説明

プリントシステム

【課題】文字の潰れ等の不具合を改善し印刷品質を高めることができるプリントシステムを提供する。
【解決手段】プリントシステムは、上位装置において、オブジェクト配置設定アプリケーションソフトウエアに従って生成された印刷オブジェクトを、印刷情報に応じて、熱昇華性インク(Y、M、C)で印刷するか、熱溶融性インク(Bk)で印刷するかを選択し、プリンタ装置において、印刷オブジェクトが選択されたインクに従ってカードに印刷される。熱溶融性インクで印刷すると不自然な印刷となってしまう場合に、カラーで印刷することでカードへの印刷品質を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリントシステムに係り、特に、熱昇華性インクと熱溶融性インクとが塗布されたインクリボンを介してサーマルヘッドを圧接して媒体に印刷オブジェクトを印刷するプリントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クレジットカード、キャッシュカード、ライセンスカード、IDカード等のカードを作成するプリントシステムが知られている。この種のプリントシステムは、一般に、カートリッジやカセットに収容されたインクリボンを介してサーマルヘッドを圧接してプラテンローラに一面側が支持されたカードに画像や文字等を印刷する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
カード作成用のプリントシステムで使用されるインクリボンは、通常、熱昇華性インクと熱溶融性インクと有しており(例えば、特許文献2参照)、多値データである画像等のデータは熱昇華性インク(いわゆるカラー)で印刷され、二値データである文字や線等のデータは熱溶融性インク(いわゆるレジン)で印刷される。その際、黒い文字を印刷する方法として、熱溶融性インクを使用して印刷する方法と、3色(シアン・マゼンタ・イエロー)の熱昇華性インクを混合することにより黒を表現して印刷する方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
なお、本発明に関連する技術として、プリンタなどのデバイスとオペレーティングシステムとの間でデータのやりとりをするためのDDI(Device Driver Interface)関数(例えば、特許文献4参照)や、アプリケーションソフトウエアの出力処理にGDI(Graphic
Device Interface)を用いる技術が知られている(例えば、特許文献5参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2008−162114号公報
【特許文献2】特公平07−67830号公報
【特許文献3】特許第2952485号
【特許文献4】特開2002−91428号公報
【特許文献5】特開2004−194041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したプリントシステムにおいて、文字は熱溶融性インクで印刷される場合が多い。しかしながら、熱溶融性インクによる印刷では、サーマルヘッドの加熱素子の影響により熱を引きずるように発色してしまうため、印刷された文字が不自然に見えるときがある。発明者らはこのような現象について調査した結果、例えば、文字を熱溶融性インクで印刷する場合に、(a)文字が小さいと文字が潰れたり(図11(A)参照)、(b)フォントの種類によって同じ文字でも線が太いと文字が潰れたり、(c)文字データを長体、平体等の圧縮処理をした場合は圧縮された部分の線が細かくなり、文字が潰れたり、(d)圧縮処理をした場合、文字の色に濃淡が出てしまうため、その文字を印刷すると、色が薄い部分がカラーで印刷されてしまい、その他の部分がレジンで印刷されるため見た目が不自然になったり、(e)アンチエイリアス処理をした場合も同様で、見た目が不自然になる、という現象が発生していることを把握した。これに対し、文字を熱昇華性インクで印刷する場合には、これらの現象は発生しにくく、熱溶融性インクによる印刷より高い印刷品質を確保することができる(図11(B)参照)。
【0007】
本発明は上記事案に鑑み、文字の潰れ等の不具合を改善し印刷品質を高めることができるプリントシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、熱昇華性インクと熱溶融性インクとが塗布されたインクリボンを介してサーマルヘッドを圧接して媒体に印刷オブジェクトを印刷するプリントシステムにおいて、テキストデータを入力するとともに該入力されたテキストデータに印刷情報を設定するための入力部と、前記入力部で入力されたテキストデータおよび印刷情報から印刷オブジェクトを生成するオブジェクト生成部と、前記オブジェクト生成部で生成された印刷オブジェクトを、前記印刷情報に応じて、前記熱昇華性インクで印刷するか、前記熱溶融性インクで印刷するかを選択するインク選択部と、前記オブジェクト生成部で生成された印刷オブジェクトを前記インク選択部で選択されたインクに従って前記媒体に印刷する印刷部と、を備える。
【0009】
本発明では、オペレータによる入力部からの入力により、テキストデータが入力されるとともに入力されたテキストデータに印刷情報が設定され、オブジェクト生成部により、入力部で入力されたテキストデータおよび印刷情報から印刷オブジェクトが生成され、インク選択部により、オブジェクト生成部で生成された印刷オブジェクトを、印刷情報に応じて、熱昇華性インクで印刷するか、熱溶融性インクで印刷するが選択される。この印刷情報としては、一例として、印刷オブジェクトを構成する文字のフォントサイズを挙げることができる。そして、印刷部により、オブジェクト生成部で生成された印刷オブジェクトがインク選択部で選択されたインクに従って媒体に印刷される。本発明によれば、インク選択部により、オブジェクト生成部で生成された印刷オブジェクトを、印刷情報に応じて、熱昇華性インクで印刷するか、熱溶融性インクで印刷するが選択され、印刷部により、オブジェクト生成部で生成された印刷オブジェクトがインク選択部で選択されたインクに従って媒体に印刷されるので、適正なインクの選択で文字の潰れ等の不具合が改善され印刷品質を高めることができる。
【0010】
本発明において、インク選択部は、オブジェクト生成部で生成された印刷オブジェクトの印刷情報に応じて既に設定されているインクの種類に対して、熱昇華性インクで印刷するか、熱溶融性インクで印刷するかの設定を変更するようにしてもよい。また、オブジェクト生成部、インク選択部および印刷部のいずれかが印刷オブジェクトを画像オブジェクトに変換するようにしてもよい。
【0011】
