説明

プルオープンキャップ

【課題】開口予定部を区画するスコアを薄くすることなく、開口予定部を容易に引きちぎることができるプルオープンキャップを提供する。
【解決手段】キャップ本体2の天壁5に、スコア6sによって区画された開口予定部6と、該開口予定部6の上面6aに立設された支柱8によって支持された把持部7とを備えたプルオープンキャップ1において、前記開口予定部6の上面6aに、前記支柱8の基部8cに隣接して形成された溝部9を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器に装着されて用いられるキャップであって、その本体の天壁にスコアによって区画された開口予定部を引きちぎるための把持部を備えたプルオープン式のキャップ(以下、プルオープンキャップという。)に関する。
【背景技術】
【0002】
プルオープンキャップは、古くから広く知られているが、一般に、キャップ本体に、容器の口部を覆う天壁と、その天壁に形成されたスコア(弱化部)によって区画された開口予定部を引きちぎるための把持部(例えば、プルリング等。)とを備えており、天壁によって容器内容物を確実に密封保護することができつつも、把持部によって天壁の開口予定部を引きちぎることで天壁を開口することができるものとなっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
プルオープンキャップにおいて、開口予定部は、ユーザが天壁を容易に開口することができるように引きちぎり易いものであることが好ましい。プルオープンキャップの開口予定部を引きちぎり易くするには、先ずはスコアをより薄くすることが考えられる。しかしながら、プルオープンキャップの場合、流通段階を含め、ユーザが天壁を開口させるまでは容器内容物を確実に密封保護することができるようにするためにスコアには意図しない破断の発生を防ぐことのできる強度が必要であり、スコアをより薄くすると、その必要な強度が得られなくなってしまう可能性がある。又、スコアをより薄くする場合、成形時にピンホールが発生する可能性を高めてしまうという成形上の問題もある。
【0004】
実公平6−44812号公報(特許文献2)は、注出口についてのものではあるが、封鎖面部の下面の位置であって、プル主柱のプリング側の基部の位置に、プルリングの引っ張り方向と直交する方向に開口用の薄肉部よりもやや厚い薄肉部を有する技術が開示されている。この技術によれば、プルリングを引っ張る際に、その引っ張り方向と直交する薄肉部によって、プル主柱の基部の上面側が圧縮状態に、反対の下面側が引っ張り状態となって、プル主柱が引っ張り方向に傾倒し、封鎖面部の下面側の引っ張り方向と直交する薄肉部が開くことで、開口用の薄肉部が引っ張られて、その破断が補助されることとなる。従って、開口用の薄肉部をより薄くしなくても、引きちぎり易くすることができると解される。しかしながら、このような技術は、プル主柱が傾倒し、基部の上面側が圧縮状態になるものであり、加えて下面側の薄肉部が開くことによって、上面側の圧縮状態はより強められることとなる。このため、開口用の薄肉部に破断が生じ易くはなるものの、プルリングを引っ張る際に、圧縮状態となったプル支柱の基部が抵抗となり、結果として封鎖面部の引きちぎりが困難となる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭59−121357号公報
【特許文献2】実公平6−44812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、前記の事情に鑑み、開口予定部を区画するスコアを薄くすることなく、開口予定部を容易に引きちぎることができるプルオープンキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、キャップ本体の天壁に、スコアによって区画された開口予定部と、該開口予定部の上面に立設された支柱によって支持された把持部とを備えたプルオープンキャップにおいて、前記開口予定部の上面に、前記支柱の基部に隣接して形成された溝部を備えたことを特徴とするプルオープンキャップである。
【0008】
又、この発明は、前記溝部は前記支柱の基部内側面と上下に連続して形成されることを特徴とするプルオープンキャップである。
【0009】
