説明

プロジェクタ

【課題】投影されるキャラクタの欠けを抑制するプロジェクタを提供する。
【解決手段】プロジェクタ部制御回路124内の不揮発性メモリ1240には、液晶パネル122の欠陥画素情報が格納されている。プロジェクタ部制御回路124は、投影キャラクタ(文字、数字、記号など)が欠陥画素で欠けないように、液晶パネル122上においてキャラクタ群についての投影時の画素位置をシフトする。シフト範囲を初期位置から左右10画素以内にする。左右それぞれに10画素分シフト処理してもキャラクタ形成画素位置と白欠陥画素位置との合致が解消しない場合は、合致する画素数を最小とする液晶パネル122上のキャラクタ形成画素位置をキャラクタ投影時の画素位置とする。シフトは行単位で行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学像を投影するプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
表示器やプロジェクタなどに広く利用されている液晶パネルは、その製造時において欠陥画素が発生することが知られている。欠陥画素は、光を透過状態にしたまま遮光できない画素や、光を遮光したまま透過状態にできない画素である。特許文献1には、このような欠陥画素を目立たなくする技術が開示されている。特許文献1によれば、欠陥画素が目立たないように液晶表示器に表示する画像がシフトされる。
【0003】
【特許文献1】特開2004−70009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、欠陥画素は、画像を表示する場合に比べてキャラクタを表示する場合に悪影響を及ぼしやすい。たとえば、数字の「1」やアルファベット「L」の小文字「l」は、キャラクタを構成する画素数が少ないことから、欠陥画素に起因するキャラクタの欠けが目立ちやすい。液晶パネルを利用してプロジェクタを構成する場合は、投影像が拡大されていることが多いので、キャラクタ欠けはよく目立つ。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明によるプロジェクタは、光の射出量を画素ごとに制御して光像を形成する光像形成素子と、光像形成素子に形成されるキャラクタ群の画素位置が光像形成素子に含まれる欠陥画素を避けるように、キャラクタ群をキャラクタ群が並ぶ行もしくは列単位で平行移動させる投影制御手段とを備えることを特徴とする。
請求項2に記載の発明によるプロジェクタは、光の射出量を画素ごとに制御して光像を形成する光像形成素子と、光像形成素子に形成されるキャラクタ群の画素位置が光像形成素子に含まれる欠陥画素を避けるように、複数のキャラクタからなるワード内の各キャラクタの間隔をワード単位で変化させる投影制御手段とを備えることを特徴とする。
請求項3に記載の発明によるプロジェクタは、光の射出量を画素ごとに制御して光像を形成する光像形成素子と、光像形成素子に形成されるキャラクタ群の画素位置が光像形成素子に含まれる欠陥画素を避けるように、複数のキャラクタからなるワード内の各キャラクタの間隔を維持したまま、ワードを、平行移動させる投影制御手段とを備えることを特徴とする。
請求項4に記載の発明によるプロジェクタは、光の射出量を画素ごとに制御して光像を形成する光像形成素子と、光像形成素子に形成されるキャラクタ群の画素位置が光像形成素子に含まれる欠陥画素を避けるように、複数のキャラクタからなるワード内の各キャラクタの大きさをワード単位で変化させる投影制御手段とを備えることを特徴とする。
上記投影制御手段は、(1)キャラクタ群を形成する画素の光の射出量がキャラクタ群とは異なる背景部を形成する画素の光の射出量より大きく設定される第1の投影方式の場合、キャラクタ群の画素位置が、光の射出量が略最小値のまま制御不能な第1の欠陥画素を避け、(2)キャラクタ群を形成する画素の光の射出量がキャラクタ群とは異なる背景部を形成する画素の光の射出量より小さく設定される第2の投影方式の場合、キャラクタ群の画素位置が、光の射出量が略最大値のまま制御不能な第2の欠陥画素を避けるように制御を行うこともできる。この場合のプロジェクタはさらに、光の射出量が略最大値のまま制御不能な第2の欠陥画素の数と、光の射出量が略最小値のまま制御不能な第1の欠陥画素の数とを比較して、第2の欠陥画素の数が第1の欠陥画素の数より少ないとき、第1の投影方式を選択し、第1の欠陥画素の数が第2の欠陥画素の数より少ないとき、第2の投影方式を選択する投影方式選択手段をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によるプロジェクタでは、光像形成素子の欠陥画素に起因する投影キャラクタの欠けを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
