説明

ペルオキシド開始剤の組み合わせ物を用いる発泡用途のポリスチレンの製造

三官能性あるいは四官能性である少なくとも1つの多官能性開始剤と、二官能性あるいは単官能性である少なくとも1つの低官能性開始剤の存在下でスチレンを重合させることにより改善されたポリスチレン製品を取得し得るということが見出された。これらのポリマーは増加したMz、増加したMFI、および増加したMWDを有し得る。場合によっては、この樹脂は、少なくとも1つの連鎖移動剤、少なくとも1つの架橋剤および/またはスチレン−共役ジエン−スチレンブロックコポリマーを含み得る。この多官能性開始剤の存在はこのポリスチレン中に更に分岐した構造を生じる傾向がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレンとスチレンコポリマーの製造を改良するのに有用な方法および組成物に関する。本発明は、特にスチレンモノマーを多官能性開始剤および低官能性開始剤により架橋剤、連鎖移動剤および/またはスチレン−共役ジエン−スチレンブロックコポリマーの随意の存在下で重合および共重合する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレンの重合は、広範で種々のポリスチレン含有物品の創出に使用される材料を供給する極めて重要な工業的な方法である。ポリスチレンのこのような膨張的な使用は、この重合方法を制御することができることから生じるものである。このように、重合法条件における変形は、この生成ポリマーの物理的性質にわたる制御を可能とするので最も重要なものである。得られる物理的性質は、特定な使用へのポリスチレンの適合性を決定する。一定の製品に対しては、好適なポリスチレン材料を得るにはいくつかの物理的特性をバランスさせなければならない。制御され、バランスされなければならない性質の内には、このポリマーの重量平均分子量(Mw)、分子量分布(MWD)、メルトフローインデックス(MFI)、および貯蔵弾性率(G’)がある。
【0003】
分子量と貯蔵弾性率の間の関係はポリマーフォーム用途において特に重要である。このようなフォーム用途は高貯蔵弾性率を有する高分子量ポリマーを必要とする。貯蔵弾性率はポリマー鎖に沿った分岐度に関係すると考えられる。分岐度が増加するに従って、分岐が他のポリマー鎖に絡みつく可能性が増加する。高分岐度あるいは架橋を有するポリマー製品は高貯蔵弾性率を有し、それゆえ良好なフォーム安定性特性を有する傾向がある。
【0004】
分岐ポリマーを製造する方法は当分野で既知である。例えば、フリーラジカル重合による分岐ポリスチレンの製造が報告された。この方法は溶媒除去段階において分岐を増大させ、そして望ましくないほど低い分子量のポリマーを生成する。
【0005】
ある方法はフリーラジカル重合を使用するのでなく、分岐ポリマーの形成に多官能性メルカプタンを使用した。これらの製品は、許容可能な分子量を有する材料をこの方法により製造することができる一方で、望ましくない流動性によりフォーム用途に許容不能である。
【0006】
ジビニルベンゼンの存在下で製造されるランダムに分岐したポリスチレンの性質は(非特許文献1)により報告された。しかしながら、分子量と架橋の有用な組み合わせを有するポリマーは得られていない。低濃度のジビニルベンゼンにおいては、僅かな分岐を有する低分子量ポリマーが生じる。しかしながら、高濃度の架橋剤は過剰な架橋と、工業的なポリスチレンの方法においては極めて望ましくないゲル形成を結果として生成する。類似の結果および問題は(非特許文献2)により報告された。
【0007】
広範で、多様なペルオキシ化合物がスチレン系ポリマーの製造のための開始剤として文献から知られている。ポリマー製造用の市販の開始剤は、ジアシルペルオキシド、ペルオキシジカーボネート、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシエステル、ペルオキシケタール、およびヒドロペルオキシドを含む異なる化学的な群に分類され得る。ペルオキシドおよびヒドロペルオキシドは、モノマーまたは二重結合付きの炭化水素の存在下で少なくとも4つの反応を行う。これらの反応は、1)連鎖移動、2)モノマーへの付加、3)水素引き抜き、および4)しばしばかご効果と呼ばれる再結合である。
【0008】
ヒドロペルオキシドは誘起された分解反応を行うことが示され、その場合にはポリマーラジカル(〜〜P)は下記に示すように開始剤と反応する。この反応は基本的には連鎖移動反応であり、そしてこの反応はよく知られた連鎖移動の式に従う。ペルオキシド開始剤(RCOO)から得られるラジカルもヒドロペルオキシドから水素を引き抜くことができる。
【0009】
RCOOまたは〜〜P+RCOOH→〜〜PH+ROO
BaysalとTobolskyは、(非特許文献3)においてt−ブチルヒドロペルオキシド(t−BHP)、クミルヒドロペルオキシド(CHP)、ベンゾイルペルオキシド(Bz)、およびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)へのポリスチリルラジカルの連鎖移動を研究した。AIBNおよびベンゾイルペルオキシドは速度と1/DP(重合度)の間の古典的な一次の相関を与え、開始剤への連鎖移動がないことを示す。しかしながら、ヒドロペルオキシドは、著しいレベルの連鎖移動を示した。
【0010】
A.I.LowellおよびJ.R.Priceは、(非特許文献4)ポリスチリルラジカルがジラウロイルペルオキシドと比較してビス(2,4−ジクロロ)ベンゾイルペルオキシドとかなりの連鎖移動を行うことも示した。
【0011】
慣用のフリーラジカル法により製造される商用ポリスチレンは線状構造物を生成する。しかしながら、述べたように、分岐ポリスチレンの製造方法は容易に最適化されず、少数の商用非線状ポリスチレンが知られるのみである。分岐ポリマーの研究は、分子の絡み合いの増大の潜在性によりこれらのポリマーがユニークな分子量−粘度の関係を有するということを示す。分岐の数および長さに依り、非線状構造物は、若干高いメルトフローで線状ポリマーと同等なメルト強度を与えることができる。
【0012】
(特許文献1)は、ビニルベンゼン(例えば、スチレン)を反応器に入れ、架橋剤(例えば、ジビニルベンゼン)をこの反応器に入れ、そして連鎖移動剤(例えば、メルカプタン)をこの反応器に入れ、そしてポリビニルベンゼンを架橋剤および連鎖移動剤の存在下で形成することにより、コポリマーを製造する方法を述べている。
【特許文献1】米国特許第6,353,066号(Sosaへの)
【非特許文献1】L.C.Rubens,Journal of Cellular Physics,pp311−320,1965
【非特許文献2】FerriおよびLomellini,J.Rheol.43(6),1999
【非特許文献3】BaysalとTobolsky,Journal of Polymer Science,Vol.8、p.529以降(1952)
【特許文献4】A.I.LowellおよびJ.R.Price,Journal of Polymer Science,Vol.43,p.1以降(1960)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
