説明

ボスカリドおよびピリメタニルを含む殺菌混合物

本発明は、(1)式(I)のボスカリドおよび(2)式(II)のピリメタニルを、相乗効果を有する量で含む殺菌混合物、ボスカリド(I)とピリメタニル(II)の混合物を用いて有害な菌類を防除する方法、係る混合物を調製するためのボスカリド(I)とピリメタニル(II)の使用、これらの混合物を含む組成物、ならびにこれらの混合物を含む種子に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
(1) 式(I)
【化1】

【0002】
のボスカリド(boscalid)、および
(2) 式(II)
【化2】

【0003】
のピリメタニル(pyrimethanil)を、相乗効果を有する量で含む、殺菌混合物に関する。
【0004】
さらに、本発明はボスカリド(I)とピリメタニル(II)の混合物を用いて有害な菌類を防除する方法、および上記混合物を調製するためのボスカリド(I)とピリメタニル(II)の使用、これらの混合物を含む殺菌組成物、ならびにこれらの混合物を含む種子に関する。
【背景技術】
【0005】
ボスカリドは、EP-A 545099により公知である。
【0006】
ピリメタニルは、DD-A 151404により公知である。
【発明の開示】
【0007】
本発明の目的は、施量を減らし、既知の化合物(I)と(II)の活性スペクトルを改善することを目的として、施用する活性化合物の総量を減らしつつ、有害な菌類に対して改善された活性を有する混合物を提供することである(相乗性混合物)。
【0008】
本発明者らは、上記で定義したボスカリドとピリメタニルの混合物を見出した。さらに、本発明者らは、ボスカリド(I)およびピリメタニル(II)を同時に、すなわち一緒にもしくは別々に施用すること、またはボスカリド(I)およびピリメタニル(II)を連続して施用することにより、個々の化合物の単独の施用よりも優れた有害な菌類の防除が可能になることを見出した。
【0009】
ボスカリドは、異なる結晶変態および異なる水和形態で存在しうる(WO 03/29219およびWO 2004/72039を参照されたい);式Iはすべての結晶変態および水和形態を包含する。
【0010】
化合物(I)と活性化合物(II)の混合物、または同時に、すなわち一緒にもしくは別々に施用される化合物(I)および活性化合物(II)は、広いスペクトルの植物病原性の菌類、特に子嚢菌類(Ascomycetes)、担子菌類(Basidiomycetes)、不完全菌類(Deuteromycetes)および卵菌綱(Peronosporomycetes(異名:Oomycetes))のクラスに属する菌類に対する優れた活性を有する。それらのいくつかは浸透作用を有し、種子紛衣のための殺菌剤として、葉用の殺菌剤として、および土壌用の殺菌剤として作物保護に使用することができる。
【0011】
それらは、種々の作物植物、例えば、バナナ、ワタ、野菜(例えば、キュウリ、マメ、トマトおよびウリ科植物)、オオムギ、牧草、オートムギ、コーヒー、ジャガイモ、トウモロコシ、果実植物、イネ、ライムギ、ダイズ、ブドウ、コムギ、観葉植物、サトウキビおよび多くの種子などにおける多くの菌類の防除に特に重量である。
【0012】
それらは下記の植物の病気の防除に特に適している。
【0013】
・野菜、ナタネ、サトウダイコンおよび果実およびイネのアルタナリア(Alternaria)属の種;
・サトウダイコンおよび野菜のアファノミセス(Aphanomyces)属の種;
・トウモロコシ、穀類、イネおよびシバのビポラリス(Bipolaris)およびドレクスレラ(Drechslera)属の種;
・穀物のブルメリア・グラミニス(Blumeria graminis)(うどん粉病);
・イチゴ、野菜、花およびブドウのボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)(灰色カビ病);
・レタスのべと病菌(Bremia lactucae);
・トウモロコシ、ダイズ、イネおよびサトウダイコンのセルコスポラ(Cercospora)属の種;
・トウモロコシ、穀類、イネのコクリオボルス(Cochliobolus)属の種、例えば、穀類の斑点病菌(Cochliobolus sativus)、イネのごま葉枯病菌(Cochliobolus miyabeanus);
