説明

プレス機械のダイクッション装置

【課題】電力回生機能によりエネルギ効率が良く、かつ回生時に使用される電動モータ(発電機)の小型化が可能なプレス機械のダイクッション装置を提供する。
【解決手段】ダイクッション装置は、クッションパッド2を支持する油圧シリンダ3の下室3cに油圧切換部Aを介して蓄圧装置9が接続され、この蓄圧装置9に油圧ポンプ/モータ4、電動モータ5を含む電力回生部Cが接続されている。ダイクッション作用時にクッションパッド2が受ける機械エネルギは、一旦、蓄圧装置9に油圧エネルギとして蓄積される。蓄圧装置9に蓄積された油圧エネルギ(圧油)により油圧ポンプ/モータ4を介して電動モータ5が発電機として駆動され、これによりクッションパッド2が受ける機械エネルギが電気エネルギとして回生される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレス機械のダイクッション装置に係り、特にダイクッション作用に要したエネルギを電気エネルギとして回生する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
(a) 油圧(サーボ)式ダイクッション装置
油圧式ダイクッション装置は、クッションパッドを支持する油圧シリンダの下室(クッション圧発生側加圧室)の管路にリリーフ弁等の圧力制御弁や、サーボ弁等の比例流量制御弁を装着し、プレス・スライドに押されて発生する油流を絞り勝手に制御することにより、ダイクッション圧を発生させるものである。
【0003】
この利点は、上記の比例制御機器を用いることにより、ダイクッション力を制御可能な点であり、必要に応じて変圧させることも可能な点や、比較的高圧で使用可能なため、油圧シリンダを小径化することが可能で、ピットレス化等、装置のコンパクト化を推進可能な点である。
【0004】
反面、第1の欠点は、圧力発生が油流を絞ることによるものであるため、ダイクッション作用に費やされたエネルギは全て熱に変換され、また、装置の能力に比例した冷却機能(冷却装置)が必要になる。対環境性から見てエネルギの無駄とも考えられる。あらゆるタイプの油圧式のものがそうである。
【0005】
第2の欠点として、空気に比較すると油は非圧縮性流体に近く、スライドによる衝突時にサージ圧を発生し易い点が上げられる。この点に関しては、特許文献1のように2、衝突時に予め弁を開口していることによりサージ圧の発生を回避しているものもあるが、特許文献2のように、予備加速をして回避しようとするものも有り、ダイクッション力作用(有効)ストローク量を減少させる問題点を併発させる。
【0006】
(b) 電動(サーボ)式ダイクッション装置
電動(サーボ)式ダイクッション装置には、ダイクッションパットを電動(サーボ)モータとスクリュ・ナット機構やリンク機構やラック&ピニオン機構で押圧制御するもの(特許文献3、特許文献4)や、電動(サーボ)モータと油圧シリンダで押圧制御するもの(特許文献5)がある。
【0007】
これらの共通する利点は、エネルギ効率の良い点であり、ダイクッション機能に費やされたエネルギは、同時に電動モータにより電源に回生される(発電される)。
【0008】
反面、共通する欠点はダイクッション作用時に、ダイクッション作用に要する仕事率を、全てダイクッション作用と同時に賄うことができる大容量の電動(サーボ)モータが必要になる。しかも、ダイクッション作用はプレス機械の運転サイクル中の短い時間に集中して(大きなピーク動力として)生じるためにその容量は莫大であり、しかし電動(サーボ)モータはサイクル中の大半の時間は、ほとんど仕事を行わない無駄を生じる。サイクル中の極1点のピークのために、電動(サーボ)モータが大容量化すれば、装置が大型化するとともに受電設備も大容量化し、システムの複雑化及び高価格化は避けられない。
【0009】
従って、電動(サーボ)式ダイクッション装置は、エネルギ効率が良くても、設備投資面では非効率である。
【0010】
(c) 空気圧式ダイクッション装置
空気圧式ダイクッション装置は、クッションパッドを支持する空気圧シリンダと、低い空気圧が蓄積されたボンベとを接続することで構成されており、原理的に簡単な構造である。
【0011】
最大の問題は、スライドがクッションパッドに衝突する時(ダイクッション作用が開始する時)に急激に最大ダイクッション力が作用すると同時に、空気圧シリンダのダンピング不足(低粘性)のため、サージ(衝撃)力と大きな振動が発生し易い点である。
【0012】
また、空気圧が小さい(5〜10bar程度)ため、空気圧シリンダの断面積が大きくなり、装置が大型化する問題がある。
【0013】
更に、空気圧式のバネをスライド下死点で強制的にロック(最大ダイクッション力を一時的に固定)するロッキング装置が必要になる場合が一般的であり、装置は意外にも複雑である。
【0014】
また、空気圧シリンダを上昇させる場合に、衝撃を回避し緩やかに(ダイクッション力で加速しないように)上昇させるために、油圧駆動の抵抗装置(油圧ロッキング装置に付随)を必要とする場合もあり、必ずしもエネルギ効率が良いとは言えない。
【特許文献1】特開2006−142312号公報
【特許文献2】特開平7−24600号公報
【特許文献3】特開平5−7945号公報
【特許文献4】特開平6−543号公報
【特許文献5】特開2006−315074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記従来のダイクッション装置のうち(a) 油圧(サーボ)式、(b)電動(サーボ)式のサーボ化可能なダイクッション装置は、それぞれ利点・欠点を有している。
【0016】
本発明は、(a) 油圧(サーボ)式と、(b)電動(サーボ)式のダイクッション装置の欠点を克服、排除して利点を多く集約するとともに、(c) 空気圧式ダイクッション装置の問題点(振動や装置の大型化)を克服するところにある。
【0017】
本発明の目的は、電動サーボ式のようにエネルギ回生機能に伴いエネルギ効率が良く、油圧式のように液体の弾性、粘性を生かしてサージ圧レス化、振動レス化が可能であり、更に電動モータの容量が小さく、装置の小型化、システムの簡素化、及び低価格化を実現することができるプレス機械のダイクッション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するために請求項1に係るプレス機械のダイクッション装置は、クッションパッドを支持し、プレス機械のスライドの下降時にクッション圧を発生させる液圧シリンダと、前記液圧シリンダの下室に接続され、前記クッション圧の発生時に前記液圧シリンダの下室から吐出される圧液を蓄積する蓄圧手段と、前記蓄圧手段に接続され、前記蓄圧手段に蓄積された圧液により駆動される液圧モータと、前記液圧モータにより発電機として駆動される電動モータと、を備えたことを特徴としている。