性質の改善された分岐ポリスチレンなどの分岐の増加したビニル芳香族ポリマーを提供する方法が開発あるいは発見されれば、望ましい。分岐の増大したビニル芳香族ポリマーの物理的性質の最適化を助ける方法が開発可能ならば、これも助けになる。このようなポリマーは、直鎖ポリマーよりも高いメルト強度を有し、そして最終製品の加工性および機械的性質(例えばフォーム用途における密度の増大)を改善し得る。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一つの形において、三官能性あるいは四官能性の開始剤である少なくとも1つの多官能性開始剤と、二官能性あるいは単官能性の開始剤である少なくとも1つの低官能性開始剤の存在下で少なくとも1つのビニル芳香族モノマーを重合させることを含む発泡された重合製品を製造する方法が提供される。この重合製品の発泡に発泡剤も使用され得る。この回収された発泡された重合製品は、少なくとも400,000のMzおよび約3よりも大きいMFIおよび約2.5〜約4.0のMWDを有し得る。別法としては、もう一つの非限定的な態様においては、この回収された発泡された重合製品は、少なくとも500,000のMzおよび約3.5よりも大きいMFIを有し得る。
【0015】
本発明のもう一つの態様においては、少なくとも1つのビニル芳香族モノマー、三官能性あるいは四官能性の開始剤である少なくとも1つの多官能性開始剤、および二官能性あるいは単官能性の開始剤である少なくとも1つの低官能性開始剤を含むビニル芳香族モノマー樹脂が提供される。この樹脂は、連鎖移動剤、架橋剤、またはスチレン−共役ジエン−スチレンブロックコポリマーのいずれかである少なくとも1つの更なる成分を有する。
【0016】
本発明のもう一つの態様においては、少なくとも1つのビニル芳香族モノマーを少なくとも1つのポリジエンと少なくとも1つの多官能性開始剤および少なくとも1つの低官能性開始剤の存在下で重合させることにより製造されるビニル芳香族/ジエングラフトコポリマーが提供される。再度であるが、この多官能性開始剤は三官能性あるいは四官能性開始剤であり得る。この低官能性開始剤は二官能性あるいは単官能性開始剤であり得る。重合製品が回収される。
【0017】
本発明のなおもう一つの態様においては、上記に述べたビニル芳香族モノマー樹脂またはビニル芳香族/ジエングラフトコポリマーから製造される発泡物品が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明者らは、四官能性開始剤または三官能性開始剤を低官能性開始剤と一緒に、そして場合によっては、連鎖移動剤、架橋剤および/またはスチレン−共役ジエン−スチレンブロックコポリマーを一緒に使用することにより、少なくとも若干の増加した分岐を有する分岐ポリスチレンを提供する潜在性を探索した。本発明は、種々の溶剤中で、そしてポリブタジエンまたはスチレン/ブタジエンコポリマーなどのポリジエンの随意の存在下で、多官能性開始剤(例えば、三−あるいは四官能性)と更に慣用の低官能性開始剤の混合物によりスチレンなどのビニル芳香族モノマーを開始させ、それにより多官能性開始剤を使用して、分岐構造物を得ることに関する。
【0019】
理論的には、四官能性材料は十字の形状により概略表示可能である。この十字の各腕の末端において、開始または連鎖移動に対する潜在性が存在する場合には、二官能性開始剤のみを使用するよりも高い分子量を有するポリスチレン分子を想定することが可能である。四官能性開始剤と同様に、三官能性開始剤は四官能性開始剤において見出される4本の代わりに単に3本の「腕」または出発点を単に有する。多数の二官能性開始剤はシクロアルキル構造物から延びる官能基を有するが、二官能性および単官能性開始剤は線状の構造物を有する傾向がある。
【0020】
本発明の場合には、分岐構造物の形成から生じるメルトの性質を最適化するために、比較的少レベルの四官能性開始剤が使用される。四官能性開始剤によれば、1個の分岐分子に対して4本の直鎖が形成される。高レベルの開始剤においては、アルキルラジカルにより開始される直鎖の量は、四官能性ラジカルにより開始される分岐鎖によりもたらされる影響を低下させる。
【0021】
スチレンの重合法は一般に知られている。本発明の組成物は、約100〜約1200ppmの濃度の多官能性開始剤および低官能性開始剤の存在下で、そして溶剤を使用してバッチ重合により製造可能である。本発明のもう一つの非限定的な態様においては、この多官能性開始剤の濃度は約100〜約600ppmの範囲であり得る。この低官能性開始剤は、約50〜約1000ppmの濃度で存在し得、そしてもう一つの非限定的な態様においては、この低官能性開始剤の濃度は約100〜約600ppmの範囲であり得る。
【0022】
本発明の一つの非限定的な態様においては、この多官能性開始剤は、三官能性あるいは四官能性ペルオキシドであり、そしてトリ−あるいはテトラキスt−アルキルペルオキシカーボネート、トリ−あるいはテトラキス−(t−ブチルペルオキシカルボニルオキシ)メタン、トリ−あるいはテトラキス−(t−ブチルペルオキシカルボニルオキシ)ブタン、トリ−あるいはテトラキス(t−アミルペルオキシカルボニルオキシ)ブタン、トリ−あるいはテトラキス(t−C4−6アルキルモノペルオキシカーボネート)およびトリ−あるいはテトラキス(ポリエーテルペルオキシカーボネート)、およびこれらの混合物からなる群から選択される。本発明の一つの非限定的な態様においては、この四官能性開始剤は、このt−アルキル基がt−ブチルであり、そしてこの開始剤が1〜4(メチルエトキシ)単位の付いたポリ(メチルエトキシ)エーテル中心部分を持つ4つのt−アルキル末端基を有する。この分子はこの明細書中ではLUPEROX(登録商標)JWEB50と表記され、そしてAtofina Petrochemicals,Incから入手し得る。多官能性開始剤として好適なもう一つの商品は、Akzo Nobel Chemicals Inc.(3000 South Riverside Plaza Chicago,Illinois,60606)からの2,2ビス(4,4−ジ−(tert−ブチル−ペルオキシ−シクロヘキシル)プロパン)である。もう一つの商品は、NOF Corporation(Yebisu Garden Place Tower,20−3 Ebisu 4−chome,Shibuya−ku,Tokyo 150−6019)からの3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチル−ペルオキシ−カルボキシ)ベンゾフェノンである。
【0023】
