説明

マイクロプレート処理装置

【課題】従来のマイクロプレート処理装置においては、マイクロプレートのウエル内の液体の除去、および液体内の気泡の除去ができないという課題があった。
【解決手段】略水平方向に回転中心軸を有する回転ドラム101と、回転ドラム101を回転させる回転機構103と、回転ドラム103の側面に設けられており、複数のウエル201bを備えたマイクロプレート201を、当該マイクロプレート201のウエル201bが設けられている面2011aが回転ドラム101の内側を向くように保持することが可能な保持部104とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロプレートのウエルに対して、試薬等の液体を用いて処理を行う際などに利用される処理装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、試料の分析等に用いる容器として、ウエルと呼ばれる小さい開口部、あるいはくぼみを複数備えたマイクロプレートが用いられていた。例えば、このようなマイクロプレートのウエルの内面に、試薬がコーティングすることにより、この試薬とウエル内に注入される試料との反応結果に基づいて一度に多くの試料の分析を行うことが可能である。一方で、ウエル内に注入された試料や試薬の洗浄は、ウエル内に洗浄液等を注入し、当該洗浄液を除去することで行われていた。
【0003】
近年、マイクロプレートの小孔化が進み、単位面積当たりのウエル数が増加する傾向にある。例えば、マイクロプレートに設けられたウエル数が、96個から、384個程度にまで増加している。単位面積当たりのウエル数が増加すると、1つのウエルのサイズが微小化することとなる。
【0004】
通常、ウエルの内面に試薬をコーティングする処理や、ウエル内を洗浄する処理は、一旦、各ウエル内に試薬や洗浄液をマイクロピペットや微細なノズル等を用いて注入し、注入した試薬や洗浄液を微細なノズル等を用いた吸引等により排出させることにより行われていた。
【0005】
例えば、従来のマイクロプレートの洗浄装置、いわゆるプレートウォッシャーとしては、吐出ノズルと吸引ノズルとを備えており、マイクロプレートのウェル内の液を吸引ノズルを用いてバキュームで吸引し、吐出ノズルから洗浄バッファーを吐出することでマイクロプレートを洗浄するものが知られていた。
【0006】
また、従来のマイクロプレートを処理する装置として、マイクロプレートを取り付けるロータポケットが複数個設けられ、制御用モータにより回転可能な遠心ローターと、遠心ローターの遠心力により廃棄された試薬を回収して、排出管から除去する廃液パンと、廃液パンに洗浄水を散水する洗浄ノズルと、洗浄ノズルに洗浄水を供給する給水タンクとからなる試薬廃棄装置が知られていた。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−178355号公報(第1頁、第1図等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したように、ウエルのサイズが微小化すると、分注工程において、ウエルに注入した試薬や洗浄液とウエルの内面、具体的にはウエルの内側面や底面に気泡等が発生しやすく、また、一旦発生した気泡は簡単に除去することができない。このため、プレート底面等に気泡が残ってしまい、洗浄液や試薬等がウエルの内面に十分に接触せず、ウエルの内面に対して、試薬が均一に塗布できなくなってしまったり、洗浄液が行き渡らなくなり、洗浄できない部分が発生してしまう可能性があった。この結果、マイクロプレートを用いた検査や分析により得られるデータの信頼性を損なうという問題があった。
【0008】
また、ウエルのサイズが微小化すると、ウエル内に注入した試薬や洗浄液等を排出する際にも、試薬や洗浄液等がウエル内に残りやすくなる結果、ウエル内に塗布された試薬の量が、ウエル間で不均一になってしまったり、ウエル内に残った洗浄液によって、正確な分析結果が得られなくなる可能性があり、データの信頼性を損なうという問題があった。
【0009】
例えば、上述したような吸引ノズル等を備えたプレートウォッシャーでは、ウェル内の液を完全に除去することが難しく、特に細胞系のアッセイではバキュームで吸引するとプレート底面に吸着している細胞にダメージを与えるため、培地等のバッファがウェル内に残り、プレートリーダー測定時にバックグラウンドノイズとなってデータの信頼性を損なってきた。また同様に、Elisa(Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assay)アッセイにおいても、洗浄工程は困難な状況であった。
【0010】
従って、上記のようにして処理されたマイクロプレートを用いても信頼性が高くかつ再現性の良い試験や分析等が行えない、という課題があった。