(第一の実施形態)
図1は、本発明の第一の実施形態によるプロジェクタおよびカメラ付き携帯電話機10の正面図である。図1において、プロジェクタおよびカメラ付き携帯電話機10の正面に、撮影レンズ151および投影レンズ121が設けられている。
【0008】
図2は、図1のプロジェクタおよびカメラ付き携帯電話機10の側面図である。プロジェクタおよびカメラ付き携帯電話機10は、撮影レンズ151および投影レンズ121を有する表示部10aと、後述する第1操作部材106を有する操作部(ベース部)10bとが折り畳みヒンジ部材105によって一体化されている。ヒンジ部材105は、回動軸Oを中心軸として回動自在に構成され、表示部10aおよび操作部10b間の開閉角度を任意の角度で支持する。図2は、開閉角度を90度にした状態で、ベース部10bの第1操作部材106の実装面と対向する面を載置面としてプロジェクタおよびカメラ付き携帯電話機10がテーブルなどの平面上に載置されている状態を表す。
【0009】
図2には、プロジェクタ部の内部構造を説明する図(図1におけるA−A'断面図)が含まれている。図2において、LED光源123によって液晶パネル122が照明され、投影光束FLが投影レンズ121から射出される。プロジェクタおよびカメラ付き携帯電話機10は、投影レンズ121と対向するように配設されている不図示のスクリーンなどに向けて、メールや画像などの情報を投影する。プロジェクタおよびカメラ付き携帯電話機10は、後述するスピーカ114を内蔵しており、音声などの情報をスピーカ114から再生する。
【0010】
図3は、プロジェクタおよびカメラ付き携帯電話機10の構成を説明するブロック図である。図3において、プロジェクタおよびカメラ付き携帯電話機10の表示部10aには、プロジェクタ部120と、カメラ部150と、メイン液晶表示器111と、サブ液晶表示器112と、第2操作部材113と、スピーカ114とが設けられている。また、操作部10bには、CPU101と、メモリ102と、電源回路103と、通信制御回路104と、アンテナ105と、第1操作部材106と、スピーカ107と、マイク108と、外部インターフェイス(I/F)109と、開閉角度スイッチ(SW)110とが設けられ、不図示のカードスロットにメモリカード250が装着されている。メモリカード250は着脱可能に構成される。
【0011】
CPU101は、制御プログラムに基づいて、プロジェクタおよびカメラ付き携帯電話機10を構成する各部から入力される信号を用いて所定の演算を行うなどして、プロジェクタおよびカメラ付き携帯電話機10の各部に対する制御信号を送出することにより、通信動作(通話およびデータ送受を含む)、撮影動作および投影動作の制御を行う。なお、制御プログラムはCPU101内の不図示の不揮発性メモリに格納されている。
【0012】
メモリ102はCPU101の作業用メモリとして使用される。メモリカード250はフラッシュメモリなどの不揮発性メモリによって構成され、CPU101の指令によりカメラ部150で撮影された画像などのデータ、通信制御回路104によって受信もしくは送信したメール内容などのデータの書き込み、保存および読み出しが可能である。マイク108は、集音した音声を電気信号に変換してCPU101へ送出する。音声信号のデータは、通話時には通信制御回路104へ送出され、撮影モード時にはメモリカード250に記録される。
【0013】
外部インターフェイス(I/F)109は、ビデオカメラなどの外部機器から入力されるビデオ信号による再生画像をメイン液晶表示器111に表示させたり、プロジェクタ部120に投影させたりするため、入力されたビデオ信号を画像データに変換し、変換後の画像データをCPU101へ送出する。また、外部インターフェイス(I/F)109は、外部機器から入力される音声信号による音声をスピーカ107で再生させるため、入力された音声信号を音声データに変換し、変換後の音声データをCPU101へ送出する。
【0014】
