説明

ポリブチレンテレフタレートの製造方法

【課題】
カルボキシル末端基が低く、かつ異物が少ない高品質のポリブチレンテレフタレートを安定して直接エステル化反応し、重縮合反応する製造方法を提供する。
【解決手段】
テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオールとを、有機チタン化合物の存在下でエステル化反応させた後、次いで重縮合反応させてポリブチレンテレフタレートを製造する方法であって、エステル化反応をさせた後に、有機チタン化合物を添加し、さらに、アルカリ金属の有機カルボン酸塩およびアルカリ土類金属の有機カルボン酸塩から選ばれる少なくとも1種を、エステル化反応をさせた後に、添加するポリブチレンテレフタレートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリブチレンテレフタレートの製造方法に関し、特に、末端カルボキシル基濃度が低く、かつ異物が少なく、優れた品質を維持し、ポリブチレンテレフタレートを生産性よく直接エステル化し、かつ、重縮合することができるポリブチレンテレフタレートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレート(以下PBTと記載する場合がある)は、優れた物理的、化学的性質を有するため、繊維、フィルム、その他の成形品など、種々の用途に広く用いられている。また、ポリブチレンテレフタレートは、強度や弾性率等の機械特性、耐熱性等に優れているため、特にエンジニアリングプラスチックとして広く用いられている。
【0003】
このようなPBTの製造方法の中で、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとのエステル化反応によりビスヒドロキシブチルテレフタレートおよびその低重合物を得るエステル化工程と、ビスヒドロキシブチルテレフタレートおよびその低重合物を高温、高真空下で過剰の1,4−ブタンジオールを留出させつつ高重合度PBTを得る重縮合工程とからなる直接連続重合を用いた製造方法は、従来の生産性を著しく向上させる技術として、現在主流に成りつつある。この製造方法では、触媒にチタン化合物やスズ化合物を用いた反応促進を行い、かつ分解抑制剤にリン化合物などを添加剤として用いる技術が好適に用いられている。特に有機チタン化合物は、原料の1,4−ブタンジオールが分解して副生するテトラヒドロフランの発生量を低減し、高粘度品を得る場合の重合反応を効率化できる。
【0004】
一方、PBTの重合速度を上げるため、有機チタン化合物を過剰に入れると、重合速度は早くなるが、異物が発生するとう問題が生じる。有機チタン化合物の添加量を抑えると、重合速度が遅延するため、重合温度を上げざるを得ず、結果的に末端カルボキシル基濃度が上昇するという問題があった。PBTの末端カルボキシル基が上昇すると、耐加水分解性が悪化し、最終的には引張破断強度の低下といった、物性低下を引き起こす等の問題が生じるため、末端カルボキシル基濃度の低いPBTの製造方法の確立が望まれている。
【0005】
末端カルボキシル基濃度を下げる処方として、有機チタン化合物または/およびスズ化合物を触媒として使用して、一箇所に該触媒を添加し、かつ、アルカリ化合物を添加することで末端カルボキシル基濃度を下げる方法が知られている(特許文献1,2参照)。
【0006】
しかし、特許文献1,2記載の方法では、PBTポリマー中に異物が発生するため、有機チタン化合物または/およびスズ化合物の添加量を抑え気味とするため、十分な触媒活性が得られず、重合時間が長くなるため、末端カルボキシル基濃度が上昇し、その抑制対策として、アルカリ化合物を添加しても、一定の末端カルボキシル基濃度低減効果は得られるが、十分な末端カルボキシル基濃度低減効果は得られず、異物も多くなる等の問題があった。
【0007】
また、特許文献3記載の方法では、有機チタン触媒をエステル化反応槽とエステル化反応槽以降に分割添加しているため、重合触媒活性が高く、重合時間は短縮され、異物が少なく、一定の末端カルボキシル基濃度低減効果は得られるが、十分な効果は得られないという問題があった。
【特許文献1】特開2001−114879号公報
【特許文献2】特開2001−114880号公報
