説明

ペースト塗布装置およびペースト塗布方法

【課題】ガラスペーストの塗布高さを所定の誤差範囲に好適に維持できるペースト塗布装置およびペースト塗布方法を提供することを課題とする。
【解決手段】ノズル55aの始点Psから始端部101Sを形成する部分ではノズル高さNhを基準塗布高さStdHより低くしてノズル55aが移動し、ノズル55aの終点Peまでの終端部101Eを形成する部分では、ノズル高さNhを基準塗布高さStdHより高くしてノズル55aが移動し、始端部101Sが形成される部分および終端部101Eが形成される部分以外の部分ではノズル高さNhを基準塗布高さStdHとしてノズル55aが移動し、さらに、始端部101Sと終端部101Eの少なくとも一部でガラスペーストGpが重なって塗布されるようにノズル55aが移動することを特徴とするペースト塗布装置およびペースト塗布方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板にペーストを塗布するペースト塗布装置およびペースト塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Electro Luminescence)パネルの製造工程において、有機EL素子が蒸着された基板に封止用のガラス(封止ガラス)を貼り合わせる工程では、基板にペースト(ガラスペースト)を塗布して封止ガラスを貼り合せ、レーザビームをガラスペーストに照射して接合する。
この工程では、基板に塗布されるガラスペーストの高さ(塗布高さ)に高精度の均一性が要求されるため、印刷法によって基板にガラスペーストが塗布されることが多い。
【0003】
印刷法は、ガラスペーストを塗布するパターン(塗布パターン)が形成されたスクリーンを通してガラスペーストを基板に塗布する構成であり、塗布パターンの形状ごとにスクリーンが必要になるという問題がある。
また、スクリーンは極薄の部材であるため製造可能な大きさに限界がある。したがって、スクリーンを用いた印刷法で製造される有機ELパネルの大きさが制限されるという問題がある。
さらに、スクリーンは塗布パターンの部分のガラスペーストを基板に塗布する構成であり、塗布パターンが形成される部分以外はマスクされる部分となる。そしてマスク部分のガラスペーストは残留するため、この残留するガラスペーストが余剰分(無駄)となりガラスペーストの使用効率が低下するという問題がある。
【0004】
このような印刷法の問題点を解消してガラスペーストを塗布する方法として、塗布パターンに沿って移動するノズルからガラスペーストを基板に塗布する方法が知られている。
例えば特許文献1には、前回ペーストを塗布したときのノズル高さに基づいて2回目以降にペーストを塗布するときのノズル高さを調節しながらノズルを移動してペーストを塗布するペースト塗布装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−316082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ノズルを移動してペーストを塗布する場合、基板に蒸着された有機EL素子の周囲にペーストを連続して切れ目なく塗布するためには、ノズルが移動を開始する始点とノズルが移動を終了する終点の間でガラスペーストが重なって塗布される(オーバーラップする)構成が好ましい。この構成によって、始点と終点の間でペーストの塗布が途切れることがなくペーストを切れ目なく連続して塗布できる。しかしながら、オーバーラップする部分において、先に塗布されたガラスペーストにノズルが接触するとガラスペーストが削り取られ、さらに、削り取られたガラスペーストが先に塗布されているガラスペーストに重なって塗布高さが高くなる。したがって、ガラスペーストの塗布高さを均一にできないという問題がある。
特許文献1に記載されるペースト塗布装置は、ノズルが移動を開始する始点とノズルが移動を終了する終点の間でペーストがオーバーラップして塗布されるときに、ノズルがペーストを削り取ることを回避することについて検討されていない。
【0007】
そこで、本発明は、ガラスペーストの塗布高さを所定の誤差範囲に好適に維持できるペースト塗布装置およびペースト塗布方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、ペーストを連続して塗布するノズルを移動して、前記ペーストを基板の平面における所定の領域の周囲に連続して塗布するペースト塗布装置とする。そして、前記ノズルが移動を開始する始点から所定長に亘る始端部では、前記基板から前記ノズルまでのノズル高さを所定の基準高さより低くして前記ノズルを移動し、前記ノズルが移動を終了する終点までの所定長に亘る終端部では、前記ノズル高さを前記基準高さより高くして前記ノズルを移動し、前記始端部および前記終端部以外の部分では前記ノズル高さを前記基準高さとして前記ノズルを移動し、さらに、前記始端部と前記終端部の少なくとも一部で前記ペーストが重なって塗布されるように前記ノズルを移動することを特徴とするペースト塗布装置とする。また、このようにペーストを塗布するペースト塗布方法とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、ガラスペーストの塗布高さを所定の誤差範囲に好適に維持できるペースト塗布装置およびペースト塗布方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ペースト塗布装置の斜視図である。
【図2】(a)は塗布ヘッドの側面図、(b)は塗布ヘッドの斜視図である。
【図3】(a)は蒸着部の周囲にガラスペーストを塗布する塗布パターンの第1パターンを示す図、(b)は蒸着部の周囲にガラスペーストを塗布する塗布パターンの第2パターンを示す図である。
