説明

プレコート型シール接着剤およびセルフロッキング螺合部材

【目的】
優れた緩み止め性能とシール性を発揮し、かつ、タッピングねじに使用した場合には締め込み時に発生する削粉を低減させ、発生した削粉を脱落させることがないもの。
【構成】
(a)マイクロカプセル含有の反応性樹脂、(b)高分子PTFE樹脂粉末と低分子PTFE樹脂粉末とが4:6〜6:4で混合されたPTFE樹脂粉末、からなるプレコート型シール接着剤。また、(a)成分はマイクロカプセル内に(a−1)成分が、マイクロカプセル外に(a−2)成分が存在するものであり、(a−1)と(a−2)成分は接触することにより反応し、重合または硬化するものである。好ましい配合量は、前記(a)成分100重量部に対して、前記(b)成分が40〜100重量部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ、ボルト、ナット等のねじ山をもつ部材(以下、螺合部材という)にあらかじめ塗布することにより、緩み止めや洩れ止め効果を発現させることを可能としたプレコート型シール接着剤に関する。特にタッピングねじのねじ山にあらかじめ塗布することにより、緩み止めや洩れ止め効果を発現させると共に、締め込み時に発生する削粉を低減しかつ脱落を防止するプレコート型シール接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
螺合部材の緩み止めや洩れ止めを行うことを目的として、マイクロカプセルを含む接着剤組成物を螺合部材表面にプレコートしたプレコート型シール接着剤は既に広く用いられている。これはねじ締め込み時の応力により、マイクロカプセルを破壊し、マイクロカプセル内に内包された各種反応性成分がマイクロカプセル外の成分と反応し、接着性やシール性を発現するものである。
【0003】
このように、あらかじめマイクロカプセル型シール接着剤をプレコートした螺合部材(以下、セルフロッキング螺合部材という)は、ねじ締結時に接着剤の塗布の必要がなく、締め込むだけで緩み止め及び洩れ止め効果が発現する。この技術は例えば、特許文献1などですでに公知の技術である。
【特許文献1】特開平4−145209号公報
【0004】
ところで、電子機器や自動車部品、建築材料において、ねじ穴にねじ山を形成しないで、ねじ自体でねじ山を刻みながら締め付けていくタッピングねじが採用されている箇所が存在する。タッピングねじはねじ山を刻んで締め込まれるため、締め込み時に削粉が発生し、作業環境を汚したり、製品内部に入り込んだりする。電子機器の金属筐体の締結にタッピングねじが使用された場合、金属の削粉が発生し、これが機器内部の基板や端子に接触すると回路がショートし機器を破壊したり、火災の発生のおそれがある。
【0005】
よって、締め込み時に削粉が発生しないタッピングねじが望まれていた。特許文献2、特許文献3にはマイクロカプセルの内部に吸着液または潤滑液を封入したものが提案されている。特許文献2では、締め込み時の応力でマイクロカプセルを破壊し、液状物である吸着液があふれ出るために削粉を濡らし、ねじの周辺に削粉の塊を形成し、脱落を防ぐというものである。また、特許文献3は締め込み時の応力でマイクロカプセルを破壊し、液状物である潤滑液があふれ出て、ねじの削り面の摩擦抵抗を低減させ削粉の発生を抑制するものである。しかしながら、特許文献2、特許文献3のマイクロカプセル内の液成分は低粘度で未反応性の液体、すなわち可塑剤などであり、締め込み後にシール性や接着性を発現するものではなく、削粉を発生させないという作用効果の他にはシール性や緩み止め防止が発現するものではない。さらに、カプセル内に内包されている液体は長時間の流動性を有する液体であるため、ねじ部材にプレコートされた被膜がいつまでも湿った状態であり、逆に緩みやすくなるおそれがある。
【特許文献2】特開2004−36733号公報
【特許文献3】特開2002−295430号公報
【0006】
