説明

ベンゾトリアゾール誘導体化合物

【課題】いわゆる青色レーザー用に対応する吸収帯を有し、高い溶解度、高い耐光性、高融点のいずれの性能についても満足できる有機色素、紫外線吸収剤に好適に用いることのできる化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(A)の構造を揺するベンゾトリアゾール誘導体化合物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なベンゾトリアゾール誘導体化合物に関し、また当該新規化合物を含有する有機色素及び紫外線吸収剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、CD−R/RW、DVD−R/RW、MOなどへの媒体の書き込み、読み取りには、いわゆる赤色レーザーが普及している。これに使用する媒体には、当該赤色レーザーの波長に対応した波長を吸収する色素が表面にコーティングされている。色素には無機色素と有機色素が存在するが、応答速度が速いなどの利点から有機色素が一般に用いられる。
【0003】
一方最近、更なる高密度の記録を可能にすべく、いわゆる青色レーザーを用いた機器の開発が進んでいる。青色レーザー用の媒体に用いる色素は、レーザーの波長に対応すべく、405nm付近の波長を効率的に吸収する色素でなければならない。かかる色素として、現在いくつかの無機色素が実用化に向けて開発されている。
【0004】
しかし、レーザーによる高速度の記録に対応できるものとするためには、媒体に用いる色素として、無機色素ではなく応答の速い有機色素が好ましい。このような波長領域に吸収を持つ化合物としては、例えば、特許文献1〜4に記載されているような有機色素の基本骨格としてピラン化合物の誘導体、ポリアセンジイミド系色素の誘導体、シアニン系有機色素の混合物、メチン基のパラ位に特定のアミノ基を導入したベンゼン誘導体を用いる方法などが提案されている。
【特許文献1】特開2004−322564号公報
【特許文献2】特開2004−090372号公報
【特許文献3】特開2003−266954号公報
【特許文献4】特開2003−246142号公報
【特許文献5】特開2003−103935号公報
【0005】
これら化合物を有機色素として記録媒体に用いる場合には、スピンコート法など溶媒に溶かして有機色素の薄膜層を形成するのが一般的である。また、記録内容の長期期間保持という点から、耐光性が求められる。さらに、レーザーが当たった際に、有機色素がピットに流れ出ないようにするため、高融点であることが求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記材料においては、高い溶解度、高い耐光性、高融点のいずれかの性能を満足するものであったとしても、これら全ての性能について十分といえるものではなかった。そこで本発明における課題は、これらの問題がなく、高い溶解度、高い耐光性、高融点のいずれの性能についても満足できる有機色素、紫外線吸収剤に好適に用いることのできる化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、下記(化1)に示した一般式(A)で示される5−ベンジリデン−2−チオキソ−チアゾリジン−4−オン誘導体のうち、(A)式中のR〜Rがそれぞれ下記の官能基または原子のうちいずれかである5−ベンジリデン−2−チオキソ−チアゾリジン−4−オン誘導体を含有する新規化合物を、有機色素や紫外線吸収剤として用いることを上記課題の主要な解決手段とする。
【化1】

