説明

プロテクタ

【課題】プロテクタを複数箇所で取付作業する場合に、少なくとも1つの取付作業を他の取付作業とは別作業で行えるようにすることを目的とする。
【解決手段】プロテクタ20は、車体に配索されるワイヤーハーネスを保護する。プロテクタ20は、プロテクタ本体22と、第1固定部30と、第2固定部とを備える。第1固定部30は、車体の取付対象部位11に形成された取付孔12に係止可能な可動クランプ40と、可動クランプ40を突出位置と退避位置との間で移動可能に支持するクランプ支持部32とを有する。可動クランプ40を突出位置に移動させて取付孔12に係止することで、第1固定部30が取付対象部位11に取付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤーハーネスを保護するプロテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に布設されるワイヤーハーネスを保護するため、プロテクタが用いられることがある。プロテクタは、樹脂等によって半筒状或は筺状に形成されており、前記ワイヤーハーネスを覆うことで当該ワイヤーハーネスを外部から保護する役割を有する。
【0003】
上記プロテクタは、車体に突設された板状のブラケットを差込むことで、或は、クランプと呼ばれる部品等を用いて、車体に固定される。
【0004】
クランプと呼ばれる部品の構造例として、特許文献1に開示のものがある。
【0005】
特許文献1には、脚部を挟んで両側に一対の小板状の羽根部が配置され、その一対の羽根部が可撓性を有するヒンジ部により脚部に連結され、また、一対の羽根部の外面に係止用の膨出部が形成されたクリップが開示されている。このクリップは、脚部及びその両側の一対の羽根部を取付板に形成された取付孔に挿入して、前記膨出部を取付孔の周縁部に係止させることで、取付板に取付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−322449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、プロテクタは、車体に対して複数箇所で取付られることがある。しかしながら、取付箇所の相互位置関係等によっては、プロテクタを複数箇所で取付ける作業を同時に行うことは難しい。例えば、特許文献1に開示されるようなクリップにおいては、取付孔に対するクリップの挿入方向は一定方向に決っている。かかるクリップが複数プロテクタに突設され、しかも、プロテクタの複数の取付箇所において、取付孔の向きが異なりクリップの挿入方向が相互に異なっていると、各クリップを同時に所定の挿入方向に挿入することは難しい。
【0008】
そこで、本発明は、プロテクタを複数箇所で取付作業する場合に、少なくとも1つの取付作業を他の取付作業とは別作業で行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、第1の態様は、車体に配索されるワイヤーハーネスを保護するプロテクタであって、ワイヤーハーネスの少なくとも一部を覆うプロテクタ本体と、前記プロテクタ本体に設けられ、前記車体に取付可能な第1固定部と、前記プロテクタ本体に設けられ、前記車体に取付可能な第2固定部とを備え、前記第1固定部は、前記車体に形成された取付孔に係止可能な可動クランプと、前記プロテクタ本体に一体的に設けられ、前記可動クランプを前記取付孔に係止させる突出位置と、前記可動クランプを前記車体から退避させる退避位置との間で移動可能に支持するクランプ支持部とを有し、前記可動クランプを前記突出位置に移動させて前記取付孔に係止させることで、前記車体に固定可能に構成されている。
【0010】
第2の態様は、第1の態様に係るプロテクタであって、前記退避位置から前記突出位置への前記可動クランプの移動方向が、前記第2固定部を前記車体に取付作業する際に前記第2固定部が前記車体に押付けられる方向とは異なる。