【0019】
即ち、クッションパッドを支持する液圧シリンダの下室に蓄圧手段を接続し、ダイクッション作用時にクッションパッドが受ける機械エネルギを一旦、蓄圧手段に液圧エネルギとして蓄積する。この蓄圧手段に蓄積された液圧エネルギ(液圧)により液圧モータを介して電動モータを発電機として駆動し、前記クッションパッドが受ける機械エネルギを電気エネルギとして回生するようにしている。尚、回生作用による発熱量は機械損失分に限られるため、冷却装置を設ける必要はない。
【0020】
前記蓄圧手段には、ダイクッション作用時(プレス機械の運転サイクル中の短い期間)に圧液が蓄積され、ここに蓄積された圧液は、サイクルを通して(平均して)液圧モータに供給され、該液圧モータを介して電動モータが発電機として駆動される。これにより、従来の電動(サーボ)式ダイクッション装置では、ダイクッションの最大仕事率に相当する大容量の電動サーボモータを必要とするのに対して、本発明は、小容量の電動モータで電気エネルギを回生することができる。
【0021】
請求項2に示すように請求項1に記載のプレス機械のダイクッション装置において、前記液圧シリンダは、前記クッションパッドに対して複数本並列に配設され、前記蓄圧手段は、各液圧シリンダの下室に共通配管を介して接続されることを特徴としている。
【0022】
請求項3に示すように請求項1又は2に記載のプレス機械のダイクッション装置において、前記液圧モータは、前記蓄圧手段から分岐配管を介して圧液がそれぞれ供給される複数の液圧モータからなり、前記電動モータは、前記複数の液圧モータによりそれぞれ発電機として駆動される複数の電動モータからなることを特徴としている。これによれば、前記電動モータは、更に小容量のものとすることができる。
【0023】
請求項4に係るプレス機械のダイクッション装置は、クッションパッドを支持し、プレス機械のスライドの下降時にクッション圧を発生させる複数の液圧シリンダと、前記複数の液圧シリンダの下室に接続され、前記クッション圧の発生時に前記液圧シリンダの下室から吐出される圧液を蓄積する複数の蓄圧手段と、前記複数の蓄圧手段に接続され、各蓄圧手段に蓄積された圧液によってそれぞれ駆動される複数の液圧モータと、前記複数の液圧モータによりそれぞれ発電機として駆動される複数の電動モータと、を備えたことを特徴としている。
【0024】
請求項4に係る発明によれば、並列の複数系統の装置によりダイクッション装置を構成することができ、個々の装置(液圧モータ、電動モータ等)の容量を小さくすることができる。
【0025】
請求項5に示すように請求項1から4のいずれかに記載のプレス機械のダイクッション装置において、前記蓄圧手段に蓄積された圧液の圧力を検出する圧力検出器と、前記液圧モータ又は電動モータの角速度を検出する角速度検出器と、前記圧力検出器により検出された圧力と前記角速度検出器により検出された角速度とに基づいて、前記クッション圧の発生により所定の一定値から上昇した前記蓄圧手段の圧力が前記プレス機械の1サイクル期間内に前記一定値になるように前記電動モータのトルクを制御する回生制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0026】
これにより、プレス機械の1サイクル期間を通して(平均して)、ダイクッション作用時に前記蓄圧手段に蓄積された液圧エネルギを電気エネルギとして回生することができる。
【0027】
請求項6に示すように請求項1から5のいずれかに記載のプレス機械のダイクッション装置において、前記蓄圧手段は、該蓄圧手段に供給される気体の圧力を連続的又は段階的に調整する調整手段を備え、該蓄圧手段に蓄積される圧液の蓄圧値を調整可能にしたことを特徴としている。これにより、プレス加工する製品に応じて任意にダイクッション力を調整することができる。
【0028】
請求項7に示すように請求項1から6のいずれかに記載のプレス機械のダイクッション装置において、前記液圧シリンダの下室と前記蓄圧手段との間の配管に配設された高圧側の第1の弁と、前記液圧シリンダの下室と低圧力源との間の配管に配設された低圧側の第2の弁と、前記スライドの位置を検出するスライド位置検出手段と、前記スライド位置検出手段により検出された前記スライドの位置に基づいて前記第1の弁及び第2の弁を制御する第1の制御手段であって、ダイクッション力の発生前は、前記第1の弁を閉成するとともに前記第2の弁を開放し、前記スライドがダイクッション初期位置に到達すると、前記第2の弁を閉成するとともに前記第1の弁を開放し、前記スライドが下死点に到達すると、前記第1の弁を閉成するとともに前記第2の弁を開放する第1の制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0029】
即ち、前記第1の弁、第2の弁の2つの弁の開閉を切り換えることにより、前記ダイクッションを初期位置に保持する位置制御状態からダイクッション力制御状態に高速に切り換えることができる。
【0030】
請求項8に示すように請求項7に記載のプレス機械のダイクッション装置において、前記第1の制御手段は、前記第1の弁を開放する際にダイクッション初期にサージ圧が発生しないように前記第1の弁を徐々に開放し、前記第2の弁を開放する際に前記クッションパッドが前記液圧シリンダの下室の圧液の急激な低下により振動しないように前記第2の弁を徐々に開放することを特徴としている。
【0031】
即ち、インパクト時(スライドが直接または間接的にクッションパッドに接触する時)、液圧シリンダの下室は低圧側の第2の弁に接続されている状態から高圧側の第1の弁に接続される状態に切り換えらえる。この過度期に液圧シリンダ内は、スライドから受ける動力により発生する圧液と、蓄圧手段に予め確保されている与圧から伝播する圧液と、低圧力源へ開放される圧液(経路)が交錯するため、2つの弁(第1、第2の弁)の動作を調整することによりサージ圧を抑制し、かつ適度な応答性を確保できるようにしている。また、プレス加工後に液圧シリンダの下室の圧液を徐々に低圧力側に開放させることにより、脱圧時のショックを防止するようにしている。
【0032】
請求項9に示すように請求項1から8のいずれかに記載のプレス機械のダイクッション装置において、前記クッションパッドの位置を検出するクッションパッド位置検出手段と、前記クッションパッドを昇降させるクッションパッド昇降手段と、前記クッションパッド位置検出手段により検出された前記クッションパッドの位置に基づいて前記クッションパッド昇降手段を制御する第2の制御手段であって、前記クッションパッドをダイクッション初期位置に待機させるとともに、プレス加工後の上昇動作を行わせる第2の制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0033】
