説明

ボセンタン、その多形形態及びその塩の合成方法

本発明は、ボセンタンのアルカリ土類金属塩、無水ボセンタン、それらの多形形態、非晶質ボセンタン、及びそれらの製造方法に関する。更に、本発明は、ボセンタン及びその医薬として許容し得る塩の製造方法に関する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、ボセンタンのアルカリ土類金属塩、無水ボセンタン、その多形形態、非晶質ボセンタン、及びそれらの製造方法に関する。更に、本発明は、ボセンタン及びその医薬として許容し得る塩の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
(背景及び先行技術)
CA2071193及びその対応するUS5,292,740に開示される化合物の1つであるボセンタンは、高血圧、虚血及び関連する疾患の治療に有用なエンドセリン阻害活性を有する、重要なクラスのスルホンアミドに属している。
【化1】

【0003】
更に、US5,292,740には、反応物としてブロモマロン酸ジエチル及びグアイアコールを含む、ボセンタンの製造方法が開示されている。該方法の最終工程は、水酸化ナトリウムの存在下で、置換ピリミジンモノハライド誘導体をエチレングリコールと反応させてボセンタンを得る工程である。この工程において、2分子のピリミジンモノハライド誘導体と1分子のエチレングリコールとのカップリングは、二量体不純物などの望ましくない不純物が副生成物として生成する。複数の結晶化及び精製工程には、これらの不純物量を低下させることが要求される。また、該方法は、過剰のエチレングリコールの使用を必要とし、これは、工業規模において、費用がかかり、かつ取扱いが困難なものにさせる。
【0004】
US6,136,971には、モノ保護されたエチレングリコールを使用する、ボセンタンの製造のための代替方法が記載されている。該方法は、トルエン中、水酸化ナトリウムの存在下で、置換ピリミジンモノハライド誘導体をエチレングリコールモノt-ブチルエーテルと反応させて、t-ブチルエーテル誘導体を得て、これをトルエン中、ギ酸で脱保護して、2-(ホルミルオキシ)エトキシ誘導体を得ることを含む。最後に、水性水酸化ナトリウムで処理してホルミル基を除去し、ボセンタンを生成する。該方法は、エチレングリコールの保護及び脱保護の追加的な工程を必要とし、これが、該方法を面倒で、かつ高価なものにさせる。
【0005】
先行技術の方法において、置換ピリミジンモノハライド誘導体と無保護/保護エチレングリコールとの反応は、いずれも望ましくない不純物、例えば、二量体不純物が最大10%の量で生成する。したがって、不純物を除去するためにいくつかの精製及び単離工程を必要とするか、又はそれらは、時間がかかり、かつ工業的に適さない、エチレングリコールの保護及び脱保護を必要とする。
【0006】
次に、置換ピリミジンモノハライド誘導体とエチレングリコールとの反応の基本的な特徴は、塩基、特に強い無機塩基、すなわち、水酸化ナトリウムを使用することである。該反応は、トリエチルアミン又はN-エチルジイソプロピルアミンなどの有機溶媒の存在下では進行しないことが見出されている。該先行技術は、該反応が強い無機塩基の存在下でのみ進行することを示している。しかし、強塩基の使用は、望ましくない不純物を生成し、生成物の収率及び純度に影響を及ぼす。
【0007】
したがって、当該分野において、先行技術の方法の欠点を克服できる改善方法への要求が残っている。また、工業用の規模の拡大のために簡単で、かつ精製及び単離工程をほとんど必要としない方法への要求があり、それによって、高収率及び高純度のボセンタンが得られる。
【0008】
ボセンタンは、標品名Tracleer(登録商標)を付してActelion Pharmaceuticals社から市販されている。Tracleer(登録商標)の有効成分は、約3〜5%の含水量を有するボセンタン一水和物である。
一般に、いかなる種類の医薬製剤の理想的な候補も、本来、有効成分は非吸湿性である。どんな量の水分の存在でも、任意の製剤において、凝集、塊及び不純物の形成を招き得る。したがって、高含水量の有効成分を有することは必ずしも適切ではない。
【0009】
(発明の目的)
本発明の主な目的は、ボセンタン及びその医薬として許容し得る塩の合成方法を提供することである。
本発明の別の目的は、新規で、安定した、ボセンタンの形態、特に新規のボセンタンの塩及び新規のボセンタンの無水形態を提供することである。
【発明の概要】
【0010】
(発明の概要)
本発明の第1の態様により、ボセンタンのアルカリ土類金属塩を提供する。一実施態様において、該塩はバリウム塩である。別の実施態様において、該塩はカルシウム塩である。
本発明の別の態様により、無水ボセンタンを提供する。
【0011】
本発明の別の態様により、無水の形態Bのボセンタンを提供する。形態Bの無水ボセンタンは、9.6、16.1、17.1、18.4及び21.8°2θ±2°2θにピークをもつXRPDパターンを有することで特徴付けることができる。また、形態Bは、9.6、12.3、14.8、16.1、17.1、17.5、18.4、21.1、21.8、22.1及び22.8°2θ±0.2°2θにピークをもつXRPDパターンを有することで特徴付けることができる。
【0012】
一実施態様において、形態Bの無水ボセンタンは、図1に示すXRPDパターンを有することを特徴とする。
また、形態Bの無水ボセンタンは、図2に示すDSCサーモグラムを有することで特徴付けることができる。
また、形態Bの無水ボセンタンは、図3に示すIRスペクトルも有することで特徴付けることができる。
【0013】
本発明の別の態様により、無水の形態Cのボセンタンを提供する。形態Cの無水ボセンタンは、9.3、15.2、15.5、16.7、18.6及び22.7°2θ±0.2°2θにピークをもつXRPDパターンを有することで特徴付けることができる。また、形態Cは、9.3、15.2、15.5、16.7、18.6、20.3、21.3及び22.7 °2θ±0.2°2θにピークをもつXRPDパターンを有することで特徴付けることができる。
【0014】
一実施態様において、形態Cの無水ボセンタンは、図4に示すXRPDパターンを有することを特徴とする。
また、形態Cの無水ボセンタンは、図5に示すDSCサーモグラムを有することを特徴とすることができる。
また、形態Cの無水ボセンタンは、図6に示すIRスペクトルを有することを特徴とすることができる。
