説明

ベーカリー用上掛け生地

【課題】焼成後のベーカリー用上掛け生地が、低油分であるにも係らず、歯切れの良い食感、口どけが良好で、深い明確な割れ目を有する外観であり、さらに伸展性が良好なベーカリー用上掛け生地を提供する。
【解決手段】油分が30質量%以上である水中油型乳化組成物を含有すること、かつ該水中油型乳化組成物のみを油分として含有するベーカリー用上掛け生地。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーカリー用上掛け生地に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メロンパンに代表される上掛け生地を用いたベーカリー製品において、焼成後の上掛け生地が低油分であるにも係らず、歯切れの良い食感とすることが求められてきている。しかし上掛け生地で一般的に使用されるショートニングや油中水型乳化物であるマーガリンを上掛け生地に用いた場合、低油分にすると、焼成後の上掛け生地において、歯切れの良い食感を得ることができなかった。
【0003】
一方、メロンパンにおいて焼成後の上掛け生地の食感について検討した先行技術として特許文献1や2を挙げることができる。
特許文献1には、焼成後の外皮生地において、時間がたってもサクっとした食感を維持しているメロンパンを得るために、外皮生地をフラワーバッター法で作製することで目的を達成することが記載されている。しかし焼成後の外皮生地が粉っぽい食感となるという欠点があった。
特許文献2には、食感がサクサクして軽く、歯切れが良いメロンパンを得るために、上掛け生地をパン生地たる内生地に載置又は被覆し、焙炉をとり焼成してなる菓子パンにおいて、上記上掛け生地を主として薄力粉、化学膨張剤及び水から成る原料を混捏した後、冷蔵し、分割・成形した菓子パンについて記載されている。しかし、特許文献2の上掛け生地はショートニングを使用しているので、低油分にすると焼成後の上掛け生地において歯切れの良い食感を得ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−228940号公報
【特許文献2】特開平8−191657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、焼成後のベーカリー用上掛け生地が低油分であるにも係らず、歯切れの良い食感とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、従来のベーカリー用上掛け生地において使用しているショートニングや油中水型マーガリンではなく、逆の乳化形態である水中油型乳化型であって油分が30質量%以上である水中油型乳化組成物を使用することで、上記問題を解決することが可能であることを知見した。
本件発明は、上記知見に基づいてなされたもので、油分が30質量%以上である水中油型乳化組成物を含有することを特徴とするベーカリー用上掛け生地により解決するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のベーカリー用上掛け生地は、焼成後のベーカリー用上掛け生地が、低油分であるにも係らず、歯切れの良い食感、口どけが良好で、深い明確な割れ目を有する外観とすることができる。また本発明のベーカリー用上掛け生地は、伸展性が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のベーカリー用上掛け生地に説明する。
本発明のベーカリー用上掛け生地で含有させる油分含量が30質量%以上である水中油型乳化組成物(以下、水中油型乳化組成物ともいう)について説明をする。
【0009】
上記水中油型乳化組成物で含有させる油脂としては特に制限されず、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、菜種油、キャノーラ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した油脂が挙げられる。本発明において、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明では、上記油脂として、好ましくは、常温(30℃)で液状である油脂、さらに好ましくは融点20℃未満である油脂、最も好ましくは融点10℃未満である油脂を含有させることが好ましい。
上記水中油型乳化組成物の油分は、水中油型乳化組成物に含有させる油脂や、水中油型乳化組成物に含有させる原料に由来する油分も含め、30質量%以上であることが必要であり、好ましく30〜90質量%、さらに好ましくは40〜80質量%、最も好ましくは40〜60質量%である。本発明において上記水中油型乳化組成物の油分含量が30質量%よりも少ないと、焼成後のベーカリー用上掛け生地において、ひきのでた食感となり、歯切れが悪くなるので好ましくない。
【0010】
上記水中油型乳化組成物の水分は、例えば、水道水、ミネラル水、地下水などの水や、水中油型乳化組成物に含有させる牛乳や液糖などの原料に含まれる水分を含め、好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは10〜70質量%、一層好ましくは20〜60質量%、最も好ましくは40〜60質量%である。
【0011】
上記水中油型乳化組成物は乳化剤を含有することが好ましい。
上記乳化剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステルとグリセリンモノ脂肪酸エステルの両方を含有することが好ましい。
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、親水性のポリグリセリン脂肪酸エステルであることが好ましく、HLB9以上のポリグリセリン脂肪酸エステルであることがさらに好ましい。