これにより、プレス加工時(ダイクッション作用時)以外の期間に、液圧シリンダ(クッションパッド)の位置制御を可能とし、また、上昇動作(製品ノックアウト動作)を行うようにしている。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、クッションパッドを支持する液圧シリンダの下室に蓄圧手段を接続し、ダイクッション作用時にクッションパッドが受ける機械エネルギを一旦、蓄圧手段に液圧エネルギとして蓄積し、この蓄積された液圧エネルギ(圧液)により液圧モータを介して電動モータを発電機として駆動し、サイクルを通じて発電することができるようにしたため、小型の電動モータによりクッションパッドが受ける機械エネルギを電気エネルギとして回生することができ、エネルギ効率がよく、かつ装置の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下添付図面に従って本発明に係るプレス機械のダイクッション装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0036】
[ダイクッション装置の構成(第1の実施の形態)]
<一般的な絞り加工に関して>
図1は本発明に係るプレス機械のダイクッション装置の第1の実施の形態を示す構成図である。
【0037】
図1に示すプレス機械は、フレーム(コラム)100、スライド101、ボルスタ(ベッド)102等により構成され、スライド101は、フレーム100に設けられたガイド部により鉛直方向に移動自在に案内されている。スライド101は、図示しない駆動手段によって回転駆動力が伝達されるクランク軸103を含むクランク機構によって図1上で上下方向に移動させられる。
【0038】
プレス機械のボルスタ102側には、スライド101の位置を検出するスライド位置検出器25が設けられ、クランク軸103には、クランク軸103の角速度を検出する角速度検出器24が設けられている。
【0039】
スライド101には上型201が装着され、ボルスタ102上には下型202が装着されている。本例における金型(上型201、下型202)は、上に閉じた中空カップ状(絞り形状)の製品301の成形用途のものである。
【0040】
上型201と下型202の間には皺押さえ板203があり、下側が複数のクッションピン1を介してクッションパッド2で支持され、上側には材料がセットされる(接触する)。このクッションパッド2は、油圧シリンダ3によって支持され、クッションパッド2(あるいは油圧シリンダ・ピストンに連動する部分)には、クッションパッド2の位置を検出するクッションパッド位置検出器23が設置されている。
【0041】
所定の初期位置でクッションピン1に支持されて待機している皺押さえ板203に材料(本例では円状の板)がセットされている状態で、スライド101が下降する。上型201が製品に接触した時点で、製品のプレス加工(絞り加工)が開始される。材料は上型201と下型202の間で、塑性加工されると同時に、絞り加工の際に生じ易い円形材料の半径方向に発生する皺や亀裂を抑制するために、必要な設定力でクッションピン1、皺押さえ板203を介して材料を下方から押さえながら支持する。この時の力がダイクッション力であり、絞り加工中には常時作用する。
【0042】
<一般的なダイクッション機能に関しての補足>
プレス加工が開始される時はスライド101が材料(及び皺押さえ板203)に衝突する(衝撃的に当たる)ために、クッションパッド2には衝撃力(油圧シリンダ3ではサージ圧)が発生し易く、衝撃力は所定のダイクッション力を上回るため、成形品を破断させたり、金型を破損させたり、機械自身の耐久寿命にも悪影響を及ぼす(ダイクッション装置自体が破損する事故が生じる場合もある。)
<本ダイクッション装置に関して>
ダイクッション装置は、主として上記クッションパッド2を支持する油圧シリンダ3、
高圧側の油圧と低圧側の油圧を切り換える油圧切換部A、ダイクッション作用時にクッションパッド2が受ける機械エネルギを油圧エネルギとして蓄積する蓄圧部B、この蓄圧部Bに蓄積された油圧エネルギを電気エネルギとして回生する電力回生部C、及びクッションパッド2を初期位置に保持するとともに、プレス加工後に上昇動作(製品ノックアウト動作)を行わせるクッションパッド位置制御部Dから構成されている。
【0043】
[油圧シリンダ3]
油圧シリンダ3のピストンロッド3aは、クッションパッド2に連結されている。油圧シリンダ3の下降側加圧室(以下「上室」と称す)3bに接続された配管には、低圧力源6が接続されている。尚、低圧力源6に用いられるアキュムレータは、0.5〜1Mpa程度に圧力が設定されており、タンクの役割を果す。この低圧力源6の圧力は、圧力検出器21cにより検出される。
【0044】
また、油圧シリンダ3のクッション圧発生側加圧室(以下「下室」と称す)3cに接続された配管には、下室3cの圧力を検出する圧力検出器21aが接続されるとともに、油圧切換部Aが接続されている。
【0045】
油圧シリンダ3の上室3bに接続された配管と、下室3cに接続された配管との間には、安全弁(リリーフ弁)7が接続されている。この安全弁7は、異常圧力発生時(ダイクッション力制御が不能で、突発的に異常圧力が発生した場合)に、油圧機器破損防止用途に使用される。
【0046】
[油圧切換部A]
図2に示すように油圧切換部Aは、2つの高速の弁(高圧側の第1弁11、低圧側の第2弁12)と、第1弁11を開閉させる電磁比例流量制御弁11aと、第2弁12を開閉させる電磁比例流量制御弁12aとから構成されている。
【0047】
電磁比例流量制御弁11aは、後述する弁制御装置により駆動され、位置Iに切り換えられると、第1弁11のスプールを図2上で下方に移動させる(第1弁11を開放させる)ための圧油を第1弁11に供給し、位置IIに切り換えられると、第1弁11のスプールの位置を維持し、位置IIIに切り換えられると、第1弁11のスプールを上方に移動させる(第1弁11を閉成する)ための圧油を第1弁11に供給する。
【0048】
電磁比例流量制御弁12aは、上記電磁比例流量制御弁11aと同様に弁制御装置により駆動され、第2弁12を開閉させる。
【0049】
これらの第1弁11、第2弁12をそれぞれ開閉制御することにより、第2弁12を全閉し、第1弁11を全開すると、油圧シリンダ3の下室3cは、高圧側の蓄圧装置9に接続され、逆に第2弁12を全開し、第1弁11を全閉すると、油圧シリンダ3の下室3cは、低圧側の低圧力源6に接続される。
【0050】
