説明

プリント配線板の放熱構造

【課題】 プリント配線板の高密度実装化を実現でき,かつ,放熱性に優れ,かつ軽量のプリント配線板の放熱構造を提供する。
【解決手段】 プリント配線板7は,電子部品3を半田付けするための外層パターン111と,基板2の内部に設けた内部伝熱層13と,外層パターンと内部伝熱層との間を接続するバイアホール121とを有してなり,基板2を貫通する金属固定具14により機器筐体5に固定される。外層パターンと金属固定具及び機器筐体との間には電気絶縁材4を介設している。電子部品から発する熱を外層パターン,バイアホール,内部伝熱層及び金属固定具を介して,機器筐体へ放熱させる。内部伝熱層は基板側面に設けた断面スルーホール16に接続されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は,放熱性に優れたプリント配線板の放熱構造に関する。
【0002】
【従来技術】従来,プリント配線板としては,例えば,図4に示すごとく,基板91の表面に設けた外層パターン971の上に,電子部品92を固定したものがある。電子部品92は,電子部品92と接続された端子94を,外層パターン930と半田付けすることにより接続されている。
【0003】また,電子部品92は,電子部品92及び基板91を貫通する取付穴95にネジ961を挿入して,基板91の他方の表面からナット962により締結することにより,基板91の表面に固定されている。電子部品92から発する熱は,基板91の表面に設けた外層パターン971及び櫛歯状のヒートシンク972に伝えられ,主にヒートシンク972の先端部973から外方に放散される。
【0004】
【解決しようとする課題】ところで,上記従来のプリント配線板においては,電子部品92の電気使用量の増加に伴い,放熱性を高めることが要求されている。高い放熱性を得るには,ヒートシンク972を広面積に設ける必要がある。しかし,広面積に設けたヒートシンク972は,基板表面における外層パターンの形成可能面積が減少する。このため,ヒートシンクの広面積化は,基板表面における高密度配線,高密度実装化を妨げることとなる。
【0005】また,ヒートシンク972は櫛歯型であり,その先端部は基板91の上方に向かって突出している。そのため,ヒートシンクの厚みが櫛歯の高さ分だけ厚くなり,プリント配線板の全体厚みを大きくしている。また,ヒートシンク972は,一般に熱伝導性の良い銅が用いられるため,重量が大きく,プリント配線板の軽量化を妨げている。
【0006】本発明はかかる従来の問題点に鑑み,プリント配線板の高密度実装化を実現でき,かつ,放熱性に優れ,かつ軽量のプリント配線板の放熱構造を提供しようとするものである。
【0007】
【課題の解決手段】請求項1の発明は,電子部品を半田付けするための外層パターンと,基板の内部に設けた内部伝熱層と,上記外層パターンと上記内部伝熱層との間を接続するバイアホールとを有するプリント配線板,及び該上記基板を貫通する金属固定具により固定した機器筐体よりなると共に,上記外層パターンと上記金属固定具及び上記機器筐体との間には電気絶縁材を介設してなり,上記電子部品から発する熱を上記外層パターン,上記バイアホール,上記内部伝熱層及び上記金属固定具を介して,上記機器筐体へ放熱させるよう構成したことを特徴とするプリント配線板の放熱構造である。
【0008】本発明の作用及び効果について説明する。本発明のプリント配線板は,電子部品から発する熱を,外層パターンに伝え,その後バイアホールにより内部伝熱層に伝達する。内部伝熱層は,基板の内部において,基板を貫通する金属固定具に熱を伝える。金属固定具に伝えられた熱は,機器筐体に伝えられ,ここで放熱される。
【0009】また,機器筐体は,一般にプリント配線板よりも大きな表面積を有している。そのため,機器筐体は,筐体としての役割を果たすだけに留まらず,良好な放熱材として働き,効率よく熱を放散させる。従って,従来例に示したヒートシンク等の放熱部材が不要である。それ故,放熱部材に必要とされた面積分だけ,多くの実装面積を確保でき,外層パターン,電子部品等の高密度実装化が可能である。また,ヒートシンクを取り除いた分だけ,プリント配線板の軽量化及び小型化を図ることができる。
【0010】また,外層パターンと金属固定具との間,及び外層パターンと機器筐体との間には,電気絶縁材が介設されている。そのため,これらの間は,熱の授受だけが行われ,電気の絶縁は確保される。また,上記内部伝熱層は,熱伝導路としての役割だけでなく,例えば,接地用パターン,電源用パターン等,種々の役割を果たすことができる。
【0011】次に,請求項2の発明のように,上記内部伝熱層は,基板側面に設けた断面スルーホールに接続されていることが好ましい。これにより,内部伝熱層に伝えられた熱は,金属固定具及び機器筐体だけでなく,基板の側面に設けた断面スルーホールからも外方に放散させることができる。
【0012】また,上記金属固定具は,機器筐体に設けたネジ穴に螺着するネジであることが好ましい。これにより,プリント配線板を機器筐体に対して,容易に,かつ確実に固定することができる。なお,上記電気絶縁材としては,例えば,ウンモ等の熱伝導性の良い絶縁材等を用いることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の実施形態例にかかるプリント配線板の放熱構造について,図1〜図3を用いて説明する。本例のプリント配線板7は,図1に示すごとく,基板2の表面に設けられ電子部品3を半田付けするための外層パターン111と,基板2の内部に設けた内部伝熱層13と,外層パターン111と内部伝熱層13との間を接続するバイアホール121とを有している。プリント配線板7は,基板2を貫通する金属固定具14により,機器筐体5に固定されている。
