説明

プロジェクター

【課題】冷却対象の冷却効率を向上できるプロジェクターを提供すること。
【解決手段】プロジェクターにおいて、冷却対象に対して冷却空気Wを送風する冷却装置は、冷却空気Wを吸入する冷却ファンと、冷却ファンから吐出された冷却空気Wを第1の方向に流通させた後、第1の方向に対して交差する第2の方向に流通させて冷却対象の配設位置まで導く第1、2流路8A1,8A2,8B1を有するダクト8とを備え、ダクト8には、冷却空気Wを導く複数の案内部材9〜11が配設され、複数の案内部材9〜11は、第1の方向と第2の方向とが交差する位置を跨いで形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部から冷却空気を吸入して吐出する送風手段(冷却ファン)と、当該冷却ファンに接続されて冷却対象に冷却空気を吐出する平面視L字状の送風路(ダクト)とを備えるプロジェクターがある(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のダクトは、平面視L字状に形成され、第1の案内部材により第1の流路と第2の流路とに分割されている。
第1の流路は、緑色光側の光変調装置に向けて冷却空気を吐出する流出口を備える。この第1の流路には、第1の流路内を辿る冷却空気を整流する第2の案内部材が配設されている。当該第2の案内部材は、第1の流路のL字の屈曲部分より下流側を始点として、空気の流れ方向に沿って、流出口に向けて延びるように配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−58242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のプロジェクターでは、第1の流路内に配設される第2の案内部材は、第1の流路の屈曲部分より下流側を始点として、冷却空気の流れ方向に沿って、流出口に向けて延びるように配設されているので、ダクトの第1の流路の屈曲部分の外側を辿る流量と内側を辿る流量とは、不均一となる。具体的には、第1の流路の屈曲部分の外側を辿る流量が内側を辿る流量よりも多くなるので、流量の多い屈曲部分の外側を辿る冷却空気は、屈曲部分の外側の内壁部分で摩擦を生じ易く、圧力損失を生じることとなる。これにより、冷却空気の流量が低減することとなり、冷却対象に対して冷却空気の十分な流量を確保できず、冷却効率が悪くなるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、冷却対象の冷却効率を向上できるプロジェクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプロジェクターは、冷却対象に対して冷却空気を送風する冷却装置を備えたプロジェクターであって、前記冷却装置は、前記冷却空気を吸入する冷却ファンと、前記冷却ファンから吐出された冷却空気を第1の方向に流通させた後、前記第1の方向に対して交差する第2の方向に流通させて前記冷却対象の配設位置まで導く流路を有するダクトとを備え、前記ダクトには、前記冷却空気を導く複数の案内部材が配設され、前記複数の案内部材は、前記第1の方向と前記第2の方向とが交差する位置を跨いで形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、複数の案内部材が、第1の方向と第2の方向とが交差する位置を跨ぐように形成されている。これによれば、冷却空気がダクト内に吐出されると、複数の案内部材により、ダクトの第1の方向と第2の方向とが交差する位置を辿る冷却空気の流量をそれぞれ均一化することができ、ダクトの第1の方向と第2の方向とが交差する位置で生じる圧力損失を低減できる。
従って、圧力損失が低減されることで、冷却空気の流量の減少を防止でき、冷却対象の冷却効率を向上できる。
【0008】
本発明のプロジェクターは、前記冷却対象は、3色の色光を画像情報に応じて変調する第1、第2、第3の光変調装置と、前記各光変調装置の光入射側及び光射出側に配設される入射側光学素子及び射出側光学素子とを有し、前記第1、第2の光変調装置は、対向配置され、前記ダクトは、前記案内部材により第1ダクト部及び第2ダクト部に分岐され、前記第1ダクト部は、前記第3の光変調装置に冷却空気を流出し、前記第2ダクト部は、前記第1、第2の光変調装置に冷却空気を流出することが好ましい。