即ち、油圧切換部Aは、油圧シリンダ3の下室3cを高圧側の蓄圧装置9、又は低圧側の低圧力源6に高速に切り換え接続する。
【0051】
また、第1弁11、第2弁12には、それぞれスプール位置検出器26a,26bが取り付けられている。これらのスプール位置検出器26a,26bによって検出される第1弁11、第2弁12のスプール位置は、第1弁11、第2弁12の開閉過程をフィードバック制御する際に利用される。
【0052】
[蓄圧部B]
図3に示すように蓄圧部Bは、蓄圧装置(アキュムレータ)9と、遮断弁10と、電磁開閉弁14と、蓄圧装置9に蓄積された圧油の圧力を検出する圧力検出器21bとから構成されている。
【0053】
ここで、遮断弁10は、蓄圧装置9の圧力が、異常時(予期せぬ時)に油圧シリンダ3に作用しないように安全化を図るものである。また、電磁開閉弁14は、運転終了時に蓄圧装置9の圧油(残圧)を開放するものである。
【0054】
図4に、空気圧設定式の蓄圧装置9の一例を示す。
【0055】
この蓄圧装置9は、空気圧源9a、レギュレータ9b、給気弁9c、マフラー9d、及び蓄圧シリンダ9eから構成されている。
【0056】
蓄圧装置9における圧力設定値は、レギュレータ9bにより空気圧源9aから蓄圧シリンダ9eに給気する空気圧を、0.5〜1Mpa程度の範囲で調整することにより変更することができる。尚、レギュレータ9bは、圧力設定値の目盛りが付されたダイヤル等を操作することで、段階的又は連続的に圧力設定できるものが好ましい。
【0057】
[電力回生部C]
図5に示すように電力回生部Cは、主として油圧ポンプ/モータ4と、電動(サーボ)モータ5と、強制開放駆動式逆止弁13と、交流電源30とを有している。
【0058】
油圧ポンプ/モータ4は、一方の吐出口が強制開放駆動式逆止弁13を介して蓄圧装置9に接続され、他方の吐出口が低圧力源6に接続されている。
【0059】
また、油圧ポンプ/モータ4の回転軸には、直接又は減速機を介して電動モータ5の駆動軸が接続され、電動モータ5には、電動モータ5の角速度を検出するための角速度検出器22aが設けられている。
【0060】
蓄圧装置9に蓄積された圧油は、サイクルを通して油圧ポンプ/モータ4を油圧モータ作用させ、従動する電動モータ5を発電機として機能させることができ、圧油エネルギを電気エネルギに変換し、交流電源30に回生する(サイクルを通して動力回生する)。
【0061】
この回生作用による発熱量は機械損失分に限られるため、冷却は不要である。
【0062】
図6に回生制御部の構成を示す。回生制御部40には、圧力検出器21aから蓄圧装置9の油圧を示す圧力信号が加えられるとともに、角速度検出器22aから電動モータ5の角速度を示す角速度信号が加えられており、回生制御部40は、蓄圧装置9に蓄積された油圧を予め設定した設定値にすべく、前記圧力信号及び角速度信号を用いてトルク指令信号を出力し、電動モータ5を制御すると、結果として蓄圧装置9に蓄積された剰余分の圧油で発電させることができる。
【0063】
図7に上記回生制御部40の内部構成の一例を示すが、これは一具体例にすぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0064】
尚、強制開放駆動式逆止弁13は、蓄圧装置9の圧油リークを防止するもので、プレス機械とダイクッション装置が機能停止状態では逆止させ、機能(運転)中は、強制開放し動力回生可能にしている。
【0065】
また、前記油圧ポンプ/モータ4は、蓄圧装置9の初期圧をチャージしたり、運転サイクルにおけるダイクッション機能工程外で、リークの為初期圧以下になった場合にチャージする。油圧ポンプ/モータ4は、これらのチャージ時には、油圧ポンプとして作用する。
【0066】
[クッションパッド位置制御部D]
図1上で、二点鎖線で囲んだクッションパッド位置制御部Dとしては、例えば、特許文献5(特開2006−315074号公報)に記載の装置を適用することができる。
【0067】
即ち、クッションパッド位置制御部Dは、上記クッションパッド2を支持する油圧シリンダ3’、油圧ポンプ/モータ4’、電動(サーボ)モータ5’、及び後述するダイクッション力・位置の制御部等から構成されている。
【0068】
油圧シリンダ3’の下室3c’に接続された配管には、下室3c’圧力を検出する圧力検出器21a’、強制開放駆動式逆止弁8’が接続されるとともに、油圧ポンプ/モータ4’の一方の吐出口が接続されている。
【0069】
油圧シリンダ3’の上室3b’に接続された配管には、油圧ポンプ/モータ4’の他方の吐出口が接続されるとともに、低圧力源6が接続されている。
【0070】
また、油圧シリンダ3’の上室3b’に接続された配管と、下室3c’に接続された配管との間には、安全弁(リリーフ弁)7’が接続されている。
【0071】
油圧ポンプ/モータ4’の回転軸には、直接又は減速機を介して電動モータ5’の駆動軸が接続され、電動モータ5’には、電動モータ5’の角速度を検出するための角速度検出器22’が設けられている。
【0072】
[ダイクッション力制御の原理]
前述した油圧シリンダ3の下室3cが蓄圧装置9に接続可能な油圧シリンダ3によるダイクッション力は、油圧シリンダ3の下室3c’の圧力(蓄圧装置9の圧力)とシリンダ面積の積で表すことができるが、蓄圧装置9の圧力は、予め設定される一定値からダイクッション作用時に上昇する圧力増分の油圧値幅をもって変動するため、ダイクッション力を可変制御することはできない。
【0073】
一方、油圧シリンダ3’の下室3c’に油圧ポンプ/モータ4’の吐出口が接続された油圧シリンダ3’の下室3c’の圧力は、油圧ポンプ/モータ4’を制御することにより可変制御することができる。
【0074】
以下、油圧シリンダ3’によるダイクッション力制御の原理について説明する。
【0075】
いま、油圧シリンダ3’のダイクッション力発生側断面積:A
油圧シリンダ3’のダイクッション圧発生側(下室3c’)の体積:V
ダイクッション力:P
電動モータ5’のトルク:T
電動モータ5’の慣性モーメント:I
電動モータ5’の粘性抵抗係数:DM
電動モータ5’の摩擦トルク:fM
油圧ポンプ/モータ4’の押し退け容積:Q
スライド101から油圧シリンダ3’のピストンロッド3a’に加わる力:F
プレスに押されて発生するパッド速度:v
油圧シリンダ3’のピストンロッド+パッドの慣性質量:M
油圧シリンダ3’の粘性抵抗係数:DS
油圧シリンダ3’の摩擦力:fS
圧油に押されて回転するサーボモータ角速度:ω
作動油の体積弾性係数:K
比例定数:k1、k2
とすると、静的な挙動は(1)及び(2)式で表すことができる。
【0076】
P=∫K((v・A−k1Q・ω)/V)dt ……(1)
T=k2・PQ/(2π) ……(2)