本発明の具体的態様として、印刷情報はフォントサイズの情報を含み、インク選択部は、印刷オブジェクトを構成するテキストデータのうち少なくとも1文字のフォントサイズが所定の大きさより小さいか否かを判断し、小さい場合に熱昇華性インクを選択するようにしてもよい。また、印刷情報は圧縮処理の有無を含み、インク選択部は、圧縮処理が有か否かを判断し、有の場合に熱昇華性インクを選択するようにしてもよい。さらに、印刷情報はアンチエイリアス処理の有無を含み、インク選択部は、アンチエイリアス処理が有か否かを判断し、有の場合に熱昇華性インクを選択するようにしてもよい。また、印刷情報は印刷オブジェクトの背景色の情報を含み、インク選択部は、背景色がモノクロか否かを判断し、モノクロの場合に熱昇華性インクを選択するようにしてもよい。さらに、印刷情報は印刷オブジェクトの色および印刷オブジェクトの背景色の情報を含み、インク選択部は、印刷オブジェクトの色と印刷オブジェクトの背景色とが同色か否かを判断し、同色の場合に印刷オブジェクトのフォントサイズが所定の大きさより小さい場合であっても、あえて熱溶融性インクを選択するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インク選択部により、オブジェクト生成部で生成された印刷オブジェクトを、印刷情報に応じて、熱昇華性インクで印刷するか、熱溶融性インクで印刷するが選択され、印刷部により、オブジェクト生成部で生成された印刷オブジェクトがインク選択部で選択されたインクに従って媒体に印刷されるので、適正なインクの選択で文字の潰れ等の不具合が改善され印刷品質を高めることができる、という効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を、カード状記録媒体に文字や画像を印刷記録するとともに、カードの磁気ストライプ部に磁気的な記録処理を行うプリントシステムに適用した実施の形態について説明する。
【0014】
(構成)
<システム構成>
図7に示すように、本実施形態のプリントシステム200は、大別して、上位装置100(例えば、パーソナルコンピュータ等のホストコンピュータ)と、カード状記録媒体(以下、単にカードという。)に文字や画像を印刷記録する機能とカードの磁気ストライプ部に磁気的な記録処理を行う機能とを有するプリンタ装置1とで構成されている。
【0015】
プリンタ装置1は、図示を省略したインターフェースを介して、上位装置100に接続されており、上位装置100からプリンタ装置1に印刷記録データや磁気記録データ等を送信して、記録動作等を指示することが可能である。なお、プリンタ装置1は、オペパネ部(操作表示部)5を有しており(図7、図1参照)、上位装置100からの記録動作指示の他、オペパネ部5からの記録動作指示も可能である。
【0016】
上位装置100には、一般に、原稿に記録された画像を読み取るスキャナ等の画像入力装置101、上位装置100に命令やデータを入力するためのキーボードやマウス等の入力装置102、上位装置100によって生成されたデータ等の表示を行なう液晶ディスプレイ等のモニタ103が接続されている。
【0017】
<プリンタ装置の外観構成>
図1に示すように、プリンタ装置1は、ケーシング2の一側に配置され、記録処理前のブランクな複数のカードを積層状に収納可能(約100枚程度)であってケーシング2に対して着脱自在に取り付けられるカード供給部10と、同じくケーシング2の一側でカード供給部10の下方に配置され、記録処理後のカードを傾斜状に収容可能(約30枚程度)であってケーシング2に対して着脱自在に取り付けられるカード収容部20と、同じくケーシング2の一側でカード供給部10に隣接する位置に、プリンタ装置1のエラー状態を含む動作状態を表示する表示部4を有し、印刷処理や磁気記録処理の各種設定を行うためのオペパネ部5が設けられている。なお、オペパネ部5は、ダイヤル6を回転させることによりこれに同期して回転可能に設けられている。
【0018】
カード収容部20の一部には、収容オーバーとなった記録処理後のカードを装置外部へ放出可能な開口部として形成されたカード放出口21が設けられている。また、プリンタ装置1の一面には、後述する印刷記録に使用されるインクリボンRを内装したカートリッジ52を着脱する際に装置内部にアクセスするための開閉カバー7が設けられており、開閉カバー7はケーシング2の一部を構成している。
【0019】
そして、カード供給部10ないしカード収容部20に対向して、ケーシング2の他側には、磁気エンコーダユニット80がその一部をケーシング2から突出する形で配置されている。
【0020】
<プリンタ装置の内部構成>
次に、図2および図3に基づきプリンタ装置1の内部の各構成要素について説明する。なお、図2はカード供給部10から供給された記録処理前のブランクなカードCが印刷部50に向けて搬送されている状態を示し、後述するカードクリーニング機構30のクリーニングローラ31が搬送中のカードCの表面に当接してその印画される面を清浄にしている状態を示している。
【0021】
また、図3は印刷部50ないし磁気エンコーダユニット80により記録処理されたカードCがカード収容部20に向けて排出される際の状態を示している。このとき、搬送ローラ41、42は、後述する移動機構60により略水平状のカード搬送路を形成する第1の位置から傾斜状のカード搬送路を形成する第2の位置へと移動してカードCをカード排出口23に向けて搬送可能な状態を維持する。
【0022】
カード供給部10は、プリンタ装置1の一側に着脱自在に設けられ、その内部に記録処理前の複数のブランクなカードを積層状に収納可能としており、機体(プリンタ装置1)側に設けられ、図示を省略するモータにより回転駆動する供給ローラ11が最下位(最下層)のカードを装置内部へと繰り出す際にカードCの一枚のみの通過を許容するために、供給コロ12と板状部材からなる分離ゲート13とを有している。供給されるカードCは供給コロ12と分離ゲート13との間を通過して、カード供給部10に連接するようにケーシング2の一側に設けられたカード供給口14へと導かれる。なお、詳述すると、分離ゲート13の下端部には図示しない可撓性のパッドが設けられており、例えば、厚さの異なる薄いカードを供給する場合であっても、一枚ずつの分離を可能としている。
【0023】
一方、カード収容部20は、プリンタ装置1(ケーシング2)の一側であって、カード供給部10の下方に着脱自在に設けられて記録処理後のカードCを傾斜状に収容可能としている。カード収容部20には、その内部の底面が傾斜状に形成された収容トレイ24が設けられており、ケーシング2の一側でカード供給口14の下方に開口を有して配置されたカード排出口23から排出される記録済のカードCが排出ローラ15により収容トレイ24上に順次排出されて収容される(図3参照)。
【0024】
排出ローラ15はプリンタ装置1側に固設されており、上述した供給ローラ11を回転駆動する図示を省略するモータによって回転駆動されるが、供給ローラ11がブランクなカードCを供給するために回転する方向を正転駆動とした場合、図示を省略するモータの逆転駆動により排出されるカードCを収容トレイ24上に排出するように回転駆動される。つまり、図示を省略するモータの正逆転駆動により供給ローラ11および排出ローラ15が回転されるが、供給ローラ11には図示しないワンウェイクラッチが設けられているため、カード供給方向にのみ回転することができる(ワンウェイクラッチの作用により、カード供給方向と逆方向には回転駆動は伝達されない)。一方、排出ローラ15は、図示を省略するモータの正逆転駆動により両方向に回転駆動される。本形態では、記録処理前のブランクなカードCの供給動作と記録処理後のカードCの排出動作とが同時に行われることがなく、排出ローラ15がカードCの排出のための回転とその逆の方向に回転することであっても支障はない。
