説明

ヘッドカバー構造

【課題】ヘッドカバーをシリンダヘッドから取り外す際には覗き窓の蓋体を除去しないとヘッドカバーを取り外せないようにし、開放された覗き窓からハーネスの配置が見えるようにすることで、ハーネスの切り離しを注意喚起する。
【解決手段】固定ボルト3によってシリンダヘッド1に固定するヘッドカバー2にハーネス4が貫通配置された構成を有するヘッドカバー構造であって、ヘッドカバー2内部のハーネス4bが外部に露出できるようにヘッドカバー2に設けた覗き窓と、覗き窓を外部から閉塞するようにヘッドカバー2に設けた蓋体7と、ヘッドカバー2をシリンダヘッド1に固定している固定ボルト3の頭部3aを覆うように蓋体7に設けた邪魔板11とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドカバーを貫通して配置されるハーネスの接続部の切り離しを行わずに、ヘッドカバーをシリンダヘッドから取り外すことによってハーネスが損傷するのを防止するようにしたヘッドカバー構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンのシリンダヘッドにはヘッドカバーが密着固定されており、又、エンジンには、種々の駆動制御を行うための電気制御部品が備えてあり、該電気制御部品との間で信号伝達を行うインジェクタハーネス等の複数のハーネスが外部から引き込まれて配置されている。ここで、前記ヘッドカバーに前記ハーネスを接続するための接続部が貫通固定されていて前記ハーネスが前記ヘッドカバーを貫通するように配置されたものがある。
【0003】
ハーネスがヘッドカバーを貫通する構造ではないが、シリンダヘッドにハーネスを配置する構成を備えたものとしては、特許文献1、2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−325357号公報
【特許文献2】特開2000−274256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記したように、ハーネスがヘッドカバーを貫通して配置された構造においては、エンジンの点検・整備などのために固定ボルトを緩めてヘッドカバーをシリンダヘッドから取り外す際にはハーネスを接続部から切り離しておく必要がある。ハーネスを接続部から切り離さないでヘッドカバーを取り外そうとすると、ハーネスが引っ張られて断線するなどの損傷を生じる可能性があり、ハーネスが損傷した場合にはエンジンの運転に支障を来す可能性がある。
【0006】
従って、ヘッドカバーをシリンダヘッドから取り外す際には、確実にハーネスを接続部から切り離すことが必要であるが、作業者がハーネスを切り離す作業を忘れてヘッドカバーを取り外してしまった場合には、ハーネスを損傷させてしまう問題がある。
【0007】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなしたもので、ヘッドカバーをシリンダヘッドから取り外す際には覗き窓の蓋体を除去しないとヘッドカバーを取り外せないようにし、開放された覗き窓からハーネスの配置が見えるようにすることで、ハーネスの切り離しを注意喚起するようにしたヘッドカバー構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、固定ボルトによってシリンダヘッドに固定するヘッドカバーにハーネスが貫通配置された構成を有するヘッドカバー構造であって、前記ヘッドカバー内部のハーネスが外部に露出できるように前記ヘッドカバーに設けた覗き窓と、該覗き窓を外部から閉塞するように前記ヘッドカバーに設けた蓋体と、前記ヘッドカバーを前記シリンダヘッドに固定している固定ボルトの頭部を覆うように前記蓋体に設けた邪魔板とを有することを特徴とする。
【0009】
而して、上記構成によれば、ヘッドカバーをシリンダヘッドに固定している固定ボルトの頭部が蓋体に設けた邪魔板によって覆われているため、ヘッドカバーを取り外すためには先に蓋体を除去する必要がある。従って、ヘッドカバーを取り外す前に覗き窓が開放されてヘッドカバーの内部に配置されているハーネスが露出するので、ハーネスを接続部から切り離さないとハーネスに引っ張りによる大きな負荷が掛かることが作業者に注意喚起され、作業者は接続部からハーネスを切り離した後に、固定ボルトを緩めてヘッドカバーを取り外すようになる。
【0010】
上記ヘッドカバー構造において、前記邪魔板が前記固定ボルトの頭部に嵌合する凹部を有することは好ましい。
【0011】
又、上記ヘッドカバー構造において、前記ヘッドカバーをシリンダヘッドに固定する固定ボルトのためのボルト孔及び前記覗き窓がヘッドカバーの上面に設けられていることは好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のヘッドカバー構造によれば、ヘッドカバーをシリンダヘッドに固定している固定ボルトの頭部が蓋体に設けた邪魔板によって覆われているため、ヘッドカバーを取り外すためには先に蓋体を除去する必要があり、このため、作業者が蓋体を除去すると覗き窓が開放されてヘッドカバーに配置されているハーネスが露出するので、ハーネスを切り離すことなくヘッドカバーを取り外すとハーネスに大きな引っ張りによる負荷が掛かることが作業者に注意喚起され、作業者は接続部からハーネスを切り離した後にヘッドカバーを取り外すようになり、よって、ハーネスが損傷する問題を未然に防止できるようになるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】シリンダヘッドに備えた本発明のヘッドカバー構造の一実施例を示す平面図である。