【0009】
本発明では、ダクトは、案内部材により、第3の光変調装置に冷却空気を流出する第1ダクト部と、第1、第2の光変調装置に冷却空気を流出する第2ダクト部とに分岐される。例えば、第1ダクト部を辿る冷却空気は、第3の光変調装置のみに対して流出し、第1、第2の光変調装置に対して、第2ダクト部を辿る冷却空気が流出するので、第1、第2、第3の光変調装置を効率的に冷却できる。
【0010】
本発明のプロジェクターでは、前記第2ダクト部は、前記第1、第2の光変調装置への入射光束の光軸に沿う前記第2の方向に延出し、前記第1の光変調装置は、前記第2の光変調装置よりも冷却空気の流れ方向の上流側に配設され、前記第1の光変調装置へ冷却空気を流出する流出口は、平面視において、前記第1の光変調装置、前記入射側光学素子、及び前記射出側光学素子を跨いで延びていることが好ましい。
【0011】
本発明では、第2ダクト部は、第2の方向に延出し、第2ダクト部の流出口は、第1の光変調装置、入射側光学素子、及び射出側光学素子の入射光束の光軸に沿う方向に延びるように形成されている。これによれば、冷却空気は、これらの部材に確実に流出して、良好に冷却できる。
【0012】
本発明のプロジェクターでは、前記第1ダクト部は、前記第3の光変調装置の光入射面及び光射出面に沿う方向に冷却空気を流通させる導風路を有し、前記導風路は、前記第3の光変調装置に向かうにつれて、前記第3の光変調装置から垂直方向に離間する方向に傾斜する傾斜部を備えていることが好ましい。
【0013】
ところで、従来、冷却ファンからダクトを介して流出される冷却空気は、ダクト内において、光変調装置への入射光束の光軸の直交する方向に流れた後、流出口を介して光変調装置の下方から上方に向けて光変調装置の光入射面及び光射出面に沿って流れる。そのため、冷却空気は、流出口を介してダクト外部に流出する前に、ダクト内部において、光変調装置への入射光束の光軸の直交する方向に方向を変えているため、流出口の開口面に対して斜め方向に流出して、矩形状に形成された光変調装置の対角線に沿うように流れてしまう。そのため、光変調装置の光入射面及び光射出面の一部に冷却空気が流れないおそれがあり、光変調装置が均一に冷却されないという問題があった。
本発明では、導風路は、第3の光変調装置に向かうにつれて、第3の光変調装置から垂直方向に離間する方向に傾斜している傾斜部を備えるので、第3の光変調装置に機械的に干渉することなく、導風路を経由した後の冷却空気を第3の光変調装置に向けて流通させる流路(以下、流出流路)を確保できる。
これによれば、冷却空気は、導風路から流出流路を経由して、第3の光変調装置に対して流れるので、流出流路にて流出口の開口面に対する斜め方向への流通が規制されることとなり、流出口の開口面に対して略直交する方向に流出することとなる。すなわち、第3の光変調装置の光入射面及び光射出面に対して均一に冷却空気を流すことができ、第3の光変調装置の冷却効率を向上できる。
また、導風路は、傾斜部を備えるので、導風路と流出流路とが交差する角部分は、Rを大きくすることが可能となる。このように、角部分をR状に形成すれば、角部分での冷却空気の抵抗を低減し、圧力損失を低減できる。すなわち、冷却空気の流量や流速が低減することなく、流出流路から第3の光変調装置に対して冷却空気を良好に流出でき、冷却効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るプロジェクターの概略構成を模式的に示す図。
【図2】前記実施形態における冷却装置、光学装置、及び偏光変換素子等を模式的に示す斜視図。
【図3】前記実施形態におけるダクトを前方上方側から見た斜視図。
【図4】前記実施形態におけるダクトの前方下方側から見た斜視図。
【図5】前記実施形態におけるダクトの底面図。
【図6】図2でのVI−VI線断面図。
【図7】図2でのVII−VII線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。
[プロジェクターの構成]
図1は、プロジェクター1の概略構成を模式的に示す図である。
なお、以下では、プロジェクター1において投射側(投射レンズ3が配置された側)を「前面」とし、その反対側を「背面」とする。また、図1における図面視手前側を天面側、奥側を底面側とする。また、以下で記載する「左」、「右」は、プロジェクター1を天面が上側となるようにして、前面から見た時の左右に相当するものである。
