説明

ポンプ制御用電装箱

【課題】外部からの異物の侵入を防ぎ、外部機器を配線しない場合は閉塞されたポンプ制御用電装箱の外部機器接続用の配線孔を提供する。
【解決手段】制御回路基板13が取付けられた金属製ケース10と樹脂製カバー11により筐体2が構成されている。金属製ケース10のケース周壁10aに設けられた切欠き部30と、樹脂製カバー11のカバー周壁11aに設けられた閉塞片31が隙間無く嵌め合わされ、配線孔33を閉塞している。外部機器を用いる場合は閉塞片31を折って除去し、配線孔33を開放して2本の導線が組み合わされた配線34を通す。配線孔33は配線34の断面において2本の導線のそれぞれの中心間を結ぶ線の中央を中心とし、導線34aの直径を半径に持つ円Cよりも狭い断面積を持つ四隅を持った形状の孔であり、配線34との隙間が虫や埃の侵入を防ぐことが可能な大きさとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御回路基板を収納するポンプ制御用電装箱に関し、特に外部機器接続用の配線孔の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ制御用電装箱は、合成樹脂製や金属製のケースの内部に給水ポンプを制御するための制御回路基板が収納されて構成されている。ポンプ制御用電装箱は除菌器等の外部機器と共に用いることがあり、その場合は外部機器と制御回路基板を配線で接続する必要がある。
【0003】
給水ポンプ用のポンプ制御用電装箱は、井戸などの付近の湿気のある野外に設置されるため、そのポンプ制御用電装箱の付近のナメクジや蟻などの生物がケースの配線導入部に生じている隙間を通ってケース内に侵入することがある。生物は水分を含んでいるため、このような生物がケース内に侵入すると、各種の電子部品を備える制御回路基板の絶縁が低下して絶縁不良を起こし、給水ポンプの制御に支障をきたしてしまう虞がある。
【0004】
このような問題を解決するために、ケースの内部にバリアを設け、生物の侵入を防止する給水ポンプ用電装箱装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−028707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した給水ポンプ用電装箱装置では、次のような問題があった。すなわち、上記のバリアにより制御回路基板に生物が接触し、絶縁不良が起こるような事態は防ぐことができる。しかしバリアによって形成されるスペースまでは生物は侵入できる。
【0006】
また、配線を使っている場合は問題ないが、配線を用いず利用する場合は配線導入部が開放された状態でポンプ制御用電装箱を使用することになる。従来ではこの開放された配線導入部にシールなどで蓋をしていたが、この方法では部品点数が増えることになり、製造コストが増大する。
【0007】
従って本発明の目的は、外部機器への配線を接続する前後においてナメクジや蟻等の生物の侵入を防止し、内部の制御基板の絶縁不良を防止できるポンプ制御用電装箱を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポンプを制御するための制御回路基板を収納するポンプ制御用電装箱であって、前記制御回路基板を収納する金属製ケース及びこの金属製ケースと嵌め合わされる樹脂製カバーとを有する筺体と、この筐体に設けられ、前記制御回路基板に接続された配線を外部へ導出するとともに、配線と筐体との隙間を極小とする配線孔と、前記樹脂製カバーに除去可能に設けられ前記配線孔を閉塞する閉塞片とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外部機器への配線を接続する前後においてナメクジや蟻等の生物の侵入を防止し、内部の制御基板の絶縁不良を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明の一実施の形態に係るポンプ制御用電装箱1を示す斜視図、図2はポンプ制御用電装箱1の切欠き部30周辺を拡大した正面図である。
【0011】
ポンプ制御用電装箱1は、筐体2を備えている。筐体2は、例えばアルミダイキャスト製である金属製ケース10及び樹脂製カバー11によって構成されている。筺体2の内部には、制御回路基板13が収納されている。
【0012】
金属製ケース10のケース周壁10aは、樹脂製カバー11のカバー周壁11aが形成するカバー開口部11bに対応し、嵌め合わされる形状のケース開口部10bを形成している。金属製ケース10の底壁10cには、制御回路基板13を支持する支持部が設けられており、制御回路基板13を支持している。
【0013】
制御回路基板13はポンプPとの間で信号を入出力し、ユーザの設定に応じた情報処理を行いポンプPの制御を行うものである。また、除菌器等の外部機器Qと接続されて駆動を行う機能も有している。制御回路基板13は筐体2の内部でポンプ制御ケーブル20の一端と接続されており、ポンプ制御ケーブル20は他端でポンプPと接続され、制御回路基板13からの信号を伝達しポンプPの作動を制御する。