【特許文献3】特開昭47−98939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来技術における問題点か解決すべく鋭利検討した結果、達成されたものであり、その目的は、末端カルボキシル基濃度が低く、かつ異物が少ない成型品、フィルム、モノフィラメント、繊維等に好適に使用することができる高品位のポリブチレンテレフタレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、有機チタン化合物の存在下でエステル化反応させた後、有機チタン化合物を添加し、エステル化反応以降にアルカリ金属の有機カルボン酸塩またはアルカリ土類金属の有機カルボン酸塩を添加することによって、上記の課題が効果的に達成できることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明のポリブチレンテレフタレートの製造方法は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオールとを、有機チタン化合物の存在下でエステル化反応させた後、次いで重縮合反応させてポリブチレンテレフタレートを製造する方法であって、エステル化反応をさせた後に、有機チタン化合物を添加し、さらに、アルカリ金属の有機カルボン酸塩およびアルカリ土類金属の有機カルボン酸塩から選ばれる少なくとも1種を、エステル化反応をさせた後に、添加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、有機チタン化合物を分割添加することから、エステル化反応時に発生する異物が減少し、エステル化反応以降に添加する有機チタン化合物により重合触媒活性が高く、重合温度を低くすることができ、さらに、末端カルボキシル基濃度の低減が達成できる。本発明によれば、アルカリ金属の有機カルボン酸塩またはアルカリ土類金属の有機カルボン酸塩を添加することでさらに末端カルボキシル基濃度が低くすることが可能となる。本製造法でPBTを製造した場合、従来の方法で製造した場合よりも、異物が少なく、低カルボキシル末端基が可能となり、品質の優れたPBTを得ることができる。
【0012】
本発明のポリブチレンテレフタレートの製造方法は、成形品、フィルム、モノフィラメント、繊維等に好適に使用することができる高品位のPBTを安定して得ることができる。本発明で得られたPBTは、品質に優れるので各種の自動車部品や電気・電子部品などに有用に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明において製造されるポリブチレンテレフタレート(以下PBTと記載する場合がある)とは、酸性分にテレフタル酸を、ジオール成分に1,4−ブタンジオールを用いた重合反応によって得られた、主鎖にエステル結合を有する高分子量の熱可塑性ポリエステルである。テレフタル酸以外の酸成分および/または1,4−ブタンジオール以外のジオール成分を共重合成分として一部用いることもできる。この場合、酸性分の例として、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、セバシン酸、アジピン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸等が、ジオール成分の例としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族ジオールなどがあげられる。これらの共重合成分はそれぞれテレフタル酸または1,4−ブタンジオールに対して40モル%以下であることが好ましい。
【0015】
本発明では、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオールとを、有機チタン化合物の存在下でエステル化反応させる。
【0016】
本発明の好ましい形態としては、ジカルボン酸成分に対するジオール成分の仕込みモル比は1.4〜2.0が好ましく、1.6〜1.9がより好ましい。
【0017】
本発明では、好ましくは、エステル化反応は、エステル化反応槽で行う。本発明に用いるエステル化反応槽の型式は、例えば、縦型攪拌完全混合槽、縦型熱対流式混合槽、棚段型反応槽などを用いることができ、複数の反応槽を用いる場合はこれら同種または異種の複数基の槽を直列する複数槽とすることができる。本発明においては、より好ましくは縦型撹拌完全混合槽である。
【0018】
本発明では、有機チタン化合物の存在下でエステル化反応させる。有機チタン化合物は、通例、エステル化反応触媒として作用する。本発明で好ましく用いられる有機チタン化合物は、
(RO)nTi(OR4−n
(ただし、R、Rは炭素数1〜10の脂肪族、脂環族または芳香族の炭化水素基、nは0〜4の数字(小数含む)である。)で表されるチタン酸エステルおよび縮合物で代表される。