電源回路103は、プロジェクタおよびカメラ付き携帯電話機10を構成する各部へ必要な電力を供給する。通信制御回路104は、不図示の携帯電話基地局との間でアンテナ105を介して無線通信を行う。第1操作部材106は、不図示のメインスイッチ、ダイヤルボタン、通話スイッチおよびメニュースイッチなどを含み、各スイッチの操作内容に対応する操作信号をCPU101へ送出する。
【0015】
スピーカ114は、通話時に通信制御回路104で受信された音声信号を再生する。なお、スピーカ114は受話用のスピーカであり、後述するスピーカ107は再生用のスピーカである。開閉角度スイッチ110は、折り畳みヒンジ部材105の開閉角度を示す信号をCPU101へ送出する。
【0016】
メイン液晶表示器111は、CPU101の指令により画像やテキストなどの情報を表示する。テキスト情報は、プロジェクタおよびカメラ付き携帯電話機10の動作状態、操作メニュー、メール内容などである。サブ液晶表示器112は、CPU101の指令により着信やメール受信を報知する情報を表示する。スピーカ107は、CPU101から出力される音声データによる音声を再生する。
【0017】
第2操作部材113は、不図示レリーズボタン、撮影モードスイッチ、および投影モードスイッチなどを含み、各スイッチの操作内容に対応する操作信号をCPU101へ送出する。
【0018】
(プロジェクタ部)
プロジェクタ部120は、投影レンズ121と、液晶パネル122と、LED光源123と、プロジェクタ部制御回路124と、レンズ駆動回路125とを含む。プロジェクタ部制御回路124は、CPU101から出力される投影指令に応じてLED光源123に駆動電流を供給する。LED光源123は、供給された電流に応じた明るさで液晶パネル122を照明する。
【0019】
プロジェクタ部制御回路124はさらに、CPU101から送出される投影データ(画像データ、キャラクタデータ)に応じて液晶パネル駆動信号を生成し、生成した駆動信号で液晶パネル122を駆動する。具体的には、液晶層に対して画像信号に応じた電圧を画素ごとに印加する。電圧が印加された液晶層は液晶分子の配列が変わり、当該液晶層の光の透過率が変化する。このように、投影データに応じてLED光源123からの光を変調することにより、液晶パネル122が光像を生成する。
【0020】
プロジェクタ部制御回路124内の不揮発性メモリ1240には、液晶パネル122の欠陥画素情報が格納されている。欠陥画素情報は、液晶パネル122に欠陥画素が存在する場合の欠陥内容および欠陥位置を示すデータである。欠陥内容は、光を透過状態にしたまま遮光できない状態(白欠陥と呼ぶ)、もしくは光を遮光したまま透過状態にできない状態(黒欠陥と呼ぶ)である。欠陥画素情報は、プロジェクタおよびカメラ付き携帯電話機10の組立時において、搭載される液晶パネル122の個別検査データに基づいてプロジェクタ部制御回路124内のメモリ1240に格納される。欠陥画素情報の取り扱いについては後述する。
【0021】
レンズ駆動回路125は、プロジェクタ部制御回路124から出力される制御信号に基づいて、投影レンズ121を光軸方向へ進退駆動する。これにより、投影像のフォーカシング調節が行われる。投影レンズ121は、液晶パネル122から射出される光像をスクリーンなどへ向けて投射する。
【0022】
プロジェクタ部120は、CPU101の指令により下記(1)〜(3)のいずれかに対応する像を投影する。CPU101は、第2操作部材113を構成する投影切替えスイッチから操作信号が入力されるごとに、下記の(1)〜(3)の投影像を(1)→(2)→(3)→(1)…の順にサイクリックに切替えるように、投影データをプロジェクタ部120へ送出する。ただし、外部インターフェイス(I/F)109に外部機器が接続されていない場合には(3)がスキップされる。
【0023】
(1)メモリカード250に記録されているメール内容や着信を示すキャラクタ
(2)メモリカード250に記録されている画像データによる再生画像
(3)外部インターフェイス(I/F)109から入力されたビデオ信号による再生画像
【0024】
CPU101は、上記(1)または(2)を投影する場合、記録日時が最も新しい(記録されているデータの中で最後に記録されたもの)データをメモリカード250から順に読出し、読出したデータをプロジェクタ部120へ送出する。なお、メモリカード250がカードスロットに装着されていない場合には、通信制御回路104で受信されたデータをプロジェクタ部120へ直接送出することも可能に構成されている。