【0014】
ポンプ制御ケーブル20は金属製ケース10に設けられたケーブル導入孔21を通って、外部から筐体2内部の制御回路基板13に接続されている。ケーブル導入孔21はポンプ制御ケーブル20が十分通ることができるとともに、後述するように生物の侵入を防止できる径を持つ孔である。
【0015】
ポンプ制御ケーブル20とケーブル導入孔21の間に生じた隙間は、ケーブル導入孔21の外側でポンプ制御ケーブル20の外周を覆うシーリング22によって塞がれている。シーリング22は例えば樹脂製であり、金属製ケース10及びポンプ制御ケーブル20と密着して虫や埃などの侵入を防ぐ。
【0016】
ケーブル導入孔21は、次のように構成されている。すなわち、ケース周壁10aのカバー周壁11aと当接する縁に、図2に示すように切欠き部30が設けられている。
【0017】
切欠き部30はケース周壁10aの縁に対して直角な第1の側面30aと第2の側面30bと、第1の側面30aと第2の側面30bからそれぞれ連続して形成される第1の曲面30cと第2の曲面30dと、第1の曲面30cと第2の曲面30dの間に連続して形成されケース周壁10aの直近の縁と平行である底面30eにより形成されている。
【0018】
カバー周壁11aの切欠き部30に対応する縁には、樹脂製カバー11と一体に成形され、切欠き部30に嵌め込まれる閉塞片31が設けられている。閉塞片31は切欠き部30に隙間無く嵌め込まれる形状を有している。
【0019】
閉塞片31はカバー周壁11aの縁に対して直角な第3の側面31aと第4の側面31bと、第3の側面31aと第4の側面31bからそれぞれ連続して形成される第3の曲面31cと第4の曲面31dと、第3の曲面31cと第4の曲面31dの間に連続して形成されカバー周壁11aの直近の縁と平行である先端面31eにより形成されている。
【0020】
図3は図1中A−A´線の位置で切断した断面図である。閉塞片31は筐体2の外側において、ケース周壁10a及びカバー周壁11aと連続した外面を形成している。しかし閉塞片31は金属製ケース10及び樹脂製カバー11の肉厚に比べ薄肉となっている。そのため内側又は外側より力を加えられると、二点鎖線Lで示した線の周辺で折れ、樹脂製カバー11より破断させ取外すことができる。
【0021】
閉塞片31を取外した場合、樹脂製カバー11と閉塞片31が破断した箇所と、カバー周壁11aの縁が上縁32を形成する。
【0022】
上縁32及び切欠き部30の第1の側面30a、第2の側面30b、第1の曲面30c、第2の曲面30d、底面30eは配線孔33を形成する。この配線孔33に、2本の導線が並列に組み合わされた配線34が通される。
【0023】
図4は配線孔33に配線34が通された状態を示す。配線孔33は二点鎖線で示される2本の導線34aのそれぞれの中心間を結ぶ線の中央Xを中心とし、導線の直径を半径に持つ円Cよりも狭く、かつ、配線34を通すことができる断面積を有する四隅を持つ形状の孔である。四隅は2本の直線により構成される角でも、曲線によって構成されたものでも良い。
【0024】
図5は配線孔33に配線34が通された状態における図1のA−A´線の位置で切断した断面図である。
【0025】
以下に本実施の形態に係るポンプ制御用電装箱1の作用について説明する。すなわち、ポンプ制御用電装箱1は外部機器Qを接続せずに利用する場合、樹脂製カバー11と一体に成形された閉塞片31により配線孔33が閉塞されている。閉塞片31は金属製カバー10に形成された切欠き部30に隙間無く嵌め込まれている。よって、虫や埃などが配線孔33より侵入することがない。
【0026】
ポンプ制御用電装箱1に外部機器Qを接続して利用する場合は、樹脂製カバー11を金属製カバー10より取り外し、閉塞片31を折って樹脂製カバー11から取外す。閉塞片31は樹脂製カバー11と一体に成形された樹脂製で、しかも樹脂製カバー11に比べ薄肉であるので容易に折ることができる。また閉塞片31はカバー周壁11aの縁から突き出た凸部となっているため、ニッパーなどで切って除去することが容易である。
【0027】
制御回路基板13に配線34の一端を接続し、配線34を切欠き部30に通した状態で、金属製ケース10に樹脂製カバー11を嵌め込む。これにより、ポンプ制御用電装箱1に外部機器Qが接続され、配線孔33に配線34が通った状態となる。
【0028】
配線孔33は配線34を構成する導線34aの直径とほぼ同じ高さと、配線34の断面の長手方向の長さとほぼ同じ幅を有している。具体的に言えば配線孔33は、2本の導線のそれぞれの中心間を結ぶ線の中央を中心とし、導線34aの直径を半径に持つ円Cよりも狭く、かつ配線34を通すことができる断面積を有する四隅を持つ形状の孔である。
【0029】