【0011】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係るプロテクタであって、前記可動クランプは、長尺状のクランプ本体部と、前記クランプ本体部の一端側に設けられ、前記取付孔に係止可能な係止部と、前記クランプ本体部の他端側に突設されたヘッド部とを有し、前記クランプ支持部は、前記クランプ本体部を挿通可能な挿通孔が形成され、前記可動クランプが前記突出位置に移動した状態で前記ヘッド部に当接可能なクランプ挿通部を有し、前記可動クランプが前記突出位置に移動した状態で、前記係止部が前記取付孔に係止すると共に、前記クランプ支持部が前記車体に当接して、前記第1固定部が前記車体に取付けられる。
【0012】
第4の態様は、第3の態様に係るプロテクタであって、前記クランプ本体部のうち前記係止部より前記クランプ挿通部側の部分に、第1突出部が突設されている。
【0013】
第5の態様は、第3又は第4の態様に係るプロテクタであって、前記クランプ本体部の外周に、前記可動クランプが前記退避位置にある状態で、前記クランプ挿通部に当接して前記突出方向への移動を抑制する第2突出部が突設されている。
【0014】
第6の態様は、第5の態様に係るプロテクタであって、前記第2突出部は、前記係止部に向けて順次突出寸法が大きくなる部分を有している。
【0015】
第7の態様は、第1〜第6の態様のいずれか1つの態様に係るプロテクタであって、前記クランプ支持部は、前記可動クランプのうち前記取付孔に係止する部分を収容可能な保護筒部を有し、前記可動クランプが前記退避位置にある状態で、前記可動クランプのうち前記取付孔に係止する部分が前記保護筒部内に収容され、前記可動クランプが前記突出位置にある状態で、前記可動クランプのうち前記取付孔に係止する部分が前記保護筒部から突出するように、前記可動クランプが移動可能に支持されている。
【0016】
第8の態様は、第1〜第7のいずれか1つの態様に係るプロテクタであって、前記クランプ支持部は、前記可動クランプを、その移動方向と交差する方向に移動可能に支持可能に構成されている。
【発明の効果】
【0017】
第1の態様によると、第2固定部を車体に取付けした後、可動クランプを突出位置に移動させて可動クランプを取付孔に係止させることで、第1固定部が車体に取付けされる。このため、プロテクタを複数箇所で取付作業する場合に、第1固定部による少なくとも1つの取付作業を、第2固定部による他の取付作業とは別作業で行える。
【0018】
第2の態様によると、第2固定部を所定の方向に押付けて車体に取付けした後、これとは異なる方向に可動クランプを押込んで、第1固定部を車体に取付けることができる。
【0019】
第3の態様によると、可動クランプを突出位置に移動させて、係止部を取付孔に係止させると共に、クランプ支持部を車体に当接させることで、第1固定部を前記車体に取付けることができる。
【0020】
第4の態様によると、第1突出部がクランプ挿通部に当接することで、係止部とクランプ挿通部との干渉が抑制され、係止部の損傷を抑制できる。
【0021】
第5の態様によると、前記可動クランプが前記退避位置にある状態で、第2突出部がクランプ挿通部に当接して可動クランプの突出方向への移動が抑制されるため、可動クランプのがたつきが抑制される。
【0022】
第6の態様によると、前記第2突出部は、前記係止部に向けて順次突出寸法が大きくなる部分を有しているため、プロテクタを車体に取付ける前の状態で、第2突出部が挿通孔から脱して突出位置側へ移動したとしても、第2突出部を容易にクランプ挿通部に当接する位置に戻すことができる。
【0023】
第7の態様によると、前記可動クランプのうち前記取付孔に係止する部分が、前記退避位置にある状態で前記保護筒部内に収容されるため、可動クランプの係止部分の損傷を抑制できる。
【0024】
第8の態様によると、可動クランプを、その移動方向と交差する方向に移動させることで、第1固定部の実際の固定位置と第2固定部の実際の固定位置との相対的な位置関係の誤差を吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態に係るプロテクタを示す斜視図である。
【図2】同上のプロテクタを示す斜視図である。
【図3】同上のプロテクタを示す平面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】第1固定部を取付対象部位に固定する前の状態におけるプロテクタを示す斜視図である。