【0025】
(カメラ部)
カメラ部150は、撮影レンズ151と、イメージセンサ152と、レンズ駆動回路153と、カメラ部制御回路154とを含む。イメージセンサ152としては、CCDやCMOS撮像素子などが用いられる。カメラ部制御回路154は、CPU101からの指令によりイメージセンサ152およびレンズ駆動回路153を駆動制御するとともに、イメージセンサ152から出力される撮像信号(蓄積電荷信号)に対して所定の画像処理を行う。画像処理は、ホワイトバランス処理やガンマ処理などである。
【0026】
レンズ駆動回路153は、カメラ部制御回路154からズーム制御信号を受けると、制御信号に応じて撮影レンズ151を構成するズームレンズ(不図示)をテレ側もしくはワイド側へ駆動する。撮影レンズ151は、イメージセンサ152の撮像面上に被写体像を結像させる。カメラ部制御回路154はイメージセンサ152に撮像を開始させ、撮像終了後にイメージセンサ152から蓄積電荷信号を読出し、上記画像処理を施した上で画像データとしてCPU101へ送出する。なお、カメラ部150で撮影された画像データを通信制御回路104へ直接送出することも可能に構成されている。
【0027】
本発明は、上記プロジェクタおよびカメラ付き携帯電話機10による投影動作のうち、文字や数字シンボルなどのキャラクタ投影に特徴を有するので、この投影動作を中心に説明する。
【0028】
液晶パネル122は、たとえば、100画素×100画素のモノクロ液晶素子によって構成される。図4は、液晶パネル122の一部に形成されたキャラクタ群を例示する図である。8画素×8画素を1画素ブロックとし、1画素ブロックにつき1キャラクタを形成させる場合には、液晶パネル122に最大10×10画素ブロック分の100キャラクタを形成可能であり、100画素×100画素の表示領域の中央部80画素×80画素を初期表示領域として、その周囲10画素の範囲内で表示領域を行または列またはワードまたはキャラクタ単位で移動可能な構成とされている。図4の例では、白地(輝点による明領域)を背景にする黒文字(暗点部)で「Hello ! You have mail」が投影される。
【0029】
プロジェクタ部制御回路124は、投影データとしてキャラクタを示すデータが入力されると、入力データに基づいて液晶パネル122上でキャラクタ(図4の例では黒文字)を形成する画素位置と、欠陥画素情報によって示される欠陥画素位置(キャラクタ色と異なる白欠陥の位置)とが合致するか否かを判定する。第一の実施形態では、液晶パネル122上で垂直方向の1ブロック幅ごと(すなわち、1行分のキャラクタ列ごと)に判定する。
【0030】
図5は、画素位置判定を説明する図であり、升目は画素を表し、×印は白欠陥画素を表す。上段のキャラクタ群「Hello !」は、プロジェクタ部制御回路124に入力されたデータに基づいて通常処理を行った場合に、液晶パネル122上に形成されるキャラクタの画素位置(初期位置とする)を示す。図5の上段の記載例によれば、「H」および「!」のキャラクタ形成画素にそれぞれ白欠陥画素が含まれ、文字欠けを生じてしまう。
【0031】
文字欠けが生じる場合のプロジェクタ部制御回路124は、液晶パネル122上で1行分のキャラクタのそれぞれを初期位置から水平右方向に1画素ずつ平行移動(シフト)させる。図5の下段のキャラクタ群「Hello !」は、右方向へ1画素シフト処理された後に液晶パネル122上に形成されるキャラクタの画素位置を示す。図5の下段の記載例によれば、「H」および「!」のキャラクタ形成画素位置が白欠陥画素位置と合致しなくなり、文字欠けが生じない。プロジェクタ部制御回路124は、キャラクタ形成画素位置(上述の例では1画素ブロック内の黒文字表示画素位置)と白欠陥画素位置とが合致しなくなれば、その時点のキャラクタ形成画素位置を、キャラクタ投影時の画素位置とする。
【0032】
プロジェクタ部制御回路124は、右方向へ1画素ずつシフト処理してもキャラクタ形成画素位置と白欠陥画素位置との合致が解消しない場合、液晶パネル122上で1行分のキャラクタのそれぞれを水平右方向にさらに1画素ずつシフトさせる。以降同様に、プロジェクタ部制御回路124は、キャラクタ形成画素位置と白欠陥画素位置との合致が解消するまで、たとえば、10画素分のシフトを上限として、液晶パネル122上で1行分のキャラクタのそれぞれを水平右方向に1画素ずつシフトさせる。プロジェクタ部制御回路124は、1行分のキャラクタをシフトさせながら、各シフト状態においてキャラクタ形成画素位置と白欠陥画素位置とが合致する画素数をカウントし、カウント値を記憶しておく。