プロジェクター1は、画像情報に応じた画像を形成してスクリーン(図示略)上に投射する。このプロジェクター1は、図1に示すように、略直方体状の外装筐体2と、投射レンズ3と、光学ユニット4と、プロジェクター1内部の各構成部材を冷却する冷却装置5と、具体的な図示を省略したが、プロジェクター1内部の各構成部材を制御する制御装置等とを備える。
【0016】
外装筐体2は、全体略直方体形状を有し、本実施形態では合成樹脂により形成されている。この外装筐体2は、プロジェクター1の天面、前面、背面、及び側面をそれぞれ構成するアッパーケース、及びプロジェクター1の底面、前面、背面、及び側面をそれぞれ構成するロアーケース等で構成される。そして、各ケースは、互いにねじ等で固定されている。なお、外装筐体2は、合成樹脂等に限らず、その他の材料にて形成してもよく、例えば、金属等により構成してもよい。
投射レンズ3は、複数のレンズを組み合わせた組レンズとして構成され、光学ユニット4にて形成された画像光をスクリーン上に拡大投射する。
【0017】
光学ユニット4は、前記制御装置による制御の下、光源から射出された光束を光学的に処理して画像情報に対応した画像光を形成する。この光学ユニット4は、図1に示すように、光源装置41と、照明光学装置42と、色分離光学装置43と、リレー光学装置44と、光学装置45と、光源装置41から射出された光束の照明光軸Aが内部に設定された照明光軸Aに対する所定位置に上述の各光学部品41〜45を収納する光学部品用筐体46とを備える。
【0018】
光源装置41は、図1に示すように、光源411及びリフレクター412等を備える。そして、光源装置41は、光源411から射出された光束がリフレクター412によって射出方向が揃えられ、照明光学装置42に向けて光束を射出する。
【0019】
照明光学装置42は、図1に示すように、第1レンズアレイ421、第2レンズアレイ422、偏光変換素子423、及び重畳レンズ424を備える。そして、光源装置41から射出された光束は、第1レンズアレイ421によって複数の部分光束に分割され、第2レンズアレイ422の近傍で結像する。第2レンズアレイ422から射出された各部分光束は、その中心軸(主光線)が偏光変換素子423の入射面に垂直となるように入射し、偏光変換素子423にて略1種類の直線偏光光として射出される。偏光変換素子423から直線偏光光として射出され、重畳レンズ424を介した複数の部分光束は、光学装置45の後述する液晶パネル451上で重畳する。
【0020】
色分離光学装置43は、図1に示すように、2枚のダイクロイックミラー431,432、及び反射ミラー433を備え、これらのダイクロイックミラー431,432、反射ミラー433により照明光学装置42から射出された複数の部分光束を赤、緑、青の3色の色光に分離する機能を有する。
リレー光学装置44は、図1に示すように、入射側レンズ441、リレーレンズ443、及び反射ミラー442,444を備え、色分離光学装置43で分離された色光、例えば、赤色光を光学装置45の後述する赤色光側の液晶パネル451Rまで導く機能を有する。
【0021】
光学装置45は、入射した光束を画像情報に応じて変調して画像光を形成する。この光学装置45は、図1に示すように、3つの光変調装置としての液晶パネル451(赤色光側の第1の光変調装置としての液晶パネルを451R、第2の光変調装置としての青色光側の液晶パネルを451B、第3の光変調装置としての緑色光側の液晶パネルを451Gとする)と、各液晶パネル451の光路前段側に配置される入射側光学素子としての入射側偏光板452と、各液晶パネル451の光路後段側に配置される2枚の射出側光学素子としての射出側偏光板453と、クロスダイクロイックプリズム454とを備える。
【0022】
3つの入射側偏光板452は、色分離光学装置43で分離された各光束のうち、偏光変換素子423で揃えられた偏光方向と略同一の偏光方向を有する偏光光のみ透過させ、その他の光束を吸収するものであり、透光性基板上に偏光膜が貼付されて構成されている。
3つの射出側偏光板453は、入射側偏光板452と略同様の機能を有し、液晶パネル451を介して射出された光束のうち、一定方向の偏光光を透過し、その他の光束を吸収する。