・ダイズおよびワタのコレトトリクム(Colletotricum)属の種;
・穀類およびトウモロコシのドレクスレラ(Drechslera)属の種;
・トウモロコシのエクセロヒルム(Exserohilum)属の種;
・ウリ科植物のエリシフェ・シコラセアルム(Erysiphe cichoracearum)およびスファエロセカ・フリギネア(Sphaerotheca fuliginea);
・種々の植物のフサリウム(Fusarium)およびベルチシリウム(Verticillium)属の種;
・穀類の立枯病菌(Gaeumanomyces graminis);
・穀類およびイネのギベレラ属の種(例えば、イネのばか苗病菌(Gibberella fujikuroi));
・イネの穀物汚染複合体;
・トウモロコシおよびイネのヘルミントスポリウム(Helminthosporium)属の種;
・穀類の紅色雪腐病菌(Michrodochium nivale);
・穀類、バナナおよびラッカセイのミコスフェレラ(Mycosphaerella)属の種;
・ダイズのファコプサラ・パキリジ(Phakopsara pachyrhizi)およびファコプサラ・メイボミアエ(Phakopsara meibomiae);
・ダイズおよびヒマワリのホモプシス(Phomopsis)属の種;
・ジャガイモおよびトマトの疫病菌(Phytophthora infestans);
・ブドウのべと病菌(Plasmopara viticola);
・リンゴのうどん粉病菌(Podosphaera leucotricha);
・穀類のコムギ眼紋病菌(Pseudocercosporella herpotrichoides);
・ホップおよびウリ科植物のシュードペロノスポラ(Pseudoperonospora)属の種;
・穀類およびトウモロコシのプクキニア(Puccinia)属の種;
・穀類のピレノホラ(Pyrenophora)属の種;
・イネのいもち病菌(Pyricularia oryzae)、紋枯病菌(Corticium sasakii)、葉鞘腐敗病菌(Sarocladium oryzae)、褐色米病菌(S.attenuatum)、黒しゅ病菌(Entyloma oryzae);
・シバおよび穀類のイモチ病菌(Pyricularia grisea);
・シバ、イネ、トウモロコシ、ワタ、ナタネ、ヒマワリ、サトウダイコン、野菜および他の植物のピチウム(Pythium spp.);
・ワタ、イネ、ジャガイモ、シバ、トウモロコシ、ナタネ、ジャガイモ、サトウダイコン、野菜および種々の植物のリゾクトニア(Rhizoctonia)属の種;
・ナタネおよびヒマワリのスクレロチニア(Sclerotinia)属の種;
・コムギの葉枯病菌(Septoria tritici)およびスタゴノスポラ・ノドルム(Stagonospora nodorum);
・ブドウのうどんこ病菌(Erysiphe(異名:Uncinula) necator);
・トウモロコシおよびシバのセトスパエリア(Setospaeria)属の種;
・トウモロコシのスファセロテカ・レイリニア(Sphacelotheca reilinia);
・ダイズおよびワタのチエバリオプシス(Thievaliopsis)属の種;
・穀類のチレチア(Tilletia)属の種;
・穀類、トウモロコシおよびサトウダイコンのウスティラーゴ(Ustilago)属の種;
・リンゴおよびセイヨウナシのベントゥリア(Venturia)属の種(黒星病)。
【0014】
さらに、本発明の混合物は、材料(例えば、木材、紙、塗料分散物、繊維または織物)の保護および保存製品の保護におけるパエシロミセス・バリオッティ(Paecilomyces variotii)などの有害な菌類の防除にも好適である。
【0015】
ボスカリド(I)およびピリメタニル(II)は、同時に、すなわち一緒にもしくは別々に、または連続して施用することが可能であり、別々の施用の場合、その順番は、一般的に防除手段の結果に何の影響も与えない。
【0016】
前記混合物を調製する場合、純粋な活性化合物(I)および(II)を使用することが好ましく、有害な菌類に対する、または昆虫、クモもしくは線虫などの他の害虫に対するさらなる活性化合物、あるいは除草もしくは生長調節活性化合物または肥料を加えることができる。
【0017】