【0025】
カード供給口14から供給されたカードCは、後述する搬送駆動モータ70から伝達される駆動力を有して回転する搬送ローラ41、42、43へと順次引き継がれて略水平状のカード搬送路P1に沿って搬送される。なお、搬送ローラ42、43はそれぞれ駆動ローラと従動ローラとを有するローラ対で構成されている(以下、特に異なる説明がない限り、ローラ対の従動ローラについての説明を省略し、駆動ローラについてのみ説明する。)。
【0026】
搬送ローラ41の対向側には、追って説明するカードクリーニング機構30の一部を構成するクリーニングローラ31が搬送ローラ41に対峙するようにカード搬送路P1に対して進退可能に設けられている。このクリーニングローラ31が搬送されるカードCに当接するようにカード搬送路P1上に進出しているとき(図2に示す状態)、駆動力を有する搬送ローラ41との間でカードCを挟持して回転することで、印刷部50により印刷記録される印画面からゴミや埃等の異物を除去して清浄にすることができる。
【0027】
また、クリーニングローラ31がその動作位置であるカード搬送路P1上に進出したとき、クリーニングローラ31は、クリーニングローラ31に隣接した位置でカード搬送路P1から離間した所定の位置に配置されるクリーナとしてコロ状クリーナ32と面接触するように位置付けられる。コロ状クリーナ32は、クリーニングローラの外径(ローラ径)より小さい外径(ローラ径)を有しており、印刷部50の一部として構成されるインクリボンRを内装するカートリッジ52の所定部位に着脱自在に取り付けられる支持部材53に固着して回転可能に設けられている。
【0028】
本形態では、クリーニングローラ31は表面が粘着性を有するゴム材料などの回転自在のローラ状部材からなり、また、コロ状クリーナ32は、樹脂製の回転自在のコロ状部材にスポンジ層を有する粘着性テープが巻装されており、この粘着性テープはクリーニングローラ31の表面の粘着性より高い粘着性を有しているため、カードCから除去されクリーニングローラ31の表面に付着したゴミや埃等の異物は両者の面接触によりコロ状クリーナ32の表面を形成する粘着性テープへと移行、引き渡されることになる。
【0029】
搬送ローラ43のカード搬送方向下流側には、クリーニングローラ14によって清浄にされたカードCの表面に、所期の文字ないし画像を印刷記録する印刷部50が設けられている。
【0030】
本形態においては、印刷部50は熱転写プリンタの構成が採用されており、カード搬送路P1上の印刷位置に設けられたプラテンローラ44に対して進退可能に設けられたサーマルヘッド51を有している。プラテンローラ44とサーマルヘッド51との間には、インク層Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Bk(ブラック)等の複数色が面順次に繰り返されたインクリボンRが介在している。すなわち、インク層Y、M、Cの箇所には基材上に各色の熱昇華性インクが塗工されており、インク層Bk(墨)には熱溶融性インクが塗工されている。このインクリボンRは、上述したようにカートリッジ52に内装されている。
【0031】
カード搬送路P1に沿って移動するカードCに文字あるいは画像などの情報を熱転写記録する際には、インクリボンRは、リボン供給リール54から供給され、サーマルヘッド51の先端部に略全面を当接させながら搬送され、インクリボンRを巻き取るリボン巻取リール55に巻取られる。リボン供給リール54およびリボン巻取リール55は、不図示のモータにより回転駆動される。このとき、カードCの表面にインクリボンRを介在させてサーマルヘッド51を押圧しながらサーマルヘッド51の加熱素子を選択的に作動させることで、カードCに所期の文字、画像が印刷される。インクリボンRの搬送経路には、複数のガイドシャフトと、所定のインク層(本形態ではインク層Y)の頭出しを行うためにインク層Bk(ブラック)を検出する発光素子58、受光素子59からなる透過型センサが配設されている。
【0032】
また、サーマルヘッド51のカード搬送方向上流側(搬送ローラ43側)には、カード搬送路P1に沿って搬送されるカードCの搬送方向先端および後端を検出する発光素子48、受光素子49からなる透過型センサ(以下、カード検出センサという。)が配設されている。
【0033】
印刷部50の下方には、上記した一連の搬送ローラ41、42、43、およびプラテンローラ44を正逆転方向に回転駆動する正逆転駆動可能なステッピングモータからなる搬送駆動モータ70が配設されている。搬送駆動モータ70による回転駆動力は、搬送駆動モータ70の回転軸に設けられたプーリ71がベルト72によりプーリ73へと伝達され、プーリ73に一端が巻装されたベルト74によりプラテンローラ44の回転軸に設けられたプーリ75を介してプラテンローラ44に駆動が伝達される。なお、プーリ73は2段プーリで構成されており、それぞれの段差部分にベルト72およびベルト74が架け渡されている。
【0034】
プラテンローラ44の回転軸上、搬送ローラ41、42、43の回転軸上、並びに、それぞれのローラの間には図示を省略する複数のギヤが噛合状態で配設されており、プラテンローラ44に伝達された回転駆動力は、これら複数のギヤを介して各搬送ローラ41、42、43へと伝達される。
【0035】
また、プラテンローラ44のカード搬送方向下流側(リボン巻取リール55側)には、カードCを搬送する機能を有し、印刷部50によりカードCに印刷記録を行なうときにカードCを挟持するニップローラ45がカード搬送路P1に沿って設けられており、このニップローラ45のさらにカード搬送方向下流側には、カードCを搬送するための送りローラ46が同じくカード搬送路P1に沿って設けられている。
【0036】
これらのニップローラ45および送りローラ46の回転軸にも図示を省略するギヤがそれぞれ設けられており、また、プラテンローラ44とニップローラ45、ニップローラ45と送りローラ45との間にも図示を省略する複数のギヤが設けられており、これら複数の図示しないギヤが相互に噛合うことにより、搬送駆動モータ70からの回転駆動力は、上述したプーリ、ベルトおよび図示しない複数のギヤを含む駆動力伝達機構を介して、プラテンローラ44の回転軸に設けられたギヤから分岐されてニップローラ45および送りローラ46にも伝達されていくことになる。なお、ニップローラ45および送りローラ46は、磁気エンコーダユニット80が、カードCの印画面の裏面に設けられた磁気ストライプ部に磁気記録処理をするときは、カードCを停止状態で挟持するように構成されている。
【0037】