【0011】
ここで、このような課題を解決するために、上述した特許文献1の試薬廃棄装置等を用いることが考えられる。このような試薬廃棄装置においては、マイクロプレートのウエルから液体を除去することは可能である。しかしながら、上記の試薬廃棄装置においては、マイクロプレートを縦にして装置内に設置する必要があるため、マイクロプレートのウエルに液体が入っている場合には、マイクロプレートの設置時にウエル内の液体がこぼれることとなる。このため、上記の試薬廃棄装置を、マイクロプレートのウエル内の液体から気泡だけを除去するために使用することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のマイクロプレート処理装置は、複数のウエルを備えたマイクロプレートを処理するマイクロプレート処理装置であって、略水平方向に回転中心軸を有する回転ドラムと、前記回転ドラムを、前記回転中心軸を中心として回転させる回転機構と、前記回転ドラムの側面に設けられており、前記マイクロプレートを、当該マイクロプレートのウエルが設けられている面が前記回転ドラムの内側を向くように保持することが可能な保持部とを備えたマイクロプレート処理装置である。
【0013】
かかる構成により、回転ドラムの回転により、マイクロプレートのウエル内の液体から、気泡の除去を行うことができるとともに、略水平方向に回転中心軸を有する回転ドラムを用いることによりマイクロプレートを略水平に保った状態で、マイクロプレートを回転ドラム側面の保持部に取り付けることができ、ウエル内の液体が取付時にこぼれることがなく、ウエル内の液体から気泡を除去することができる。
【0014】
本発明のマイクロプレート処理装置は、複数のウエルを備えたマイクロプレートを処理するマイクロプレート処理装置であって、略水平方向に回転中心軸を有する回転ドラムと、前記回転ドラムを、前記回転中心軸を中心として回転させる回転機構と、前記回転ドラムの側面に設けられており、前記マイクロプレートを、当該マイクロプレートのウエルが設けられている面が前記回転ドラムの内側および外側を向くように保持することが可能な保持部とを備えたマイクロプレート処理装置である。
【0015】
かかる構成により、回転ドラムの回転により、マイクロプレートのウエル内の液体から気泡の除去を行うこと、およびマイクロプレートのウエルから液体を除去することができる。特に、略水平方向に回転中心軸を有する回転ドラムを用いることによりマイクロプレートを略水平に保った状態で、マイクロプレートを回転ドラム側面の保持部に取り付けることができ、ウエル内の液体が取付時にこぼれることがなく、ウエル内の液体から気泡を除去することができる。
【0016】
また、本発明のマイクロプレート処理装置は、前記マイクロプレート処理装置において、マイクロプレートを略水平に載置可能なステージと、前記保持部が前記マイクロプレートを水平に保持可能な状態において、前記ステージ上に配置されたマイクロプレートの高さが前記保持部と同じ高さとなるよう、前記ステージと前記回転ドラムとの相対的な高さ関係を上下に変化させる昇降機構と、をさらに備えたマイクロプレート処理装置である。
【0017】
かかる構成により、ステージあるいは回転ドラムを昇降させることによって処理の切替を実現することができる。このため、処理を切り替えるために、マイクロプレートを裏返したりするための複雑な構造が不要であり、構造を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によるマイクロプレート処理装置によれば、マイクロプレートのウエル内の液体を除去すること、およびウエル内の液体に含まれる気泡を除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、マイクロプレート処理装置の実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
【0020】
(実施の形態)
図1は、本実施の形態におけるマイクロプレート処理装置の構成を示す一部切り欠き斜視図である。
【0021】
図2は、本実施の形態におけるマイクロプレート処理装置の構成を示す側面図である。
【0022】
図3は、図1に示したマイクロプレート処理装置の回転ドラムの中心回転軸方向の側面図である。
【0023】
図4は、マイクロプレート処理装置による処理対象であるマイクロプレートの一例を示す図である。
【0024】
マイクロプレート処理装置1は、回転ドラム101、カバー102、回転機構103、保持部104、ステージ105、および昇降機構106を備えている。このマイクロプレート処理装置1の行う処理とは、例えば、マイクロプレートのウエル内に対して行われる液体等を用いた処理であり、具体的には、マイクロプレートのウエル内に対する試薬のコーティング処理や、ウエル内の洗浄液を用いた洗浄処理等である。