〜R及びR〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、炭素数1〜4の直鎖または分鎖のモノ置換アミノ基、炭素数1〜4の直鎖または分鎖のジ置換アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素数1〜20のアルキル基(いずれかの位置で枝分かれしているものを含む)、炭素数1〜20のアルコキシ基(いずれかの位置で枝分かれしているものを含む)、炭素数1〜3のアルキルカルボキシ基、炭素数1〜20のアルキルカルボキシエステル基、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル基のうち、いずれかの官能基または原子である。ただし、R〜R及びR〜Rにアミノ基またはニトロ基が選ばれる場合、アミノ基またはニトロ基は、いずれか一方が、R〜R及びR〜Rのうち1箇所置換されているものに限る。
またRは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基(いずれかで枝分かれしているものを含む)、カルボキシル基、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル基(いずれかの位置で枝分かれしているものを含む)、アミノ基、炭素数1〜4の直鎖または分鎖のモノ置換アミノ基、炭素数1〜4の直鎖または分鎖のジ置換アミノ基、ニトロ基のうち、いずれかの官能基または原子である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の化合物は、可視光青色領域から紫外光領域に渡って広い吸収帯域を有する化合物であり、有機色素、紫外線吸収剤として好適に用いることができるものである。また広い吸収帯を有するので、耐光性にも優れた化合物である。
【0009】
本発明の化合物は、5−ベンジリデン−2−チオキソ−チアゾリジン−4−オン誘導体と6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノ−ル誘導体との縮合体であるが、単にこれら化合物を混合するのではなく、縮合体として一つの化合物にすることで、混合による融点降下が生じることなく、高い融点を確保できとともに、長期間経過後も結晶化することなく嵩高いアモルファス状態を維持することができる。
【0010】
また本発明の化合物は、クロロホルムなど有機溶剤に対する溶解度が大きいものである。
【0011】
なかでも、下記構造式で表されるベンゾトリアゾール誘導体とチアゾリジン誘導体のメチレン結合による縮合体については、有機溶剤が揮発する際にも結晶化しにくく、かつクロロホルムなど有機系溶媒に対する溶解性に優れている有機化合物であり、有機色素、紫外線吸収剤に好適に用いることができることが実験的にも明確となった。
化合物(a)
【化4】

化合物(b)
【化5】

化合物(c)
【化6】

化合物(d)
【化7】

【0012】
さらに、本発明の有機色素は、上記キャスティング法のような湿式塗布以外にも蒸着法、スパッタリング法によっても基板上に成膜させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明につき詳細に説明する。本発明は、有機色素として、下記一般式(A)によって示される有機化合物を用いたものである。以下に前記一般式(A)において表される化合物について説明する。
【0014】
【化1】

【0015】
(A)式中、R〜Rは、それぞれ独立に原子または置換基を表し、該置換基はさらに置換されていても良い。該任意の置換基の例としてR〜R及びR〜Rは、水素原子;フッ素、塩素、ヨウ素などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等の置換されても良い炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基などの置換されても良い炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコキシ基またはヒドロキシル基、;アミノ基、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モノn−プロピルアミノ基、ジn−プロピルアミノ基、モノイソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等の置換されても良い炭素数1〜4の直鎖または分岐のアミノ基;ニトロ基;カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基等の置換されても良い炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキルオキシカルボニル基;下記(化8〜化10)の−RCOOHで表されるアルキルカルボキシル基;下記(化11〜化20)の−RCOORで表されるアルキルカルボン酸エステル基が挙げられる。
【0016】
アルキルカルボキシル基(−RCOOH)
【化8】

【化9】

【化10】

【0017】
アルキルカルボン酸エステル(−RCOOR
【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【0018】
該任意の置換基の例としてRは水素原子;フッ素、塩素、ヨウ素などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等の置換されても良い炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基等の置換されても良い炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコキシ基またはヒドロキシル基;アミノ基、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モノn−プロピルアミノ基、ジn−プロピルアミノ基、モノイソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等の置換されても良い炭素数1〜4の直鎖または分岐のアミノ基;ニトロ基;カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基等の置換されても良い炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0019】
一般式(A)で示される本発明化合物は、たとえば下記(化21、化22)に示した反応式を経て合成することができる。
【化21】