【0033】
10画素分右へシフト処理してもキャラクタ形成画素位置と白欠陥画素位置との合致が解消しない場合、プロジェクタ部制御回路124は、液晶パネル122上で1行分のキャラクタのそれぞれを、上記初期位置から水平左方向に1画素ずつ平行移動させる。プロジェクタ部制御回路124は、キャラクタ形成画素位置と白欠陥画素位置とが合致しなくなれば、その時点のキャラクタ形成画素位置を、キャラクタ投影時の画素位置とする。
【0034】
プロジェクタ部制御回路124は、左方向へ1画素ずつシフト処理してもキャラクタ形成画素位置と白欠陥画素位置との合致が解消しない場合、液晶パネル122上で1行分のキャラクタのそれぞれを水平左方向にさらに1画素ずつシフトさせる。以降同様に、プロジェクタ部制御回路124は、キャラクタ形成画素位置と白欠陥画素位置との合致が解消するまで、たとえば、10画素分のシフトを上限として、液晶パネル122上で1行分のキャラクタのそれぞれを水平左方向に1画素ずつシフトさせる。プロジェクタ部制御回路124は、1行分のキャラクタをシフトさせながら、各シフト状態においてキャラクタ形成画素位置と白欠陥画素位置とが合致する画素数をカウントし、カウント値を記憶しておく。
【0035】
初期位置に対して左右それぞれに10画素分シフト処理してもキャラクタ形成画素位置と白欠陥画素位置との合致が解消しない場合、プロジェクタ部制御回路124は、記憶されている最小のカウント値に対応する液晶パネル122上のキャラクタ形成画素位置を、キャラクタ投影時の画素位置とする。
【0036】
プロジェクタ部制御回路124は、以上説明した水平方向のシフト処理を、液晶パネル122上で全ての行のキャラクタ群についてそれぞれ行う。
【0037】
なお、実際のシフト処理においては、プロジェクタ部制御回路124が上述した処理をプロジェクタ部制御回路124内のメモリ上で投影前に行うことにより、シフト処理している過程のキャラクタ像を投影しないように構成されている。すなわち、プロジェクタ部制御回路124は、液晶パネル122上における全ての行のキャラクタ群についての投影時の画素位置を決定してから、実際に液晶パネル122上にキャラクタ像を生成させる。
【0038】
以上説明した第一の実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)投影キャラクタ(文字、数字、記号など)を形成する画素が欠陥画素を避けるように、液晶パネル122上においてキャラクタを形成する画素位置をシフトしたので、投影像の文字欠けを抑制できる。なお、上述の例ではキャラクタ群の並ぶ方向に画素位置をシフトする例について説明したが、これとは異なる方向(例えば図5上段の例では垂直方向に3画素、あるいは右方向、下方向にそれぞれ1画素)にシフトしても同様の効果を得られる。
(2)画素位置のシフト範囲を初期位置から左右10画素以内にしたので、シフトによって観察者が感じる違和感を抑えられる。この際にシフト範囲を、1画素ブロックを構成するシフト方向の画素数(上記の例では8画素)以下とすればより一層好適である。
(3)左右それぞれに10画素分シフト処理してもキャラクタ形成画素位置と白欠陥画素位置との合致が解消しない場合は、合致する画素数を最小とする液晶パネル122上のキャラクタ形成画素位置をキャラクタ投影時の画素位置とするので、欠陥画素の影響を最小限に抑制できる。
(4)行単位で水平方向にシフトするので、行内のワード間隔が保持され、観察者にとって投影内容が見やすい。
【0039】
白地を背景に黒文字で投影する例を説明したが、黒地(暗点による領域)を背景に白文字(輝点部)を投影する場合にも本発明を適用できる。この場合には、入力データに基づいて液晶パネル122上でキャラクタ(白文字)を形成する画素位置と、欠陥画素情報によって示される欠陥画素位置(この場合は黒欠陥の位置)とが合致するか否かを判定する。
【0040】
以上の説明では、キャラクタが水平方向に並ぶ横書きキャラクタ群を投影する例を説明したが、キャラクタが垂直方向に並ぶ縦書きキャラクタ群の投影時にも本発明を適用できる。縦書き投影の場合は、入力データに基づいて液晶パネル122上でキャラクタを形成する画素位置と、欠陥画素情報によって示される欠陥画素位置とが合致するか否かの判定を、液晶パネル122上で水平方向の1ブロック幅ごと(すなわち、1列分のキャラクタ群ごと)に行う。そして、合致を判定した場合には、初期位置に対して垂直方向の上下それぞれについて例えば10画素分を上限に、液晶パネル122上で1列分のキャラクタを1画素ずつシフトさせる。
