説明

プローブ方法

【目的】 プローブ装置のプローブと被検査体の電極パッドとを正確に接触させて高精度な電気的測定を行うこと。
【構成】 X、Yステージ上に設けられたZ移動部6に第1撮像手段6とこの撮像手段6の合焦面に対して進退自在なターゲット63を設け、プローブカードとウエハ載置台41との間に横方向に移動自在な第2撮像手段7を設ける。先ずターゲット63により第1、第2撮像手段6、7の焦点合わせを行う。そして第2撮像手段7によりウエハW上の例えば中心及び周方向に等分された4点の合計5点の位置を認識し、更に第1撮像手段6によりプローブ針50を認識する。焦点合わせ、特定点、プローブ針の認識時の制御系上の各座標位置に基づいて電極パッドとプローブ針との位置合わせを行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プロ−ブ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体デバイスの製造工程においては、ウエハ製造プロセスが終了してウエハ内にICチップが完成した後、電極パターンのショート、オープンやICチップの入出力特性などを調べるためにプローブ装置によるプローブテストと呼ばれる電気的測定が行われ、ウエハの状態でICチップの良否が判定される。その後ウエハはICチップに分断され、良品のICチップについてパッケージングされてから例えば所定のプローブテストを行って最終製品の良否が判定される。
【0003】従来のプローブ装置は、図13に示すようにX、Y、Z、θ方向に移動可能なウエハ保持台1の上方側に、ウエハW内のICチップの電極パッド配列に対応して配列されたプローブ針11を備えたプローブカード12が配置されている。そしてウエハW内のICチップの電極パッドとプローブ針11とを接触させ、コンタクトリング13を通してテストヘッド14により電気的測定が行われる。
【0004】ところで正確な電気的測定を行うためには、プローブ針11を電極パッドに確実に接触させなければならず、このためウエハ載置台1を高精度に制御すると共に、測定前にプローブ針11に対して電極パッドを正確に位置合わせすることが必要である。一方テストヘッド14内には多数の回路部品や配線が組み込まれているため、テストヘッド14から離れた位置に撮像手段15を配置し、この撮像手段15の下方側をアライメント(位置合わせ)領域としてウエハWの位置合わせを行っている。
【0005】即ち先ずアライメント対象のウエハをウエハ載置台1に載置し、このウエハW上に形成された特定点あるいは基準マークを、ウエハ載置台1を移動させることにより撮像手段15の真下に正確に位置させて前記特定点あるいは基準マークを認識する。このときボールネジよりなるX軸、Y軸の各モータに取り付けられたエンコーダからのパルス数をカウントし、各マーク間の長さと、その長さを移動するのに必要なパルス数とにもとずいて移動距離を求める。なお図13ではX軸に関してのみモータ及びエンコーダを夫々符号18、19により示してある。
【0006】そしてウエハWを測定する場合、前記特定点あるいは基準マ−ク例えばウエハWの周縁の所定の複数箇所例えば4ヶ所について撮像手段15により認識して前記アライメント対象のウエハとの移動量の差を算出することにより位置合わせを行う。この位置合わせを行うことによって、プロービング領域でのプローブ針11とICチップの電極パッドとの位置合わせが自動的に行われるように、プロービング領域とアライメント領域との相対位置や、ボールネジの駆動量などが設定されている。電極パッドとプローブ針11との相対位置が合っていれば、既にアライメント領域にて移動距離を把握しているので、そのデータにもとずいて載置台1を移動させることにより、全ての電極パッドが正確にプローブ針11と接触するようになる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで上述の装置では、撮像手段15の下のアライメント領域におけるウエハ載置台1のデータを、プローブカード12の下のプロービング領域に転写して使用していることになる。従って両方の領域における三次元座標の状態が同じであればウエハはプロービング領域においてもアライメント領域と同じように移動するが、次のように状態が異なるため、ウエハの移動(ICチップの移動)に誤差が生じる。