【化22】

【0020】
ベンゾトリアゾール誘導体に高沸点溶媒である商品名「ソルベッソ150」(エクソンモービル社製)溶媒下、パラホルムアルデヒドとジエチルアミンを反応させてマンニッヒベースとし、該チアゾール誘導体と縮合させることで本発明の上記ベンゾトリアゾール誘導体化合物を合成できる。反応の溶媒としては上記「ソルベッソ150」以外に例えばキシレン等の芳香族系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、ヘプタン、オクタン等の鎖状炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の環状炭化水素を用いることができる。また再結晶の際に用いる再結晶溶媒としてはメチルイソブチルケトン以外に例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等の低級エステル類等が挙げられる。
【0021】
本発明の有機色素を製膜して用いる方法としては真空蒸着法、スパッタリング法、ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法などが一般的であるが、コスト面ではスピンコート法が望ましい。
【0022】
ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等により塗布する場合の塗布溶媒としては、基板を侵さない溶媒であればよく、特に限定されない。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の鎖状炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環状炭化水素系溶媒;テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール等のフルオロアルキルアルコール系溶媒;乳酸メチル、乳酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシカルボン酸エステル系溶媒等が挙げられる。
【実施例】
【0023】
以下に本発明で実施した本発明の有機色素に用いる化合物の合成法及び化合物の特性を示す。ただし合成方法はこれに限定されるものではない。
【0024】
(実施例1)
〔化合物の合成〕
化合物(a);メチル4−((3−((3−(2Hベンゾトリアゾール2−イル)−2−ヒドロキシ−5−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェニル)メチル)−4−オキソ−2−チオキソチアゾリジン−5−イリデン)メチル)ベンゾエートの合成
【化4】

【0025】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサ−、温度計、撹拌装置を取り付け、2−(2Hベンゾトリアゾール2−イル)−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェノ−ル(商品名「シーソーブ709」シプロ化成社製)9.69g(0.03モル)、ジエチルアミン6.57g(0.09モル)、92%パラホルム2.93g(0.09モル)、ソルベッソ150 10mlを入れ95〜100℃にて8時間撹拌した。70℃にて温水10mlを入れ湯洗をした。同様に後2回湯洗をし、2−(2Hベンゾトリアゾール2−イル)−6−((ジエチルアミノ)メチル)−4−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェノ−ルを得た。これに、メチル−4−((4−オキソ−2−チオキソチアゾリジン−5−イリデン)ベンゾエート8.38g(0.03 モル)、28%ナトリウムメトキシド1.02g(0.0053モル)を加え、120〜140℃で、減圧にし溶媒を回収しつつ5時間撹拌した。反応終了後、トルエン150ml、温水50mlを入れ70℃で湯洗を行った。同様に後2回湯洗し、トルエンを減圧回収し、メチルイソブチルケトン50mlを入れ晶析し放冷後、濾過し、黄色結晶7.26gを得た。これを、メチルイソブチルケトン170mlで再結晶し、4.43gの黄色結晶を得た。収率24.0%、融点216.0〜216.7℃であった。
【0026】
また、化合物(a)の紫外〜可視吸収スペクトルを測定したところ、最大吸収波長λmaxは、371nmであり、この時の吸光度εmaxは、34700であった。スペクトルを図1に示す。スペクトルの測定条件は次のとおりである。
<測定条件>
装置:UV-2450((株)島津製作所製)
測定波長:250〜500nm
なお、下記塗布膜の紫外〜可視吸収スペクトルの測定も同様の測定条件とした。また以下の実施例も本実施例と同様の測定条件で紫外〜可視吸収スペクトルの測定を行った。
【0027】
また、HPLC分析により、純度を測定した。
<測定条件>
装置:LC−6A((株)島津製作所製)
使用カラム:SUMIPAX ODS A−212 5μm 6mmφ×15cm
カラム温度:40℃
移動相:メタノ−ル:水=95:5
流速:1.0mL/min
<測定結果>
HPLC面百純度94.2%
なお、以下の実施例も本実施例と同様の測定条件でHPLC測定を行った。
【0028】
また、この化合物を高感度C,H,Nにて定量した。
<測定装置>
酸素循環燃焼・TCD検出方式 NCH定量装置
スミグラフ NCH−21型(住化分析センター製)
<測定結果>
3334としての計算値
C(%)64.47;H(%)5.57;N(%)9.11.
実測値 C(%)63.0 ;H(%)5.48;N(%)8.68
なお、以下の実施例も本実施例と同様の測定条件でNCH定量測定を行った。
【0029】
化合物(a)については、更にNMR解析を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。測定条件は次のとおりである。
<測定条件>
装置:JMM−ECA400
共振周波数:400MHz(H−NMR)
測定温度:室温
溶媒:クロロホルム−d
内部基準物質:TMS(0ppm)
積算回数:16回
得られたNMRスペクトルの要部拡大図を図9に示す。また該スペクトルの内容を表1に整理した。
【0030】
【表1】