【0019】
本発明でエステル化反応に用いる有機チタン化合物は、具体的には、チタン酸のメチルエステル、テトラ−n−プロピルエステル、テトライソプロピルエステル、テトラ−n−ブチルエステル、テトライソブチルエステル、テトラ−tert−ブチルエステル、テトラ−2エチルヘキシルエステル、テトラオクチルエステル、フェニルエステル、ベンジルエステル、トリルエステルあるいはこれらの混合エステルなどがある。これらの中でも安価に入手できることからチタン酸のテトラ−n−プロピルエステル(テトラ−n−プロピルチタネート)、テトライソプロピルエステル(テトラ−イソプロピルチタネート)、テトラ−n−ブチルエステル(テトラ−n−ブチルチタネート)が好ましく、チタン酸のテトラ−n−ブチルエステル(テトラ−n−ブチルチタネート)が特に好ましく用いられる。これらの有機チタン化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用することができる。
【0020】
エステル化反応において、有機チタン化合物の添加量は、チタン原子換算でポリマー総重量に対して20〜60ppmであることが好ましく、25〜55ppmがより好ましい。添加量が20〜60ppmであると、エステル化速度が速く、THFの副性が少ない。
【0021】
本発明におけるエステル化反応は、有機チタン化合物の存在下で、反応温度は、好ましくは、210〜260℃、より好ましくは、220〜250℃で、圧力は、好ましくは、13.3〜93kPa以下、より好ましくは、20〜87kPaの減圧下で行うことが好ましい条件として挙げられる。
【0022】
エステル化反応における有機チタン化合物の添加方法は、具体的には、エステル化反応槽へ直接または還流液戻りラインに直接供給する方法、ジオール成分にて希釈または溶解して反応槽または還流液戻りラインに供給する方法、スラリー化する際、同時に調整する方法、原料スラリーをエステル化反応槽に供給するラインに定量ポンプで供給する方法などが挙げられる。
【0023】
本発明のポリブチレンテレフタレートは、好ましくは、エステル化反応させた後、連続的に重縮合反応させる。本発明のポリブチレンテレフタレートは、より好ましくは、エステル化反応させた後、重縮合反応槽で連続的に重縮合反応させる。
【0024】
本発明のポリブチレンテレフタレートは、さらに好ましくは、直列連続槽型反応器を用いて連続的に重合することで製造される。具体的には、ジオール成分とジカルボン酸成分を主体とする原料をスラリー調整し、そのスラリーをエステル化反応槽に供給しエステル化反応を行い、得られたエステル化反応生成物であるオリゴマーを、例えば、第一重縮合反応槽及び最終重縮合槽を経て重縮合反応させることができる。得られたポリブチレンテレフタレートは、最終重縮合槽の底部よりダイを経てストランド状に抜き出し、冷却水にて水冷した後、ペレタイザーでカッティングし、ペレット状などの粒状体とすることが好ましい。
【0025】
本発明において、好ましくもちいられるエステル化反応槽の留出口には、精留塔をつけることがより好ましく、精留塔により留出する水及びテトラヒドロフランと1,4−ブタンジオールを分離することができる。精留塔の塔頂からは、好ましくは、水及びテトラヒドロフランを主成分とする留出物が留出され、コンデンサーで凝縮され、回収工程へ送液される。1,4−ブタンジオールを主成分とする留出物は、好ましくは、精留塔の底部で凝縮し、エステル化反応槽へ返送される。また、その際に、エステル化反応槽中でのモル比を調整するため、エステル化反応槽へ返送される1,4−ブタンジオールの一部を系外へ留出させてもよい。この場合、留出させた1,4−ブタンジオールを主成分とする留出物は再度、原料として用いることができ、精留して使用してもよいし、そのまま使用してもよい。
【0026】
本発明ではエステル化反応させた後に、有機チタン化合物を添加する。エステル化反応させた後に添加する有機チタン化合物は、好ましくは、重縮合反応の触媒として作用する。
【0027】
本発明で、エステル化反応させた後に添加される有機チタン化合物は、好ましくは、
(RO)nTi(OR4−n
(ただし、R、Rは炭素数1〜10の脂肪族、脂環族または芳香族の炭化水素基、nは0〜4の数字(小数含む)である。)で表されるチタン酸エステルおよび縮合物で代表される。
【0028】
