説明

ポップアップスプリンクラー

【課題】ノズル部の移動能力を高めたポップアップスプリンクラーを提供する。
【解決手段】ポップアップスプリンクラー1は、外筒2と、外筒2から突出可能に外筒2内に挿入されたノズル部3とを備えている。外筒2内では、ダイアフラム9が、外筒2内の空間を二室に仕切るようにして設けられ、ダイアフラム9は、ノズル部3に固定されている。給水室12に水が供給されると、水がダイアフラム9に圧力を加えることによりダイアフラム9がノズル部3を上方に移動させて、ノズル部3を外筒2から突出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ポップアップスプリンクラーに関する。
【背景技術】
【0002】
路面又は広場等のように不特定多数の人々が行きかう場所にスプリンクラーを設ける場合には、使用しない時にはできるだけ目立たないようにして事故やいたずらを防止するために、未使用時にはノズル部が収納されて使用時のみノズル部が上方にスライドするポップアップスプリンクラーが一般に用いられる。ポップアップスプリンクラーは、使用時のみ目につくものなので、事故やいたずら防止だけではなく、設置場所の見栄えを損なうことも防止できる。
【0003】
このような従来のポップアップスプリンクラーが、例えば、特許文献1及び2等に記載されている。このようなポップアップスプリンクラーは、外筒に摺動可能に挿入されたノズル部が、水圧及びコイルスプリングによって上下するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−161137号公報
【特許文献2】特開2006−281147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のポップアップスプリンクラーの構成では、一般にノズル部が細長い形状をしており、その断面積はあまり大きくはないので、水圧が小さい場合には十分にノズル部を上昇させることができにくくなるといった問題点があった。
【0006】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、ノズル部の移動能力を高めたポップアップスプリンクラーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るポップアップスプリンクラーは、外筒と、該外筒から突出可能に該外筒内に挿入されると共に散布液を散布するノズル部と、前記外筒の内部を二室に仕切ると共に前記ノズル部に固定されたダイアフラムとを備え、前記二室のうちの一方の室に前記散布液が供給されると、前記散布液が前記ダイアフラムに圧力を加えることにより該ダイアフラムが前記ノズル部を移動させて、該ノズル部を前記外筒から突出させる。
前記散布液が供給される室とは反対側の室内にばね部材が設けられ、該ばね部材の一端は、前記ダイアフラムに直接的に又は間接的に接続されるか若しくは該ダイアフラムが前記散布液によって圧力を加えられたときに該ダイアフラムに直接的に又は間接的に接触可能に対向すると共に、他端は、前記ばね部材が設けられた室の内壁に接続されてもよい。
前記ばね部材は、前記一端から前記他端に向かって、半径が増加または減少する形状であってもよい。
前記ノズル部は、上端面及び下端面を有し、該上端面から該下端面にかけて貫通する流通経路が形成されたインナーノズルと、下端が開口すると共に上端が閉じた形状のアウターノズルであって、前記下端から前記上端に向かって前記インナーノズルが挿入可能な挿入穴が形成され、前記アウターノズルの側面には、前記挿入穴と連通する散布開口が形成されているアウターノズルとを備え、前記散布開口の向きが前記ノズル部の長手方向軸に対して変更可能となるように、前記インナーノズルが前記挿入穴に挿入されるようにして前記アウターノズルが前記インナーノズルに固定されてもよい。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、散布液の圧力を受けたダイアフラムがノズル部を移動させて外筒からノズル部を突出させることにより、散布液の圧力を受ける面積が大きくなるので、ノズル部の移動能力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態に係るポップアップスプリンクラーの断面図であって、ノズル部が外筒から突出していない状態の断面図である。
【図2】この実施の形態に係るポップアップスプリンクラーにおいて、ダイアフラムをノズル部に固定する方法を説明するための断面図である。