【0015】
本発明の別の態様により、形態Aの非晶質ボセンタンを提供する。一実施態様において、形態Aの非晶質ボセンタンは、図7に示すXRPDパターンを有することを特徴とする。
本発明の別の態様により、ボセンタン又はその塩の製造方法を提供する。該方法は、
アルカリ土類金属の水酸化物から選択される塩基の存在下で、p-tert-ブチル-N-[6-クロロ-5-(2-メトキシ-フェノキシ)-[2,2'-ビピリミジン]-4-イル]ベンゼンスルホンアミド又はその塩を、エチレングリコールとカップリングすることを含む。
【0016】
一実施態様において、該p-tert-ブチル-N-[6-クロロ-5-(2-メトキシ-フェノキシ)-[2,2'-ビピリミジン]-4-イル]ベンゼンスルホンアミドは、カリウム塩の形態である。
好適には、該塩基は、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、又は水酸化バリウムである。好ましくは、該塩基は、水酸化バリウム又は水酸化カルシウムである。より好ましくは、該塩基は、水酸化バリウムである。
一実施態様において、該塩基は、サブモル量で存在する。好適には、該塩基は、約0.1mol%〜最大1mol%未満の量、例えば、最大で0.9mol%未満の範囲の量で存在する。
【0017】
該カップリングは、無極性溶媒の存在下で行うことができる。該溶媒は、ジグリム、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、トルエン、又はキシレンから選択することができる。好ましくは、該溶媒は、トルエンである。
一実施態様において、カップリング工程の生成物を単離して、ボセンタンのアルカリ土類金属塩を形成する。該塩は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、又はバリウム塩とすることができる。好ましくは、該塩は、バリウム塩又はカルシウム塩である。より好ましくは、該塩は、バリウム塩である。
【0018】
一実施態様において、該カップリング工程の生成物は、ボセンタンに変換される。該変換は、該カップリング工程の反応塊(reaction mass)に水を添加すること、及び典型的に、HClの水溶液を用いて、該溶液のpHを1〜2の範囲の値に調整することを含むことができる。該ボセンタンは、ジクロロメタン、酢酸エチル及びトルエンから選択される抽出溶媒を用いて、粗製のボセンタンを抽出することによって単離することができる。該溶媒を蒸留して、残渣を得ることができる。この残渣に、下記から選択される抗溶媒を添加し、それによって、ボセンタンが沈殿する:メタノール;エタノール;イソプロパノール;ブタノール;それらと水との混合物(すなわち、メタノール-水、又はエタノール-水、イソプロパノール-水、又はブタノール-水)、又はN,N-ジメチルホルムアミド-水混合物である。該沈殿したボセンタンを、単離し、乾燥させることができる。この実施態様において、該生成物は、先行技術から公知のボセンタン一水和物である。好ましくは、該抽出溶媒は、ジクロロメタンである。好ましくは、該抗溶媒は、エタノール及び水が1:1の混合物である。
【0019】
別の実施態様において、該抗溶媒は、テトラヒドロフラン;ヘプタン;n-ヘキサン;及びメタノールから選択され、ボセンタンと抗溶媒との混合物を、該溶媒混合物の還流温度まで加熱し、該混合物を25℃まで冷却し、それによって、生成物が沈殿する。一実施態様において、該沈殿生成物を単離する。この実施態様において、該生成物は、形態Bの無水ボセンタンである。好ましくは、該抗溶媒はヘプタンである。
【0020】
別の実施態様において、ボセンタンと抗溶媒との混合物を、該溶媒混合物の還流温度まで加熱し、次いで、20℃〜30℃の範囲の温度まで冷却し、それによって、形態Bの無水ボセンタンが沈殿する。好適には、沈殿生成物を単離して、60℃を越える温度、好ましくは、65℃で乾燥させる。
好適には、該溶媒は、ジクロロメタン、酢酸エチル、又はトルエンから選択される有機溶媒とすることができる。好ましくは、該溶媒は、酢酸エチルである。該抗溶媒は、テトラヒドロフラン、ヘプタン、n-ヘキサン、及びメタノール、より好ましくは、ヘプタンから選択することができる。
【0021】
本発明の別の態様により、形態Bの無水ボセンタンの製造方法を提供する。該方法は、ボセンタンを溶媒と抗溶媒との混合物に添加すること、該混合物を該溶媒混合物の還流温度まで加熱すること、及び該混合物をおよそ20℃〜およそ30℃の範囲の温度まで冷却することを含み、それによって、形態Bの無水ボセンタンが沈殿する。好適には、該混合物をおよそ25℃の温度まで冷却する。典型的に、該沈殿生成物を単離し、かつ60℃を越える温度で乾燥させる。
【0022】
好適には、該溶媒は、ジクロロメタン、酢酸エチル又はトルエンから選択される有機溶媒とすることができる。好ましくは、該溶媒は、酢酸エチルである。該抗溶媒は、テトラヒドロフラン、ヘプタン、n-ヘキサン、及びメタノール、より好ましくは、ヘプタンから選択することができる。
出発物質であるボセンタンは、上記方法のいずれか1つに従って製造することができる。また、該ボセンタンは、従来技術の方法に従って製造されていてもよい。
【0023】
本発明の別の態様により、形態Cの無水ボセンタンの製造方法を提供する。該方法は、メタノール中でボセンタンを還流すること、該溶液を50℃未満の温度まで冷却することを含み、それによって、形態Cの無水ボセンタンが沈殿する。好適には、該溶液を、約20℃〜約30℃、好ましくは、およそ25℃の範囲の温度まで冷却する。
【0024】
一実施態様において、沈殿した形態Cのボセンタンを、60℃を越える温度、好ましくは、65℃を越える温度で乾燥させる。
出発物質であるボセンタンは、上記方法のいずれか1つに従って製造することができる。また、該ボセンタンは、従来技術の方法に従って製造されていてもよい。
【0025】
本発明の別の態様により、形態Aの非晶質ボセンタンの製造方法を提供する。該方法は、ジクロロメタン、酢酸エチル及びトルエンから選択される溶媒中で粗製のボセンタンの溶液を濃縮して、残渣を得ること、及び該残渣に抗溶媒を添加することを含み、それによって、形態Aの非晶質ボセンタンが沈殿する。好適には、該抗溶媒の添加後に、該溶液を撹拌する。好ましくは、該溶媒はトルエンである。
【0026】