また、動的な挙動は(1)、(2)式に加えて(3)、(4)式で表すことができる。
【0077】
PA−F=M・dv/dt+DS・v+fS ……(3)
T−k2・PQ/(2π)=I・dω/dt+DM・ω+fM ……(4)
上記(1)〜(4)式が意味するもの、即ち、スライド101からクッションパッド2を介して油圧シリンダ3’に伝わった力は、油圧シリンダ3’の下室3c’を圧縮し、ダイクッション力を発生させる。同時に、ダイクッション力によって油圧ポンプ/モータ4’を油圧モータ作用させ、この油圧ポンプ/モータ4’に発生する回転軸トルクが電動モータ5’の駆動トルクに抗じたところで、電動モータ5’を回転(回生作用)させ、圧力の上昇が抑制される。結局、油圧シリンダ3’によるダイクッション力は、電動モータ5’の駆動トルクに応じて決定される。
【0078】
[クッションパッド位置制御部Dの制御装置の実施の形態]
図8にクッションパッド位置制御部Dの制御装置を示す。
このクッションパッド位置制御部Dは、主としてダイクッション力・位置の制御装置400と、増幅器兼PWM制御器402と、電力回生機能付き電源装置404と、交流電源406とから構成されている。
【0079】
制御装置400には、図1に示したクッションパッド位置検出器23からクッションパッド位置を示す位置検出信号、スライド位置検出器25からスライド位置を示す位置検出信号、圧力検出器21a及び21bからそれぞれ油圧シリンダ3の下室3cの圧力P及び油圧シリンダ3’の下室3c’の圧力Pを示す圧力検出信号、角速度検出器22’から電動モータ5’の角速度ωを示す角速度信号、及び角速度検出器24からクランク軸103の角速度を示す角速度信号がそれぞれ加えられている。
【0080】
制御装置400は、予め設定されたダイクッション力指令を出力するダイクッション力指令器を含み、ダイクッション力指令どおりにダイクッション力を制御するために圧力検出器21a,21a’から圧力P、Pを示す圧力検出信号を入力している。
【0081】
また、制御装置400は、主としてダイクッション力の動的安定性を確保するための角速度フィードバック信号として角速度検出器22’から電動モータ5’の角速度ωを示す角速度信号を入力し、更に角速度検出器24によって検出されるクランク軸103の角速度を示す角速度信号を、ダイクッション力制御における動的安定性を確保のための補償に使用するために入力している。尚、スライド位置検出器25から検出される位置信号を時間微分して得られるスライド速度vを示すスライド速度信号をクランク軸103の角速度信号に代えて使用するようにしてもよい。
【0082】
更に、制御装置400は、ダイクッション機能の開始タイミングを得るためにスライド位置検出器25からスライド位置信号を入力しており、制御装置400内のダイクッション力指令器は、この入力するスライド位置信号に基づいて対応するダイクッション力指令を出力する。また、制御装置400は、製品ノックアウト動作時又は単独で油圧シリンダ3’を上下動させる場合の位置フィードバック信号としてクッションパッド位置検出器23からクッションパッド位置を示す位置検出信号を入力している。
【0083】
スライド101が上死点近傍にある時、予めクッションパッド2(皺押さえ板203)は、初期位置で待機している。即ち、制御装置400は、待機位置指令値、クッションパッド位置検出器23の位置検出信号を用いて演算したトルク指令値を電動モータ5’に出力することにより、位置(保持)制御している。その状態で、ダイクッション力は、ほぼ0(プリ加圧力分のみ作用)である。
【0084】
スライド101が降下して、スライド位置検出器25の位置検出信号がダイクッション初期位置(近傍)に到達すると、制御装置400は、位置(保持)制御状態からダイクッション力制御状態に制御を切り換える。即ち、制御装置400は、ダイクッション力指令値、油圧シリンダ3、3’の下室3c、3c’のそれぞれ圧力を示す圧力検出信号、角速度信号(プレス速度信号)を用いて演算したトルク指令値を、増幅器兼PWM制御器402を介して電動モータ5’に出力することでダイクッション力制御を行う。
【0085】
また、ダイクッション力制御時の、スライド101が材料(及び皺押さえ板203)に衝突してから下死点に至るまでの下降時(成形時)は、電動モータ5’のトルク出力方向と発生速度が反対になる。即ち、スライド101からクッションパッド2が受ける動力によって油圧シリンダ3’の下室3c’から圧油が油圧ポンプ/モータ4’に流入し、油圧ポンプ/モータ4’が油圧モータとして作用する。この油圧ポンプ/モータ4’によって電動モータ5’が従動して発電機として作用する。電動モータ5’によって発電された電力は、増幅器兼PWM制御器402及び電力回生機能付き電源装置404を介して交流電源406に回生される。
【0086】
いま、図9に示すように、プレス成型時のダイクッション力が一定圧となるダイクッション力指令が出力される場合、油圧シリンダ3により発生するダイクッション力Pは、圧力検出器21aにより検出される油圧シリンダ3の下室3cの圧力とシリンダ面積の積によって算出することができる。
【0087】
従って、ダイクッション力指令によるダイクッション力Pと、前記算出されたダイクッション力Pとの差分を求め、その差分のダイクッション力Pが、油圧シリンダ3’によって賄うダイクッション力となる。
【0088】
制御装置400は、油圧ポンプ/モータ4’の回転軸に接続された電動モータ5’をトルク制御することにより、油圧シリンダ3’の下室3c’の圧力(即ち、ダイクッション力P)を制御する。
【0089】
これにより、ダイクッション力指令どおりにダイクッション力を制御することができ、ダイクッション作用時に油圧シリンダ3’が受けるエネルギは、油圧シリンダ3’、油圧ポンプ/モータ4’及び電動モータ5’を介して電気エネルギとして回生される。
【0090】
また、図9に示す例では、全ダイクッション力のうち大部分のダイクッション力Pは、油圧シリンダ3側で賄い、残りのダイクッション力Pを油圧シリンダ3’側で賄うようにしたため、サーボ制御するダイクッション力Pを小さくすること(即ち、電動モータ5’の容量を小さくすること)ができる。
【0091】
一方、プレス成形が終了(スライド101が下死点に到達)すると、制御装置400は、製品ノックアウト動作させるとともに、クッションパッド2を初期位置に待機させるために、クッションパッド2の位置を制御する位置制御に切り換わる。
【0092】
この場合、制御装置400は、位置フィードバック信号としてクッションパッド位置検出器23からクッションパッド位置を示す位置検出信号を入力し、電動モータ5’を駆動制御することにより、クッションパッド2の上昇制御(製品ノックアウト動作及び初期位置への復帰動作)を行う。尚、このときに要する電動モータ5’の動力は、微々たるものであるため、容量の小さな電動モータ5’でも十分に対応できる。
