説明

ベンチレータ内部の結露防止装置

【課題】ベンチレータ内部における結露水の発生を防止する。
【解決手段】ベンチレータ1の下部を収容し且つ通電により発熱する電熱線26(金属抵抗体)を備えた昇温ピット24と、ベンチレータ1の上部を被覆し且つ通電により発熱する電熱線27(金属抵抗体)を備えた昇温キャップ25とを備え、これら昇温ピット24及び昇温キャップ25の夫々の電熱線26,27に対し電流を印加し得るように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのブローバイガスからオイルを捕捉除去するベンチレータの内部に結露が生じることを防止する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンの圧縮・燃焼行程で燃焼室からクランクケース内に漏れ出るブローバイガスは、クランクケースの内部圧力を上昇させてガスシール等に損傷を及ぼす虞れがあるため、クランクケース内から適宜に抜き取りを行う必要があるが、ブローバイガス中には、ミスト状のオイルが含まれていて大気汚染の原因にもなり得るため、大気開放せずにベンチレータを通してオイルを捕捉除去した後に吸気系に戻して再燃焼させるようにしている。
【0003】
図4に一例を示す通り、ベンチレータ1を構成している本体2のブローバイガス入口3に、作動しているエンジンのクランクケース4からのブローバイガスが導入されるようになっており、該ブローバイガス入口3から本体2内に導入されたブローバイガスは、リング形状の第一室5内を旋回しつつ、孔6から第二室7へと流入し、第二室7に流入したブローバイガスは第二室7内を旋回しつつ、スチールメッシュから成る金属製の濾網8によってブローバイガス内の比較的大きな液滴のオイルが捕捉された後、孔9から第三室10の上空間10aへと流入するようにしてある。
【0004】
そして、第三室10の上空間10aに流入したブローバイガスは、PCVバルブ11(ダイアフラム弁)の上部の中央通路12を通って上昇し第四室13へと流入し、第四室13に流入したブローバイガスはエレメント14の中空部分からエレメント14の外側の空間13aに向かって流れ、比較的小さな液滴のオイルもエレメント14により捕捉されるようになっており、オイルが除去された空間13aのブローバイガスは、ブローバイガス出口15から排出され、ターボチャージャ16の上流部に戻されるようになっている。
【0005】
また、エレメント14で捕捉されて液滴化したオイルは、空間13aへ流下してオイル集合部17に集められ、該オイル集合部17に所定以上のオイルが溜まると逆止弁18が開き、オイルは突出部19に設けたオイル通路19aへと流下するようにしてある。
【0006】
更に、第二室7の濾網8により捕捉されて液滴化したオイルは孔9から流下し、PCVバルブ11のダイアフラムの上部を伝って流下し、前記エレメント14で捕捉されたオイルと合流されて、底部のオイル貯留部20に貯留されるようになっている。
【0007】
前記オイル貯留部20にオイルが所定以上溜まると、逆止弁21が開き、オイルは、オイル出口22へ流下していき、オイル戻し流路23(ドレンホース)を経て前記クランクケース4へ戻されるようになっている。
【0008】
尚、この種のベンチレータに関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−247552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ベンチレータ1内部の表面温度が低下している時に、高温のブローバイガスがベンチレータ1内部を通過すると、前記ブローバイガス中に含まれる水分が結露し、その結露水がオイル貯留部20等にオイルと共に溜まってしまうため、寒冷時の外気温及び冷風の吹付け等によって本体2が冷却された際に、前記オイル貯留部20に溜った水が凍結し、オイル貯留部20のオイルの取出しが不能になったり、本体2内のブローバイガスの経路が閉塞されることでクランクケース4内の圧力が上昇して油漏れを誘発する虞れがあった。
【0011】
このため、前記特許文献1等においては、既に発生してしまった結露水の凍結を防止するべくベンチレータ1を断熱材で被覆して保温する提案が成されているが、このような措置を施したとしても、寒冷時にエンジンを停止して長時間放置されてしまえば、結露水が凍結してしまうことが避けられなかった。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みてなしたもので、ベンチレータ内部における結露水の発生を防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、エンジンのブローバイガスを導入して該ブローバイガスからオイルを捕捉除去するベンチレータの内部に結露が生じることを防止する装置であって、ベンチレータの下部を収容し且つ通電により発熱する金属抵抗体を備えた昇温ピットと、ベンチレータの上部を被覆し且つ通電により発熱する金属抵抗体を備えた昇温キャップとを備え、これら昇温ピット及び昇温キャップの夫々の金属抵抗体に対し電流を印加し得るように構成したことを特徴とするものである。
【0014】
