磁界が発生し、というように電磁界(電波)が発生し、これが放射ノイズの原因となる。しかしながら、これらクロックパルスの位相差が180°となっているため、2本のクロックパルス転送ライン5b,5bの周囲に発生する電磁界(電波)の位相差も180°となる上に、各クロックパルス転送ライン5b、5bに流れた電流は共通のクロック用リターングランドライン5cに逆向きに流れるので、電流はキャンセルされ、ここからの電磁界ひいては周辺のデータ転送ライン5aに悪影響を及ぼす放射ノイズの発生も解消することができる。見方を変えれば、クロックパルス転送ライン5b,5bを通りさらにクロック用リターングランドライン5cを通って帰還する閉ループを流れる電流の向きが当該クロック用リターングランドライン5cの両側の閉ループで逆向きとなるので、図4に示すように閉ループの内側にループと直交する方向に発生する磁界が逆向きとなり、これが打ち消し合う結果、外部に出て行く放射ノイズはキャンセルされることとなる。したがって、フラットケーブル5に配置されたデータ転送ライン5aを転送される正規データは電磁障害を受けない。
【0023】
なお、クロックパルスのほか、データ、ラッチ信号についても電磁ノイズは発生するが、電磁ノイズの相対的エネルギーの大きさを比較すると、クロックパルスでは印刷中は位相がそろって出力されているため、エネルギーが大きいのに比べ、データではクロックパルスよりは発生頻度が小さく、エネルギーは小さい。ただし、画像パターンによりエネルギーは左右されるので、クロックパルスが偶数の場合にはクロックパルスが転送するデータを2分割しかつ位相をずらすことで、さらにエネルギーを小さくすることが期待できる。ラッチ信号については、位相はそろっているが、印刷中にはクロックパルスのように常時出力されておらず、間欠的に出力されるため、エネルギーは小さい。よって、ここからの放射ノイズの発生はさほど問題となることはない。
【0024】
以上説明したように、本発明の実施形態は記録ヘッド4と記録ヘッド4に印刷情報を転送する記録ヘッド制御部3とをフラットケーブル5により接続し、このフラットケーブル5にデータ転送ライン5aと2本のクロックパルス転送ライン5b,5bとを少なくとも配置し、これらクロックパルス転送ライン5b,5bに正位相,逆位相のクロックパルスを転送するように構成し、さらにこれらクロックパルス転送ライン5bをフラットケーブル5のクロック用リターングランドライン5cを挟むように配置したことを特徴とする。
【0025】
このように構成すると、クロックパルス転送時に各クロックパルス転送ライン5b,5bに流れると電磁界(電波)が発生するが、位相差が180°となる上に、クロックパルス転送ライン5b,5bに流れた電流は共通のクロック用リターングランドライン5cに逆向きに流れるので、電流はキャンセルされ、ここからの電磁界ひいては周辺のデータ転送ライン5aに悪影響を及ぼす放射ノイズの発生も抑制することができる。
【0026】
なお、本発明の実施形態では1本のデータ転送ラインを2分割しているが、記録ヘッド4の本数に合わせてデータ転送ライン5aを配置してもよい。また、データ転送ライン5aをクロックパルス転送ライン5b、5bと対をなす2組に分割し、分割された一方のデータ転送ライン5aにおいて対応するクロックパルスの転送と同期してデータ転送を行い、他方のデータ転送ライン5aにおいても対応するクロックパルスの転送と同期してデータ転送を行う構成としてもよい。この場合、180°の位相差を持ったクロックパルスの転送(図5(b)および図5(d)参照)に加え、2分割されたデータ転送ライン(図示せず)の一方から転送されるデータ(図5(a)参照)が他方から転送されるデータ(図5(c)参照)との位相差を180°として転送されることにより、データ転送ラインにおいても放射ノイズの発生を抑制することができる。さらに、クロックパルスは2本に限定されるものではなく、2本以上の実現可能な偶数本であればよい。
【0027】
本発明の幾つかの実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0028】
1…プリンタ
3…記録ヘッド制御部
4…記録ヘッド
5…フラットケーブル
5a…データ転送ライン
5b…クロックパルス転送ライン
5c…クロック用リターングランドライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドと記録ヘッドに印刷情報を転送する記録ヘッド制御部とをフラットケーブルにより接続し、このフラットケーブルにデータ転送ラインと2本のクロックパルス転送ラインとを少なくとも配置し、これらクロックパルス転送ラインに正位相,逆位相のクロックパルスを転送するように構成し、さらにこれらクロックパルス転送ラインをフラットケーブルのクロック用リターングランドラインを挟むように配置したことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
データ転送ラインはクロックパルス転送ラインと対をなす2組に分割され、分割された一方のデータ転送ラインにおいて対応するクロックパルスの転送と同期してデータ転送を行い、他方のデータ転送ラインには対応するクロックパルスの転送と同期するデータ転送は行わないことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
データ転送ラインはクロックパルス転送ラインと対をなす2組に分割され、分割された一方のデータ転送ラインにおいて対応するクロックパルスの転送と同期してデータ転送を行い、他方のデータ転送ラインにおいても対応するクロックパルスの転送と同期してデータ転送を行うことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−111806(P2013−111806A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258575(P2011−258575)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】