又、この発明は、前記支柱は内側面に補強用リブを有し、前記溝部は該補強用リブの内側面と上下に連続して形成されることを特徴とするプルオープンキャップである。
【0010】
又、この発明は、前記溝部の内面は曲面状に形成されていることを特徴とするプルオープンキャップである。
【0011】
又、この発明は、前記溝部は、平面視において、前記スコアのラインに所定の間隔を置いて沿うように延在することを特徴とするプルオープンキャップである。
【0012】
又、この発明は、前記溝部は、平面視において、略弧状に延在することを特徴とするプルオープンキャップである。
【0013】
又、この発明は、前記溝部は、平面視において、前記補強リブを囲むように延在する部分を含むことを特徴とするプルオープンキャップである。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、開口予定部の上面に、把持部を支持する支柱の基部に隣接して形成された溝部を備えていることで、ユーザが把持部を把持して開口予定部を引きちぎる際に、支柱の基部に圧縮状態が生じ難く、支柱の基部の圧縮による抵抗を受けないようにしながら、把持部を引っ張ることができる。又、溝部を介して開口予定部が変形しやすくなっているために、把持部を引っ張るのに追従させて、支柱の基部の周囲部分を変形させることができ、それによりスコアの破断を補助することができる。
【0015】
従って、この発明は、開口予定部を区画するスコアを薄くすることなく、開口予定部を容易に引きちぎることができるプルオープンキャップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明のプルオープンキャップの一実施形態を示し、キャップ本体の平面図である。
【図2】同上を示し、図1のA−A線断面図である。
【図3】この発明のプルオープンキャップの他の実施形態を示し、キャップ本体の平面図である。
【図4】同上を示し、図3のB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明のプルオープンキャップの実施形態を所謂スクリューキャップに適用する場合を例に図面を参照しつつ説明する。尚、この発明は、プルオープンキャップであればヒンジキャップにも適用することができる。
【0018】
[第1の実施形態]
先ず、図1及び図2に基づき、第1の実施形態のプルオープンキャップ1−1について説明する。尚、図1及び図2は、キャップ本体のみを示したものとなっており、キャップ本体には図示しない上蓋が螺着される。
【0019】
キャップ本体2は、容器口部との嵌着部を構成する外筒部3と内筒部4、容器口部を上面から封止する天壁5が設けられている。
【0020】
天壁5には、注出用の開口部となる開口予定部6がスコア6sによって区画されて設けられている。スコア6sは、本実施形態においては、天壁5の下面5bに円環状に延在する凹条によって薄肉に形成されたものとなっており、円形の開口予定部を区画するものとなっている。
【0021】
開口予定部6の上面6aには、スコア6sの引きちぎり手段を構成するリング状の把持部7を支持する支柱8が立設され、支柱8の外側面8bがスコア6sの直上に位置するよう配置されており、把持部7を引っ張り、開口予定部6の上面6aに形成されたガイド用矢印A1方向(開口予定部6の中心6c方向)へ順次スコア6sを破断させ、開口予定部6を取り去り、開口を形成することができるようになっている。
【0022】
そして、本実施形態のプルリングキャップ1−1は、開口予定部6の上面6aに、支柱8の基部8cに隣接するように形成された溝部9を備えている。
【0023】
この溝部9は、詳細には、支柱8の基部8cの内側に設けられ、ユーザが把持部7を把持して引っ張る際に、支柱8の基部8cに圧縮状態が生じ難くなっており、支柱8の基部8cの圧縮による抵抗を受けないようにしながら把持部7を引っ張ることができ、又、溝部9を介して開口予定部6が変形しやすくなっているために、把持部7を引っ張るのに追従させて、支柱8の基部8cの周囲部分を変形させることができ、それによりスコアの破断6sを補助することができるものとなっている。
【0024】
尚、本実施の形態における溝部9は、より詳細には次のように構成されたものとなっている。
【0025】