【0014】外層パターン111と金属固定具14との間,及び外層パターン111と機器筐体5との間には,電気絶縁材4を介設している。電気絶縁材4はウンモ等の熱伝導性の良い絶縁材である。電子部品3から発する熱は,外層パターン111,バイアホール121,内部伝熱層13及び金属固定具14を介して,機器筐体5へ放熱させる。金属固定具14は,ネジであり,基板2を貫通する固定用穴125に挿通されて,機器筐体5に固定したナット51に螺着されている。
【0015】また,内部伝熱層13は,図3に示すごとく,バイアホール121,122と接続されている。一方,内部伝熱層13は,金属固定具14を挿入する固定用穴125との間は,絶縁されている。内部伝熱層13は,図3に示すごとく,基板2の内部のほぼ全面に形成されていた,ベタパターンである。内部伝熱層13は,基板2の側面に設けた断面スルーホール16に接続されている。
【0016】また,基板2の表面に設けた外層パターン111は,図2に示すごとく,電子部品3を搭載するとともに,基板2における金属固定具14の固定部分及び基板2の側面に設けた断面スルーホール16とも接続されている。
【0017】また,図1に示すごとく,プリント配線板7は,基板2における上記外層パターン111を設けた側とは反対側にも,外層パターン112を設けている。電子部品3に設けた端子36は,信号用の外層パターン113の端部に設けた部品端子パッド114と半田付けにより接続されている。
【0018】次に,本例の作用及び効果について説明する。本例のプリント配線板7は,図1に示すごとく,電子部品3から発する熱を,外層パターン111に伝え,その後バイアホール121,122により内部伝熱層13に伝達する。内部伝熱層13は,基板2の内部において,基板2を貫通する金属固定具14に熱を伝える。金属固定具14に伝えられた熱は,機器筐体5に伝えられ,ここで放熱される。
【0019】また,機器筐体5は,一般にプリント配線板7よりも大きな表面積を有している。そのため,機器筐体5は,筐体としての役割を果たすだけに留まらず,良好な放熱材として働き,効率よく熱を放散させる。このように,本例のプリント配線板の放熱構造によれば,電子部品3から発する熱を効率よく放熱させることができる。
【0020】従って,従来例に示したヒートシンク等の放熱部材が不要である。それ故,放熱部材に必要とされた面積分だけ,多くの実装面積を確保でき,外層パターン,電子部品等の高密度実装化が可能である。また,ヒートシンクを取り除いた分だけ,プリント配線板の軽量化及び小型化を図ることができる。
【0021】また,内部伝熱層13は,図3に示すごとく,ベタパターンであるため,伝熱面積が大きく,伝熱性に優れている。また,外層パターン111と金属固定具14との間,及び外層パターン111と機器筐体5との間には,電気絶縁材4が介設されている。そのため,これらの間は,熱の授受だけが行われ,電気の絶縁は確保される。また,内部伝熱層13は,基板2の側面に設けた断面スルーホール16に接続されている。そのため,内部伝熱層13に伝えられた熱は,金属固定具及び機器筐体だけでなく,断面スルーホール16からも外方に放散させることができる。
【0022】
【発明の効果】本発明によれば,プリント配線板の高密度実装化を実現でき,かつ,放熱性に優れ,かつ軽量のプリント配線板の放熱構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図2に示すA−A矢視線に沿って切断したプリント配線板の断面図。
【図2】実施形態例におけるプリント配線板の平面図。
【図3】図1に示すB−B矢視線に沿って切断したプリント配線板の断面図。
【図4】従来例におけるプリント配線板の断面図。
【符号の説明】
111〜113...外層パターン,
121,122...バイアホール,
125...取付穴,
13...内部伝熱層,
131...内層パターン,
14...金属固定具,
16...断面スルーホール,
2...基板,
3...電子部品,
4...電気絶縁材,
5...機器筐体,
7...プリント配線板,

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電子部品を半田付けするための外層パターンと,基板の内部に設けた内部伝熱層と,上記外層パターンと上記内部伝熱層との間を接続するバイアホールとを有するプリント配線板,及び該上記基板を貫通する金属固定具により固定した機器筐体よりなると共に,上記外層パターンと上記金属固定具及び上記機器筐体との間には電気絶縁材を介設してなり,上記電子部品から発する熱を上記外層パターン,上記バイアホール,上記内部伝熱層及び上記金属固定具を介して,上記機器筐体へ放熱させるよう構成したことを特徴とするプリント配線板の放熱構造。
【請求項2】 請求項1において,上記内部伝熱層は,基板側面に設けた断面スルーホールに接続されていることを特徴とするプリント配線板の放熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平10−93249
【公開日】平成10年(1998)4月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−265562
【出願日】平成8年(1996)9月13日
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)