本発明の製造において有用なヒドロペルオキシドとペルオキシジカーボネート、ペルオキシエステル、ペルオキシケタール、ジアルキルペルオキシドの低官能性開始剤は、110〜190℃において1時間の半減期を有するペルオキシド開始剤を含み、限定ではないが、二官能性開始剤の1,1−ジ−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン(ATOFINA Chemicals,Inc.から入手し得るLupersol(登録商標)331触媒またはL−331);1,1−ジ−(t−アミルペルオキシ)シクロヘキサン(ATOFINA Chemicals,Inc.から入手し得るLupersol(登録商標)531あるいはL−531);エチル−3,3−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブチレート(ATOFINA Chemicals,Incから入手し得るLupersol(登録商標)233またはL−233);t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート(Lupersol(登録商標)TAEC)、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート(Lupersol(登録商標)TBIC)、OO−t−ブチル1−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート(Lupersol(登録商標)TBEC)、t−ブチルペルベンゾエート;1,1−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン(ATOFINA Chemicals,Incから入手し得るLupersol(登録商標)231触媒あるいはL−231);エチル−3,3−ジ(t−アミルペルオキシ)ブチレート(Lupersol533)、ジ−イソプロピルベンゼンモノヒドロペルオキシド(DIBMH)、およびTrigonox(登録商標)17(N−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルペルオキシ)バレレートを含む。本発明の方法により使用可能な他の低官能性開始剤は、ジアシルペルオキシド、ジアゾ化合物、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシエステル、ジアルキルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、およびペルケタールからの60〜150℃の範囲の1時間の半減期ペルオキシドを含む。これらの開始剤の混合物も使用可能である。
【0024】
非グラフト性開始剤も本発明により使用可能である。例示の非グラフト性開始剤は、必ずしも限定ではないが、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)、ラウロイルペルオキシド、およびデカノイルペルオキシドを含む。これらの開始剤の混合物も使用可能である。
【0025】
本発明の目的には、用語「グラフト性」および「非グラフト性」は、上記で使用されるように、スチレンの単独重合と、スチレンを重合させて、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー中の残存不飽和基と反応させる反応の両方を促進する開始剤の能力に関する本発明の目的には、グラフト重合初期化開始剤は、スチレンの初期化と、スチレンまたはポリスチレンおよびスチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー中の残存不飽和基との反応の両方を促進するものである。同様に、本発明の目的には、非グラフト性重合初期化開始剤は、スチレンの初期化を促進するが、スチレンまたはポリスチレンとスチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー中の残存不飽和基との反応を実質的に促進しないものである。
【0026】
この重合に好適な随意の溶剤は、限定ではないが、エチルベンゼン、キシレン、トルエン、ヘキサンおよびシクロヘキサンを含む。
【0027】
本発明の目標は、必ずしも限定ではないが、フォーム用途または高衝撃用途のポリスチレンおよび類似のポリマーであって、このポリマーが一つの非限定的な態様において約3よりも大きく、そして代替の非限定的な態様においては若干の分岐のポリマーに対しては約3.5よりも大きいメルトフローインデックス(MFI)を有するものを提供することを含む。線状ポリスチレンホモポリマーの場合には、約1.5〜約2のMFI範囲が目標である。本発明の一つの非限定的な態様においては、Mz600,000で3.5のMFIは20%の製造速度の増加で許容可能なメルト強度を与える。
【0028】
他の目標は、一つの非限定的な態様においては約2.4よりも大きく、そして本発明のもう一つの非限定的な態様においては約3よりも大きい、分子量分布(MWD)を有するポリスチレンなどの重合製品を製造することを含む。加えて、更なる目標は、約500,000g/gモルよりも大きく、そして代替の非限定的な態様においては約600,000g/gモルよりも大きいz−平均分子量(Mz)を有するポリスチレンなどの重合製品を提供することである。分子量を測定する一つの方法は、Waters Corp.(Milford Ma.)から入手し得るサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)と呼ばれる。この標準的な方法は、Mw/Mn=1.1〜1.3の狭い分子量標準と580〜7,000,000ダルトンのMn範囲を用いてクロマトグラフカラムを較正することである。Mzは計算される数であるので、較正されるものよりも大きい可能性がある;しかしながらMzの上限はすべての実用的な目的には8,000,000である。一般に、ポリマーを製造する場合には、最小の平均分子量が目標であり、そしてそれよりも高い平均分子量が通常充分に許容可能である。通常、本発明の目的の最低のMn値は60,000であり、本発明の配合物に対する可能な最高Mz/Mn比は恐らくMz/Mn比=133である。本発明の方法で使用される条件に対する最高のMw/Mn比は約4であり、可能性としては約5までである。本発明の一つの非限定的な態様においては、約95,000のMn、約330,000のMwおよび約500,000のMzが望ましい値である。このような値は、約3.5のMw/Mn、約1.8のMz/Mwおよび約5.3のMz/Mnの好ましい比を与える。本発明の代替の非限定的な態様においては、Mw/Mnに対する好適な範囲は約2.5〜約4であり、Mz/Mwに対しては約1.5〜約2.5であり、そしてMz/Mnに対しては約4〜約8である。
【0029】
更には、本発明のもう一つの非限定的な態様においては、比Mz/Mnは約4.1以上、別法としては約6.0以上であり得る。加えて、本発明のもう一つの非限定的な態様においては、比Mz/Mwは約1.7以上、別法としては約2.5以上であり得る。
【0030】
本発明のポリスチレンはポリマーフォームの製造に特に好適である。ポリマーフォームの製造においては、このポリマーは発泡剤と混和され、そしてこの発泡剤はポリマーの密度を低下させる気泡を生成する機能をする。ポリマー発泡物の生成に有用な発泡剤は、気体およびブタン、二酸化炭素、クロロフルオロカーボン、フルオロカーボン、ペンタン、およびヘキサンなどの発泡条件下で気体である液体を含む。本発明のもう一つの非限定的な態様においては、この発泡剤は比較的高い蒸気圧の発泡剤、例えばCOである。本発明のポリスチレンは、優れたメルト強度を有し、これによってこのポリマーは発泡剤を更に効率的に保持することが可能となり、加工時間と原材料コストを低下させることにより、製造コストを低下させることができる。
【0031】