【0008】上記の2つの領域における三次元方向のウエハの姿勢や位置の同一性は、この間のボールネジの加工精度や、ガイドのヨーイング(X−Y平面上の左右の振れ)、ピッチング(前後の傾き)及びローリング(移動軸のまわりの傾き)などの影響によって決定され、更に測定する時の環境温度によるボ−ルネジの伸び縮みの影響も受ける。その上アライメント領域からプロービング領域に移動するときのボールネジの摩擦熱による熱膨脹の影響も加わり、結局ウエハはアライメント領域からプロービング領域に移動したときに元の姿勢と変わった姿勢、例えば催かに左右に振れたり、前後に傾いた状態となる。
【0009】従ってプロ−ビング領域におけるウエハの移動パタ−ンは、アライメント領域で予定していたものとは完全に同一ではなくなってしまう。また上述のアライメントは、撮像手段15とプロ−ブカ−ドとの相対位置が予め設定されていること。を前提としているが、ヘッドプレ−トに装着されたプロ−ブカ−ドと撮像手段との位置関係は温度変化により微少に変化する。そしてまたウエハの種類に応じてプロ−ブカ−ドの中空部内径とプロ−ブカ−ド外径との間隙によりやはり僅かではあるがプロ−ブカ−ドの位置ずれを避けることができない。
【0010】以上のような誤差は、それ程大きなものではないが、DRAMが32M、64Mへと移行しつつあるようにデバイスが増々高集積化しつつあり、電極パッドが微小化しかつその数が増大することから、そしてまたウエハが大口径化していることからこうしたウエハの位置の誤差(ICチップの位置の誤差)が生じると、ウエハ上の全ての電極パッドに対して正確に電極パッドに接触させることが困難になり、精度の高い電気的測定を行うことができないという問題がある。 本発明は、このような事情のもとになされたものであり、その目的は、プローブを常に正確に被検査体の電極パッドに接触させることができ、高い精度で電気的測定を行うことのできるプローブ方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、X、Y、Z方向に移動可能なXYZテ−ブルに載置台を設け、電極パッドが多数配列された被検査部を有する被検査体を前記載置台上に載せ、この載置台を移動させてプローブカードのプローブに被検査体の電極パッドを接触させて順次被検査部の電気的測定を行うプローブ方法において、前記XYZテ−ブルに設けられた第1撮像手段により前記プローブを撮像し、そのときのXYZテ−ブルのX、Y方向の位置を記憶する工程と、前記XYZテ−ブルに対して相対的に移動する第2撮像手段を設け、XYZテ−ブル側を相対的に移動させて、前記第2撮像手段により被検査体の少なくとも2点を撮像し、そのときのXYZテ−ブルのX、Y方向の位置を記憶する工程と、前記第1撮像手段と第2撮像手段との光軸を相対的に移動させて合わせ、そのときのXYZテ−ブルのX、Y方向の位置を記憶する工程と、前記各工程で求められたXYZテ−ブルの位置データに基づいてXYZテ−ブルを移動させてプローブと被検査体の電極パッドとの位置合わせを行うことを特徴とするプローブ方法。
【0012】請求項2の発明は、X、Y、Z方向に移動可能なXYZテ−ブルに載置台を設け、電極パッドが縦横に多数配列された被検査体を前記載置台上に載せ、この載置台を移動させてプローブカードのプローブに被検査体の電極パッドを順次接触させて被検査体の電気的測定を行うプローブ方法において、前記XYZテ−ブルに設けられた第1撮像手段により前記プローブを撮像し、そのときのXYZテ−ブルのX、Y、Z方向の位置を記憶する工程と、前記XYZテ−ブルに対して相対的に移動する第2撮像手段を用い、XYZテ−ブル側を移動させて、被検査体の少なくとも2点とを撮像し、そのときの夫々のXYZテ−ブルのX、Y、Z方向の位置を記憶する工程と、前記第1撮像手段または第2撮像手段の一方の撮像手段の合焦面に光軸と交差する方向に進退自在に設けられた位置合わせ用の被写体を用い、前記XYZテ−ブルを移動させてこの被写体に対し他方の撮像手段の焦点を合わせ、そのときの撮像手段のX、Y、Z方向の位置を記憶する工程と、前記各工程で求められたXYZテ−ブルの位置データに基づいてXYZテ−ブルを移動させてプローブと被検査体の電極パッドとの位置合わせを行うことを特徴とする。