印刷部50のカード搬送方向下流側には、送りローラ46に隣接して磁気エンコーダユニット80が設けられている。この磁気エンコーダユニット80には、ニップローラ45および送りローラ46によって挟持状態で停止保持されたカードCの磁気ストライプ部に磁気記録処理するために、カード搬送路P1に沿って走査するように往復移動する(自走する)磁気ヘッド81が設けられている。なお、磁気エンコーダユニット80は、磁気ヘッド81の磁気記録処理を制御するマイコン(不図示)を有して構成されている。
【0038】
磁気エンコーダユニット80の一部には、カード搬送路P1に沿って搬送されるカードCを装置外へ排出可能な開口部として形成されたカード搬出口82が設けられている。つまり、このカード搬出口82は、カード供給口14に対向し、ケーシング2の他側であって、カード搬送路P1の延長線上に設けられている。
【0039】
そして、磁気エンコーダユニット80の内部には、カードCをカード搬出口82に向けて搬送するとともに、カード搬出口82からカードCを搬出可能な搬出ローラ47が配設されている。磁気エンコーダユニット80には、この搬出ローラ47を回転駆動する駆動源は備えないが、搬出ローラ47と送りローラ46との間に図示しない複数のギヤを設けて連結することにより、送りローラ46に伝達された回転駆動力が搬出ローラ47へと伝わることになる。
【0040】
従って、プリンタ装置1は、カード供給部10から連なる略水平状のカード搬送路P1に沿って、カード供給口14、印刷部50および磁気エンコーダユニット80が設けられた構成を有している。
【0041】
また、図示から明らかなように、磁気エンコーダユニット80は、その一部が機体内部に差し込まれるようなユニット形状を有しており、搬送駆動モータ70は、印刷部50の下方で、かつ、磁気エンコーダユニット80と、以下に説明する、搬送ローラ41、42を第1の位置と第2の位置とに移動させる移動機構60(図4乃至図6参照)との間に配設されている。
【0042】
次に、図4〜図6を参照して、カードクリーニング機構30と移動機構60について詳述する。なお、図4はカード供給口14からカードCを受け入れて、クリーニングローラ31と搬送ローラ41との間でカードCを挟持する直前の状態を示し、図5は印刷部50によりカードCの印画面に多色の面順次印刷記録を行なう際に、カードCをカード供給口14側に逆搬送した状態を示し、さらに、図6は記録処理後のカードCをカード排出口23に向けて搬送する状態を示している。
【0043】
<プリンタ装置のカードクリーニング機構>
カードクリーニング機構30は、クリーニングローラ31がカード搬送路P1に進出してカードCおよびコロ状クリーナ32に当接(面接触)可能とする動作位置と、カード搬送路P1から離間したホーム位置となる退避位置との間で移動自在に構成するために、ソレノイド34aと、このソレノイド34aの駆動切り替え(ON/OFF)により進退するプランジャ34bとからなるアクチュエータ34を有している。
【0044】
プランジャ34bの端部には、その一端部が回転自在に取り付けられたレバー部材35が設けられ、さらにレバー部材35の他端部に係合する係合部材36等が設けられている。係合部材36は、一端側が装置内部の所定位置に固定された引っ張りバネ37にフックされており、引っ張りバネ37の付勢力により常時上方側へ付勢されている。
【0045】
また、カードクリーニング機構30は、クリーニングローラ31を保持するホルダ33を有し、このホルダ33の一部に形成された凸状部位39が、上記係合部材36の一部に形成された凹状部位38に差し込まれて一体化される構成を有している。つまり、クリーニングローラ31を保持するホルダ33は、係合部材36に対して着脱自在に設けられている。さらに、カードクリーニング機構30は、印刷部50の一部として構成されるインクリボンRを内装するカートリッジ52の所定部位に着脱自在に取り付けられる支持部材53に固着して回転可能に設けられた、コロ状クリーナ32を含む構成を有している。
【0046】
なお、駆動部34のソレノイド34aが駆動されると(駆動ON)、レバー部材35が係合部材36を押し下げて、クリーニングローラ31を保持するホルダ33を間接的に押圧するように押し下げることでクリーニングローラ31が上記の動作位置に位置付けられる。
【0047】
<プリンタ装置の移動機構>
図4〜図6に示すように、移動機構60は、正逆転可能なステッピングモータ61と、このステッピングモータ61の回転軸に設けられたモータギヤ62と、このモータギヤ62に噛合するギヤ部位を有するギヤ付きブラケット63等を有している。また、搬送ローラ41、42、43を軸支するローラシャフト64、65、66がギヤ付きブラケット63に保持されている。
【0048】
移動機構60は、ギヤ付きブラケット63が搬送ローラ43のローラシャフト66を中心として回動可能に取り付けられているため、ステッピングモータ61の正逆転駆動によりギヤ付きブラケット63が回動することで、搬送ローラ41、42を、第1の位置(搬送ローラ41、42を略水平状のカード搬送路を形成する位置、ホーム位置、図4、図5参照)と第2の位置(搬送ローラ41、42を傾斜状のカード搬送路を形成する位置、図6参照)との間で移動可能に構成されている。
【0049】
次に、プリンタ装置1の制御および電気系統について説明する。図2および図3に示すように、プリンタ装置1は、プリンタ装置1全体の動作制御を行う制御部95と、商用交流電源から各機構部および制御部等を駆動/作動可能な直流電源に変換する電源部90とを有している。
【0050】
<プリンタ装置の制御部>
図7に示すように、制御部95は、プリンタ装置1の全体の制御処理を行うマイクロコンピュータ95b(以下、マイコン95bと略称する。)を備えている。マイコン95bは、中央演算処理装置として高速クロックで作動するCPU、プリンタ装置1の基本制御動作(プログラムおよびプログラムデータ)が記憶されたROM、CPUのワークエリアとして働くRAMおよびこれらを接続する内部バスで構成されている。
【0051】
マイコン95bには外部バスが接続されている。外部バスには、上位装置100との通信を行うための図示を省略したインターフェース、カードCに印刷すべき印刷記録データやカードCの磁気ストライプ部に磁気記録すべき磁気記録データ等を一時的に格納するバッファメモリ95aが接続されている。
【0052】
また、外部バスには、各種センサからの信号を制御するセンサ制御部95c、各モータに駆動パルスや駆動電力を送出するモータドライバ等を制御するアクチュエータ制御部95d、サーマルヘッド51の熱エネルギーを制御するサーマルヘッド制御部95e、オペパネ部5を制御するための操作表示制御部95f、および、磁気エンコーダユニット80が接続されている。センサ制御部95cは発光素子48、受光素子49からなるカード検出センサおよび他の図示を省略するセンサに、アクチュエータ制御部95dはステッピングモータ61、搬送駆動モータ70および他の図示しないモータ、アクチュエータ34等に、サーマルヘッド制御部95eはサーマルヘッド51に、操作表示制御部95fはオペパネ部5にそれぞれ接続されている。
【0053】
なお、電源部90は、制御部95、サーマルヘッド51、オペパネ部5および磁気エンコーダユニット80に作動/駆動電源を供給している(図7参照)。
【0054】
