説明

ペプチド及びその用途

【課題】本質的にスギ花粉アレルゲンのT細胞エピトープのみからなるペプチドを提供すること、及び、有効成分として上記ペプチドを含んでなる抗スギ花粉症剤を提供すること。
【解決手段】特定のアミノ酸配列を含むことから成るペプチド等、でありスギ花粉アレルゲンに特異的なイムノグロブリンE抗体に実質的に反応しないで、ヒトを含む哺乳類一般に投与すると、実質的にアナフィラキシーを引起こす事なく、スギ花粉アレルゲンに特異的なT細胞を活性化することができるペプチド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スギ花粉アレルゲンに特異的に反応するT細胞を活性化するペプチド、及び、そのペプチドを有効成分として含んでなる免疫療法剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数十年来、我国においては、春先になるとスギ花粉症による鼻炎や結膜炎を訴える人の数が増加し続けている。スギ花粉症はアルレギー症の一種であり、その主因はスギ花粉中の抗原性物質、すなわち、スギ花粉症アレルゲンであるといわれている。大気中に飛散したスギ花粉がヒトの体内に侵入すると、スギ花粉アレルゲンに対するイムノグロブリンE抗体が産生する。この状態で次にスギ花粉が侵入すると、その花粉中のアレルゲンとこのイムノグロブリンE抗体が免疫反応を起し、アレルギー症状を呈することとなる。
【0003】
スギ花粉中に抗原性の相違する少なくとも二種類のアレルゲンの存在することが現在までに知られている。その一つは、ヤスエダ等が『ジャーナル・オブ・アレルギー・アンド・クリニカル・イムノロジー』、第71巻、第1号、第77〜86頁(1983年)に報告しているアレルゲンであり、今日、これは「Cryj1」と呼称されている(非特許文献1)。なお、Cryj1 はその全長アミノ酸配列が決定され、国際出願されている(特許文献1:WO 93/01213)。
【0004】
もう一つは、タニアイ等『エフ・イー・ビー・エス・レターズ』、第239巻、第2号、第329〜332頁(1988年)やサカグチ等『アレルギー』、第45号、第309〜312頁(1990年)に報告されているアレルゲンであり、今日、これは「Cry j 2」と呼称されている(非特許文献2及び3)。なお、Cry j 2はその全長アミノ酸配列が決定され、国際出願されている(特許文献2:WO 94/11512)。また、 Komiyama らも別個にCryj2の全長アミノ酸配列を決定しているがBiochem. Biophys. Res, Comm., vol.201, No.2, 1021-1028, (1994)(非特許文献4)、WO 94/11512記載のアミノ酸配列とはアミノ酸残基が4か所異なっている。
【0005】
スギ花粉中には、通常、Cryj1とCryj2が約50:1乃至5:1の割合で存在し、花粉症患者から採取した血清の殆どがCryj1にもCryj2にも反応すると云われている。澤谷らは、『アレルギー』、第42巻、第6号、第738〜747頁(1993年)において、Cryj2は、皮内反応試験やRAST試験において、Cryj1と同程度の抗原性を発揮すると報告している(非特許文献5)。
【0006】
このように、スギ花粉アレルゲンが既に幾つか単離され、その性質、性状もある程度解明されたことから、精製スギ花粉アレルゲンをヒトに投与して減感作することにより、スギ花粉症を治療・予防できる見通しがついてきた。最近ではそのための減感作剤も幾つか考案されており、例えば、特許文献3:特開平1−156926号公報や特許文献4:特開平3−93730号公報には、N末端からのアミノ酸配列がAsp−Asn−Pro−Ile−Asp−Ser又はAla−Ile−Asn−Ile−Phe−Asnで表わされるスギ花粉アレルゲンに糖質を共有結合せしめ、生成した複合体を減感作剤としてヒトに投与する提案が為されている。
【0007】
しかしながら、アレルギー症の診断や減感作療法には、通常、高純度のアレルゲンが大量に必要とされ、スギ花粉中のアレルゲンは僅少であるうえに安定性が低く、スギ花粉症の診断剤や減感作剤をスギ花粉だけで賄おうとすると、多大の困難が伴なう。このようなことから、最近のアレルギー疾患の治療・予防においては、これまでのように、患者にアレルゲン全体を投与するのではなく、アレルゲン中のT細胞が特異的に認識する最小領域、すなわち、本質的にT細胞エピトープのみからなる低分子のペプチドを投与する免疫療法が注目されている。
【0008】
一般に、アレルゲンは、マクロファージなどの抗原提示細胞に取込まれると、そこで消化され、消化断片が免疫提示細胞表層のHLA(Human Leucocyte Antigen )蛋白質に結合し、抗原提示されることとなる。抗原提示される断片は、HLA蛋白質に対する親和性などにより、アレルゲンにおける一部の特定領域に限られ、斯かる領域のうち、T細胞が特異的に認識する領域は、通常、「T細胞エピトープ」と呼称される。実質的にT細胞エプトープのみからなるペプチドを投与する免疫療法には、
(i) ペプチドがB細胞エピトープを欠いている、すなわち、アレルゲンに特異的なイムノグロブリンE抗体が反応しないので、従来の粗製又は精製アレルゲンで頻発していたアナフィラキシーなどの副作用が起こり得ない。
(ii) 少量からスタートし、有効投与量に達するまでの期間が、従来の減感作剤に比較して、大幅に短縮できる。
(iii) 経口免疫寛容を誘導し、アレルゲンに対するアレルギー反応を減弱することができる。などの利点がある。
【0009】
【特許文献1】WO 93/01213
【特許文献2】WO 94/11512
【特許文献3】特開平1−156926号公報
【特許文献4】特開平3−93730号公報
【非特許文献1】ヤスエダ等、『ジャーナル・オブ・アレルギー・アンド・クリニカル・イムノロジー』、第71巻、第1号、第77〜86頁(1983年)
【非特許文献2】タニアイ等、『エフ・イー・ビー・エス・レターズ』、第239巻、第2号、第329〜332頁(1988年)
【非特許文献3】サカグチ等、『アレルギー』、第45号、第309〜312頁(1990年)
【非特許文献4】コミヤマ等、『バイオケミカル・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーション』第201巻、第2号、第1021〜1028頁(1994年)
【非特許文献5】サワタニ等、『アレルギー』、第42巻、第6号、第738〜747頁(1993年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、上記T細胞エピトープを構成する最小単位のアミノ酸配列を見出し、本発明を完成した。この発明の第一の課題は、本質的のスギ花粉アレルゲンのT細胞エピトープのみからなるペプチドを提供することにある。この発明の第二の課題は、有効成分として上記ペプチドを含んでなる抗スギ花粉症剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
(1)配列番号2のアミノ酸配列から成るペプチド。
(2)配列番号3のアミノ酸配列から成るペプチド。
(3)配列番号9のアミノ酸配列から成るペプチド。
(4)配列番号10のアミノ酸配列から成るペプチド。
(5)配列番号17のアミノ酸配列から成るペプチド。
(6)配列番号18のアミノ酸配列から成るペプチド。
(7)配列番号19のアミノ酸配列から成るペプチド。
【0012】
(8)配列番号2のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
(9)配列番号3のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
(10)配列番号4のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
(11)配列番号5のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
(12)配列番号6のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
(13)配列番号9のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
【0013】
(14)配列番号10のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
(15)配列番号11のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
(16)配列番号12のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
(17)配列番号13のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
(18)配列番号14のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
(19)配列番号15のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
(20)配列番号16のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
(21)配列番号17のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
【0014】
(22)配列番号18のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
(23)配列番号19のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
(24)配列番号20のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
(25)配列番号21のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
(26)配列番号22のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
(27)配列番号23のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
(28)配列番号24のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、スギ花粉アレルゲンのT細胞エピトープのみからなるペプチド及びそれらを有効成分として含んでなる抗スギ花粉症剤を提供することができた。そして、本発明のペプチドは、スギ花粉アレルゲンに特異的なイムノグロブリンE抗体に実質的に反応しないので、ヒトを含む哺乳類一般に投与すると、実質的にアナフィラキシーを引起こすことなく、スギ花粉アレルゲンに特異的なT細胞を活性化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳しく説明する。本発明における好ましいペプチドの例は表1の通りである。
【0017】
【表1】

【0018】
なお、上記のペプチド1は、配列表の配列番号1のアミノ酸配列で示されるペプチド、
上記のペプチド2は、配列表の配列番号2のアミノ酸配列で示されるペプチド、
上記のペプチド3は、配列表の配列番号3のアミノ酸配列で示されるペプチド、
上記のペプチド4は、配列表の配列番号4のアミノ酸配列で示されるペプチド、
上記のペプチド5は、配列表の配列番号5のアミノ酸配列で示されるペプチド、
上記のペプチド6は、配列表の配列番号6のアミノ酸配列で示されるペプチド、
上記のペプチド7は、配列表の配列番号7のアミノ酸配列で示されるペプチド、
