説明

ポリウレタンフォームの製造方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリウレタンフォームの製造方法に関するものであり、更に詳しくは、車両用のシートクッション材として、機械的物性および乗り心地性などの性能を備えた、より低密度の軟質ポリウレタンフォームの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】従来、軟質ポリウレタンフォームは、その優れたクッション性を生かし、自動車などのクッション材に広く使用されてきた。特に、ジフェニルメタンジイソシアネート及びポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートをイソシアネートの主成分として用いる方法は、生産性の向上及び毒性の強いトリレンジイソシアネートの使用を少なくするが故の作業環境の向上などから、近年非常に注目されている。この軟質ポリウレタンフォームの製造方法としては、発泡剤として水とフロン11やフロン123等の低沸点弗素化合物を組み合わせて使用する方法が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの弗素化合物は大気中のオゾン層を破壊するという理由からその使用が出来なくなり、水単独でのポリウレタンフォームの製法の開発が進められている。例えば、高官能価気泡開放剤を使用した軟質ポリウレタンフォームの製造が知られている(特開平2−14210号公報参照)。
【0004】しかしながら、低沸点弗素化合物を使用せずに水単独で発泡を行う方法では、得られるポリウレタンフォームの反発弾性や圧縮永久歪等の物性が悪化するという問題がある。高官能価気泡開放剤を使用する方法は実質的に、ポリイソシアネート成分がトリレンジイソシアネート主体のポリウレタンフォームの製造方法であり、生産性、作業環境の点で問題がある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らはこれらの問題点を解決すべく鋭意検討のすえ、特定のポリオールとイソシアネートを組み合わせることにより、発泡剤として水を使用しても反発弾性や圧縮永久歪等のフォーム物性の良好なポリウレタンフォームの製造方法を見出し本発明を完成した。
【0006】即ち本発明は、ジフェニルメタンジイソシアネート及び/又はポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートもしくはこれらの変性物とその他のポリイソシアネートとを含有するポリイソシアネート成分、下記ポリオール(a1)及び下記ポリオール(a2)から選ばれた少なくとも1種のポリオール中でビニル系モノマーを重合させて得られる重合体ポリオールと下記ポリオール(a1)及び下記ポリオール(a2)とを含有し、かつ、(a1)と(a2)の重量比が100:1〜100:12であるポリオール成分、発泡剤として水、触媒及び整泡剤からポリウレタンフォームを製造する方法であって、前記ポリイソシアネート成分において、前記のジフェニルメタンジイソシアネート及び/又はポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートもしくはこれらの変性物の含有量が50重量%以上であり、前記のその他のポリイソシアネートの含有量が50重量%以下であること、を特徴とする前記方法である。
【0007】ポリオール(a1):1分子当りの平均官能基数が2.5〜6.0であり、水酸基価が20〜40(mgKOH/g) であり、末端にオキシエチレンが付加されており、オキシエチレン単位の含有量が5〜25重量%のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール。ポリオール(a2):1分子当りの平均官能基数が2.0〜6.0であり、水酸基価が37〜80(mgKOH/g) であり、オキシエチレン単位の含有量が50〜85重量%であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール。
【0008】さらに本発明の内容を詳しく説明する。本発明におけるポリオール(a1)としては、例えば、アルコール類、フェノール類、アミン類のアルキレンオキシド付加物が挙げられる。さらに具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、等の多価アルコールのアルキレンオキシド付加物、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンのアルキレンオキシド付加物、エチレンジアミン等のアルキレンオキシド付加物、等が挙げられる。これらのポリオールは2種以上併用しても良い。アルキレンオキシドは、プロピレンオキシド(以下POと略称する。)及びエチレンオキシド(以下EOと略称する。)である。さらに詳しくは、POとEOをブロック付加したものが好ましく、末端にEOを付加して、オキシエチレン単位の含有量が5〜25重量%のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールである。ポリオール(a1)の1分子当りの平均官能基数は2.5〜6.0であり、1分子当りの水酸基価は20〜40(mgKOH/g) である。オキシエチレン単位の含有量が5重量%未満では発泡終了直前の硬化が不十分となり、フォームが崩壊しやすく、25重量%を越えると、独立気泡が多くなり、フォームが収縮しやすくなる。1分子当りの平均官能基数が2.5未満では圧縮永久歪が悪くなり、硬化時間も長くなるため、実用性に乏しく、6.0を越えると独立気泡が多くなり、伸びも悪くなる。水酸基価が20(mgKOH/g) 未満では圧縮永久歪が悪く硬化時間も長くなり、40(mgKOH/g) を越えると独立気泡が多くなるため実用性に乏しい。