【図4】(a)は第1パターンの始端部を示す図、(b)は第1パターンの終端部を示す図である。
【図5】(a)は第2パターンの始端部を示す図、(b)は第2パターンの終端部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、適宜図を参照して詳細に説明する。
本実施形態に係るペースト塗布装置100は、図1に示すように、架台1、フレーム2、固定部3A,3B、可動部4A,4B、塗布ヘッド5、基板8を載置する基板保持盤6、制御部9、モニタ11、キ一ボード12を含んで構成される。
また、架台1の長手方向をX軸、幅方向をY軸、高さ方向(上下方向)をZ軸とする座標軸を設定する。
なお、図1には1つの塗布ヘッド5が図示されているが、複数の塗布ヘッド5が備わるペースト塗布装置100であってもよい。
【0012】
また、架台1上には、固定部3A,3Bと可動部4A,4Bとを含んでなるX軸移動機構が設けられている。固定部3A,3Bは架台1の、例えばY軸方向の両端部にX軸方向に沿って固定されて可動部4A,4Bのガイド部材として機能する。可動部4Aは固定部3A上に、可動部4Bは固定部3B上に夫々移動可能に備わり、さらに、可動部4Aと可動部4Bとにまたがって(即ち、Y軸方向に沿って)フレーム2が設けられている。この構成によると、フレーム2は、Y軸方向に延伸するように備わる。
X軸移動機構は、ボールねじ機構やリニアモータなどの駆動装置によって可動部4A,4Bが固定部3A,3Bに沿って移動可能に構成される。
【0013】
フレーム2には、長手方向(即ち、Y軸方向)に移動可能に塗布ヘッド5が備わっている。以降、フレーム2の長手方向に塗布ヘッド5を移動するための移動機構をY軸移動機構と称する。Y軸移動機構は、ボールねじ機構やリニアモータなどの駆動装置によって塗布ヘッド5がフレーム2に沿って移動可能に構成される。
【0014】
また、架台1の上面で固定部3A,3Bの間の領域には、有機EL素子が蒸着部A1に蒸着された基板8を載置するテーブルとして基板保持盤6が備わっている。基板保持盤6は図示しない吸着機構等によって載置された基板8を固定可能に構成される。
さらに、架台1には、操作手段としてモニタ11やキーボード12が設けられ、ペースト塗布機100を制御する制御手段として制御部9が内蔵されている。
【0015】
また、ペースト塗布装置100には、空気を加圧して塗布ヘッド5に備わるペースト収納部(シリンジ55)に供給することによって、ガラスペーストGpをノズル55aから吐出するための圧力(吐出圧)をシリンジ55に供給する加圧源10が備わっている。
加圧源10は加圧配管10cを介して塗布ヘッド5に備わるシリンジ55に接続され、加圧した空気を供給してシリンジ55内を加圧し、塗布ヘッド5に吐出圧を供給する。加圧配管10cには加圧源10で加圧された空気を所望の圧力(吐出圧)に調圧する正圧レギュレータ10aと加圧された空気の流通を遮断するためのバルブ10bが備わっている。バルブ10bは制御部9からの制御信号に応じて加圧配管10cを開閉する電動式の開閉弁であって、バルブ10bが閉弁したときに加圧配管10cにおける空気の流通が遮断されるように構成される。
【0016】
図2の(a)、(b)に示すように、塗布ヘッド5は、フレーム2にY軸移動機構を介して駆動可能に取り付けられる基台部50を有し、基台部50にはフレーム2に備わるリニアスケール2aの検出器51が備わっている。リニアスケール2aはフレーム2の一方の側面にY軸方向に沿って延設され、これを検出する検出器51は、リニアスケール2aと対向するように基台部50に取り付けられる。制御部9(図1参照)は、検出器51がリニアスケール2aを検出した結果に基づいてY軸移動機構を制御することによって、塗布ヘッド5(ノズル55a)のY軸方向を位置制御する。なお、X軸移動機構にも図示しないリニアスケールと検出器が備わって塗布ヘッド5(ノズル55a)のX軸方向の位置制御が可能な構成であることが好ましい。
【0017】
塗布ヘッド5の基台部50にはZ軸サーボモータ52aが備わるZ軸ガイド52が取り付けられ、このZ軸ガイド52にはZ軸サーボモータ52aでZ軸方向(上下方向)に移動するZ軸テーブル53が取り付けられる。また、Z軸テーブル53にはガラスペーストGpを収納するためのペースト収納部(シリンジ55)が備わっている。さらに、シリンジ55には収納されたペースト(本実施形態においてはガラスペーストGp)を基板8(図1参照)に塗布するためのノズル55aと、基板保持盤6に載置された基板8からノズル55aまでの高さ(ノズル高さNh)を計測する距離計(例えば、光学式距離計54)と、が備わっている。
【0018】
図2の(b)に示す光学式距離計54は発光部と受光部を含んで構成され、発光部が基板8(図1参照)に向かって照射した光(レーザ光)が基板8で反射した反射光の受光量に基づいて基板8からノズル55aまでのノズル高さNhを計測する。
具体的には、ノズル高さNhが長くなるほど受光部による反射光の受光量が低下することから、光学式距離計54は、発光部での発光量に対する受光部での受光量の比率に基づいてノズル高さNhを計測するように構成される。
【0019】
Z軸サーボモータ52aは、Z軸テーブル53上に設置された光学式距離計54の計測値に基づく制御部9(図1参照)の制御によって、Z軸テーブル53を介してシリンジ55(ノズル55a)をZ軸方向、つまり上下方向に移動する。
【0020】