上記のペプチド8は、配列表の配列番号8のアミノ酸配列で示されるペプチド、
上記のペプチド9は、配列表の配列番号9のアミノ酸配列で示されるペプチド、
上記のペプチド10は、配列表の配列番号10のアミノ酸配列で示されるペプチド、
上記のペプチド11は、配列表の配列番号11のアミノ酸配列で示されるペプチド、
上記のペプチド12は、配列表の配列番号12のアミノ酸配列で示されるペプチド、
上記のペプチド13は、配列表の配列番号13のアミノ酸配列で示されるペプチド、
上記のペプチド14は、配列表の配列番号14のアミノ酸配列で示されるペプチド、
上記のペプチド15は、配列表の配列番号15のアミノ酸配列で示されるペプチド、
上記のペプチド16は、配列表の配列番号16のアミノ酸配列で示されるペプチド、
上記のペプチド17は、配列表の配列番号17のアミノ酸配列で示されるペプチド、
上記のペプチド18は、配列表の配列番号18のアミノ酸配列で示されるペプチド、
上記のペプチド19は、配列表の配列番号19のアミノ酸配列で示されるペプチド、
上記のペプチド20は、配列表の配列番号20のアミノ酸配列で示されるペプチド、
上記のペプチド21は、配列表の配列番号21のアミノ酸配列で示されるペプチド、
上記のペプチド22は、配列表の配列番号22のアミノ酸配列で示されるペプチド、
上記のペプチド23は、配列表の配列番号23のアミノ酸配列で示されるペプチド、
上記のペプチド24は、配列表の配列番号24のアミノ酸配列で示されるペプチド、をそれぞれ表す。
【0019】
上記(1)乃至(7)に記載のペプチドは、「固相法」又は「液相法」として知られる斯界において慣用のペプチド合成法により、容易に調製することができる。例えば、社団法人日本生化学会編『新生化学実験講座』、第1巻、「タンパク質VI」、第3〜44頁、1992年、東京化学同人発行などにはペプチド合成の詳細が記載されている。また、該ペプチドは、マルチペプチドシンセサイザー SYMPHONY (プロティンテクノロジー社製)を用い、Fmoc (9-fluorenyl methyloxycarbonyl) 固相合成法にて同装置のプロトコールに従って合成することができる。すなわち、合成する各ペプチドのC末端に相当するアミノ酸が導入されている Fmoc-L-アミノ酸 Wang 樹脂を上記ペプチド合成装置の反応容器にセットし、デプロテクション溶液を用いて Fmoc を除く。さらにC末端から2番目のアミノ酸に相当するアミノ酸溶液とアクチベーター溶液を反応せしめ、反応後再び Fmoc 基のデプロテクションを行い、同様の操作を繰り返すことにより、目的とするペプチドを合成することができる。
【0020】
本発明のペプチドは化学合成により調製されたものに限定されず、例えば、スギの花粉又は雄花から採取するか、組換えDNA技術により調製したスギ花粉アレルゲンを適宜分解し、分解物から採取したものであってもよく、例えば、上記(1)乃至(7)に記載されたペプチドをコードするDNAを調製し、これを自律複製可能なベクターに挿入して組換えDNAとし、これを大腸菌、枯草菌、放線菌、酵母などの適宜宿主に導入して形質転換体とし、その培養物からこの発明のペプチドを採取してもよい。
【0021】
さらに、この発明のペプチドは、斯くして得られるペプチドに糖質やポリエチレングリコールを付加して得られる複合体としての形態、さらには、ペプチドをアセチル化、アミド化及び/又は多官能試験により架橋重合させて得られる誘導体又は重合体としての形態であってもよい。
【0022】
この発明のペプチドは、比較的粗な形態で投与しても所期の治療・予防効果を発揮するが、通常は使用に先立って精製される。精製には、例えば、濾過、濃縮、遠心分離、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル電気泳動、等電点電気泳動などのペプチド乃至蛋白質を精製するための斯界における慣用の方法が用いられ、必要に応じて、これら方法を適宜組合せればよい。そして、最終使用形態に応じて、精製したペプチドを濃縮、凍結乾燥して液状又は固状にすればよい。
【0023】
本発明のペプチドがT細胞エピトープとしての活性を有することは、スギ花粉アレルゲンに特異的なT細胞の 3H−チミジンの取込みを計測することにより確認することができる。この計測には、例えば以下の方法を用いることができる。すなわち、フィコール・ハイパック比重遠心法等により花粉症患者の末梢血またはCryj2で免疫したマウス等の実験動物からCryj2に特異的なT細胞を含む単核細胞群を分離し、この細胞群をRPMI 1640 等の培地に浮遊させ、96ウェルマイクロプレート上に分注する。次に被検物質であるペプチドを加えインキュベートする。このインキュベートの温度・時間は各実験毎に適宜調整することができるが、37℃、2日間が好適である。その後 3H−チミジンを培地に加え、さらに一定時間インキュベーションを続け、単核細胞群における 3H−チミジンの取り込み量を測定することにより、本発明のペプチドのT細胞エピトープとしての活性を算定することができる。なお、本発明では、同時にペプチドを含まない系を設けてこれを陰性対照とし、 3H−チミジンの取り込み量が陰性対照の2倍以上に達した系を「陽性」、達しなかった系を「陰性」とした。
【0024】
スギ花粉アレルゲンに特異的なT細胞の 3H−チミジンの取込みの計測は、以下の方法によっても行うことができる。予めマウス等の実験動物をCryj2で免疫し、その後顎下リンパ節等よりリンパ球を採取する。その後、上記と同様の方法により被検体であるペプチドで刺激し、 3H−チミジンの取り込み量を測定することにより、本発明のペプチドのT細胞エピトープとしての活性を算定することができる。ペプチドの「陽性」及び「陰性」の判定は、上記と同様の基準で行った。
【0025】
本発明のペプチドが花粉症患者に予防効果を有することは、例えば以下の実験により確認することができる。予めマウス等の実験動物に対し本発明のペプチドを投与し、該ペプチドに対する免疫寛容を誘導しておく。一定期間経過後に当該実験動物にCryj2をコレラ毒素等のアジュバントとともに投与し免疫する。さらに、一定期間経過後に当該実験動物より顎下リンパ節細胞を摘出し細胞懸濁液を調製する。
【0026】
また、これとは別の無処理の実験動物より脾臓を抽出し脾臓細胞懸濁液を調製して、これにX線を照射し細胞増殖活性を消失させこれを抗原提示細胞含有懸濁液とする。このものを先の顎下リンパ節細胞懸濁液と混合し、これにCryj2を添加して培養を継続し、さらに 3H−チミジンを添加して、このものの取り込みを測定し、T細胞の増殖を測定することができる。
【0027】
予め本発明のペプチドで免疫寛容を誘導していない動物では、Cryj2による免疫化によりそのT細胞が抗原提示細胞に結合したCryj2に反応し増殖する。一方、予め本発明のペプチドで免疫寛容を誘導した動物では、その後Cryj2による免疫を行ってもT細胞が抗原提示細胞に結合したCryj2に反応せず増殖しない。その差を測定することにより、本発明のペプチドの花粉症に対する予防効果を確認することができる。
【0028】
さらに、上述の免疫動物の顎下リンパ節細胞懸濁液と抗原提示細胞含有懸濁液の混合液にCryj2を添加して培養を継続した場合に培養液中にインターロイキン4等のサイトカインが分泌されるが、本発明のペプチドを前投与し免疫寛容誘導を行った実験動物と前投与しなかった実験動物とで、このサイトカインの分泌量を比較することによっても、本発明のペプチドの花粉症に対する予防効果を確認することができる。
【0029】
本発明のペプチドが花粉症患者に治療効果を有することは、例えば以下の実験により確認することができる。予めマウス等の実験動物に対し、Cryj2をコレラ毒素のアジュバンドとともに投与し免疫する。一定期間経過後に当該実験動物にCryj2をコレラ毒素のアジュバンドとともに投与し追加免疫する。さらに、一定期間経過後に当該実験動物より顎下リンパ節細胞を摘出し細胞懸濁液を調製した後、上記と同様の方法によりT細胞の増殖を測定する。
【0030】
本発明のペプチドで治療を施していない動物では、Cryj2による免疫によりそのT細胞が抗原提示細胞に結合したCryj2に反応し増殖する。一方、本発明のペプチドで治療した動物では、その後Cryj2による免疫を行ってもT細胞が抗原提示細胞に結合したCryj2に反応せず増殖しない。その差を測定することにより、本発明のペプチドの花粉症に対する治療効果を確認することができる。
【0031】
[作 用]
本発明のペプチドは、スギ花粉アレルゲンに特異的なイムノグロブリンE抗体に実質的に反応しないので、ヒトを含む哺乳類一般に投与すると、実質的にアナフィラキシーを引起こすことなく、スギ花粉アレルゲンに特異的なT細胞を活性化することができる。有効成分としてかかるペプチドを含んでなる本発明の抗スギ花粉症剤は、ヒトを含む哺乳類一般に投与すると、実質的にアナフィラキシーを引起こすことなくスギ花粉症に対して顕著な治療・予防効果を発揮する。
【0032】
有効成分としてこの発明のペプチドを含んでなる抗スギ花粉症剤は、スギ花粉症に罹患してヒトを含む哺乳類一般に投与すると、アナフィラキシーなどの副作用を実質的に引起こすことなく、スギ花粉症を治療することができる。一方、この発明の抗スギ花粉症例を、スギ花粉が飛散し始める前に健常な個体や潜在的なスギ花粉症の個体に投与するときには、スギ花粉症に対して顕著な予防効果を発揮するとともに、発症時のアレルギー症状の緩解に著効を発揮する。
【0033】
この発明の抗スギ花粉症剤につきさらに詳しく説明すると、この発明の抗スギ花粉症剤は、通常、この発明によるペプチドの1種又は2種以上を0.01乃至100%(w/w) 、望ましくは、0.05乃至50%(w/v) 、さらに望ましくは、0.5乃至5.0%(w/w) 含んでなる。この発明の抗スギ花粉症剤は、当該ペプチド単独の形態はもとより、その以外の生理的に許容される、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、マンニトールなどの担体、賦形剤、免疫助成剤、安定剤、さらには、必要に応じて、ステロイドホルモンやクリモグリク酸ナトリウムなどの抗炎症剤や抗ヒスタミン剤を含む1種又は2種以上の他の薬剤との組成物としての形態を包含する。さらに、この発明の抗スギ花粉症剤は、投薬単位形態の薬剤をも包含し、その投薬単位形態の薬剤とは、この発明のポリペプチドを、例えば、1日当たりの用量又はその整数倍(4倍まで)又はその約数(1/40まで)に相当する量を含有し、投与に適する物理的に分離した一体の剤形にある薬剤を意味する。このような投薬単位形態の薬剤としては、散剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、シロップ剤、乳剤、軟鋼剤、硬膏剤、パップ剤、坐剤、点眼剤、点鼻剤、噴霧剤、注射剤などが挙げられる。
【0034】
この発明の抗スギ花粉症剤の使用方法について説明すると、この発明の抗スギ花粉症剤は、スギ花粉症の治療・予防を目的に、ヒトを含む哺乳類一般に経皮、経口、点鼻、点眼又は注射投与される。ヒトにおける投与量は、投与の目的や症状に依っても変わるが、通常、対象者の症状や投与後の経過を観察しながら、成人1日当たり0.01乃至1.0g 、望ましくは、0.01乃至0.1g を目安に、毎週1回乃至毎月1回の頻度で、約1乃至6カ月間、通常、用量を増やしながら反復投与される。
【0035】
本発明のポリペプチドの急性毒性
常法により、生後20日のマウスに後述の製剤例1乃至4の方法により得た免疫治療剤を経口又は腹腔内投与した。その結果、これら免疫療法剤は、いずれの投与経路によって200mg/kg 以上のLD50であることが判明した。このことは、この発明のペプチドが、ヒトを含むほ乳類に対する免疫療法剤に安全に配合使用し得ることを示している。
【0036】
試験例1.
