説明

マイクロサテライトDNAを用いたホップ品種鑑定法

【課題】本発明の課題は、ホップから抽出したゲノムDNAに対して、プライマーを用いてPCRを行い、ホップ品種を識別しうるマイクロサテライト領域を増幅することで、現在ホップ市場で流通量の多い主要品種を識別する迅速・簡便な方法を提供することにある。
【解決手段】本発明は、被検体であるホップのDNAを品種間における塩基配列上の多型を含むマイクロサテライトDNAを増幅し得るように設計された品種識別プライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応を行うことにより、前記マイクロサテライトDNAを増幅し、増幅DNA断片を解析することにより品種を識別することを特徴とするホップの品種鑑定方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホップの品種鑑定法に関し、さらにはマイクロサテライトDNAを用いることを特徴とするホップ品種鑑定法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホップは桑科のHumulus属に属する植物であって、ビールに、特有の芳香や苦味を与えると同時に、過剰なタンパク質を沈殿・分離させ、雑菌の繁殖を防ぐなど、ビール醸造に不可欠な原料のひとつである。しかし、これらのホップの作用は品種によって大きく異なることから、安定した品質の良いビールを醸造するには正確なホップ品種の選別および識別が重要となる。また、これらのことからホップの市場価格も品種によって大きく異なっている。
【0003】
これまで、ホップの品種鑑定はその毬花の外観の特徴や、毬花から得られる苦味成分や精油成分をガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィーを用いて定量することで行われてきた。しかし、ホップはその殆どが収穫された地域で粉砕・圧縮されペレットの状態で輸送されることから、外観上の特徴から品種を識別することは非常に困難であり、また一方、成分を分析する方法では、その指標となる成分が、ホップが栽培されている地域の気候や土質、あるいはホップの保存方法などに大きく影響され、同じ品種でも収穫年度や収穫地域によって分析結果が異なるなど、正確な品種鑑定が難しい上分析作業にも多大な労力を必要とするなどの問題があった。
【0004】
一方、近年いくつかの遺伝子工学を応用した品種鑑定方法が開発されてきた。これらの方法は品種間での塩基配列の違い、すなわち多型を検出することで品種識別を行っている。すなわち、栽培環境や保存方法に影響されない遺伝子上の特徴を指標とすることから、正確な品種鑑定が可能となる。既に多くの商業作物においてRAPD(random amplified polymorphic DNA)法、RFLP(Restriction fragment length polymorphisms)法、AFLP(amplified fragment length polymorphisms)法、マイクロサテライト法などの遺伝子工学を用いた品種識別方法が開発されており、応用されている。
【0005】
ホップにおいても、荒木らは、RAPD法により品種間で異なるDNA領域を見つけ、DNAの多型が明確になるような10種のプライマーを作製してPCRを行うことにより、ホップ品種を識別する方法を報告した(特許文献1)。同様にして、村上らもRAPD法を用いたホップ品種の鑑定方法を報告した(特許文献2)。しかし、RAPD法はひとつのマーカーから得られる情報が少なく、実際の品種鑑定には多くのマーカーを必要とし、そのため多くの時間と労力を必要とした。
【0006】
また、Bradyらも、RAPD法とマイクロサテライト領域を組み合わせた品種鑑定法を開発し、34品種のホップが識別できることを報告したが(非特許文献1)、その多くはホップ市場で流通していない試験品種あるいは育種系統であり、現在実際に流通量の多い品種は含まれていない。
【特許文献1】再公表WO97/05281号公報
【特許文献2】特開平11−103895号公報
【非特許文献1】Euphytica, 91, 277-288, 1996
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ホップゲノム上の多型を利用することでホップ品種を識別する上記方法は、ホップの栽培環境や収穫時期あるいは保存方法に関わらず、ホップの品種を識別しうる有効な手段といえるが、以上のように、現在までに報告されているゲノムDNA上の多型に基づくホップ品種鑑定法は、ひとつのマーカーから得られる情報が少なく、多くの時間と労力を必要とし、あるいは、実際にホップ市場に流通している主要品種を識別することができないため、効率的なホップ品種の鑑定が困難であった。
【0008】
本発明の課題は、ホップから抽出したゲノムDNAに対して、プライマーを用いてPCRを行い、ホップ品種を識別しうるマイクロサテライト領域を増幅することで、現在ホップ市場で流通量の多い主要品種を識別する迅速・簡便な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のホップの品種識別方法は、品種間のマイクロサテライト領域における反復回数の違い、すなわち多型に基づき、この多型を遺伝学的な手法で検出して識別する方法であり、詳細には、被検体であるホップのDNAのうち品種間で多型を含むマイクロサテライト領域を、品種識別プライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(以下、PCRという)により増幅し、この増幅DNAを解析することにより品種を識別するものである。
【0010】
上記の方法を達成するためには、ホップ品種間のマイクロサテライト領域における多型を知る必要がある。この多型とは、具体的にはマイクロサテライト領域中の反復配列の反復回数の違いを含み、また、多型に関与する配列の長さは1bpであってもよい。
【0011】
上記のような品種間の配列上の多型を含むマイクロサテライト領域を検出する方法としては、Kijasら、RajiendaraらあるいはIsabelらにより開発されたマイクロサテライト領域のクローニング方法を利用することができる。このクローニング方法は、配列が未知のゲノムDNA中のマイクロサテライト領域を、合成ビオチン化プローブを用いて単離する方法である。詳細にはホップのゲノムDNAを制限酵素で処理し、これをベクターに組み込むことでホップゲノムライブラリーを作製する。このライブラリーを元に一本鎖DNAを合成し、ビオチン化プローブを用いてマイクロサテライト領域を濃縮する。このDNA溶液を元にPCRを行うことでマイクロサテライト領域を単離することができる。
【0012】
一方、上記の方法は、上記のように本発明におけるマイクロサテライトを単離する方法以外にも、PCRにより多型を検出し得るプライマーを選択する方法、すなわち、プライマー設計方法としても利用することができる。従って、上記の単離方法に基づき検出されるホップのマイクロサテライト領域における品種間のいかなる多型領域も本発明の対象に含まれる。また、上記の方法に基づき検出される多型領域を増幅し得るいかなるプライマーも本発明の品種識別プライマーとして利用することができる。
【0013】
上記品種識別プライマーを用いて品種識別を行った場合、PCRにより品種間で内部の繰返し配列の、場合によってはサイズの異なる増幅DNAが生成される。ここで生成された増幅DNAを直接電気泳動により分画し、泳動パターンにより品種を識別することができる。