そもそも特許文献1でもマイクロカプセル内に重合性モノマーや硬化剤などの低粘度液体を封入しているため締め込み時にプレコート被膜が湿り、摩擦を低減させ削粉を抑制したり発生した削粉を吸着する作用もあるが、多量の削粉を抑制、吸着することはできない。カプセル内の液状成分の量を増加させることにより改善は可能であるが、硬化後のシール性や接着性が低下してしまうものであった。このように従来のものでは、削粉の抑制と、シール性・接着性の両方を満たすものは存在しなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的はかかる従来技術の課題を解決することにあり、締め込み時に下穴にめねじを形成するものでありながら、めねじ形成時の削粉の脱落、飛散を抑止することができると共に、緩み止め、漏れ止め効果に優れたプレコート型シール接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち本発明のプレコート型シール接着剤は、タッピングねじの緩み止めや洩れ止めを行うと共に削粉の発生を減少させかつ、削粉の脱落防止を行うことができるものであり、(a)マイクロカプセル含有の反応性樹脂、(b)高分子PTFE樹脂粉末と低分子PTFE樹脂粉末とが4:6〜6:4で混合されたPTFE樹脂粉末からなることを特徴とするプレコート型シール接着剤である。また、前記プレコート型シール接着剤がセルフタッピングねじにプレコートされたことを特徴とするセルフロッキング螺合部材に関するものである。
【0009】
以下、本発明の詳細を説明する。まず、本発明に使用される(a)マイクロカプセル含有の反応性樹脂は、マイクロカプセルが破壊されるとマイクロカプセル内の(a−1)成分とマイクロカプセル外の(a−2)成分が接触し、反応が開始される成分である。マイクロカプセルの破壊は物理的な応力により破壊されるものであり、ねじ、ボルトの締め込み時の応力で破壊するものである。ここで、(a−1)成分と(a−2)成分は説明の都合上、マイクロカプセルに内包される方を(a−1)とし、マイクロカプセル内に内包されない方を(a−2)としたが、本趣旨は(a−1)成分と(a−2)成分をマイクロカプセルにより隔離しておくことが目的であり、本来(a−1)(a−2)成分のどちらがマイクロカプセルに内包されてもよく、また、両方が別々のマイクロカプセルに内包されてもよい。ただし、どちらか一方をマイクロカプセル化すれば充分なので、通常両方する必要はない。
【0010】
(a−1)(a−2)成分としては、2液混合硬化の形態をとることのできる硬化性成分(即ち本剤、硬化剤成分)を接触させることにより反応し、硬化するものであればいずれでもよく、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、シリコーン樹脂系のものが挙げられるが、反応性、硬化物の物性等の点からエポキシ樹脂系、アクリル樹脂系のものが好ましい。
【0011】
エポキシ樹脂系の場合、(a−1)成分としては、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型の如きビスフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、ポリアルキレングリコール型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらを、単独もしくは二種類以上混合して用いることができる。これらのうち接着性の点からビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましく用いられる。
【0012】
エポキシ樹脂系の場合の、(a−2)成分としては、例えば、鎖状脂肪族ポリアミン、環状脂肪族ポリアミン、脂肪芳香族アミン、芳香族アミン、アミンアダクト等の変性アミン、ポリアミド樹脂、イミダゾール類、メルカプタン類、酸無水物等が挙げられ、これらを単独もしくは二種類以上混合して用いることができる。
【0013】
アクリル樹脂系の場合、(a−1)成分としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ(メタ)アクリルレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート等のモノマー成分や、ポリエーテル変性ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル変性ウレタン(メタ)アクリレート、ポリブタジエン変性(メタ)アクリレート、ポリブタジエン変性ウレタン(メタ)アクリレート、ポリカーボネート変性ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等のオリゴマー成分が挙げられ、これらを単独もしくは二種類以上混合して用いることができる。
【0014】