通常、ボスカリド(I)とピリメタニル(II)の混合物を施用する。しかし、特定の場合には、ボスカリド(I)と2種、または適切な場合にはより多くの種類の活性成分との混合物が有利でありうる。
【0018】
化合物(I)および活性化合物(II)は、通常は100:1〜1:100、好ましくは20:1〜1:20、特に10:1〜1:10の重量比で施用される。
【0019】
所望により、さらなる活性成分を、化合物(I)に対して20:1〜1:20の比で混合する。
【0020】
化合物のタイプおよび要求される効果に応じて、本発明の混合物の施量は、特に農作領域の場合には、5 g/ha〜2000 g/ha、好ましくは20〜900 g/ha、特に50〜750 g/haである。
【0021】
同様に、ボスカリド(I)の施量は、一般的に1〜1000 g/ha、好ましくは10〜900 g/ha、特に20〜750 g/haである。
【0022】
同様に、ピリメタニル(II)の施量は、一般的に1〜2000 g/ha、好ましくは10〜900 g/ha、特に40〜750 g/haである。
【0023】
種子の処理においては、混合物の施量は、一般的に1〜1000 g/種子100 kg、好ましくは1〜750 g/100 kg、特に5〜500 g/100 kgである。
【0024】
有害な菌類を防除する方法は、植物の種蒔きの前もしくは後、または植物の発芽の前もしくは後に、種子、植物または土壌に噴霧または散粉することにより、ボスカリド(I)およびピリメタニル(II)を別々にもしくは一緒に施用すること、またはボスカリド(I)とピリメタニル(II)との混合物を施用することにより実施される。
【0025】
本発明の混合物、またはボスカリド(I)およびピリメタニル(II)は、通常の製剤、例えば、溶液、エマルション、懸濁液、ダスト、粉末、ペーストまたは顆粒に変換することができる。施用剤形は個々の目的に依存するが、いずれの場合にも、それは本発明の化合物の微細で均一な分布を保証するものでなければならない。
【0026】
製剤は、それ自体は公知の方法により、例えば、活性化合物を、所望により乳化剤および分散剤を用いて溶媒および/または担体により希釈することにより調製される。この目的に好適な溶媒/添加剤は基本的に次の通りである。
【0027】
-水、芳香族溶媒(例えば、ソルベッソ(Solvesso(登録商標))製品、キシレン)、パラフィン(例えば、鉱油留分)、アルコール(例えば、メタノール、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例えば、シクロヘキサノン、ガンマ-ブチロラクトン)、ピロリドン(NMP、NOP)、酢酸エステル(二酢酸グリコール)、グリコール、脂肪酸ジメチルアミド、脂肪酸および脂肪酸エステル。原則として、溶媒混合物も用いることができる。
【0028】
-粉砕した天然鉱物(例えば、カオリン、粘土、タルク、白亜)および粉砕した合成鉱物(例えば、微細に粉砕したシリカ、ケイ酸塩)などの担体;非イオンおよび陰イオン乳化剤(例えば、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、アルキルスルホネートおよびアリールスルホネート)などの乳化剤、およびリグノ亜硫酸廃液およびメチルセルロースなどの分散剤。
【0029】
好適な界面活性剤は、リグノスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、アルキルアリールスルホネート、アルキルスルフェート、アルキルスルホネート、脂肪アルコールスルフェート、脂肪酸および硫酸化脂肪アルコールグリコールエーテルのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩である。さらに、スルホン化ナフタレンおよびナフタレン誘導体とホルムアルデヒドの縮合物、ナフタレンまたはナフタレンスルホン酸とフェノールおよびホルムアルデヒドの縮合物、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、エトキシ化イソオクチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、アルキルフェニルポリグリコールエーテル、トリブチルフェニルポリグリコールエーテル、トリステアリルフェニルポリグリコールエーテル、アルキルアリールポリエーテルアルコール、アルコールおよび脂肪アルコール/エチレンオキシド縮合物、エトキシ化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、エトキシ化ポリオキシプロピレン、ラウリルアルコールポリグリコールエーテルアセタール、ソルビトールエステル、リグノ亜硫酸廃液およびメチルセルロースである。