以上のように構成されるペースト塗布装置100(図1参照)は、例えば、図3の(a)に示すように、有機EL素子が蒸着された基板8に封止ガラスを接合するためのガラスペーストGpを塗布する装置であり、例えば略矩形の平面形状で有機EL素子が蒸着された蒸着部A1を所定の領域としてその周囲にガラスペーストGpを所定の高さ(塗布高さHt)で盛り上げるように塗布する。ペースト塗布装置100でガラスペーストGpが塗布された基板8は、次の工程で封止ガラスが貼り合わされた後、レーザビームがガラスペーストGpに照射されて封止ガラスが接合される。このとき、有機EL素子の蒸着部A1が真空状態となるように、封止ガラスは真空の作業環境で真空貼りされる。
【0021】
基板8に形成される有機EL素子の蒸着部A1はガラスペーストGpと封止ガラスによって真空状態が維持されることが要求され、ペースト塗布装置100(図1参照)は略矩形に有機EL素子が蒸着された蒸着部A1の周囲に連続して切れ目なくガラスペーストGpを塗布することが要求される。
例えば、ペースト塗布装置100の制御部9(図1参照)は、図3の(a)に示すように、基板8における有機EL素子の蒸着部A1の周囲の1点(白丸)をノズル55aの移動を開始する始点Psとし、始点Psまでノズル55aを移動させる。つまり、始点Psが蒸着部A1の周囲の1点として設定される。
さらに制御部9は加圧配管10cに備わるバルブ10b(図1参照)に制御信号を送信して開弁する。適宜調圧された空気が正圧レギュレータ10a(図1参照)からシリンジ55(図1参照)に供給されることによってシリンジ55に吐出圧が供給される。シリンジ55の内部は吐出圧によって昇圧し、収納されているガラスペーストGpが吐出圧によってシリンジ55から押し出され、ノズル55aから連続して塗布される。
【0022】
この状態で、制御部9(図1参照)は、ノズル55aを蒸着部A1の周囲に沿うように移動させる。ノズル55aをX軸方向に移動する場合、制御部9はX軸移動機構によって可動部4A,4B(図1参照)を固定部3A,3B(図1参照)に沿って移動させる。また、ノズル55aをY軸方向に移動する場合、制御部9はY軸移動機構によって塗布ヘッド5をフレーム2(図1参照)に沿って移動させる。
ノズル55aの移動にともなってノズル55aから塗布されるガラスペーストGpが蒸着部A1の周囲に連続的に塗布されてノズル55aの移動する軌跡に沿った塗布パターン(第1パターンPt1)が連続的に形成される。
【0023】
そして、ノズル55aが蒸着部A1の周囲を1周して始点Psの位置に戻ると、制御部9(図1参照)は、加圧配管10cに備わるバルブ10b(図1参照)に制御信号を送信して閉弁する。さらに、制御部9は、先に塗布されているガラスペーストGp上に沿ってオーバーラップするように、ノズル55aの移動を終了する終点Pe(白四角)までノズル55aを移動する。つまり、終点Peも蒸着部A1の周囲の1点として設定される。
バルブ10bが閉弁してシリンジ55(図1参照)への吐出圧の供給が停止されてもシリンジ55内は吐出圧の残圧による高圧の状態が続き、ノズル55aからのガラスペーストGpの塗布は継続される。そして、吐出圧の供給が停止されたシリンジ55の内部は徐々に減圧し、シリンジ55内部の減圧にともなってノズル55aからのガラスペーストGpの塗布量が減少し、シリンジ55の内部が大気圧程度まで減圧した時点でノズル55aからのガラスペーストGpの塗布が停止する。
【0024】
このようにガラスペーストGpが塗布される塗布パターンに、始点Psから終点Peまでの間にガラスペーストGpが重なって塗布されるオーバーラップ部101を設けることによって、蒸着部A1の周囲に連続的な切れ目のない矩形の第1パターンPt1をガラスペーストGpの塗布で形成できる。
【0025】
または、図3の(b)に示すように、制御部9は、略矩形を呈する蒸着部A1の1つの辺の延長線上の一点に始点Ps(白丸)を設定し、始点Psまでノズル55aを移動させる。この構成によると、蒸着部A1の周囲から外方に外れた1点に始点Psが設定される。
さらに制御部9は加圧配管10cに備わるバルブ10b(図1参照)に制御信号を送信して開弁し、正圧レギュレータ10a(図1参照)から適宜調圧された空気をシリンジ55(図1参照)に供給する。シリンジ55に吐出圧が供給されてノズル55aからガラスペーストGpが連続的に塗布される。
【0026】
この状態で、制御部9(図1参照)は、ノズル55aを蒸着部A1の周囲に沿うように移動させる。ノズル55aから塗布されるガラスペーストGpが蒸着部A1の周囲に塗布されて、ノズル55aの移動する軌跡に沿った塗布パターン(第2パターンPt2)が連続的に形成される。そして、ノズル55aが蒸着部A1の周囲を1周して始点Psから蒸着部A1までガラスペーストGpが塗布されている部分(この部分を始端部101Sと称する)に達したとき、制御部9は始端部101Sを横切るようにノズル55aを移動させ、適宜決定する1点(白四角)を終点Peに設定してノズル55aを停止する。そして、制御部9は加圧配管10cに備わるバルブ10b(図1参照)に制御信号を送信して閉弁する。この構成によると、蒸着部A1の周囲から外方に外れた1点に終点Peが設定される。
【0027】
このようにガラスペーストGpが塗布される塗布パターンに、ガラスペーストGpが交差する交差点103(黒丸)を設けることによって蒸着部A1の周囲に、連続的な切れ目のない形状の第2パターンPt2をガラスペーストGpの塗布で形成できる。
【0028】
また、制御部9(図1参照)は第1パターンPt1または第2パターンPt2でガラスペーストGpを基板8に塗布するとき、基板8に塗布するガラスペーストGpの塗布高さHtにノズル高さNhを調節してノズル55aを移動する。
例えば、塗布高さHtの基準値(基準塗布高さStdH)を「30μm」とする場合、制御部9はノズル高さNhを基準塗布高さStdHの「30μm」に維持して、つまり、基準塗布高さStdHをノズル高さNhの基準高さとしてノズル55aを移動する。例えば制御部9は、光学式距離計54(図2の(a)参照)の計測値を取得し、この計測値が基準塗布高さStdH(30μm)となるようにZ軸テーブル53(図2の(a)参照)をZ軸方向(上下方向)に移動してノズル高さNhを「30μm」に維持する。