【0031】
表1から推定される化合物を(化23)に示す。
【化23】

以上より、NMR測定結果も、化合物(a)が、メチル4−((3−((3−(2Hベンゾトリアゾール2−イル)−2−ヒドロキシ−5−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェニル)メチル)−4−オキソ−2−チオキソチアゾリジン−5−イリデン)メチル)ベンゾエートであることを支持している。
【0032】
また化合物(a)の赤外線吸収スペクトルも測定した。測定条件は次のとおりである。
装置:FTIR−8400S((株)島津製作所製)
検体:1/200(KBr)
上記条件で測定した化合物(a)の赤外線吸収スペクトルを図5に示す。なお、以下の実施例も本実施例と同様の測定条件で赤外線吸収スペクトル測定を行った。
【0033】
〔塗布膜としたときの評価〕
上記で得られた化合物(a)をエチルセロソルブに対して2.0wt%になるよう調整した。次にガラス板(7.5cmx2.5cm,厚さ約1mm)をポリカーボネート円盤(直径12cm,厚さ約1.2mm)に貼り付け、回転数500〜600rpmで回転させた。回転しているガラス板上にガラス板上に調製した上記化合物(a)のメチルセロソルブ溶液を滴下し、スピナー法により塗布した。塗布後、風乾させることで、化合物(a)が膜化して付着しているガラス板を得た。得られたガラス板上に膜化した化合物(a)の結晶性を目視で調べた。また膜化したときの紫外線〜可視光吸収スペクトルを測定した。塗布膜状態でのスペクトルは図2に示す。また最大吸収波長を求めたところ、λmaxは、415nmであった。
【0034】
(実施例2)
〔化合物の合成〕
化合物(b);2−エチルヘキシル4−((3−((3−(2Hベンゾトリアゾール2−イル)−2−ヒドロキシ−5−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェニル)メチル)−4−オキソ−2−チオキソチアゾリジン−5−イリデン)メチル)ベンゾエートの合成
【化5】

【0035】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサ−、温度計、撹拌装置を取り付け、実施例1で合成したメチル4−((3−((3−(2Hベンゾトリアゾール2−イル)−2−ヒドロキシ−5−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェニル)メチル)−4−オキソ−2−チオキソチアゾリジン−5−イリデン)メチル)ベンゾエート3.07g(0.005モル)、チタンテトライソプロポキシド0.05g、2−エチルヘキシルアルコ−ル13.0g(0.1モル)を入れ、150〜160℃で5時間撹拌した。反応終了後、2−エチルヘキシルアルコ−ルを減圧回収しトルエン30ml、温水30mlを入れ湯洗をした。同様にあと2回湯洗をし、70℃で熱濾過、溶媒を減圧回収し、イソプロピルアルコ−ル30ml、トルエン3mlで晶析した。放冷後、濾過し、黄色結晶2.51gを得た。収率70.5%、融点130.0〜131.5℃、λmax373nmのときのεmax41100、HPLC面百純度94.4%であった。紫外〜可視吸収スペクトルは図2に示した。赤外吸収スペクトルは図6に示した。
【0036】
また、この化合物を高感度C,H,Nにて定量した。
<測定結果>
4048としての計算値
C(%)67.38;H(%)6.79;N(%)7.86
実測値 C(%)70.8 ;H(%)7.40;N(%)8.35
【0037】
〔塗布膜としたときの評価〕
上記で得られた化合物(b)を実施例1記載の同様の手順で塗布膜としたものを得た。膜化したときの紫外線〜可視光吸収スペクトルを測定ところ、最大吸収波長λmaxは、406nmであった。
【0038】
(実施例3)
〔化合物の合成〕
化合物(c);メチル4−((3−((3−(2Hベンゾトリアゾール2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル)−4−オキソ−2−チオキソチアゾリジン−5−イリデン)メチル)ベンゾエートの合成
【化6】