【0030】
直接噴霧可能な溶液、エマルション、ペーストまたは油分散物の調製に好適なものは、灯油またはジーゼル油などの中程度から高い沸点の鉱油留分、さらに、コールタール油および植物または動物由来の油、脂肪族、環式および芳香族炭化水素、たとえば、トルエン、キシレン、パラフィン、テトラヒドロナフタレン、アルキル化ナフタレンまたはその誘導体、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、イソホロン、極性の高い溶媒、たとえば、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、および水である。
【0031】
粉末、散布用材料および散粉用製品は、活性物質を固体の担体と混合または同時に粉砕することにより調製することができる。
【0032】
顆粒、たとえば被覆顆粒、含浸顆粒および均一な顆粒は、活性化合物を固体の担体に結合することにより調製することができる。固体の担体の例は、シリカゲル、ケイ酸塩、タルク、カオリン、活性白土、石灰石、石灰、白亜、赤土、黄土、粘土、白雲石、珪藻土、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウムなどの鉱物、粉砕した合成材料、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素などの肥料、および穀物の粗挽き粉、樹皮の粗挽き粉、木材の粗挽き粉および木の実の殻の粗挽き粉などの植物由来の製品、セルロース粉末および他の固体の担体である。
【0033】
一般的に、製剤は0.01〜95重量%、好ましくは0.1〜90重量%の活性化合物を含む。活性化合物は、90〜100%、好ましくは95〜100%の純度(NMRスペクトルによる)のものを使用する。
【0034】
下に製剤の例を記載する。
【0035】
1. 水により希釈する製品
A) 水溶性濃縮物(SL)
10重量部の(I)、(II)または(I)と(II)の混合物を90重量部の水または水溶性溶媒に溶解する。あるいは、湿潤剤または他の添加剤を加える。活性化合物は水により希釈すると溶解する。これにより10重量%の活性化合物含有量を有する製剤が得られる。
【0036】
B) 分散性濃縮物(DC)
20重量部の(I)、(II)または(I)と(II)の混合物を、10重量部の分散剤、たとえばポリビニルピロリドンを加えて70重量部のシクロヘキサノンに溶解する。水により希釈すると分散物が得られる。活性化合物含有量は20重量%である。
【0037】
C) 乳化性濃縮物(EC)
15重量部の(I)、(II)または(I)と(II)の混合物を、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウムおよびエトキシ化ひまし油(それぞれ5重量部)を加えて75重量部のキシレンに溶解する。水により希釈するとエマルションが得られる。製剤は15重量%の活性化合物含有量を有する。
【0038】
D) エマルション(EW、EO)
25重量部の(I)、(II)または(I)と(II)の混合物を、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウムおよびエトキシ化ひまし油(それぞれ5重量部)を加えて35重量部のキシレンに溶解する。この混合物を乳化機(例えば、Ultraturrax)を用いて30重量部の水に導入し、均一なエマルションを作る。水により希釈するとエマルションが得られる。製剤は25重量%の活性化合物含有量を有する。
【0039】
E) 懸濁液(SC、OD)
撹拌したボールミル中で、20重量部の(I)、(II)または(I)と(II)の混合物を、10重量部の分散剤および湿潤剤ならびに70重量部の水または有機溶媒を加えて粉砕して、微細な活性化合物の懸濁液を得る。水により希釈すると、活性化合物の安定な懸濁液が得られる。製剤中の活性化合物含有量は20重量%である。
【0040】
F) 水分散性顆粒および水溶性顆粒(WG、SG)