【図7】プロテクタを取付対象部位に固定する前の状態におけるプロテクタを示す底面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図である。
【図9】図7のIX−IX線断面図である。
【図10】可動クランプを示す側面図である。
【図11】可動クランプを示す正面図である。
【図12】可動クランプを示す平面図である。
【図13】可動クランプを示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施形態に係るプロテクタ20について説明する。図1及び図2はプロテクタ20を示す斜視図であり、図3は同プロテクタ20を示す平面図である。なお、図1〜図3は、プロテクタ20が車体の一部である取付対象部位11、13に取付けられた状態を示している。
【0027】
プロテクタ20は、車体に取付けられた状態で、当該車体に配索されるワイヤーハーネス18を保護するように構成されている。ここで、ワイヤーハーネス18は、複数の電線が接続先となる各種電気機器の配設位置に合せて適宜分岐されつつ結束された構成とされている。
【0028】
プロテクタ20は、上記ワイヤーハーネスの少なくとも一部(ここでは一部)を覆った状態で、車体に取付けられることで、ワイヤーハーネス18の少なくとも一部を保護する。
【0029】
プロテクタ20は、樹脂等によって金型成型された部材であり、プロテクタ本体22と、第1固定部30と、第2固定部50とを備えている。なお、本実施形態では、プロテクタ20のうち後述する可動クランプ40を除く部分が、樹脂等によって一体に金型成型された例で説明するが、必ずしもその必要はない。例えば、プロテクタ20の蓋となる部分が、他の部分とは別体とされていてもよい。
【0030】
プロテクタ本体22は、ワイヤーハーネス18の少なくとも一部分を覆うように構成されている。ここでは、プロテクタ本体22は、半筒状部分23の一側開口を蓋部24で閉じた筒状に形成されており、ワイヤーハーネス18の一部分の外周囲全体を覆うように構成されている。もっとも、プロテクタ本体22は、ワイヤーハーネス18の外周囲全体を覆う筒状に形成されている必要はなく、例えば、横断面U字状に形成された半筒状のものであってもよい。また、プロテクタ本体22は、ワイヤーハーネス18の配設経路に沿った形状、ここでは、L字状に曲る筒状に形成されている。プロテクタ本体22は、ワイヤーハーネス18の配設経路に沿った形状であればよく、その他の屈曲形状、湾曲形状或は直線形状等であってもよい。そして、ワイヤーハーネス18の長手方向の一部分がプロテクタ本体22内に収容され、プロテクタ本体22の両端側開口から外方に向けてワイヤーハーネス18が延出するようになっている。
【0031】
このプロテクタ本体22に、第1固定部30と第2固定部50とが設けられている。第1固定部30及び第2固定部50は、それぞれ車体の一部である取付対象部位11、13に取付可能に構成されている。ここでは、上記プロテクタ本体22の一端部の側方位置に第1固定部30が設けられ、プロテクタ本体22の他端部の側方位置に第2固定部50が設けられている。もっとも、第1固定部30及び第2固定部50の設置位置は、上記例に限られず、例えば、プロテクタ本体22の長手方向中間部に設けられていてもよい。また、プロテクタ本体22には、以下に説明する第1固定部30或は第2固定部50と同様構成の固定部、或は、他の構成の固定部が設けられていてもよい。
【0032】
第1固定部30及び第2固定部50は、それぞれ車体に対して所定方向に押付けることにより、当該車体に対して取付可能とされている。より具体的には、第1固定部30及び第2固定部50は、それぞれ車体における取付対象部位11、13に対して直交する方向に押付けることにより、車体に取付けられる。このため、第1固定部30及び第2固定部50の取付対象部位の姿勢が異なっていると、第1固定部30を取付対象部位11に対して取付けるための作業方向A(後述する可動クランプ40が退避位置から突出位置に移動する方向参照)と、第2固定部50を取付対象部位13に対して取付けるための作業方向Bとは異なる(図1参照)。このため、プロテクタ20全体を一定方向に押付けることによっては、第1固定部30の取付作業と第2固定部50の取付作業とを同時に行うことは難しい。そこで、本プロテクタ20では、第1固定部30の取付作業と、第2固定部50とを別々に行えるようにしている。
