説明

ホットメルト組成物

【課題】高い耐熱性を有するとともに、粘度が低いため作業性に優れ、基材の膨張、収縮、反りなどの動きにも追従し、シール機能を維持できるような柔軟性を有し、各種シール材として適したホットメルト組成物を提供する。
【解決手段】ブチルゴム(a)、スチレン系ブロック共重合体(b)、芳香族変性テルペン樹脂(c)を配合し、ブチルゴム(a)100重量部に対する芳香族変性テルペン樹脂(c)の配合量を10〜50重量部とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高い耐熱性を有するとともに、粘度が低く、弾性に優れ、各種シール材として適したホットメルト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト組成物は熱可塑性樹脂を主成分とした樹脂組成物であり、冷却固化によって接着力が発現するため初期接着力に優れる、溶剤を含有しないため環境に優しく取扱いが容易であるなどの利点を有するため、各種シール材などに用いられている。
【0003】
ホットメルト組成物は自動車用部材のシール材としても用いられているが、夏季は高温下で使用されるため耐熱性が求められる一方、基材の膨張、収縮、反りなどの動きにも追従し、シール機能を維持できるような柔軟性も求められている。また、シール材の塗布時に粘度が高すぎると作業性が低下するため、溶融粘度が低いことも要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1には、自動車用電子制御ユニットの枠体のシール等に有用な弾性樹脂組成物が開示されている。これは耐熱性にはすぐれるものの、基材の動きに追従できる柔軟性は不足していた。
【特許文献1】特開2008-285612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、高い耐熱性を有するとともに、粘度が低く、弾性に優れ、各種シール材として適したホットメルト組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者が検討を行ったところ、柔軟性に優れるブチルゴムだけでは耐熱性が十分でないため、スチレン系ブロック共重合体を併用することが不可欠であることが判明した。しかしながら、スチレン系ブロック共重合体を併用することにより、粘度が高くなるとともに柔軟性が低下してしまう問題に直面した。さらに鋭意検討を重ねたところ、前記ブチルゴム、スチレン系ブロック共重合体に加えて、特定量の芳香族変性テルペン樹脂を配合したところ、耐熱性、粘度、柔軟性の全てを満たすことができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明は、ブチルゴム(a)、スチレン系ブロック共重合体(b)、芳香族変性テルペン樹脂(c)を含有し、ブチルゴム(a)100重量部に対する芳香族変性テルペン樹脂(c)の配合量が10〜50重量部であることを特徴とするホットメルト組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のホットメルト組成物は高い耐熱性を有し、基材の膨張、収縮、反りなどの動きにも追従し、シール機能を維持できるような柔軟性も有するため、自動車用部材などの用途に適する。また、粘度が低いため、塗布作業性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明で用いるホットメルト組成物の各必須成分について説明する。ブチルゴム(a)は本ホットメルト組成物においてシール性、耐候性、耐水性、柔軟性、衝撃吸収性などの付与を目的に配合されるもので、ムーニー粘度が20〜90であって、不飽和度0.5〜5.0程度ものが好ましい。ブチルゴムの配合量は、ホットメルト組成物全体に対して10〜30重量%とすることが好ましい。
【0010】
スチレン系ブロック共重合体(b)は、本発明においては主に耐熱性を確保するために配合される。弾性、凝集力を確保するためには平均分子量が30000〜500000のものが適合しており、具体的にはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、α−メチルスチレン−ブタジエン−α−メチルスチレンブロック共重合体、α−メチルスチレン−イソプレン−α−メチルスチレンブロック共重合体や、これらの水素添加変性物、例えばスチレン−エチレン−(エチレン−プロピレン)−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)などが挙げられる。
【0011】
芳香族変性テルペン樹脂(c)は、本発明においてはホットメルト組成物の溶融粘度を下げ、柔軟性を維持するために添加されるものであり、具体的にはフェノールやスチレンとテルペン樹脂を共重合させる等の方法によって得られる樹脂である。これらを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
芳香族変性テルペン樹脂の配合量は、前記ブチルゴム100重量部に対して10〜50重量部である必要があり、15〜35重量部であることがより好ましい。
芳香族変性テルペン樹脂の配合量が少ない場合、ホットメルト組成物の溶融粘度を十分に低下できないため作業性が低下する。また、芳香族変性テルペン樹脂が多い場合、耐熱性が著しく低下する。
【0012】
本発明のホットメルト組成物には前記配合成分の他、粘着付与樹脂、液状樹脂、α−オレフィン樹脂等の樹脂成分、無機充填材、酸化防止剤、シランカップリング剤、顔料等の各種添加剤を配合することができる。粘着付与樹脂として、テルペン樹脂、ロジン樹脂、水添ロジン樹脂、石油樹脂、水添石油樹脂などが挙げられる。液状樹脂の具体例として、液状ポリブタジエンや液状ポリブテンなどが挙げられる。
【0013】
無機充填材は耐熱フロー性の向上を目的として添加される。具体例としては、炭酸カルシウム、タルク、クレー、シリカ、酸化チタン等が挙げられる。無機充填材の配合量は、ホットメルト組成物全体に対して1〜50重量%とすることが好ましい。1重量%以上とすることで耐熱フロー性が顕著に発現し、50重量%未満とすることで溶融粘度が高くなり過ぎるおそれが少ない。
【0014】
酸化防止剤としては、銅系酸化防止剤、銅塩系酸化防止剤、ハロゲン化銅系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ヒンダートアミン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、芳香族アミン、キレート化剤からなる金属不活性化剤等が挙げられる。