50重量部の(I)、(II)または(I)と(II)の混合物を、50重量部の分散剤および湿潤剤を加えて微細に粉砕し、技術機器(たとえば、射出機、噴霧塔、流動床)を用いて水分散性または水溶性顆粒を調製する。水により希釈すると活性化合物の安定な分散物または溶液が得られる。製剤は50重量%の活性化合物含有量を有する。
【0041】
G) 水分散性粉末および水溶性粉末(WP、SP)
75重量部の(I)、(II)または(I)と(II)の混合物を、25重量部の分散剤、湿潤剤およびシリカゲルを加えてローターステーターミル(rotor-stator mill)中で粉砕する。水により希釈すると活性化合物の安定な分散物または溶液が得られる。製剤の活性化合物含有量は75重量%である。
【0042】
2. 希釈せずに施用する製品
H) 散粉用粉末(DP)
5重量部の(I)、(II)または(I)と(II)の混合物を微細に粉砕し、95重量部の微細に粉砕したカオリンと緊密に混合する。これにより、5重量%の活性化合物含有量を有する散粉用製品が得られる。
【0043】
J) 顆粒(GR、FG、GG、MG)
0.5重量部の(I)、(II)または(I)と(II)の混合物を微細に粉砕し、99.5重量部の担体と結合させる。最新の方法は射出、噴霧乾燥または流動床である。これにより、0.5重量%の活性化合物含有量を有する希釈せずに施用する顆粒が得られる。
【0044】
K) ULV溶液(UL)
10重量部の(I)、(II)または(I)と(II)の混合物を90重量部の有機溶媒、たとえばキシレンに溶解する。これにより、10重量%の活性化合物含有量を有する希釈せずに施用する製品が得られる。
【0045】
活性化合物は、そのままで、それらの製剤の形で、またはその製剤から調製された使用形態で、たとえば、直接噴霧できる溶液、粉末、懸濁液もしくは分散物、エマルション、油分散物、ペースト、散粉用製品、散布用材料、または顆粒の形で、スプレー、噴霧、散粉、散布または注入により使用することができる。使用形態は意図される目的に完全に依存するが、いずれの場合にも、それらは本発明の活性化合物の可能な限り微細な分布を保証することを目的とするものである。
【0046】
水性の使用形態は、濃縮エマルション、ペーストまたは湿潤性粉末(噴霧可能な粉末、油分散物)に水を加えることにより調製することができる。エマルション、ペーストまたは油分散物を調製するために、物質を、そのままで、または油または溶媒に溶解して、湿潤剤、粘着付与剤、分散剤または乳化剤を用いて水中に均一化することができる。あるいは、活性物質、湿潤剤、粘着付与剤、分散剤または乳化剤、および適切な場合には溶媒または油を含む濃縮物を調製することも可能であり、このような濃縮物は水による希釈に適している。
【0047】
そのまま使える製剤における活性化合物濃度は比較的広い範囲内で変化し得る。一般的に、上記濃度は0.0001〜10%、好ましくは0.01〜1%である。
【0048】
活性化合物は、微量散布法(ULV)にも効果的に使用することができ、この方法により、95重量%以上の活性化合物を含む製剤を施用すること、または添加剤を含まない活性化合物を施用することさえも可能である。
【0049】
種々のタイプの油、湿潤剤、または補助剤を、所望の場合には使用の直前に、活性化合物に加えることができる(タンクミックス)。これらの薬剤は、通常本発明の組成物に、1:100〜100:1、好ましくは1:10〜10:1の重量比で混合される。
【0050】
化合物IおよびIIまたは混合物または対応する製剤は、有害な菌類またはそれらから保護するべき植物、種子、土壌、領域、材料もしくは空間を、混合物、または別々の施用の場合には化合物IおよびIIの殺菌に有効な量により処理することにより施用される。施用は、有害な菌類の感染の前または後に実施することができる。
【0051】
本発明の個々の化合物および混合物の殺菌作用は下記の実験により証明された。
【実施例】
【0052】
活性化合物を、別々にまたは一緒に、アセトンおよび/またはジメチルスルホキシドと乳化剤Uniperol(登録商標)EL(エトキシ化アルキルフェノールをベースとする乳化および分散作用を有する湿潤剤)の混合物(溶媒/乳化剤の体積比 = 99:1)を用いて、25 mgの活性化合物を含む10 mlの保存溶液として調製した。次に、混合物に水を加えて100 mlとした。この保存溶液を、記載された溶媒/乳化剤/水混合物により希釈して、下記の活性化合物濃度とした。