一実施態様において、該抗溶媒は、炭化水素及びエーテルから選択される。好適には、該抗溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、又はメチルtert-ブチルエーテルである。好ましくは、該抗溶媒は、ジエチルエーテルである。
一実施態様において、沈殿した形態Aの非晶質ボセンタンを単離し、60℃を越える、好ましくは、65℃を超える温度で乾燥させる。
出発物質であるボセンタンは、上記方法のいずれか1つに従って製造することができる。また、該ボセンタンは、従来技術の方法に従って製造されていてもよい。
【0027】
アルカリ土類金属の水酸化物の塩基は、様々な形態のボセンタン、例えば、先行技術から公知のボセンタン一水和物、上記のボセンタンの新規形態、並びにボセンタンのアルカリ土類金属塩を製造するのに有用であることが見出され得る。したがって、本発明は、ボセンタンの製造におけるアルカリ土類金属塩の使用も提供する。該様々な製造とは上記のものである。
【0028】
本発明の別の態様により、1つ以上の医薬として許容し得る賦形剤とともに上記ボセンタンを含む医薬組成物を提供する。該ボセンタンは、非晶質の形態Aのボセンタン、無水の形態Bのボセンタン又は無水の形態Cのボセンタンの形態とすることができる。そのような医薬品の賦形剤及び組成物は、当業者には周知である。
【0029】
本発明の別の態様により、医薬における上記ボセンタンの使用を提供する。
本発明の別の態様により、高血圧又は虚血の治療における上記ボセンタンの使用を提供する。
本発明の別の態様により、高血圧又は虚血の治療方法を提供する。該方法は、それを必要とする患者に、治療上有効な量の上記ボセンタンを投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0030】
(図面の簡単な説明)
【図1】形態Bの無水ボセンタンのX線回折スペクトルを示す。
【図2】形態Bの無水ボセンタンの示差走査熱量測定サーモグラムを示す。
【図3】形態Bの無水ボセンタンの赤外吸収スペクトルを示す。
【図4】形態Cの無水ボセンタンのX線回折スペクトルを示す。
【図5】形態Cの無水ボセンタンの示差走査熱量測定サーモグラムを示す。
【図6】形態Cの無水ボセンタンの赤外吸収スペクトルを示す。
【図7】形態Aの非晶質ボセンタンのX線回折スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(発明の詳細な説明)
本発明は、単純で、経済的で、かつ規模の拡大が容易な、ボセンタン及びその医薬として許容し得る塩の合成方法を説明し、該方法は、結果として良好な収率及び高い純度の生成物をもたらす。
【0032】
本発明のボセンタンの製造方法は、弱塩基の存在下で、p-tert-ブチル-N-[6-クロロ-5-(2-メトキシ-フェノキシ)-[2,2'-ビピリミジン]-4-イル]ベンゼンスルホンアミド(I)又はその塩を、エチレングリコールとカップリングすることを含む。
該p-tert-ブチル-N-[6-クロロ-5-(2-メトキシ-フェノキシ)-[2,2'-ビピリミジン]-4-イル]ベンゼンスルホンアミドの塩は、アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム塩とすることができる。あるいは、該塩は、カリウム塩とすることができる。
【0033】
上記方法に使用される弱塩基は、アルカリ土類金属の水酸化物である。該アルカリ土類金属の水酸化物は、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、及び水酸化マグネシウム、より好ましくは、水酸化バリウムとすることができる。該方法に必要なアルカリ土類金属の水酸化物の量は、触媒量〜モル当量の量の範囲である。最も好ましくは、該アルカリ土類金属の水酸化物は、サブモル量で使用される。例えば、該アルカリ土類金属の水酸化物は、約0.1mol%〜最大1mol%未満、好適には、0.1mol%〜0.9mol%の量で使用することができる。
【0034】
該カップリング反応は、適当な有機溶媒の存在下で行われる。該適当な有機溶媒とは:ジグリム若しくはテトラヒドロフラン若しくは2-メチルテトラヒドロフランなどのエーテル;又はトルエン若しくはキシレンなどの炭化水素溶媒から選択される無極性溶媒とすることができる。最も好ましくは、本発明の方法に使用される有機溶媒はトルエンである。該反応塊を、約100℃〜約12O℃の範囲の温度、好ましくは、およそ110℃の温度で加熱する。
【0035】
一実施態様において、該反応に使用される全ての塩基は、一度に添加される。あるいは、該塩基は、分割して該反応塊に添加される。言い換えれば、「ロット(lot)」を表している各々の量の塩基を用いて、一量の塩基が該反応塊に添加されると、該反応が進行され、次いで、別量の塩基が該反応塊に添加される。該塩基は、2、3又は4ロット、好ましくは、2ロットで添加することができる。各ロットの塩基の量は、任意の比率、好ましくは、等比率とすることができる(すなわち、同じ量の塩基を各ロットで添加する)。好ましくは、等量の2ロットを添加する。驚くべきことに、別々に塩基を添加することによって、望ましくない不純物の形成を制御し得ることが見出されている。
【0036】
該反応の完了後、蒸留によって該溶媒を完全に除去することができ、水を添加することができる。得られる懸濁液のpHは、例えば、水性の酸溶液を用いて、1〜2の範囲に調整することができる。好ましくは、該水性の酸溶液は、塩酸と水との混合物である。得られる固形物は、ジクロロメタン、酢酸エチル、トルエン、より好ましくは、ジクロロメタンなどの適当な溶媒を用いて抽出することができる。該有機層を回収し、水で洗浄し、かつ蒸留して、残渣を得ることができる。この残渣に、有機溶媒と水との混合物を添加することができる。該有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、より好ましくは、エタノール、又はエタノール-水若しくはN,N-ジメチルホルムアミド-水などの溶媒の混合物などのアルコール溶媒とすることができる。得られる懸濁液を還流温度で加熱して、透明溶液を得ることができ、更にこれを約25℃の温度まで冷却してボセンタンを提供することができる。
【0037】
該反応スキームは下記のように表される:
【化2】

【0038】
上記スキームに使用される式(I)の化合物、すなわち、p-tert-ブチル-N-[6-クロロ-5-(2-メトキシ-フェノキシ)-[2,2'-ビピリミジン]-4-イル]ベンゼンスルホンアミド又はその塩は、当該分野で公知のいずれか1つの方法によって製造することができる。