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸残基としては飽和脂肪酸であることが好ましく、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の残基が挙げられる。
上記ポリグリセリン飽和脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンは、親水性であれば何ら限定されるものではないが、高HLBを得る点で、好ましくはグリセリンの重合度が2〜12、さらに好ましくは6〜10であるものが良い。
上記ポリグリセリン飽和脂肪酸エステルを構成する1分子中のエステル結合の数も親水性であれば何ら限定されるものではないが、好ましくは1分子中のエステル結合の数が3以下、さらに好ましくは2以下、最も好ましくは1であるモノエステルが良い。
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は上記水中油型乳化組成物中、好ましくは0.5〜10質量%、さらに好ましくは1〜8質量%、最も好ましくは3〜6質量%である。
上記のグリセリンモノ脂肪酸エステルとしては、親油性のグリセリンモノ脂肪酸エステルであることが好ましく、HLB6以下のグリセリンモノ脂肪酸エステルであることがさらに好ましい。
上記グリセリンモノ脂肪酸エステルを構成する脂肪酸残基としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸等の残基が挙げられる。
上記グリセリンモノ脂肪酸エステルの含有量は上記水中油型乳化組成物中、好ましくは1〜20質量%、さらに好ましくは2〜10質量%、最も好ましくは3〜6質量%である。
【0012】
上記水中油型乳化組成物は、必要により、上記のポリグリセリン脂肪酸エステルとグリセリンモノ脂肪酸エステル以外のその他の乳化剤として、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等の合成乳化剤や、例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、乳脂肪球皮膜蛋白質等の天然乳化剤の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
上記その他の乳化剤の含有量は、上記水中油型乳化組成物中、好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0013】
上記水中油型乳化組成物は、糖類を含有してもよい。
上記糖類としては、上白糖、グラニュー糖、粉糖、液糖、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、はちみつ、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、還元乳糖、ソルビトール、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、トレハロース等の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0014】
上記水中油型乳化組成物は、甘味料を含有してもよい。
上記の甘味料としては、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、ソーマチン、サッカリン、ネオテーム、アセスルファムカリウム、甘草、羅漢果等の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
上記の糖類と甘味料の合計の含有量は、特に制限はないが、上記水中油型乳化組成物中、固形分換算で好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、最も好ましくは15質量%以下である。
【0015】
上記水中油型乳化組成物は増粘安定剤を含有してもよい。
上記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン等の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
上記増粘安定剤の含有量は、特に制限はないが、上記水中油型乳化組成物中、好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、最も好ましくは3質量%以下である。
【0016】
上記水中油型乳化組成物はさらに必要により、乳製品、蛋白質、穀類、酵素、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、澱粉、デキストリン、酸味料、無機塩、有機酸塩、調味料、アミノ酸、果実、果汁、ナッツペースト、香辛料、卵類、コーヒー製品、カカオ製品、チョコレート、紅茶、緑茶、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材、フレーバー、果汁、着色料、保存料、日持ち向上剤、pH調整剤、酸化防止剤等の中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
【0017】
次に、上記水中油型乳化組成物の製造方法を説明する。上記水中油型乳化組成物は、その製造方法が特に制限されるものではないが、例えばまず、油脂に、必要によりその他の原料を添加した油相を用意する。一方水に、必要によりその他の原料を添加した水相を用意する。そして得られた油相と水相を混合し、水中油型に乳化する。そして必要により殺菌処理を行う。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。