【0029】
封止ガラスを接合する工程において、レーザビームの照射によるガラスペーストGpの温度上昇を塗布パターン(第1パターンPt1、第2パターンPt2)の全周に亘って均一にするために、ガラスペーストGpの塗布高さHtが塗布パターンの全周に亘って均一であることが好ましい。そこで制御部9(図1参照)は、ノズル高さNhを精度よく基準塗布高さStdHに維持してノズル55a(図2の(a)参照)を移動するように構成される。
【0030】
このように、基板8に塗布されるガラスペーストGpの塗布高さHtが基準塗布高さStdH(例えば30μm)を維持するように、ガラスペーストGpの塗布によって塗布パターン(第1パターンPt1、第2パターンPt2)が形成される。
また、レーザビームによって封止ガラスを接合する工程において、レーザビームが照射されたガラスペーストGpの温度を塗布パターンの全集に亘って均一にして封止ガラスを好適に接合するために、塗布高さHtが精度よく誤差管理されることが要求される。例えば、塗布パターンの全周に亘って、「30μm」の基準塗布高さStdHに対して「±10μm」程度の誤差(以下、許容誤差ΔHtと称する)に塗布高さHtの変化を抑え込むことができると好適に封止ガラスを接合できる。
そこで、制御部9は基準塗布高さStdH(30μm)に対して許容誤差ΔHt(±10μm)の範囲で変動するようにノズル高さNtを制御して塗布パターンを形成するように構成される。
つまり、許容誤差ΔHtは、ガラスペーストGpの塗布高さHtに許容される誤差である。
【0031】
しかしながら、図3の(a)に示す第1パターンPt1では、オーバーラップ部101でガラスペーストGpの塗布高さHtが基準塗布高さStdHより高くなることがある。例えば、ノズル55aが始点Psから終点Peに向かって先に塗布されたガラスペーストGpと重なるように移動するとき、ノズル55aが先に塗布されたガラスペーストGpに接触するとガラスペーストGpがノズル55aによって削り取られる場合がある。この場合、ノズル55aの進行方向後方にはノズル55aから新たにガラスペーストGpが塗布されるが、進行方向前方はノズル55aによってガラスペーストGpが削り取られ、終点Peでノズル55aの移動が停止すると進行方向前方に相当する位置に削り取られたガラスペーストGpが蓄積して塗布高さHtが高くなることがある。
【0032】
また、図3の(b)に示す第2パターンPt2では、ガラスペーストGpが交差する交差点103で、ノズル55aが始端部101Sに塗布されているガラスペーストGpを削り取りながら移動する場合がある。この場合、始端部101Sに連続して蒸着部A1の周囲に塗布されているガラスペーストGpが始端部101Sとともに削り取られてガラスペーストGpの塗布高さHtが低くなることがある。
【0033】
そこで、本実施形態に係る制御部9(図1参照)は、ガラスペーストGpの塗布で形成される塗布パターンにおける始点Psおよび終点Peの近傍での塗布高さHtを好適に管理できるように塗布ヘッド5(ノズル55a)の動作を制御する。
【0034】
《第1実施形態》
本発明の第1実施形態は、図3の(a)に示す第1パターンPt1の形状にガラスペーストGpを塗布するための実施形態である。
第1パターンPt1の形状にガラスペーストGpを塗布するとき、制御部9(図1参照)は、始点Psでバルブ10b(図1参照)に制御信号を送信して開弁し、ノズル高さNhを基準塗布高さStdHより低く設定してガラスペーストGpの塗布を開始する。例えば、制御部9(図1参照)は、図4の(a)に示すように、塗布高さHtに許容される許容誤差ΔHtに相当する量だけ基準塗布高さStdHより低いノズル高さNhでガラスペーストGpを塗布する。この状態で制御部9は所定の長さ(第1所定長L11)だけ蒸着部A1(図1参照)の周囲に沿ってノズル55aを移動した後、ノズル高さNhが基準塗布高さStdHとなるようにノズル55aを上昇させる。始点Psから第1所定長L11の間は、基準塗布高さStdHより許容誤差ΔHtだけ低い塗布高さHtでガラスペーストGpが塗布される。
【0035】
第1実施形態においては、この、始点Psからの所定長(第1所定長L11)に亘る部分を始端部101Sと称する。つまり、制御部9(図1参照)は、ノズル高さNhを基準塗布高さStdHより許容誤差ΔHtに相当する量だけ低くしてノズル55aを移動し、蒸着部A1(図3の(a)参照)の周囲に沿って、第1所定長L11に亘る始端部101Sを形成する工程(始端部形成工程)を実行する。このことによって、始点Psからの第1所定長L11(始端部101S)に亘って、基準塗布高さStdHより許容誤差ΔHtだけ低い塗布高さHtでガラスペーストGpが塗布される。また、始端部101Sは蒸着部A1の周囲に沿って形成される。
そして、始端部形成工程は、蒸着部A1の周囲の1点を始点Psとし、蒸着部A1の周囲に沿ってノズル55aを移動して始端部101Sを形成する工程となる。
なお、始点Psから第1所定長L11に亘る部分の少なくとも一部で、ノズル高さNhを基準塗布高さStdHより許容誤差ΔHtに相当する量だけ低くしてノズル55aを移動する構成としてもよい。
例えば、オーバーラップ部101が形成される範囲だけ、ノズル高さNhを基準塗布高さStdHより許容誤差ΔHtに相当する量だけ低くしてノズル55aを移動する構成としてもよい。
【0036】