【0014】
以上のように、本発明者らは鋭意検討の結果、ホップDNAから13の多型を有するマイクロサテライトDNAを見出し、それらをPCRにより増幅し得る配列番号1〜26記載のプライマーを設計した。そのうち品種鑑定にもっとも適するマイクロサテライトを5種選定し、また、それらのマイクロサテライトを増幅し得るプライマーペアを選定し、多数の品種を識別できる品種鑑定方法を開発し、本発明を完成させた。
【0015】
すなわち、本発明の第1は、被検体であるホップのDNAを品種間における塩基配列上の多型を含むマイクロサテライトDNAを増幅し得るように設計された品種識別プライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応を行うことにより、前記マイクロサテライトDNAを増幅し、増幅DNA断片の長さの差異を解析することにより品種を識別することを特徴とするホップの品種鑑定方法を提供する。
本発明の第2は、品種識別プライマーが配列番号1〜26である第1の発明記載のホップの品種鑑定方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のホップの品種鑑定法により、従来より簡便に明瞭にホップの識別ができるようになり、ビール製造工程の原料管理及び品質管理の向上が図られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
A. ビオチン化プライマーを用いたマイクロサテライト領域のクローニング
ビオチン化プライマーを用いたマイクロサテライトのクローニング方法は、Kijasらの方法(Kijas JM,Fowler JC,Garbett CA,Thomas MR.(1994)Enrichment of microsatellite from the citrus genome using biotinylated oligonucleotide sequences bound to streptavidin−coated magnetic particles.Biotechniques 16,656-60,662)に、Rajiendara(Rajendra P.Kandpal, Geeta Kandpal,Sherman M.Weissman(1994)Construction of libraries enriched for sequence repeats and jumping clones,and hybridization selection for region-specific markers.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91,88−92)らと、Isabel(Isabel Tenser,Stefania Degli Ivanissevich,Michele Morgante,Cesare Gessler(1999)Identification of Microsatellite markers and their application to population genetics of Venturia inaequalis.Phytopathology 89:748−753)らの方法を参考に一部改変を加えた方法でクローニングを行った。
【0018】
(1)ホップからのゲノムの抽出
岩手ホップ試験農場にて栽培されたアサヒビール登録品種であるホップ「南部早生」の葉よりDNAを抽出した。ホップの葉1枚を50ml遠沈管に入れ、液体窒素に約1分間浸して凍結させ、すぐにマルチビーズショッカー(安井器械)にセットし、1400rpmで20秒間粉砕した。得られた粉末からgenomic-tip(QIAGEN)を用いてゲノムDNAを抽出した。
【0019】
(2)ホップゲノムライブラリー作製
ホップゲノムDNA100μgを制限酵素EcoRI(TaKaRa)とMseI(New England Biolabs)で消化したあと、アガロースゲル電気泳動にて分離し、約300bp〜1、500bpの部分のゲルを切り出した。切り出したゲルからGeneCleanKit(BIOlOl)を用いてDNAを回収した。次に、図1の配列のオリゴDNAを作成し、95℃で5分間インキュべ−トし、徐々に温度を下げてアニーリングさせることによって、末端がEcoRI消化またはMseI消化による突出末端となるようなアダプターDNAを作製した。これと、上記のEcoRIとMseIで消化したホップゲノムDNAをLigation Kit ver.II(TaKaRa)を用いてライゲーションした。
