説明

プロペラシャフトの保持構造

【課題】 簡単かつ低コストな構成でありながら、プロペラシャフトの車両に対する搭載角度の変化に対応することができ、以って設計・製造コストの低減、部品点数の削減による部品管理の簡略化、組み立て作業能率の改善などに貢献可能なプロペラシャフトの保持構造を提供する。
【解決手段】 本発明は、車両の駆動源からの回転動力を駆動輪へ伝達する経路の途中に介装されるプロペラシャフトの車両に対する保持構造であって、プロペラシャフト101を回転自在に支持するベアリング105を保持するベアリング保持部106、107の外周を、内周面151が凹状球面形状に形成されたベアリングサポート150に収容支持させ、プロペラシャフト101を、車両に略一体的に取り付けられるベアリングサポート150の内周面151の凹状球面形状に沿って揺動可能に保持させたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駆動源からの回転動力を駆動輪へ伝達する経路の途中に介装されるプロペラシャフトを車両へ支持するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプロペラシャフトの保持構造の一例として、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。
【0003】
このものは、図5に示したように構成されている。
すなわち、車両の駆動源であるエンジンから出力される回転動力はトランスミッション(変速機)に入力されて変速され、この変速された後の回転動力が第1プロペラシャフト101に伝達されるが、この第1プロペラシャフト101の軸端には、センタベアリングシャフト102が取り付けられ、このセンタベアリングシャフト102にセンタベアリングカップリング103をスプライン係合させつつナット104で締付固定している。
【0004】
そして、センタベアリングシャフト102の外周に保持させたセンタベアリング105をセンタベアリングシャフト102の段部とセンタベアリングカップリング103の端面の間に挟み込み固定する構成となっている。
【0005】
更に、センタベアリング105とセンタベアリングプレート106で保持された環状弾性体107の外周部をセンタベアリングサポート108に取り付けたうえで、該センタベアリングサポート108を車両のフレーム等に取り付けられるブラケット109に結合してプロペラシャフトを保持するといった構成となっている。
【0006】
なお、センタベアリングカップリング103の下流端部110と、図示しない駆動力伝達経路下流(ディファレンシャル装置、駆動輪など)に向って伸びる第2プロペラシャフト(図示せず)と、をユニバーサルジョイント等を介して結合することにより、取り付け角度の異なる第1プロペラシャフト101と第2プロペラシャフト(図示せず)の間のトルク伝達の円滑性が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09−123775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、車種が異なる場合や、同じ車種であっても使用環境やユーザーの要求などに応じて仕様の異なるトランスミッション(変速機)が搭載される場合があり、このような場合には、トランスミッションのサイズや搭載位置や搭載角度等が異なるため、第1プロペラシャフト101や第2プロペラシャフト(図示せず)の車両に対する搭載角度は車種や仕様に応じて複数存在することになる。
【0009】
このため、搭載角度に応じて、センタベアリングサポート108の車両に対する搭載角度を変更する必要があり、従来は、搭載角度の違いに対応して複数の種類のブラケット109を準備しておいて、車種や仕様毎にブラケット109を選択的に使い分けていた。
【0010】
このように、車種や仕様毎に複数の種類のブラケットを準備し、これをストックしておくことは、設計コストや製造コストなどが嵩むと共に、部品管理が煩雑化し、更には誤組み付けなどのおそれもあり作業能率の低下を招くなどのおそれがある。
【0011】
本発明は、かかる従来の実情に鑑みなされたものであって、簡単かつ低コストな構成でありながら、プロペラシャフトの車両に対する搭載角度(取付角度)の変化に対応することができ、以って設計・製造コストの低減、部品点数の削減による部品管理の簡略化、組み立て作業能率の改善などに貢献可能なプロペラシャフトの保持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため、本発明に係るプロペラシャフトの保持構造は、
車両の駆動源からの回転動力を駆動輪へ伝達する経路の途中に介装されるプロペラシャフトの車両に対する保持構造であって、