(動作)
次に、本実施形態のプリントシステム200の動作について、上位装置100の動作およびマイコン95bのCPU(以下、単にCPUという。)を主体として説明する。
【0055】
制御部95に電源が投入されると、CPUは、ROMに格納されたプログラムおよびプログラムデータを読み出し(RAMに展開し)、各機構部を作動させるための初期処理を行う。すなわち、初期処理では、外部バスを介してマイコン95bに接続され制御部95を構成するセンサ制御部95c等の各制御部95a、95c〜95f、磁気エンコーダユニット80との接続確認を行った後、各構成部が上述したホーム位置に位置しているか(図2、図4参照)をセンサ制御部95cからの信号等に基づいて判断し、各構成部がホーム位置に位置していない場合には、ホーム位置に移動させる。センサ制御部95cの信号等に基づいて、各構成要素をホーム位置への復帰動作を所定回繰り返してもホーム位置に移動しない場合には、上位装置100に報知するとともに、操作表示制御部95fを介して表示部4にその旨を表示させる。また、初期処理では、センサ制御部95cからの信号等に基づいて、カード供給部10にカードが収容されているか等も併せて判断し、収容されていないと判断したときは、同様に、上位装置100に報知するとともに、表示部4にその旨を表示し、さらに、カード供給部10にカードが収容されるまで待機する。
【0056】
(上位装置)
一方、上位装置100には、個々の印刷オブジェクトを生成するとともに、複数の印刷オブジェクトで構成されカードCに印刷される所望画像を作成するためのオブジェクト配置設定アプリケーションソフトウエアと、オブジェクト配置設定アプリケーションソフトウエアで作成されたデータに基づきプリンタ装置1用のデータを作成するプリンタドライバがインストールされている。
【0057】
<印刷オブジェクトの作成>
ここで、印刷オブジェクトの作成について例を挙げて説明する。図9は、カードCに印刷される所有者の氏名「知財 花子」の印刷オブジェクトを作成する場合のモニタ103に表示された画面の例を模式的に示したものである。この例では、オペレータが、「テキスト入力」の欄に入力装置102のキーボードから「知財 花子」(テキストデータ)を入力し、入力装置102のマウスで「フォント名」、「(フォント)サイズ」、「スタイル/装飾」、「文字色」、「背景色」等の印刷情報を入力した例であり、「プレビュー」の欄には、入力されたテキストデータと印刷情報とから生成された印刷オブジェクトが表示されている。オペレータは、プレビューを参照しつつ、入力装置102を操作(修正)することで所望の印刷オブジェクト(テキストデータ)を作成し、OKボタンをクリックする。これにより、上位装置100には一つの印刷オブジェクトが取り込まれ、オブジェクト配置設定アプリケーションソフトウエアにより、その印刷オブジェクトを特定するための名前や番号が付与されるとともに、予め定められた上位装置100のフォルダに印刷オブジェクトが収容される。なお、この例では、「プレビュー」の欄に表示された印刷オブジェクトが複数の文字で構成され、それらの文字のフォント名やフォントサイズ等が同じ印刷オブジェクトを示したが、印刷オブジェクトは1文字で構成されていても、複数の文字で構成され各文字が異なるフォント名やフォントサイズであってもよい。
【0058】
カードは、一般に、所有者の氏名の他、所有者が所属する会社名やID番号等種々の印刷オブジェクト(テキストデータ)を含んで構成されるため、上記の例に従い他の(氏名以外の)印刷オブジェクトをすることができ、同一のフォルダに、作成された複数の印刷オブジェクトが収容される。また、カードには、一般に、所有者の顔写真、会社のロゴマーク、カードの背景画像等の印刷オブジェクト(イメージデータ、すなわち、画像オブジェクト)も印刷されることが多く、これらのイメージデータは同一のフォルダに収容されてよく、他のフォルダに収容されるようにしてもよい。なお、このようなイメージデータは画像入力装置101から取り込んでも、他のコンピュータに保存されているイメージデータを利用するようにしてもよい。
【0059】
<印刷オブジェクト配置設定>
オペレータは、上述したフォルダに収容された複数の印刷オブジェクトにより、カードに印刷される所望画像を作成する。すなわち、上位装置100は、オブジェクト配置設定アプリケーションソフトウエアにより、不図示のプレビュー画像をモニタ103に表示し、オペレータによる複数のオブジェクト配置を補助する。これにより、所有者の氏名、会社名、ID番号、顔写真、ロゴマーク等の位置が所望位置に配置された所望画像を得ることができる。なお、本例では、図9に示した例と同様に、OKボタンがクリックされたかを判断することでカードに印刷される所望画像が確定される。ここで、重要なことは、各印刷オブジェクトに位置情報が設定されることである。従って、印刷情報には、上述した印刷情報の他に、印刷オブジェクトの位置情報が付加される(図10参照)。
【0060】
<インク選択>
次に、上位装置100のCPUは、図8に示すように、印刷オブジェクトの印刷情報に応じて既に設定されているインクの種類に対して、熱昇華性インク(Y、M、Cのカラーインク)で印刷するか、熱溶融性インク(Bkインク)で印刷するかを選択するためのインク選択ルーチンを実行する。なお、図8では、説明を簡単にするために、一つのテキストデータの印刷オブジェクトに対して行う処理例を示すが、実際にはカードCに印刷されるテキストデータの各印刷オブジェクトについての処理が行われる。
【0061】
このインク選択ルーチンでは、まず、ステップ202において、自動モードか否か、すなわち、インク選択をオブジェクト配置設定アプリケーションソフトウエアに委ねるかを判断する。否定判断のときは、ステップ222へ進み、オペレータが設定した通りの印刷オブジェクトを維持して(変更を加えないで)インク選択ルーチンを終了する。一方、肯定判断のときは、ステップ204において、印刷オブジェクトについて、印刷色が墨か否か(図9も参照)、換言すれば、Bkインク(熱溶融性インク)を用いて印刷するものか否かを判断する。否定判断のときは、印刷オブジェクトを構成する文字に潰れ等の不具合の発生しないカラーで印刷されるため、ステップ220で、印刷オブジェクトを維持してインク選択ルーチンを終了する。
【0062】
ステップ204で肯定判断のときは、ステップ206において、アンチエリアス処理が指定されているか否かを判断し、肯定のときは、印刷オブジェクトを構成する文字に不具合の発生しないカラーで印刷されるため、ステップ220で、カードCに印刷される印刷オブジェクトを維持してインク選択ルーチンを終了する。一方、ステップ206での判断が否定のときは、次のステップ208で、圧縮処理が指定されているか否かを判断し、肯定判断のときは、印刷オブジェクトを構成する文字に不具合の発生しないカラーで印刷されるため、ステップ220で、カードCに印刷される印刷オブジェクトを維持してインク選択ルーチンを終了する。
【0063】