【0033】
説明の便宜上、第2固定部50について説明してから第1固定部30について説明する。
【0034】
第2固定部50は、車体に対して所定方向に押付けることにより、当該車体に対して取付可能とされている。
【0035】
より具体的には、車体の取付対象部位13に長尺状の車体側固定部材14が突設されている。ここでは、車体側固定部材14は、金属等で形成された細長板状部材であり、その両側部に沿って縁部が突設されている。この車体側固定部材14は、取付対象部位13に対して溶接等で固定されている。また、車体側固定部材14には、係止孔14h(ここでは三角状の孔)が少なくとも1つ(ここでは複数)形成されている。かかる車体側固定部材14は、ブラケットとも呼ばれる。
【0036】
上記車体側固定部材14が第2固定部50に挿通されることで、第2固定部50が取付対象部位13に取付けられる。すなわち、第2固定部50には、上記車体側固定部材14を挿通可能な固定部材挿通孔52が形成されている。ここでは、固定部材挿通孔52は、車体側固定部材14の横断面形状に応じた横断面形状、より具体的には、一長辺側の中間部が凹む長方形状の横断面形状を有する孔形状に形成されている。また、固定部材挿通孔52の内面には、上記係止孔14hに係止可能な固定部材係止突部53が形成されている(図1参照)。固定部材係止突部53は、車体側固定部材14の挿通方向に向けて順次高さ寸法が大きくなる突起形状に形成されている。そして、車体側固定部材14を固定部材挿通孔52に挿通すると、固定部材係止突部53がいずれか1つの係止孔14hに係止して、車体側固定部材14が第2固定部50に挿通固定される。つまり、車体側固定部材14を固定部材挿通孔52内に挿通する方向(作業方向B)に、第2固定部50を取付対象部位13に押込むことで、第2固定部50が取付対象部位13に取付される。通常、車体側固定部材14は、取付対象部位13の表面に対して直交姿勢で固定されており、従って、第2固定部50の作業方向Bは、通常、取付対象部位13の表面に対して直交する方向である。もっとも、車体側固定部材14が取付対象部位13の表面に対して直交姿勢であることは必須ではなく、従って、第2固定部50の作業方向Bが取付対象部位13の表面に対して直交する方向であることは必須ではない。また、第2固定部の構成は上記例に限られない。例えば、後述する可動クランプ40のクランプ本体部42及び係止部46に相当する部分がクランプ本体部42に突設された構成であってもよい。
【0037】
第1固定部30について説明する。図4は図3のIV−IV線断面図であり、図5は図3のV−V線断面図である。また、図6は第1固定部30を取付対象部位11に固定する前の状態におけるプロテクタ20を示す斜視図である。図7はプロテクタ20を取付対象部位11、13に固定する前の状態におけるプロテクタ20を示す底面図であり、図8は図7のVIII−VIII線断面図であり、図9は図7のIX−IX線断面図である。なお、図7では蓋部24を取外した状態を示している。図10は可動クランプ40を示す側面図であり、図11は可動クランプ40を示す正面図であり、図12は可動クランプ40を示す平面図であり、図13は可動クランプ40を示す底面図である。
【0038】
第1固定部30は、クランプ支持部32と可動クランプ40とを備えており、車体に対して可動クランプ40を所定方向に押付けることにより、当該車体に対して取付可能とされている。
【0039】
より具体的には、車体の取付対象部位11には、取付孔12が形成されている。ここでは、取付孔12は、長孔状に形成されている。
【0040】
第1固定部30は、可動クランプ40を上記取付孔12に係止させることで、取付対象部位11に取付けられる。
【0041】
すなわち、可動クランプ40は、上記取付孔12に係止可能に構成されており、本可動クランプ40が取付孔12に係止されることで、第1固定部30が取付対象部位11に取付けられる。
【0042】