アクリル樹脂系の場合の(a−2)成分としては、ハイドロパーオキサイド、アルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ケトンパーオキサイド等が、より具体的にはクメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、パーメンタンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンバーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等の有機過酸化物が挙げられ、これらを単独もしくは二種類以上混合して用いることができる。
【0015】
前述の通り、(a−1)成分と(a−2)成分はお互いに逆にすることができ、例えば、(a−1)成分としてアミン化合物、(a−2)成分としてエポキシ樹脂としても何の支障もない。
【0016】
また、(a−1)(a−2)成分の他に、反応を活性化する活性剤を添加することができる。これらの例として、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリアリルアミン、エチレンジエタノールアミン等のアミン類、エチレンチオ尿素、モノベンゾイルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素等のチオ尿素誘導体、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン等のアニリン誘導体、N,N−ジメチル−P−トルイジン、N,N−ジエチル−P−トルイジン等のトルイジン誘導体、L−アスコルビン酸、有機金属塩、サッカリンメルカプタン化合物等が挙げられ、これらを単独もしくは二種類以上混合して用いることができる。これらは(a−1)成分とともにマイクロカプセル内に存在させても、(a−2)成分とともにマイクロカプセル外に存在させても良い。ただし、保存安定性の悪い組み合わせは避けるべきである。
【0017】
本発明に使用されるマイクロカプセルの製法については特に限定されず、例えば、コアセルベーション法、不溶化反応法、界面重合法、インサイチュ法、液中乾燥法、スプレードライ法、流動床法等の方法で適宜製造される。また、マイクロカプセルの壁物質の材質としてはゼラチン、アラビアゴム、アルギン酸ソーダ、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルアルコール、アポリアクリルアミド、メチルセルロース、ポリエーテル、ポリアミド、ポリ尿素、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリスチレン等が使用できる。
【0018】
また、マイクロカプセルの粒径に関しては特に限定されないが、適用する螺合部材のサイズによって適宜選択することが望ましい。例えば、M6ねじに対しては、数ミクロンから300μm程度の粒径のマイクロカプセルが良好に採用される。
【0019】
(b)成分は本発明の特徴的成分である。(b)成分は高分子PTFE樹脂粉末と低分子PTFE樹脂粉末とが4:6〜6:4で混合されたPTFE樹脂粉末である。ここで、前記比率は重量比である。
【0020】
高分子PTFE樹脂はポリテトラフルオロエチレンであり、テトラフルオロエチレンの重合体である。高分子PTFE樹脂粉末は懸濁重合や乳化重合で重合させたポリテトラフルオロエチレンを粉末にしたものであり、分子量は20万〜1000万程度である。また、粉末の平均粒度は20〜600メッシュのものが好ましい。このようなPTFE樹脂粉末は市販のものを使用することができ、例えば、ダイキン工業社製のポリフロンM12、ポリフロンM15、ポリフロンM31、ポリフロンM25、ポリフロンM24、ポリフロンF104、ポリフロンF302、ポリフロンF201、ポリフロンF203、三井デュポンフロロケミカル社製のテフロン7J、テフロン7AJ、テフロン820J、テフロン914J、テフロン6J、テフロン62J、テフロン6CJ、旭硝子社製のフルオンG163、フルオンG140、フルオン307、フルオンG307、フルオンG201、フルオンCD1、フルオンCD123、フルオンCD076が挙げられる。
【0021】
これらは通常、圧縮成型用、ラム押出、ペースト押出などの成型法により成形される材料として使用されるが、本発明では粉体のまま本発明のその他の組成物に混合される。
【0022】
低分子PTFE樹脂粉末は重合法、放射線熱分解法、熱分解法などによって製造される分子量1000〜10万のPTFEを造粒した粉末である。このような低分子PTFE樹脂粉末は市販のものを使用することができ、例えば、ダイキン工業社製のルブロンL2、ルブロンL5、ルブロンLD1、ルブロンLD100、ルブロンLA、三井デュポンフロロケミカル社製のTLP−10、TLP−10F−1、旭硝子社製のフルオンL169、フルオンL170、フルオンL171が挙げられる。低分子PTFEの粒径は特に限定されないが、市販されている低分子PTFE樹脂粉末を使用するのが簡便であり好ましいため平均粒径2〜30μmが好ましい。