【0013】請求項3の発明は、請求項1または2記載のプローブ方法において、被検査体は、被検査チップが縦横に並ぶ半導体ウエハであり、第2撮像手段により撮像する被検査体上の点は、被検査体の中心位置と、この中心位置を通り、被検査チップの縦の並びに沿った直線上に位置し、前記中心位置を挟む被検査体の周縁部の2点と、前記中心位置を通り、被検査チップの横の並びに沿った直線上に位置し、前記中心位置を挟む被検査体の周縁部の2点と、を含むものであることを特徴とする。
【0014】
【作用】プローブを撮像する第1撮像手段とウエハを撮像する第2撮像手段との互の焦点合わせを行い、いわば共通の撮像手段でプローブとウエハとを撮像しているため、ウエハ上の点とプローブとの正確な相対位置を把握することができる。そしてウエハ上の少なくとも2点、例えばウエハの中心及び周縁の複数点について制御系上の座標位置を求め、これら各点の位置に基づいてウエハ上の座標位置を制御系上の座標位置に展開しているため、載置台の駆動機構例えばボールネジの伸縮やガイドの加工精度などを含む累積誤差が存在していても電極パッドとプローブとの位置合わせを正確に行うことができ、この結果高精度な電気的測定を行うことができる。
【0015】
【実施例】図1は本発明方法の実施例に用いられるプローブ装置の要部の概略を示す分解斜視図であり、図2はこのプローブ装置の概略を示す平面図である。図1中20は基台であり、この基台20の上には、Y方向に伸びるガイドレール21に沿ってボールネジ22によりY方向に駆動されるYステージ2が設けられると共に、Yステージ2の上にはX方向に伸びるガイドレール31に沿ってボールネジ32によりX方向に駆動されるXステージ3が設けられている。M2はY方向のボールネジ22を駆動するモータであり、E2はこのモータM2に組み合わされたエンコーダである。なおX方向のボールネジ32に係るモータ、エンコーダは図1上隠れて見えない。
【0016】前記Xステージ3には、図示しないモータによりZ方向に駆動されるZ移動部4が設けられ、このZ移動部4には、Z軸のまわりに回転自在な(θ方向に移動自在な)ウエハ載置台41が設けられている。この実施例では、Z移動部4はXYZテ−ブルに相当するものである。従ってこのウエハ載置台41は、X、Y、Z、θ方向に移動できることになる。
【0017】前記ウエハ載置台41の上方には、図1及び図3に示すようにプローブカード5が配設されており、このプローブカード5は、プローブ装置の外装体の天井部に相当するヘッドプレート51に、インサートリング52を介して装着されている。前記プローブカード5は、上面側に、図示しないテストヘッドに電気的に接続される電極群を有し、下面側にはこれら電極群に夫々電気的に接続された、プローブ例えば斜め下方に伸びる金属線よりなるプローブ針50が、ウエハWの電極パッドの配列に対応して設けられている。ただしプローブとしては、ウエハWの表面に対して垂直に伸びる垂直針(線材プローブ針)や、フレキシブルなフィルムに形成された金バンプ電極などであってもよい。なお図2に示すようにウエハ載置台41の移動領域に隣接してウエハカセット53が配置され、搬送アーム54により載置台41とウエハカセット53との間でウエハの受け渡しが行われるようになっている。
【0018】一方前記ウエハ載置台41を昇降させるZ移動部4には、図3に示すように第1撮像手段6が固定板60を介して固定されている。なお図3の固定板60の配置は、図示の便宜上図1とは若干異なって描いてある。この第1撮像手段6は前記プローブ針50の針先を拡大して撮れるように高倍率の光学系6aとCCDカメラ6bとを組み合わせて構成される。また前記固定板60の上には第1撮像手段6に隣接して、プローブ針60の配列を広い領域で撮るための低倍率のカメラ61が固定されている。更に前記固定板60には、第1撮像手段6の合焦面に対して光軸と交差する方向に進退機構62により進退できるようにターゲット63が設けられている。