【0015】
フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチルフェノール誘導体、2−メチル−6−t−ブチルフェノール誘導体、オクタデシル−3−(3,5−ジブチル−4−ビトロキシフェニル)プロピオネート、4,4−ブチリデン−ビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、ペンタエリスリチル・テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、2−{1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)−エチル}−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0016】
リン系酸化防止剤としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェイト、サイクリックネオペンタンテトラビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニルホスフェイト、ドステアリルペンタンエリスリトールジホスフェイト、リン酸2水素ナトリウム、リン酸1水素2ナトリウム等が挙げられる。
【0017】
ヒンダートアミン系酸化防止剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,2,3,4−テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニル)ブタン、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシルエチル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合体、1−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニル)ペンタン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(オクチロン−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等が挙げられる。
【0018】
ホットメルト組成物は上記各配合成分をバンバリーミキサー、加熱ニーダー、1軸ないし2軸エクストルーダーなどで混練りすることにより得られる。ホットメルト組成物の溶
融粘度は、200℃において3000Pa・s以下であることが好ましく、2000Pa
・s以下であることがより好ましい。200℃において3000Pa・sを超えると塗布性が低下するため、塗布作業に時間がかかったり、汎用的な塗布装置では負荷が大きくなるため装置の傷みが早くなる。また、溶融温度を上げれば溶融粘度は低下するものの、ホットメルト組成物が劣化しやすくなるため好ましくない。
【0019】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【実施例】
【0020】
ホットメルト組成物の製造
ブチルゴムであるButyl402(ランクセスブチル社製、商品名)14重量部、SEBSであるKraton G1726(クレイトンポリマージャパン社製、商品名)2.5重量部、芳香族変性テルペン樹脂として軟化点が125℃のテルペンフェノール系樹脂であるSylvares TP2019(アリゾナケミカル社製、商品名)2.4重量部および軟化点が125℃のテルペンスチレン系樹脂であるYSレジンTO125(ヤスハラケミカル社製、商品名)2.4重量部、軟化点が161℃のアモルファスα−オレフィン樹脂であるVestplast 888(エボニックデグサジャパン社製、商品名)2.5重量部、炭酸カルシウムであるBF200(白石カルシウム社製、商品名)40部、酸化防止剤であるsumilizer GP(共同薬品社製、商品名)0.5重量部、酸化防止剤であるウェストン618F(GE社製、商品名)0.7重量部、液状ポリブテンであるHV300(新日本石油化学社製、商品名)35重量部をシグマブレイド型ニーダーで加熱混合して実施例1のホットメルト組成物を得た。同様に表1記載の配合にて比較例1、2の各ホットメルト組成物を得た。各ホットメルト組成物について、以下の方法で評価を行った。
【0021】
溶融粘度
ブルックフィールド社製デジタル粘度計(型式:DVI−I+)を用いて、150℃における溶融粘度(0.5rpm)を測定した。溶融粘度が1000Pa.s以下であると、作業性に影響が少ない。
【0022】
耐熱性(加熱垂下性)
JASO M323の9.42(社団法人自動車技術会制定、加熱垂下性試験)に基づいて加熱垂下性を評価した。試験の概要としては、ホットメルト組成物を恒温器内に垂直にぶら下がるように保持具で取り付け、30℃から10分間に5℃の割合で温度を上昇させ、垂下部分が初期よりも10mm垂れ下がるときの温度を測定するものである。耐熱性評価が40℃以上であると、十分な耐熱性を有している。
【0023】
針入度
JASO M323の9.7(社団法人自動車技術会制定、加熱垂下性試験)に基づいて針入度を評価した。針入度が60以上であると、十分な柔軟性を有している。
【0024】
【表1】

【0025】
実施例1のホットメルト組成物は、耐熱性、柔軟性、作業性の全てに優れていた。また、スチレン系ブロック共重合体を含有しない比較例1は耐熱性が不足しており、比較例2は耐熱性は改善されているものの、柔軟性や作業性は不足していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブチルゴム(a)、スチレン系ブロック共重合体(b)、芳香族変性テルペン樹脂(c)を含有し、ブチルゴム(a)100重量部に対する芳香族変性テルペン樹脂(c)の配合量が10〜50重量部であることを特徴とするホットメルト組成物。

【公開番号】特開2012−77251(P2012−77251A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226025(P2010−226025)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】