【0009】本発明におけるポリオール(a2)としては、例えば、アルコール類、フェノール類、アミン類のアルキレンオキシド付加物が挙げられる。アルコール類、フェノール類、アミン類等としては、具体的には前記のポリオール(a1)におけるのと同様のものが挙げられる。これらのポリオールは2種類以上併用しても良い。アルキレンオキシドは、EO及びPOである。さらに詳しくは、ポリオール(a2)は、POとEOをランダム付加したものが好ましく、オキシエチレン単位の含有量が50〜85重量%のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールである。ポリオール(a2)の1分子あたりの平均官能基数は2.0〜6.0、好ましくは2.5〜4.0であり、水酸基価は37〜80(mgKOH/g) である。オキシエチレン単位の含有量が50重量%未満では反発弾性や圧縮永久歪が悪くなり、目的とするフォームが得られない。また、85重量%を越えると、ポリオール(a1)との相溶性が悪くなる。1分子当りの平均官能基数が2.0未満では圧縮永久歪が悪くなり、硬化時間も長くなるため、実用性に乏しく、6.0を越えると独立気泡が多くなり伸びも悪くなる。水酸基価が37(mgKOH/g) 未満では反発弾性や圧縮永久歪が悪くなり、80(mgKOH/g) を越えると独立気泡が多くなって目的とするフォームが得られない。
【0010】本発明においてポリオール成分中のポリオール(a1)とポリオール(a2)との重量比は、100:1〜100:12である。ポリオール(a1)とポリオール(a2)との重量比が、100:1未満では、反発弾性や圧縮永久歪が悪くなりやすく、目的とするフォームが得にくい。また、100:12を越えると、硬さが出しにくくなり硬化時間も長くなるため、実用性に乏しくなる。本発明において重合体ポリオールは、公知の方法で製造することができ、例えば、上記に示したポリオール(a1)及び(a2)から選ばれた少なくとも1種のポリオール中で、ラジカル開始剤存在下、アクリロニトリル、スチレン等のビニル系モノマーを重合させ、安定分散させたものが挙げられる。製造された重合体ポリオール中のビニル系ポリマーの含有量は、40重量%以下であることが好ましい。
【0011】本発明における重合体ポリオールは、重合体ポリオール以外のポリオールと混合して用いることもできる。本発明において、ポリオール成分中のビニル系ポリマーの含有量は1〜15重量%、特に1〜10重量%が好ましい。
【0012】本発明におけるポリイソシアネート化合物としては、生産性の向上や作業環境の向上などの理由から、ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/またはポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートもしくはその変性物(以下MDIと総称する。)の含有量は50重量%以上、望ましくは80〜97.5重量%であり、他のポリイソシアネートの含有量は50重量%以下、好ましくは2.5〜20重量%である。他のポリイソシアネートとしては、通常ポリウレタンフォームの製造に使用されるものはすべて使用でき、例えば、2,4−、2,6−トリレンジイソシアネートが挙げられる。ポリイソシアネート化合物中のMDI成分としては、2,2´−及び2,4´−ジフェニルメタンジイシアネートを5〜20重量%、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートを20〜70重量%含有し、該MDI成分のイソシアネート基含有量が18.8〜32.0重量%であるものが特に好ましい。また、ジフェニルメタンジイソシアネートまたはポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートの一部をウレタン変性したものも好適に使用できる。
【0013】本発明における発泡剤としては、水を単独で使用する。本発明における触媒としては、ウレタン化反応を促進する触媒はすべて使用でき、例として、トリエチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N´,N´−テトラメチルヘキサメチレンジアミンなどの3級アミン類、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム等のカルボン酸の金属塩、ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエート等の有機金属化合物が挙げられる。本発明における整泡剤としては、通常のポリウレタンフォームの製造に用いられるものはすべて使用できる。
【0014】そして、本発明においては、乳化剤およびフォーム安定剤のような界面活性剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤のような老化防止剤、炭酸カルシウムや硫酸バリウムのような充填剤、難燃剤、可塑剤、着色剤、抗カビ剤等の公知の各種添加剤、助剤を必要に応じて使用することができる。
【0015】
【発明の効果】本発明のポリウレタンフォームの製造方法によれば、フロンの代わりに水単独で行う方法で生じるポリウレタンフォームの反発弾性や圧縮永久歪等の物性が悪化するという問題を解決し、反発弾性や圧縮永久歪等の物性が良好な軟質ポリウレタンフォームを製造することができる。また、オゾン層を破壊するフロン(例えば、フロン11やフロン123など)を使用しないため、地球環境の破壊問題も解決できる。さらに、本発明の方法により、従来より低密度の軟質ポリウレタンフォームを製造することもできる。
【0016】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中において、部及び%は、ことわりのない限り、それぞれ重量部及び重量%を示す。
【0017】実施例1〜5及び比較例1及び2表1及び表2に示す配合割合(部)で、金型内でポリウレタンフォームを発泡させた後、金型より取り出して、得られたポリウレタンフォームの物性を測定した。各処方にて、注入量を変えてポリウレタンフォームの製造を2回実施した。