次に、冷却(好ましくは5℃以下)、固化し、水中油型乳化組成物を得る。また、上記水中油型乳化組成物を製造する際の何れかの製造工程で、窒素、空気等を含気させても、含気させなくても構わない。
また上記水中油型乳化組成物は、可塑性を有することが好ましい。
【0018】
次に本発明のベーカリー用上掛け生地について説明する。
本発明のベーカリー用上掛け生地は、例えばサブレ生地、ビスケット生地、クッキー生地、ガレット生地、練パイ生地、タルト生地を挙げることができる。
本発明のベーカリー用上掛け生地は、上記油分が30質量%以上である水中油型乳化組成物を含有する。上記油分が30質量%以上である水中油型乳化組成物の含有量は、上記ベーカリー用上掛け生地で用いる穀粉類100質量部に対して、好ましくは10〜50質量部、さらに好ましくは15〜45質量部、最も好ましくは20〜40質量部である。また上記の油分が30質量%以上である水中油型乳化組成物は、本発明のベーカリー用上掛け生地に練り込んで使用する。
【0019】
本発明のベーカリー用上掛け生地で用いる穀粉類としては、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉、ライ麦粉、米粉等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。特に薄力粉を用いることが好ましい。
本発明のベーカリー用上掛け生地は、必要により、上記の油分が30質量%以上である水中油型乳化組成物以外の油脂、澱粉類、卵類、糖類、甘味料、乳製品、乳化剤、増粘安定剤、原料アルコール、焼酎・ウイスキー・ウォッカ・ブランデーなどの蒸留酒、ワイン・日本酒・ビールなどの醸造酒、各種リキュール、膨張剤、水、食塩、調味料、香辛料、着香料、着色料、ココア、チョコレート、ヨーグルト、チーズ、抹茶、紅茶、コーヒー、豆腐、黄な粉、豆類、野菜類、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、果物、ハーブ、肉類、魚介類、保存料、日持ち向上剤等を用いることができる。
【0020】
上記油分が30質量%以上である水中油型乳化組成物以外の油脂としては、例えば、油中水型乳化物、二重乳化組成物、ショートニング、流動ショートニング、液状油、油分が30質量%未満の水中油型乳化組成物などが挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
上記油分が30質量%以上である水中油型乳化組成物以外の油脂は、上記ベーカリー用上掛け生地で用いる穀粉類100質量部に対し、好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
特に本発明のベーカリー用上掛け生地では、上記油分が30質量%以上である水中油型乳化組成物のみを、ベーカリー用上掛け生地中の油分として用いることが望ましい。言い換えると、本発明のベーカリー用上掛け生地では、上記油分が30質量%以上である水中油型乳化組成物以外に油分を含む原料を用いないことが望ましい。
【0021】
上記澱粉類としては、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、モチ米澱粉などの澱粉や、これらの澱粉をアミラーゼなどの酵素で処理したものや、α化処理、分解処理、エーテル化処理、エステル化処理、架橋処理、グラフト化処理などの中から選ばれた1種又は2種以上の処理を施した化工澱粉などが挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
上記澱粉類は、上記ベーカリー用上掛け生地で用いる穀粉類100質量部に対し、好ましくは30質量部以下である。
【0022】
上記卵類としては、全卵、卵黄、卵白、加塩全卵、加塩卵黄、加塩卵白、加糖全卵、加糖卵黄、加糖卵白、乾燥全卵、乾燥卵黄、乾燥卵白、凍結全卵、凍結卵黄、凍結卵白、凍結加糖全卵、凍結加糖卵黄、凍結加糖卵白、酵素処理全卵、酵素処理卵黄、酵素処理卵白等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
上記卵類は、上記ベーカリー用上掛け生地で用いる穀粉類100質量部に対し、好ましくは3〜50質量部、さらに好ましくは10〜40質量部である。
【0023】
上記糖類としては、上白糖、グラニュー糖、粉糖、液糖、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、はちみつ、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、デキストリン、還元乳糖、ソルビトール、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、トレハロース等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0024】
上記の甘味料としては、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、ソーマチン、サッカリン、ネオテーム、アセスルファムカリウム、甘草、羅漢果等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
上記糖類と甘味料を合わせた含有量は、上記ベーカリー用上掛け生地で用いる穀粉類100質量部に対し、固形物換算で好ましくは20〜70質量部、さらに好ましくは40〜60質量部である。
【0025】
