説明

ベンチレータ

【課題】ベンチレータ内で生じた氷結物の成長を防止してブローバイガスの経路の閉塞を回避する。
【解決手段】エンジンのブローバイガスを導入して該ブローバイガスからオイルを捕捉除去する金属製の濾網8を本体2内部に備えたベンチレータ1に関し、通電により発熱する金属抵抗体として、濾網8内に電熱線24を紆余曲折させて配索し、該電熱線24に対し電流を印加し得るように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのブローバイガスからオイルを捕捉除去するベンチレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンの圧縮・燃焼行程で燃焼室からクランクケース内に漏れ出るブローバイガスは、クランクケースの内部圧力を上昇させてガスシール等に損傷を及ぼす虞れがあるため、クランクケース内から適宜に抜き取りを行う必要があるが、ブローバイガス中には、ミスト状のオイルが含まれていて大気汚染の原因にもなり得るため、大気開放せずにベンチレータを通してオイルを捕捉除去した後に吸気系に戻して再燃焼させるようにしている。
【0003】
図3に一例を示す通り、ベンチレータ1を構成している本体2のブローバイガス入口3に、作動しているエンジンのクランクケース4からのブローバイガスが導入されるようになっており、該ブローバイガス入口3から本体2内に導入されたブローバイガスは、リング形状の第一室5内を旋回しつつ、孔6から第二室7へと流入し、第二室7に流入したブローバイガスは第二室7内を旋回しつつ、スチールメッシュから成る金属製の濾網8によってブローバイガス内の比較的大きな液滴のオイルが捕捉された後、孔9から第三室10の上空間10aへと流入するようにしてある。
【0004】
そして、第三室10の上空間10aに流入したブローバイガスは、PCVバルブ11(ダイアフラム弁)の上部の中央通路12を通って上昇し第四室13へと流入し、第四室13に流入したブローバイガスはエレメント14の中空部分からエレメント14の外側の空間13aに向かって流れ、比較的小さな液滴のオイルもエレメント14により捕捉されるようになっており、オイルが除去された空間13aのブローバイガスは、ブローバイガス出口15から排出され、ターボチャージャ16の上流部に戻されるようになっている。
【0005】
また、エレメント14で捕捉されて液滴化したオイルは、空間13aへ流下してオイル集合部17に集められ、該オイル集合部17に所定以上のオイルが溜まると逆止弁18が開き、オイルは突出部19に設けたオイル通路19aへと流下するようにしてある。
【0006】
更に、第二室7の濾網8により捕捉されて液滴化したオイルは孔9から流下し、PCVバルブ11のダイアフラムの上部を伝って流下し、前記エレメント14で捕捉されたオイルと合流されて、底部のオイル貯留部20に貯留されるようになっている。
【0007】
前記オイル貯留部20にオイルが所定以上溜まると、逆止弁21が開き、オイルは、オイル出口22へ流下していき、オイル戻し流路23(ドレンホース)を経て前記クランクケース4へ戻されるようになっている。
【0008】
尚、この種のベンチレータに関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−247552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ベンチレータ1内部の表面温度が低下している時に、高温のブローバイガスがベンチレータ1内部を通過すると、前記ブローバイガス中に含まれる水分が結露し、その結露水が寒冷時の外気温及び冷風の吹付け等により凍結し、その凍結した氷結物の上に更なる結露水が凍りつくことで氷結物が次第に大きく成長し、最終的にベンチレータ1内におけるブローバイガスの経路を閉塞してしまい、これによりクランクケース4内の圧力が上昇して油漏れを誘発する虞れがあった。
【0011】
このため、前記特許文献1等においては、ベンチレータ1内で発生した結露水の凍結を防止するべくベンチレータ1を断熱材で被覆して保温する提案が成されているが、このような措置を施したとしても、寒冷時にエンジンを停止して長時間放置されてしまえば、結露水が凍結してしまうことが避けられなかった。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みてなしたもので、ベンチレータ内で生じた氷結物の成長を防止してブローバイガスの経路の閉塞を回避することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、エンジンのブローバイガスを導入して該ブローバイガスからオイルを捕捉除去する金属製の濾網を本体内部に備えたベンチレータであって、通電により発熱する金属抵抗体を通気性を有する形状にて前記濾網内に配設し、前記金属抵抗体に対し電流を印加し得るように構成したことを特徴とするものである。
【0014】
而して、濾網内の金属抵抗体に対し電流を印加すると、該金属抵抗体が通電により発熱して金属製の濾網全体が加熱されて高温となり、該濾網をブローバイガスが通過する際に、高温の濾網とブローバイガスとが効率良く熱交換される結果、該ブローバイガスが高温となってベンチレータ内における濾網以降の経路を暖めながら流れ、ベンチレータ内で生じた氷結物が溶解される。尚、ベンチレータを経てオイルを捕捉除去されたブローバイガスが高温となっていることにより、ベンチレータより下流の配管に生じた氷結物も溶解されることは勿論である。
【0015】
また、本発明においては、濾網内に金属抵抗体として電熱線を紆余曲折させて配索することが好ましく、このようにした場合、濾網内に電熱線を紆余曲折させて配索した程度では、ブローバイガスの通過抵抗に及ぼす影響が極めて軽微で済むため、ベンチレータの基本機能を従前通りに保ちながらブローバイガスの高温化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