プロペラシャフトを回転自在に支持するベアリングを保持するベアリング保持部の外周を、内周面が凹状球面形状に形成されたベアリングサポートに収容支持させ、
プロペラシャフトを、車両に略一体的に取り付けられるベアリングサポートの内周面の凹状球面形状に沿って揺動可能に保持させたことを特徴とする。
【0013】
本発明において、前記ベアリング保持部の外周が、環状弾性部材により構成されることを特徴とすることができる。
【0014】
本発明において、前記ベアリングサポートは、円周方向において複数に分割されて構成されたことを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単かつ低コストな構成でありながら、プロペラシャフトの車両に対する搭載角度(取付角度)の変化に対応することができ、以って設計・製造コストの低減、部品点数の削減による部品管理の簡略化、組み立て作業能率の改善などに貢献可能なプロペラシャフトの保持構造を提供することができる。
【0016】
更に、本発明によれば、部品の製品バラツキや部品の取り付け誤差などがあっても、これらを吸収することができるため、簡単かつ低コストな構成でありながら、これらバラツキなどに起因する振動や騒音等が抑制され、振動や騒音等の少ない高品質なプロペラシャフトの保持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車両のプロペラシャフトの保持構造を示す側面図(プロペラシャフトの軸方向と略直交する方向から見た図)である。
【図2】同上実施の形態に係る車両のプロペラシャフトの保持構造のベアリングサポート部分をプロペラシャフトの軸方向から見た概略図である。
【図3】同上実施の形態に係る車両のプロペラシャフトの保持構造のベアリングサポート部分を2分割にした場合の一構成例を示した概略図である。
【図4】同上実施の形態に係る車両のプロペラシャフトの保持構造のベアリングサポート部分を2分割にした場合の他の一構成例を示した概略図である。
【図5】従来の車両のプロペラシャフトの保持構造を示す側面図(プロペラシャフトの軸方向と略直交する方向から見た図)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の一実施の形態に係るプロペラシャフトを車両へ取り付けるためのブラケットについて、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
【0019】
本実施の形態に係るプロペラシャフトの保持構造100は、図1に示すように、従来同様に、車両の駆動源であるエンジンの回転動力を変速して出力するトランスミッション(図示せず)からの回転動力が第1プロペラシャフト101に伝達されるが、この第1プロペラシャフト101の軸端(下流端)には、センタベアリングシャフト102が取り付けられ、当該センタベアリングシャフト102にセンタベアリングカップリング103をスプライン係合させつつナット104により締付固定するようになっている。
【0020】
そして、センタベアリングシャフト102の外周に保持させたセンタベアリング105をセンタベアリングシャフト102の段部とセンタベアリングカップリング103の端面の間に挟み込み固定する構成となっている。
【0021】
更に、センタベアリング105とセンタベアリングプレート106で保持された環状弾性体107の外周部をセンタベアリングサポート150に支持させ、該センタベアリングサポート150を車両のフレーム等に取り付けられるブラケット109に結合してプロペラシャフトを保持するように構成されている。
【0022】
なお、センタベアリングカップリング103と、駆動力伝達経路下流(例えば、ディファレンシャル装置、駆動輪など)に向って延びる第2プロペラシャフト(図示せず)と、をユニバーサルジョイント(図示せず)等を介して結合することにより、車両に対する搭載角度(取付角度)の異なる第1プロペラシャフト101と第2プロペラシャフト(図示せず)の間のトルク伝達の円滑性が確保されている。
【0023】
ここで、本実施の形態に係るセンタベアリング105が本発明に係るベアリングに相当し、本実施の形態に係るセンタベアリングプレート106や環状弾性体107が本発明に係るベアリング保持部に相当し、本実施の形態に係るセンタベアリングサポート150が本発明に係るベアリングサポートに相当する。
【0024】
ここにおいて、本実施の形態においては、図1に示したように、センタベアリングサポート150の内周面151は、プロペラシャフトの軸方向に直交する方向から見て、円弧状となるように形成されている。
【0025】
すなわち、本実施の形態に係るセンタベアリングサポート150の内周面151は、環状弾性体107の外周と当接しつつ環状弾性体107の外周を収容可能な凹状球面形状に形成されている。
【0026】