【0023】
クロスダイクロイックプリズム454は、射出側偏光板453から射出された色光毎に変調された各色光を合成してカラー画像を形成する。このクロスダイクロイックプリズム454は、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合わせた界面には、2つの誘電体多層膜が形成されている。これら誘電体多層膜は、液晶パネル451Gから射出され射出側偏光板453を介した色光を透過し、液晶パネル451R,451Bから射出され各射出側偏光板453を介した各色光を反射する。このようにして、各色光が合成されて画像光が形成される。
【0024】
[冷却装置の構成]
図2は、本実施形態の要部を示す斜視図であり、具体的には、冷却装置5に光学装置45、及び偏光変換素子423等が配置された状態を背面側から見た斜視図である。
冷却装置5は、液晶パネル451、入射側偏光板452、射出側偏光板453、及び偏光変換素子423に対して冷却空気を送風するものであり、図2に示すように、冷却ファン7と、ダクト8とを備えている。
【0025】
[冷却ファンの構成]
冷却ファン7は、図1に示すように、投射レンズ3の右側面側に配設され、図2に示すように、シロッコファンで構成される。また、冷却ファン7は、図2に示すように、空気を吸入する吸入口71と、空気を吐出する吐出口72とを備えている。そして、冷却ファン7の吐出口72は、図2に示すように、ダクト8に接続される。
外装筺体1の側面には、図1に示すように、吸気口6が備えられており、冷却ファン7の吸入口71(図2参照)は、吸気口6に対向するように配置されている。そして、吸気口6からプロジェクター1の外部の空気が、冷却ファン7の吸入口71(図2参照)に吸入される。
冷却ファン7は、図2に示すように、吸気口6(図1参照)から外部の空気を吸入し、冷却対象である液晶パネル451、入射側偏光板452、射出側偏光板453、及び偏光変換素子423に対してダクト8を介して吐出する。
【0026】
[ダクトの構成]
図3は、ダクト8の斜視図であり、具体的には、ダクト8を前面上方側から見た斜視図である。図3中の矢印は、冷却空気の流れ方向を示している。
図4は、ダクト8の斜視図であり、具体的には、ダクト8を前面下方側から見た斜視図である。
図5は、ダクト8の底面図である。
図6は、図2のVI−VI線断面図である。なお、図6では、冷却対象である液晶パネル451Gを二点鎖線で図示し、説明の都合上、入射側偏光板452の図示を省略する。
図7は、図2のVII−VII線断面図である。
ダクト8は、図3に示すように、平面視略L字状に形成され、図4、5に示すように、底面側が開口した容器形状を有し、開口部分が図示しない外装筐体2の底面部にて閉塞されるように当該底面部に取り付けられる。
【0027】
ダクト8は、図3に示すように、一端側から背面側へ延出した後、当該延出方向と略直交する方向に曲げられて、背面に沿って延出している。
ダクト8の天面側には、図3に示すように、緑側冷却用流出口81と、流出口としての赤側冷却用流出口82と、青側冷却用流出口83と、流出口84とが形成されている。
ダクト8の底面側には、図4、5に示すように、円弧状の3つの案内部材としての第1〜第3案内部材9〜11がダクト8の形状に応じて配設されている。各案内部材9〜11は、ダクト8の一端側に冷却ファン7が接続される接続口80とダクト8の屈曲部分との間を始点として、緑側冷却用流出口81及び赤側冷却用流出口82まで延出している。
【0028】
ダクト8は、図4、5に示すように、第1案内部材9により、平面視L字状の第1ダクト部8Aと、第1ダクト部8AのL字部分の内側に対して配置される平面視L字状の第2ダクト部8Bとに分岐され、これらは一体形成されている。
【0029】
[第1ダクト部の構成]
第1ダクト部8Aは、図4、5に示すように、一端側から背面側へ延出した後、当該延出方向と略直交する方向に曲げられて、背面側に沿って延出している。そして、冷却ファン7から吐出される冷却空気W1は、緑色光側の液晶パネル451Gの光入射面及び光射出面に沿う方向に、第1ダクト部8Aを辿る。
第1ダクト部8Aは、図4、5に示すように、第2案内部材10により第1流路8A1と、第2流路8A2とに分岐されている。第1ダクト部8Aには、緑側冷却用流出口81が形成されている。
【0030】