本発明で、エステル化反応させた後に添加される有機チタン化合物は、具体的には、チタン酸のメチルエステル、テトラ−n−プロピルエステル、テトライソプロピルエステル、テトラ−n−ブチルエステル、テトライソブチルエステル、テトラ−tert−ブチルエステル、テトラ−2エチルヘキシルエステル、テトラオクチルエステル、フェニルエステル、ベンジルエステル、トリルエステルあるいはこれらの混合エステルなどがある。これらの中でも安価に入手できることからチタン酸のテトラ−n−プロピルエステル(テトラ−n−プロピルチタネート)、テトライソプロピルエステル(テトラ−イソプロピルチタネート)、テトラ−n−ブチルエステル(テトラ−n−ブチルチタネート)が好ましく、チタン酸のテトラ−n−ブチルエステル(テトラ−n−ブチルチタネート)が特に好ましく用いられる。これらの有機チタン化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用することができる。また、エステル化反応およびエステル化反応後に同一種を用いてもよく、異種の有機チタン化合物を用いてもよい。
【0029】
有機チタン化合物は、好ましくは、エステル化反応槽とエステル化反応槽以降の重縮合槽に分割して添加し、エステル化反応槽への添加はエステル化触媒として、重縮合槽への添加は重縮合触媒として添加される。なお、エステル化反応槽以降の重縮合槽が複数存在する場合は、より好ましくは、最初の重縮合槽である第一重縮合槽に、有機チタン化合物を添加する。
【0030】
エステル化反応後の有機チタン化合物を添加量は、10〜100ppm添加することが好ましく、20〜90ppmがより好ましい。エステル化反応後に有機チタン化合物を添加しない場合、重縮合の進行が遅延し、カルボキシル基含量が増加する。
【0031】
また、エステル化反応後、有機チタン化合物を添加するとき、エステル化反応後のジカルボン酸成分のエステル化反応率を95%以上とすることが好ましく、より好ましくは98%以上である。ジカルボン酸成分のエステル化反応率が95%以上のとき、有機チタン化合物を添加すると異物が発生しにくい。
【0032】
本発明において、エステル化反応における有機チタン化合物と、エステル化反応後の有機チタン化合物をあわせた有機チタン化合物総添加量は、好ましくは、チタン原子換算でポリマー総重量に対して30〜160ppmであり、より好ましくは、チタン原子換算でポリマー総重量に対して30〜70ppmである。
【0033】
本発明では、エステル化反応をさせた後に、アルカリ金属の有機カルボン酸塩およびアルカリ土類金属の有機カルボン酸塩から選ばれる少なくとも1種を添加する。
【0034】
本発明におけるアルカリ金属の有機カルボン酸塩またはアルカリ土類金属の有機カルボン酸塩の添加は、好ましくは、エステル化反応槽以降の第一重縮合槽へ行う。
【0035】
ここで第一重縮合槽とは重縮合反応する第1番目の槽であり、重縮合槽の最終の槽は最終重縮合槽となる。重縮合槽は1槽でも複数でもよい。
【0036】
アルカリ金属の有機カルボン酸塩およびアルカリ土類金属の有機カルボン酸塩から選ばれる少なくとも1種を添加する時点でのエステル化反応率は95%以上が好ましく、より好ましくは98%以上である。
【0037】
アルカリ金属の有機カルボン酸塩およびアルカリ土類金属の有機カルボン酸塩から選ばれる少なくとも1種の添加量は、末端カルボキシル基濃度低減には、添加量が多ければ効果も増加するが、異物となり易いため、アルカリ金属またはアルカリ土類金属換算でポリマー総重量に対して0.1〜20ppmが好ましく、より好ましくは1〜15ppmである。
【0038】
本発明に使用できる有機カルボン酸塩の具体例としては、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウムを挙げることが出来る。これらの内でも、カリウム化合物が好ましく使用される。なお、これらの有機カルボン酸塩は、1種のみ使用してもよく、また、2種以上併用することもできる。
【0039】
本発明において好ましく使用する第一重縮合槽について、その型式は、例えば、縦型攪拌重合槽、横型攪拌重合槽、薄膜蒸発式重合槽などを用いることができる。
【0040】
重縮合槽は、1基または同種または異種の複数基の槽を直列する複数槽とすることができる。
【0041】
第一重縮合槽における反応温度は、好ましくは、220〜270℃、より好ましくは、230〜260℃であり、圧力は、好ましくは、7kPa以下、より好ましくは、1〜6kPaの減圧下で行うことが好ましい条件として挙げられる。
【0042】