スギ花粉症患者より単離したT細胞を用い、本発明のペプチド1乃至ペプチド6、及びペプチド9乃至ペプチド24がスギ花粉抗原T細胞エピトープ活性を有することを確認した。皮膚テストにおいて、スギ花粉アレルゲンに対し陽性を示し、かつ、抗スギ花粉アレルゲン IgE 反応に陽性を示す患者から20mlの末梢血を採取した。遠心分離後、バフィーコートを得て、更にフィコール・パック比重遠心法により、末梢血単核球(Peripheral Blood Mononuelear Cells:PBMC)を採取した。このPBMCを培地(RPMI-1640 、5%の熱不活性化ヒトAB型血清を含む。)に、7.5×105細胞/mlになるように懸濁した。
【0037】
96ウェルの丸底プレートにおいて、1.5×105 の細胞を、各ウェル200μl の培地中で20ngのペプチドと37℃5%CO2存在下で48時間培養した。その後、1μCiのトリチウム化チミジンを加え、さらに16時間培養した。細胞に取り込まれたカウントを測定するため、セルハーベスターを用いて細胞をガラス繊維フィルター上に集め、液体シンチレーションカウンターで測定した。この結果を以下の表2に示す。
【0038】
【表2】

【0039】
以上の結果より、これらのペプチドは、Cryj2アレルゲンのT細胞エピトープを含有していることが示された。
【0040】
試験例2.
Cryj2を文献記載の方法(Allergy, 1990, 45, 309-312) で精製した。精製したCryj2 1μg とコレラ毒素Bサブユニット1μg (コレラ毒素0.5%含有)を0.01M リン酸緩衝液(pH 7.4) に溶解させた抗原溶液を、アバチン麻酔下の Balb/c マウス(5〜6週齢:チャールズリバージャパン社)に点鼻投与し免疫した。その2週間後、再び同様の方法により同マウスを追加免疫した。その1週間後、マウスの顎下リンパ節細胞を摘出した。これをナイロンメッシュに通し、さらに培地(RPMI 1640 10%子牛胎児血清含有)に懸濁して懸濁液を調製した。
【0041】
また、Cryj2で免疫化していないマウスより脾臓細胞を摘出し、上記と同様の方法でリンパ節細胞懸濁液を調製した。この懸濁液に3000 RadのX線を照射して細胞の増殖活性を消失させ、抗原提示細胞懸濁液として用いた。平底96ウェルプレート(コーニング社)に、1ウェル当たりリンパ節細胞3×106、抗原提示細胞6×105 となるように分注し、ペプチド7又はペプチド8の存在下(0.5μg/ml)、あるいはこれらペプチドの非存在下で、37℃、5%CO2の条件下3日間培養した。
【0042】
最後の16時間は、 3H-Thymidine 存在下で培養し、この間に細胞核内DNAに取り込まれた 3H-Thymidine 量を、ガラスフィルターに吸着したDNAの放射線量を液体シンチレーション法により測定することにより算定した。ペプチド存在下での 3H-Thymidine 取り込み量を、ペプチド非存在下での取り込み量で割った値を反応倍率として、これを細胞増殖活性の指標とした。
【0043】
リンパ節細胞は、ペプチド7に対しては3倍程度、ペプチド8に対しては5倍程度増殖率が増大した。従って、これらのペプチドは、Cryj2アレルゲンのT細胞エピトープを含有していることが示された。
【0044】
試験例3.
ペプチド7又は8について、 Balb/c マウスに対して免疫寛容を誘導した。すなわち、リン酸緩衝液(0.01M (pH 7.4)) に溶解させた各ペプチド溶液について、マウス尾静脈に一匹当たり20μg のペプチド量となるように静脈投与を行った。または、同ペプチド溶液を、1匹1回当たり1mgのペプチド量となるように経口投与を行い、この経口投与を2週間に4回繰り返した。その後、当該マウスについて、試験例2と同様の方法で、Cryj2による免疫を行った。
【0045】
試験例2と同様の方法で該マウスより顎下リンパ節細胞を摘出して顎下リンパ節細胞懸濁液とし、また、ペプチドによる寛容化とCryj2による免疫誘導を行っていない別個のマウスより脾臓を摘出してX線により増殖活性を消失させ抗原提示細胞懸濁液として、これらをCryj2の存在(1μg/ml)下で共培養して、試験例2と同様の方法で 3H-Thymidine 取り込み量を測定し細胞増殖活性を算定した。
【0046】
また、リンパ節細胞及び抗原提示細胞の懸濁液を調製培地により調製した。1ウェル当たりリンパ節細胞1.5×106、抗原提示細胞3×106 となるように、24ウェルプレート(コーニング)に分注し、これらの細胞をCryj2(1μg/ml)と共に37℃、5%CO2の条件下で3日間培養した。培養終了後、培養上清液を採取し、測定に用いるまで20℃で凍結保存した。培養液中に含まれるインターロイキン4の量を市販の測定キット(Endogen 社)にて測定した。
【0047】
(1)ペプチド7の静脈投与による免疫寛容の誘導
マウス尾静脈にペプチド7の溶液を投与した。対照群のマウスには、リン酸緩衝液(0.01M (pH 7.4)) のみを静脈投与した。その後、上記の方法に従って、両群のマウスをCryj2で経鼻的に免疫した。その後、当該マウスより摘出した顎下リンパ節細胞及び他のマウスより摘出した抗原提示細胞をCryj2と共に培養すると、あらかじめペプチド7を投与したマウスからのリンパ節細胞の増殖活性は、対照群に比較して29.5%低下していた。これによりペプチド7には、スギアレルゲンに対する免疫応答を抑制する活性があることが明らかとなった。
【0048】
(2)ペプチド7の経口投与による免疫寛容の誘導
マウスにT細胞ペプチド7の溶液を2週間の間に4回、上記の方法に従い経口投与した。対照群のマウスには、リン酸緩衝液(0.01M (pH 7.4)) のみを経口投与した。その後、両群のマウスをCryj2で経鼻的に免疫した。その後、当該マウスより摘出した顎下リンパ節細胞及び他のマウスより摘出した抗原提示細胞をCryj2と共に3日間培養し、その培養上清中のサイトカイン量を測定した。その結果、あらかじめペプチド7を投与したマウスからのリンパ節細胞から産生されるインターロイキン4の量は、対照群に比較して49.8%低下していた。これによりペプチド7を経口的に投与することにより、スギアレルゲンに対する免疫応答を抑制することが示された。
【0049】
(3)ペプチド8の静脈投与による免疫寛容の誘導
マウス尾静脈にペプチド8の溶液を投与した。対照群のマウスには、リン酸緩衝液(0.01M (pH 7.4)) のみを静脈投与した。その後、上記の方法に従って、両群のマウスをCryj2で経鼻的に免疫した。その後、当該マウスより摘出した顎下リンパ節細胞及び他のマウスより摘出した抗原提示細胞をCryj2と共に培養すると、あらかじめペプチド8を投与したマウスからのリンパ節細胞の増殖活性は、対照群に比較して30.9%低下していた。これによりペプチド8には、スギアレルゲンに対する免疫応答を抑制する活性があることが明らかとなった。
【0050】
(4)ペプチド8の経口投与による免疫寛容の誘導
マウスにT細胞ペプチド8の溶液を2週間の間に4回、上記の方法に従い経口投与した。対照群のマウスには、リン酸緩衝液(0.01M (pH 7.4)) のみを経口投与した。その後、両群のマウスをCryj2で経鼻的に免疫した。その後、当該マウスより摘出した顎下リンパ節細胞及び他のマウスより摘出した抗原提示細胞をCryj2と共に培養すると、あらかじめペプチド8を投与したマウスからのリンパ節細胞の増殖活性は、対照群に比較して73.1%低下していた。これによりペプチド8には、スギアレルゲンに対する免疫応答を抑制する活性があることが明らかとなった。
【0051】
試験例4
ペプチド8について、Balb/cマウスに対して、治療を施した。すなわち、精製したCryj2 1μgとコレラ毒素Bサブユニット1μg(コレラ毒素0.5%含有)を0.01Mリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解させた抗原溶液を、アバチン麻酔下の2群のBalb/cマウス(5〜6週齢:チャールズリバージャパン社)に点鼻投与し免疫した。一週間後より、実験群のマウスに対して、0.01Mリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解させたペプチド8の溶液を、一匹について一回あたり200 μgのペプチド量となるように経口投与し、この経口投与を2週間の間に4回繰り返した。対照群のマウスには、0.01Mリン酸緩衝液(pH7.4)のみを同様に投与した。4回目の経口投与から4日後に、両群のマウスに再度Cryj2で経鼻的に免疫した。一週間後、試験例3と同様の方法により当該マウスより摘出した顎下リンパ節細胞と他のマウスより摘出した抗原提示細胞とをCryj2と共に培養すると、実験群マウス由来のリンパ節細胞の増殖は、対照群に比較して46.0%低下していた。この結果より、ペプチド8は、スキアレルゲンで免疫された後のマウスに投与した場合にも、スキアレルゲンに対する免疫応答を抑制する活性を有することが明らかとなった。
【0052】
以上のように、本発明のペプチドは、ヒトを含む哺乳類一般に投与すると、実質的にアナフィラキシーを引起こすことなく、スギ花粉アレルゲンに特異的なT細胞を活性化することができる。有効成分として斯かるペプチドを含んでなる本発明の抗スギ花粉症剤は、ヒトを含む哺乳類一般に投与すると、実質的にアナフィラキシーを引起こすことなくスギ花粉症に対して顕著な治療・予防効果を発揮する。
【0053】
有効成分としてこの発明のペプチドを含んでなる抗スギ花粉症剤は、スギ花粉症に罹患してヒトを含む哺乳類一般に投与すると、アナフィラキシーなどの副作用を実質的に引起こすことなく、スギ花粉症を治療することができる。一方、この発明の抗スギ花粉症剤を、スギ花粉が飛散し始める前に健常な個体や潜在的なスギ花粉症の個体に投与するときには、スギ花粉症に対して顕著な予防効果を発揮するとともに、発症時のアレルギー症状の緩解に著効を発揮する。
【実施例】
【0054】
以下、実施例、製剤例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによりその技術的範囲が限定されるものではない。
【0055】
実施例1
ペプチド1:
Lys-Val-Asp-Gly-Ile-Ile-Ala-Ala-Tyr-Gln-Asn-Pro-Ala-Ser
樹脂に固定したアミノ酸誘導体に1個ずつアミノ酸をカルボキシル末端側から結合させていく方法(固相合成法)でペプチドを化学合成した。各サイクルで使用するアミノ酸はαアミノ基及び残基部分の反応基が保護基でブロックされた特殊なアミノ酸誘導体を用いた。ここで、それぞれのαアミノ基が Fmoc (9-fluorenyl methyloxycarbonyl) によりブロックされているアミノ酸を用いた(Fmoc法)。また、ペプチド合成は樹脂に結合したアミノ酸のαアミノ基の Fmoc を脱保護し、次にカルボキシル基が活性化したアミノ酸誘導体を結合させるという反応を順次繰り返して行った。
【0056】