本発明の一つの非限定的な態様においては、この連鎖移動剤は、好ましくはメルカプタン族の一員である。特に有用なメルカプタンは、必ずしも限定ではないが、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン(NDM)、t−ドデシルメルカプタン、トリデシルメルカプタン、テトラデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、t−ノニルメルカプタン、エチルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン、ベンジルメルカプタンおよびこれらの混合物を含む。有利な態様においては、この連鎖移動剤の濃度は、ビニル芳香族モノマーの全量基準で重量で約0ppm〜約800ppmの、本発明の一つの態様においては約800ppmまでの、そして本発明のもう一つの態様においては約25〜約800ppmの範囲であり得る。本発明のもう一つの非限定的な態様においては、この連鎖移動剤の濃度は約100ppm〜約400ppmの範囲であり得る。再度であるが、連鎖移動剤の濃度が低過ぎる場合には、貯蔵弾性率G’は改善されず、そして存在する場合にはDVB(ジビニルベンゼン)の存在によりゲル化が起こり得る。しかしながら、この濃度が高過ぎる場合には、生成ポリマーの分子量Mwが低くなり過ぎて、しかるべき製品の製造に使用できない。
【0032】
一つの態様においては、このビニルベンゼンはスチレンであり得、そして随意の架橋剤はジビニルベンゼン(DVB)であり得る。他の好適な架橋剤は、必ずしも限定ではないが、1,9−デカジエン;1,7−オクタジエン;2,4,6−トリアリルオキシ−1,3,5−トリアジン;ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA);エチレングリコールジアクリレート;エチレングリコールジメタクリレート;トリエチレングリコールジアクリレート;テトラエチレングリコールジメタクリレート;およびこれらの混合物を含む。当分野の専門家ならば、置換ビニルベンゼンと置換ジビニルベンゼン分子または他の三官能性あるいは四官能性モノマーも架橋剤として使用され得るということを理解する。この混合物中の架橋剤の濃度は変わり得る。しかしながら、好ましい態様においては、この架橋剤の濃度は、一つの非限定的な態様においては約0ppm〜約400ppmの、代替の態様においては400ppmまでの、更にもう一つの態様においては約25〜約400ppmの範囲であり得、そしてもう一つの非限定的な態様においては約25ppm〜約250ppmの範囲であり得る。この架橋剤の濃度が低過ぎる場合には、生成ポリマーの分子量Mwが低くなり過ぎ、この架橋剤の濃度が高過ぎる場合には、前述したようにゲル化が起こり得る。
【0033】
高度に分岐したポリスチレンおよびHIPSの製造に多官能性開始剤が連鎖移動剤および架橋剤と一緒に使用可能であるということが見出された。この連鎖移動剤および/または架橋剤は開始剤のモノマーへの添加の前、間、後に添加され得る。
【0034】
DVBおよびNDMと組み合わせて四官能性開始剤を低官能性開始剤を使用することにより、米国特許第6,353,066号(引用によりこの明細書に組み込まれている)で開示されている分岐構造物の製造のためにジビニルベンゼン(DVB)およびn−ドデシルメルカプタン(NDM)の存在下で行われるスチレンなどのビニル芳香族モノマーの重合を改善することができることも見出された。メルト流動性の最適化に好適な条件を決めるのに広範な試験が行われてきたが、驚くべきことには、所望の分子パラメーターを得る一方で速度の増加を生じることができるということが見出された。
【0035】
本発明のもう一つの代替の態様は、このビニル芳香族モノマー中にスチレン−ブタジエン−スチレンコポリマーを溶解あるいは組み込むことを含む。本発明の一つの態様においては、本発明の方法により有用なスチレン−ブタジエン−スチレンコポリマーは、一般式
S−B−S
を有するものであり、ここでSはスチレンであり、Bはブタジエンまたはイソプレンである。本発明のもう一つの態様においては、このスチレン−ブタジエン−スチレンコポリマーは、
一般式(SB)
を有するものであり、ここでXはカップリング剤の残基を表し;そしてnは1より大きい。このようなラジアルスチレン−ブタジエン−スチレンコポリマーを使用する本発明の第1の態様においては、nは約2〜約40の範囲の整数である。もう一つのこのような態様においては、nは約2〜4または5の範囲の整数である。本発明の方法により有用なスチレン−ブタジエン−スチレンコポリマーは約2,000〜約300,000ダルトンの範囲の分子量を有することができる。本発明の一つの態様においては、本発明の方法により有用なスチレン−ブタジエン−スチレンコポリマーは約50,000〜約250,000ダルトンの分子量を有する。なおもう一つの態様においては、本発明の方法により有用なスチレン−ブタジエン−スチレンコポリマーは約75,000〜約200,000ダルトンの分子量を有する。
【0036】
本発明の目的には、用語スチレン−ブタジエン−スチレンはブタジエン樹脂がイソプレンであり組成物を含み、ブタジエン要素がブタジエンまたはもう一つの共役ジエンの混合物である組成物も含む。大多数のS−B−SコポリマーはB樹脂としてブタジエンを使用するが、いかなる共役ジエンもこの出願中で使用可能であり、そしてこの特許請求範囲内にある。
【0037】
本発明により有用なスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーは少なくとも50パーセントのスチレン含量を有する。一つの態様においては、本発明により有用なスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーは約60〜約80パーセントのスチレン含量を有する。もう一つの態様においては、本発明により有用なスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーは約65〜約75パーセントのスチレン含量を有する。
【0038】
本発明により有用なスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーはテーパードブロック構造を有し得、そして少なくともある態様においては、部分的に水素化されていることもあり得る。テーパードブロックコポリマーにおいては、各ブロックは圧倒的に一方の樹脂、SまたはBのみを含有すべきである。各ブロック中では、非過半量あるいは少量の樹脂の存在は5重量パーセント未満である。水素化されている場合には、このスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーは、このコポリマーのブタジエンセグメントから除去される残存不飽和基の一部あるいは大部分を有する。本発明により有用なスチレン−ブタジエン−スチレンコポリマーの例は、ATOFINAにより販売されている商品名FINACLEARRおよびFINAPRENERで販売されているもの、KRATON POLYMERS LLPにより販売されているKRATON(登録商標)ポリマー;およびB&K Resins,Ltdにより販売されているK−Resinsを含む。
【0039】
この明細書中で場合によっては使用されるスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーの好適な比率は、約10%までの、もう一つの非限定的な態様においては約7%までの、そして第3の非限定的な態様においては約3%までの範囲である。
【0040】