ステップ208での判断が否定のときは、ステップ210において、印刷オブジェクトの背景色に指定があるか否かを判断する。否定判断のときはステップ214に進み、肯定判断のときは、次のステップ212において、印刷オブジェクトの背景色が同色、すなわち、墨か否かを判断する。肯定判断のときには、印刷オブジェクトの印刷色と背景色とが同一のため印刷オブジェクトを構成する文字がみえなくなるため、ステップ220において、印刷オブジェクトの印刷色をBkからカラー(Y、M、C)に変更してインク選択ルーチンを終了し、否定判断のときは、ステップ214に進む。
【0064】
ステップ214では、印刷オブジェクトを構成する文字のフォントサイズが6pt(ポイント)未満か否かを判断する。否定判断のときは、文字が大きく文字の潰れ等の不具合が発生しづらいので、ステップ218に進み墨(Bk)を選択する。肯定判断のときは、基本的には印刷オブジェクトの印刷色をBkからカラー(Y、M、C)に変更するが、次のステップ216において、背景画像の印刷色にカラー(Y、M、C)混合の黒が使用されているか否かを判断し、判断が肯定のときは、印刷オブジェクトの印刷色と背景画像の印刷色とが同一のため印刷オブジェクトを構成する文字全体またはその一部がみえにくくなるため、あえて印刷オブジェクトを構成する文字を墨(Bk)のまま維持してインク選択ルーチンを終了する。ステップ216の判断が否定のときは印刷オブジェクトの印刷色をカラー(Y、M、C)に変更しても、背景と同色で重なることはないので、ステップ220において印刷色をカラー(Y、M、C)に変更して選択ルーチンを終了する。
【0065】
<画像変換>
次いで、上位装置100のCPUは、オブジェクト配置設定アプリケーションソフトウエアに従って、テキストデータの各印刷オブジェクトを例えば、ビットマップ等のイメージデータ(画像オブジェクト)に変換するとともに、全ての画像オブジェクトを一つに統合した印刷データを生成する。そして、API(Application Program Interface)関数を利用して印刷データおよび入力装置102から予め入力されておりカードCの磁気ストリップに記録すべき磁気データをGDI(Graphic Device Interface)に出力する。GDIはDDI関数を利用して、印刷データおよび磁気データをプリンタドライバに出力する。
【0066】
プリンタドライバは、GDIを介してオブジェクト配置設定アプリケーションソフトウエアから出力されたデータを受け取り、プリンタ装置1での記録動作を制御するための各種パラメータ値を決定し、その記録指令よりカードへの記録を行うための印刷記録データおよび磁気記録データを生成して、プリンタ装置1に送信する。制御部95のバッファメモリ95aには、記録制御指令となる各種パラメータ値、印刷記録データをY、M、C、Bkの色成分ごとに分解して得られた画像データないし文字データ、および、磁気記録データが格納される。なお、本形態では、上位装置100側において色成分(元データは、R、G、B)に分解し、プリンタ装置1でR、G、BからY、M、Cに変換されて画像データとして用いられ、上位装置100側で設定(選択)されたBkデータがプリンタ装置1で同じくBkデータとして用いられて文字データに供される。
【0067】
(印刷装置)
CPUは、バッファメモリ95aに格納された記録制御指令(各種パラメータ値)を取り込み、これらのパラメータ値とRAMに展開されたプログラムおよびプログラムデータとに従って、以下のように各機構部を制御する。
【0068】
まず、アクチュエータ制御部95dを介してアクチュエータ34(ソレノイド34a)を駆動させ(ON状態)、クリーニングローラ31を図5に示す退避位置(ホーム位置)から図4に示す動作位置へと移動させて、カードCの受け入れ準備を行う。このとき、移動機構60は、搬送ローラ41、42を、略水平状のカード搬送路を形成するように第1の位置(ホーム位置)に位置付けている(図2、図4に示す状態)。
【0069】
次に、CPUは、アクチュエータ制御部95dを介して搬送駆動モータ70を作動させ駆動伝達機構を介してカード搬送路P1上に配設された各ローラを駆動させるとともに、アクチュエータ制御部95dを介して供給ローラ11を回転駆動する図示を省略したモータを駆動する。
【0070】
これにより、カード供給部10の最下位のカードCは、供給コロ12と分離ゲート13との間およびカード供給口14を介してケーシング2内に搬入される。カードCは、クリーニングローラ31により印画面が清浄され、カード搬送路P1に沿ってカード搬出口82側に向けて搬送される(図2参照)。発光素子48、受光素子49からなるカード検出センサによってカードCの後端が検出されると、そのカード後端検出をトリガとして、CPUはアクチュエータ34(ソレノイド34a)の駆動を停止(OFF状態)させる。これにより、クリーニングローラ31は、レバー部材35による押圧動作から開放されて図4に示す動作位置から図5に示すホーム位置である退避位置へと移動する。
【0071】
カードCは、搬送駆動モータ70の駆動力により、両端部が送りローラ46、ニップローラ45に挟持される位置まで、カード排出口82に向けてカード搬送路P1上をさらに搬送される。CPUは、カード検出センサによるカード後端検出後、搬送駆動モータ70のパルス数が所定値に到ると、搬送駆動モータ70の駆動を停止させる。これにより、カードCは、両端部を搬送ローラ47とニップローラ45とで挟持状態で停止保持され、磁気エンコーダユニット80の磁気ヘッド81による磁気ストライプ部への磁気記録データの書き込みが可能な状態となる。
【0072】
CPUは、この間(カード検出センサによるカード後端検出後、カードCの両端部が送りローラ46、ニップローラ45で挟持される間)、外部バスを介して、バッファメモリ95aに格納された磁気記録データを磁気エンコーダユニット80(のマイコン)に送出し、上述した搬送駆動モータ70のパルス数が所定値に到ったときに(カードCの両端部が搬送ローラ47、ニップローラ45で挟持されたときに)、磁気エンコーダユニット80(のマイコン)に磁気記録データの書き込みを指令する。
【0073】
この指令に従い、磁気エンコーダユニット80のマイコンは、CPUのスレーブコンピュータとして機能し、磁気ヘッド81を搬出ローラ47側からニップローラ45側に自走させて受信した磁気記録データをカードCの磁気ストライプ部に書き込み、さらに、磁気ヘッド81を逆方向のニップローラ45側から搬出ローラ47側に自走させて書き込まれた磁気記録データのベリファイ(正しく書き込まれたかのチェック)を行って、ベリファイ結果をCPUに報知する。
【0074】
CPUは、ベリファイ結果が書き込み不良のときは、上位装置100に報知するとともに、表示部4にその旨を表示して、上位装置100ないしオペパネ部5からのカードCの装置外への搬出指示があるまで待機する。搬出指令があると、搬送駆動モータ70を所定パルス数(正転)駆動し、カードCを、カード搬出口82を介して装置外に搬出して、カード供給部10から新たなカードCの供給を受けて、上記と同様に磁気エンコーダユニット80に(新たな)カードCの磁気ストライプ部への磁気記録データの書き込みおよびベリファイを実行させる。
【0075】