【0053】
視覚的に測定した感染した葉の面積のパーセンテージを、未処理の対照に対する%で表した効果に変換した。
【0054】
効果(E)は、アボット(Abbot)の式を用いて次のように計算する。
【0055】
E = (1 −α/β)・100
αは、%で表した処理された植物の菌類感染であり、
βは、%で表した未処理(対照)の植物の菌類感染である。
【0056】
効果0は、処理された植物の感染のレベルが未処理の対照植物と一致することを意味しており、効果100は処理した植物が感染しなかったことを意味する。
【0057】
活性化合物の混合物の予想される効果をコルビー(Colby)の式(R.S. Colby, Calculating synergistic and antagonistic responses of herbicide combinations, Weeds 15, 20-22 (1967))を用いて決定し、観察された効果と比較した。
【0058】
コルビーの式: E = x + y − x・y/100
E 濃度aおよびbの活性化合物AおよびBの混合物を用いた場合の、未処理の対照に対する%で表した予想される効果;
x 濃度aの活性化合物Aを用いた場合の、未処理の対照に対する%で表した効果;
y 濃度bの活性化合物Bを用いた場合の、未処理の対照に対する%で表した効果。
【0059】
使用例1:コムギのさび病菌(Puccinia recondita)に対する保護的活性(コムギの赤さび病)
鉢植えのコムギの栽培品種「Kanzler」の苗の葉に、活性化合物を以下の濃度で含む水性懸濁液を、流出点まで噴霧した。翌日、処理した植物にコムギのさび病菌(Puccinia recondita)の胞子懸濁液を接種した。その植物を、20〜22℃および高大気湿度(90〜95%)の室に24時間置いた。この間、胞子が発芽し、発芽した管が葉の組織に侵入した。翌日、試験植物を温室に戻し、20〜22℃の温度かつ65〜70%の相対大気湿度でさらに7日間栽培した。葉におけるさび病菌の発生の程度を目視で観察した。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1) 式(I)
【化1】

のボスカリド、および
(2) 式(II)
【化2】

のピリメタニルを、相乗効果を有する量で含む、殺菌混合物。
【請求項2】
ボスカリド(I)とピリメタニル(II)の重量比が100:1〜1:100である、請求項1に記載の殺菌混合物。
【請求項3】
植物病原性の有害な菌類を防除する方法であって、該有害な菌類、その生育環境または該菌類の攻撃から保護すべき植物、土壌もしくは種子を、有効量の請求項1に記載の混合物により処理する、前記方法。
【請求項4】
請求項1に記載のボスカリド(I)とピリメタニル(II)を同時に、すなわち一緒にもしくは別々に、または連続して施用する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
請求項1に記載のボスカリド(I)およびピリメタニル(II)、または請求項1に記載の殺菌混合物を、5 g/ha〜2000 g/haの量で施用する、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載のボスカリド(I)およびピリメタニル(II)、または請求項1に記載の殺菌混合物を、1〜1000 g/種子100 kgの量で施用する、請求項3または4に記載の方法。
【請求項7】
1〜1000 g/100 kgの量の請求項1に記載の混合物を含む種子。
【請求項8】
有害な菌類を防除するのに適した組成物を調製するための、請求項1に記載の化合物IおよびIIの使用。
【請求項9】
請求項1に記載の殺菌混合物および固体または液体の担体を含む殺菌組成物。

【公表番号】特表2009−515848(P2009−515848A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539415(P2008−539415)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068105
【国際公開番号】WO2007/054473
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】