本発明において最終重縮合槽(重縮合槽が複数ある場合、最後の重縮合槽)を用いる場合、例えば、横型1軸反応機、横型2軸反応機などを用いることができる。
【0043】
最終重縮合槽の反応温度は、好ましくは220〜260℃、より好ましくは230〜250℃で、最終重縮合槽の圧力は、好ましくは1.3kPa以下、より好ましくは0.67kPa以下の減圧下で行うことが好ましい条件として挙げられる。
【0044】
また、本発明のおいては、第一重縮合槽などの最終重縮合槽以外の重縮合槽および/または最終重縮合槽から留出されるジオール成分を主成分とする留出物は、コンデンサーあるいはスクラバー(湿式コンデンサー)で凝縮させた後、精留することなく原料として用いることができる。また、スクラバーから一部排出される液も精留することなく原料として用いることができる。
【0045】
エステル化反応槽、第一重縮合槽、最終重縮合槽などの重縮合槽にて減圧下で反応させる場合、減圧装置が必要であるが、減圧装置としては、具体的には真空ポンプ、エゼクターなどが挙げられるが、エゼクターとしてはスチームエゼクター、エチレングリコールエゼクター、1,4−ブタンジオールエゼクターが好ましく用いられる。1,4−ブタンジオールエゼクターを使用する場合、エゼクターに使用した1,4−ブタンジオールは本発明のポリブチレンテレフタレートの原料としてそのまま使用することもできる。
【0046】
また、本発明に用いる各反応槽を結ぶ配管あるいは最終重縮合槽から吐出口までの間の配管にはポリマー中の異物を濾過する目的でフィルターを1基あるいは複数基取り付けることができ、好ましい位置としては、第一重縮合槽などの最終重縮合槽以外の重縮合槽間の配管、第一重縮合槽などの最終重縮合槽以外の重縮合槽と最終重縮合槽との間の配管、最終重縮合槽から吐出口までの間の配管が挙げられる。また、フィルターの形式としては特に限定されるものではないが、プリーツ型円筒タイプ、フラット型円筒タイプ、チューブタイプ、バケットタイプなどが挙げられ、目開きは1〜100μmのものが好ましく、2〜50μmのものがより好ましく用いられる。また、フィルターは交換の容易さから1カ所あたり、2基以上並列に取り付けることが好ましい。
【0047】
本発明の方法でPBTを製造するに際し、本発明の目的を損なわない範囲で、通常の添加剤、例えば紫外線吸収剤、熱安定剤、滑剤、離型剤、染料および顔料を含む着色剤などの1種または2種以上を添加することができる。
【0048】
本製造法でPBTを製造した場合、従来の方法で製造した場合よりも色調、滞留安定性に優れ、靱性が高い成型品が得られるので、各種の自動車部品や電気・電子部品などに有用に用いることができる。
【実施例】
【0049】
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中、各測定値は下記のとおり求めた。
【0050】
(1)固有粘度
ウベローデ型粘度計とo−クロロフェノールを用い、25℃において、ポリブチレンテレフタレートの濃度1.0dl/g、0.5dl/g及び0.25dl/gの溶液粘度を測定し、粘度数を濃度0に外挿し求めた。
【0051】
(2)末端カルボキシル基濃度
反応物2.0gをo−クレゾール/クロロホルム溶媒(2/1)50mlに加熱溶解し、冷却後、クロロホルム30mlを加え、さらに、12%メタノール性塩化リチウム溶液を5ml添加する。得られた溶液をエタノール性水酸化カリウムで電位差滴定を行い、末端カルボキシル基量(eq/t)を得た。
【0052】
(3)異物含有量
濾過試験終了後のポリマーが付着した焼結繊維フィルターを取り出し、O−クロロフェノール20ml、100℃で2時間撹拌・溶解させ、それを50μmのミリポア社製テフロン(登録商標)メンブレンフィルターで濾過した。更にその濾液を5μmのミリポア社製のテフロン(登録商標)メンブレンフィルターで再濾過し、それらを50℃で一晩真空乾燥した後、重量を測定し、フィルター濾上物の重量を濾過したポリマー量で割ることで異物含有量を算出した。また、異物の大きさについては、上記単離した異物をSEM観察して、得られた画像はイメージアナライザーを用いて、異物の粒径分布を測定した。SEMには、キーエンス社製(VE−8800)を用いた。
【0053】
実施例1