【図2】図1のヘッドカバーから蓋体を取り出して示した平面図である。
【図3】図1のヘッドカバーの蓋体を取り外した状態を示す斜視図である。
【図4】蓋体の邪魔板が固定ボルトの上部を覆った状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0015】
図1、図3に示すように、シリンダヘッド1の上部には、該シリンダヘッド1を気密に覆うヘッドカバー2が固定ボルト3により固定されている。前記固定ボルト3は、前記ヘッドカバー2の幅方向(図1では上下方向)の略中心位置おいてヘッドカバー2の長手方向(図1では左右方向)に複数(図1では3個)配置されている。
【0016】
前記ヘッドカバー2の長手方向の一方の側面2aには、ハーネス4を取り付けるための複数の接続部5が貫通して固定してあり、該各接続部5にはヘッドカバー2の外部に配置されるハーネス4aと、ヘッドカバー2の内部に配置されるハーネス4bが着脱可能に接続されるようになっている。
【0017】
前記ヘッドカバー2の上面における固定ボルト3の側方位置には、図3に示すように覗き窓6が形成してあり、該覗き窓6によって前記ヘッドカバー2の内部に配置されて接続部5に接続されたハーネス4bを上部から目視できるようになっている。
【0018】
一方、図1、図2に示す如く、前記覗き窓6を開放可能に閉塞するようにした蓋体7を設けている。図1、図2中、8は蓋体7を覗き窓6に固定するための取付ネジ、図2中、9は蓋体7に備えた前記取付ネジ8用の取付孔、図3中、10はヘッドカバー2に備えた取付ネジ8用の取付ネジ孔である。
【0019】
更に、前記蓋体7には、前記ヘッドカバー2をシリンダヘッド1に固定した固定ボルト3の頭部3aを覆うようにした邪魔板11が設けられている。この邪魔板11は、図4に示すように固定ボルト3の頭部3aに嵌合して該頭部3aを覆うようにした凹部12を有しており、前記邪魔板11によって固定ボルト3を外部から回すことができないようになっている。前記邪魔板11は前記蓋体7に対して固定する構成を有していてもよいが、邪魔板11を前記蓋体7と一体に形成した構成にすると、製造が容易になるため好ましい。 図1では1つの固定ボルト3の頭部3aを覆うようにした1つの邪魔板11をヘッドカバー2から張出して形成した場合について例示しているが、邪魔板11は複数の固定ボルト3の頭部3aを覆うように設けてもよい。
【0020】
次に、上記実施例の作動を説明する。
【0021】
前記ヘッドカバー2は、通常時は固定ボルト3によってシリンダヘッド1に固定されており、更に、ヘッドカバー2の覗き窓6には取付ネジ8によって蓋体7が固定されていて覗き窓6は閉塞された状態となっており、この時、蓋体7に備えた邪魔板11は1つの固定ボルト3の頭部3aに凹部12が嵌合して頭部3aを覆った状態となっている。
【0022】
エンジンの点検・整備などのためにヘッドカバー2をシリンダヘッド1から取り外す際には、固定ボルト3を緩める必要があるが、図1に示すように、1つの固定ボルト3の頭部3aが蓋体7の邪魔板11によって覆われているため、この邪魔板11で覆われた固定ボルト3は緩めることができない。そのため、作業者はヘッドカバー2を取り外す前に、取付ネジ8を緩めて蓋体7を除去する作業を行う。
【0023】
蓋体7が除去されると、図3に示す如く、覗き窓6が開放されてヘッドカバー2内に配置されている接続部5に接続されたハーネス4bが露出する。従って、このままヘッドカバー2を取り外すとハーネス4が引っ張られて大きな負荷がハーネス4に掛かることが作業者に注意喚起される。このため、作業者は先ず接続部5からハーネス4a,4bを切り離す作業を行い、その後にヘッドカバー2を取り外す作業を行うようになる。これによって、ハーネス4が損傷する問題を未然に防止することができる。
【0024】
尚、本発明のヘッドカバー構造は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、覗き窓の形状は図示のものに限定されないこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0025】
1 シリンダヘッド
2 ヘッドカバー
3 固定ボルト
3a 頭部
4 ハーネス
4a 外部のハーネス
4b 内部のハーネス
5 接続部
6 覗き窓
7 蓋体
11 邪魔板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ボルトによってシリンダヘッドに固定するヘッドカバーにハーネスが貫通配置された構成を有するヘッドカバー構造であって、前記ヘッドカバー内部のハーネスが外部に露出できるように前記ヘッドカバーに設けた覗き窓と、該覗き窓を外部から閉塞するように前記ヘッドカバーに設けた蓋体と、前記ヘッドカバーを前記シリンダヘッドに固定している固定ボルトの頭部を覆うように前記蓋体に設けた邪魔板とを有することを特徴とするヘッドカバー構造。
【請求項2】
前記邪魔板は前記固定ボルトの頭部に嵌合する凹部を有することを特徴とする請求項1に記載のヘッドカバー構造。
【請求項3】
前記ヘッドカバーをシリンダヘッドに固定する固定ボルトのためのボルト孔及び前記覗き窓はヘッドカバーの上面に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のヘッドカバー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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