【0020】
このライゲーション溶液中のDNAをテンプレートにしてPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を行った。ポリメラーゼはAmpliTaq Gold(アプライド・バイオシステムズ)を使い、プライマーは図1のアダプター部分にアニーリングする0.01μMのEcoRIプライマーとMseIプライマー(図2)を用いてPCRを行った。PCR反応はMJリサーチ社製のサーマルサイクラーを用いた。反応温度は、94℃で4分間のあと、94℃で1分間、37℃で1分間、72℃で1分間を33回繰り返し、そのあと72℃で4分間伸長反応を行った。
【0021】
(3)マイクロサテライトの単離
0.6mlのStreptavidin-Coated Magnetic Beads(Promega)が入った1.5ml微量遠沈管に、3μgのビオチン化プライマー(図3のうちのどちらか一方)を加え室温で15分間インキュベー卜した。過剰なプライマーを取り除くため、0.5×SSCで3回洗浄後、ビオチン−アピジン結合物を350μlの10×SSCに懸濁した。(2)のPCR反応溶液100μlに滅菌水を550μl加え、95℃で5分間熱変性後急冷し、ビオチン−アピジン結合物に加え20分間室温に置いた。その後、2×SSCで4回、1×SSCで4回洗浄した。回収した磁気ビーズに1.5NaOH200μlを加え混合し、室温で20分間置いた。上清を回収し1.25Mの酢酸で中和後、SUPREC−02(TaKaRa)を用いて脱塩し、マイクロサテライトDNA濃縮溶液とした。
【0022】
(4)PCR
脱塩したマイクロサテライトDNA濃縮溶液をテンプレートにしてPCRを行った。ポリメラーゼはAmpliTaq Gold(アプライド・システムズ)を使い、プライマーは0.01μMのEcoRIプライマーとMseIプライマー(図2)を用いてPCRを行った。反応に使った機器、反応条件は(2)でのPCRと同じ条件で行った。PCR反応後、反応溶液をPCR Purification Kit(QIAGEN)を用いて精製した。
【0023】
(5)ライゲーションおよび塩基配列決定
精製したDNAを、pGEM-T Easy Vector System(プロメガ)を用いてpGEMベクターとライゲーションを行い、大腸菌JM109へトランスフォーメーションした。生育したコロニーのインサートチェックを行い、インサートのサイズが300〜800bpのものについて通常の方法で塩基配列を決定した。
【0024】
(6)シーケンス解析 キヤピラリーシーケンサー(BECKMAN COULTER;CEQ8000)を用いてシーケンスを解析したあと、反復回数が多いマイクロサテライト領域についてのみマイクロサテライト領域を挟むようにプライマーを設計し、合成した。その際、片側のプライマーにはFAM(青)、HEX(緑)、NED(黄)のいずれかの蛍光色素を付加した。
【0025】
B.多型解析
上記のようにして得られた、マイクロサテライトを挟むように設計された合成オリゴヌクレオチドをプライマーセットとしてPCRを行うことで、増幅するマイクロサテライト領域が多型を有するかを、現在世界で流通量が多い37品種について調べた結果を以下(1)から(3)に示す。
(1)ホップゲノムDNAの抽出
現在世界で流通量の多いホップ37品種(表1)の毬花を入手し,その試料からDNAの抽出を行った。表中の37各品種の毬花1個をそれぞれ10mlの破砕専用遠沈管(安井器械製)にいれ、液体窒素に約1分間浸し凍結させ、すぐにマルチビーズショッカーをにセットし、1400rpmで20秒間粉砕した。得られた粉末50mgからDNeasy Plant Mini Kit (QIAGEN社製)を用いてプロトコールに従いDNAを抽出した。その結果、各種ホップ品種のゲノムDNAを30〜50μg得た。
【0026】
【表1】