【0019】前記ウエハ載置台41とプローブカード5との間の領域には、CCDカメラと光学系ユニットとを含む第2撮像手段7が移動体71に塔載されてガイド72(図2参照)に沿ってX方向に移動自在に設けられている。そして前記ターゲット63は、第1撮像手段6及び第2撮像手段7により画像認識できるように構成されており、例えば透明なガラス板に位置合わせ用の被写体である円形の金属膜例えば直径140ミクロンの金属膜が蒸着されている。
【0020】ここで上述プローブ装置の制御系に関して図4を参照しながら述べる。この制御系は、例えば画像処理部81、中央処理部82、メモリ83、及びモータ制御部84などを備えている。前記画像処理部81は、第1撮像手段6及び第2撮像手段7にて得られた画像を取り込み、その画像信号に基づいて、当該画像処理部81内の画像メモリに格納されている画像データと比較したり、あるいは撮像手段6(7)の焦点が合っているか否かの判定を行う機能などを有している。
【0021】中央処理部82は、載置台41を駆動するX、Y、Z方向の夫々のモータに取り付けられたエンコーダからのパルス信号に基づきZ移動部41の座標位置(制御系で管理されている座標位置)を示す位置データを求めてメモリ83に格納する機能や、メモリ83内の位置データを演算処理する機能、あるいはモータ制御部84に制御信号を与えてX、Y、Z方向の各モータを制御する機能などを有し、所定のプログラムに従って各処理を行う。
【0022】次に上述のプローブ装置を用いて実施される本発明方法の実施例について図5及び図6を参照しながら述べる。先ず搬送アーム54によりカセット53からウエハWを取り出して載置台41に搬送する。一方第2撮像手段7をプローブ針50の下方側に位置させると共に、ターゲット53を図6(a)(及び図3)に示すように突出させ、そして第2撮像手段7の焦点がターゲット53の金属膜に一致しかつその金属膜の中心と第2撮像手段7の光軸とが一致するように、Z移動部4をX、Y、Z方向に移動させる。
【0023】このようなZ移動部4の位置制御は、第2撮像手段7の停止位置の下方側に第1撮像手段6を位置させ、次いで画像メモリ内に予め格納された画像データと第2撮像手段7にて得られた画像データとを比較しながらZ移動部4をX、Y、Z方向に移動させることによって行われる。そして第1の撮像手段6はターゲット53(詳しくは金属膜)に対して焦点及び光軸が合っているので、両撮像手段6、7は互いに焦点及び光軸が一致していることになる。このときのZ移動部4の制御系上のX、Y、Z座標をX0 、Y0 、Z0 としてメモリ83内に格納する。ただしZ移動部4の座標とは、Z移動部4(つまりウエハ載置台41)がある位置に置かれたときに、所定の標準位置に対してX、Y、Z方向の夫々のエンコータのパルス数で管理された位置である。
【0024】続いて図6(b)に示すようにターゲット53を第1撮像手段6の上方から退避させると共に、ウエハ載置台41を第2撮像手段7の下方側に位置させ、ウエハWの例えば5つの特定点の位置を撮像する。この5つの特定点は、例えば図7に示すようにウエハWの中心点aと、ICチップ9の縦の列の両端位置b、cと、ICチップ9の横の列の両端位置d、eとからなる。ただし各点a〜eを撮像してその位置データを求める処理は、特定点としてマークを付しておいてもよいが、例えばICチップ9の間を走るいわば線路(隙間)91のパターンを認識するようにしてもよく、中心点aであれば例えば線路が十字にクロスする点を、また端部の点b〜eであれば例えば線路の切れている個所を夫々認識するようにしてもよい。
【0025】なお各点a〜eの認識については、例えば予めオペレータにより、CRT画面を見ながら載置台41を移動させて第2撮像手段7の焦点を各点a〜eに合わせ、そのときの画像を画像メモリに記憶させておくと共に載置台41の移動パターンを覚えさせ、こうしてティーチングを行っておく。そしてウエハの測定時には、第2撮像手段7を低倍率モードに設定し、予めティーチングされた移動パターンに従い載置台41を移動させて各点に接近し、図8(a)に示すようにウエハ上の広い領域を撮像し、その画像と予めティーチングされた画像とに基づいて粗い位置合わせを行い、次いで図8(b)に示すように高倍率モードで狭い領域を撮像して正確な位置合わせを行う。