より具体的には、可動クランプ40は、長尺状のクランプ本体部42と、クランプ本体部42の一端側に設けられた係止部46と、クランプ本体部42の他端側に突設されたヘッド部49とを有している。
【0043】
クランプ本体部42は、ここでは、長円柱状に形成されており、その表面の一部が肉抜きされている。
【0044】
係止部46は、取付孔12に挿入することにより取付孔12に係止可能に構成されている。より具体的には、係止部46は、係止本体部47と、係止本体部47の先端部より基端部に向けて延出する一対の係止片48とを有している。係止本体部47は、クランプ本体部42の横断面形状における短径方向の厚みより薄い板状に形成され、かつ、その先端部が先端側に向けて徐々に幅狭になる形状に形成されている。また、一対の係止片48は、係止本体部47の先端部より基端側に向けて外向き傾斜するように延出する長方形板状に形成されている。また、一対の係止片48の先端部には、外向き及び先端向きに開口する係止凹部48aが形成されている。そして、本係止部46を取付孔12に挿入すると、一対の係止片48の外面が取付孔12の周縁部に押し当てられて、内向きに弾性変形する。係止部46をさらに押込み、一対の係止片48が取付孔12の周縁部を乗越えると、一対の係止片48が外向きに弾性復帰し、一対の係止片48の先端部(ここでは係止凹部48a)が取付孔12の周縁部に、挿入方向反対側から係止するようになっている。ここでは、一対の係止片48は若干内側に弾性変形した状態で、取付孔12の周縁部に係止している(図5の矢符参照)。これにより、係止部46と取付孔12とのがたつきが抑制されている。通常、係止部46は、取付孔12に対してその中心軸方向に沿って挿入される。このため、可動クランプ40の挿入方向(作業方向A)は、取付孔12の中心軸方向、即ち、取付対象部位11の表面に直交する方向である。このため、取付対象部位11、13の表面が互いに平行な関係にないと、作業方向Aと作業方向Bとは異なることになる。本実施形態では、可動クランプ40の作業方向A(後述する退避位置から突出位置への移動方向)が、第2固定部50を取付対象部位13に取付作業する際に第2固定部50が取付対象部位13に押付けられる作業方向Bとは異なる例で説明する。もっとも、作業方向Aと作業方向Bとは同じであってもよい。
【0045】
ヘッド部49は、ここでは、クランプ本体部42の基端部の外周囲に突出する長円板状に形成されている。本ヘッド部49は、後述するように、クランプ支持部32に対して可動クランプ40が突出位置まで突出した状態で、クランプ支持部32に当接して可動クランプ40の突出方向への移動を規制する役割を有している。
【0046】
また、上記クランプ本体部42のうち係止部46よりもヘッド部49側(後述するクランプ挿通部36側)の部分に第1突出部43が形成されている。第1突出部43は、ここでは、クランプ本体部42のうち係止部46側の端部の位置で、かつ、クランプ本体部42のうちその横断面形状における長径方向に沿った両面に形成されている。第1突出部43は、後述するクランプ挿通部36に係止可能な程度の突出寸法を有している。また、第1突出部43は、係止部46の反対側に向けて徐々に突出寸法が大きくなる形状に形成されている。従って、可動クランプ40を係止部46側から挿通孔36hに押込むと、クランプ支持部32側の弾性変形等によって第1突出部43がクランプ挿通部36を越えることができる。そして、第1突出部43がクランプ挿通部36を越えると、第1突出部43がクランプ挿通部36に係止することで、係止部46がクランプ挿通部36に干渉する位置まで可動クランプ40が戻らないようになっている。
【0047】
また、クランプ本体部42の外周に、可動クランプ40が後述する退避位置にある状態で、クランプ挿通部36に当接して可動クランプ40の突出方向への移動を抑制する第2突出部44が突設されている。ここでは、第2突出部44は、上記第1突出部43よりもヘッド部49よりの位置で、かつ、クランプ本体部42のうちその横断面形状における長径方向に沿った両面に形成されている。第2突出部44は、挿通孔36hに接触可能な程度の突出寸法を有しており、クランプ本体部42のうち第2突出部44が形成された部分が挿通孔36h内にその内周面に押付けられた状態で配設されるようになっている。なお、第2突出部44は、クランプ挿通部36の開口側に当接する構成であってもよい。これにより、可動クランプ40が退避位置に保持され、そのがたつきが抑制されている。また、第2突出部44は、係止部46に向けて順次突出寸法が大きくなるように形成されており、作業方向Aではクランプ挿通部36を脱し難い一方、作業方向Aの反対方向にはクランプ挿通部36に当接する位置に容易に挿入できるようになっている。