而して、ベンチレータの下部を昇温ピットに収容すると共に、ベンチレータの上部を昇温キャップを被せて被覆し、これら昇温ピット及び昇温キャップの夫々の金属抵抗体に対し電流を印加すると、該各金属抵抗体が通電により発熱して昇温ピット及び昇温キャップの夫々が昇温し、ベンチレータの下部と上部が外側から暖められてベンチレータ内部の表面温度が上がり、ベンチレータ内部の表面温度と内部雰囲気温度との温度差がなくなって結露水の発生が防止される。
【0015】
また、本発明においては、ベンチレータにブローバイガスを導く入側配管にも通電により発熱する金属抵抗体を備え、該金属抵抗体に対し電流を印加し得るように構成することが好ましく、このようにした場合に、ブローバイガスの入側配管の金属抵抗体に対し電流を印加すると、該金属抵抗体が通電により発熱して前記入側配管が昇温し、ベンチレータに導かれるブローバイガスの温度が上がり、ベンチレータ内でブローバイガスが露点に達し難くなることで更に結露水の発生が防止され、同時に前記入側配管内での結露水の発生も防止されることになる。
【0016】
更に、本発明をより具体的に実施するにあたっては、昇温ピット及び昇温キャップをシリコンラバーにより形成し且つ該シリコンラバーの内部に金属抵抗体として電熱線を埋設すると良く、また、金属抵抗体として電熱線を内包したリボン状ヒータをブローバイガスの入側配管の外周囲に巻き付けると良い。
【発明の効果】
【0017】
上記した本発明のベンチレータ内部の結露防止装置によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0018】
(I)昇温ピット及び昇温キャップの夫々の金属抵抗体に通電することにより昇温ピット及び昇温キャップを昇温し、これによりベンチレータの下部と上部を外側から暖めてベンチレータ内部の表面温度を上昇させることができるので、ベンチレータ内部の表面温度と内部雰囲気温度との温度差をなくしてベンチレータ内部における結露水の発生を防止することができ、延いては、寒冷時に結露水が凍結することによるオイルの取出し不能やブローバイガスの経路の閉塞を未然に回避することができる。
【0019】
(II)既存のベンチレータに対し昇温ピット及び昇温キャップを後から装着するだけで実施できるので、既存設備に対し簡易な改良を施すだけでベンチレータ内部における結露水の発生を防止することができる。
【0020】
(III)ベンチレータにブローバイガスを導く入側配管にも通電により発熱する金属抵抗体を備え、該金属抵抗体に対し電流を印加し得るように構成した場合には、前記入側配管の金属抵抗体に通電することにより前記入側配管を昇温し、これによりベンチレータに導かれるブローバイガスの温度を上昇させることができるので、ベンチレータ内でブローバイガスが露点に達し難くして更なる結露水の発生の防止を図ることができると共に、前記入側配管内での結露水の発生も防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す斜視図である。
【図2】図1のベンチレータの外観図である。
【図3】図1のベンチレータにブローバイガスを導く入側配管を示す平面図である。
【図4】一般的なベンチレータの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図1〜図3は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図4と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0024】
図1に示す如く、本形態例のベンチレータ内部の結露防止装置は、ベンチレータ1の下部(ベンチレータボデー)に下方から装着されて該下部を収容する昇温ピット24と、ベンチレータ1の上部(ベンチレータキャップ)に上方から被せられて該上部を被覆する昇温キャップ25とにより構成され、これら昇温ピット24及び昇温キャップ25は、シリコンラバーにより形成され且つ該シリコンラバーの内部に電熱線26,27(通電により発熱する金属抵抗体)が全体を網羅するようにジグザグ状に配索されて埋設されたものとなっており、外部に引き出したハーネス28,29を介して図示しない外部電源又は搭載バッテリ等から電流を印加し得るようにしてある。
【0025】
図1の昇温ピット24及び昇温キャップ25が装着されるベンチレータ1の外観は、図2に一例を示す如きものであり、ここに図示している例の場合は、図2で正面に見える取付面A(エンジン側へ取り付ける面)を、図1の枡形状を成す昇温ピット24の一側面の開口部30に向け、ベンチレータ1の本体から突出するブローバイガス入口3とブローバイガス出口15を、前記開口部30に隣接する別の側面の切欠部31,32を利用して前記昇温ピット24の外側まで張り出させるようになっており、また、図1の昇温キャップ25は、ベンチレータ1の上部に上方から被せ易いように全体が円錐台形状を成すように形成されていて、その内側面は前記ベンチレータ1の上部の形状と対応するように形成されている。
【0026】