【0023】
(b)成分は、高分子PTFE樹脂粉末と低分子PTFE樹脂粉末の重量比で4:6〜6:4で混合される。高分子PTFE樹脂粉末と低分子PTFE樹脂粉末の配合割合が上記以外の場合は、タッピング時に発生する削粉の減少効果が得られなかったり、シール性の低下が発生する。
【0024】
また、(a)成分100重量部に対して(b)成分は、40〜100重量部配合されるのが好ましい。この範囲外でも削粉の抑制効果はあるが、100重量部より多いと組成物の粘度が高くなり、螺合時に十分な濡れ性が得られず接着強度性が低下する。40重量部より少ないと削粉の抑制効果が減少してしまう。よって、所望する効果によっては40〜100重量部以外の配合でも対応可能であるが、本発明の効果を最大限に発揮させるためにはこの範囲であることが好ましい。
【0025】
なお、上述の(b)成分のフッ素樹脂粉末は(a−1)(a−2)のうちの、いずれに分散されていてもよいが、配合のしやすさから、通常(a−2)成分といっしょに分散される。
【0026】
また、(a)成分はねじに塗布された状態では半液状であり、接触によりはがれやすいものであるため、ねじ、ボルトに皮膜として形成するためにバインダー成分を用いるのが好ましい。バインダー成分としては、ポリアセタール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリルレート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、メラミン、ポリウレタン、ブチルゴム、ポリアミド等のポリマーが使用できる。
【0027】
上述した各種成分を混合した組成物は有機溶剤や水などの溶媒に分散させて塗布することができる。塗布した後、乾燥させることにより、乾燥皮膜を得ることができる。
【0028】
本発明の組成物の調製方法としては、反応性接着剤とPTFE樹脂粉末を均一に混合撹拌できる方法であればどのような方法でもよく、公知の混合方法を採用できる。
【0029】
本発明は上述の必須成分以外にも必要に応じて、充填剤、顔料、防錆剤、安定剤、タック除去剤等を適宜配合しうることができる。
【0030】
本発明のプレコート型シール接着剤の螺合部材への塗布は、ディッピング、刷毛塗り、ノズルからの吐出塗布等の適当な方法で行われる。その後、乾燥等を経て、螺合部材の螺合面にプレコート膜が形成される。なお、本発明におけるプレコート型シール接着剤は必ずしも螺合面の全面に塗布する必要はなく、部分的に塗布してもよい。
【発明の効果】
【0031】
このようにして得られたプレコート型シール接着剤は、優れた緩み止め性能と漏れ止め効果(シール性)を発揮し、かつ、タッピングねじに使用した場合には締め込み時に発生する削粉を低減させ、発生した削粉を脱落させることがない。このため、作業環境を汚したり、製品内に削粉が発生することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明のプレコート型シール接着剤の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0033】
使用成分:使用した成分は以下の通りである。
(a)成分:(a−1)成分として、エピコート828(油化シェルエポキシ社製 ビスA型エポキシ樹脂 エポキシ当量190)、ビスコート540(大阪有機化学工業社製 エポキシアクリレート)、DMPT(N,N−ジメチルパラトルイジン)(アクリル樹脂硬化用活性剤)、(a−2)成分として、芳香族ジアミン(三菱瓦斯化学社製 エポキシ樹脂用硬化剤)、ベンゾイルパーオキサイド(日本油脂社製 アクリル樹脂硬化用開始剤(有機過酸化物))、を使用した。
(b)成分:高分子PTFE樹脂粉末として、ポリフロンF104(ダイキン工業社製PTFEファインパウダー)、テフロン7J(三井デュポンフロロケミカル社製PTFEモールディングパウダー)、低分子PTFE樹脂粉末としてTLP−10(三井デュポンフロロケミカル製低分子PTFEパウダー平均粒径24μm)、ルブロンL2(ダイキン工業社製低分子PTFEパウダー平均粒径16μm)を使用した。
その他:プレコート膜を形成するためのバインダー成分としてダイヤナールBR−100(三菱レーヨン社製 ポリメチルメタクリレートパウダー)、配合物を溶解または分散する為の溶媒としてトルエン(大伸化学社製)を使用した。比較成分としてシリコーン樹脂粉末のトレフィルR−900(東レ・ダウコーニングシリコーン社製)を使用した。