例えば、基準塗布高さStdHが「30μm」で許容誤差ΔHtが「±10μm」のとき、制御部9(図1参照)は始点Psから第1所定長L11に亘る部分(始端部101S)はノズル高さNhを「20μm(30μm−10μm)」としてガラスペーストGpを塗布する。その後、制御部9はノズル高さNhが基準塗布高さStdH(30μm)になるまでノズル55aを上昇させてガラスペーストGpを塗布する。
【0037】
ノズル55aが蒸着部A1(図3の(a)参照)の周囲を略一周し、図4の(b)に示すように始点Psから所定の長さ(第2所定長L12)だけ手前の位置に来たとき、制御部9(図1参照)は、バルブ10b(図1参照)を閉弁する工程を実行し、バルブ10bに制御信号を送信して閉弁する。
シリンジ55(図1参照)への吐出圧の供給が停止され、吐出圧の残圧によってシリンジ55に収納されるガラスペーストGpをノズル55aから塗布する。
バルブ10bを閉弁する工程は、ガラスペーストGpのノズル55aからの塗布を停止させる工程(塗布停止工程)であり、制御部9は、終端部101Eを形成する工程(終端部形成工程)の実行より先に、ガラスペーストGpの塗布を停止させる塗布停止工程を実行する。
【0038】
さらに、ノズル55aが始点Psから第2所定長L12より短い所定の長さ(第3所定長L13)の位置に来たとき、制御部9(図1参照)は、Z軸テーブル53(図2の(a)参照)を上昇させてノズル55aを上昇させ、ノズル高さNhを高くする。具体的に制御部9は、許容誤差ΔHtに相当する量だけノズル55aを上昇する。例えば、基準塗布高さStdHが「30μm」で許容誤差ΔHtが「±10μm」のとき、制御部9はノズル55aを10μmだけ上昇させ、基準塗布高さStdH(30μm)であったノズル高さNhを「40μm(30μm+10μm)」とする。このように、第1実施形態においては、基準塗布高さStdHより高いノズル高さNhでノズル55aが移動する部分を終端部101Eと称する。そして終端部101Eの長さを第4所定長さL14とする。つまり、終端部101Eは終点Peまでの第4所定長L14に亘る部分であり、蒸着部A1(図3の(a)参照)の周囲に形成される。また、第1パターンPt1では終端部101Eにおいて、少なくともその一部分に基準塗布高さStdHより許容誤差ΔHtだけ高い塗布高さHtでガラスペーストGpが塗布される。
【0039】
また、第1実施形態においては、ノズル高さNhが高くなる終端部101Eが形成されるより先に加圧源10(図1参照)からのシリンジ55(図1参照)への吐出圧の供給が停止される。
このときノズル55aからは吐出圧の残圧によってガラスペーストGpが塗布される。その状態で始点Psから先に塗布されたガラスペーストGpとオーバーラップするようにノズル55aが終点Peまで移動すると、ノズル55aから塗布されるガラスペーストGpが、先に塗布されているガラスペーストGpに重なって塗布されてオーバーラップ部101が形成される。
【0040】
このときのガラスペーストGpの塗布量はシリンジ55(図2の(a)参照)の残圧の大きさによって変動する量であって制御された塗布量ではない。しかしながら、オーバーラップ部101では、先に基準塗布高さStdHより許容誤差ΔHtだけ低い塗布高さHtでガラスペーストGpが塗布されているため、その上に新たにガラスペーストGpが重なって塗布される場合、塗布高さHtは基準塗布高さStdHより許容誤差ΔHtだけ低い高さ以上を確保できる。
【0041】
また、ノズル55aが終点Peに到達する前にシリンジ55の内部が略大気圧まで低下してガラスペーストGpの塗布が停止しても、基準塗布高さStdHより許容誤差ΔHtだけ低い塗布高さは確保できる。換言すると、塗布高さHtは始端部101Sで基準塗布高さStdHより許容誤差ΔHtを超えて低くなることがない。また、ノズル高さNhは、基準塗布高さStdHより許容誤差ΔHtに相当する量だけ高いことから基準塗布高さStdHより許容誤差ΔHtを超えてガラスペーストGpが塗布されることがない。以上のことから始端部101SにおいてガラスペーストGpの塗布高さHtを基準塗布高さStdHに対して許容誤差ΔHtの範囲内に抑えることができる。
【0042】
また、始端部101Sにおいて先に塗布されているガラスペーストGpの塗布高さHtが基準塗布高さStdHより高い場合であっても、始端部101Sと重なって移動するノズル55aのノズル高さHtが基準塗布高さStdHより許容誤差ΔHtに相当する量だけ高いことから、始端部101Sに先に塗布されたガラスペーストGpとノズル55aとの接触が防止され、ノズル55aによってガラスペーストGpが削り取られることがない。したがって、ノズル55aで削り取られるガラスペーストGpによって塗布高さHtが高くなることが防止される。
【0043】
なお、始端部101Sの所定長(第1所定長L11)、バルブ10b(図1参照)が閉弁される始点Psからの第2所定長L12、ノズル55aを上昇させる始点Psからの第3所定長L13、および、終端部101Eの所定長(第4所定長L14)は、事前の実験計測等によって好適に設定される値であることが好ましい。
【0044】
例えば、第4所定長L14に亘って形成される終端部101Eをノズル55aが移動する間にノズル55aが始端部101Sとオーバーラップして移動するように、第3所定長L13および第4所定長L14が設定されることが好ましい。また、終点Peが始端部101Sの位置に重なって形成されるように、始端部101Sの第1所定長L11が設定されることが好ましい。つまり、始端部101Sと少なくとも一部が重なるように終端部101Eが形成される構成が好ましい。
また、始点Psより第2所定長L12だけ手前の位置でバルブ10bが閉じられた後、終点Peまでノズル55aが移動する間にガラスペーストGpの塗布が停止し、さらに、始端部101Sに重ねてガラスペーストGpを塗布してオーバーラップ部101が形成されるように第2所定長L12が設定されることが好ましい。つまり、始端部101Sと終端部101Eが重なる部分の少なくとも一部でガラスペーストGpが重なって塗布される構成が好ましい。