一方、磁気エンコーダユニット80のマイコンからのベリファイ結果に問題がない(カードCの磁気ストライプ部への磁気記録データの書き込み不良がない)場合には、CPUは、搬送駆動モータ70を逆転駆動させ、両端部がニップローラ45、送りローラ46に挟持状態で停止保持されたカードCをカード搬送路P1に沿ってカード供給口14側に逆搬送する。この逆搬送の間、カードCの後端が発光素子48、受光素子49からなる透過型センサで検出されると、さらに所定パルス数、搬送駆動モータ70の逆転駆動を継続して、搬送駆動モータ70の駆動を停止させる。これにより、カードCは、搬送方向後半部が搬送ローラ42、43に挟持状態で停止保持されるとともに、搬送方向先端部が搬送ローラ41に支持された状態となる(図5参照)。
【0076】
この間、CPUは、不図示のモータを駆動して、カートリッジ52のインクリボンRをリボン巻取リール55側へ巻き取り、発光素子58、受光素子59からなる透過型センサがインク層Bk(ブラック)の端部を検出した時点(受光素子59がインク層Bkによる発光素子58の発光が不透過状態から透過状態となったことを検出した時点)をトリガとして、所定ステップ数、不図示のモータをさらに駆動して、インク層Y(イエロー)の先端部がサーマルヘッド51とプラテンローラ44との位置に位置付けられるようにインクリボンRの頭出しを行う。
【0077】
次いで、CPUは、搬送駆動モータ70を正転駆動させ、カードCを、カード搬送路P1上をカード搬出口82側へ向けて搬送するとともに、発光素子48、受光素子49からなるカード検出センサによりカードCの先端位置を確認して、印刷部50によりカードCの表面に印刷記録データによる所期の文字、画像を印刷する。すなわち、カードCの表面にインクリボンR(インク層Yの部分)を介在させてサーマルヘッド51を押圧しながら、Y色の画像データ(RGBデータからY成分が色変換された画像データ)に従ってサーマルヘッド51の加熱素子を選択的に作動させる。これにより、カードCの表面には、インクリボンRに塗着されたY(イエロー)の熱転写インク成分が直接転写される。
【0078】
このとき、カードCは裏面側がプラテンローラ44に支持されるが、当初、搬送ローラ42、43で挟持搬送され、カード搬送路P1上をカード搬出口82側へ向けて搬送に従って、先端部側がニップローラ45、後端部側が搬送ローラ43で挟持搬送され、最後に、(後端部側をプラテンローラ44で裏面側を支持されながら)ニップローラ45により挟持搬送される。従って、搬送ローラ42、43およびニップローラ45は、印刷部50による印刷記録の際に、カードCを挟持し一定速度で搬送するキャプスタンローラとして機能する。CPUは、発光素子48、受光素子49からなるカード検出センサによりカードCの後端位置を確認して、さらに所定パルス数、搬送駆動モータ70の正転駆動を継続して、搬送駆動モータ70の駆動を停止させる。
【0079】
次に、CPUは、搬送駆動モータ70を逆転駆動させ、カードCをカード搬送路P1に沿ってカード供給口14側に逆搬送し、カードCを、搬送方向後半部が搬送ローラ42、43に挟持状態で停止保持され、搬送方向先半部が搬送ローラ41に支持された状態となると、搬送駆動モータ70の駆動を停止させる(図5参照)。この間、CPUは、不図示のモータを駆動して、カートリッジ52のインクリボンRをリボン巻取リール55側へ若干巻き取り、インク層M(マゼンタ)の先端部がサーマルヘッド51とプラテンローラ44との位置に位置付ける。次いで、CPUは、搬送駆動モータ70を正転駆動させ、カードCを、カード搬送路P1上をカード搬出口82側へ向けて搬送するとともに、印刷部50により、インクリボンRに塗着されたM(マゼンタ)の熱転写インク成分をカードCの表面に直接転写する。以下、同様にして、CPUは、印刷部50により、カードCの表面に、インクリボンRに塗着されたC(シアン)およびBk(ブラック)の熱転写インク成分をカードCの表面に直接転写する。これにより、カードCの表面には、Y、M、C、Bkによるカラー画像が形成される。
【0080】
次いで、CPUは、カードCをカード排出口23に向けて搬送する。すなわち、搬送駆動モータ70を逆転駆動させ、カードCをカード搬送路P1に沿ってカード供給口14側に逆搬送する。図4および図5に示すように、印刷部50によりカードCの印画面に多色の面順次印刷記録を行なう際に、カードCをカード供給口14側に逆搬送したとき(図5に示す状態)は、搬送ローラ41、42が略水平状のカード搬送路を形成するように位置付けられる第1の位置に維持されているが、所定の記録処理を終えたカードCがカード排出口23に向けて排出される際には、発光素子48、受光素子49からなるカード検出センサによりカード搬送路P1上を逆搬送されるカードCの後端を検出した時点、或いはカードCの後端を検出して数パルス経過した時点をトリガとして、CPUはステッピングモータ61を駆動制御して、移動機構60(ステッピングモータ61の駆動)により、搬送ローラ41、42を傾斜状のカード搬送路を形成するように位置付けられる第2の位置へと移動させる(図3、図6に示す状態)とともに、上述した供給ローラ11を回転駆動する図示を省略するモータを逆転駆動させ排出ローラ15を回転駆動させる。
【0081】
これにより、カードCはカード排出口23を介してカード収容部20に収容されるか、または、(カード収容部20にカードが満杯の場合は)カード放出口21から外部へ放出される。なお、図6に示すカード排出時においても、クリーニングローラ31は図5に示す状態と同じく、カード搬送路P1から離間したホーム位置である退避位置に位置付けられている。
【0082】
CPUは、カードCがカード収容部20に収容されたか、カード放出口21から放出された時点で、搬送駆動モータ70および図示を省略するモータの逆転駆動を停止させる。なお、CPUは、カードCのカード収容部20への排出動作が完了した所定のタイミングでステッピングモータ61を再度駆動(逆方向の回転駆動)して、搬送ローラ41、42を傾斜状のカード搬送路を形成するように位置付けられる第2の位置から略水平状のカード搬送路を形成するように位置付けられる第1の位置へと復帰させる。これにより、カードCへの記録処理が終了し、次のジョブがある場合は、以上の動作を繰り返す。
【0083】
(効果等)
次に、本実施形態のプリントシステム200の効果等について説明する。
【0084】
本実施形態のプリントシステム200では、上位装置100において、オブジェクト配置設定アプリケーションソフトウエアに従って生成された印刷オブジェクトを、インク選択ルーチン(図8)で示したように、印刷情報に応じて、熱昇華性インクで印刷するか、熱溶融性インクで印刷するかを選択し、プリンタ装置1において、印刷オブジェクトが選択されたインクに従ってカードに印刷される。すなわち、熱溶融性インク(Bk)で印刷すると不自然な印刷となってしまう場合に、カラー(Y、M、C)で印刷することでカードへの印刷品質を向上させる。プリントシステム200によれば、適正なインクの選択により、背景技術欄で述べたように、文字が小さい場合の潰れ等(a)〜(e)の不具合が改善され印刷品質を高めることができる。