第1流路8A1及び第2流路8A2は、図4に示すように、L字部分に沿って延出する導風路としての第1導風路8A10と、第1導風路8A10と交差する方向に延出し、緑側冷却用流出口81に向けて冷却空気W1を流出する第2導風路8A20とを有する。
第1導風路8A10は、冷却ファン7から吐出される冷却空気W1を液晶パネル451Gの光入射面及び光射出面に略平行となるように流通させる。
第2導風路8A20は、第1導風路8A10を辿る冷却空気W1を上方に向けて流通させ、緑側冷却用流出口81を介して、緑色光側の液晶パネル451Gに導く。
【0031】
以下では、図6を参照して説明するが、図示の都合上、第1流路8A1のみを図示しているため、第1流路8A1について説明する。第2流路8A2については説明を省略しているが、第1流路8A1と同様の構成である。
第1ダクト部8Aは、図6に示すように、天面側の肉厚部分を厚くして、上流側から下流側に向かうにつれて、垂直方向(底面側)に向けて傾斜する傾斜部85が形成されている。
これにより、第1ダクト部8Aは、図6に示すように、第1導風路8A10の内径が縮小するようにテーパ状に形成される。具体的には、第1導風路8A10の径寸法Lが、下流側に向かうにつれて縮径し、径寸法Lとなり、第1導風路8A10と第2導風路8A20とが交差する角部分は、Rを大きくすることができ、この際、図6に示すように、交差する角部分がR状(湾曲状)に形成される。
【0032】
[第2ダクト部の構成]
第2ダクト部8Bには、冷却空気W2の流れ方向の上流側から赤側冷却用流出口82、青側冷却用流出口83、及び流出口84が形成される。そして、冷却ファン7から吐出された冷却空気W2は、赤、青色光側の液晶パネル451R,451Bの光入射面及び光射出面に略直交する方向に、第2ダクト部8Bを辿る。
第2ダクト部8Bは、図4、5に示すように、第1ダクト部8Aと同様に、一端側から背面側へ延出した後、当該延出方向と略直交する方向に曲げられて、背面に沿って延出している。この第2ダクト部8Bは、赤側冷却用流出口82及び青側冷却用流出口83が形成される平面視L字状の流路としての第1流路8B1と、第1ダクト部8Aの端部に交差するように、背面側に向けて斜め方向に延出し、流出口84が形成される平面視略直線状の第2流路8B2とを有する。
【0033】
[案内部材の構成]
第1案内部材9は、上述したように、ダクト8を第1ダクト部8Aと、第2ダクト部8Bとに分岐し、図5に示すように、冷却ファン7から吐出される冷却空気Wを冷却空気W1(第1ダクト部8A側)と冷却空気W2(第2ダクト部8B側)とに分流する。この第1案内部材9は、冷却空気W2がダクト8の屈曲部分で生じる圧力損失を低減するものである。
ここで、第1案内部材9が配設されていない場合には、冷却空気W2の流量が圧力損失により減少し、赤、青側冷却用流出口82,83に冷却空気W2を良好に導くことができない。第1案内部材9を配設することで、第1案内部材9は、冷却空気W2を赤、青側冷却用流出口82,83へ良好に導くものである。
【0034】
第2案内部材10は、上述したように、第1ダクト部8Aを第1流路8A1と、第2流路8A2とに分岐し、図5に示すように、冷却空気W1を冷却空気W11(第1流路8A1側)と冷却空気W12(第2流路8A2側)とに分流する。この第2案内部材10は、冷却空気W1がダクト8の屈曲部分で生じる圧力損失を低減させるものである。
ここで、第2案内部材10が配設されていない場合には、冷却空気W1の流量が圧力損失により減少し、緑側冷却用流出口81の後述する第2流出口81Bに冷却空気W1を良好に導くことができない。第2案内部材10を配設することで、第2案内部材10は、冷却空気W12を後述する流出口81Bへ良好に導くものである。
【0035】
第3案内部材11は、図4、5に示すように、第2ダクト部8Bの第1流路8B1の一部を分岐し、第2ダクト部8Bに流入する冷却空気W2を整流し、冷却空気W21(第1ダクト部8A側)と冷却空気W22(第1ダクト部8Aと反対側)とに分流する。
この第3案内部材11は、冷却空気W2の第1案内部材9で生じる圧力損失を低減させるものである。すなわち、第3案内部材11が配設されていない場合には、冷却空気W2の流量が圧力損失により流量が減少し、赤側冷却用流出口82に冷却空気W2を良好に導くことができない。第3案内部材11を配設することで、第3案内部材11は、冷却空気W22を赤側冷却用流出口82へ良好に導くものである。