【0026】以上の説明では、ウエハ載置台41のθ方向(周方向)の位置合わせについては考慮していないが、プローブ針の並びの方向とICチップの配列の方向とのずれを考慮する場合には前記の特定点のうち2点からθ方向のずれを求めて載置台41をθ方向に移動させる。ただしウエハを載置台41に載せる前にプリアライメント(オリフラ合わせ)をしてあるのでθ方向の位置ずれは極く僅かである。そしてθ方向の位置合わせを行った後に5点a〜eを撮像し、夫々の載置台41のX、Y座標の位置(Xa 、Ya 、Za )(Xb 、Yb 、Zb )(Xc 、Yc 、Zc )(Xd 、Yd 、Zd )(Xe 、Ye 、Ze )をメモリ83に記憶する。なお各位置を代表して便宜上X1 、Y1 、Z1 として表わす。このような方法は、既述した2つの撮像手段6、7の位置合わせの場合にも同様にして行われる。
【0027】しかる後図6(c)に示すように第2撮像手段7をプローブ針50の下方側から退避させ、第1撮像手段7の焦点が予め決められた所定のプローブ針50に位置するようにZ移動部41をX、Y、Z方向に移動させ、そのときのZ移動部41のX、Y、Z座標位置(X2 、Y2 、Z2 )を求める。この場合第2撮像手段7の隣りの低倍率カメラ61を用いて既述したと同様にプローブ針50の撮像が行われる。
【0028】以上の動作を行えば、第1撮像手段6及び第2撮像手段7の互いの焦点を合わせているのでいわば共通の撮像手段によってウエハWとプローブ針50とを撮像したことになる。例えば第2撮像手段7のみしか用いなければ、この撮像手段7とプローブ針50との相対位置の設定に誤差が含まれてしまうが、上述実施例では、ウエハWの特定点a〜eとプローブ針50との相対位置が正確に把握できる。
【0029】図9は、制御系で管理されるX、Y座標上における、撮像手段6、7の光軸一致点(X0 、Y0 )とウエハ上の各点a〜e(X1 、Y1 )と、プローブ針との位置を概念的に示す概念図である。図9中ウエハ中心部の黒丸の点はボ−ルネジなどのが理想状態の場合のウエハの中心点の撮像位置である。a〜e点については、プローブ針との相対位置を求めることにより正確にプローブ針の位置と一致させることができる。ところで載置台41を移動させるX、Y、Zの各方向のボールネジ及びガイドの直交誤差や真直度、あるいは環境温度による伸び縮みの影響などを含めた累積誤差が存在すると、メモリ83内の例えばa点の座標は、b、cの各点の座標の中心にあるとは限らないし、またa、b、cが一直線上に並ぶとは限らない。つまり前記累積誤差がメモリ83内のa〜e点の座標に反映されて現われてくることになり、図9はその状態を示している。
【0030】そこで本発明の実施例は、ウエハを基準とした直交座標、つまりICチップの配列の縦横のラインを基準とした各点の位置を、a〜e点の位置情報をもとにX、Y、Z方向の各モータのエンコーダのパルス数で管理される制御系のX、Y座標(これは累積誤差の存在により歪んでいる)の上に展開しようとするものであり、この例では、a、b、dの位置情報に基づいて、ウエハ上のa、b、dで囲まれる座標空間を制御系のX、Y座標の上に展開している。即ちウエハ上のa、b、dで囲まれる領域の各点を制御系のX、Y座標で捉えているのであり、その手法として例えば直線ab及び直線adを夫々複数点例えばICチップの並びの数だけ他方の直線に平行な直線で分割して例えば各ICチップの特定の角について制御系上の座標を求め、これら座標から各チップの電極パッドの位置を求める。ただしこれは一例であり、他の方法により電極パッドの位置の座標変換を行ってもよい。そして(acd)、(ace)、(abe)で囲まれる他の3つの領域についても同様にして制御系の座標上の電極パッドの位置が求まる。
【0031】そして本発明ではウエハ上の電極パッドの配列を制御系の座標上に展開するにあたっては、ウエハの中心点aを除いた他の4点の位置に基づいて行ってもよいし、あるいはウエハを上述のように4つの領域に分ける代りに縦横に多数分割して、各格子点の位置を把握するようにしてもよく、更にはまた精度としては上述実施例より低くなるが、例えば図10に示すようにICチップ配列方向に対して45度に傾いた直線の両端位置A、B(つまり2点)の座標を求め、その座標位置に基づいて上述の座標の展開を行ってもよい。