【0041】
(第二の実施形態)
液晶パネル122上でキャラクタを形成する画素位置と、欠陥画素情報によって示される欠陥画素位置とが合致するか否かの判定を、液晶パネル122上で1ワードごとに行うようにしてもよい。そして、合致を判定した場合には、初期位置に対して当該ワードを構成するキャラクタ間隔を1画素ずつ広げる。1ワードとは、たとえば、英文字表記の場合は一語単位を表し、仮名文字および漢字表記の場合は一品詞単位を表す。
【0042】
図6は、第二の実施形態による画素位置判定を説明する図であり、升目は画素を表し、×印は白欠陥画素を表す。上段のキャラクタ群「Hello !」は、プロジェクタ部制御回路124に入力されたデータに基づいて通常処理を行った場合に、液晶パネル122上に形成されるキャラクタの画素位置(初期位置とする)を示す。図6の上段の記載例によれば、右から3番目の「l」、2番目の「o」および右端の「!」のキャラクタ形成画素にそれぞれ白欠陥画素が含まれ、文字欠けを生じてしまう。
【0043】
文字欠けが生じる場合のプロジェクタ部制御回路124は、液晶パネル122上で当該1ワード分のキャラクタ間隔のそれぞれを1画素ずつ右方向へ広げる。図6の下段のキャラクタ群「Hello !」は、キャラクタ間隔が広げられた後に液晶パネル122上に形成されるキャラクタの画素位置を示す。図6の下段の記載例によれば、キャラクタ形成画素位置が白欠陥画素位置と合致しなくなり、文字欠けが生じない。プロジェクタ部制御回路124は、キャラクタ形成画素位置と白欠陥画素位置とが合致しなくなれば、その時点のキャラクタ形成画素位置を、キャラクタ投影時の画素位置とする。
【0044】
プロジェクタ部制御回路124は、キャラクタ間隔を1画素ずつ広げてもキャラクタ形成画素位置と白欠陥画素位置との合致が解消しない場合、液晶パネル122上で同ワードのキャラクタ間隔のそれぞれをさらに1画素広げさせる。以降同様に、プロジェクタ部制御回路124は、キャラクタ形成画素位置と白欠陥画素位置との合致が解消するまで、たとえば、4画素分を上限として、液晶パネル122上で1ワード分のキャラクタ間隔のそれぞれを1画素ずつ広げさせる。プロジェクタ部制御回路124は、1ワード分のキャラクタ間隔を広げながら、各キャラクタ間隔においてキャラクタ形成画素位置と白欠陥画素位置とが合致する画素数をカウントし、カウント値を記憶しておく。
【0045】
初期位置に対して4画素分キャラクタ間隔を広げてもキャラクタ形成画素位置と白欠陥画素位置との合致が解消しない場合、プロジェクタ部制御回路124は、記憶されている最小のカウント値に対応するキャラクタ間隔による液晶パネル122上のキャラクタ形成画素位置を、そのワードに関するキャラクタ投影時の画素位置とする。
【0046】
プロジェクタ部制御回路124は、以上説明したキャラクタ間隔を広げる処理を、液晶パネル122上で全てのワードについて個別に行う。
【0047】
なお、実際のキャラクタ間隔を決定する処理においては、プロジェクタ部制御回路124が上述した処理をプロジェクタ部制御回路124内のメモリ上で投影前に行うことにより、キャラクタ間隔を広げている過程のキャラクタ像を投影しないように構成されている。すなわち、プロジェクタ部制御回路124は、液晶パネル122上における全てのワードについての投影時の画素位置を決定してから、実際に液晶パネル122上にキャラクタ像を生成させる。
【0048】
以上説明した第二の実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)投影キャラクタ(文字、数字、記号など)を形成する画素が欠陥画素を避けるように、液晶パネル122上においてキャラクタ間の間隔を広げたので、投影像の文字欠けを抑制できる。
(2)広げる間隔を初期位置から4画素以内にしたので、間隔変更によって観察者が感じる違和感を抑えられる。
(3)キャラクタ間の間隔を4画素分広げてもキャラクタ形成画素位置と白欠陥画素位置との合致が解消しない場合は、合致する画素数を最小とする液晶パネル122上のキャラクタ形成画素位置をキャラクタ投影時の画素位置とするので、欠陥画素の影響を最小限に抑制できる。