(2)PCR
抽出したホップDNA5ngをテンプレートとしてPCRを行った。ポリメラーゼはAmpliTaqGold(Applied Biosystems)を使い、プライマーは蛍光を付加して設計、合成した上記プライマーペアーを用いた。PCR反応は、MJリサーチ社製のサーマルサイタラーを用いた。反応温度は94℃で13分間のあと、94℃で45秒間、55℃で39秒間、72℃で90秒間を27回繰り返し、そのあと、72℃で10分間伸長反応を行った。

【0027】
(3)DNAシーケンサーを用いた電気泳動
PCR反応溶液1μlにつきホルムアミド(amresco)2.5μl、サイズスタンダードマーカー(Applied Biosystems)GENESCAN−400HD[ROX]0.5μl、ローディングバッファー(サイズスタンダードマーカーに添付)0.5μlをそれぞれ混合し、95℃で5分間熱変性させローディングサンプルとした。これを電気泳動装置(ABIPRISM 377 DNA Sequencer)で分離し解析した。その結果、多型を有するマイクロサテライトを増幅しうる配列番号1〜26記載のプライマーペアーを選抜した。その中から特に明瞭な結果が得られるプライマーペアーである、配列番号1および2、5および6、17および18、21および22、23および24の5つのプライマーペアーを選び品種鑑定に用いることとした。
【0028】
マイクロサテライトマーカーの選択
上記のようにして得られた、マイクロサテライトを挟むように設計された合成オリゴヌクレオチドをプライマーセットとしてPCRを行うことで、増幅するマイクロサテライト領域が多型を有するかを、現在世界で流通量が多い37品種について調べた結果を実施例1から13に示す。
【実施例1】
【0029】
上記のようにして得られたプライマーのうち、配列表の配列番号1記載の蛍光付加プライマー、および配列番号2記載のプライマーを、それぞれ終濃度0.1μMになるように用いた。さらに、0.2ユニットのAmpli Taq Goldポリメラーゼ(アプライド・バイオシステムズ)、200μMの4種類の各塩基(dATP、dTTP、dCTP、dGTP)およびホップ37品種それぞれから調製した5ngのホップゲノムDNAを加えた、50mM KCl、1.5mM MgClを含有する10mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.3)中で、ポリメラーゼ連鎖反応を行った。反応液量は20μlとした。上記のポリメラーゼ連鎖反応における各工程は下記の条件で行った。はじめに94℃で13分間保持した後、変性工程は94℃で45秒間加熱し、プライマーのアニーリング工程は55℃で39秒間インキュベートし、DNAポリメラーゼによる伸張工程は、72℃で90秒間処理するサイクルを27回行い、72℃で10分間保持した。上記のポリメラーゼ連鎖反応により得られた増幅DNAは、ABI Prism 377 DNAシーケンサー(アプライド・バイオシステムズ)用の36cmアクリルアミドゲルを用いて電気泳動し分離した。その際に、サイズマーカーとしては、GS400HD(アプライド・バイオシステムズ社製)を用いた。泳動後の解析にはGene Scan (アプライド・バイオシステムズ社製)を使用し、バンドサイズを計算した。電気泳動の得られたゲルイメージを図4に示した。ゲルイメージをGene Scanを用いて解析した結果、表2に示すように、このプライマーセットを用いた場合は多型が11種観察され、そのバンドの位置の組み合わせにより37品種のホップを17タイプに識別することができた。これらの多型は識別しやすく、再現性良く観察された。
【0030】
【表2】

