説明

ポケット付き壁面材とその施工方法

【課題】壁面等を湿潤状態に維持し、壁面緑化を可能にする。
【解決手段】壁面材1は、厚さ25mmの発泡ポリスチレンの基板11に基板面から突出するポケット2を設けたものである。ポケット2は、基板1と同じく発泡ポリスチレンを必要な大きさに切断し、接着剤で基板11に接着してある。基板11の裏側には、壁面材を貼り付ける壁面が多少の凹凸を有し平坦でない場合でも強固に貼り付けることができるように、溝や凹部が形成してある。溝の模様や凹部の配列は適宜なものとすることができる。ポケット2の底部には複数の穴21が形成してあり、ポケット2の内部の水分が穴21から徐々に排出されるようにしてある。ポケット内に土壌を充填し適宜の植物を植栽して、壁面材1を設置した壁面を緑化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の壁面やコンクリート構造物の壁面等を湿潤状態に保持できるようにすると共に、壁面を緑化して壁面全体の美観を向上させ、生態系保全に有効なものに転換することができる壁面材とその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の壁面の化粧方法として、自然石を貼り付けたシートで壁表面を被覆する方法が提案されている。この工法は、凹凸や曲面を有する壁面に対しても適用することができる化粧方法である。
【0003】
特許文献1(特開平11−170798号)は、柔軟なシート基材に自然石などの表面化粧材を貼り付けたものであり、コンクリート構造物の表面を簡単に自然石で構築されたもののように化粧することができる。
【0004】
降雨などによってシート表面の石材に供給された水は、比較的短時間で蒸発乾燥してシート表面が乾燥状態となり、景観上はコンクリート表面が自然石風となって一応の効果が得られるが、植物、小動物、昆虫等の生育の場として十分なものとはいえず、生態系を育成することが難しく、保水性の大きな石材を使用することによって表面に長期間をかけて苔を生育させる程度であった。
【特許文献1】特開平11−170798号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、建築物の壁面等を湿潤状態に維持し、壁面に植物が生育することができる場を形成して壁面を緑化するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
セメントコンクリート、合成樹脂、発泡樹脂製の基板にポケットが設けてある壁面材であって、壁面材を建築物の壁面に設置または既存の壁面に貼り付け、ポケットには土壌、人工土壌を充填して植物を生育させて壁面緑化を達成すると共に、夏季には、ポケットに保持した水分及び植物の水分蒸散作用によって、太陽熱による壁面の温度上昇を防止するものである。また、ポケットに植栽した植物によって、壁面を緑化し、見る人に安らぎを与えるものである。
【0007】
更には、ポケットの底面に穴を設けた壁面材を壁面に縦列に配列して設置し、ポケットが保持している水分を下側の壁面材に緩やかに流下させて、壁全体に水分を供給するものである。
基板を発泡樹脂で構成した場合、壁面材は軽量であって取り扱いが容易であり、また、断熱効果が期待できるので、壁面の緑化と共に省エネルギー効果を得ることができる。また、基板の裏側には凹部または溝を形成して、平坦でない壁面にも接着し易いようにした。
【発明の効果】
【0008】
ポケット内に充填された土壌等が降雨などの水分を保持するので、壁面材で形成された壁面を湿潤状態に維持し、ポケットに充填した土壌に植物を生育させることによって壁面を緑化することができる。
ポケットには土壌だけでなく、予め植物の種子や肥料、生育促進剤などを充填することができるので、植物が生育し、建築物の壁面を緑化することできる。
【0009】
また、ポケットの底部に穴を形成し、雨水がポケット内の土壌を湿潤状態にするだけでなく、水が穴を通過して下側に設置した壁面材のポケットに流下して、壁面全体に水分が十分供給されることになり、壁面を緑化することができる。
【0010】
夏季には、発泡樹脂の断熱効果と共にポケット内で生育した植物により太陽熱が吸収されるので、周囲温度も下がり室内が涼しくなるというメリットがあり、冷房費の節約となる。
壁面材は、発泡樹脂製であり軽量であるので取り扱いが容易であり、人手をあまり必要とせず、低コストで効率よく施工することができる。
ポケットを発泡樹脂とすると、素材自体の強度があまり大きくないので、壁面に設置した壁面材を手掛かりにしてよじ登ろうとしても、発泡樹脂のポケットが人の体重で破壊されたり、基板から剥離するので、壁面を登ることはほぼ不可能となり、保安上の問題はない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施例1
図1に示すように、壁面材1は、厚さ25mmのコンクリートの基板11(300×900mm)に5cm程度基板面から突出する発泡樹脂製のポケット2を基板11の端部に設けたものである。