【0085】
なお、本実施形態では、説明を分かりやすくするために、オブジェクト配置設定アプリケーションソフトウエアでテキストデータの印刷オブジェクトをイメージデータ(画像オブジェクト)に変換する例を示したが、本発明はこれに限らず、同じアプリケーションソフトウエアであるプリンタドライバで変換を行うようにしてもよい(プリンタドライバがオブジェクト配置設定アプリケーションソフトウエアを含むようにしてもよい。)。その際、プリンタドライバは必要に応じて(イメージデータのみを扱う場合)DDI関数のDrvTextOutによりイメージデータの他の属性情報で上述した印刷情報の一部を受け取るようにしてもよい。また、画像変換は上位装置100側で行わず、プリンタ装置1側で行うようにしてもよい。
【0086】
また、本実施形態では、印刷オブジェクトを構成する文字を全て同じフォントサイズとした例を示したが、テキストデータを構成する文字を一文字毎フォントサイズを指定できるようにしておき、ステップ214において、そのうちの少なくとも1文字が6pt未満かを判断するようにすれば、文字の潰れによる不具合に対して1文字毎に改善することができる。さらに、本実施形態では、文字のフォントサイズを6ptを基準とした例を示したが(ステップ214)、本発明はこれに限らず、カードとの印刷関係で品質が向上する任意のポイントを基準するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は文字の潰れ等の不具合を改善し印刷品質を高めることができるプリントシステムを提供するものであるため、プリントシステムの製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明が適用可能な実施形態のプリントシステムを構成するプリンタ装置の外観斜視図である。
【図2】プリンタ装置の、記録処理前のブランクカードが搬入された状態を示す概略断面図である。
【図3】プリンタ装置の、記録処理後のカードを排出する状態を示す概略断面図である。
【図4】搬送ローラの移動機構とカードクリーニング機構の動作を説明する部分拡大図であり、カードを受け入れる状態を示す。
【図5】搬送ローラの移動機構とカードクリーニング機構の動作を説明する部分拡大図であり、多色の面順次印刷をするときにカードを逆搬送した状態を示す。
【図6】搬送ローラの移動機構とカードクリーニング機構の動作を説明する部分拡大図であり、記録処理されたカードを排出する状態を示す。
【図7】プリンタ装置の制御部の概略構成を示すブロック図である。
【図8】本発明が適用可能な実施形態のプリントシステムを構成する上位装置のCPUが実行するインク選択ルーチンのフローチャートである。
【図9】オブジェクト配置設定アプリケーションソフトウエアにより、上位装置のモニタに表示される画面の一例を模式的に示す説明図である。
【図10】印刷情報の内容を示す説明図である。
【図11】5ptの文字を印刷した際の印刷状態を示す拡大図であり、(A)は熱溶融性インクで文字を印刷した場合の印刷状態、(B)は熱昇華性インクで文字を印刷した場合の印刷状態を示す。
【符号の説明】
【0089】
1 プリンタ装置(印刷部)
51 サーマルヘッド
100 上位装置(オブジェクト生成部、インク選択部)
102 入力装置(入力部)
200 プリントシステム
R インクリボン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱昇華性インクと熱溶融性インクとが塗布されたインクリボンを介してサーマルヘッドを圧接して媒体に印刷オブジェクトを印刷するプリントシステムにおいて、
テキストデータを入力するとともに該入力されたテキストデータに印刷情報を設定するための入力部と、
前記入力部で入力されたテキストデータおよび印刷情報から印刷オブジェクトを生成するオブジェクト生成部と、
前記オブジェクト生成部で生成された印刷オブジェクトを、前記印刷情報に応じて、前記熱昇華性インクで印刷するか、前記熱溶融性インクで印刷するかを選択するインク選択部と、
前記オブジェクト生成部で生成された印刷オブジェクトを前記インク選択部で選択されたインクに従って前記媒体に印刷する印刷部と、
を備えたプリントシステム。
【請求項2】
前記インク選択部は、前記オブジェクト生成部で生成された印刷オブジェクトの印刷情報に応じて既に設定されているインクの種類に対して、前記熱昇華性インクで印刷するか、前記熱溶融性インクで印刷するかの設定を変更することを特徴とする請求項1に記載のプリントシステム。
【請求項3】
前記オブジェクト生成部、前記インク選択部および前記印刷部のいずれかが前記印刷オブジェクトを画像オブジェクトに変換することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプリントシステム。
【請求項4】
前記印刷情報はフォントサイズの情報を含み、前記インク選択部は、前記印刷オブジェクトを構成するテキストデータのうち少なくとも1文字の前記フォントサイズが所定の大きさより小さいか否かを判断し、小さい場合に前記熱昇華性インクを選択することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプリントシステム。
【請求項5】
前記印刷情報は圧縮処理の有無を含み、前記インク選択部は、前記圧縮処理が有か否かを判断し、有の場合に前記熱昇華性インクを選択することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のプリントシステム。
【請求項6】
前記印刷情報はアンチエイリアス処理の有無を含み、前記インク選択部は、前記アンチエイリアス処理が有か否かを判断し、有の場合に前記熱昇華性インクを選択することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のプリントシステム。
【請求項7】
前記印刷情報は前記印刷オブジェクトの背景色の情報を含み、前記インク選択部は、前記背景色がモノクロか否かを判断し、モノクロの場合に前記熱昇華性インクを選択することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のプリントシステム。
【請求項8】
前記印刷情報は前記印刷オブジェクトの色および前記印刷オブジェクトの背景色の情報を含み、前記インク選択部は、前記印刷オブジェクトの色と前記印刷オブジェクトの背景色とが同色か否かを判断し、同色の場合に前記印刷オブジェクトの前記フォントサイズが前記所定の大きさより小さい場合であっても、あえて前記熱溶融性インクを選択することを特徴とする請求項4に記載のプリントシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−89300(P2010−89300A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259378(P2008−259378)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】