(4)複数のキャラクタからなるワード内のキャラクタ間の間隔をワード単位で変更するので、同一ワード内でキャラクタ間隔がまちまちにならず、観察者にとって投影内容が見やすい。
【0049】
以上の説明では、横書きキャラクタの投影の例を説明したが、縦書きキャラクタの投影時にも本発明を適用してよい。
【0050】
液晶パネル122上においてキャラクタ間の間隔を広く変化させる例を説明をしたが、初期位置におけるキャラクタ間隔が所定画素数(たとえば8画素)以上存在する場合は、液晶パネル122上で1ワード分のキャラクタ間隔のそれぞれを1画素ずつ狭くするようにしてもよい。この場合のキャラクタ間隔の下限は、少なくとも2画素とするのが好ましい。
【0051】
ワードごとの各キャラクタのサイズを、大きくしたり小さくしたり変倍させてもよい。たとえば、1キャラクタにつき1ブロック(上記例では8画素×8画素)内でキャラクタのサイズを変更する。サイズ変更は、縦横同比率で変倍させてもよいし、縦および横の一方についてのみ変倍させてもよい。さらには、プロジェクタ部制御回路124は、各ワード間の間隔を、所定画素範囲内で変動させてキャラクタ形成画素位置と欠陥画素位置との合致を判定し、合致が解消された間隔あるいは合致する画素数が最小となる間隔を、ワード間の間隔として各々のワード間の間隔を設定する構成としてもよい。この構成は、複数のキャラクタからなるワード内の各キャラクタの間隔を維持したままで、ワードを平行移動させる構成として考えることができる。ここで、ワード単位の平行移動方向は、キャラクタの並び方向に限定されず、キャラクタの並び方向に垂直な方向、あるいは斜め方向など、所定画素数の範囲内で様々な方向に移動可能とすることが好ましい。
【0052】
第一の実施形態と第二の実施形態とを組み合わせてもよい。プロジェクタ部制御回路124は、たとえば、第二の実施形態によりワードごとのキャラクタ間隔あるいはワード間の間隔を変更した後もなおキャラクタ形成画素位置と白欠陥画素位置との合致が解消していない場合に、第一の実施形態による行(列)単位のシフト処理をさらに行うことによって、キャラクタ形成画素位置と白欠陥画素位置との合致の解消、もしくは合致する画素数を最小にする。なお、第一の実施形態による行(列)単位のシフト処理後に、第二の実施形態によるワードごとのキャラクタ間隔あるいはワード間の間隔を変更しても構わない。
【0053】
上記の例では、表示画面の表示領域より小さい小領域(例えば、8画素×8画素の画素ブロック)に表示され、小領域内の背景とは異なるキャラクタ画素位置の有意な表示によって他の小領域とは独立した情報を表示するキャラクタ像の投影を例に説明した。このようなキャラクタ像の表示においては、小領域の大きさが小さいほど1画素の重要度が増加する。本発明は、このような場合に適用すると特に好適である。さらには、上記の有意な表示を構成する画素数が少ない場合、例えば図形などを線画で投影する場合(この場合には線の幅方向の画素数が少ない)についても本発明を適用できる。
【0054】
(変形例)
白地を背景に黒文字で投影する投影方式、および黒地を背景に白文字で投影する投影方式のいずれかの投影方式を、欠陥画素情報によって示される黒欠陥画素数および白欠陥画素数に応じて選択してもよい。プロジェクタ部制御回路124は、(黒欠陥画素数)>(白欠陥画素数)が成立する場合は黒地を背景に白文字で投影する方式を選択し、(黒欠陥画素数)≦(白欠陥画素数)の場合には白地を背景に黒文字で投影する方式を選択する。
【0055】
プロジェクタ部制御回路124は、背景色を白地にするか黒地にするかを選択してから、第一の実施形態による処理、第二の実施形態による処理、もしくは第一および第二の実施形態の両処理を施す。
【0056】
以上の変形例によれば、黒欠陥画素数および白欠陥画素数の大小関係に応じて、キャラクタ群を形成する画素の光の射出量が、背景部を形成する画素の光の射出量より大きく設定される投影方式か、キャラクタ群を形成する画素の光の射出量が、背景部を形成する画素の光の射出量より小さく設定される投影方式かを選択する構成としたので、液晶パネル122が有する欠陥画素の影響を抑えるように投影できる。
【0057】
以上の説明では、液晶パネル122を透過型の液晶表示素子で構成する例を説明したが、透過型液晶パネルの代わりに反射型液晶素子や半透過型液晶素子を用いて構成してもよい。
【0058】