実験に用いる各ペプチドは、マルチペプチドシンセサイザー SYMPHONY (Protein Technologies, Inc.)を用い上記の Fmoc 固相合成法にて同装置のプロトコールに従って合成した。すなわち、合成するペプチドのC末端残基に相当するアミノ酸(Ser)が導入されている Fmoc-Ser(tBu)-Wang-樹脂(0.52mmol/g) の25μmol 相当を上記ペプチド合成装置の反応容器にセットし、デプロテクション溶液(20% piperidine / Dimethyl formamide (DMF)) 1.25mlを5分間2回反応させ、樹脂に結合しているアミノ酸の Fmoc 基を除いた。DMF 液1.25mlで30秒間6回洗浄後、C末側から2番目のアミノ酸に相当する200mMの Fmoc-Ala/DMF 溶液1.25mlと200mMのアクチベータ溶液(200mM O-Benzotriazole-N,N,',N',-Tetramethyl-Uronium-Hexafluoro phosphate /400mM N-methylmorpholine/DMF )1.25mlを加え(それぞれ理論等量の10倍:250μmol 相当)、20分間室温で反応させた。ここで生成した Fmoc-Ala-Ser(tBu)-Wang-樹脂をDMF 1.25mlにて30秒間6回洗浄後、再び Fmoc 基のデプロテクションを用い、DMF 1.25mlにて30秒間6回洗浄後、Fmoc-Pro 溶液とアクチベーター溶液を加え反応させた。同様の操作を繰り返すことにより、目的とするペプチド (Fmoc-Lys(Boc)-Val-Asp(OtBu)-Gly-Ile-Ile-Ala-Ala-Tyr(tBu)-Gln(Trt)-Asn(Trt)-Pro-Ala-Ser(tBu)-Wang- 樹脂) を合成した。
【0057】
ここで合成に使用したアミノ酸は以下のとおりである(日清紡(株)製)。( ) 内は残基部分の反応基を保護する保護基を表す。
Fmoc-Ala, Fmoc-Pro,
Fmoc-Asn(Trt), Fmoc-Gln(Trt), Fmoc-Tyr(tBu),
Fmoc-Ile, Fmoc-Gly, Fmoc-Asp(OtBu),
Fmoc-Val, Fmoc-Lys(Boc),
ペプチド合成装置 SYMPHONY を用い、装置内でクリべージ反応を行った。
【0058】
まず、上記ように合成し得られた保護ペプチド樹脂(Fmoc-Lys(Boc)-Val-Asp(OtBu)-Gly-Ile-Ile-Ala-Ala-Tyr(tBu)-Gln(Trt)-Asn(Trt)-Pro-Ala-Ser(tBu)-Wang- 樹脂)に、デプロテクション液1.25mlを5分間2回反応させてN末端Fmoc基を脱保護した。次に1.25mlのDMF にて30秒間6回洗浄後、CH2Cl2にて同様に洗浄し、 N2を吹き付け10分間乾燥後、クリべージ溶液(Trifluoroacetic acid:Phenol:水:Tioanisole:Ethanedithiol =82.5:5:5:5:2.5) を2.5ml加え室温で2時間反応させ(D.S.King, Int.J.Peptide Protein Reg., 36, 255(1990))、樹脂からのペプチドの切断およびアミノ酸側鎖保護基の除去を行い、ペプチド(Lys-Val-Asp-Gly-Ile-Ile-Ala-Ala-Tyr-Gln-Asn-Pro-Ala-Ser)を得た。
【0059】
反応終了後、このペプチド溶液をフィルターを用いて濾過し、樹脂と濾液に分けた。さらに樹脂を洗浄した液2.5mlと合わせ遠心管に回収した。回収したペプチド溶液を装置から取り出し、5mlの冷エーテルを加え、ペプチドを沈澱させた。しばらく冷却後これを遠心して(3000rpm 10分間)沈澱物を集め、再び冷エーテルを加えて分散させては回収することを5〜6回繰り返してペプチドを洗浄した。
【0060】
得られたペプチドを乾燥させ、粗ペプチドを得た(50.5mg)。粗ペプチドは0.1% TFAを含む10%アセトニトリル水溶液に溶解後、ODS カラム(TSKgel ODS-12OT, 21.5mm×30cm:東ソー(株)製)に供与し、0.1% TFAを含む21%アセトニトリルにて展開し(流速9ml/分、検出波長 220nm) 、31〜35分に溶出された画分を分取し、濃縮後、凍結乾燥を行い目的とするペプチドを得た(15.9mg)。この合成したペプチド 50 pmolについて、アミノ酸配列分析装置 PPSQ-10型(島津製作所(株) 製) を用いてアミノ酸配列分析を行ったところ、上記に示されるアミノ酸配列が確認された。
【0061】
実施例2
ペプチド2:
Val-Asp-Gly-Ile-Ile-Ala-Ala-Tyr-Gln-Asn-Pro-Ala-Ser
実施例1と同様の操作でペプチド(Fmoc-Val-Asp(OtBu)-Gly-Ile-Ile-Ala-Ala-Tyr(tBu)-Gln(Trt)-Asn(Trt)-Pro-Ala-Ser(tBu)-Wang-樹脂)を合成し、クリべージ反応を行いペプチド(Val-Asp-Gly-Ile-Ile-Ala-Ala-Tyr-Gln-Asn-Pro-Ala-Ser)を得、このペプチド溶液を遠心管に回収した。その後、ペプチドを沈澱させ、粗ペプチドを得た(55.5mg)。
【0062】
粗ペプチドは0.1% TFAを含む10%アセトニトリル水溶液に溶解後、ODS カラム(TSKgel ODS-120T, 21.5mm×30cm:東ソー(株)製)に供与し、0.1% TFAを含む22%アセトニトリルにて展開し(流速9ml/分、検出波長 220nm) 、26〜29分に溶出された画分を分取し、濃縮後、凍結乾燥を行い目的とするペプチドを得た(7.1mg)。この合成したペプチド 50 pmolについて、アミノ酸配列分析装置 PPSQ-10型(島津製作所(株) 製) を用いてアミノ酸配列分析を行ったところ、上記に示されるアミノ酸配列が確認された。
【0063】
実施例3
ペプチド3:
Asp-Gly-Ile-Ile-Ala-Ala-Tyr-Gln-Asn-Pro-Ala-Ser
実施例1と同様の操作でペプチド(Fmoc-Asp(OtBu)-Gly-Ile-Ile-Ala-Ala-Tyr(tBu)-Gln(Trt)-Asn(Trt)-Pro-Ala-Ser(tBu)-Wang-樹脂)を合成し、クリべージ反応を行いペプチド(Asp-Gly-Ile-Ile-Ala-Ala-Tyr-Gln-Asn-Pro-Ala-Ser)を得、このペプチド溶液を遠心管に回収した。その後、ペプチドを沈澱させ、粗ペプチドを得た(47.9mg)。
【0064】
粗ペプチドは0.1% TFAを含む10%アセトニトリル水溶液に溶解後、ODS カラム(TSKgel ODS-120T, 21.5mm×30cm:東ソー(株)製)に供与し、0.1% TFAを含む21%アセトニトリルにて展開し(流速9ml/分、検出波長 220nm) 、25〜28分に溶出された画分を分取し、濃縮後、凍結乾燥を行い目的とするペプチドを得た(13.8mg) 。この合成したペプチド 50 pmolについて、アミノ酸配列分析装置 PPSQ-10型(島津製作所(株) 製) を用いてアミノ酸配列分析を行ったところ、上記に示されるアミノ酸配列が確認された。
【0065】
実施例4
ペプチド4:
Trp-Leu-Gln-Phe-Ala-Lys-Leu-Thr-Gly-Phe-Thr-Leu-Met-Gly
実施例1と同様の操作でペプチド(Fmoc-Trp-Leu-Gln-(Trt)-Phe-Ala-Lys(Boe)-Leu-Thr(tBu)-Gly-Phe-Thr(tBu)-Leu-Met-Gly-Wang- 樹脂)を合成した。ただし、C末端アミノ酸樹脂には Fmoc-Gly-Wang- 樹脂(0.50mol べージ/g)を25μmol 相当用いた。合成に使用したアミノ酸は以下のとおりである。
Fmoc-Met, Fmoc-Leu, Fmoc-Thr(tBu),
Fmoc-Phe, Fmoc-Gly, Fmoc-Lys(Boc),
Fmoc-Ala, Fmoc-Gln(Trt), Fmoc-Trp,
【0066】
実施例1と同様の操作でクリべージ反応を行いペプチド(Trp-Leu-Gln-Phe-Ala-Lys-Leu-Thr-Gly-Phe-Thr-Leu-Met-Gly )を得、このペプチド溶液を遠心管に回収し、その後、ペプチドを沈澱させ、粗ペプチドを得た(63.3mg)。
【0067】
粗ペプチドは0.1% TFAを含む20%アセトニトリル水溶液に溶解後、ODS カラム(TSKgel ODS-120T, 21.5mm×30cm:東ソー(株)製)に供与し、0.1% TFAを含む38%アセトニトリルにて展開し(流速9ml/分、検出波長 220nm) 、25〜31分に溶出された画分を分取し、濃縮後、凍結乾燥を行い目的とするペプチドを得た(2.0mg)。この合成したペプチド 50 pmolについて、アミノ酸配列分析装置 PPSQ-10型(島津製作所(株) 製) を用いてアミノ酸配列分析を行ったところ、上記に示されるアミノ酸配列が確認された。
【0068】
実施例5
ペプチド5:
Trp-Leu-Gln-Phe-Ala-Lys-Leu-Thr-Gly-Phe-Thr-Leu-Met
実施例1と同様の操作でペプチド(Fmoc-Trp-Leu-Gln-(Trt)-Phe-Ala-Lys(Boc)-Leu-Thr(tBu)-Gly-Phe-Thr(tBu)-Leu-Met-Wang- 樹脂)を合成した。ただし、C末端アミノ酸樹脂には Fmoc-Met-Wang- 樹脂(0.75mmol/g)を25μmol 相当用いた。合成に使用したアミノ酸は実施例4と同じである。実施例1と同様の操作でクリべージ反応を行いペプチド(Trp-Leu-Gln-Phe-Ala-Lys-Leu-Thr-Gly-Phe-Thr-Leu-Met- )を得、このペプチド溶液を遠心管に回収し、その後、ペプチドを沈澱させ、粗ペプチドを得た(29mg)。
【0069】
粗ペプチドは0.1% TFAを含む20%アセトニトリル水溶液に溶解後、ODS カラム(TSKgel ODS-120T, 21.5mm×30cm:東ソー(株)製)に供与し、0.1% TFAを含む36%アセトニトリルにて展開し(流速9ml/分、検出波長 220nm) 、32〜34分に溶出された画分を濃縮後、凍結乾燥を行い目的とするペプチドを得た(1.1mg)。この合成したペプチド 50 pmolについて、アミノ酸配列分析装置 PPSQ-10型(島津製作所(株) 製) を用いてアミノ酸配列分析を行ったところ、上記に示されるアミノ酸配列が確認された。
【0070】
実施例6
ペプチド6:
Trp-Leu-Gln-Phe-Ala-Lys-Leu-Thr-Gly-Phe-Thr-Leu
実施例1と同様の操作でペプチド(Fmoc-Trp-Leu-Gln(Trt)-Phe-Ala-Lys(Boc)-Leu-Thr(tBu)-Gly-Phe-Thr(tBu)-Leu-Wang-樹脂)を合成した。ただし、C末端アミノ酸樹脂には Fmoc-Leu-Wang- 樹脂(0.69mmol/g)を25μmol 相当用いた。合成に使用したアミノ酸は実施例4と同じである。