【0048】
クランプ支持部32は、プロテクタ本体22の他端部の側方位置に当該プロテクタ本体22に対して一定的に突設されている。このクランプ支持部32は、可動クランプ40を取付孔12に係止させる突出位置(図4及び図5参照)と、可動クランプ40を車体から退避させる退避位置(図8及び図9参照)との間で移動可能に支持するように構成されている。そして、可動クランプ40が突出位置に移動して取付孔12に係止することで、第1固定部30が車体の取付対象部位11に固定されるようになっている。
【0049】
より具体的には、クランプ支持部32は、保護筒部34と、クランプ挿通部36とを有している。
【0050】
保護筒部34は、少なくともクランプ本体部42を挿通可能な筒状(ここでは長円筒状)に形成されている。保護筒部34の軸方向寸法は、少なくとも係止部46を収容可能な大きさに形成されている。
【0051】
保護筒部34の軸方向の一部分にクランプ挿通部36が形成されている。ここでは、保護筒部34の一端側開口部に、クランプ挿通部36が形成されている。クランプ挿通部36は、保護筒部34の一端側開口縁部より内側(僅かに内側)の位置より内周側に張出す鍔状部37と、鍔状部37のうち対向する2箇所より保護筒部34の軸方向に沿って突出する延長部分38とを有している。ここでは、鍔状部37は、保護筒部34の内周形状に合わせて長円形状に形成されている。また、この鍔状部37の長径方向に沿った一対の辺部分より上記一対の延長部分38が延出している。延長部分38の先端部は、保護筒部34の内側に突出している。そして、この鍔状部37の内周部及び延長部分38の内面とで、クランプ本体部42を挿通可能な挿通孔36hが形成されている。この挿通孔36hは、クランプ本体部42の長円状横断面形状よりも、その長径方向において大きな長円形状に形成されている。
【0052】
可動クランプ40は、挿通孔36h内でその長手方向に沿って退避位置と突出位置との間で移動可能に支持されており、可動クランプ40が突出位置まで移動するとヘッド部49がクランプ挿通部36に当接してそれ以上の突出方向への移動が規制される。
【0053】
ここで、退避位置は、係止部46を車体より退避させた位置である(図8及び図9参照)。本実施形態では、退避位置では、係止部46は保護筒部34内に収容される。また、この状態では、第1突出部43がクランプ挿通部36に係止しており、係止部46とクランプ挿通部36との接触が回避されている。また、この状態では、第2突出部44は挿通孔36hの内周面(ここでは、延長部分38の内面)に接触しており、可動クランプ40が退避位置に保持され、そのがたつきが抑制されている。
【0054】
また、突出位置は、上記退避位置よりも、係止部46を車体に向けて突出させた位置である(図4及び図5参照)。本実施形態では、突出位置では、ヘッド部49がクランプ挿通部36に係止し、係止部46全体が保護筒部34より突出する。そして、この状態で、係止部46が取付孔12に抜止め状に係止すると共に、クランプ支持部32の保護筒部34が取付対象部位11の表面に当接して、第1突出部43が取付対象部位11に取付固定される。なお、係止部46の突出量は、取付対象部位11の厚み寸法等に応じて決定され、クランプ本体部42の長さ寸法、保護筒部34の軸方向寸法等によって調整される。
【0055】
なお、挿通孔36hは、クランプ本体部42の長円状横断面形状よりも、その長径方向において大きな長円形状に形成されている。この大きい寸法分、挿通孔36hの長径方向(つまり、可動クランプ40の作業方向Aと交差する方向)においても、可動クランプ40が移動可能に支持されている。
【0056】