上記した本発明のベンチレータによれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0017】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、ブローバイガスを濾網に通すことにより効率良く加熱して該濾網以降の経路へ流すことができ、これによりベンチレータ内で生じた氷結物をブローバイガスにより暖めて溶解させることができるので、前記氷結物の成長を防止してブローバイガスの経路の閉塞を未然に回避することができる。
【0018】
(II)本発明の請求項1に記載の発明によれば、ベンチレータを経てオイルを捕捉除去されたブローバイガスも高温となるので、ベンチレータより下流の配管に生じた氷結物も溶解させることができ、ベンチレータより下流の配管における氷結物による閉塞も未然に回避することができる。
【0019】
(III)本発明の請求項2に記載の発明によれば、濾網内に金属抵抗体として電熱線を紆余曲折させて配索したことにより、ブローバイガスの通過抵抗に及ぼす影響を極めて軽微に抑えることができ、ベンチレータの基本機能を従前通りに保ちながら、濾網内への金属抵抗体の配設を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す断面図である。
【図2】図1の濾網内に配設される電熱線の配索イメージを示す図である。
【図3】一般的なベンチレータの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1及び図2は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図3と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0023】
図1に示す如く、本形態例のベンチレータは、先に図3で説明した従来のベンチレータ1と略同様に構成されていて、ブローバイガスからオイルを捕捉除去するためのスチールメッシュから成る金属製の濾網8が本体2内部に備えられているが、この濾網8内には、図2に単体で示す如き電熱線24(通電により発熱する金属抵抗体)が紆余曲折して配索されており、外部に引き出したハーネス25を介して図示しない外部電源又は搭載バッテリ等から電流が印加されるようになっている。
【0024】
而して、このようにすれば、濾網8内の電熱線24に対し電流を印加すると、該電熱線24が通電により発熱して金属製の濾網8全体が加熱されて高温となり、該濾網8をブローバイガスが通過する際に、高温の濾網8とブローバイガスとが効率良く熱交換される結果、該ブローバイガスが高温となってベンチレータ1内における濾網8以降の経路を暖めながら流れ、ベンチレータ1内で生じた氷結物が溶解される。
【0025】
ここで、ベンチレータ1を経てオイルを捕捉除去されたブローバイガスは、高温になったままベンチレータ1のブローバイガス出口15から図示しない下流の配管へと排出されるので、ベンチレータ1の下流の配管を暖めながら流れることで該配管内に生じた氷結物についても溶解されることになる。
【0026】
また、特に本形態例のように、濾網8内に電熱線24を紆余曲折させて配索した程度では、ブローバイガスの通過抵抗に及ぼす影響が極めて軽微で済むため、ベンチレータ1の基本機能を従前通りに保ちながらブローバイガスの高温化を図ることが可能となる。
【0027】
尚、濾網8内の電熱線24への通電は、エンジンの始動の有無を問わず実施することが可能であり、エンジン停止後にはブローバイガスが流れないが、ベンチレータ1を暖めて結露水の凍結を防ぐ役割を果たすことが可能である。このようにエンジン停止後に濾網8内の電熱線24への通電を行う場合には、外部電源を使用することが好ましく、外部電源を使用すれば、搭載バッテリの消耗を未然に回避することが可能となる。
【0028】
従って、上記形態例によれば、ブローバイガスを濾網8に通すことにより効率良く加熱して該濾網8以降の経路へ流すことができ、これによりベンチレータ1内で生じた氷結物をブローバイガスにより暖めて溶解させることができるので、前記氷結物の成長を防止してブローバイガスの経路の閉塞を未然に回避することができる。
【0029】
更に、ベンチレータ1を経てオイルを捕捉除去されたブローバイガスも高温となるので、ベンチレータ1より下流の配管に生じた氷結物も溶解させることができ、ベンチレータ1より下流の配管における氷結物による閉塞も未然に回避することができる。
【0030】
また、特に本形態例の場合は、濾網8内に金属抵抗体として電熱線24を紆余曲折させて配索したことにより、ブローバイガスの通過抵抗に及ぼす影響を極めて軽微に抑えることができ、ベンチレータ1の基本機能を従前通りに保ちながら、濾網8内への金属抵抗体の配設を行うことができる。
【0031】
尚、本発明のベンチレータは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、濾網内に配設される金属抵抗体は電熱線以外の形態であっても良く、通気性を有する形状となっていれば良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
1 ベンチレータ
2 本体
8 濾網
24 電熱線(金属抵抗体)
25 ハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのブローバイガスを導入して該ブローバイガスからオイルを捕捉除去する金属製の濾網を本体内部に備えたベンチレータであって、通電により発熱する金属抵抗体を通気性を有する形状にて前記濾網内に配設し、前記金属抵抗体に対し電流を印加し得るように構成したことを特徴とするベンチレータ。
【請求項2】
濾網内に金属抵抗体として電熱線を紆余曲折させて配索したことを特徴とする請求項1に記載のベンチレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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