【0025】
マイクロプレート201は、主面2011a側に複数のウエル201bを有する基部201aを備えている。ウエル201bは、液体等を溜めるための開口部やくぼみを構成する部材と考えても良い。各ウエル201bは、主面2011aにおいて開口している。通常各ウエル201bは配列されている。マイクロプレート201の大きさは問わないが、通常は、規格等により定められた大きさ、例えば8×12cm等の大きさを有している。マイクロプレート201の有するウエル201bの数は問わない。ただし、このマイクロプレート処理装置1の処理対象として、特に効果的であるマイクロプレート201は、ウエル数が96個よりも多いものである。各ウエルの容量は問わないが、通常、数マイクロリットルから数ミリリットルである。マイクロプレートの材料は、アクリル樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ガラス等問わない。基部201aの端部の形状等は問わない。ここでは、透明な材質を用いたマイクロプレートを例に挙げて示している。
【0026】
回転ドラム101は、略水平方向に回転中心軸101aを有している。回転ドラム101は、回転中心軸101aを回転の中心として回転可能となるように、カバー102内に取り付けられている。回転ドラム101は、具体的には、回転機構103によって回転させられる。回転ドラム101が中空であっても、中空でない、即ち中実であっても良い。回転ドラム101の側面には、1以上の保持部104が設けられている。保持部104については、後述する。なお、ここで述べる回転中心軸101aは仮想の軸である。回転ドラム101の材質等は問わない。また、ここで述べる略水平とは、マイクロプレート201のウエル201bに注入した試薬や洗浄液等がこぼれない程度の方向や角度を指す。
【0027】
カバー102は、マイクロプレート201から排出される試薬や洗浄液等の飛散を防ぐためのものであり、回転ドラム101の側面を覆うように、側面に対して隙間を空けて設けられている。カバー102の材質等は問わない。なお、カバー102には、マイクロプレート201から排出される試薬や洗浄液等を排出するための排出口等を設けるようにしても良い。
【0028】
回転機構103は、回転ドラム101を、回転中心軸101aを中心として、即ち回転軸として回転させるための機構である。具体的には、回転機構103は、回転ドラム101に対して、回転させるための動力を伝達することで、回転ドラムを回転させる。回転機構103は、ここでは、説明を簡単にするために、回転ドラムの回転中心軸101a上に取り付けられたモータであるとする。なお、回転機構103は、モータやエンジン等の動力源や、動力源とギアや、プーリーや、ベルトや、回転シャフト等の組み合わせにより実現しても良い。
【0029】
保持部104は、回転ドラム101の側面に設けられており、マイクロプレート201を、マイクロプレート201のウエル201bが設けられている面が、回転ドラム101の内側および外側を向くように保持する。具体的には、マイクロプレート201のウエル201bが設けられている面を回転ドラム101の内側に向けて、保持部104にマイクロプレート201を保持させることで、マイクロプレート201を、マイクロプレート201のウエル201bが設けられている面が、回転ドラム101の内側を向くように保持することができる。また、マイクロプレート201のウエル201bが設けられている面を回転ドラム101の外側に向けて、保持部104にマイクロプレート201を保持させることで、マイクロプレート201を、マイクロプレート201のウエル201bが設けられている面が、回転ドラム101の外側を向くように保持することができる。ここでは、回転ドラム101の側面に沿って等間隔に、4つの保持部104が設けられている場合を例に挙げて示している。このため、向かい合う位置にある保持部104同士は、回転中心軸101aに対して対称となる位置に設けられていることとなる。ただし、保持部104の数等は問わない。保持部104は、マイクロプレート201が着脱可能であれば、マイクロプレート201をどのように保持しても良い。例えば、マイクロプレート201のウエル201b以外の部分を板バネ等で挟み込んで保持するようにしてもよい。この実施の形態においては、保持部104は、回転ドラム101の側面に設けられた凹部であり、この凹部の側面には、マイクロプレート201の基部201aの両側部に嵌合する溝104aが設けられている。この溝104aにマイクロプレート201の両側部の端を合わせて、マイクロプレート201を溝104aに沿ってスライドさせることで、マイクロプレート201が保持部104に保持される。