【図3】この実施の形態に係るポップアップスプリンクラーにおいて、インナーノズルにアウターノズルを固定する方法を説明するための断面図である。
【図4】この実施の形態に係るポップアップスプリンクラーの断面図であって、ノズル部が外筒から突出した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
この発明の実施の形態に係るポップアップスプリンクラーの断面図を図1に示す。ポップアップスプリンクラー1は、外筒2と、外筒2から突出可能に外筒2内に挿入されたノズル部3とを備えている。尚、図1は、ノズル部3が外筒2から突出していない状態を示している。
【0011】
外筒2は、アッパーケース4と、ローワーケース5とを組み合わせて構成されている。アッパーケース4は、上面4aが閉じると共に下面が開口したコップ状の形状を有し、上面4aには、ノズル部3が挿入される突出孔6が形成されている。円筒形状の側面部4bには、通気孔7が形成されている。また、ローワーケース5は、上部が開口すると共に深さが異なる同心円状の二段の底部、すなわち第1底部5a及び第2底部5bを有した形状を有しており、第1底部5aの中心部には、供給ノズル8が設けられている。
【0012】
アッパーケース4の下端をローワーケース5の上部の開口に挿入するようにして、アッパーケース4とローワーケース5とが組み合わされ、それらの内部に空間が形成されている。当該空間内には、液体不透過性の材質からなるダイアフラム9が設けられている。ダイアフラム9は、その周縁部が、ローワーケース5の第2底部5bの外周縁から垂直上方に延びる円筒状の側面部5cの内周面と、アッパーケース4の側面部4cの外周面とに挟まれるようにして、当該空間内に固定されている。ダイアフラム9は、当該空間を2つの室に、すなわち、アッパーケース4側のノズル部収容室11と、ローワーケース5側の給水室12とに仕切っている。
【0013】
ノズル部3は、アウターノズル13と、アウターノズル13の内部に収容されたインナーノズル14とから構成され、突出孔6内を摺動可能に設けられている。ノズル部収容室11内には、ノズル部3の周囲を取り巻くようにして、ばね部材であるテーパースプリング15が設けられている。テーパースプリング15は、上端15aから下端15bに向かって半径が小さくなるように円錐台形状を有している。上端15aは、ノズル部収容室11の上面11aに接続されると共に、下端15bは、ワッシャー28に対向するように位置している。
【0014】
図2に示されるように、インナーノズル14は、本体部21と、ノズルボルト22とから構成されている。本体部21は、下面21bから上面21aにかけて貫通するように、貫通経路23が形成されている。貫通経路23は、下面21bから上面21aに向かって順次設けられた第1経路23aと、第2経路23bと、第3経路23cとから構成され、これらの内径はこの順序で小さくなっている。本体部21の外周面には、第2経路23b及び第3経路23cのそれぞれに対応する位置に、円環状の窪み部24及び25が形成されており、窪み部25には、Oリング26が収容されている。
【0015】
ノズルボルト22は、頭部22aと、頭部22aよりも外径の小さい軸部22bとから構成されている。ノズルボルト22には、頭部22aの端面22a1から軸部22bの先端面22b1にかけて貫通する貫通経路27が形成されている。ここで、本体部21とノズルボルト22とを組み合わせてインナーノズル14を構成したときに、本体部21の上面21aは、インナーノズル14の上端面を構成し、ノズルボルト22の頭部22aの端面22a1は、インナーノズル14の下端面を構成し、貫通経路23及び27は、インナーノズル14の流通経路を構成する。
【0016】
ダイアフラム9の中心部分には、穴9aが設けられている。2枚のワッシャー28,28の穴が穴9aと一致するようにして、2枚のワッシャー28,28がダイアフラム9をその両面から挟み、各ワッシャー28の穴及び穴9aにノズルボルト22の軸部22bを挿入し、さらに軸部22bを第1経路23aに挿入することにより、ダイアフラム9がインナーノズル14に固定される。
【0017】