【0071】
実施例1と同様の操作でクリべージ反応を行いペプチド(Trp-Leu-Gln-Phe-Ala-Lys-Leu-Thr-Gly-Phe-Thr-Leu )を得、このペプチド溶液を遠心管に回収し、その後、ペプチドを沈澱させ、粗ペプチドを得た(35.6mg)。粗ペプチドは0.1% TFAを含む20%アセトニトリル水溶液に溶解後、ODS カラム(TSKgel ODS-120T, 21.5mm×30cm:東ソー(株)製)に供与し、0.1% TFAを含む38%アセトニトリルにて展開し、26〜30分に溶出された画分を濃縮後、凍結乾燥を行い目的とするペプチドを得た(6.3mg)。この合成したペプチド 50 pmolについて、アミノ酸配列分析装置 PPSQ-10型(島津製作所(株) 製) を用いてアミノ酸配列分析を行ったところ、上記に示されるアミノ酸配列が確認された。
【0072】
実施例7
ペプチド7:
His-Phe-Thr-Phe-Lys-Val-Asp-Gly-Ile-Ile-Ala-Ala-Tyr-Gln
実施例1記載の Fmoc 法により、Milligen / Biosearch社製 9050 ペプチド合成機を用い、粗ペプチド400mgを得た。粗ペプチドは0.1% TFA水溶液に溶解後、μBONDASPHERE 5μ C18C120 Aカラム(19×150mm)に供与し、0.1% TFAを含む90%アセトニトリル溶液にて展開し(流速5ml/分、検出波長214nm)、28〜29分に溶出された画分をエバポレート後、凍結乾燥を行い目的とするペプチドを得た(36mg)。この合成したペプチド 50 pmolについて、アミノ酸配列分析装置 PPSQ-10型(島津製作所(株) 製) を用いてアミノ酸配列分析を行ったところ、上記に示されるアミノ酸配列が確認された。
【0073】
実施例8
ペプチド8:
Arg-Ala-Glu-Val-Ser-Tyr-Val-His-Val-Asn-Gly-Ala-Lys-Phe
実施例1記載の Fmoc 法により、Milligen / Biosearch社製 9050 ペプチド合成機を用い、粗ペプチド550mgを得た。粗ペプチドは0.1% TFA水溶液に溶解後、μBONDASPHERE 5μ C18C120 Aカラム(19×150mm)に供与し、0.1% TFAを含む90%アセトニトリル溶液にて展開し(流速5ml/分、検出波長214nm)、26〜27分に溶出された画分をエバポレート後、凍結乾燥を行い目的とするペプチドを得た(60mg)。この合成したペプチド 50 pmolについて、アミノ酸配列分析装置 PPSQ-10型(島津製作所(株) 製) を用いてアミノ酸配列分析を行ったところ、上記に示されるアミノ酸配列が確認された。
【0074】
実施例9
ペプチド9:
Gly-Ile-Ile-Ala-Ala-Tyr-Gln-Asn-Pro-Ala-Ser
樹脂に固定したアミノ酸誘導体に1個ずつアミノ酸をカルボキシル末端側から結合させていく方法(固相合成法)でペプチドを化学合成した。各サイクルで使用するアミノ酸はαアミノ基及び残基部分の反応基が保護基でブロックされた特殊なアミノ酸誘導体を用いた。ここで、それぞれのαアミノ基が Fmoc (9-fluorenyl methyloxycarbonyl) によりブロックされているアミノ酸を用いた(Fmoc法)。また、ペプチド合成は樹脂に結合したアミノ酸のαアミノ基の Fmoc を脱保護し、次にカルボキシル基が活性化したアミノ酸誘導体を結合させるという反応を順次繰り返して行った。
【0075】
実験に用いる各ペプチドは、マルチペプチドシンセサイザー SYMPHONY (Protein Technologies, Inc.)を用い上記の Fmoc 固相合成法にて同装置のプロトコールに従って合成した。すなわち、合成するペプチドのC末端残基に相当するアミノ酸(Ser)が導入されている Fmoc-Ser(tBu)-Wang-樹脂(0.52mmol/g) の25μmol 相当を上記ペプチド合成装置の反応容器にセットし、デプロテクション溶液(20% piperidine / Dimethyl formamide (DMF)) 1.25mlを5分間2回反応させ、樹脂に結合しているアミノ酸の Fmoc 基を除いた。DMF 液1.25mlで30秒間6回洗浄後、C末側から2番目のアミノ酸に相当する200mMの Fmoc-Ala/DMF 溶液1.25mlと200mMのアクチベータ溶液(200mM O-Benzotriazole-N,N,',N',-Tetramethyl-Uronium-Hexafluoro phosphate /400mM N-methylmorpholine/DMF )1.25mlを加え(それぞれ理論等量の10倍:250μmol 相当)、20分間室温で反応させた。ここで生成した Fmoc-Ala-Ser(tBu)-Wang-樹脂をDMF 1.25mlにて30秒間6回洗浄後、再び Fmoc 基のデプロテクションを用い、DMF 1.25mlにて30秒間6回洗浄後、Fmoc-Pro 溶液とアクチベーター溶液を加え反応させた。同様の操作を繰り返すことにより、目的とするペプチド (Fmoc-Gly-Ile-Ile-Ala-Ala-Tyr(tBu)-Gln(Trt)-Asn(Trt)-Pro-Ala-Ser(tBu)-Wang-樹脂) を合成した。
【0076】
ここで合成に使用したアミノ酸は以下のとおりである(日清紡(株)製)。( ) 内は残基部分の反応基を保護する保護基を表す。
Fmoc-Ala, Fmoc-Pro,
Fmoc-Asn(Trt), Fmoc-Gln(Trt), Fmoc-Tyr(tBu),
Fmoc-Ile, Fmoc-Gly,
ペプチド合成装置 SYMPHONY を用い、装置内でクリべージ反応を行った。
【0077】
まず、上記ように合成し得られた保護ペプチド樹脂(Fmoc-Gly-Ile-Ile-Ala-Ala-Tyr(tBu)-Gln(Trt)-Asn(Trt)-Pro-Ala-Ser(tBu)- Wang- 樹脂)に、デプロテクション液1.25mlを5分間2回反応させてN末端Fmoc基を脱保護した。次に1.25mlのDMF にて30秒間6回洗浄後、CH2Cl2にて同様に洗浄し、 N2を吹き付け10分間乾燥後、クリべージ溶液(Trifluoroacetic acid:Phenol:水:Tioanisole:Ethanedithiol =82.5:5:5:5:2.5) を2.5ml加え室温で2時間反応させ(D.S.King, Int.J.Peptide Protein Reg., 36, 255(1990))、樹脂からのペプチドの切断およびアミノ酸側鎖保護基の除去を行い、ペプチド(Gly-Ile-Ile-Ala-Ala-Tyr-Gln-Asn-Pro-Ala-Ser)を得た。
【0078】
反応終了後、このペプチド溶液をフィルターを用いて濾過し、樹脂と濾液に分けた。さらに樹脂を洗浄した液2.5mlと合わせ遠心管に回収した。回収したペプチド溶液を装置から取り出し、5mlの冷エーテルを加え、ペプチドを沈澱させた。しばらく冷却後これを遠心して(3000rpm 10分間)沈澱物を集め、再び冷エーテルを加えて分散させては回収することを5〜6回繰り返してペプチドを洗浄した。
【0079】
得られたペプチドを乾燥させ、粗ペプチドを得た。得られた粗ペプチドのうち11mgを2mlの0.1% TFAを含む10%アセトニトリル水溶液に溶解後、3回に分けてODS カラム(TSKgel ODS-12OT, 7.8mm×30cm:東ソー(株)製)に供与し、0.1% TFAを含む21%アセトニトリルにて展開し(流速2ml/分、検出波長 220nm) 、9.2〜11分に溶出された画分を分取し、濃縮後、凍結乾燥を行い目的とするペプチドを得た(5mg )。この合成したペプチド 50 pmolについて、アミノ酸配列分析装置 PPSQ-10型(島津製作所(株) 製) を用いてアミノ酸配列分析を行ったところ、上記に示されるアミノ酸配列が確認された。
【0080】
実施例10
ペプチド10:
Gly-Ile-Ile-Ala-Ala-Tyr-Gln-Asn-Pro-Ala-Ser-Trp
実施例9と同様の操作でペプチド(Fmoc-Gly-Ile-Ile-Ala-Ala-Tyr(tBu)-Gln(Trt)-Asn(Trt)-Pro-Ala-Ser(tBu)-Trp-Wang-樹脂)を合成した。ただし、C末端アミノ酸樹脂には Fmoc-Trp-Wang- 樹脂(0.66mmol/g)を25μmol 相当用いた。合成に使用したアミノ酸は以下のとおりである。
Fmoc-Ala, Fmoc-Pro, Fmoc-Asn(Trt),
Fmoc-Gln(Trt), Fmoc-Tyr(tBu), Fmoc-Ile,
Fmoc-Gly, Fmoc-Ser(tBu)
【0081】
実施例9と同様の操作でクリべージ反応を行いペプチド(Gly-Ile-Ile-Ala-Ala-Tyr-Gln-Asn-Pro-Ala-Ser-Trp)を得、このペプチド溶液を遠心管に回収し、その後、ペプチドを沈澱させ、粗ペプチドを得た。
【0082】
得られた粗ペプチドのうち9mgを4mlの0.1% TFAを含む10%アセトニトリル水溶液に溶解後、2回に分けてODS カラム(TSKgel ODS-120T, 7.8mm ×30cm:東ソー(株)製)に供与し、0.1% TFAを含む23%アセトニトリルにて展開し、32〜38分に溶出された画分を濃縮後、凍結乾燥を行い目的とするペプチドを得た(2.5mg)。この合成したペプチド 50 pmolについて、アミノ酸配列分析装置 PPSQ-10型(島津製作所(株) 製) を用いてアミノ酸配列分析を行ったところ、上記に示されるアミノ酸配列が確認された。
【0083】
実施例11
ペプチド11:
Ile-Trp-Leu-Gln-Phe-Ala-Lys-Leu-Thr-Gly-Phe-Thr-Leu
実施例9と同様の操作でペプチド(Fmoc-Ile-Trp-Leu-Gln(Trt)-Phe-Ala-Lys(Boc)-Leu-Thr(tBu)-Gly-Phe-Thr(tBu)-Leu-Wang-樹脂)を合成した。ただし、C末端アミノ酸樹脂には Fmoc-Leu-Wang- 樹脂(0.69mmol/g)を25μmol 相当用いた。合成に使用したアミノ酸は以下のとおりである。
Fmoc-Leu, Fmoc-Thr(tBu),
Fmoc-Phe, Fmoc-Gly, Fmoc-Lys(Boc),
Fmoc-Ala, Fmoc-Gln(Trt), Fmoc-Trp,
Fmoc-Ile,
【0084】
実施例9と同様の操作でクリべージ反応を行いペプチド(Ile-Trp-Leu-Gln-Phe-Ala-Lys-Leu-Thr-Gly-Phe-Thr-Leu)を得、このペプチド溶液を遠心管に回収し、その後、ペプチドを沈澱させ、粗ペプチドを得た。