上記乳製品としては、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、蛋白質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、はっ酵乳、乳酸菌飲料、乳飲料、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインマグネシウム、ホエイプロテインコンセートレート、トータルミルクプロテイン、乳清ミネラル等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
上記乳製品は、上記ベーカリー用上掛け生地中で用いる穀粉類100質量部に対し、固形物換算で好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0026】
上記乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等の合成乳化剤や、例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、乳脂肪球皮膜蛋白質等の天然乳化剤が挙げられ、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
上記乳化剤は、上記ベーカリー用上掛け生地で用いる穀粉類100質量部に対し、好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
【0027】
上記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0028】
次に、本発明のベーカリー用上掛け生地の製造方法について述べる。
本発明のベーカリー用上掛け生地は、シュガーバッター法、フラワーバッター法、オールインミックス法、溶かしバター法など公知の方法で得ることが可能である。
このようにして得られた本発明のベーカリー用上掛け生地の油分は、ベーカリー用上掛け生地で使用する穀粉類100質量部に対し、好ましくは5〜50質量部、さらに好ましくは7〜40質量部、最も好ましくは10〜30質量部である。
【0029】
本発明のベーカリー用上掛け生地を用いたベーカリー製品について説明する。
上記ベーカリー製品の製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、本発明のベーカリー用上掛け生地を板状に成形し、成形したパン生地に積置する方法、板状に成形した後いったん冷凍したベーカリー用上掛け生地を、成型したパン生地に積置する方法、手成形又は自動包餡機により、ベーカリー用上掛け生地でパン生地を包餡する方法により得られたベーカリー生地を、ホイロをとり、焼成することにより製造することができる。
【0030】
上記パン生地としては、一般にメロンパンに使用されるパン生地であれば問題なく使用することができ、例えば、食パン生地、菓子パン生地、バラエティブレッド生地、デニッシュ生地、ドーナツ生地などを使用することができる。中でも、ソフト性が良好である点において、菓子パン生地やデニッシュ生地などを使用することが好ましい。
なお、上記パン生地は、パン生地で使用する穀粉類100質量部に対し、油分が好ましくは1〜50質量部、さらに好ましくは5〜20質量部である生地とすることが望ましい。パン生地で使用する穀粉類100質量部に対し油分が1質量部未満であると、経日的にぱさついた食感となってしまう。一方、パン生地で使用する穀粉類100質量部に対し油分が50質量部を超えると、油性感の強く油っぽい食感となることに加え、焼成後のベーカリー用上掛け生地が保存中に剥れやすくなってしまうおそれもある。
なお上記パン生地の製造方法はとくに限定されず、公知の方法によって得ることができる。
また、本発明のベーカリー用上掛け生地と、パン生地の配合割合は、パン生地100質量部に対して、ベーカリー用上掛け生地を好ましくは25〜140質量部、さらに好ましくは50〜100質量部とする。ベーカリー用上掛け生地の配合割合が、25質量部未満であったり、140質量部を超えてしまうと、焼成後のベーカリー用上掛け生地において歯切れの良い食感を付与することができにくい。
【実施例】
【0031】
以下、実施例、比較例をもって本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例などによって何ら制限を受けるものではない。
【0032】
<水中油型乳化組成物の調製>
〔製造例1〕
大豆サラダ油43質量%に、HLB4のグリセリンモノステアレート4質量%と、バターフレーバー1質量%を添加し、油相を用意した。水48質量%にHLB13のデカグリセリンモノステアレート4質量%を添加し、水相を用意した。そして油相と水相を水中油型に乳化し、冷却、固化し、可塑性を有する水中油型乳化組成物1を製造した。
【0033】
〔製造例2〕
大豆サラダ油24質量%とパーム油19質量%の混合油に、HLB4のグリセリンモノステアレート4質量%と、バターフレーバー1質量%を添加し、油相を用意した。水48質量%にHLB13のデカグリセリンモノステアレート4質量%を添加し、水相を用意した。そして油相と水相を水中油型に乳化し、冷却、固化し、可塑性を有する水中油型乳化組成物2を製造した。
【0034】
〔実施例1〕
上記〔製造例1〕の水中油型乳化組成物1を30質量部と上白糖50質量部をミキサーボウルに投入し、タテ型ミキサーにセットし、ビーターを使用して、低速30秒、ついで中速3分クリーミングした。ついで、全卵(正味)30質量部を数回に分けて添加混合し、あらかじめ混合してあった薄力粉100質量部とベーキングパウダー1質量部の混合物を添加し、低速1分混合し、実施例1のベーカリー用上掛け生地を得た。
【0035】
〔実施例2〕
実施例1において水中油型乳化組成物1に代えて上記〔製造例2〕の水中油型乳化組成物2を使用した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、実施例2のベーカリー用上掛け生地を得た。