図3に示されるように、アウターノズル13は、円筒状の側面部13bと、側面部13bの上端に設けられた、側面部13bの外形よりも大きな半径を有する円盤状の上面部13aとから構成されている。これにより、アウターノズル13は、下端が開口すると共に上端が閉じた形状であり、下端から上端に向かって挿入穴31が構成されている。側面部13bには、上面部13aに隣接するように、散布開口32が設けられている。また、側面部13bには、散布開口32よりも下方の位置に、固定孔33が設けられている。固定孔33の内周面には、ねじ溝が形成されており、固定ねじ34を当該ねじ溝に螺合させながら固定孔33に挿入し、固定ねじ34の先端を、インナーノズル14の外周面に形成された窪み部24に当接させることにより、アウターノズル13がインナーノズル14に固定されている。窪み部24は、インナーノズル14の外周面に沿った円環状であるので、アウターノズル13は、ノズル部3の長手方向軸Lに対して360°いずれの向きにも、インナーノズル14に固定することができる。その結果、散布開口32は、長手方向軸Lに対して360°いずれの向きにも変更可能に向かせることができる。
【0018】
次に、この実施の形態に係るポップアップスプリンクラーの動作について説明する。
ポップアップスプリンクラー1の未使用時には、図1に示されるように、ノズル部3は、外筒2から突出しない状態になっている。このため、アッパーケース4の上面4aが地面によってわずかに隠れるようにしてポップアップスプリンクラー1を設置することにより、未使用時には、ポップアップスプリンクラー1を見えないようにすることができ、その結果、ポップアップスプリンクラー1を設けた場所の見栄えを損なわないようにすることができる。
【0019】
ポップアップスプリンクラー1から、散布液である水を散布する場合には、まず水を、供給ノズル8を介して給水室12内に供給する。給水室12内が水で充満されると、水がダイアフラム9に圧力を加え、これにより、ダイアフラム9がノズル部収容室11に向かって膨張する。ダイアフラム9が膨張し始めると、テーパースプリング15の下端15bがワッシャー28に接触し、ワッシャー28を介してダイアフラム9がテーパースプリング15を圧縮し始める。ダイアフラム9の膨張する力と、テーパースプリング15の圧縮に抗する力との差に基づいて、ダイアフラム9は、ノズル部3を上方へ移動させる。その結果、図4に示されるように、ノズル部3が突出孔6から突出する。ポップアップスプリンクラー1では、ダイアフラム9の全体で水圧を受けていることにより、水圧を受ける面積が大きいので、ダイアフラム9によるノズル部3の上昇能力は高くなる。尚、ダイアフラム9がノズル部収容室11に向かって膨張する際には、ノズル部収容室11内の空気は、通気孔7を介して排気される。
【0020】
給水室12内に供給された水は、ダイアフラム9を膨張させると同時に、その一部が、ノズルボルト22の貫通経路27に浸入し、第1経路23a、第2経路23b、第3経路23cを順次流通し、挿入穴31内に排出されて、散布開口32から散布される。尚、既に記載したように、散布開口32は、ノズル部3の長手方向軸Lに対して360°いずれの向きにでも向かせることができるので、予め散布開口32の向きを所望の向きに設定しておくことにより、ポップアップスプリンクラー1から所望の方向へ水を散布することができる。
【0021】
ポップアップスプリンクラー1からの水の散布を停止する場合には、給水室12への水の供給を停止する。すると、ダイアフラム9が膨張しなくなるので、テーパースプリング15の圧縮に抗する力が勝ることになり、テーパースプリング15の下端15bがワッシャー28を下方に押し始める。これにより、ダイアフラム9が給水室12に向かって押され、これに伴ってノズル部3が下方へ移動するので、図1に示されるような、ノズル部3が外筒2から突出していない状態に戻る。
【0022】
このように、水圧を受けたダイアフラム9がノズル部3を上方に移動させて外筒2からノズル部3を突出させることにより、水圧を受ける面積が大きくなるので、ノズル部3の上昇能力を高めることができる。尚、ダイアフラム9は、外筒2内の空間を、ノズル部収容室11及び給水室12の二室に仕切っていることにより、水が外筒2とノズル部3との間に漏れることはないので、ポップアップスプリンクラー1には、シール部材として別の構成要件を設ける必要がなくなる。
【0023】
また、テーパースプリング15が、上端15aから下端15bに向かって半径が小さくなるように円錐台形状を有していることにより、テーパースプリング15が圧縮する際に、テーパースプリング15の各ピッチの円形部分は、その上下のピッチの円形部分の間に重なりあわずに収容されていく。その結果、テーパースプリング15の長さは、最も圧縮したときには、実質的に、テーパースプリング15を構成する金属棒の外径程度になるので、アッパーケース4の長さを短くすることができ、ポップアップスプリンクラー1の大きさをコンパクトにすることができる。