本発明のしかるべき組成物の製造においては、バッチあるいは連続重合は97:3〜91:9のスチレン:ゴム、85:15〜80:20の通常のスチレン:溶剤混合物中で60〜80%のポリスチレンへのスチレン転換率まで実施可能であり、次に未反応モノマーと溶剤を留去する。非限定的な通常の配合物においては、3〜12%のゴムをスチレンに溶解し、次に約10%のエチルベンゼンを90:10スチレン:エチルベンゼンとして添加する。このエチルベンゼンを希釈剤として使用する。他の炭化水素も溶剤または希釈剤として使用することができる。本発明のもう一つの非限定的な態様においては、この重合を約110℃と約185℃の間の温度で;別法としては約110℃と約170℃の間の温度で行う。主題の組成物の製造において従うべき可能な温度プロフィールは、一つの非限定的な態様においては約110℃で約120分間、約130℃で約60分間、および約150℃約60分間である。次に、このポリマーを乾燥し、慣用の手段により溶媒除去する。本発明の説明にはバッチ重合を使用するが、説明される反応は引用により本明細書に組み込まれている、SosaおよびNicholsにより米国特許第4,777,210号で述べられているものとして連続ユニットで実施可能である。
【0041】
本発明は実施例に関して更に説明されるが、これは単に本発明の更なる例示であって、そしていかなる形でも本発明の限定ではないように意図されたものである。
【実施例】
【0042】
[実施例1〜9]
この実施例においては、低メルトフロークリスタルポリスチレンを製造するための配合物を製造した。単官能性ペルカーボネート(TAEC)と四官能性ペルカーボネート(JWEB50)を慣用の開始剤L531およびL533と組み合わせてスクリーニングした。使用した標準の開始剤組成物は200ppmのL531と50ppmのL533であった。四官能性開始剤JWEB50は予期したように分子量を増大させるように思われる。
【0043】
この目的は低メルトフロークリスタルポリスチレンにおける製造速度の増加においてこの速度を使用することであった。開始剤の異なる組み合わせを比較して、低メルトフロークリスタルポリスチレン(PS)の製造における本発明で使用したL531およびL533の組み合わせによる重合速度を研究した。バッチ重合下で低メルトフロー材料の製造に使用した実験室条件を使用した。使用したこのランプ昇温条件は100℃で70分;110℃で180分;120℃で75分;および130℃で80分であった。これらのランプ昇温条件は、2.0に近いメルトフローのクリスタルPSを得るように設計されたものであり、別な反応器中CSTR条件下で如何なる%PS転換率を期待することができるのかを必ずしも明らかにするものでない。これらの反応における最終転換率は80〜90%の範囲内にある。この反応器試料を標準条件下で溶媒除去する。各ランプ昇温の終わりで、そして更には110℃ランプ昇温の中点(90分)において%PS転換率用の試料を採取した。比較したすべての開始剤に対して等量レベルのペルオキシドを使用した。使用したL533の置き換えはJWEB50であり、そしてJWEB50とTAECはL531に対する新しい開始剤の置き換えであった。
【0044】
【表1】

TAECとJWEB50を本発明で使用した開始剤と組み合わせて使用されるペルカーボネートとして選択した。全体の結果を表IIに示す。単官能性TAECはL531と互換的に使用可能であり、TAECは単官能性開始剤であるが、初期の反応器中での若干高い重合速度に対する潜在性があることが判明した。TAEC/L531/L533開始剤の組み合わせ(実施例9)は標準のL531/L533の組み合わせ(実施例1)に匹敵する重合速度をもたらし、JWEB50の組み合わせ(実施例4、5、6および7)による速度は若干低かった。L231による重合速度はL531に対するものに比べて低い。この結果は、使用温度範囲においてL533(実施例7)よりも活性であるTAECおよびJWEB50の添加によりL231の短寿命が補償可能であるということを示す。
【0045】
【表2】

低メルトフロークリスタルポリスチレン(慣用の開始剤のL531およびL533を用いる)に対する標準の配合物と新しい開始剤を用いる配合物との比較は、同等のペルオキシド量を使用する限り新しい開始剤を用いる配合物の最良のものが現在使用されている配合物と同等の性能を示すということを示唆する。単官能性ペルカーボネートTAECによるL531の一部の置き換えは本質的に同一の速度をもたらしたが、この新しい組み合わせによって分子量が更に高くなったように見える。TAECが単官能性であるので、この結果は予期されないものである;この結果は、現行の理解を用いて予測するのがしばしば困難である他の相互作用が起こるということを強く示唆する。L533(実施例5)の代わりに四官能性のJWEB50を使用することは、実験的条件下で高分子量をもたらす。単官能性開始剤(例えば、TAEC)および四官能性開始剤(JWEB50)の組み合わせの使用もL531およびL533の組み合わせ(実施例6)を置き換えるための有望な開始剤系ももたらす。
[実施例10〜13]
【0046】
試験した第1の添加レベルは500ppmであった。このレベルに対しては、等しい活性酸素量のL531をこの配合物から除去した。この導入は、目標に合致するのに充分高いものではないが、z−平均分子量と、この分布の両方を直ちに増大させた。実施例12および13におけるように、JWEBの使用量の更なる増加は、z−平均分子量と分布を増大させ、そして分子量分布の目標には合致するが、z−平均分子量の目標には不足する材料を生じた。
【0047】
【表3】

[実施例14〜20]
【0048】
これらの実施例においては、JWEBおよびLuperox531の組み合わせ物を用いて、そして本発明のいくつかの態様においては随意の更なる樹脂であることができる少量のFinaclear 530、ジ−ブロックポリスチレン−ブタジエンコポリマーを別の実験として使用することにより、高Mz材料を製造した。両方のアプローチは長鎖分岐の量を増加させることが知られている。連鎖移動剤NDMを使用して、メルトフローを増加させ、そして分子量分布を広くする。
【0049】
NDMの添加はメルトフローを増加させ、そして分子量分布を広くした。この配合物により材料を製造した後、異なる高分子量PSベース樹脂配合物(実施例18)にFinaclear530を添加して、もう一つの試験を行った。先行の研究において少量の5重量%未満のFinaclear530の添加がMzを増加させることが示された。
【0050】
この実施例の要約と最終ペレットの分析を表IVに示す。実施例14は、Luperox531およびLuperox533を用いて実施例10に類似した高分子量クリスタルPSに対する基準を確立した。第2の実験(実施例15)においてL533を無くし、そしてJWEB50を400ppmで置換することは極めて高いMz値を生じたが、単独では分子量分布を拡げたり、あるいは高いメルトフローを生じることはなかった。メルトフローを増加させ、そして分布を拡げるために、NDMを添加した。メルトフローおよび分布に望ましい効果を生じる一方で、NDMの導入は、Mzを目標の分子量以下に大幅に低下させた。Mzを増加させるために、温度を低下して、実施例17におけるのと同一の転換率を維持する一方で、滞留時間をプレポリマーで増加させた。これはMzにプラスの影響を及ぼしたが、顕著なものでなかった。
【0051】