【0036】
〔実施例3〕
上記〔製造例1〕の水中油型乳化組成物1を30質量部と上白糖50質量部、全卵(正味)30質量部、薄力粉100質量部とベーキングパウダー1質量部の混合物をミキサーボウルに投入し、タテ型ミキサーにセットし、ビーターを使用して、低速3分混合し、実施例3のベーカリー用上掛け生地を得た。
【0037】
〔比較例1〕
実施例1において水中油型乳化組成物1に代えて油分80質量%の油中水型乳化物であるバターを使用した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、ベーカリー用上掛け生地を得た。
【0038】
〔比較例2〕
実施例1において水中油型乳化組成物1に代えて油分100質量%のショートニング(融点34℃)を使用した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、ベーカリー用上掛け生地を得た。
【0039】
〔比較例3〕
実施例1において水中油型乳化組成物1を用いず、油分80%の油中水型乳化のマーガリン(融点34℃)16.1質量部を使用した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、ベーカリー用上掛け生地を得た。
【0040】
〔比較例4〕
実施例3において水中油型乳化組成物1に代えて油分80%の油中水型乳化物であるバターを使用した以外は、実施例3の配合・製法と同様にして、ベーカリー用上掛け生地を得た。
【0041】
<メロンパンの製造>
強力粉70質量部、イースト3質量部、イーストフード0.1質量部、上白糖3質量部および水40質量部をミキサーボウルに投入して縦型ミキサーにセットし、フックを使用して低速で3分、中速で2分ミキシングして中種生地を得た。この中種生地を醗酵室で28℃にて2時間中種発酵させた。
次いで、得られた生地に、さらに強力粉30質量部、上白糖20質量部、食塩1.0質量部、水22質量部を添加し、低速で3分、中速で4分ミキシングした。ここで、油分80質量%の練り込み用マーガリン(使用油脂の融点:34℃)10質量部を投入し、低速で3分、中速で5分ミキシングして本捏生地を得た(捏ね上げ温度:28℃)。
上記本捏生地を、フロアタイム30分をとった後に60gに分割し、さらにベンチタイム20分をとり、パン生地を得た。
一方、実施例1〜3と比較例1〜4で得られたベーカリー用上掛け生地を50gに分割し、麺棒を使用して直径100mm、厚さ5mmの円形になるように圧延成形した。
そして手成形にて、上記で得られたパン生地を、成形したベーカリー用上掛け生地で包餡し、温度36℃、相対湿度70%で50分ホイロをとった後、固定窯で190℃にて16分焼成し、メロンパンを得た。
【0042】
<評価>
実施例1〜3と比較例1〜4で得られたベーカリー用上掛け生地の成形時の伸展性と、実施例1〜3と比較例1〜4で得られたベーカリー用上掛け生地を用いたメロンパンにおける、焼成後のベーカリー用上掛け生地の歯切れ、口どけ、外観の評価を表1に、下記の評価基準に従って評価した。
(伸展性)
○:伸展性良好
×:伸展しにくい
(歯切れ)
○:歯切れが良好
×:歯切れが不良
(口溶け)
○:口溶けがよい
△:やや口溶けが悪い
×:口溶けが悪い
(外観)
○:深い割れがみられる
△:浅い割れがみられる
×:割れがみられない
【0043】
【表1】

【0044】
表1の結果より、油分30質量%以上である水中油型乳化組成物を練り込み用油脂として用いた実施例1〜3のベーカリー用上掛け生地は、成形時の伸展性が良好であった。また実施例1〜3のベーカリー用上掛け生地を用いたメロンパンにおける、焼成後のベーカリー用上掛け生地の歯切れは良好で、口溶けがよく、深い割れがみられる外観であった。
【0045】
バターを練り込み用油脂として用いた比較例1のベーカリー用上掛け生地は、成形時の伸展性は良好であったが、比較例1のベーカリー用上掛け生地を用いたメロンパンにおける、焼成後のベーカリー用上掛け生地の歯切れが不良で、口溶けがやや悪く、浅い割れがみられる外観であった。
【0046】
ショートニングを練り込み用油脂として用いた比較例2のベーカリー用上掛け生地は、成形時の伸展性は良好であったが、比較例2のベーカリー用上掛け生地を用いたメロンパンにおける、焼成後のベーカリー用上掛け生地の歯切れが不良で、口溶けがやや悪く、浅い割れがみられる外観であった。
【0047】
油中水型乳化のマーガリンを練り込み用油脂として用い、シュガーバッター法にて製造した比較例3のベーカリー用上掛け生地は、成形時の生地が伸展性しにくく、比較例3のベーカリー用上掛け生地を用いたメロンパンにおける、焼成後のベーカリー用上掛け生地の歯切れが不良で、口溶けがやや悪く、割れがみられない外観であった。
【0048】
油中水型乳化のマーガリンを練り込み用油脂として用い、オールインミックス法にて製造した比較例4のベーカリー用上掛け生地は、成形時の生地が伸展性しにくく、比較例4のベーカリー用上掛け生地を用いたメロンパンにおける、焼成後のベーカリー用上掛け生地の歯切れが不良で、口溶けが悪く、浅い割れがみられる外観であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油分が30質量%以上である水中油型乳化組成物を含有することを特徴とするベーカリー用上掛け生地。
【請求項2】
上記油分が30質量%以上である水中油型乳化組成物のみを油分として含有する請求項1に記載のベーカリー用上掛け生地。
【請求項3】
上記油分が30質量%以上である水中油型乳化組成物が液状油を含有する請求項1または2に記載のベーカリー用上掛け生地。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のベーカリー用上掛け生地を用いたベーカリー製品。