【0093】
一方、図10に示す例では、全ダイクッション力(例えば、200ton)のうち約半分のダイクッション力P1(約100ton)は、油圧シリンダ3側で賄い、残りの約半分のダイクッション力P2(約100ton)を油圧シリンダ3’側で賄うようにしている。
【0094】
また、変圧制御する場合は、図11に示すようにダイクッション力P1(100ton)はそのままで、ダイクッション力P2を可変させることにより行うことができる。
【0095】
上記図10、図11に示す制御の場合、クッションパッド位置制御部Dでは、ダイクッション作用時(プレス機械の運転サイクル中の短い時間)に比較的大きなダイクッション力P2を発生させる必要があるため、電動モータ5’の容量を大きくする必要がある。但し、特許文献5に記載の装置と比較すると、約半分の容量の電動モータ5’で同様な制御を行うことができる。
【0096】
[油圧切換部Aの制御装置]
図12に、図2に示した油圧切換部Aを制御する制御装置500を示す。
【0097】
この制御装置500には、図1に示したスライド位置検出器25からスライド位置を示す位置検出信号、圧力検出器21aから油圧シリンダ3の下室3cの圧力を示す圧力検出信号、及び角速度検出器24からクランク軸103の角速度を示す角速度信号がそれぞれ加えられている。
【0098】
制御装置500は、予め設定されたダイクッション力指令を出力するダイクッション力指令器を含み、前記スライド位置検出信号、圧力検出信号及び角速度信号に基づいて油圧切換部Aの切り換え制御を行う。
【0099】
図13は、本発明の基本的な作用例として、プレス機械のスライド101を1サイクルさせた場合のダイクッション力作用に伴う各物理量の変化を示した波形図であり、図14は、主としてダイクッション力作用時の各物理量の変化を示した波形図である。
【0100】
図13(A)及び(B)に、1サイクルさせた場合のスライド101及びダイクッションの位置及び速度を示す。
【0101】
図13(A)に示すように、スライド101が上死点(1100mm)から下降工程に至る過程で、ダイクッション(皺押さえ板203、クッションパッド2)は、初期位置(180mm)で待機している。このクッションパッド2の位置制御は、前述したクッションパッド位置制御部Dにより行われる。
【0102】
図13(C)にダイクッション力を示す。ダイクッション力はインパクト時に、蓄圧装置9から供給される圧油により昇力応答が早まり、かつ蓄圧装置9の弾性作用により、スライド101がインパクトする時に受ける衝撃を吸収し、サージ圧が抑制される。
【0103】
図13(D)に、蓄圧装置9の圧力を示す。ダイクッション力に伴うダイクッション作用のエネルギは、ダイクッション作用時に蓄圧装置9にほぼ全量が蓄積され、サイクルを通した動力回生に伴い、徐々に減圧する。本例では、蓄圧装置9における圧力設定値は、レギュレータ9b(図4参照)により200barに調整されており、ダイクッション作用時に最大、217barまで上昇する。その後、1サイクルを通して減圧(電力回生)され、200barに復帰させられる。
【0104】
図13(E)に、ダイクッションシリンダ(油圧シリンダ3)が行う仕事率(ダイクッション作用の仕事率)、電動モータ5が回生する仕事率(電力)、蓄圧装置9に蓄積される圧油の仕事率を示す。
【0105】
図13(F)に、それぞれを積算した仕事量を示す。本発明の最大の特徴は、サイクルにおいて、大きなピークを示すダイクッション作用の仕事率に対して、電動モータ5が行う(ダイクッション作用に伴うエネルギの)回生電力が極めて小さいことにある(図13(E)参照)。これは、ダイクッション作用と同時に、蓄圧装置9に蓄積された圧油のエネルギ(仕事量)が、サイクルを通して(サイクル時間で平均して)、機械的なロス分を除くほぼ全量が電源回生されているためである。
【0106】
制御装置500は、上記のダイクッション作用及び電源回生を行うために、スライド101が降下して、スライド位置検出器25の位置検出信号がダイクッション初期位置(近傍)に到達(インパクト)すると、ダイクッション装置は、位置(保持)制御状態からダイクッション力制御状態に切り換える。
【0107】
ダイクッションの位置(保持)制御状態時には、高圧側の第1弁11は全閉し、低圧側の第2弁12は全開しているが、制御装置500は、図14(A)に示すようにダイクッション力制御状態への切り換え時に低圧側の第2弁12を開閉する指令をOFF(1→0)し、一定時間(閉応答時間)おいて、高圧側の第1弁11を開閉する指令をON(0→1)し、これにより第2弁12を全閉させるとともに、第1弁11を全開させる。
【0108】
即ち、制御装置500は、ダイクッション力制御状態への切り換え時に、電磁比例流量制御弁12aを位置IIIに切り換える指令を出力し、第2弁12のスプールを図2上で上昇させて第2弁12を閉成させ、一定時間おいて電磁比例流量制御弁11aを位置Iに切り換える指令を出力し、第1弁11のスプールを図2上で下降させて第1弁11を全開させる。
【0109】
ここで、制御装置500は、ダイクッション力上昇指令に対してダイクッション力を追従させるべく制御する過程で、図14(B)に示すように高圧側の第1弁11のスプール位置(弁開度)を制御し、サージ圧を抑制している。
【0110】
図14(C)に示すように、ダイクッション力が立ち上がる過程において、前半は指令に対する追従性を促進するために、蓄圧装置9から油圧シリンダ3に圧油が流出している(蓄圧装置9の流入油量がマイナスになっている)。その後、ダイクッション力が定常化するにしたがい、油圧シリンダ3から蓄圧装置9に圧油が流入し、蓄圧装置9の圧力は蓄油量に応じて上昇する(図13(D))。
【0111】
ダイクッション力が立ち上がった(インパクト)後、スライド101が下死点に至るまでの期間に成形(絞り加工)が行われる。
【0112】
スライド101が下死点に到達すると成形が終了するため、それに伴い、ダイクッション力も立ち下げる(図14(D)の2.05sec付近)。この時、制御装置500は、まず、高圧側の第1弁11を開閉する指令をOFF(1→0)にし、一定時間(閉応答時間)おいて低圧側の第2弁12を開閉する指令をON(0→1)にする(図14(A))。
【0113】
制御装置500は、低圧側の第2弁12を開閉する指令ONに同期して、図14(D)に示すダイクッション力降下指令に対してダイクッション力を追従させるべく制御する過程で、図14(B)に示すように低圧側の第2弁12のスプール位置を制御し、これによりクッションパッド2が油圧シリンダ3の下室3の圧油の急激な低下により振動しないように第2弁12を徐々に開放するようしている。