少割合のジ−ブロックポリスチレン−ブタジエンポリマー(Finaclear530)の添加はMzを増加させるというポリスチレンの研究の過去の実験に留意して、次の実験をこのアプローチに集中した。実施例18においていくらか異なった高分子量PSに対する第2の基礎を取得した後、第1の反応器にNDMを添加しながら、2%のFinaclear530をこの配合物に添加した。これは目標範囲から外れたメルトフローを生じた。NDMを無くすことは、この目標メルトフローの達成を可能とさせ、そして高Mzを生じた。Finaclearの使用によりMzが後反応器および溶媒除去区分中で増加することを注目することは興味深いことであった。これは、高温度でのグラフトによると考えられる。
【0052】
【表4】

[実施例21〜25]
【0053】
低発泡フォーム用途において使用するポリスチレンを提供することは継続的な目標である。このポリスチレンは600,000g/gモルを超えるz−平均分子量を有するものでなければならず、そしてMWDは3.0よりも大きい。この材料は、よく知られたRheoten溶融延伸装置により測定して225℃の初期温度において0.08Nのメルト強度を有するものでなければならない。実施例19および20を上記のように行って、スチレン/ブタジエンコポリマーのFinaclear530の導入により分子量を増加させた。目標のメルト強度に接近するFinaclearの必要量は7%であった。Finaclearによる前述のランのほかに、少量のジイソプロペニルベンゼンおよびイソプロペニルスチレン、ジビニルベンゼン(DVB)および四官能性開始剤のJWEBを含有するtert−ブチルスチレン(TBS)による更なるランを行った。
【0054】
実施例の要約およびペレットの分子量、メルトフロー、ならびに製品のいくつかのメルト強度を表Vに示す。この実験の目標を決めたなら、各ラン時に、後反応器中の製造速度と圧力の両方を注目することが重要であった。実施例14に匹敵する高分子量PSおよび実施例18に匹敵する高分子量PSの両方の基準製造に対する工程条件は、第1の2つの欄、すなわち実施例21および22に示される。実施例23は600ppmのJWEB、300ppmのDVB、および100ppmのNDMを含有するものであった。後反応器中の圧力は実施例21に匹敵するものであったが、製造速度は40%高かった。メルト強度は実施例21のそれ程は高くなかったが、メルトフローはずっと高かった。以降のランの実施例24において860ppmのJWEBを導入した。これは目標に合致する必要なメルト強度を生じた。4%Finaclearと400ppmのJWEBの組み合わせも実施例25において類似のメルト強度を与えた。
【0055】
【表5】

本発明の樹脂は、増大した分岐、高Mzおよび高MWDが必要とされるフォーム用途における使用を見出すと予期される。特定のフォーム用途は、必ずしも限定ではないが、インシュレーションフォームボード、カップ、皿、食品包装を含む。本発明のスチレンベースのポリマーは、他の射出成形あるいは押し出し成形物品における使用を見出すと予期される。このように、本発明のスチレンベースのポリマーは、射出成形、押し出し成形またはシート成形用の材料として広くかつ効果的に使用され得る。本発明のポリマー樹脂が必ずしも限定ではないが、家庭用品、電気製品などを含む種々の異なる製品に分野における成形材料として使用可能であるということも予期される。
【0056】
前出の明細書においては、本発明は、これらの特定の態様を引用して説明され、そして種々の官能基の付いた開始剤の組み合わせ物を用いてポリマーを製造する方法の提供において有効であると示された。しかしながら、添付の特許請求の範囲に示すような本発明の範囲から逸脱することなく、それに対する種々の改変および変更を行うことができるということは明白である。従って、この明細書は限定的な意味でなく例示的な意味でみなされるべきである。例えば、ビニル芳香族モノマー、多官能性ペルオキシド開始剤、低官能性開始剤、連鎖移動剤、架橋剤、スチレン−共役ジエン−スチレンブロックコポリマーおよび特許請求されているパラメーターの内に入るが、特別のポリマー系において特に同定あるいは試行されていない他の樹脂特定の組み合わせ物または量は、本発明の範囲内にあると期待され、予期される。更には、本発明の方法は、この明細書中に例示されているもの以外の条件、特に温度、圧力および比率の条件において機能するように予期される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三官能性および四官能性開始剤からなる群から選択される少なくとも1つの多官能性開始剤と、二官能性および単官能性開始剤からなる群から選択される少なくとも1つの低官能性開始剤の存在下で少なくとも1つのビニル芳香族モノマーを重合させ、そしてこの重合製品を発泡剤により発泡させ;そして少なくとも約400,000のMzおよび約3よりも大きいMFIおよび約2.5〜約4.0のMWDを有する発泡された重合製品を回収することを含んでなる、発泡された重合製品を製造する方法。
【請求項2】
ビニル芳香族モノマーがスチレンである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
多官能性開始剤がトリ−あるいはテトラキスt−アルキルペルオキシカーボネート、トリ−あるいはテトラキス(ポリエーテルペルオキシカーボネート)、トリ−あるいはテトラキス−(t−ブチルペルオキシカルボニルオキシ)メタン、トリ−あるいはテトラキス−(t−ブチルペルオキシカルボニルオキシ)ブタン、トリ−あるいはテトラキス(t−アミルペルオキシカルボニルオキシ)ブタンおよびトリ−あるいはテトラキス(t−C4−6アルキルモノペルオキシカーボネート)、およびこれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
多官能性開始剤がこのビニル芳香族モノマー基準で約100〜約1200ppmの範囲の量で存在する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
重合製品が多官能性開始剤を使用しないことを除いて他の点では同一の方法により製造される重合製品と比較して更に高分岐である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
低官能性開始剤が単官能性および二官能性ヒドロペルオキシド、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシエステル、ペルオキシケタール、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ジアゾ化合物、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシエステル、ジアルキルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルケタール、およびこれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
低官能性開始剤がこのビニル芳香族モノマー基準で約50〜約1000ppmの範囲の量で存在する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ビニル芳香族モノマーを少なくとも1つの連鎖移動剤の存在下で重合させることを更に含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
連鎖移動剤がメルカプタンである請求項1に記載の方法。
【請求項10】