【0036】
[緑側冷却用流出口の構成]
緑側冷却用流出口81は、図3に示すように、前後方向に沿って、背面側から矩形状の第1流出口81A及び第2流出口81Bが並設されて構成される。第1流出口81Aの開口面積は、第2流出口81Bの開口面積より大きく形成されている。
【0037】
第1流出口81Aは、図4、5に示すように、第1流路8A1の第2導風路8A20に形成される。この第1流出口81Aの周縁部分には、図3に示すように、天面側に向けて突出する整流板12が配設されている。そして、第1導風路8A10を辿る冷却空気W11は、傾斜部85によって底面部に向けて流通し、整流板12に当たって、第2導風路8A20を辿り、第1流出口81Aから、入射側偏光板452(図2参照)、及び緑色光側の液晶パネル451G(図2、6参照)の光入射面に上方向に沿って流出する(図3、6中の矢印G1)
【0038】
第2流出口81Bは、図4、5に示すように、第2流路8A2の第2導風路8A20に形成される。この第2流出口81Bの周縁部分には、図3に示すように、天面側に向けて突出する整流板13が配設されている。そして、第1導風路8A10を辿る冷却空気W12は、第2案内部材10で整流されて、傾斜部85によって底面部に向けて流通し、整流板13に当たって、第2導風路8A20を辿り、第2流出口81Bから、射出側偏光板453、及び液晶パネル451Gの光射出面に上方向に沿って流出する(図3中の矢印G2)。
【0039】
[赤側冷却用流出口の構成]
赤側冷却用流出口82は、図3に示すように、右側面側から左右方向に沿って延出して形成され、図7に示すように、入射側偏光板452、液晶パネル451R、及び射出側偏光板453を跨ぐように形成されている。この赤側冷却用流出口82は、右側面側から略長方形状の第1流出口82Aと、略正方形状の第2流出口82Bとが合わさって、一つの開口により構成されている。
これにより、複数の開口を形成した際に配設される整流板等を必要とせず、第2ダクト部8Bの第1流路8B1を辿る冷却空気W2が整流板等で圧力損失を生じることがなく、冷却空気W2の流量の減少が防止される。
【0040】
第1流出口82Aは、図4、5に示すように、第2ダクト部8Bの第1流路8B1に形成されている。この第1流出口82Aの冷却空気W2の流れ方向の上流側の端縁部分は、第3案内部材11の円弧状の先端部分の内側に位置している。すなわち、第1流出口82Aには、冷却ファン7から吐出された冷却空気W22が第3案内部材11に整流されて、良好に導かれやすくなっている。これにより、冷却空気W2は、第3案内部材11で整流されて、入射側偏光板452(図2参照)、及び赤色光側の液晶パネル451R(図2参照)の光入射面に上方向に沿って流出する(図3、7中の矢印R1)
【0041】
第2流出口82Bは、図4、5に示すように、第2ダクト部8Bの第1流路8B1の延出方向に形成されている。この第2流出口82Bの周縁部分には、図3に示すように、天面側に向けて突出する整流板14が配設されている。これにより、冷却空気W2は、第3案内部材11で整流されつつ、整流板14に当たって、赤色光側の液晶パネル451Rの光射出面、及び射出側偏光板453に上方向に沿って流出する(図3、7中の矢印R2)。
【0042】
[青側冷却用流出口の構成]
青側冷却用流出口83は、図3に示すように、左側面側から矩形状の第1流出口83A及び第2流出口83Bが左右方向に沿って並設されて構成されている。
第1流出口83Aと第2流出口83Bとの間には、図4、5に示すように、整流板15が底面側に向けて突出するように配設されている。この整流板15は、図7に示すように、第1流路8B1の一部を閉塞するように配設されている。
第1流出口83Aの端縁には、図3、7に示すように、整流板16が天面側に向けて突出するように配設されている。
【0043】
第1流出口83Aは、図4、5に示すように、第2ダクト部8Bの第1流路8B1に形成されている。これにより、第1流路8B1を辿る冷却空気W2は、第3案内部材11で整流されつつ、整流板16に当たって、入射側偏光板452、及び青色光側の液晶パネル451Bの光入射面に上方向に向かって流出する(図3、7中の矢印B1)。