なお、溝104a内においてマイクロプレート201を挟み込んで、マイクロプレート201の溝からのぬけを防止するための、板バネ等を溝104a内に設けても良い。なお、保持部104の構造は、上記以外の構造でも良いが、マイクロプレート201内の試薬や洗浄液等の液体が、マイクロプレート201のウエル201bから排出されるように、マイクロプレート201を回転ドラム101の外側に向けて保持部104に保持した状態で、マイクロプレート201のウエル201bが設けられている主面上方に、空間が設けられているような構造とすることが好ましい。特に、マイクロプレート201から排出される試薬や洗浄液等の液体が、回転ドラム101の外側に排出されるよう、保持部104近傍の回転ドラム101の側面が開口しており、この開口されている部分から、保持部104に保持されているマイクロプレート201が、回転ドラム101の側面側に露出するような構成とすることが好ましい。
【0030】
ステージ105は、マイクロプレート201を略水平に載置可能な台である。ステージ105のマイクロプレート201が載置される載置面には、マイクロプレート201を、回転中心軸101a上の位置に位置決めして配置するためのガイド部材105aが設けられている。このガイド部材105aは、回転中心軸101aに対して垂直な方向へのマイクロプレート201の移動を制限し、回転中心軸101aに垂直な方向についてはマイクロプレート201を移動可能とする形状を有している。具体的には、ガイド部材105aは、回転中心軸101aに平行な2本の帯状の突起である。また、ステージ105上には、ガイド部材105a間に配置されたマイクロプレート201を、回転ドラム101の保持部104内に押し出し、および保持部104内のマイクロプレートを引き出すための搬送部105bを備えている。例えば搬送部105bは、油圧や空気圧で動作するピストンや、モータとラックと押し出すためのアーム等に設けられたピニオン等の組み合わせ等により実現可能である。また、搬送部105bのマイクロプレート側の先端には、マイクロプレート201を把持するための把持部(図示せず)や、マイクロプレート201を真空吸着するための吸着部(図示せず)等を備えていてもよい。
【0031】
昇降機構106は、一の保持部104がマイクロプレート201を水平に保持可能な状態において、ステージ105上に配置されたマイクロプレート201の高さが保持部104と同じ高さとなるよう、ステージ105と回転ドラム101との相対的な高さ関係を上下に変化させる機構である。マイクロプレート201を水平に保持可能な状態とは、具体的には、一の保持部104が回転ドラム101の最上部に位置している状態、もしくは、保持部104が回転ドラム101の最下部に位置している状態である。「マイクロプレート201の高さが保持部104と同じ高さ」になるようにすることとは、具体的には、マイクロプレート201の基部201aの保持部の104の溝と嵌めあわせられる部分の高さが、保持部104の溝の高さと同じ高さとなるようにすることである。ここでは、昇降機構106が、ステージ105に取り付けられた、ステージ105を上下に昇降させる油圧ジャッキである場合を例に挙げて示している。なお、油圧ジャッキに油を送り出すポンプ等はここでは省略している。なお、昇降機構106は、ステージ105の高さが制御可能な機構であれば、どのような機構であっても良い。また、ここでは、昇降機構106により、ステージ105の高さを変化させるようにしているが、昇降機構106により、回転ドラム101等の高さを変化させて、保持部104とステージ105との相対的な高さを調整できるようにしても良い。
【0032】
次に、試薬をマイクロプレートにコーティングする処理を例に挙げて具体例を説明する。
【0033】
まず、マイクロプレート201の各ウエル201bに液状の試薬を、多連式の分注器等を用いて注入する。
【0034】
図5は、試薬を注入した状態におけるマイクロプレート201のウエル201bの断面模式図である。図に示すように、試薬50中には、気泡51が発生していたとする。
【0035】
次に、試薬50を注入したマイクロプレート201を、ガイド部材105aに合わせてステージ105上に配置する。
【0036】
次に、マイクロプレート処理装置1に対して、ボタンや制御パネル等(図示せず)の操作によって、処理を開始する指示を与えると、回転ドラム101の保持部104の一つが、回転ドラム101の最下部に位置するように、回転機構103が回転ドラム101を回転させる。また、昇降機構106は、マイクロプレート201の高さ位置が、回転ドラム101の最下部の保持部104の高さと同じとなるように、ステージ105の高さを移動させる。ステージ105の移動が終了した時点のマイクロプレート処理装置1の状態を図6に示す。
【0037】