【0114】
そして、ダイクッション力の降下が完了すると、ダイクッション力制御状態からクッションパッド2の位置を制御する位置(保持)制御状態に切り換わる。クッションパッド2の位置制御は、初期位置待機と同様にクッションパッド位置制御部Dにより行われる。
【0115】
即ち、前述した制御装置400(図8)は、位置制御状態に切り換わると、クッションパッド2の位置指令値、クッションパッド位置検出器23の位置検出信号を用いて演算したトルク指令値を電動モータ5’に出力し、位置指令値に対応する位置になるようにクッションパッド2の位置制御を行う。これにより、クッションパッド2は、スライド101が上昇開始した後、(スライド101と製品とダイクッション装置が干渉して、製品を破損させる事故の無いように)一定時間停止した後上昇(下型に残存(密着した)成形品をノックアウト)し、初期位置(待機位置)に戻り、次サイクルに備える。(図13(A))。
【0116】
図13(F)に示すように、ダイクッション力作用時に蓄圧装置9に蓄積された圧油のエネルギは、油圧ポンプ/モータ4及び電動モータ5により、ダイクッション力が立ち上がった(インパクト)後、次サイクルのダイクッション力が立ち上がる(インパクト)する(直)前まで、サイクル時間を通して回生される。
【0117】
図13(E)に示すように、ダイクッション力作用時は、ダイクッション(油圧シリンダ3の行う)仕事率(≒蓄圧装置9に蓄積される圧油の仕事率)が大きなピークを示す(従来の特許文献5に記載の動力回生可能なダイクッション装置はこの仕事率に匹敵する容量の電動モータを付属していた)が、本発明では、電動モータ5により単位時間に回生する電力は微小であり、従来の1/10にも満たない容量の電動モータ5により電力回生することができる。
【0118】
[ダイクッション装置の構成(第2の実施の形態)]
図15は本発明に係るプレス機械のダイクッション装置の第2の実施の形態を示す構成図である。尚、図1に示した第1の実施の形態と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0119】
図15に示す第2の実施の形態のダイクッション装置は、主として第1の実施の形態の1つの油圧シリンダ3の代わりに、2つの油圧シリンダ3、3を使用している点で相違する。
【0120】
即ち、第2の実施の形態のダイクッション装置は、クッションパッド2に対して2つの油圧シリンダ3、3を並列に配設されている。また、これらの油圧シリンダ3、3の下室31c、32cは、共通配管50により接続され、それぞれ油圧切換部Aに接続されている。また、油圧シリンダ3、3の上室31b、32bは、共通配管52により接続され、それぞれ低圧力源6に接続されている。
【0121】
これにより、第2の実施の形態のダイクッション装置は、2つの油圧シリンダ3、3によりダイクッション力を発生させることができる。
【0122】
尚、ダイクッション力を発生させる油圧シリンダの本数はこの実施の形態に限らず、3本以上でもよい。
【0123】
[ダイクッション装置の構成(第3の実施の形態)]
図16は本発明に係るプレス機械のダイクッション装置の第3の実施の形態を示す構成図である。尚、図15に示した第2の実施の形態と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0124】
図16に示す第3の実施の形態のダイクッション装置は、主として第2の実施の形態の1組の油圧ポンプ/モータ4、電動モータ5の代わりに、2組の油圧ポンプ/モータ4a、4b、電動モータ5a5bを使用している点で相違する。
【0125】
即ち、蓄圧装置9から吐出される圧油は、分岐配管54を介してそれぞれの油圧ポンプ/モータ4a、4bの吐出口に供給されるようになっている。これらの油圧ポンプ/モータ4a、4bによりそれぞれ電動モータ5a5bが発電機として駆動される。
【0126】
これによれば、電動モータ5a5bの個々の容量は、図1に示した電動モータ5の容量の半分にすることができる。
【0127】
[ダイクッション装置の構成(第4の実施の形態)]
図17は本発明に係るプレス機械のダイクッション装置の第4の実施の形態を示す構成図である。尚、図15に示した第2の実施の形態と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0128】
図17に示す第4の実施の形態のダイクッション装置は、二点鎖線で囲んだクッションパッド位置制御部Dを挟んで左右対称に2系統のダイクッション装置が設けられている点で、1系統のダイクッション装置からなる第2の実施の形態と相違する。
【0129】
これによれば、1系統内の個々の装置(油圧ポンプ/モータ、電動モータ等)の容量を小さくすることができる。
【0130】
[変形例]
この実施の形態のクッションパッド位置制御部Dは、クッションパッド2をダイクッション初期位置に待機(保持)させるとともに、プレス加工後の上昇動作(製品ノックアウト動作、初期位置への復帰)を行わせ、更にダイクッション作用時にダイクッション力制御及び電力回生動作を行うようにしているが、これに限らず、クッションパッド2をダイクッション初期位置に待機(保持)させる機能と、プレス加工後に上昇動作させる機能のみを持つものでもよく、もちろん、他の駆動方法を用いてもよい。
【0131】
また、この実施の形態では、ダイクッション装置の作動液として油を使用した場合について説明したが、これに限らず、水やその他の液体を使用してもよい。更に本発明に係るダイクッション装置は、クランクプレスに限らず、他の機械式プレス、油圧式プレス等のプレス機械にも適用できる。
【0132】
更に、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】図1は本発明に係るプレス機械のダイクッション装置の第1の実施の形態を示す構成図である。
【図2】図2は図1に示した油圧切換部Aの拡大図である。
【図3】図3は図1に示した蓄圧部Bの拡大図である。
【図4】図4は空気圧設定式の蓄圧装置の一例を示す図である。
【図5】図5は図1に示した電力回生部Cの拡大図である。
【図6】図6は電力回生部の回生制御部を示す図である。
【図7】図7は上記回生制御部の内部構成の一例を示す図である。
【図8】図8は図1に示したクッションパッド位置制御部Dの制御部を示す図である。
【図9】図9はクッションパッド位置制御部Dによるダイクッション力制御を説明するために用いた図である。
【図10】図10はクッションパッド位置制御部Dによるダイクッション力制御の他の例を説明するために用いた図である。