【0039】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサ−、温度計、撹拌装置を取り付け、2−(2Hベンゾトリアゾール2−イル)−4−メチルフェノ−ル6.75g(0.03モル)、ジエチルアミン6.57g(0.09モル)、92%パラホルム2.94g(0.09モル)を入れ80〜90℃にて9時間撹拌した。70℃にて「ソルベッソ150」30ml、温水30mlを入れ、湯洗をした。同様に後2回湯洗をし、2−(2Hベンゾトリアゾール2−イル)−6−((ジエチルアミノ)メチル)−4−メチルフェノ−ルを得た。これに、メチル−4−((4−オキソ−2−チオキソチアゾリジン−5−イリデン)ベンゾエート8.38g(0.03 モル)、28%ナトリウムメトキシド1.02g(0.0053モル)を加え、120〜130℃で、減圧にし溶媒を回収しつつ5時間撹拌した。反応終了後、酢酸で中和、メチルイソブチルケトン75mlを入れ晶析し放冷後、濾過、メチルイソブチルケトン40mlで洗浄し、黄色結晶10.29gを得た。これを、シクロヘキサノン150mlで再結晶した。さらに、200mlの4つ口フラスコにこの合成物とメチルイソブチルケトン150mlを入れ1時間撹拌し、単離、乾燥後7.0gの黄色結晶を得た。収率45.2%、融点253.1〜253.6℃、λmax372nmのときのεmax41200、HPLC面百純度96.8%であった。紫外〜可視吸収スペクトルは図3に示した。赤外吸収スペクトルは図7に示した。
【0040】
また、この化合物を高感度C,H,Nにて定量した。
<測定結果>
2620としての計算値
C(%)60.45;H(%)3.90;N(%)10.85
実測値 C(%)61.4 ;H(%)3.98;N(%)11.2
【0041】
〔塗布膜としたときの評価〕
上記で得られた化合物(c)をクロロホルム溶媒中0.3wt%になるよう調整した点以外は、実施例1記載の同様の手順で塗布膜としたものを得た。膜化したときの紫外線〜可視光吸収スペクトルを測定ところ、最大吸収波長λmaxは、382nmであった。
【0042】
(実施例4)
〔化合物の合成〕
化合物(d);2−エチルヘキシル4−((3−((3−(2Hベンゾトリアゾール2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル)−4−オキソ−2−チオキソチアゾリジン−5−イリデン)メチル)ベンゾエートの合成
【化7】