【0032】こうして各電極パッドの座標位置が求まると、そのデータは図4に示すメモリ83内に記憶され、Z移動部4を標準位置(座標原点)に位置させたときに、その位置から、電極パッドとプローブ針とが接触する位置まで移動させるのに必要な移動量が中央処理部82により求められ、メモリ83に記憶される。X、Y、Z方向の移動量を夫々x、y、zとすると、x=X1 +X2 −X0 、y=Y1 +Y2 −Y0 、z=Z1 +Z2 −Z0 と表わされる。図11は、この演算を概念的に示す図である。なおプローブ針とウエハとのZ方向距離は、撮像手段6、7の焦点合わせをしたときのターゲットの位置から、プローブ針を撮像したときの撮像の上昇量とウエハを撮像したときの撮像の上昇量との合計量になる。
【0033】その後メモリ83内の移動量のデータに基づいてモータ制御部84によりX、Y、Z方向の各モータを制御し、これによりウエハ載置台41を移動させてウエハW上の電極パッドを順次プローブ針50に接触させ、図示しないテスタにより電気的測定が行われる。
【0034】以上のように上述実施例によれば、プローブ針を撮像する第1撮像手段6とウエハを撮像する第2撮像手段7との焦点合わせを行い、これによりいわば共通の撮像手段でプローブ針とウエハとを撮像しているため、ウエハ上の点とプローブ針との正確な相対位置を把握することができ、そしてウエハ上の少なくとも2点例えばウエハの中心点及び周縁4ヶ所の点について制御系上の座標位置を求め、これら各点の位置に基づいて、ウエハ上の座標位置を制御系上の座標位置に展開しているため、ボールネジの伸縮やガイドの加工精度などを含む累積誤差が移動部の駆動系に存在していても電極パッドとプローブ針との位置合わせを正確に行うことができ、この結果高精度な電気的測定を行うことができる。
【0035】ここで例えばX方向のボールネジが伸びた場合を例にとってみると、図12に示すようにボールネジに伸びがない場合にはエンコーダのパルス数と歩進距離との関係は(1)のように表わされるが、ボールネジが伸びるとエンコーダの回転角が同じであっても歩進距離が長くなるので、パルス数と歩進距離との関係は(2)のように表わされる。従って例えば1チップ分の長さLだけ歩進させるパルス数は、Pn からPk へと少なくなり、上述のように座標展開することによって各パッドの位置とそのときの駆動系におけるエンコーダのパルス数との対応がとれるようになり、結局電極パッドとプローブ針との位置合わせを正確に行うことができる。
【0036】また上述実施例のようにZ方向についてプローブ針と電極パッドとの位置合わせを行えば、ボールネジが上下に振れていてもプローブと電極パッドとを正確に接触させることができるが、本発明ではZ方向の位置合わせについては他の方法により行ってもよい。更に第1撮像手段は載置台に設けてもよい(この場合は載置台を介してXYZテ−ブルに設けられていることになる)。そしてまた撮像手段6、7の焦点合わせ、プローブ針の撮像、ウエハの撮像の各工程はどのような順次で行ってもよい。なお被検査体としては半導体ウエハ以外にLCD基板であってもよい。
【0037】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、第1撮像手段及び第2撮像手段を用いて互いの焦点を合わせると共に、プローブと被検査体上の複数の点を撮像してその位置を求め、これらの位置に基づいてプローブと電極パッドとを接触させているので互いに正確に位置が合った状態で接触させることができ、高精度な測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法を実施するためのプローブ装置の一例の全体を示す概観斜視図である。
【図2】プローブ装置の一例を示す概略平面図である。
【図3】プローブ装置の一例の要部を示す縦断側面図である。
【図4】プローブ装置の制御系を示すブロック図である。
【図5】本発明方法の一実施例を示す工程図である。