【0085】
得られた粗ペプチドのうち7mgを4mlの0.1% TFAを含む20%アセトニトリル水溶液に溶解後、3回に分けてODS カラム(TSKgel ODS-120T, 7.8mm ×30cm:東ソー(株)製)に供与し、0.1% TFAを含む37%アセトニトリルにて展開し(流速2ml/分、検出波長 220nm) 、17〜20分に溶出された画分を分取し、濃縮後、凍結乾燥を行い目的とするペプチドを得た ( 0.7mg) 。この合成したペプチド 50 pmolについて、アミノ酸配列分析装置 PPSQ-10型(島津製作所(株) 製) を用いてアミノ酸配列分析を行ったところ、上記に示されるアミノ酸配列が確認された。
【0086】
実施例12
ペプチド12:
Leu-Gln-Phe-Ala-Lys-Leu-Thr-Gly-Phe-Thr-Leu
実施例9と同様の操作でペプチド(Fmoc-Leu-Gln(Trt)-Phe-Ala-Lys(Boc)-Leu-Thr(tBu)-Gly-Phe-Thr(tBu)-Leu-Wang- 樹脂)を合成し、クリべージ反応を行いペプチド(Leu-Gln-Phe-Ala-Lys-Leu-Thr-Gly-Phe-Thr-Leu)を得、このペプチド溶液を遠心管に回収した。その後、ペプチドを沈澱させ、粗ペプチドを得た。合成に使用したアミノ酸は以下のとおりである。
Fmoc-Leu, Fmoc-Thr(tBu), Fmoc-Phe,
Fmoc-Gly, Fmoc-Lys(Boc), Fmoc-Ala,
Fmoc-Gln(Trt),
【0087】
得られた粗ペプチドのうち 9.6mgを2mlの0.1% TFAを含む20%アセトニトリル水溶液に溶解後、2回に分けてODS カラム(TSKgel ODS-120T, 7.8mm ×30cm:東ソー(株)製)に供与し、0.1% TFAを含む32%アセトニトリルにて展開し(流速2ml/分、検出波長 220nm) 、11〜16分に溶出された画分を分取し、濃縮後、凍結乾燥を行い目的とするペプチドを得た(6.4mg) 。この合成したペプチド 50 pmolについて、アミノ酸配列分析装置 PPSQ-10型(島津製作所(株) 製) を用いてアミノ酸配列分析を行ったところ、上記に示されるアミノ酸配列が確認された。
【0088】
実施例13
ペプチド13
Leu-Gln-Phe-Ala-Lys-Leu-Thr-Gly-Phe-Thr-Leu-Met
実施例9と同様の操作でペプチド(Fmoc-Leu-Gln(Trt)-Phe-Ala-Lys(Boc)-Leu-Thr(tBu)-Gly-Phe-Thr(tBu)-Leu-Met-Wang-樹脂)を合成した。ただし、C末端アミノ酸樹脂には Fmoc-Met-Wang- 樹脂(0.75mmol/g)を25μmol 相当用いた。合成に使用したアミノ酸は実施例12と同じである。実施例9と同様の操作でクリべージ反応を行いペプチド(Leu-Gln-Phe-Ala-Lys-Leu-Thr-Gly-Phe-Thr-Leu-Met)を得、このペプチド溶液を遠心管に回収し、その後、ペプチドを沈澱させ、粗ペプチドを得た。
【0089】
得られた粗ペプチドのうち8mgを2mlの0.1% TFAを含む20%アセトニトリル水溶液に溶解後、2回に分けてODS カラム(TSKgel ODS-120T, 7.8mm ×30cm:東ソー(株)製)に供与し、0.1% TFAを含む30%アセトニトリルにて展開し、25〜32分に溶出された画分を濃縮後、凍結乾燥を行い目的とするペプチドを得た(1.1mg)。この合成したペプチド 50 pmolについて、アミノ酸配列分析装置 PPSQ-10型(島津製作所(株) 製) を用いてアミノ酸配列分析を行ったところ、上記に示されるアミノ酸配列が確認された。
【0090】
実施例14
ペプチド14:
Gln-Phe-Ala-Lys-Leu-Thr-Gly-Phe-Thr-Leu
実施例9と同様の操作でペプチド(Fmoc-Gln(Trt)-Phe-Ala-Lys(Boc)-Leu-Thr(tBu)-Gly-Phe-Thr(tBu)-Leu-Wang-樹脂)を合成した。ただし、C末端アミノ酸樹脂には Fmoc-Leu-Wang- 樹脂(0.69mmol/g)を25μmol 相当用いた。合成に使用したアミノ酸は実施例12と同じである。実施例9と同様の操作でクリべージ反応を行いペプチド(Gln-Phe-Ala-Lys-Leu-Thr-Gly-Phe-Thr-Leu)を得、このペプチド溶液を遠心管に回収し、その後、ペプチドを沈澱させ、粗ペプチドを得た。
【0091】
得られた粗ペプチドのうち 2.5mgを1mlの0.1% TFAを含む20%アセトニトリル水溶液に溶解後、2回に分けてODS カラム(TSKgel ODS-120T, 7.8mm ×30cm:東ソー(株)製)に供与し、0.1% TFAを含む30%アセトニトリルにて展開し、10〜12分に溶出された画分を濃縮後、凍結乾燥を行い目的とするペプチドを得た(0.6mg)。この合成したペプチド 50 pmolについて、アミノ酸配列分析装置 PPSQ-10型(島津製作所(株) 製) を用いてアミノ酸配列分析を行ったところ、上記に示されるアミノ酸配列が確認された。
【0092】
実施例15
ペプチド15:
Gln-Phe-Ala-Lys-Leu-Thr-Gly-Phe-Thr-Leu-Met
実施例9と同様の操作でペプチド(Fmoc-Gln(Trt)-Phe-Ala-Lys(Boc)-Leu-Thr(tBu)-Gly-Phe-Thr(tBu)-Leu-Met-Wang-樹脂)を合成した。ただし、C末端アミノ酸樹脂には Fmoc-Met-Wang- 樹脂(0.75mmol/g)を25μmol 相当用いた。合成に使用したアミノ酸は実施例12と同じである。実施例9と同様の操作でクリべージ反応を行いペプチド(Gln-Phe-Ala-Lys-Leu-Thr-Gly-Phe-Thr-Leu-Met)を得、このペプチド溶液を遠心管に回収し、その後、ペプチドを沈澱させ、粗ペプチドを得た。
【0093】
得られた粗ペプチドのうち7mgを4mlの0.1% TFAを含む20%アセトニトリル水溶液に溶解後、2回に分けてODS カラム(TSKgel ODS-120T, 7.8mm ×30cm:東ソー(株)製)に供与し、0.1% TFAを含む30%アセトニトリルにて展開し、15〜20分に溶出された画分を濃縮後、凍結乾燥を行い目的とするペプチドを得た(1.9mg)。この合成したペプチド 50 pmolについて、アミノ酸配列分析装置 PPSQ-10型(島津製作所(株) 製) を用いてアミノ酸配列分析を行ったところ、上記に示されるアミノ酸配列が確認された。
【0094】
実施例16
ペプチド16:
Gln-Phe-Ala-Lys-Leu-Thr-Gly-Phe-Thr-Leu-Met-Gly
実施例9と同様の操作でペプチド(Fmoc-Gln(Trt)-Phe-Ala-Lys(Boc)-Leu-Thr(tBu)-Gly-Phe-Thr(tBu)-Leu-Met-Gly-Wang-樹脂)を合成した。ただし、C末端アミノ酸樹脂には Fmoc-Gly-Wang- 樹脂(0.50mmol/g)を25μmol 相当用いた。合成に使用したアミノ酸は以下のとおりである。
Fmoc-Leu, Fmoc-Thr(tBu), Fmoc-Phe,
Fmoc-Gly, Fmoc-Lys(Boc), Fmoc-Ala,
Fmoc-Gln(Trt), Fmoc-Met
【0095】
実施例9と同様の操作でクリべージ反応を行いペプチド(Gln-Phe-Ala-Lys-Leu-Thr-Gly-Phe-Thr-Leu-Met-Gly)を得、このペプチド溶液を遠心管に回収し、その後、ペプチドを沈澱させ、粗ペプチドを得た。
【0096】
得られた粗ペプチドのうち13mgを6mlの0.1% TFAを含む20%アセトニトリル水溶液に溶解後、3回に分けてODS カラム(TSKgel ODS-120T, 7.8mm ×30cm:東ソー(株)製)に供与し、0.1% TFAを含む29%アセトニトリルにて展開し、17〜20分に溶出された画分を濃縮後、凍結乾燥を行い目的とするペプチドを得た(0.9mg)。この合成したペプチド 50 pmolについて、アミノ酸配列分析装置 PPSQ-10型(島津製作所(株) 製) を用いてアミノ酸配列分析を行ったところ、上記に示されるアミノ酸配列が確認された。
【0097】
実施例17
ペプチド17:
Ile-Phe-Ala-Ser-Lys-Asn-Phe-His-Leu-Gln-Lys-Asn
実施例9と同様の操作でペプチド(Fmoc-Ile-Phe-Ala-Ser(tBu)-Lys(Boc)-Asn(Trt)-Phe-His(Trt)-Leu-Gln(Trt)-Lys(Boc)-Asn(Trt)-Wang- 樹脂)を合成した。ただし、C末端アミノ酸樹脂には Fmoc-Asn(Trt)-Wang-樹脂(0.60mmol/g)を25μmol 相当用いた。合成に使用したアミノ酸は以下のとおりである。
Fmoc-Leu, Fmoc-Asn(Trt), Fmoc-Ile,
Fmoc-Phe, Fmoc-Lys(Boc), Fmoc-His(Trt),
Fmoc-Ala, Fmoc-Gln(Trt), Fmoc-Ser(tBu),
【0098】
実施例9と同様の操作でクリべージ反応を行いペプチド(Ile-Phe-Ala-Ser-Lys-Asn-Phe-His-Leu-Gln-Lys-Asn)を得、このペプチド溶液を遠心管に回収し、その後、ペプチドを沈澱させ、粗ペプチドを得た。
【0099】
得られた粗ペプチドのうち 3.8mgを4mlの0.1% TFAを含む10%アセトニトリル水溶液に溶解後、2回に分けてODS カラム(TSKgel ODS-120T, 7.8mm ×30cm:東ソー(株)製)に供与し、0.1% TFAを含む18%アセトニトリルにて展開し(流速2ml/分、検出波長 220nm) 、12〜15分に溶出された画分を分取し、濃縮後、凍結乾燥を行い目的とするペプチドを得た(1.9mg)。この合成したペプチド 50 pmolについて、アミノ酸配列分析装置 PPSQ-10型(島津製作所(株) 製) を用いてアミノ酸配列分析を行ったところ、上記に示されるアミノ酸配列が確認された。
【0100】
実施例18
ペプチド18:
Phe-Ala-Ser-Lys-Asn-Phe-His-Leu-Gln-Lys-Asn-Thr
実施例9と同様の操作でペプチド(Fmoc-Phe-Ala-Ser(tBu)-Lys(Boc)-Asn(Trt)-Phe-His(Trt)-Leu-Gln(Trt)-Lys(Boc)-Asn(Trt)-Thr(tBu)-Wang-樹脂)を合成した。ただし、C末端アミノ酸樹脂には Fmoc-Thr(tBu)-Wang-樹脂(0.50mmol/g)を25μmol 相当用いた。合成に使用したアミノ酸は以下のとおりである。
Fmoc-Leu, Fmoc-Asn(Trt), Fmoc-Phe,
Fmoc-Lys(Boc), Fmoc-His(Trt), Fmoc-Ala,