また、ボセンタンは、そのアルカリ土類金属塩の形態で単離することができる。これは、本発明の別の態様を形成する。本発明の好ましい塩は、ボセンタンのバリウム及びカルシウム塩である。
【0039】
アルカリ土類金属塩の製造方法は、塩基存在下での、p-tert-ブチル-N-[6-クロロ-5-(2-メトキシ-フェノキシ)-[2,2'-ビピリミジン]-4-イル]ベンゼンスルホンアミド(I)又はその塩とエチレングリコールとの反応を含む。該塩基は弱塩基であり、かつ上記の群から選択することができる。
該方法に使用される溶媒は:ジグリム若しくはテトラヒドロフラン若しくは2-メチルテトラヒドロフランなどのエーテル;又はトルエン若しくはキシレンなどの炭化水素、最も好ましくは、トルエンから選択することができる。
【0040】
該反応塊は、該反応が完了するまで、約100℃〜約110℃の範囲の温度で加熱することができる。得られる懸濁液を、例えば、濾過によって単離し、該固形物を乾燥させて、対応するボセンタンのアルカリ土類金属塩を得る。
更に、適当な溶媒又は溶媒の混合物を用いて、該ボセンタンの塩を精製することができる。好ましくは、該適当な溶媒の混合物は、メタノール-酢酸イソプロピルである。
更に、上記方法で製造されたアルカリ土類金属塩は、上記の塩基を含まないボセンタンの形成を介して、カルシウム塩などのアルカリ土類金属群の他の塩、又はナトリウム塩などのアルカリ金属塩に変換することができる。
【0041】
本発明の方法には多くの利点がある。
1) 本発明の方法の重要な利点の1つは、望ましくない不純物の形成を招く水酸化ナトリウムなどの強塩基の使用を回避することである。本発明の方法において、これらの不純物は、弱塩基の使用によって回避される。
2) アルカリ土類金属の水酸化物の使用は、二量体不純物の形成を回避し、それによって、ボセンタンの収率が増大する。他の望ましくない不純物は、アルカリ土類金属の水酸化物を分割して添加することによって制御できる。
3) 本発明の方法に必要なアルカリ土類金属の水酸化物の量は、サブモル〜モル量、好ましくは、サブモル量である。
【0042】
4) ボセンタン塩基の単離なしに、ボセンタンのアルカリ土類金属塩を得ることができる。
5) ボセンタンのアルカリ土類金属塩は低溶解性であり、したがって、容易に沈殿させることができる。
6) ボセンタン又はそのアルカリ土類金属塩の精製及び単離は容易であり、少数の結晶化工程を含む。
全てのこれらの利点は、本発明の方法を単純で、費用効率がよく、かつ工業的に実施可能なものにさせる。
【0043】
本発明の別の態様により、無水ボセンタンを提供する。該無水ボセンタンは、安定である。本出願に関して、用語「安定な」とは、化合物が非吸湿性であり、かつ多湿雰囲気中でさえ水分を取り込まないことを意味する。
【0044】
無水ボセンタンは、多形形態A、B及びCで提供される。
形態Bのボセンタンは、その粉末X線回折測定(XRPD)パターン及び/又は熱重量分析を用いて特徴付けることができる。形態Bの無水ボセンタンのXRPDは、Cu-Kα-1放射線源を用いた最新の粉末X線回折計である、Rigaku社miniflexで測定されている。該XRPDスペクトルを図1に示す。
【0045】
本発明の形態Bの無水ボセンタンは、9.6、16.1、17.1、18.4及び21.8度の2θ値(±0.2)にピークをもつXRPDパターンを有することで特徴付けることができる。
一実施態様において、更に、形態Bの無水ボセンタンは、9.6、12.3、14.8、16.1、17.1、17.5、18.4、21.1、21.8、22.1及び22.8度の2θ値(±0.2)にピークをもつXRPDパターンを有することで特徴付けることができる。
【0046】
別の実施態様において、形態Bの無水ボセンタンは、下記の表1に示す2θ(±0.2)値にピークをもつXRPDパターンを有することを特徴とする。
【表1】


【0047】
別の実施態様において、形態Bの無水ボセンタンは、3396、3065、2962、2361、1579、1557、1500、1481、1448、1405、1384、1342、1254、1202、1171、1139、1111、1081、1021、871、835、751、690、628、576、546、418cm-1に特徴的なピークをもつ赤外(IR)吸収スペクトルを有することを特徴とする。
更に、本発明の形態Bの無水ボセンタンは、119℃〜129℃の範囲のDSCによって測定された融点開始を有することで特徴付けることができる。
【0048】
更に、本発明は、形態Bの無水ボセンタンの製造方法を提供する。該方法は、塩基及び適当な有機溶媒の存在下で、p-tert-ブチル-N-[6-クロロ-5-(2-メトキシ-フェノキシ)-[2,2'-ビピリミジン]-4-イル]ベンゼンスルホンアミド又はその塩を、エチレングリコールとカップリングすることを含む。該方法に使用される塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、又は水酸化マグネシウムから選択することができる。適当な有機溶媒は、エーテル(ジグリム若しくはテトラヒドロフラン若しくは2-メチルテトラヒドロフランなど)、又は炭化水素溶媒(トルエン若しくはキシレンなど)から選択される無極性溶媒とすることができる。好ましくは、該溶媒はトルエンである。該反応塊は、100℃〜12O℃、好ましくは、〜110℃の範囲の温度まで加熱することができる。該塩基は、上記と同じ方法で、分割して添加することができる。
【0049】
該反応の完了後、該溶媒を、例えば、蒸留によって完全に除去することができ、かつ水を添加することができる。該反応塊のpHは、例えば、水性の塩酸を用いて、1〜2の範囲のpH値に調整することができる。該反応塊は、ジクロロメタン、酢酸エチル又はトルエンなど、最も好ましくは、ジクロロメタンなどの適当な溶媒を用いて抽出することができる。更に、テトラヒドロフラン、ヘプタン、n-ヘキサン、及びメタノール、より好ましくは、ヘプタンから選択される抗溶媒を添加することができ、得られる固形物を約60℃を超える温度、真空下で濾過し、かつ乾燥し、形態Bの無水ボセンタンを得ることができる。
【0050】
あるいは、本発明の形態Bの無水ボセンタンは、粗製のボセンタンを、上に規定した適当な溶媒と抗溶媒との混合物とともに、5O℃〜8O℃の範囲の温度で加熱して、透明溶液を得ることによって製造することができる。更に、該溶液を25℃〜30℃の範囲の温度まで冷却して、固形物を得て、これを60℃〜100℃の範囲の温度で乾燥して、形態Bの無水ボセンタンを得る。