【図6】本発明方法の一実施例における撮像手段の互いの位置合わせ、ウエハの撮像及びプローブ針の撮像の様子を示す説明図である。
【図7】半導体ウエハ上の特定点の一例を示す平面図である。
【図8】特定点を撮像したときの画面を示す説明図である。
【図9】制御系の座標上における、第1、第2撮像手段の位置合わせの位置、ウエハ上の特定点の位置及びプローブ針の位置を概念的に示す説明図である。
【図10】半導体ウエハ上の特定点の他の例を示す説明図である。
【図11】移動部における原点からの移動量を示す説明図である。
【図12】エンコーダのパルス数と歩進量との関係を示す特性図である。
【図13】従来のプローブ方法を説明する説明図である。
【符号の説明】
2 Yステージ
3 Xステージ
4 Z移動部
41 ウエハ載置台
W 半導体ウエハ
5 プローブカード
50 プローブ針
6 第1撮像手段
63 ターゲット
7 第2撮像手段
81 画像処理部
82 中央処理部
83 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 X、Y、Z方向に移動可能なXYZテ−ブルに載置台を設け、電極パッドが多数配列された被検査部を有する被検査体を前記載置台上に載せ、この載置台を移動させてプローブカードのプローブに被検査体の電極パッドを接触させて順次被検査部の電気的測定を行うプローブ方法において、前記XYZテ−ブルに設けられた第1撮像手段により前記プローブを撮像し、そのときのXYZテ−ブルのX、Y方向の位置を記憶する工程と、前記XYZテ−ブルに対して相対的に移動する第2撮像手段を設け、XYZテ−ブル側を相対的に移動させて、前記第2撮像手段により被検査体の少なくとも2点を撮像し、そのときのXYZテ−ブルのX、Y方向の位置を記憶する工程と、前記第1撮像手段と第2撮像手段との光軸を相対的に移動させて合わせ、そのときのXYZテ−ブルのX、Y方向の位置を記憶する工程と、前記各工程で求められたXYZテ−ブルの位置データに基づいてXYZテ−ブルを移動させてプローブと被検査体の電極パッドとの位置合わせを行うことを特徴とするプローブ方法。
【請求項2】 X、Y、Z方向に移動可能なXYZテ−ブルに載置台を設け、電極パッドが縦横に多数配列された被検査体を前記載置台上に載せ、この載置台を移動させてプローブカードのプローブに被検査体の電極パッドを順次接触させて被検査体の電気的測定を行うプローブ方法において、前記XYZテ−ブルに設けられた第1撮像手段により前記プローブを撮像し、そのときのXYZテ−ブルのX、Y、Z方向の位置を記憶する工程と、前記XYZテ−ブルに対して相対的に移動する第2撮像手段を用い、XYZテ−ブル側を移動させて、被検査体の少なくとも2点とを撮像し、そのときの夫々のXYZテ−ブルのX、Y、Z方向の位置を記憶する工程と、前記第1撮像手段または第2撮像手段の一方の撮像手段の合焦面に光軸と交差する方向に進退自在に設けられた位置合わせ用の被写体を用い、前記XYZテ−ブルを移動させてこの被写体に対し他方の撮像手段の焦点を合わせ、そのときの撮像手段のX、Y、Z方向の位置を記憶する工程と、前記各工程で求められたXYZテ−ブルの位置データに基づいてXYZテ−ブルを移動させてプローブと被検査体の電極パッドとの位置合わせを行うことを特徴とするプローブ方法。
【請求項3】 被検査体は、被検査チップが縦横に並ぶ半導体ウエハであり、第2撮像手段により撮像する被検査体上の点は、被検査体の中心位置と、この中心位置を通り、被検査チップの縦の並びに沿った直線上に位置し、前記中心位置を挟む被検査体の周縁部の2点と、前記中心位置を通り、被検査チップの横の並びに沿った直線上に位置し、前記中心位置を挟む被検査体の周縁部の2点と、を含むものであることを特徴とする請求項1または2記載のプローブ方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図10】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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