Fmoc-Gln(Trt), Fmoc-Ser(tBu),
【0101】
実施例9と同様の操作でクリべージ反応を行いペプチド(Phe-Ala-Ser-Lys-Asn-Phe-His-Leu-Gln-Lys-Asn-Thr)を得、このペプチド溶液を遠心管に回収し、その後、ペプチドを沈澱させ、粗ペプチドを得た。
【0102】
得られた粗ペプチドのうち5mgを4mlの0.1% TFAを含む10%アセトニトリル水溶液に溶解後、2回に分けてODS カラム(TSKgel ODS-120T, 7.8mm ×30cm:東ソー(株)製)に供与し、0.1% TFAを含む15%アセトニトリルにて展開し、22〜30分に溶出された画分を濃縮後、凍結乾燥を行い目的とするペプチドを得た(3.5mg)。この合成したペプチド 50 pmolについて、アミノ酸配列分析装置 PPSQ-10型(島津製作所(株) 製) を用いてアミノ酸配列分析を行ったところ、上記に示されるアミノ酸配列が確認された。
【0103】
実施例19
ペプチド19:
Phe-Ala-Ser-Lys-Asn-Phe-His-Leu-Gln-Lys-Asn
実施例9と同様の操作でペプチド(Fmoc-Phe-Ala-Ser(tBu)-Lys(Boc)-Asn(Trt)-Phe-His(Trt)-Leu-Gln(Trt)-Lys(Boc)-Asn(Trt)-Wang- 樹脂)を合成し、クリべージ反応を行いペプチド(Phe-Ala-Ser-Lys-Asn-Phe-His-Leu-Gln-Lys-Asn)を得、このペプチド溶液を遠心管に回収した。その後、ペプチドを沈澱させ、粗ペプチドを得た。合成に使用したアミノ酸は実施例18と同じである。
【0104】
得られた粗ペプチドのうち6mgを4mlの0.1% TFAを含む10%アセトニトリル水溶液に溶解後、2回に分けてODS カラム(TSKgel ODS-120T, 7.8mm ×30cm:東ソー(株)製)に供与し、0.1% TFAを含む15%アセトニトリルにて展開し、20〜28分に溶出された画分を濃縮後、凍結乾燥を行い目的とするペプチドを得た(3.8mg)。この合成したペプチド 50 pmolについて、アミノ酸配列分析装置 PPSQ-10型(島津製作所(株) 製) を用いてアミノ酸配列分析を行ったところ、上記に示されるアミノ酸配列が確認された。
【0105】
実施例20
ペプチド20:
Leu-Lys-Leu-Thr-Ser-Gly-Lys-Ile-Ala-Ser-Cys-Leu
実施例9と同様の操作でペプチド(Fmoc-Leu-Lys(Boc)-Leu-Thr(tBu)-Ser(tBu)-Gly-Lys(Boc)-Ile-Ala-Ser(tBu)-Cys(Trt)-Leu-Wang-樹脂)を合成した。ただし、C末端アミノ酸樹脂には Fmoc-Leu-Wang- 樹脂(0.69mmol/g)を25μmol相当用いた。合成に使用したアミノ酸は以下のとおりである。
Fmoc-Leu, Fmoc-Thr(tBu), Fmoc-Asn(Trt),
Fmoc-Gly, Fmoc-Lys(Boc), Fmoc-Cys(Trt),
Fmoc-Ala, Fmoc-Ser(tBu), Fmoc-Ile
【0106】
実施例9と同様の操作でクリべージ反応を行いペプチド(Leu-Lys-Leu-Thr-Ser-Gly-Lys-Ile-Ala-Ser-Cys-Leu)を得、このペプチド溶液を遠心管に回収し、その後、ペプチドを沈澱させ、粗ペプチドを得た。
【0107】
得られた粗ペプチドのうち 10mg を4mlの0.1% TFAを含む10%アセトニトリル水溶液に溶解後、3回に分けてODS カラム(TSKgel ODS-120T, 7.8mm ×30cm:東ソー(株)製)に供与し、0.1% TFAを含む23%アセトニトリルにて展開し(流速2ml/分、検出波長 220nm) 、18〜22分に溶出された画分を分取し、濃縮後、凍結乾燥を行い目的とするペプチドを得た(0.9mg)。この合成したペプチド 50 pmolについて、アミノ酸配列分析装置 PPSQ-10型(島津製作所(株) 製) を用いてアミノ酸配列分析を行ったところ、上記に示されるアミノ酸配列が確認された。
【0108】
実施例21
ペプチド21:
Lys-Leu-Thr-Ser-Gly-Lys-Ile-Ala-Ser-Cys-Leu
実施例9と同様の操作でペプチド(Fmoc-Lys(Boc)-Leu-Thr(tBu)-Ser(tBu)-Gly-Lys(Boc)-Ile-Ala-Ser(tBu)-Cys(Trt)-Leu-Wang- 樹脂)を合成し、クリべージ反応を行いペプチド(Lys-Leu-Thr-Ser-Gly-Lys-Ile-Ala-Ser-Cys-Leu )を得、このペプチド溶液を遠心管に回収した。その後、ペプチドを沈澱させ、粗ペプチドを得た。合成に使用したアミノ酸は実施例20と同じである。
【0109】
得られた粗ペプチドのうち 6.6mgを2mlの0.1% TFAを含む10%アセトニトリル水溶液に溶解後、2回に分けてODS カラム(TSKgel ODS-120T, 7.8mm ×30cm:東ソー(株)製)に供与し、0.1% TFAを含む19%アセトニトリルにて展開し(流速2ml/分、検出波長 220nm) 、17〜22分に溶出された画分を分取し、濃縮後、凍結乾燥を行い目的とするペプチドを得た(1.5mg)。この合成したペプチド 50 pmolについて、アミノ酸配列分析装置 PPSQ-10型(島津製作所(株) 製) を用いてアミノ酸配列分析を行ったところ、上記に示されるアミノ酸配列が確認された。
【0110】
実施例22
ペプチド22:
Lys-Leu-Thr-Ser-Gly-Lys-Ile-Ala-Ser-Cys-Leu-Asn
実施例1と同様の操作でペプチド(Fmoc-Lys(Boc)-Leu-Thr(tBu)-Ser(tBu)-Gly-Lys(Boc)-Ile-Ala-Ser(tBu)-Cys(Trt)-Leu-Asn(Trt)-Wang- 樹脂)を合成した。ただし、C末端アミノ酸樹脂には Fmoc-Asn(Trt)-Wang-樹脂(0.60mmol/g)を25μmol 相当用いた。合成に使用したアミノ酸は実施例20と同じである。実施例9と同様の操作でクリべージ反応を行いペプチド(Gln-Phe-Ala-Lys-Leu-Thr-Gly-Phe-Thr-Leu)を得、このペプチド溶液を遠心管に回収し、その後、ペプチドを沈澱させ、粗ペプチドを得た。
【0111】
得られた粗ペプチドのうち 6.9mgを1mlの0.1% TFAを含む10%アセトニトリル水溶液に溶解後、2回に分けてODS カラム(TSKgel ODS-120T, 7.8mm ×30cm:東ソー(株)製)に供与し、0.1% TFAを含む22%アセトニトリルにて展開し、9〜12分に溶出された画分を濃縮後、凍結乾燥を行い目的とするペプチドを得た(1.6mg)。この合成したペプチド 50 pmolについて、アミノ酸配列分析装置 PPSQ-10型(島津製作所(株) 製) を用いてアミノ酸配列分析を行ったところ、上記に示されるアミノ酸配列が確認された。
【0112】
実施例23
ペプチド23:
Leu-Thr-Ser-Gly-Lys-Ile-Ala-Ser-Cys-Leu-Asn
実施例9と同様の操作でペプチド(Fmoc-Leu-Thr(tBu)-Ser(tBu)-Gly-Lys(Boc)-Ile-Ala-Ser(tBu)-Cys(Trt)-Leu-Asn(Trt)-Wang-樹脂)を合成し、クリべージ反応を行いペプチド(Leu-Thr-Ser-Gly-Lys-Ile-Ala-Ser-Cys-Leu-Asn )を得、このペプチド溶液を遠心管に回収した。その後、ペプチドを沈澱させ、粗ペプチドを得た。合成に使用したアミノ酸は以下のとおりである。
Fmoc-Leu, Fmoc-Thr(tBu), Fmoc-Gly,
Fmoc-Cys(Trt), Fmoc-Ala, Fmoc-Ser(tBu),
Fmoc-Ile
【0113】
得られた粗ペプチドのうち6mgを1mlの0.1% TFAを含む20%アセトニトリル水溶液に溶解後、3回に分けてODS カラム(TSKgel ODS-120T, 7.8mm ×30cm:東ソー(株)製)に供与し、0.1% TFAを含む19%アセトニトリルにて展開し(流速2ml/分、検出波長 220nm) 、15〜17分に溶出された画分を分取し、濃縮後、凍結乾燥を行い目的とするペプチドを得た(0.9 mg)。この合成したペプチド 50 pmolについて、アミノ酸配列分析装置 PPSQ-10型(島津製作所(株) 製) を用いてアミノ酸配列分析を行ったところ、上記に示されるアミノ酸配列が確認された。
【0114】
実施例24
ペプチド24:
Leu-Thr-Ser-Gly-Lys-Ile-Ala-Ser-Cys-Leu-Asn-Asp
実施例9と同様の操作でペプチド(Fmoc-Leu-Thr(tBu)-Ser(tBu)-Gly-Lys(Boc)-Ile-Ala-Ser(tBu)-Cys(Trt)-Leu-Asn(Trt)-Asp(OtBu)-Wang-樹脂)を合成した。ただし、C末端アミノ酸樹脂には Fmoc-Asp(OtBu)-Wang- 樹脂(0.42mmol/g)を25μmol 相当用いた。合成に使用したアミノ酸は以下のとおりである。
Fmoc-Leu, Fmoc-Thr(tBu), Fmoc-Gly,
Fmoc-Cys(Trt), Fmoc-Ala, Fmoc-Ser(tBu),
Fmoc-Ile Fmoc-Asn(Trt)
【0115】
実施例9と同様の操作でクリべージ反応を行いペプチド(Leu-Thr-Ser-Gly-Lys-Ile-Ala-Ser-Cys-Leu-Asn-Asp)を得、このペプチド溶液を遠心管に回収し、その後、ペプチドを沈澱させ、粗ペプチドを得た。
【0116】
得られた粗ペプチドのうち 7.5mgを1mlの0.1% TFAを含む10%アセトニトリル水溶液に溶解後、3回に分けてODS カラム(TSKgel ODS-120T, 7.8mm ×30cm:東ソー(株)製)に供与し、0.1% TFAを含む18%アセトニトリルにて展開し、17〜19分に溶出された画分を濃縮後、凍結乾燥を行い目的とするペプチドを得た(0.6mg)。この合成したペプチド 50 pmolについて、アミノ酸配列分析装置 PPSQ-10型(島津製作所(株) 製) を用いてアミノ酸配列分析を行ったところ、上記に示されるアミノ酸配列が確認された。
【0117】
製剤例1.
液剤
実施例1乃至24記載の方法により得た24種類のペプチドのいずれかを最終濃度0.1g/mlになるように安定剤として1%(w/v) 精製ゼラチンを含む蒸留水に溶解し、常法により滅菌濾過して24種類の液剤を得た。
【0118】
本発明のペプチドに対する感受性は個体毎に変わるのが通例であるから、本品は個々の個体に最も適した組成になるよう、24種類の液剤を適宜配合して使用する。本品は安定性に優れているので、スギ花粉症を治療・予防するための点眼剤、点鼻剤、口腔内噴霧剤用の液剤として有用である。