【0045】
この構成によって、終端部形成工程は、蒸着部A1(図3の(a)参照)の周囲の1点を終点Peとし、蒸着部A1の周囲に沿って、かつ、始端部101Sと少なくとも一部が重なるようにノズル55aを移動して終端部101Eを形成する工程となる。
【0046】
以上のような構成によると、蒸着部A1(図3の(a)参照)を略1周したノズル55aが始点Psに到達する前(始点Psより第3所定長L13だけ手前の位置)でノズル高さNhが許容誤差ΔHtに相当する量だけ高くなるため、仮に始端部101Sに先に塗布されたガラスペーストGpの塗布高さHtが基準塗布高さStdHより高い場合であっても、ノズル55aが始端部101Sに塗布されたガラスペーストGpに接触してガラスペーストGpが削り取られることが回避される。そして、ノズル55aで削り取られたガラスペーストGpによって塗布高さHtが許容誤差ΔHtを越えて高くなることが防止される。
【0047】
このように、制御部9(図1参照)は、ノズル高さNhを基準塗布高さStdHより許容誤差ΔHtに相当する量だけ高くしてノズル55aを移動し、蒸着部A1(図3の(a)参照)の周囲に沿って、かつ、始端部101Sと少なくとも一部が重なるように、終点Peまでの第4所定長L14に亘る終端部101Eを形成する終端部形成工程を実行して、終端部101Eを形成する。
【0048】
さらに制御部9は、始端部101Sから終端部101Eまでの間(始端部101Sと終端部101E以外の部分)では、ノズル高さNhを基準塗布高さStdHにしてノズル55aを移動する工程(標準移動工程)を実行し、第1パターンPt1に沿ってノズル55aを移動してガラスペーストGpを基板8(図1参照)に塗布する。
【0049】
以上のように、図3の(a)に示す第1パターンPt1に沿ってガラスペーストGpを塗布する第1実施形態において、制御部9(図1参照)は、始端部101Sを形成する始端部形成工程を実行して、図4の(a)に示すように、始点Psから第1所定長L11に亘る始端部101Sでは基準塗布高さStdHより許容誤差ΔHtだけ低い塗布高さHtでガラスペーストGpを塗布する。さらに、制御部9は終端部101Eを形成する終端部形成工程を実行して、始点Psより第3所定長L13だけ手前の位置でノズル高さNhを許容誤差ΔHtに相当する量だけ高くし、始端部101Sとオーバーラップするようにノズル55aを第4所定長L14に亘って終点Peまで移動する。そして、始端部形成工程と終端部形成工程の間では、ノズル高さNhを基準塗布高さStdHにしてノズル55aを移動する標準移動工程を実行してガラスペーストGpを基板8に塗布する。この構成によって、ガラスペーストGpの塗布による第1パターンPt1の形成時において、始点Psと終点Peの近傍の塗布高さHtを基準塗布高さStdHから許容誤差ΔHtの範囲内に抑えることができる。
【0050】
《第2実施形態》
本発明の第2実施形態は、図3の(b)に示す第2パターンPt2の形状にガラスペーストGpを塗布するための実施形態である。
第2パターンPt2の形状にガラスペーストGpを塗布するとき、制御部9(図1参照)は、基板8の平面上に略矩形に形成される蒸着部A1の1つの辺の延長線上に設定された始点Psでバルブ10b(図1参照)に制御信号を送信して開弁し、ノズル高さNhを基準塗布高さStdHより低く設定してガラスペーストGpの塗布を開始する。例えば、図5の(a)に示すように、塗布高さHtに許容される許容誤差ΔHtに相当する量だけ基準塗布高さStdHより低いノズル高さNhでガラスペーストGpを塗布する。制御部9は、この状態で所定の長さ(第5所定長L21)だけ、始点Psを延長線上に有する1辺に沿ってノズル55aを蒸着部A1の側に移動する。このように、基準塗布高さStdHより許容誤差ΔHtだけ低い塗布高さHtでガラスペーストGpが塗布される部分(始点Psから第5所定長L21に亘る範囲)が第2実施形態における始端部101Sとなる。始端部101Sの長さ(第5所定長L21)は、始点Psと蒸着部A1との距離以上の長さであることが好ましい。
【0051】
第2パターンPt2において始点Psは、蒸着部A1の周囲から外方に外れた1点であり、制御部9(図1参照)は、ノズル高さNhを基準塗布高さStdHより許容誤差ΔHtに相当する量だけ低くし、ノズル55aを始点Psから蒸着部A1の周囲に向かって移動して、第5所定長L21に亘る始端部101Sを形成する始端部形成工程を実行する。
【0052】
始端部101Sの第5所定長L21が始点Psと蒸着部A1との距離より長い場合、蒸着部A1の周囲の一部に始端部101Sが形成される。しかしながら、始端部101Sは基準塗布高さStdHより許容誤差ΔHtだけ低い塗布高さHtであり、蒸着部A1の周囲の一部に始端部101Sが形成された場合であっても、蒸着部A1の周囲の塗布高さHtを基準塗布高さStdHに対して許容誤差ΔHtの範囲に抑えることができる。
【0053】
例えば、基準塗布高さStdHが「30μm」で許容誤差ΔHtが「±10μm」のとき、制御部9(図1参照)は始点Psから第5所定長L21に亘る部分(始端部101S)ではノズル高さNhを「20μm(30μm−10μm)」としてガラスペーストGpを塗布する。その後、制御部9はノズル高さNhを基準塗布高さStdH(30μm)にして蒸着部A1の周囲にガラスペーストGpを塗布する。
なお、始点Psから第5所定長L21に亘る部分の少なくとも一部で、ノズル高さNhを基準塗布高さStdHより許容誤差ΔHtに相当する量だけ低くしてノズル55aを移動する構成としてもよい。