【0051】
更に、本発明は、形態Cとして表されるボセンタンの別の無水形態を提供する。本発明の形態Cの無水ボセンタンは、メタノール中でボセンタンを還流することによって製造することができる。該反応塊をメタノールの還流温度、例えば、60℃〜65℃まで加熱して、透明溶液が得られる。該溶液を冷却し、それによって、固形物が得られる。次いで、この固形物を濾過し、メタノールで洗浄し、かつ6O℃〜65℃の範囲の温度で乾燥して、形態Cの無水ボセンタンを得る。
【0052】
形態Cの無水ボセンタンは、その特徴的な粉末X線回折測定(XRPD)パターン及び/又は熱重量分析を用いて特徴付けられる。形態Cの無水ボセンタンのXRPDは、Cu-Kα-1放射線源を用いた最新の粉末X線回折計である、Rigaku社miniflexで測定されている。該XRPDを図4に示す。
【0053】
形態Cの無水ボセンタンは、9.3、15.2、15.5、16.7、18.6及び22.7度の2θ値(±0.2)にピークをもつXRPDパターンを有することで特徴付けることができる。
更に、形態Cの無水ボセンタンは、9.3、15.2、15.5、16.7、18.6、20.3、21.3及び22.7度の2θ値(±0.2)にピークをもつXRPDパターンを有することで特徴付けることができる。
【0054】
該形態Cの無水ボセンタンは、下記の表2に示す2θ(±0.2)値にピークをもつXRPDパターンを有することによって、更により特徴付けることができる。
【表2】

【0055】
また、本発明の形態Cの無水ボセンタンは、3628、3440、3064、2961、2836、2360、2340、1579、1558、1503、1488、1453、1405、1383、1342、1291、1253、1203、1171、1111、1083、1021、997、948、862、843、794、752、711、686、668、628、615、574、547、525、493、418cm-1に特徴的なピークをもつ赤外(IR)吸収スペクトルを有することで特徴付けることができる。
【0056】
更に、本発明の形態Cの無水ボセンタンは、DSCで測定される102℃の融点を有することによって特徴付けることができる。
本発明の無水の形態B及びCは、安定であり、かつ大気に曝された場合でさえも、水分を取り込まないほど非吸湿性である。
【0057】
ボセンタンは、酢酸エチル、ジクロロメタン又はトルエン、好ましくは、ジクロロメタンなどの適当な溶媒を用いて、該反応塊から粗製のボセンタンを抽出することによって、単離することができる。該透明溶液を約45℃〜約50℃の範囲の温度まで加熱することによって、分離した有機層を濃縮して、残渣を得ることができる。更に、この残渣を、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン若しくはt-ブチルエーテルなどの適当なエーテル性溶媒、又はヘキサン若しくはヘプタンなどの炭化水素溶媒から選択される抗溶媒とともに撹拌し、60℃を超える温度で乾燥させることができる。あるいは、ボセンタン一水和物の溶液又は上記の適当な溶媒中の、任意の結晶性ボセンタンを濃縮して、残渣を得ることができる。該残渣は撹拌下、上記抗溶媒で処理することができ、沈殿物として単離されたボセンタンを、60℃を越える温度で乾燥させる。これは、結果として、形態Aの非晶質ボセンタンとなる。このように、形態Aの非晶質ボセンタンは、本発明の別の態様を形成する。形態Aの非晶質ボセンタンは、図7に示すXRPDパターンを有することで特徴付けることができる。
【0058】
本発明の更に別の態様において、ボセンタンは、ナトリウム、バリウム又はカルシウム塩などのアルカリ塩として該反応塊から単離することができ、かつ任意に、上記本発明の方法の1つを用いて無水ボセンタンに変換することができる。
更に、上記の本発明の方法の1つを用いて、任意、公知の方法で合成されたボセンタン一水和物を、無水物又は非晶質のボセンタンに変換することができる。
【0059】
好ましくは、本発明の無水ボセンタン及び非晶質ボセンタンは、実質的に純粋な形態で、活性原薬として医薬組成物に使用される。「実質的に純粋」とは、ボセンタンの他の形態が基本的に含まれていないことを意味する。また、本発明の無水ボセンタン及び非晶質ボセンタンは、1つ以上の医薬担体と混合できる。該医薬組成物は、液剤、懸濁剤若しくは乳剤などの経口剤形、又は錠剤、カプセル剤、散剤若しくは顆粒剤などの固形の剤形、又はエアロゾル剤若しくは注入剤などの吸入形態、又は経皮投与に適したものなどの非経口剤形とすることができる。
好ましい実施態様を含む下記の実施例は、本発明の実施を例示する役割を果たすであろう。該詳細は、例として、及び本発明の好ましい実施態様の例示的な詳解のために示されることが理解されよう。
【実施例】
【0060】
(実施例1−ボセンタン)
10gmsのp-tert-ブチル-N-[6-クロロ-5-(2-メトキシ-フェノキシ)-[2,2'-ビピリミジン]-4-イル]ベンゼンスルホンアミドカリウム塩、及び水酸化バリウム(1.5gms)を反応容器に加えた。エチレングリコール(30ml)及びトルエン(150ml)をそれに添加した。該反応塊を110℃の温度で2時間加熱した。更に1.5gmsの水酸化バリウムを添加し、かつ更に4時間加熱を続けた。該反応の完了後、蒸留によってトルエンを除去し、水(150ml)を加えた。1:1のHCl:水の混合物を用いて、該反応塊のpHを1〜2の範囲の値に調整し、ジクロロメタンで抽出した。該有機層を回収し、水(150ml)で洗浄し、かつ該溶媒を蒸留して残渣を得た。該残渣に、エタノールと水(1:1)との混合物を添加し、かつ撹拌した。得られた懸濁液を還流するまで加熱して、透明溶液を得た。更に該透明溶液を25℃まで冷却して、ボセンタンを単離した(含水量=3〜3.5% w/w)(収量:6gms)。
【0061】
(実施例2−ボセンタンバリウム)
5gmsのp-tert-ブチル-N-[6-クロロ-5-(2-メトキシ-フェノキシ)-[2,2'-ビピリミジン]-4-イル]ベンゼンスルホンアミドカリウム塩、及び水酸化バリウム(0.75gms)を反応容器に加えた。エチレングリコール(15ml)及びトルエン(75ml)を、そこに添加した。該反応塊を110℃の温度で2時間加熱した。更に、0.75gmsの水酸化バリウムを添加し、かつ更に4時間加熱を続けた。該反応の完了後、該固形物を濾過し、かつボセンタンのバリウム塩として単離した。更に、それをメタノールと酢酸イソプロピルとの混合物で結晶化することによって精製した(収量:3gms)。
