説明

マイクロスコープのピント合わせ治具

【課題】各種診療に使用するマイクロスコープのピント合わせを容易に、かつ安定して行う。
【解決手段】ピント合わせ治具1の位置決め棒3のガイド球9を撮像する被写体30の位置に配置して位置決め棒3が観察方向と一致するようにピント合わせ治具1を位置決めし、位置決めしたピント合わせ治具1の位置決め棒3の延長線方向からマイクロスコープ20の対物レンズ21の外面をピント合わせ治具1のスコープ位置規制部2内面に設けた案内面6に嵌め込んでマイクロスコープ20を位置決めして固定した後、ピント合わせ治具1をマイクロスコープ20から取り外す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種診療に使用するマイクロスコープのピント合わせ治具、特にピント合わせの容易化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、歯科診療や外科診療等の各種診療においては、高倍率のマイクロスコープを使用して精密な診療を行うことが増加している。このマイクロスコープを使用して診療を行う場合、患者の近傍にマイクロスコープを配置して患部に対してピント合わせを行ってからマイクロスコープを介して患部を観察しながら診断と治療を行う。このマイクロスコープを使用して診療する場合、マイクロスコープの取り扱いに熟練した医師以外の者はピント合わせを行うのに多くの時間を要した。
【0003】
このピント合わせを行い易くするための治具として特許文献1には、マイクロスコープの鏡筒の対物レンズ側の外周部にねじ込んで装着する取付部と、この取付部の外周部に突出して設けられ、対物レンズの焦点距離より若干長い1本足の脚部を有するピント合わせ治具が開示されている。そして脚部先端を被写体の近傍に当て、これを支点としてマイクロスコープを傾けてピント合せを行っている。
【0004】
また、特許文献2には、マイクロスコープの鏡筒の対物レンズ側の外周部にねじ込んで装着する固定キャップと、固定キャップの外周面に対して摺動自在な可動キャップと、可動キャップの先端部に取り付けた調整キャップを有し、調整キャップの先端部の位置が対物レンズの異なる焦点位置と一致する2個所の位置に可変できるようになるように可動キャップを固定キャップに係止可能としたフォーカスキャップからなるピント合わせ装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されたピント合わせ治具は、対物距離が異なるレンズを利用する場合にはピント合わせ治具を交換する必要がある。また、複雑な凹凸部を有する被写体の観察にはピント合わせ治具を適用することは困難である。
【0006】
また、特許文献1に示されたピント合わせ治具や特許文献2に示されたピント合わせ装置は、マイクロスコープの鏡筒の対物レンズ側の外周部にピント合わせ治具やフォーカスキャップの固定キャップをねじ込んで装着するため、鏡筒の対物レンズ側の外周部にねじ加工する必要があり、このねじ加工がされていない鏡筒を有するマイクロスコープに適用することはできなかった。
【0007】
さらに、特許文献1に示されたピント合わせ治具や特許文献2に示されたピント合わせ装置は、マイクロスコープの鏡筒にピント合わせ治具やフォーカスキャップが取り付けられているため、医療用に使用して患部に対してピント合わせを行うときに、ピント合わせ治具やフォーカスキャップの先端部が患部に突き当たって患部を傷つける可能性もある。
【0008】
この発明は、このような問題を解消し、各種診療に使用するマイクロスコープのピント合わせを容易に、かつ安定して行うことができるマイクロスコープのピント合わせ治具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のマイクロスコープのピント合わせ治具は、スコープ位置規制部と位置決め棒を有し、前記スコープ位置規制部は、円盤状に形成され、内部にマイクロスコープの対物レンズの前面と係合する着座面と、該着座面の外周に設けられ、対物レンズの外周面と係合する位置決め面とで形成された案内面を有し、外周面の一部には把持手段が設けられ、前記位置決め棒は、伸縮棒と該伸縮棒の先端に設けられた直径が小さいガイド球を有し、前記スコープ位置規制部の案内面とは反対側で前記着座面の中心に対応する位置に取り付けられていることを特徴とする。
【0010】
前記位置決め棒の長さをマイクロスコープの対物レンズの焦点距離に応じて可変することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明は、マイクロスコープのピント合わせ治具の位置決め棒のガイド球を撮像する被写体の位置に配置して位置決め棒が観察方向と一致するようにピント合わせ治具を位置決めし、このピント合わせ治具の位置決め棒の延長線方向からマイクロスコープの対物レンズの外面をピント合わせ治具のスコープ位置規制部の内面に設けた案内面に嵌め込んでマイクロスコープを位置決めして固定した後、ピント合わせ治具をマイクロスコープから取り外すことにより、マイクロスコープの被写体に対するピンと合わせを熟練者でなくとも短時間で行うことができる。また、ピント合わせ治具の位置決め棒は伸縮自在であるから焦点距離が異なる対物レンズを使用した場合でも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明のマイクロスコープのピント合わせ治具の構成図である。
【図2】マイクロスコープの外観図である。
【図3】位置決め棒の伸縮棒の構成を示す断面図である。