例えば、ガラスペーストGpが交差する交差点103の近傍だけ、ノズル高さNhを基準塗布高さStdHより許容誤差ΔHtに相当する量だけ低くしてノズル55aを移動する構成としてもよい。
【0054】
ノズル55aが蒸着部A1の周囲を略1周し、図5の(b)に示すように始端部101Sと直交する辺上において、始端部101Sより所定の長さ(第6所定長L22)だけ手前の位置に来たとき、制御部9(図1参照)は、ノズル55aを上昇させる。具体的に制御部9は、許容誤差ΔHtに相当する量だけノズル55aを上昇させる。例えば、基準塗布高さStdHが「30μm」で許容誤差ΔHtが「±10μm」のとき、制御部9はノズル55aを10μmだけ上昇させ、基準塗布高さStdH(30μm)であったノズル高さNhを「40μm(30μm+10μm)」とする。
【0055】
この状態で制御部9(図1参照)は始端部101Sを横切るようにノズル55aを移動し、適宜設定する終点Peでノズル55aの移動を停止する。さらに制御部9は、バルブ10b(図1参照)に制御信号を送信して閉弁する。
制御部9がノズル高さNhを基準塗布高さStdHより許容誤差ΔHtに相当する量だけ上昇させてノズル55aを移動する部分が第2実施形態における終端部101Eとなる。
なお終端部101Eの長さ、つまり、制御部9がノズル高さNhを高くする、始端部101Sより第6所定長L22だけ手前の位置から終点Peまでの長さを第7所定値L23とする。
このように第2実施形態では、始端部101Sと終端部101Eとが交差点103で交差して第2パターンPt2(図3の(b)参照)が形成される。
【0056】
つまり、制御部9(図1参照)は、ノズル高さNhを基準塗布高さStdHより許容誤差ΔHtに相当する量だけ高くするとともに、蒸着部A1の周囲から外方に外れた終点Peに向かって、かつ、始端部101Sと交差点103で交差するようにノズル55aを移動して、第7所定長L23に亘る終端部101Eを形成する終端部形成工程を実行する。
【0057】
さらに、制御部9は、始端部101Sから終端部101Eまでの間(始端部101Sと終端部101E以外の部分)では、ノズル高さNhを基準塗布高さStdHにしてノズル55aを移動する標準移動工程を実行し、第2パターンPt2(図3の(b)参照)に沿ってノズル55aを移動してガラスペーストGpを基板8(図1参照)に塗布する。
【0058】
なお、制御部9(図1参照)がノズル55aの上昇を開始させる、始端部101Sからの所定の長さ(第6所定長L22)は、始端部101Sに向かって第6所定長L22だけ移動する間に、ノズル55aが基準塗布高さStdHから許容誤差ΔHtに相当する量だけ上昇できる長さであればよい。
【0059】
始端部101Sにおける塗布高さHtと始端部101Sを横切るときのノズル55aのノズル高さNhが等しい場合、誤差等によってノズル55aが始端部101Sに先に塗布されたガラスペーストGpに接触してガラスペーストGpが削り取られる場合がある。このとき、蒸着部A1に沿って塗布されたガラスペーストGpの一部が始端部101SのガラスペーストGpとともに削り取られると、その部分の塗布高さHtが低くなって蒸着部A1の周囲の塗布高さHtが均一でなくなる。
【0060】
第2実施形態においては、始端部101Sに塗布されたガラスペーストGpの塗布高さHtを基準塗布高さStdHより許容誤差ΔHtだけ低くし、また、ノズル55aが始端部101Sを横切るときのノズル高さNhを基準塗布高さStdHより許容誤差ΔHtに相当する量だけ高くすることから、ノズル55aが始端部101Sを横切るときに、始端部101Sに塗布されたガラスペーストGpとノズル55aが接触することを回避できる。
したがって、蒸着部A1の周囲に塗布されたガラスペーストGpが始端部101Sに塗布されたガラスペーストGpとともにノズル55aによって削り取られることを防止でき、蒸着部A1の周囲におけるガラスペーストGpの塗布高さHtを基準塗布高さStdHから許容誤差ΔHtの範囲内に抑えることができる。
【0061】
また、終端部101Eにおけるノズル高さNhは基準塗布高さStdHから許容誤差ΔHtに相当する量だけ高く、終端部101EにおけるガラスペーストGpの塗布高さHtを基準塗布高さStdHから許容誤差ΔHtの範囲内に抑えることができる。
【0062】
以上のように、図3の(b)に示す第2パターンPt2に沿ってガラスペーストGpを塗布する第2実施形態において、制御部9(図1参照)は、始端部101S(図5の(a)参照)を形成する始端部形成工程を実行し、始点Psから第5所定長L21に亘って、基準塗布高さStdHより許容誤差ΔHtだけ低い塗布高さHtでガラスペーストGpを塗布し、始端部101Sを形成する。さらに、制御部9は、ノズル55aが有機EL素子の蒸着部A1の周囲を略1周したときに、終端部101E(図5の(b)参照)を形成する終端部形成工程を実行し、始端部101Sより第6所定長L22だけ手前の位置でノズル高さNhを許容誤差ΔHtに相当する量だけ高くしてノズル55aが始端部101Sを横切るようにノズル55aを移動する。そして、始端部形成工程と終端部形成工程の間では、ノズル高さNhを基準塗布高さStdHにしてノズル55aを移動する標準移動工程を実行してガラスペーストGpを基板8に塗布する。
【0063】
この構成によって、ノズル55aが始端部101Sを横切るときに先に塗布されたガラスペーストGpと接触することが回避され、ノズル55aによってガラスペーストGpが削り取られることを防止できる。
そして、第2パターンPt2の形成時における始点Psと終点Peの近傍の塗布高さHtを基準塗布高さStdHから許容誤差ΔHtの範囲内に抑えることができる。
【0064】