【0062】
(実施例3−ボセンタンカルシウム)
10gmsのp-tert-ブチル-N-[6-クロロ-5-(2-メトキシ-フェノキシ)-[2,2'-ビピリミジン]-4-イル]ベンゼンスルホンアミドカリウム塩、及び水酸化カルシウム(14.5gms)を反応容器に加えた。エチレングリコール(30ml)及びトルエン(100ml)を該容器に添加した。該反応塊を、反応が完了するまで100℃の温度で5時間加熱した。得られた懸濁液を25℃まで冷却し、濾過して、ボセンタンのカルシウム塩として単離した。
【0063】
(実施例4−ボセンタン)
100gmsのp-tert-ブチル-N-[6-クロロ-5-(O-メトキシ-フェノキシ)[2,2'-ビピリミジン]-4-イル]ベンゼンスルホンアミドカリウム塩、及び水酸化バリウム(40gms)を反応容器に加えた。エチレングリコール(300ml)及びトルエン(750ml)を、それに添加した。該反応塊を110℃の温度で4時間加熱した。該反応の完了後、蒸留によってトルエンを除去し、水(300ml)を添加した。該反応塊のpHを、1:1のHClで1〜2に調整し、ジクロロメタンで抽出した。該有機層を回収し、水(300ml)で洗浄し、かつ該溶媒を蒸留して固形物としてボセンタンを得た。
【0064】
(実施例5−形態Bのボセンタン)
実施例4から得られたボセンタン(100gms)を、酢酸エチル:ヘプタン(1:1)の混合物で処理した。該反応塊を8O℃で撹拌して、透明溶液を得た。該溶液を25℃まで冷却した。得られた固形物を撹拌し、濾過し、かつヘプタン(200ml)で洗浄した。該固形物を65℃で乾燥させて、形態Bの無水ボセンタン(60gms)を得た。
【0065】
(実施例6−形態Cのボセンタン)
実施例4から得られたボセンタン(100gms)を、メタノール(1000ml)で処理した。該反応塊を60〜65℃で撹拌して、透明溶液を得た。該溶液を25℃まで冷却した。得られた固形物を撹拌し、濾過し、かつメタノール(100ml)で洗浄した。該固形物を65℃で乾燥させて、形態Cの無水ボセンタン(85gms)を得た。
【0066】
(実施例7)
(i) ボセンタンバリウム)
5gmsのp-tert-ブチル-N-[6-クロロ-5-(O-メトキシ-フェノキシ)[2,2'-ビピリミジン]-4-イル]ベンゼンスルホンアミドカリウム塩、及び水酸化バリウム(0.75gms)を反応容器に加えた。エチレングリコール(15ml)及びトルエン(75ml)を、そこに添加した。該反応塊を110℃の温度で2時間加熱した。更に、0.75gmsの水酸化バリウム添加し、かつ更に4時間加熱を続けた。該反応の完了後、得られた固形物を濾過し、ボセンタンのバリウム塩として単離した。更に、それをメタノールと酢酸イソプロピルとの混合物で結晶化することによって精製した(収量:3gms)。
【0067】
(ii) 形態Bのボセンタン)
工程i)から得られた100gmsのボセンタンのバリウム塩を、水とジクロロメタン(1:1)との混合物とともに反応容器に加えた。該反応塊のpHを、1:1のHClで1〜2に調整し、ジクロロメタンで抽出した。該有機溶媒を回収し、水(300ml)で洗浄し、かつ該溶媒を蒸留して残渣を得た。更に、それを酢酸エチルとヘプタン(1:1)との混合物で処理した。該スラリーを80℃で撹拌して、透明溶液を得た。該溶液を25℃まで冷却した。こうして得られた固形物を撹拌し、濾過し、かつヘプタン(200ml)で洗浄した。該固形物を65℃で乾燥させて、形態Bの無水ボセンタン(60gms)を得た。
【0068】
(実施例8−形態Bのボセンタン)
100gmsのp-tert-ブチル-N-[6-クロロ-5-(O-メトキシ-フェノキシ)[2,2'-ビピリミジン]-4-イル]ベンゼンスルホンアミドカリウム塩、及び水酸化ナトリウム(4gms)を反応容器に加えた。エチレングリコール(300ml)及びトルエン(750ml)を、それに添加した。該反応塊を110℃の温度で、2時間加熱した。更に、10gmsの水酸化ナトリウムを添加し、かつ更に2時間加熱を続けた。
該反応の完了後、蒸留によってトルエンを除去し、水(300ml)を添加した。該反応塊のpHを、1:1のHClで1〜2に調整し、ジクロロメタンで抽出した。該有機層を回収し、水(300ml)で洗浄し、かつ該溶媒を蒸留して、残渣を得た。該残渣を酢酸エチル:ヘプタン(1:1)の混合物で処理し、80℃で過熱して、透明溶液を得た。該溶液を25℃まで冷却した。得られた溶液を撹拌し、濾過し、かつヘプタン(200ml)で洗浄した。該固形物を65℃で乾燥させ、形態Bの無水ボセンタン(40gms)を得た。
【0069】
(実施例9)
(i) ボセンタンバリウム)
5gmsのp-tert-ブチル-N-[6-クロロ-5-(O-メトキシ-フェノキシ)[2,2'-ビピリミジン]-4-イル]ベンゼンスルホンアミドカリウム塩、及び水酸化バリウム(0.75gms)を反応容器に加えた。エチレングリコール(15ml)及びトルエン(75ml)を、そこに添加した。該反応塊を11O℃の温度で2時間加熱した。更に、0.75gmsの水酸化バリウムを添加し、かつ更に4時間加熱を続けた。該反応の完了後、得られた固形物を濾過し、ボセンタンのバリウム塩として単離した。更に、該固形物をメタノール及び酢酸イソプロピルの混合物で結晶化することによって精製した(収量: 3gms)。
【0070】
(ii) 形態Cのボセンタン)
工程i)から得られた50gmsのボセンタンのバリウム塩を、水とジクロロメタン(1:1)との混合物とともに反応容器に加えた。該反応塊のpHを、1:1のHClで1〜2に調整し、ジクロロメタンで抽出した。該有機層を回収し、水(150ml)で洗浄し、かつ該溶媒を蒸留して残渣を得た。更に、それをメタノール(500ml)で処理した。該スラリーを60〜65℃で撹拌して、透明溶液を得た。該溶液を25℃まで冷却した。このようにして、得られた固形物を撹拌し、濾過し、かつメタノール(50ml)で洗浄した。該固形物を65℃で乾燥させて、形態Cの無水ボセンタン(40gms)を得た。
【0071】
(実施例10−形態Cのボセンタン)