連鎖移動剤がn−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン(NDM)、t−ドデシルメルカプタン、トリデシルメルカプタン、テトラデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、t−ノニルメルカプタン、エチルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン、ベンジルメルカプタンおよびこれらの混合物からなる群から選択される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
連鎖移動剤がビニル芳香族モノマー基準で約800ppmまでの量で添加される請求項9に記載の方法。
【請求項12】
モノマーの重合において、重合が約110℃と約185℃の間の温度で行われる請求項1に記載の方法。
【請求項13】
2つ以上のビニル基の付いた多官能性モノマーからなる群から選択される架橋剤の存在下でビニル芳香族モノマーを重合させる請求項1に記載の方法。
【請求項14】
架橋剤がジビニルベンゼン(DVB)、1,9−デカジエン、1,7−オクタジエン、2,4,6−トリアリルオキシ−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、およびこれらの混合物からなる群から選択され、そして架橋剤の濃度がビニルモノマー基準で約25ppm〜約400ppmの範囲である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーの更なる存在下でビニル芳香族モノマーを重合させることを更に含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項16】
スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーが一般式
S−B−S
(ここで、Sはスチレンであり、そしてBはブタジエンまたはイソプレンである)を有する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーが一般式
(SB)
(ここで、Xはカップリング剤の残基を表し、そしてnは1より大きい)
を有する請求項15に記載の方法。
【請求項18】
スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーが約2,000〜300,000ダルトンの分子量範囲を有する請求項16に記載の方法。
【請求項19】
スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーが少なくとも50パーセントのスチレン含量を有する請求項15に記載の方法。
【請求項20】
スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーがテーパードブロックコポリマーである請求項15に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つのビニル芳香族モノマー、三官能性および四官能性開始剤からなる群から選択される少なくとも1つの多官能性開始剤、および二官能性および単官能性開始剤からなる群から選択される少なくとも1つの低官能性開始剤、および少なくとも1つの連鎖移動剤、少なくとも1つの架橋剤、および少なくとも1つのスチレン−共役ジエン−スチレンブロックコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの更なる成分を含んでなるビニル芳香族モノマー樹脂。
【請求項22】
ビニル芳香族モノマーがスチレンである請求項21に記載の樹脂。
【請求項23】
多官能性開始剤がトリ−あるいはテトラキスt−アルキルペルオキシカーボネート、トリ−あるいはテトラキス(ポリエーテルペルオキシカーボネート)、トリ−あるいはテトラキス−(t−ブチルペルオキシカルボニルオキシ)メタン、トリ−あるいはテトラキス−(t−ブチルペルオキシカルボニルオキシ)ブタン、トリ−あるいはテトラキス(t−アミルペルオキシカルボニルオキシ)ブタンおよびトリ−あるいはテトラキス(t−C4−6アルキルモノペルオキシカーボネート)、およびこれらの混合物からなる群から選択される請求項21に記載の樹脂。
【請求項24】
多官能性開始剤がビニル芳香族モノマー基準で約100〜約1200ppmの範囲の量で存在する請求項21に記載の樹脂。
【請求項25】
重合製品が多官能性開始剤を使用しないことを除いて他の点では同一の方法により製造される重合製品と比較して更に高分岐である請求項21に記載の樹脂。
【請求項26】
低官能性開始剤がモノ−および二官能性ヒドロペルオキシド、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシエステル、ペルオキシケタール、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ジアゾ化合物、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシエステル、ジアルキルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルケタール、およびこれらの混合物からなる群から選択される請求項21に記載の樹脂。
【請求項27】
低官能性開始剤がビニル芳香族モノマー基準で約50〜約1000ppmの範囲の量で存在する請求項21に記載の樹脂。
【請求項28】
更なる成分がメルカプタンである連鎖移動剤である請求項21に記載の樹脂。
【請求項29】
連鎖移動剤がn−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン(NDM)、t−ドデシルメルカプタン、トリデシルメルカプタン、テトラデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、t−ノニルメルカプタン、エチルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン、ベンジルメルカプタンおよびこれらの混合物からなる群から選択される請求項28に記載の樹脂。
【請求項30】
連鎖移動剤がビニル芳香族モノマー基準で約800ppmまでの量で添加される請求項28に記載の樹脂。
【請求項31】
更なる成分が2つ以上のビニル基の付いた多官能性モノマーからなる群から選択される架橋剤である請求項21に記載の方法。
【請求項32】
架橋剤がジビニルベンゼン(DVB)、1,9−デカジエン、1,7−オクタジエン、2,4,6−トリアリルオキシ−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、およびこれらの混合物からなる群から選択され、そして架橋剤の濃度がビニルモノマー基準で約25ppm〜約400ppmの範囲である請求項31に記載の樹脂。
【請求項33】
更なる成分がスチレン−共役ジエン−スチレンブロックコポリマーであり、共役ジエンがブタジエンである請求項21に記載の樹脂。
【請求項34】
スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーが一般式
S−B−S
(ここで、Sはスチレンであり、そしてBはブタジエンまたはイソプレンである)を有する請求項33に記載の樹脂。
【請求項35】
スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーが一般式
(SB)
(ここで、Xはカップリング剤の残基を表し、そしてnは1より大きい)を有する請求項33に記載の樹脂。
【請求項36】
スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーが約2,000〜300,000ダルトンの分子量範囲を有する請求項33に記載の樹脂。
【請求項37】
スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーが少なくとも50パーセントのスチレン含量を有する請求項33に記載の樹脂。
【請求項38】
スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーがテーパードブロックコポリマーである請求項33に記載の樹脂。
【請求項39】
三官能性および四官能性開始剤からなる群から選択される少なくとも1つの多官能性開始剤と、二官能性および単官能性開始剤からなる群から選択される少なくとも1つの低官能性開始剤の存在下で少なくとも1つのビニル芳香族モノマーを少なくとも1つのポリジエンと重合させ、重合製品を回収することを含んでなる方法により製造されるビニル芳香族/ジエングラフトコポリマー。
【請求項40】
ビニル芳香族モノマーをポリジエンと重合させることにおいて、ビニル芳香族モノマーがスチレンであり、そしてポリジエンがブタジエンである請求項39に記載のコポリマー。
【請求項41】
ビニル芳香族モノマーをポリジエンと重合させることにおいて、この多官能性開始剤がトリ−あるいはテトラキスt−アルキルペルオキシカーボネート、トリ−あるいはテトラキス(ポリエーテルペルオキシカーボネート)、トリ−あるいはテトラキス−(t−ブチルペルオキシカルボニルオキシ)メタン、トリ−あるいはテトラキス−(t−ブチルペルオキシカルボニルオキシ)ブタン、トリ−あるいはテトラキス(t−アミルペルオキシカルボニルオキシ)ブタンおよびトリ−あるいはテトラキス(t−C4−6アルキルモノペルオキシカーボネート)、およびこれらの混合物からなる群から選択される請求項39に記載のコポリマー。
【請求項42】
共重合された製品が多官能性開始剤を使用しないことを除いて他の点では同一の方法により製造される重合製品と比較して更に高分岐である請求項39に記載のコポリマー。
【請求項43】
多官能性開始剤がビニル芳香族モノマー基準で約100〜約1200ppmの範囲の量で存在する請求項39に記載のコポリマー。
【請求項44】
低官能性開始剤が単官能性および二官能性ヒドロペルオキシド、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシエステル、ペルオキシケタール、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ジアゾ化合物、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシエステル、ジアルキルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルケタール、およびこれらの混合物からなる群から選択される請求項39に記載のコポリマー。
【請求項45】
低官能性開始剤がビニル芳香族モノマー基準で約50〜約1000ppmの範囲の量で存在する請求項39に記載のコポリマー。
【請求項46】
重合がメルカプタン連鎖移動剤の更なる存在下で行われる請求項39に記載のコポリマー。
【請求項47】
連鎖移動剤がn−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン(NDM)、t−ドデシルメルカプタン、トリデシルメルカプタン、テトラデシルメルカプタン、ヘキサデシルメルカプタンおよびこれらの混合物からなる群から選択される請求項46に記載のコポリマー。
【請求項48】
連鎖移動剤がビニル芳香族モノマー基準で約800ppmまでの量で存在する請求項46に記載のコポリマー。
【請求項49】
ビニル芳香族モノマーをポリジエンと重合させることにおいて、重合が約110℃と約185℃の間の温度で行われる請求項39に記載のコポリマー。
【請求項50】
ビニル芳香族モノマー:ポリジエンの重量比が約97:3〜約85:15の範囲である請求項39に記載のコポリマー。
【請求項51】
製品を回収することにおいて、共重合製品が高衝撃ポリスチレン(HIPS)である請求項39に記載のコポリマー。
【請求項52】
重合が2つ以上のビニル基の付いた多官能性モノマーからなる群から選択される架橋剤の更なる存在下で行われる請求項39に記載のコポリマー。
【請求項53】
ポリジエンがスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーの一部である請求項40に記載のコポリマー。
【請求項54】
スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーが一般式
S−B−S
(ここで、Sはスチレンであり、そしてBはブタジエンまたはイソプレンである)を有する請求項53に記載のコポリマー。
【請求項55】
スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーが一般式
(SB)
(ここで、Xはカップリング剤の残基を表し、そしてnは1より大きい)を有する請求項53に記載のコポリマー。
【請求項56】
スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーが約2,000〜300,000ダルトンの分子量範囲を有する請求項53に記載のコポリマー。
【請求項57】
スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーが少なくとも50パーセントのスチレン含量を有する請求項53に記載のコポリマー。
【請求項58】
スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーがテーパードブロックコポリマーである請求項53に記載のコポリマー。
【請求項59】
請求項21に記載のビニル芳香族モノマー樹脂により製造される発泡物品。
【請求項60】
物品がインシュレーションボード、カップ、皿および食品包装物品からなる群から選択される請求項59に記載の発泡物品。
【請求項61】
請求項39に記載のビニル芳香族/ジエングラフトコポリマーにより製造される発泡物品。
【請求項62】
物品がインシュレーションボード、カップ、皿および食品包装物品からなる群から選択される請求項61に記載の発泡物品。

【公表番号】特表2007−537330(P2007−537330A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513165(P2007−513165)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/013592
【国際公開番号】WO2005/113658
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(391024559)フイナ・テクノロジー・インコーポレーテツド (98)
【氏名又は名称原語表記】FINA TECHNOLOGY, INCORPORATED
【Fターム(参考)】