更に、図3に平面図で示す如く、本形態例においては、ベンチレータ1にブローバイガスを導く入側配管33の外周囲にも、電熱線34(通電により発熱する金属抵抗体)を内包したリボン状ヒータ35が巻き付けられており、外部に引き出したハーネス36を介して図示しない外部電源又は搭載バッテリ等から電流を印加し得るようにしてある。
【0027】
而して、ベンチレータ1の下部を昇温ピット24に収容すると共に、ベンチレータ1の上部を昇温キャップ25を被せて被覆し、これら昇温ピット24及び昇温キャップ25の夫々の電熱線26,27に対しハーネス28,29を介して電流を印加すると、前記各電熱線26,27が通電により発熱して昇温ピット24及び昇温キャップ25の夫々が昇温し、ベンチレータ1の下部と上部が外側から暖められてベンチレータ1内部の表面温度が上がり、ベンチレータ1内部の表面温度と内部雰囲気温度との温度差がなくなって結露水の発生が防止される。
【0028】
また、ブローバイガスの入側配管33の電熱線34に対し電流を印加すると、該電熱線34が通電により発熱して前記入側配管33が昇温し、ベンチレータ1に導かれるブローバイガスの温度が上がり、ベンチレータ1内でブローバイガスが露点に達し難くなることで更に結露水の発生が防止され、同時に前記入側配管33内での結露水の発生も防止されることになる。
【0029】
ここで、昇温ピット24及び昇温キャップ25、リボン状ヒータ35の各電熱線26,27,34への通電は、エンジンの始動の有無を問わず実施することが可能であるが、エンジン停止後に通電を行う場合には、外部電源を使用することが好ましく、このようにすれば、搭載バッテリの消耗を未然に回避することが可能となる。
【0030】
以上に述べた通り、上記形態例によれば、昇温ピット24及び昇温キャップ25の夫々の電熱線26,27に通電することにより昇温ピット24及び昇温キャップ25を昇温し、これによりベンチレータ1の下部と上部を外側から暖めてベンチレータ1内部の表面温度を上昇させることができるので、ベンチレータ1内部の表面温度と内部雰囲気温度との温度差をなくしてベンチレータ1内部における結露水の発生を防止することができ、延いては、寒冷時に結露水が凍結することによるオイルの取出し不能やブローバイガスの経路の閉塞を未然に回避することができる。
【0031】
また、既存のベンチレータ1に対し昇温ピット24及び昇温キャップ25を後から装着するだけで実施できるので、既存設備に対し簡易な改良を施すだけでベンチレータ1内部における結露水の発生を防止することができる。
【0032】
更に、特に本形態例においては、ブローバイガスを導く入側配管33に巻き付けたリボン状ヒータ35の電熱線34に通電することにより前記入側配管33を昇温し、これによりベンチレータ1に導かれるブローバイガスの温度を上昇させることができるので、ベンチレータ1内でブローバイガスが露点に達し難くして更なる結露水の発生の防止を図ることができると共に、前記入側配管33内での結露水の発生も防止することができる。
【0033】
尚、本発明のベンチレータ内部の結露防止装置は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、昇温ピット及び昇温キャップは図示の形状に限定されないこと、金属抵抗体は電熱線以外の形態であっても良いこと、昇温ピット及び昇温キャップの表面に金属抵抗体として電熱線を貼付しても良く、更には、ブローバイガスの入側配管の管肉部分に金属抵抗体として電熱線を埋設しても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
1 ベンチレータ
24 昇温ピット
25 昇温キャップ
26 電熱線(金属抵抗体)
27 電熱線(金属抵抗体)
33 入側配管
34 電熱線(金属抵抗体)
35 リボン状ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのブローバイガスを導入して該ブローバイガスからオイルを捕捉除去するベンチレータの内部に結露が生じることを防止する装置であって、ベンチレータの下部を収容し且つ通電により発熱する金属抵抗体を備えた昇温ピットと、ベンチレータの上部を被覆し且つ通電により発熱する金属抵抗体を備えた昇温キャップとを備え、これら昇温ピット及び昇温キャップの夫々の金属抵抗体に対し電流を印加し得るように構成したことを特徴とするベンチレータ内部の結露防止装置。
【請求項2】
ベンチレータにブローバイガスを導く入側配管にも通電により発熱する金属抵抗体を備え、該金属抵抗体に対し電流を印加し得るように構成したことを特徴とする請求項1に記載のベンチレータ内部の結露防止装置。
【請求項3】
昇温ピット及び昇温キャップをシリコンラバーにより形成し且つ該シリコンラバーの内部に金属抵抗体として電熱線を埋設したことを特徴とする請求項1又は2に記載のベンチレータ内部の結露防止装置。
【請求項4】
金属抵抗体として電熱線を内包したリボン状ヒータをブローバイガスの入側配管の外周囲に巻き付けたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のベンチレータ内部の結露防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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