このように構成されたプロテクタ20を車体に取付ける作業について説明する。
【0057】
まず、可動クランプ40が退避位置に移動したプロテクタ20を準備する。この状態でのプロテクタ20では、可動クランプ40の係止部46は保護筒部34内に収っているので、当該プロテクタ20の搬送中等において係止部46が外部部品等に接触することにより係止部46の破損は抑制されている。また、第1突出部43がクランプ挿通部36に当接しているので、係止部46とクランプ挿通部36との接触も回避され、これによっても、係止部46の破損は抑制されている。また、第2突出部44が挿通孔36hの内周面に押付けられているので、可動クランプ40が退避位置に保持され、そのがたつきが抑制されている。なお、仮に可動クランプ40が退避位置から突出位置側に移動したとしても、可動クランプ40を容易に退避位置に戻すことができる。
【0058】
そして、プロテクタ20を車体の取付対象部位11、13近くに配設し、第2固定部50を作業方向Bに沿って取付対象部位13に向けて押付け、取付対象部位13の車体側固定部材14を第2固定部50の固定部材挿通孔52内に挿入する。これにより、第2固定部50が取付対象部位13に取付けられる。
【0059】
次に、クランプ支持部32を取付対象部位11の表面に接触させた状態で、可動クランプ40を作業方向Aに沿って退避位置から突出位置に向けて押込み、取付対象部位11の取付孔12に挿入する。そして、可動クランプ40の係止部46を取付孔12に抜止め係止させると、第1固定部30が取付対象部位11に取付けられる。
【0060】
なお、可動クランプ40を取付孔12に押込む際、車体側固定部材14と取付孔12との相対的な位置誤差、或は、第1固定部30と第2固定部50との相対的な位置誤差がある場合、その誤差に応じて可動クランプ40を、挿通孔36hの長径方向に沿って移動させることができる。そのため、そのような誤差が存在している場合でも、第1固定部30を取付対象部位11に取付けることができる。
【0061】
以上のように構成されたプロテクタ20によると、第2固定部50を車体に取付けした後、可動クランプ40を突出位置に移動させて可動クランプ40を取付孔12に係止させることで、第1固定部30が車体に取付けられる。このため、プロテクタ20を複数箇所で取付作業する場合に、第1固定部30による少なくとも1つの取付作業を他の第2固定部50の取付作業とは別作業で行える。
【0062】
特に、第1固定部30の作業方向Aと第2固定部50の作業方向Bとが異なる場合において、別々の取付作業を行えるため、有効といえる。
【0063】
また、可動クランプ40の係止部46を取付孔12に係止すると共に、クランプ支持部32を車体の取付対象部位11に当接させることで、第1固定部30をより確実かつ簡易に車体に取付けることができる。
【0064】
また、第1固定部30がクランプ挿通部36に当接することで、可動クランプ40の係止部46とクランプ挿通部36との干渉が抑制されるため、係止部46の損傷が抑制される。
【0065】
また、可動クランプ40が退避位置にある状態で、第2突出部44がクランプ挿通部36に当接して可動クランプ40の突出方向への移動が抑制されるため、保管、運搬状態での可動クランプ40のがたつきが抑制される。
【0066】
また、第2突出部44は、係止部46に向けて順次突出寸法が大きくなる形状に形成されているため、プロテクタ20を車体に取付ける前の状態で、第2突出部44が挿通孔36hから脱して突出位置側へ移動したとしても、第2突出部44を容易にクランプ挿通部36に当接する位置に戻すことができる。
【0067】
また、可動クランプ40の係止部46が、可動クランプ40が退避位置にある状態で保護筒部34内に収容されているため、外部部品との接触による係止部46の損傷を抑制できる。
【0068】
また、可動クランプ40がその作業方向Aと交差する方向に移動可能であるため、第1固定部30と第2突出部44との相対的な位置関係の誤差等を吸収して、第1固定部30及び第2固定部50を車体に取付けることができる。
【0069】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0070】
11、13 取付対象部位