〔発泡条件〕
金型形状:400×400×100mm材質 :アルミニウム金型温度:55±2℃ミキシング方法:高圧マシンミキシング原料温度 :25±2℃キュアー条件 :55±2℃×4分
【0018】〔使用原料〕
ポリオール成分ポリオールa1−1:平均官能基数=3.0、水酸基価=28(mgKOH/g) 、EOの末端含有量=16%のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールポリオールa1−2:平均官能基数=3.5、水酸基価=28(mgKOH/g) 、EOの末端含有量=16%のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールポリオールa1−3:平均官能基数=3.2、水酸基価=27.6(mgKOH/g) 、EOの末端含有量=15%のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールと下記ポリオールa2とを90/5の重量比で混合したポリオール中でビニル系モノマーを重合させて得た重合体ポリオール、ビニル系ポリマー含有量=5%ポリオールa1−4:ポリオールa1−1中でビニル系モノマーを重合させて得た重合体ポリオール、ビニル系ポリマー含有量=20%ポリオールa2 :平均官能基数=3.0、水酸基価=48.1(mgKOH/g)、全EO含有量=70%のランダム付加ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール
【0019】ポリイソシアネート成分ポリイソシアネートB−1:MDI−A/T−80=95/5(重量比)の混合物ポリイソシアネートB−2:MDI−A/T−80=90/10(重量比)の混合物ポリイソシアネートB−3:2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート含有量=1%、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート含有量=60%、イソシアネート基含有量=31%のMDIポリイソシアネートB−4:MDI−A/T−80=20/80(重量比)の混合物MDI−A:2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート含有量=10%、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート含有量=30%、イソシアネート基含有量=25%のMDIT−80 :2,4−トリレンジイソシアネート/2,6−トリレンジイソシアネート=80/20(重量比)の混合物
【0020】触媒触媒A:東ソー株式会社製TEDA−L33触媒B:東ソー株式会社製TOYOCAT−ET触媒C:東ソー株式会社製TOYOCAT−MR整泡剤:東レ株式会社製SRX−274C
【0021】〔ポリウレタンフォームの物性の測定方法〕
ポリウレタンフォームの物性の測定は、JIS K 6401の方法に基づいて行った。
【0022】
【表1】


【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】 ジフェニルメタンジイソシアネート及び/又はポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートもしくはこれらの変性物とその他のポリイソシアネートとを含有するポリイソシアネート成分、下記ポリオール(a1)及び下記ポリオール(a2)から選ばれた少なくとも1種のポリオール中でビニル系モノマーを重合させて得られる重合体ポリオールと下記ポリオール(a1)及び下記ポリオール(a2)とを含有し、かつ、(a1)と(a2)の重量比が100:1〜100:12であるポリオール成分、発泡剤として水、触媒及び整泡剤からポリウレタンフォームを製造する方法であって、前記ポリイソシアネート成分において、前記のジフェニルメタンジイソシアネート及び/又はポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートもしくはこれらの変性物の含有量が50重量%以上であり、前記のその他のポリイソシアネートの含有量が50重量%以下であること、を特徴とする前記方法。ポリオール(a1):1分子当りの平均官能基数が2.5〜6.0であり、水酸基価が20〜40(mgKOH/g) であり、末端にオキシエチレンが付加されており、オキシエチレン単位の含有量が5〜25重量%のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール。ポリオール(a2):1分子当りの平均官能基数が2.0〜6.0であり、水酸基価が37〜80(mgKOH/g) であり、オキシエチレン単位の含有量が50〜85重量%であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール。

【特許番号】特許第3095538号(P3095538)
【登録日】平成12年8月4日(2000.8.4)
【発行日】平成12年10月3日(2000.10.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−210652
【出願日】平成4年7月16日(1992.7.16)
【公開番号】特開平6−49171
【公開日】平成6年2月22日(1994.2.22)
【審査請求日】平成10年1月28日(1998.1.28)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【参考文献】
【文献】特開 昭51−70286(JP,A)
【文献】特開 昭61−2723(JP,A)
【文献】特開 平2−11614(JP,A)
【文献】特開 平3−14812(JP,A)
【文献】特開 平5−93029(JP,A)
【文献】特開 平5−262845(JP,A)