第2流出口83Bは、図4、5に示すように、第2ダクト部8Bの第1流路8B1に形成されている。これにより、第1流路8B1を辿る冷却空気W2は、第3案内部材11で整流されつつ、整流板15に当たって、青色光側の液晶パネル451Bの光射出面、及び射出側偏光板453に上方向に向かって流出する(図3、7中の矢印B2)。
【0044】
[流出口の構成]
流出口84は、図3に示すように、第2ダクト部8Bの第2流路8B2の端部に矩形状に形成されている。この流出口84の周縁部分は、図3、7に示すように、天面側に向けて突出する整流板17が配設されている。これにより、第2流路8B2を辿る冷却空気W2は、整流板17に当たって、流出口84から偏光変換素子423に上方向に沿って流出する(図3、7中の矢印P1)。
【0045】
上述した本実施形態のプロジェクター1によれば、以下の効果がある。
本実施形態では、第1〜第3案内部材9〜11が、第1の方向と第2の方向とが交差する位置を跨ぐように第1流路8A1,8B1及び第2流路8A2に沿って延出している。これによれば、冷却空気Wがダクト8内に吐出されると、第1〜第3案内部材9〜11により、ダクト8の第1の方向と第2の方向とが交差する位置を辿る冷却空気Wの流量をそれぞれ均一化することができ、ダクト8の第1の方向と第2の方向とが交差する位置で生じる圧力損失を低減できる。
従って、圧力損失が低減されることで、冷却空気Wの流量の減少を防止でき、冷却対象の冷却効率を向上できる。
【0046】
また、ダクト8は、第1案内部材9により、緑色光側の液晶パネル451Gに冷却空気Wを流出する第1ダクト部8Aと、赤、青色光側の液晶パネル451R,451Bに冷却空気Wを流出する第2ダクト部8Bとに分岐される。例えば、第1ダクト部8Aを辿る冷却空気Wは、緑色光側の液晶パネル451Gのみに対して流出するので、緑色光側の液晶パネル451Gを効率的に冷却できる。
また、赤、青色光側の液晶パネル451R,451Bに対しても、第2ダクト部8Bを辿る冷却空気Wが流出するので、赤、青色光側の液晶パネル451R,451Bを良好に冷却できる。
【0047】
さらに、第2ダクト部8Bは、赤、青色光側の液晶パネル451R,451Bへの入射光束の光軸に沿う方向に延出し、第2ダクト部8Bの赤側冷却用流出口82は、赤色光側の液晶パネル451R、入射側偏光板452、及び射出側偏光板453の入射光束の光軸に沿う方向に延びるように形成されている。これによれば、冷却空気Wは、これらの部材に確実に流出して、良好に冷却できる。
また、第2ダクト部8Bを辿る冷却空気Wは、赤色光側の液晶パネル451Rの下流側に配設される青色光側の液晶パネル451Bに対して流出して、青色光側の液晶パネル451Bを良好に冷却できる。
【0048】
さらに、第1導風路8A10は、緑色光側の液晶パネル451Gに向かうにつれて、緑色光側の液晶パネル451Gから垂直方向に離間する方向に傾斜している傾斜部85を備えるので、緑色光側の液晶パネル451Gに機械的に干渉することなく、第1導風路8A10を経由した後の冷却空気W1を第1導風路8A10に向けて流通させる第2導風路8A20を確保できる。
これによれば、冷却空気W1は、第1導風路8A10から第2導風路8A20を経由して、緑色光側の液晶パネル451Gに対して流れるので、第2導風路8A20にて緑側冷却用流出口81の開口面に対する斜め方向への流通が規制されることとなり、緑側冷却用流出口81の開口面に対して略直交する方向に流出することとなる。すなわち、緑色光側の液晶パネル451Gの光入射面及び光射出面に対して均一に冷却空気を流すことができ、緑色光側の液晶パネル451Gの冷却効率を向上できる。
【0049】
また、第1導風路8A10は、傾斜部85を備えるので、第1導風路8A10と第2導風路8A20とが交差する角部分は、Rを大きくすることが可能となる。このように、角部分をR状に形成すれば、角部分での冷却空気W1の抵抗を低減し、圧力損失を低減できる。すなわち、冷却空気W1の流量や流速が低減することなく、第2導風路8A20から緑色光側の液晶パネル451Gに対して冷却空気W1を良好に流出でき、冷却効率を向上できる。
【0050】
[実施形態の変形]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、射出側偏光板453は、2枚構成であったが、1枚または3枚以上の構成でもよく、また、入射側偏光板452は、1枚構成であったが、複数構成にしてもよい。