【0034】
上述の(a−1)成分をマイクロカプセル内に封入する工程はゼラチンおよびアラビアゴムによる複合コアセルベーション法を採用し、以下のようにして製造した。すなわち、水酸化ナトリウムによりpH9とした50℃の温水300重量部にゼラチンおよびアラビアゴムを各10重量部ずつ溶解させた後、攪拌しながら、内包せしめる物質((a−1)成分)を80重量部投入し、エマルジョンとした。その後、50℃の温水400重量部を投入し、50重量%の酢酸水溶液を徐々に添加し、pHを4まで下げた。次に、液温を、ごくゆっくりと5℃まで下げ、該エマルジョンに、ゼラチン、アラビアゴムによるカプセル壁膜を形成した。壁膜を硬化させるために、10重量部のグルタルアルデヒドを投入し、水酸化ナトリウムにより系のpHを8とした。そのまま、1昼夜放置し、壁膜を硬化させた後、水洗、脱水、乾燥により、マイクロカプセルを得た。
【0035】
実施例1:トルエン100重量部にBR−100を攪拌しながら8重量部投入し、BR−100が完全に分散してから、ポリフロンF104を25重量部、TLP−10を25重量部添加し、芳香族ジアミンを15重量部添加した。最後に上述で得られた、エピコート828を内包したマイクロカプセルを50重量部を添加し分散させて実施例1配合物を得た。
【0036】
実施例2〜8,比較例1〜4:同様に表1の配合物と配合比でプレコート用配合物実施例2〜8、比較例1〜4の配合物を得た。
【0037】
得られた配合物をJIS 3種、M6、長さ20mmの亜鉛クロメートメッキタッピングねじにディッピングにより塗布し、室温で24時間放置して乾燥を行い、プレコートねじを得た。
【0038】
1.強度試験:得られたプレコートねじに平ワッシャーを2枚かけ、アルミダイキャストAC4C(20mm厚、φ5.3mmの貫通穴)に7.8N・mで締め付けた。締結後、室温で24時間経過後の戻しトルクにて接着強度を評価した。その結果を初期破壊トルクとして表に示した。
【0039】
2.削粉試験:得られたプレコートねじを、アルミダイキャストAC4C(20mm厚、φ5.3mmの貫通穴)に7.8N・mで締め付けた。締結後、ねじ穴から脱落した削粉の有無を目視と指触により確認した。
【0040】
3.シール試験:得られた配合物をシール試験用にJIS 2級、M10×P1.5×L20の亜鉛クロメートメッキボルトにディッピングにより塗布し、室温で24時間放置して乾燥を行い、プレコートボルトを得た。得られたプレコートボルトに平ワッシャーを2枚かけ、シール試験用ブロックに29.4N・mで締め付けた。締結後、室温で48時間経過後に水圧0.98MPaにてシール試験を評価した。その結果をシール試験として表に示した。
【0041】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明はタッピングねじ用に適したプレコート型シール接着剤であり、建材、電子機器などのタッピングねじに有用である。






【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)マイクロカプセル含有の反応性樹脂、(b)高分子PTFE樹脂粉末と低分子PTFE樹脂粉末とが4:6〜6:4で混合されたPTFE樹脂粉末、からなることを特徴とするプレコート型シール接着剤。
【請求項2】
前記(a)成分はマイクロカプセル内に(a−1)成分が、マイクロカプセル外に(a−2)成分が存在するものであり、(a−1)と(a−2)成分は接触することにより反応し、重合または硬化するものである請求項1に記載のプレコート型シール接着剤。
【請求項3】
前記(a)成分100重量部に対して、前記(b)成分が40〜100重量部配合されていることを特徴とする請求項1〜2に記載のプレコート型シール接着剤。
【請求項4】
(a)マイクロカプセル含有の反応性樹脂、(b)高分子PTFE樹脂粉末と低分子PTFE樹脂粉末とが4:6〜6:4で混合されたPTFE樹脂粉末、からなるプレコート型シール接着剤がタッピングねじにプレコートされたことを特徴とするセルフロッキング螺合部材。

【公開番号】特開2007−31559(P2007−31559A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−216702(P2005−216702)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000132404)株式会社スリーボンド (140)
【Fターム(参考)】