100gmsのp-tert-ブチル-N-[6-クロロ-5-(O-メトキシ-フェノキシ)[2,2'-ビピリミジン]-4-イル]ベンゼンスルホンアミドカリウム塩、及び水酸化ナトリウム(4gms)を反応容器に加えた。エチレングリコール(300ml)及びトルエン(750ml)を、それに添加した。該反応塊を110℃の温度で2時間加熱した。更に、10gmsの水酸化ナトリウムを添加し、かつ更に2時間加熱を続けた。該反応の完了後、蒸留によってトルエンを除去し、水(300ml)を添加した。該反応塊のpHを、1:1のHClで1〜2に調整し、ジクロロメタンで抽出した。該有機層を回収し、水(300ml)で洗浄し、かつ該溶媒を蒸留して残渣を得た。該残渣をメタノール(1000ml)で処理し、60〜65℃で加熱して透明溶液を得た。該溶液を25℃まで冷却した。得られた固形物を撹拌し、濾過し、かつメタノール(100ml)で洗浄した。該固形物を65℃で乾燥させ、形態Cの無水ボセンタン(82gms)を得た。
【0072】
(実施例11−形態Aのボセンタン)
50gmsのp-tert-ブチル-N-[6-クロロ-5-(O-メトキシ-フェノキシ)[2,2'-ビピリミジン]-4-イル]ベンゼンスルホンアミドカリウム塩、及び水酸化カルシウム(4gms)を反応容器に加えた。エチレングリコール(150ml)及びトルエン(380ml)を、そこに添加した。該反応塊を110℃の温度で2時間加熱した。更に、5gmsの水酸化カルシウムを添加し、かつ更に2時間加熱を続けた。該反応の完了後、蒸留によってトルエンを除去し、水(150ml)を加えた。該反応塊のpHを、1:1のHClで1〜2に調整し、ジクロロメタンで抽出した。該有機層を回収し、水(150ml)で洗浄し、かつ該溶媒を完全に蒸留して残渣を得た。更に、該残渣を50mlのジエチルエーテルで処理し、撹拌して均質な固形物を得て、これを濾過し、85℃で乾燥させて、形態Aの非晶質ボセンタン(35gms)を得た。
【0073】
(実施例12−形態Aのボセンタン)
ジクロロメタン中のボセンタンの溶液(50mlのジクロロメタン中に5gmsのボセンタン)を25℃〜3O℃で約15分間撹拌した。該溶液を45℃〜5O℃の温度で加熱することによってゆっくりと濃縮して、泡状の残渣を得た。更に、該残渣を50mlのヘプタンで処理し、撹拌して均質な固形物を得て、これを濾過し、85℃で乾燥させて、形態Aの非晶質ボセンタン(4.8gms)を得た。
【0074】
(実施例13−形態Bのボセンタン)
形態Aの非晶質ボセンタン(10gms)を酢酸エチル:ヘプタン(1:1)の混合物で処理した。該反応塊を8O℃で撹拌して透明溶液を得た。該溶液を25℃まで冷却した。得られた固形物を撹拌し、濾過し、かつヘプタン(50ml)で洗浄した。該固形物を65℃で乾燥させ、形態Bの無水ボセンタン(6gms)を得た。
【0075】
(実施例14−形態Cのボセンタン)
形態Aの非晶質ボセンタン(10gms)をメタノール(100ml)で処理した。該反応塊を60〜65℃で撹拌して、透明溶液を得た。該溶液を25℃まで冷却した。得られた固形物を撹拌し、濾過し、かつメタノール(25ml)で洗浄した。該固形物を65℃で乾燥させて、形態Cの無水ボセンタン(8gms)を得た。
本発明は添付の特許請求の範囲の範囲内で改良され得ることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水ボセンタン。
【請求項2】
多形形態Bである、請求項1記載の無水ボセンタン。
【請求項3】
9.6、16.1、17.1、18.4及び21.8°2θ±0.2°2θにピークをもつXRPDパターンを有することを特徴とする、請求項2記載の形態Bの無水ボセンタン。
【請求項4】
9.6、12.3、14.8、16.1、17.1、17.5、18.4、21.1、21.8、22.1及び22.8°2θ±0.2°2θにピークをもつXRPDパターンを有することを特徴とする、請求項2記載の形態Bの無水ボセンタン。
【請求項5】
図1に示されるXRPDパターンを有することを特徴とする、請求項2記載の形態Bの無水ボセンタン。
【請求項6】
図2に示されるDSCサーモグラムを有することを特徴とする、請求項2〜5のいずれか一項記載の形態Bの無水ボセンタン。
【請求項7】
図3に示されるIRスペクトルを有することを特徴とする、請求項2〜6のいずれか一項記載の形態Bの無水ボセンタン。
【請求項8】
多形形態Cである、請求項1記載の無水ボセンタン。
【請求項9】
9.3、15.2、15.5、16.7、18.6及び22.7°2θ±0.2°2θにピークをもつXRPDパターンを有することを特徴とする、請求項8記載の形態Cの無水ボセンタン。
【請求項10】
9.3、15.2、15.5、16.7、18.6、20.3、21.3及び22.7°2θ±0.2°2θにピークをもつXRPDパターンを有することを特徴とする、請求項8記載の形態Cの無水ボセンタン。
【請求項11】
図4に示されるXRPDパターンを有することを特徴とする、請求項8記載の形態Cの無水ボセンタン。
【請求項12】
図5に示されるDSCサーモグラムを有することを特徴とする、請求項8〜11のいずれか一項記載の形態Cの無水ボセンタン。
【請求項13】
図6に示されるIRスペクトルを有することを特徴とする、請求項8〜12のいずれか一項記載の形態Cの無水ボセンタン。
【請求項14】
形態Aの非晶質ボセンタン。
【請求項15】
図7に示されるXRPDパターンを有することを特徴とする、請求項14記載の形態Aの非晶質ボセンタン。
【請求項16】
ボセンタンのアルカリ土類金属塩。
【請求項17】
前記塩が、バリウム塩である、請求項16記載のボセンタンの塩。
【請求項18】
前記塩が、カルシウム塩である、請求項16記載のボセンタンの塩。
【請求項19】
ボセンタン又はその塩の製法方法であって、アルカリ土類金属の水酸化物から選択される塩基の存在下で、p-tert-ブチル-N-[6-クロロ-5-(2-メトキシ-フェノキシ)-[2,2'-ビピリミジン]-4-イル]ベンゼンスルホンアミド又はその塩をエチレングリコールとカップリングすることを含む、前記製造方法。
【請求項20】
前記p-tert-ブチル-N-[6-クロロ-5-(2-メトキシ-フェノキシ)-[2,2'-ビピリミジン]-4-イル]ベンゼンスルホンアミドが、カリウム塩の形態である、請求項19記載の製造方法。
【請求項21】
前記塩基が、水酸化バリウムである、請求項19又は20記載の製造方法。
【請求項22】
前記塩基が、水酸化カルシウムである、請求項19又は20記載の製造方法。
【請求項23】
前記塩基が、サブモル量で存在している、請求項19、20、21又は22記載の製造方法。
【請求項24】