【0043】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサ−、温度計、撹拌装置を取り付け、実施例3で合成したメチル4−((3−((3−(2Hベンゾトリアゾール2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル)−4−オキソ−2−チオキソチアゾリジン−5−イリデン)メチル)ベンゾエート2.58g(0.005モル)、チタンテトライソプロポキシド0.05g、2−エチルヘキシルアルコ−ル13.0g(0.1モル)を入れ、150〜160℃で5時間撹拌した。反応終了後、2−エチルヘキシルアルコ−ルを減圧回収しトルエン30ml、温水30mlを入れ湯洗をした。同様にあと2回湯洗をし、70℃で熱濾過、トルエンを10ml回収し晶析した。放冷後、濾過し、黄色結晶1.68gを得た。収率54.7%、融点168.1〜169.1℃、λmax373nmのときのεmax40600、HPLC面百純度94.4%であった。紫外〜可視吸収スペクトルは図4に示した。赤外吸収スペクトルは図8に示した。
【0044】
また、この化合物を高感度C,H,Nにて定量した。
<測定結果>
3334としての計算値
C(%)64.47;H(%)5.57;N(%)9.11
実測値 C(%)65.8 ;H(%)5.57;N(%)9.21
【0045】
〔塗布膜としたときの評価〕
上記で得られた化合物(d)を実施例1記載の同様の手順で塗布膜としたものを得た。膜化したときの紫外線〜可視光吸収スペクトルを測定ところ、最大吸収波長λmaxは、378nmであった。
【0046】
(評価)
上記で得られた化合物(a)(d)について、クロロホルムに溶解させたときの溶解度、及塗布膜とした場合の結晶析出性を調べた。これらの結果を上記物性とまとめて表2に示す。なお表2中、CFはクロロホルムを意味する。また結晶析出性の評価は目視にて行い、○は結晶析出が認められないこと、△は塗布面の縁にわずかに結晶析出が認められることを意味する。
【0047】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の有機色素は、可視光低波長領域から紫外領域に吸収を持ち、かつ低級アルコール、ケトン類、セロソルブ類、芳香族系化合物など、種々の有機溶媒に対する溶解度の高い化合物であるから、塗料や写真薬など一般の色材、また紫外線吸収剤として好適に使用できる。なかでも、いわゆる青色レーザーを用いる光記録媒体用に添加する色素として好適に利用できる。また、これら本発明の有機色素に用いる化合物は、金属錯体の配位子とすることもでき、本発明の化合物を配位子とした有機金属錯体もまた有機色素として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】化合物(a)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【図2】化合物(b)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【図3】化合物(c)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【図4】化合物(d)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【図5】化合物(a)の赤外吸収スペクトルである。
【図6】化合物(b)の赤外吸収スペクトルである。
【図7】化合物(c)の赤外吸収スペクトルである。
【図8】化合物(d)の赤外吸収スペクトルである。
【図9】化合物(a)のNMRスペクトル(要部拡大図)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(A)で示されるベンゾトリアゾール誘導体のうち、
(1)式中のR〜Rがそれぞれ下記の官能基または原子のうちいずれかであるベンゾトリアゾール誘導体化合物。
【化1】

〜R及びR〜R=水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、炭素数1〜4の直鎖または分鎖のモノ置換アミノ基、炭素数1〜4の直鎖または分鎖のジ置換アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素数1〜20のアルキル基(いずれかの位置で枝分かれしているものを含む)、炭素数1〜20のアルコキシ基(いずれかの位置で枝分かれしているものを含む)、炭素数1〜3のアルキルカルボキシ基、炭素数1〜20のアルキルカルボキシエステル基、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル基
(ただし、R〜R及びR〜Rにアミノ基またはニトロ基が選ばれる場合、アミノ基またはニトロ基は、いずれか一方が、R〜R及びR〜Rのうち1箇所置換されているものに限る。)
=水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜20のアルキル基(いずれかで枝分かれしているものを含む)、炭素数1〜20のアルコキシ基(いずれかの位置で枝分かれしているものを含む)、カルボキシル基、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル基(いずれかの位置で枝分かれしているものを含む)、アミノ基、炭素数1〜4の直鎖または分鎖のモノ置換アミノ基、炭素数1〜4の直鎖または分鎖のジ置換アミノ基、ニトロ基
【請求項2】
前記一般式(A)におけるR〜Rが、下記(a)〜(d)記載の組み合わせのいずれかであるベンゾトリアゾール誘導体化合物。
(a) R,R,R,R=H、R=COOCH
【化2】

(b) R,R,R,R=H、
【化3】

【化2】

(c) R,R,R,R=H、R=COOCH、R=CH
(d) R,R,R,R=H、R=CH
【化3】

【請求項3】
請求項1記載のベンゾトリアゾール誘導体化合物を含有する有機色素。
【請求項4】
請求項1記載のベンゾトリアゾール誘導体化合物を含有する紫外線吸収剤。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−126385(P2007−126385A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−319368(P2005−319368)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(301000675)シプロ化成株式会社 (33)
【Fターム(参考)】