前記実施形態では、ダクト8の天面側を平坦状にして、天面側の肉厚部分を厚くし、第1導風路8A10を縮径していたが、ダクト8の天面側を傾斜させて、第1導風路8A10を縮径してもよい。
【0051】
前記実施形態では、光学ユニット4は平面視略L字形状を有した構成としたが、これに限らず、例えば、平面視略U字形状を有した構成を採用してもよい。
前記実施形態では、透過型の液晶パネル451を採用していたが、これに限らず、反射型の液晶パネルを採用してもよく、あるいは、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を採用してもよい。なお、DMDは米国テキサスインスツルメンツ社の商標である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、プレゼンテーションやホームシアターに用いられるプロジェクターに利用できる。
【符号の説明】
【0053】
1…プロジェクター、5…冷却装置、7…冷却ファン、8…ダクト、8A…第1ダクト部、8B…第2ダクト部、8A10…第1導風路(導風路)、9…第1案内部材(案内部材)、10…第2案内部材(案内部材)、11…第3案内部材(案内部材)、82…赤側冷却用流出口(流出口)、85…傾斜部、451…液晶パネル(光変調装置)、451R…赤色光側の液晶パネル(第1の光変調装置)、451B…青色光側の液晶パネル(第2の光変調装置)、451G…緑色光側の液晶パネル(第3の光変調装置)、452…入射側偏光板(入射側光学素子)、453…射出側偏光板(射出側光学素子)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象に対して冷却空気を送風する冷却装置を備えたプロジェクターであって、
前記冷却装置は、
前記冷却空気を吸入する冷却ファンと、
前記冷却ファンから吐出された冷却空気を第1の方向に流通させた後、前記第1の方向に対して交差する第2の方向に流通させて前記冷却対象の配設位置まで導くダクトとを備え、
前記ダクトには、
前記冷却空気を導く複数の案内部材が配設され、
前記複数の案内部材は、
前記第1の方向と前記第2の方向とが交差する位置を跨いで形成されている
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクターにおいて、
前記冷却対象は、
3色の色光を画像情報に応じて変調する第1、第2、第3の光変調装置と、
前記各光変調装置の光入射側及び光射出側に配設される入射側光学素子及び射出側光学素子とを有し、
前記第1、第2の光変調装置は、対向配置され、
前記ダクトは、
前記案内部材により第1ダクト部及び第2ダクト部に分岐され、
前記第1ダクト部は、
前記第3の光変調装置に冷却空気を流出し、
前記第2ダクト部は、
前記第1、第2の光変調装置に冷却空気を流出する
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項3】
請求項2に記載のプロジェクターにおいて、
前記第2ダクト部は、
前記第1、第2の光変調装置への入射光束の光軸に沿う前記第2の方向に延出し、
前記第1の光変調装置は、
前記第2の光変調装置よりも冷却空気の流れ方向の上流側に配設され、
前記第1の光変調装置へ冷却空気を流出する流出口は、
平面視において、前記第1の光変調装置、前記入射側光学素子、及び前記射出側光学素子を跨いで延びている
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のプロジェクターにおいて、
前記第1ダクト部は、
前記第3の光変調装置の光入射面及び光射出面に沿う方向に冷却空気を流通させる導風路を有し、
前記導風路は、
前記第3の光変調装置に向かうにつれて、前記第3の光変調装置から垂直方向に離間する方向に傾斜する傾斜部を備えている
ことを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−262153(P2010−262153A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113312(P2009−113312)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】