配線孔を円Cのような円形とすると、配線34を通した場合も配線34との隙間が大きく、虫や埃などの侵入を許してしまう。配線孔33は円Cに比べ配線34との隙間が格段に小さいため、虫や埃などの侵入を防ぐ。
【0030】
上述したように、本実施の形態に係るポンプ制御用電装箱1によれば、外部機器Qへの配線を接続する前後においてナメクジや蟻等の生物の侵入を防止し、内部の制御回路基板13の絶縁不良を防止することが可能となる。また、製造コストや部品コストを低減することができ、設置も容易となる。
【0031】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した例では、切欠き部と樹脂製カバーの縁が配線孔を形成したものについて説明したが、金属製ケースに配線孔が形成されたものや、樹脂製カバーに配線孔が形成されたものでもよい。
【0032】
なお、金属製ケースに配線孔を形成する場合は、樹脂製カバーが配線孔近傍の部分まで金属製ケースを外部から覆うように嵌め合わされる形状とすれば良い。樹脂製カバーに配線孔を形成する場合は、閉塞片と樹脂製カバーの間に溝や切れ込みを設けた形状で一体に成形し、閉塞片を除去すると配線孔が形成される形状とすれば良い。
【0033】
また閉塞片を樹脂製ケースの肉厚に比べ薄肉としたが、樹脂製ケースと閉塞片の間に溝を設けるなど、折れやすい形状とすれば閉塞片と樹脂製カバーは同じ肉厚でも良い。要するに、閉塞片を折って除去すれば配線孔が形成されるものであれば良い。
【0034】
さらに、金属製ケース、樹脂製カバー、配線孔および閉塞片をはじめとして、発明の構成要素の構造及び配置を適宜に変更してもよい。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施の形態に係るポンプ制御用電装箱を示す斜視図。
【図2】同ポンプ制御用電装箱の要部を拡大して示す正面図。
【図3】同ポンプ制御用電装箱の要部を図1中A−A´線の位置で切断して示す断面図。
【図4】同ポンプ制御用電装箱の要部を示す正面図。
【図5】同ポンプ制御用電装箱の要部を図1中A−A´線の位置で切断して示す断面図。
【符号の説明】
【0036】
10a…ケース周壁,11a…カバー周壁,30…切欠き部,30a…第1の側面,30b…第2の側面,30c…第1の曲面,30d…第2の曲面,30e…底面,32…上縁,33…配線孔,34…配線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプを制御するための制御回路基板を収納するポンプ制御用電装箱であって、
前記制御回路基板を収納する金属製ケース及びこの金属製ケースと嵌め合わされる樹脂製カバーとを有する筺体と、
この筐体に設けられ、前記制御回路基板に接続された配線を外部へ導出するとともに、配線と筐体との隙間を極小とする配線孔と、
前記樹脂製カバーに除去可能に設けられ前記配線孔を閉塞する閉塞片とを備えていることを特徴とするポンプ制御用電装箱。
【請求項2】
前記配線は2本の導線を並列にして形成され、
前記配線孔は、前記配線の断面において前記2本の導線のそれぞれの中心間を結ぶ線の中央を中心とし、前記導線の直径を半径に持つ円よりも狭く、かつ、前記配線を通すことが可能な断面を有する四隅を持った形状の孔であることを特徴とする請求項1記載のポンプ制御用電装箱。
【請求項3】
前記閉塞片の肉厚が前記樹脂製カバーの肉厚よりも薄肉であることを特徴とする請求項1記載のポンプ制御用電装箱。
【請求項4】
前記配線孔は、前記金属製ケースに設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のポンプ制御用電装箱。
【請求項5】
前記配線孔は、前記樹脂製カバーに設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のポンプ制御用電装箱。
【請求項6】
前記金属製ケースの周壁の縁に設けられた切欠きを有し、
前記金属製ケースと前記樹脂製カバーが嵌め合わされて筺体を形成した状態で、前記樹脂製カバーの周壁の縁と前記切欠きで前記配線孔を形成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のポンプ制御用電装箱。
【請求項7】
前記閉塞片が前記樹脂製カバーの周壁の縁に設けられ、前記切欠きに隙間なく嵌め合わされる形状であることを特徴とする請求項6記載のポンプ制御用電装箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−303371(P2009−303371A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154339(P2008−154339)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(502002407)川本電産株式会社 (8)
【Fターム(参考)】