スラリー化槽、スラリー貯槽、エステル化反応槽1基、第一重縮合槽1基、最終重縮合槽1基、ペレタイザーを直列に配した製造装置を用いた。該製造装置を用いて、まず、テレフタル酸754重量部に対して1,4−ブタンジオール692重量部の割合で両原料をスラリー化槽に供給し、攪拌混合を行い、スラリーを調整した後、50℃の定温にしたスラリー貯槽に移し、スラリー貯槽からスラリーをポンプにより1446重量部/時の一定速度で精留塔を有する完全混合槽型エステル化反応槽に供給し、併せて6%濃度テトラ−n−ブチルチタネート(TBT)の1,4−ブタンジオール溶液を7重量部/時でエステル化反応槽に連続的に供給した。TBTの添加量はチタン原子換算でポリマー総重量に対して59ppmであった。
【0054】
エステル化反応槽の反応条件は、温度230℃、圧力は78kPaに維持し、滞留時間1.8hrとし、精留塔の塔頂からはテトラヒドロフラン及び水を留出させ、1,4−ブタンジオールについては精留塔の塔底から還流させた。また、このエステル化反応槽においてエステル化反応率95%のオリゴマーを得た。
【0055】
引き続いて、このオリゴマーをギヤポンプにて第一重縮合槽に供給し、エステル化反応で用いたTBT触媒を同様に用いて7重量部/時で添加し(TBTの添加量はチタン原子換算でポリマー総重量に対して59ppm)、同時に酢酸カリウム(酢酸K)の1,4−ブタンジオール溶液を、7重量部/時で添加し(酢酸カリウムの添加量はカリウム原子換算でポリマー総重量に対して4ppm)、温度245℃、圧力3.3kPaで維持し、滞留時間2hrで反応させ、エステル化反応率99.2%、固有粘度0.30のオリゴマーを得た。
【0056】
このオリゴマーは、最終重縮合槽(横型2軸反応機)に供給され、温度240℃、圧力200Pa、滞留時間1.5時間反応させ、ポリマーを得た。このポリマーはギヤポンプによりダイを経て系外にストランド状に吐出され、冷却水により冷却され、ペレタイザーによりペレット化した。
【0057】
上記条件にて得られたペレットは固有粘度1.0dl/g、末端カルボキシル基濃度15eq/t、チタンカルボン酸塩を含有する異物(粒径10μm、100μmにピークを有する)含有量5ppmと成型品やフィルムに適したポリマーであった。その結果を表1に示す。
【0058】
実施例2〜3、比較例1〜5
実施例1において有機チタン化合物の添加位置、有機カルボン酸塩の添加位置、種類および添加量を変更した以外は実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。実施例3において、酢酸Naは、酢酸ナトリウムを意味する。また、表1において、エステル化反応槽、第一重縮合槽に「○」と記載した場合は、エステル化反応槽、および、第一重縮合槽で有機チタン化合物または有機カルボン酸塩を添加したことを意味し、「―」は、有機チタン化合物または有機カルボン酸塩を添加しなかったことを意味する。
【0059】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオールとを、有機チタン化合物の存在下でエステル化反応させた後、次いで、重縮合反応させてポリブチレンテレフタレートを製造する方法であって、エステル化反応をさせた後に、有機チタン化合物を添加し、さらに、アルカリ金属の有機カルボン酸塩およびアルカリ土類金属の有機カルボン酸塩から選ばれる少なくとも1種を、エステル化反応をさせた後に、添加するポリブチレンテレフタレートの製造方法。
【請求項2】
アルカリ金属有機カルボン酸塩およびアルカリ土類金属の有機カルボン酸塩から選ばれる少なくとも1種の添加量が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属換算でポリマー総重量に対して0.1〜20ppmである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
アルカリ土類金属の有機カルボン酸塩が、酢酸カリウムである請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
有機チタン化合物総添加量が、チタン原子換算でポリマー総重量に対して30〜160ppmである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
エステル化反応させた後のエステル化反応率が95%以上である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−100668(P2010−100668A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270602(P2008−270602)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】