プロジェクタおよびカメラ付き携帯電話機10を例に説明したが、プロジェクタ部120を備えるものであれば、カメラ部150や通信制御回路104を有していない電子機器に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第一の実施形態によるプロジェクタおよびカメラ付き携帯電話機の正面図である。
【図2】プロジェクタおよびカメラ付き携帯電話機の側面図である。
【図3】プロジェクタおよびカメラ付き携帯電話機の構成を説明するブロック図である。
【図4】液晶パネルに形成されたキャラクタ像を例示する図である。
【図5】画素位置判定を説明する図である。
【図6】第二の実施形態による画素位置判定を説明する図である。
【符号の説明】
【0060】
10…プロジェクタおよびカメラ付き携帯電話機
10a…表示部
10b…操作部(ベース部)
101…CPU
102…メモリ
106…第1操作部材
113…第2操作部材
120…プロジェクタ部
1240…メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の射出量を画素ごとに制御して光像を形成する光像形成素子と、
前記光像形成素子に形成されるキャラクタ群の画素位置が前記光像形成素子に含まれる欠陥画素を避けるように、前記キャラクタ群を前記キャラクタ群が並ぶ行もしくは列単位で平行移動させる投影制御手段とを備えることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
光の射出量を画素ごとに制御して光像を形成する光像形成素子と、
前記光像形成素子に形成されるキャラクタ群の画素位置が前記光像形成素子に含まれる欠陥画素を避けるように、複数の前記キャラクタからなるワード内の各キャラクタの間隔を前記ワード単位で変化させる投影制御手段とを備えることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項3】
光の射出量を画素ごとに制御して光像を形成する光像形成素子と、
前記光像形成素子に形成されるキャラクタ群の画素位置が前記光像形成素子に含まれる欠陥画素を避けるように、複数の前記キャラクタからなるワード内の各キャラクタの間隔を維持したまま、前記ワードを、平行移動させる投影制御手段とを備えることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項4】
光の射出量を画素ごとに制御して光像を形成する光像形成素子と、
前記光像形成素子に形成されるキャラクタ群の画素位置が前記光像形成素子に含まれる欠陥画素を避けるように、複数の前記キャラクタからなるワード内の各キャラクタの大きさをワード単位で変化させる投影制御手段とを備えることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のプロジェクタにおいて、
前記投影制御手段は、(1)前記キャラクタ群を形成する画素の光の射出量が前記キャラクタ群とは異なる背景部を形成する画素の光の射出量より大きく設定される第1の投影方式の場合、前記キャラクタ群の画素位置が、光の射出量が略最小値のまま制御不能な第1の欠陥画素を避け、(2)前記キャラクタ群を形成する画素の光の射出量が前記キャラクタ群とは異なる背景部を形成する画素の光の射出量より小さく設定される第2の投影方式の場合、前記キャラクタ群の画素位置が、前記光の射出量が略最大値のまま制御不能な第2の欠陥画素を避けるように制御を行うことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項6】
請求項5に記載のプロジェクタにおいて、
前記光の射出量が略最大値のまま制御不能な第2の欠陥画素の数と、前記光の射出量が略最小値のまま制御不能な第1の欠陥画素の数とを比較して、前記第2の欠陥画素の数が前記第1の欠陥画素の数より少ないとき、前記第1の投影方式を選択し、前記第1の欠陥画素の数が前記第2の欠陥画素の数より少ないとき、前記第2の投影方式を選択する投影方式選択手段をさらに備えることを特徴とするプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−292800(P2006−292800A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109412(P2005−109412)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】