即ち、図2からも明らかなように、溝部9は開口予定部6の上面6aに形成された凹部であって、その内面9cが支柱8の内側面8aと上下に連続したものとなっている。これにより、支柱8の基部8cと、その内側に設けられた溝部9との間に段差が生じず、把持部7を引っ張る際の抵抗を有効に回避することができる。尚、図示はしないが、支柱8の基部8cと溝部9は、把持部7を引っ張る際の抵抗を低減できるものであれば、その範囲において離間させることもできる。
【0026】
又、溝部9の内面9cは曲面状に形成されたものとなって、これにより、溝部9自体に破断が生じ難いようになっている。
【0027】
又、溝部9は、スコア6sのラインに一定の間隔を置いて沿うように形成されたものとなっており、具体的には、平面視で、円形のスコア6sに沿って略弧状をなすように形成されたものとなっている。これにより、ユーザが把持部7を把持して引っ張る際に、開口予定部6に変形が生じやすくなり、スコア6sの破断を効率的に補助することができるようになっている。尚、溝部9は、上記の様な円形のスコアのみに限定されず、楕円形や菱形等、種々のスコアによって区画された開口予定部に適用することができる。このような場合、溝部9はスコア6sに沿って形成されておればよく、必ずしも弧状を形成していなくてもよい。
【0028】
又、溝部9は、その長手方向両端位置9a、9bと、開口予定部6の中心6c位置とによって決定される中心角θが30度以上(図示の例では45度)になるように、長手方向の延在範囲を有するものとなっている。これによって、スコア6sの破断を効率的に補助することができるようになっている。
【0029】
又、溝部9は、その凹部の深さが天壁5の厚さの30%乃至70%の範囲(図示の例では50%)で形成されたものとなっている。即ち、この範囲を超えるものであれば、溝部9により容器口部を封止する天壁5のシール性が低下し、さらには溝部9自体に破断が生じる場合があり、又、この範囲を下回るものであると、溝部9を設けたことによる開口予定部6の変形が不十分なものとなり、充分な効果が得られない場合がある。
【0030】
[第2の実施形態]
次に、図3及び図4に基づき、第2の実施形態のプルオープンキャップ1−2について説明する。尚、第2の実施形態の第1の実施形態との相違は、支柱8が内側面8aに補強用リブ8dを有している点と、溝部9が、平面視で、補強用リブ8dを囲むように延在する部分9dを含んでいる点であり、両者間で同様の構成については同一図面を付してその説明を省略する。
【0031】
プルオープンキャップ1−2は、支柱8の内側面8aにそこから内側に突出するように設けられた補強用リブ8dを有している。これにより、ユーザが把持部7を把持して開口予定部6を引きちぎる際に、支柱8自体に破断が生じるのを防ぐことができるようになっている。
【0032】
そして、プルオープンキャップ1−2は、溝部9が、平面視で、全体としては、第1の実施形態の溝部9と同様略弧状をなすものではあるが、補強用リブ8dの内側に隣接する箇所に、補強用リブ8dを囲むようにコ字状に延在する部分9dを有している。尚、本実施の形態において、溝部9の部分9dにおける内面9eは、補強リブ8dの内側面8eと上下に連続するように形成されたものとなっている。
【0033】
プルオープンキャップ1−2は、前記の通り、支柱8が内側面8aに補強リブ8dを有するものであっても、溝部9が補強用リブ8dを囲むように延在する部分9dを有していることで、第1の実施形態のプルオープンキャップ1−1と同様、ユーザが把持部7を把持して開口予定部6を引きちぎる際に、支柱8の基部8cに圧縮状態が生じ難くなっており、支柱8の基部8cの圧縮による抵抗を受けないようにしながら、把持部7を引っ張ることができ、又、溝部9を介して開口予定部6が変形しやすくなっているために、把持部7を引っ張るのに追従させて、支柱8の基部8cの周囲部分を変形させることができ、それによりスコアの破断6sを補助することができるものとなっている。
【0034】
尚、本実施の形態において、溝部9は補強用リブ8dの側面を囲むようにコ字状に延在する部分9dを有するものとしているが、部分9dの形状は補強用リブ8dの側面を囲むことができるような形状であれば、他の形状にしてもよいことは勿論である。
【0035】
[実験例]