尚、この実施の形態では、テーパースプリング15は、上端15aから下端15bに向かって半径が小さくなるような形状であったが、上端15aから下端15bに向かって半径が大きくなるような形状であってもよい。
【0024】
さらに、アウターノズル13は、ノズル部3の長手方向軸Lに対して360°いずれの向きにも、インナーノズル14に固定することができるので、散布開口32を、ノズル部3の長手方向軸Lに対して360°いずれの向きにでも向かせることができ、予め散布開口32の向きを所望の向きに設定しておくことにより、ポップアップスプリンクラー1から所望の方向へ水を散布することができる。
【0025】
この実施の形態では、テーパースプリング15の下端15bは、ワッシャー28に対向するように位置していたが、この形態に限定するものではない。ワッシャー28に接続させて、すなわち、ワッシャー28を介してダイアフラム9に間接的に接続させてもよい。また、ワッシャー28を介さずに、ダイアフラム9に直接対向させたり、ダイアフラム9に直接接続させたりしてもよい。
また、テーパースプリング15の上端15aは、ノズル部収容室11の上面11aに接続されていたが、ノズル部収容室11の側面に接続されていてもよい。すなわち、上端15aは、ノズル部収容室11の内壁に接続されていればよい。
【符号の説明】
【0026】
1 ポップアップスプリンクラー、2 外筒、3 ノズル部、11 ノズル部収容室(反対側の室)、11a (ノズル部収容室の)上面(内壁)、12 給水室(一方の室)、13 アウターノズル、14 インナーノズル、15 テーパースプリング(ばね部材)、15a (テーパースプリングの)上端(ばね部材の他端)、15b (テーパースプリングの)下端(ばね部材の一端)、21a (本体部の)上面(インナーノズルの上端面)、22a1 (ノズルボルトの頭部の)端面(インナーノズルの下端面)、23,27 貫通経路(流通経路)、31 挿入穴、32 散布開口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と、
該外筒から突出可能に該外筒内に挿入されると共に散布液を散布するノズル部と、
前記外筒の内部を二室に仕切ると共に前記ノズル部に固定されたダイアフラムと
を備え、
前記二室のうちの一方の室に前記散布液が供給されると、前記散布液が前記ダイアフラムに圧力を加えることにより該ダイアフラムが前記ノズル部を移動させて、該ノズル部を前記外筒から突出させるポップアップスプリンクラー。
【請求項2】
前記散布液が供給される室とは反対側の室内にばね部材が設けられ、
該ばね部材の一端は、前記ダイアフラムに直接的に又は間接的に接続されるか若しくは該ダイアフラムが前記散布液によって圧力を加えられたときに該ダイアフラムに直接的に又は間接的に接触可能に対向すると共に、他端は、前記ばね部材が設けられた室の内壁に接続される、請求項1に記載のポップアップスプリンクラー。
【請求項3】
前記ばね部材は、前記一端から前記他端に向かって、半径が増加または減少する形状である、請求項2に記載のポップアップスプリンクラー。
【請求項4】
前記ノズル部は、
上端面及び下端面を有し、該上端面から該下端面にかけて貫通する流通経路が形成されたインナーノズルと、
下端が開口すると共に上端が閉じた形状のアウターノズルであって、前記下端から前記上端に向かって前記インナーノズルが挿入可能な挿入穴が形成され、前記アウターノズルの側面には、前記挿入穴と連通する散布開口が形成されているアウターノズルと
を備え、
前記散布開口の向きが前記ノズル部の長手方向軸に対して変更可能となるように、前記インナーノズルが前記挿入穴に挿入されるようにして前記アウターノズルが前記インナーノズルに固定される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポップアップスプリンクラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−188284(P2010−188284A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35608(P2009−35608)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(391035669)株式会社イーエス・ウォーターネット (7)
【出願人】(301042686)株式会社三菱地所設計 (24)
【Fターム(参考)】