【図4】ピント合わせ治具を使用したマイクロスコープのピント合わせ状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、この発明のマイクロスコープのピント合わせ治具の構成を示し、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は断面図である。このピント合わせ治具1を使用してピント合わせを行う例えば医療用のマイクロスコープ20は、図2の外観図に示すように、先端部に対物レンズ21を有し、後端部に接眼レンズ22を有する鏡筒23に調整ハンドル24とZ軸ダイヤル25が設けられ、アーム26により回動自在に保持されて位置が可変できるようになっている。
【0014】
ピント合わせ治具1は、スコープ位置規制部2と位置決め棒3を有する。スコープ位置規制部2は円盤状に形成され、内部にマイクロスコープ20の対物レンズ21の前面と係合する着座面4と、着座面4の外周に設けられ、対物レンズ21の外周面と係合する位置決め面5とで形成された案内面6を有する。この案内面6の形状はマイクロスコープ20の対物レンズ21の外面形状に応じて決定される。スコープ位置規制部2の外周面の一部には把持手段7が設けられている。位置決め棒3は伸縮棒8と、伸縮棒8の先端に設けられた直径が小さいガイド球9を有し、スコープ位置規制部2の案内面6とは反対側で着座面4の中心に対応する位置に取り付けられている。伸縮棒8は、例えば図3の断面図に示すように、スコープ位置規制部2に取り付けられ、先端部に外周面にねじが形成された連結ねじ部10を有する固定管11と、固定管11に挿入された可動軸12及びロック手段13とを有し、任意の長さに伸縮して固定される。この伸縮棒8のロック手段13は、例えば可動軸12の外周面に摺動自在に取り付けられた台形状の連結コマ14と、可動軸12側から固定管11の連結ねじ部10にねじ込まれて連結コマ14を可動軸12の半径方向に加圧して可動軸12を固定管11に固定するロックナット15を有する。
【0015】
このピント合わせ治具1を使用してマイクロスコープ20を被観察部に対してピント合わせを行って位置きめするときの動作を図4のピント合わせ状態図を参照して説明する。
【0016】
まず、ピント合わせ治具1の着座面4の中心から位置決め棒3のガイド球9の先端までの長さが撮像するマイクロスコープ20の対物レンズ21の焦点距離と一致するように位置決め棒3の長さを調節して固定する。その後、観察者は撮像する被写体30の位置に位置決め棒3のガイド球9を配置してピント合わせ治具1の位置決め棒3が観察方向と一致するようにピント合わせ治具1を位置決めする。この状態で補助者はマイクロスコープ20の位置を可変してピント合わせ治具1の位置決め棒3の延長線方向から対物レンズ21の外面をピント合わせ治具1のスコープ位置規制部2の内面に設けた案内面6に嵌め込んでマイクロスコープ20を位置決めして固定する。マイクロスコープ20の位置決めを行った後、ピント合わせ治具1がガイド球9側から傾けられる場合はピント合わせ治具1をガイド球9側から傾けてピント合わせ治具1をマイクロスコープ20から取り外し、ピント合わせ治具1が傾けられない場合は位置決め棒3の長さを短くしてピント合わせ治具1をマイクロスコープ20から取り外す。
【0017】
このようにしてマイクロスコープ20を対物レンズ21の被写体30に対して簡単に焦点合わせをすることができ、熟練者でなくとも短時間でピント合わせを行うことができる。また、ピント合わせ治具1の位置決め棒3は伸縮自在であるから焦点距離が異なる対物レンズ21を使用した場合でも対応することができる。
【符号の説明】
【0018】
1;ピント合わせ治具、2;スコープ位置規制部、3;位置決め棒、4;着座面、
5;位置決め面、6;案内面、7;把持手段、8;伸縮棒、9;ガイド球、
10;連結ねじ部、11;固定管、12;可動軸、13;ロック手段、
14;連結コマ、15;ロックナット、20;マイクロスコープ、
21;対物レンズ、30;被写体。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平4−86721号公報
【特許文献2】特開平9−46567号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スコープ位置規制部と位置決め棒を有し、
前記スコープ位置規制部は、円盤状に形成され、内部にマイクロスコープの対物レンズの前面と係合する着座面と、該着座面の外周に設けられ、対物レンズの外周面と係合する位置決め面とで形成された案内面を有し、外周面の一部には把持手段が設けられ、
前記位置決め棒は、伸縮棒と該伸縮棒の先端に設けられた直径が小さいガイド球を有し、前記スコープ位置規制部の案内面とは反対側で前記着座面の中心に対応する位置に取り付けられていることを特徴とするマイクロスコープのピント合わせ治具。
【請求項2】
前記位置決め棒の長さをマイクロスコープの対物レンズの焦点距離に応じて可変することを特徴とする請求項1記載のマイクロスコープのピント合わせ治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−163733(P2012−163733A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23497(P2011−23497)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【特許番号】特許第4707776号(P4707776)
【特許公報発行日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(506103201)
【Fターム(参考)】