ポケット2は、基板11と同じ厚さの発泡ポリスチレンを必要な大きさに切断し、基板11に接着剤で接着したものである。防犯上の懸念から、ポケットを構成する発泡ポリスチレンは、基板11よりも薄い板厚とし、壁面に設置した壁面材1のポケットを手掛かりにして壁面をよじ登ろうと試みた者の体重がポケット部分にかかったら、ポケット2が破壊したり、基板11から外れるようにするのが好ましい。
【0012】
ポケット2の内部には、補強の仕切りが中央部に設けてあり、底部には複数の穴21が形成してあり、ポケット2の内部の水分が穴21から徐々に排出されるようにしてある。
穴21にはポケット2内の土砂が水分と共に流出しないようにフィルター(図示しない)を設置、または、穴21の中に充填する。
ポケット2の中には粘土、砂などの土壌または人工土壌を充填する。土壌は、予め樹脂シートをポケットの形状に合わせた容器(鉢)に充填し、ポケットへの設置を容易にする。また、必要に応じてポケット2に充填した土壌に植物の種子や肥料、生育促進剤などを添加したり、ポケットの底部にヤシの繊維からなる保水マットを設ける。
【0013】
雨水等の水分は、ポケット2内の土壌に保持されると共に、ポケット2の底部の穴21を通過して下側の壁面材1に水分を供給する。
基板11を発泡スチロール等の発泡樹脂で構成した場合、基板11及びポケット2面に塗料を塗布して種々の色の壁面材とすることができる。
【0014】
実施例2
壁面材1は、厚さ25mmの発泡ポリスチレンの300×300(mm)の基板11に5cm程度基板面から突出するポケット2を基板11の端部に設けたものである。
ポケット11は、基板1と同様の厚さの発泡ポリスチレンを必要な大きさに切断し、接着剤で基板11に接着したものである。
基板11及びポケット2の発泡ポリスチレンの発泡度を調節することにより、種々の硬度の壁面材を提供することができる。
発泡ポリスチレン製の壁面材は、既存の壁面に貼り付けて使用するものであり、基板11の裏側には、壁面材1を貼り付ける壁面が多少の凹凸を有し平坦でなかったり、また、種々の材質の壁面であっても貼り付けることができるように、溝や凹部が形成してある。溝の模様や凹部の配列は適宜なものとすることができる。
【0015】
図3には、本発明の壁面材1を建築物に適用した例であり、壁面材1を縦列に間隔をあけて接着剤で壁面に貼り付けたものである。壁面材1の配列は、千鳥状など、適宜のパターンで配列して壁面が美観を与えるようにする。
雨水などの水分は、ポケット2の上部の開放部からポケット2内に入り、ポケット内の土壌を湿潤状態に保持すると共に、ポケット2の底部の穴21から沁み出し、下側に設置した壁面材のポケット2内の土壌を湿潤状態にする。水分が穴を通過する際には穴21に設置したフィルターによって、土壌の粒子の流出が阻止されるので、壁面が土壌によって汚染されることがない。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の壁面材を設置することによって、新築の建築物の壁面だけでなく、既存の建築物の壁面を緑化することが簡単にできる。
壁面材を発泡樹脂製とすると、軽量なので取り扱いが容易であると共に施工が簡単であり、低コストで壁面を緑化することができる。
壁面材を接着剤で壁面に貼り付けるだけでよいので専門技術を必要とせず、日曜大工によって建築物の壁面等が緑化可能である。また壁面材の設置位置は任意のものであるので、自宅の壁面を自分の好みにあうように、ポケット部分に植える植物の選択を含めて自由にデザインすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ポケット付き壁面材の正面図。
【図2】ポケット付き壁面材の側面図。
【図3】壁面緑化の施工例の正面図。
【符号の説明】
【0018】
1 壁面材
11 基板
2 ポケット
21 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に水等を収容するポケットが設けてある壁面材。
【請求項2】
請求項1において、基板及びポケットのいずれか、または両方が発泡樹脂である壁面材。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかにおいて、ポケット底部には穴が形成してあり、穴にはフィルターが設けてある壁面材。
【請求項4】
建築物の壁面に請求項1〜3のいずれかの壁面材を縦方向に間隔をあけて設置する壁面を形成する施工方法。
【請求項5】
請求項2の壁面材を既存の建築物の壁面に縦方向に間隔をあけて貼り付ける化粧した壁面を形成する施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−322219(P2006−322219A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146494(P2005−146494)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000229427)日本ナチュロック株式会社 (7)
【Fターム(参考)】