前記カップリングが、無極性溶媒の存在下で行われる、請求項19〜23のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項25】
前記溶媒が、ジグリム、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、トルエン、又はキシレンから選択される、請求項24記載の製造方法。
【請求項26】
前記溶媒が、トルエンである、請求項25記載の製造方法。
【請求項27】
前記カップリング工程の生成物を単離して、ボセンタンのアルカリ土類金属塩を形成する、請求項19〜23のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項28】
前記カップリング工程の生成物が、ボセンタンに変換され、該変換が、カップリング工程の反応塊に水を添加すること、及びHClの水溶液を用いて該溶液のpHを1〜2の範囲の値に調整することを含む、請求項19〜26のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項29】
ジクロロメタン、酢酸エチル及びトルエンから選択される抽出溶媒を用いて、粗製のボセンタンを抽出すること、抗溶媒を添加すること、及び沈殿したボセンタンを単離することによって、前記ボセンタンが単離される、請求項19〜27のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項30】
前記抽出溶媒が、ジクロロメタンである、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記抗溶媒が、メタノール;エタノール;イソプロパノール;ブタノール;それらと水との混合物;又はN,N-ジメチルホルムアミドと水との混合物から選択される、請求項29又は30記載の製造方法。
【請求項32】
前記抗溶媒が、エタノールと水との1:1の混合物である、請求項31記載の製造方法。
【請求項33】
前記抗溶媒が、テトラヒドロフラン;ヘプタン;n-ヘキサン;及びメタノールから選択され、前記ボセンタンと抗溶媒との混合物を該溶媒混合物の還流温度まで加熱し、該混合物を25℃まで冷却し、沈殿した生成物を単離し、かつ該生成物が形態Bの無水ボセンタンである、請求項29又は30記載の製造方法。
【請求項34】
前記抗溶媒が、ヘプタンである、請求項33記載の製造方法。
【請求項35】
前記ボセンタンと抗溶媒との混合物を、該溶媒混合物の還流温度まで加熱し、次いで、20℃〜30℃の範囲の温度まで冷却し、それによって、形態Bの無水ボセンタンが沈殿する、請求項33又は34記載の製造方法。
【請求項36】
前記沈殿した形態Bのボセンタンを単離し、かつ60℃を越える温度で乾燥させる、請求項33〜35のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項37】
形態Bの無水ボセンタンの製造方法であって、ボセンタンを溶媒と抗溶媒との混合物に添加すること、該混合物を該溶媒混合物の還流温度まで加熱すること、及び該混合物を20℃〜30℃の範囲の温度まで冷却することを含み、それによって、形態Bの無水ボセンタンが沈殿する、前記製造方法。
【請求項38】
前記溶媒が、ジクロロメタン、酢酸エチル又はトルエンから選択される、請求項37記載の製造方法。
【請求項39】
前記抗溶媒が、テトラヒドロフラン、ヘプタン、n-ヘキサン、及びメタノールから選択される、請求項37又は38記載の製造方法。
【請求項40】
前記沈殿した形態Bボセンタンを単離し、かつ60℃を越える温度で乾燥させる、請求項37〜39のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項41】
形態Cの無水ボセンタンの製造方法であって、メタノール中でボセンタンを還流すること、該溶液を50℃未満の温度まで冷却することを含み、それによって、形態Cの無水ボセンタンが沈殿する、前記製造方法。
【請求項42】
前記沈殿した形態Cのボセンタンを単離し、かつ60℃を越える温度で乾燥させる、請求項41記載の製造方法。
【請求項43】
形態Aの非晶質ボセンタンの製造方法であって、ジクロロメタン、酢酸エチル及びトルエンから選択される溶媒中で、粗製のボセンタンの溶液を濃縮して残渣を得ること、抗溶媒を該残渣に添加することを含み、それによって、形態Aの非晶質ボセンタンが沈殿する、前記製造方法。
【請求項44】
前記沈殿した形態Aの非晶質ボセンタンを単離し、かつ60℃を越える温度で乾燥させる、請求項43記載の製造方法。
【請求項45】
前記抗溶媒が、炭化水素及びエーテルから選択される、請求項43又は44記載の製造方法。
【請求項46】
前記抗溶媒が、ヘキサン、ヘプタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、又はメチルtert-ブチルエーテルである、請求項43又は44記載の製造方法。
【請求項47】
前記溶媒が、ジエチルエーテルである、請求項46記載の製造方法。
【請求項48】
本実施例を参照して、実質的に本明細書中に記載されるボセンタン又はその塩。
【請求項49】
本実施例を参照して、実質的に本明細書中に記載される形態Bの無水ボセンタン。
【請求項50】
図1、2及び3を参照して、実質的に本明細書中に記載される形態Bの無水ボセンタン。
【請求項51】
本実施例を参照して、実質的に本明細書中に記載される形態Cの無水ボセンタン。
【請求項52】
図4、5及び6を参照して、実質的に本明細書中に記載される形態Cの無水ボセンタン。
【請求項53】
本実施例を参照して、実質的に本明細書中に記載される形態Aの非晶質ボセンタン。
【請求項54】
図7を参照して、実質的に本明細書中に記載される形態Aの非晶質ボセンタン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−508767(P2011−508767A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541098(P2010−541098)
【出願日】平成21年1月2日(2009.1.2)
【国際出願番号】PCT/GB2009/000009
【国際公開番号】WO2009/083739
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(501312451)シプラ・リミテッド (56)
【Fターム(参考)】