【実施例2】
【0031】
プライマー配列として配列番号3および4に記載の塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドを用い、実施例1と同様の条件で実施した。得られた結果を表3に示す。表から明らかなように、プライマーとして配列番号3および4に記載の塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドを用いた場合は、多型が7種観察され、そのバンドの位置の組み合わせにより37品種のホップを7タイプに識別することができた。
【0032】
【表3】

【実施例3】
【0033】
プライマー配列として配列番号5および6に記載の塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドを用い、実施例1と同様の条件で実施した。得られた結果を表4に示す。表から明らかなように、プライマーとして配列番号5および6に記載の塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドを用いた場合は、多型が9種観察され、そのバンドの位置の組み合わせにより37品種のホップを14タイプに識別することができた。
【0034】
【表4】

【実施例4】
【0035】
プライマー配列として配列番号7および8に記載の塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドを用い、実施例1と同様の条件で実施した。得られた結果を表5に示す。表から明らかなように、プライマーとして配列番号7および8に記載の塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドを用いた場合は、多型が9種観察され、そのバンドの位置の組み合わせにより37品種のホップを14タイプに識別することができた。
【0036】
【表5】

【実施例5】
【0037】
プライマー配列として配列番号9および10に記載の塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドを用い、実施例1と同様の条件で実施した。得られた結果を表6に示す。表から明らかなように、プライマーとして配列番号9および10に記載の塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドを用いた場合は、多型が5種観察され、そのバンドの位置の組み合わせにより37品種のホップを8タイプに識別することができた。
【0038】
【表6】

【実施例6】
【0039】
プライマー配列として配列番号11および12に記載の塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドを用い、実施例1と同様の条件で実施した。得られた結果を表7に示す。表から明らかなように、プライマーとして配列番号11および12に記載の塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドを用いた場合は、多型が3種観察され、そのバンドの位置の組み合わせにより37品種のホップを4タイプに識別することができた。
【0040】
【表7】

【実施例7】
【0041】
プライマー配列として配列番号13および14に記載の塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドを用い、実施例1と同様の条件で実施した。得られた結果を表8に示す。表から明らかなように、プライマーとして配列番号13および14に記載の塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドを用いた場合は、多型が11種観察され、そのバンドの位置の組み合わせにより37品種のホップを17タイプに識別することができた。
【0042】
【表8】

【実施例8】
【0043】
プライマー配列として配列番号15および16に記載の塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドを用い、実施例1と同様の条件で実施した。得られた結果を表9に示す。表から明らかなように、プライマーとして配列番号15および16に記載の塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドを用いた場合は、多型が5種観察され、そのバンドの位置の組み合わせにより37品種のホップを8タイプに識別することができた。
【0044】
【表9】

【実施例9】
【0045】
プライマー配列として配列番号17および18に記載の塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドを用い、実施例1と同様の条件で実施した。得られた結果を表10に示す。表から明らかなように、プライマーとして配列番号17および18に記載の塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドを用いた場合は、多型が8種観察され、そのバンドの位置の組み合わせにより37品種のホップを12タイプに識別することができた。
【0046】
【表10】

【実施例10】
【0047】
プライマー配列として配列番号19および20に記載の塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドを用い、実施例1と同様の条件で実施した。得られた結果を表11に示す。表から明らかなように、プライマーとして配列番号19および20に記載の塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドを用いた場合は、多型が11種観察され、そのバンドの位置の組み合わせにより37品種のホップを14タイプに識別することができた。
【0048】
【表11】

【実施例11】
【0049】
プライマー配列として配列番号21および22に記載の塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドを用い、実施例1と同様の条件で実施した。得られた結果を表12に示す。表から明らかなように、プライマーとして配列番号21および22に記載の塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドを用いた場合は、多型が12種観察され、そのバンドの位置の組み合わせにより37品種のホップを14タイプに識別することができた。
【0050】
【表12】