最後に、実験例について説明する。実験には、本件発明のプルオープンキャップを実施例1として、開口予定部の上面に支柱の基部に隣接して形成された溝部を備えたキャップ(第1の実施形態の構成のもの)を用い、また比較例1として、通常のプルオープンキャップを想定した開口予定部に溝部等、何ら加工を施していないキャップを用い、さらに比較例2として、前記の特許文献2の注出口の技術を想定して、開口予定部の下面に把持部の引っ張り方向に直交する溝部を有しているものを用いた。そして、それぞれ開封に要する力を評価するために、リング状把持部にフックを掛けて、鉛直方向(90°方向)、および斜め45°方向に引っ張り、スコアが破断するときの最大強度を測定した。尚、測定には、株式会社島津製作所製オートグラフ(登録商標)を用いた。
【0036】
実験結果は、表1および表2に示す通りであり、荷重のピークをそれぞれP1〜3で示している。表1で示す90°方向の引き上げ試験では、実施例1と比較例2はピークの値が小さく、それぞれ、何ら加工を施していない比較例1に比べて、開封時に必要な力が低減していることが確認できる。次に、実施例1と比較例2を比較すると、ピークの値はほぼ同じ値を示しているものの、ピークを超えてから(即ち、スコアに破断が生じた後)は、グラフの波形から明らかなように、比較例2は実施例1に比べて、その下がり幅が小さく、抵抗が大きいことが分かる。
【0037】
次に、表2で示す斜め45°方向の引っ張り試験では、比較例1および比較例2がほぼ同じピーク値であるのに対して、実施例1のみピークの値が小さく、開封時に要する力が低減していることが分かる。
【0038】
以上から、実施例1は、90°方向、斜め45°方向の引っ張り、いずれの場合においても開封に要する力が低減されており、効果を有することが確認できた。
【0039】
尚、上記実験例では、キャップの中心軸に対して天壁を略水平に設けたキャップを使用したが、本件発明の実施形態においては、天壁に傾斜部分を設け、ユーザが把持部を鉛直方向(90°方向)に引っ張った際に、その引っ張り力が斜め上方向(45°方向)に働くように形成したものとしてもよい。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【符号の説明】
【0042】
1−1〜1−2:プルオープンキャップ 2:キャップ本体 3:外筒部
4:内筒部 5:天壁 6:開口予定部 6a:上面 6c:中心
6s:スコア 7:把持部 8:支柱 8a:内側面 8b:外側面
8c:基部 8d:補強用リブ 8e:内側面 9:溝部 9a:端
9b:端 9c:内面 9d:部分 9e:内面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップ本体の天壁に、スコアによって区画された開口予定部と、該開口予定部の上面に立設された支柱によって支持された把持部とを備えたプルオープンキャップにおいて、
前記開口予定部の上面に、前記支柱の基部に隣接して形成された溝部を備えたことを特徴とするプルオープンキャップ。
【請求項2】
前記溝部は前記支柱の基部内側面と上下に連続して形成されることを特徴とする請求項1記載のプルオープンキャップ。
【請求項3】
前記支柱は内側面に補強用リブを有し、前記溝部は該補強用リブの内側面と上下に連続して形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のプルオープンキャップ。
【請求項4】
前記溝部の内面は曲面状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか記載のプルオープンキャップ。
【請求項5】
前記溝部は、平面視において、前記スコアのラインに所定の間隔を置いて沿うように延在することを特徴とする請求項1乃至4の何れか記載のプルオープンキャップ。
【請求項6】
前記溝部は、平面視において、略弧状に延在することを特徴とする請求項1乃至5の何れか記載のプルオープンキャップ。
【請求項7】
前記溝部は、平面視において、前記補強リブを囲むように延在する部分を含むことを特徴とする請求項3乃至6の何れか記載のプルオープンキャップ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−63784(P2013−63784A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201879(P2011−201879)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000175397)三笠産業株式会社 (71)
【Fターム(参考)】