これにより、センタベアリングサポート150の内周面151の凹状球面形状部分に収容されて保持される環状弾性体107は、円弧状の内周面151に沿って図1の矢印X方向に揺動することが可能となる。
【0027】
そして、この環状弾性体107は、第1プロペラシャフト101を回転自在に支持しているセンタベアリング105を保持するセンタベアリングプレート106に略一体的に取り付けられているため、第1プロペラシャフト101延いては第2プロペラシャフト(図示せず)の車両に対する搭載角度が変化しても、これに対応して、第1プロペラシャフト101延いては第2プロペラシャフト(図示せず)はセンタベアリングサポート150延いては車両に対して揺動可能に保持されることになるため、第1プロペラシャフト101等を車両に対して良好に保持することができることになる。
【0028】
このように、本実施の形態に係るセンタベアリングサポート150を備えたプロペラシャフトの保持構造100によれば、簡単かつ低コストな構成でありながら、プロペラシャフトの車両に対する搭載角度(取付角度)の変化に対応することができ、以って設計・製造コストの低減、部品点数の削減による部品管理の簡略化、組み立て作業能率の改善などに貢献可能なプロペラシャフトの保持構造を提供することができる。
【0029】
更に、本実施の形態に係るセンタベアリングサポート150を備えたプロペラシャフトの保持構造100によれば、部品の製品バラツキや部品の取り付け誤差などがあっても、これらを吸収することができるため、簡単かつ低コストな構成でありながら、これらバラツキなどに起因する振動や騒音等が抑制され、振動や騒音等の少ない高品質なプロペラシャフトの保持構造を提供することができるという利点もある。
【0030】
なお、センタベアリング105とセンタベアリングプレート106で保持された環状弾性体107の外周部を、図2に示すような一体型のセンタベアリングサポート150の内周面151に対して圧入等により嵌め込むことで取付角度自在に取り付ける構成とすることができる。
【0031】
但し、これに限定されるものではなく、例えば、図3や図4に示すようにセンタベアリングサポート150を2分割として、両者をボルト等により締結することで、センタベアリング150とセンタベアリングプレート106で保持された環状弾性体107の外周部を、センタベアリングサポート150の内周面151に対して取付角度自在に取り付けるといった構成とすることもできる。
【0032】
なお、本実施の形態においては、軸方向において複数に分割されたプロペラシャフトに適用した場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、分割の有無や分割数は任意である。
【0033】
以上で説明した本実施の形態は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。
【符号の説明】
【0034】
100 プロペラシャフトの保持構造
101 第1プロペラシャフト
102 センタベアリングシャフト(ベアリングシャフト)
103 センタベアリングカップリング(ベアリングカップリング)
104 ナット
105 センタベアリング(ベアリング)
106 センタベアリングプレート(ベアリングプレート)
107 環状弾性体(弾性体)
109 ブラケット
150 センタベアリングサポート(ベアリングサポート)
151 内周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動源からの回転動力を駆動輪へ伝達する経路の途中に介装されるプロペラシャフトの車両に対する保持構造であって、
プロペラシャフトを回転自在に支持するベアリングを保持するベアリング保持部の外周を、内周面が凹状球面形状に形成されたベアリングサポートに収容支持させ、
プロペラシャフトを、車両に略一体的に取り付けられるベアリングサポートの内周面の凹状球面形状に沿って揺動可能に保持させたことを特徴とするプロペラシャフトの保持構造。
【請求項2】
前記ベアリング保持部の外周が、環状弾性部材により構成されることを特徴とする請求項1に記載のプロペラシャフトの保持構造。
【請求項3】
前記ベアリングサポートは、円周方向において複数に分割されて構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプロペラシャフトの保持構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−91449(P2013−91449A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235337(P2011−235337)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】