なお、本発明は図3の(a)に示す第1パターンPt1および図3の(b)に示す第2パターンPt2以外の形状の塗布パターンに沿ってガラスペーストGpを塗布する場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0065】
8 基板
55 シリンジ(ペースト収納部)
55a ノズル
100 ペースト塗布装置
101S 始端部
101E 終端部
A1 蒸着部(所定の領域)
Gp ガラスペースト(ペースト)
Ps 始点
Pe 終点
ΔHt 許容誤差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペーストを連続して塗布するノズルを移動して、前記ペーストを基板の平面における所定の領域の周囲に連続して塗布するペースト塗布装置であって、
前記ノズルが移動を開始する始点から所定長に亘る始端部では、前記基板から前記ノズルまでのノズル高さを所定の基準高さより低くして前記ノズルを移動し、
前記ノズルが移動を終了する終点までの所定長に亘る終端部では、前記ノズル高さを前記基準高さより高くして前記ノズルを移動し、
前記始端部および前記終端部以外の部分では前記ノズル高さを前記基準高さとして前記ノズルを移動し、
さらに、前記始端部と前記終端部の少なくとも一部で前記ペーストが重なって塗布されるように前記ノズルを移動することを特徴とするペースト塗布装置。
【請求項2】
前記始端部では、
前記基準高さを前記ノズル高さとして前記ノズルが移動するときに前記基板に塗布される前記ペーストの塗布高さに許容される許容誤差に相当する量だけ前記ノズル高さを前記基準高さより低くし、
前記終端部では、
前記許容誤差に相当する量だけ前記ノズル高さを前記基準高さより高くすることを特徴とする請求項1に記載のペースト塗布装置。
【請求項3】
前記領域の周囲の1点を前記始点として当該領域の周囲に沿って前記始端部を形成し、前記領域の周囲の1点を前記終点として当該領域の周囲に沿って、かつ、前記始端部と少なくとも一部が重なって前記終端部を形成するように前記ノズルを移動することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のペースト塗布装置。
【請求項4】
前記ペーストを収納するペースト収納部と、
前記ペーストを前記ノズルから塗布するために前記ペースト収納部に吐出圧を供給する加圧源と、を備え、
前記終端部が形成されるより先に前記加圧源から前記ペースト収納部への吐出圧の供給が停止されることを特徴とする請求項3に記載のペースト塗布装置。
【請求項5】
前記領域の周囲から外方に外れた1点を前記始点として前記領域の周囲に向かって前記始端部を形成し、
前記領域の周囲から外方に外れた1点を前記終点として前記領域の周囲から当該終点に向かって、かつ、前記始端部と交差して前記終端部を形成するように前記ノズルを移動することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のペースト塗布装置。
【請求項6】
ペーストを連続して塗布するノズルを移動して、前記ペーストを基板の平面における所定の領域の周囲に連続して塗布するペースト塗布方法であって、
前記基板から前記ノズルまでのノズル高さを所定の基準高さより低くして前記ノズルを移動し、前記ノズルが移動を開始する始点から所定長に亘る始端部を形成する始端部形成工程と、
前記ノズル高さを前記基準高さより高くして前記ノズルを移動し、前記ノズルが移動を終了する終点までの所定長に亘る終端部を形成する終端部形成工程と、
前記始端部および前記終端部以外の部分で前記ノズル高さを前記基準高さにして前記ノズルを移動する標準移動工程と、を有し、
前記始端部と前記終端部の少なくとも一部で前記ペーストが重なって塗布されるように前記ノズルを移動することを特徴とするペースト塗布方法。
【請求項7】
前記始端部形成工程では、
前記基準高さを前記ノズル高さとして前記ノズルを移動するときに前記基板に塗布される前記ペーストの塗布高さに許容される許容誤差に相当する量だけ前記ノズル高さを前記基準高さより低くし、
前記終端部形成工程では、
前記許容誤差に相当する量だけ前記ノズル高さを前記基準高さより高くすることを特徴とする請求項6に記載のペースト塗布方法。
【請求項8】
前記始端部形成工程は、
前記領域の周囲の1点を前記始点とし、前記領域の周囲に沿って前記ノズルを移動して前記始端部を形成する工程であり、
前記終端部形成工程は、
前記領域の周囲の1点を前記終点とし、前記領域の周囲に沿って、かつ、前記始端部と少なくとも一部が重なるように前記ノズルを移動して前記終端部を形成する工程であること、を特徴とする請求項6または請求項7に記載のペースト塗布方法。
【請求項9】
前記終端部形成工程の実行より先に、前記ペーストの塗布を停止させる塗布停止工程が実行されることを特徴とする請求項8に記載のペースト塗布方法。
【請求項10】
前記始端部形成工程は、
前記領域の周囲から外方に外れた1点を前記始点とし、前記領域の周囲に向かって前記ノズルを移動して前記始端部を形成する工程であり、
前記終端部形成工程は、
前記領域の周囲から外方に外れた1点を前記終点とし、前記領域の周囲から前記終点に向かって、かつ、前記始端部と交差するように前記ノズルを移動して前記終端部を形成する工程であること、を特徴とする請求項6または請求項7に記載のペースト塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−69499(P2013−69499A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206276(P2011−206276)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】