12 取付孔
14 車体側固定部材
18 ワイヤーハーネス
20 プロテクタ
22 プロテクタ本体
30 第1固定部
32 クランプ支持部
34 保護筒部
36 クランプ挿通部
36h 挿通孔
40 可動クランプ
42 クランプ本体部
43 第1突出部
44 第2突出部
46 係止部
49 ヘッド部
50 第2固定部
52 固定部材挿通孔
A、B 作業方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に配索されるワイヤーハーネスを保護するプロテクタであって、
ワイヤーハーネスの少なくとも一部を覆うプロテクタ本体と、
前記プロテクタ本体に設けられ、前記車体に取付可能な第1固定部と、
前記プロテクタ本体に設けられ、前記車体に取付可能な第2固定部と、
を備え、
前記第1固定部は、
前記車体に形成された取付孔に係止可能な可動クランプと、前記プロテクタ本体に一体的に設けられ、前記可動クランプを前記取付孔に係止させる突出位置と、前記可動クランプを前記車体から退避させる退避位置との間で移動可能に支持するクランプ支持部とを有し、前記可動クランプを前記突出位置に移動させて前記取付孔に係止させることで、前記車体に固定可能に構成されている、プロテクタ。
【請求項2】
請求項1記載のプロテクタであって、
前記退避位置から前記突出位置への前記可動クランプの移動方向が、前記第2固定部を前記車体に取付作業する際に前記第2固定部が前記車体に押付けられる方向とは異なる、プロテクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のプロテクタであって、
前記可動クランプは、長尺状のクランプ本体部と、前記クランプ本体部の一端側に設けられ、前記取付孔に係止可能な係止部と、前記クランプ本体部の他端側に突設されたヘッド部とを有し、
前記クランプ支持部は、前記クランプ本体部を挿通可能な挿通孔が形成され、前記可動クランプが前記突出位置に移動した状態で前記ヘッド部に当接可能なクランプ挿通部を有し、
前記可動クランプが前記突出位置に移動した状態で、前記係止部が前記取付孔に係止すると共に、前記クランプ支持部が前記車体に当接して、前記第1固定部が前記車体に取付けられる、プロテクタ。
【請求項4】
請求項3記載のプロテクタであって、
前記クランプ本体部のうち前記係止部より前記クランプ挿通部側の部分に、第1突出部が突設されている、プロテクタ。
【請求項5】
請求項3又は請求項4記載のプロテクタであって、
前記クランプ本体部の外周に、前記可動クランプが前記退避位置にある状態で、前記クランプ挿通部に当接して前記突出方向への移動を抑制する第2突出部が突設されている、プロテクタ。
【請求項6】
請求項5記載のプロテクタであって、
前記第2突出部は、前記係止部に向けて順次突出寸法が大きくなる部分を有している、プロテクタ。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載のプロテクタであって、
前記クランプ支持部は、前記可動クランプのうち前記取付孔に係止する部分を収容可能な保護筒部を有し、
前記可動クランプが前記退避位置にある状態で、前記可動クランプのうち前記取付孔に係止する部分が前記保護筒部内に収容され、前記可動クランプが前記突出位置にある状態で、前記可動クランプのうち前記取付孔に係止する部分が前記保護筒部から突出するように、前記可動クランプが移動可能に支持されている、プロテクタ。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載のプロテクタであって、
前記クランプ支持部は、前記可動クランプを、その移動方向と交差する方向に移動可能に支持可能に構成されている、プロテクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−42566(P2013−42566A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175973(P2011−175973)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】