【図11】図11はクッションパッド位置制御部Dによるダイクッション力制御の更に他の例を説明するために用いた図である。
【図12】図12は図2に示した油圧切換部Aを制御する制御部を示す図である。
【図13】図13は本発明の基本的な作用例としてプレス機械のスライドを1サイクルさせた場合のダイクッション力作用に伴う各物理量の変化を示した波形図である。
【図14】図14は主としてダイクッション力作用時の各物理量の変化を示した波形図である。
【図15】図15は本発明に係るプレス機械のダイクッション装置の第2の実施の形態を示す構成図である。
【図16】図16は本発明に係るプレス機械のダイクッション装置の第3の実施の形態を示す構成図である。
【図17】図17は本発明に係るプレス機械のダイクッション装置の第4の実施の形態を示す構成図である。
【符号の説明】
【0134】
1…クッションピン、2…クッションパッド、3、3a、3b、3’、3、3…油圧シリンダ、4、4a、4b、4’…油圧ポンプ/モータ、5、5’…電動(サーボ)モータ、6…低圧力源、9…蓄圧装置、11…第1弁、12…第2弁、21a、21a’、21b、21c…圧力検出器、22、22’、24…角速度検出器、23…クッションパッド位置検出器、25…スライド位置検出器、26a、26b…スプール位置検出器、30、406…交流電源、40…回生制御部、100…フレーム(コラム)、101…スライド、102…ボルスタ、201…上型、202…下型、203…皺押さえ板、301…製品、400、500…制御装置、A…油圧切換部、B…蓄圧部、C…電力回生部、D…クッションパッド位置制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッションパッドを支持し、プレス機械のスライドの下降時にクッション圧を発生させる液圧シリンダと、
前記液圧シリンダの下室に接続され、前記クッション圧の発生時に前記液圧シリンダの下室から吐出される圧液を蓄積する蓄圧手段と、
前記蓄圧手段に接続され、前記蓄圧手段に蓄積された圧液により駆動される液圧モータと、
前記液圧モータにより発電機として駆動される電動モータと、
を備えたことを特徴とするプレス機械のダイクッション装置。
【請求項2】
前記液圧シリンダは、前記クッションパッドに対して複数本並列に配設され、
前記蓄圧手段は、各液圧シリンダの下室に共通配管を介して接続されることを特徴とする請求項1に記載のプレス機械のダイクッション装置。
【請求項3】
前記液圧モータは、前記蓄圧手段から分岐配管を介して圧液がそれぞれ供給される複数の液圧モータからなり、
前記電動モータは、前記複数の液圧モータによりそれぞれ駆動される複数の電動モータからなることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレス機械のダイクッション装置。
【請求項4】
クッションパッドを支持し、プレス機械のスライドの下降時にクッション圧を発生させる複数の液圧シリンダと、
前記複数の液圧シリンダの下室に接続され、前記クッション圧の発生時に前記液圧シリンダの下室から吐出される圧液を蓄積する複数の蓄圧手段と、
前記複数の蓄圧手段に接続され、各蓄圧手段に蓄積された圧液によりそれぞれ駆動される複数の液圧モータと、
前記複数の液圧モータによりそれぞれ発電機として駆動される複数の電動モータと、
を備えたことを特徴とするプレス機械のダイクッション装置。
【請求項5】
前記蓄圧手段に蓄積された圧液の圧力を検出する圧力検出器と、
前記液圧モータ又は電動モータの角速度を検出する角速度検出器と、
前記圧力検出器により検出された圧力と前記角速度検出器により検出された角速度とに基づいて、前記クッション圧の発生により所定の一定値から上昇した前記蓄圧手段の圧力が前記プレス機械の1サイクル期間内に前記一定値になるように前記電動モータのトルクを制御する回生制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のプレス機械のダイクッション装置。
【請求項6】
前記蓄圧手段は、該蓄圧手段に供給される気体の圧力を連続的又は段階的に調整する調整手段を備え、該蓄圧手段に蓄積される圧液の蓄圧値を調整可能にしたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のプレス機械のダイクッション装置。
【請求項7】
前記液圧シリンダの下室と前記蓄圧手段との間の配管に配設された高圧側の第1の弁と、
前記液圧シリンダの下室と低圧力源との間の配管に配設された低圧側の第2の弁と、
前記スライドの位置を検出するスライド位置検出手段と、
前記スライド位置検出手段により検出された前記スライドの位置に基づいて前記第1の弁及び第2の弁を制御する第1の制御手段であって、ダイクッション力の発生前は、前記第1の弁を閉成するとともに前記第2の弁を開放し、前記スライドがダイクッション初期位置に到達すると、前記第2の弁を閉成するとともに前記第1の弁を開放し、前記スライドが下死点に到達すると、前記第1の弁を閉成するとともに前記第2の弁を開放する第1の制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のプレス機械のダイクッション装置。
【請求項8】
前記第1の制御手段は、前記第1の弁を開放する際にダイクッション初期にサージ圧が発生しないように前記第1の弁を徐々に開放し、前記第2の弁を開放する際に前記クッションパッドが前記液圧シリンダの下室の圧液の急激な低下により振動しないように前記第2の弁を徐々に開放することを特徴とする請求項7に記載のプレス機械のダイクッション装置。
【請求項9】
前記クッションパッドの位置を検出するクッションパッド位置検出手段と、
前記クッションパッドを昇降させるクッションパッド昇降手段と、
前記クッションパッド位置検出手段により検出された前記クッションパッドの位置に基づいて前記クッションパッド昇降手段を制御する第2の制御手段であって、前記クッションパッドをダイクッション初期位置に待機させるとともに、ノックアウト動作を行わせる第2の制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のプレス機械のダイクッション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−36225(P2010−36225A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202944(P2008−202944)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000100861)アイダエンジニアリング株式会社 (153)