【0119】
製剤例2.
注射剤
安定剤として1%(w/v) ヒト血清アルブミンを含む生理食塩水に実施例1乃至24記載の方法により得た24種類のペプチドをそれぞれ最終濃度0.01、0.1又は1mg/ml になるように溶解し、滅菌濾過した後、滅菌バイアル瓶に2mlずつ分注し、凍結乾燥し、密栓した。
【0120】
本品は投与に先立ち、まず、バイアル瓶内に注射用蒸留水等を1ml加え、次いで、内容物を均一に溶解して使用する。安定性に優れ、有効成分として本発明による24種類のポリペプチドを含んでなる本品は、スギ花粉症を治療・予防するための乾燥製剤として有用である。
【0121】
製剤例3.
錠剤
平均分子量約20,000ダルトンの精製プルラン2g を蒸留水100mlに均一に溶解し、溶液に塩化シアヌルの1.7%(w/v) アセトン溶液を2ml加え、5%(w/v)炭酸ナトリウム水溶液でpHを7付近に保ちつつ、攪拌下、5℃で2時間反応させた。その後、同様にして反応物のpHを7付近に保ちながら、4℃の冷水に対して一晩透析し、活性化プルランを含む水溶液20mlを得た。
【0122】
実施例1乃至24記載の方法により得たペプチドをそれぞれ0.2mg加え、溶液のpHを7付近に保ちつつ、穏やかに攪拌しながら、37℃で12時間反応させた。反応後、反応物にグリシンを4g を加え、穏やかに攪拌しながら、37℃で5時間インキュベートし、未反応の活性基をブロックした。反応物を濃縮し、あらかじめ0.1M リン酸緩衝液(pH 7.0) で平衡化させておいたセファデックス G-50 カラムに供与し、カラムに新鮮な同一緩衝液を通液して、この発明のペプチドとプルランの複合体を含む画分を採取した。収量は、原料ペプチド固形分当たり、約30%であった。
【0123】
常法に従って、この画分を滅菌濾過し、濃縮し、凍結乾燥し、粉砕後、マンニトールを均一に混合し、混合物を打錠して製品1錠(200mg)当たり複合体を2、10又は50mg含む錠剤を得た。摂取性、安定性に優れた本品は、スギ花粉症を治療・予防するための舌下剤として有用である。
【0124】
製剤例4.
シロップ剤
大腸菌由来の精製リボ多糖1g を10mMリン酸カルシウム溶液100mlに溶解し、溶液に100mM過ヨウ素酸ナトリウムを6ml加え、室温下で20分間反応させてリボ多糖を活性化した。反応物を4℃の1M グリシン−塩酸緩衝液(pH 4.4) に対して一晩透析して未反応の過ヨウ素酸を除去した後、0.1M 炭酸水素ナトリウム緩衝液によりpH 9.5付近に調整する一方、別途、実施例1乃至24記載の方法により得た24種類のペプチドを0.1M リン酸緩衝液(pH 7.0) 100mlにそれぞれ10mgずつ溶解し、活性化リボ多糖を含む上記反応物に加え、室温下で12時間静置して反応させた。
【0125】
その後、新たに得られた反応物を製剤例3の方法により精製し、得られた本発明のペプチドとリボ多糖の複合体を含む画分を濃縮し、凍結乾燥し、粉砕して固状物とした。収量は、原料ペプチド固形分当たり、約30%であった。この固形物を蔗糖をそれぞれ最終濃度が0.1若しくは1mg/ml 又は50%(w/w) になるように安定剤として精製ゼラチンを1%(w/w) 含む蒸留水に溶解し、溶液を常法により滅菌濾過してシロップ状物を得た。このシロップ状物を2mlずつ滅菌バイアル瓶に分注し、密栓して製品とした。
【0126】
安定性に優れ、有効成分としてこの発明のペプチドとリボ多糖の複合体を含む本品は、スギ花粉症を治療・予防するためのシロップ剤として有用である。
【配列表フリーテキスト】
【0127】
配列番号1−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号2−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号3−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号4−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号5−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号6−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号7−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号8−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号9−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号10−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号11−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号12−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号13−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号14−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号15−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号16−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号17−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号18−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号19−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号20−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号21−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号22−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号23−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号24−人工配列の説明:合成ペプチド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2のアミノ酸配列から成るペプチド。
【請求項2】
配列番号3のアミノ酸配列から成るペプチド。
【請求項3】
配列番号9のアミノ酸配列から成るペプチド。
【請求項4】
配列番号10のアミノ酸配列から成るペプチド。
【請求項5】
配列番号17のアミノ酸配列から成るペプチド。
【請求項6】
配列番号18のアミノ酸配列から成るペプチド。
【請求項7】
配列番号19のアミノ酸配列から成るペプチド。
【請求項8】
配列番号2のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
【請求項9】
配列番号3のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
【請求項10】
配列番号4のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
【請求項11】
配列番号5のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
【請求項12】
配列番号6のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
【請求項13】
配列番号9のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
【請求項14】
配列番号10のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
【請求項15】
配列番号11のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
【請求項16】
配列番号12のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
【請求項17】
配列番号13のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
【請求項18】
配列番号14のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
【請求項19】
配列番号15のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
【請求項20】
配列番号16のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
【請求項21】
配列番号17のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
【請求項22】
配列番号18のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
【請求項23】
配列番号19のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
【請求項24】
配列番号20のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
【請求項25】
配列番号21のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
【請求項26】
配列番号22のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
【請求項27】
配列番号23のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。
【請求項28】
配列番号24のアミノ酸配列から成るペプチドを有効成分とする抗スギ花粉症剤。

【公開番号】特開2006−8698(P2006−8698A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−213988(P2005−213988)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【分割の表示】特願平7−181438の分割
【原出願日】平成7年7月18日(1995.7.18)
【出願人】(000155908)株式会社林原生物化学研究所 (168)
【出願人】(000001856)三共株式会社 (98)
【Fターム(参考)】