【実施例12】
【0051】
プライマー配列として配列番号23および24に記載の塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドを用い、実施例1と同様の条件で実施した。得られた結果を表13に示す。表から明らかなように、プライマーとして配列番号23および24に記載の塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドを用いた場合は、多型が13種観察され、そのバンドの位置の組み合わせにより37品種のホップを22タイプに識別することができた。
【0052】
【表13】

【実施例13】
【0053】
プライマー配列として配列番号25および26に記載の塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドを用い、実施例1と同様の条件で実施した。得られた結果を表14に示す。表から明らかなように、プライマーとして配列番号25および26に記載の塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドを用いた場合は、多型が3種観察され、そのバンドの位置の組み合わせにより37品種のホップを5タイプに識別することができた。
【0054】
【表14】

【0055】
ホップの品種鑑定に使用するマイクロサテライトの選抜とPCRによるホップ品種鑑定
上記のように、ビオチン化プライマーを使ってマイクロサテライト領域を濃縮する方法でマイクロサテライトのクローニングを行い、得られたマイクロサテライトの中で、繰り返し回数が比較的多いもののみを選抜して多型解析を行った。その結果、表15に示すように13種のマイクロサテライトで品種によってバンドパターンが異なる(多型)結果を得た。

【0056】

【表15】

なお、マイクロサテライトの反復回数を「Microsatellite Type」の欄の下付き数字で示した。品種によってマイクロサテライトの反復回数が異なるため、マイクロサテライト領域をPCRで増幅して電気泳動すると、バンドサイズが品種によって異なる。そのバンドサイズの種類数を「Allele」として示した。

【0057】
多型が得られた13種のマイクロサテライトの中でも、品種によってバンドサイズが大きく異なる様なマイクロサテライトを増幅するプライマーペアーであった、配列番号1および2、5および6、17および18、21および22、23および24を組み合わせて品種鑑定に使用する事とし、これらのマイクロサテライトを特異的に増幅するためのプライマーを表16に示すように作製した。蛍光色と増幅するDNAのサイズを調節して一回の泳動で品種鑑定が行えるように工夫した。(図5)

【0058】
【表16】

【0059】
今回得られた、品種間で多型を有するマイクロサテライト領域を増幅するプライマーペアーのうち、配列番号1および2、5および6、17および18、21および22、23および24の5つのプライマーペアーを組み合わせて、ホップ37品種について品種識別を行った結果、37品種を27のグループに分類することが可能であった(表17)。分類できない主な品種として、NuggetとU.S.Nugget、HersbruckerとHersbrucker Spat、SaazerとTettnanger(Barth)などがあったが、これらは非常に近縁な品種として広く知られている品種であった。また、マイクロサテライト領域の多型を品種識別に応用した本方法は、これまで荒木らによって報告されているRAPD法を用いた品種識別法よりも少ないマーカーで、より簡便に品種を識別することが可能であった。
【0060】
【表17】

【0061】
電気泳動の結果、現れるバンドのパターンを数字で表したもの。同じ数字は同じバンドパターンとなることを示している。また、右端の列では同一パターンとなる品種同士を同じ印で示した。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】ビオチン化プライマーを用いたホップのマイクロサテライト領域のクローニングにおけるアダプターDNAの作製。
【図2】ビオチン化プライマーを用いたホップのマイクロサテライト領域のクローニングにおけるEcoRIプライマー及びMseIプライマー。
【図3】ビオチン化プライマーを用いたホップのマイクロサテライト領域のクローニングにおけるビオチン化プライマー。
【図4】配列番号1および2のプライマーを用いて37品種のホップについてPCRを行い、電気泳動した結果。赤色のバンドはサイズマーカー。
【図5】ホップ37品種について、配列番号1および2、5および6、17および18、21および22、23および24の各プライマーによって増幅されるマイクロサテライト領域を含む断片を、一度にアクリルアミド電気泳動した結果。一番左のレーンから37レーンまでが表1の品種に付けた番号に対応する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体であるホップのDNAを品種間における塩基配列上の多型を含むマイクロサテライトDNAを増幅し得るように設計された品種識別プライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応を行うことにより、前記マイクロサテライトDNAを増幅し、増幅DNA断片を解析することにより品種を識別することを特徴とするホップの品種鑑定方法。

【請求項2】
品種識別プライマーが配列番号1〜26である請求項1記載のホップの品種鑑定方法。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−34142(P2006−34142A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216546(P2004−216546)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】