この状態で、搬送部105bが、ステージ105上のマイクロプレート201を保持部104内に搬送する。ここでは、搬送部105bがマイクロプレート201を保持部104内に押し出す。マイクロプレート201は、端部が保持部104の溝に嵌めあわせられて保持部201内に搬送される。これにより、マイクロプレート201のウエル201bが設けられている面が、回転ドラム101の内側、言い換えれば回転中心軸101aを向くように、マイクロプレート201が保持部104により保持される。
【0038】
図7に、マイクロプレート201が、マイクロプレート201のウエル201bが設けられている面である主面2011aが、回転ドラム101の内側を向くように、保持部104に保持されている状態を示す、回転ドラム101の中心回転軸方向の側面図である。このとき、ウエル201bの開口部が上方を向いているため、ウエル201b内の試薬50がこぼれることがない。ここで述べる上方とは、水平面に対する上方である。
【0039】
次に、回転機構103が、予め指定された所定の回転速度で、所定時間、回転ドラム101を回転させる。これによりマイクロプレート201が回転中心軸101aを回転軸として回転することとなり、マイクロプレート201のウエル201b内の試薬50に遠心力がかかり、ウエル201b内の試薬50が、ウエル201b内に押しつけられて、試薬50から気泡51が排出され、ウエル201bの内面に均等に試薬50が接触することとなる。
【0040】
回転が終了後、搬送部105bが、保持部104b内のマイクロプレートを例えば吸着してステージ105上に搬出する。
【0041】
次に、回転ドラム101の保持部104の一つが、回転ドラム101の最上部に位置するように、必要に応じて、回転機構103が回転ドラム101を回転させる。ここでは、保持部104が、回転中心軸に対して対称に設けられているため、回転は不要である。そして、昇降機構106は、マイクロプレート201の高さ位置が、回転ドラム101の最上部の保持部104の高さと同じとなるように、ステージ105の高さを移動させる。ステージ105の移動が終了した時点のマイクロプレート処理装置1の状態を図8に示す。
【0042】
この状態で、搬送部105bが、ステージ105上のマイクロプレート201を保持部104内に搬送する。ここでは、搬送部105bがマイクロプレート201を保持部104内に押し出す。マイクロプレート201は、端部が保持部104の溝に嵌めあわせられて保持部201内に搬送される。これにより、マイクロプレート201のウエル201bが設けられている面である主面2011aが、回転ドラム101の外側、言い換えれば回転中心軸101aに対して反対側を向くように、マイクロプレート201が保持部104により保持される。ここでは、マイクロプレート201の主面2011aが、保持部104の開口されている部分を向くように保持される。
【0043】
図9に、マイクロプレート201が、マイクロプレート201のウエル201bが設けられている主面2011aが、回転ドラム101の外側を向くように、保持部104に保持されている状態を示す、回転ドラム101の中心回転軸方向の側面図である。ここでは、このように昇降機構106の高さを変更することで、マイクロプレート201を、回転ドラム101の中心回転軸に対する主面2011aの向きを180度変更させて、保持部104に保持させることができる。
【0044】
次に、回転機構103が、予め指定された所定の回転速度で、所定時間、回転ドラム101を回転させる。これによりマイクロプレート201が回転中心軸101aを回転軸として回転することとなり、マイクロプレート201のウエル201b内の試薬50に遠心力がかかり、ウエル201b内の試薬50がウエル201b外に排出される。強い遠心力により排出されることで、ウエル201b内に不必要な試薬50が局所的に残ることがない。この結果、ウエル201bの内面に均等に試薬50がコーティングされることとなる。ウエル201bから排出された試薬50は、保持部104の開口部から回転ドラム101外に放出され、放出された試薬50はカバー102で受け止められる。これにより、外部へ試薬等が飛散することがない。
【0045】
回転が終了後、搬送部105bが、保持部104b内のマイクロプレートを例えば吸着して搬出する。
【0046】
なお、この具体例においては、試薬を用いた場合について説明したが、試薬の代わりに、洗浄液等の他の液体等を用いた場合においても、同様の処理が行われる。なお、これらの液体は粘度の高い液体であっても良い。
【0047】
また、ここでは、気泡の除去と、試薬の除去とを連続して行う場合について説明したが、それぞれを個別に行うようにしても良い。
【0048】
以上、本実施の形態によれば、回転ドラム101の回転により、マイクロプレート201のウエル201b内の液体からの気泡の除去を行うことができる。このような遠心脱泡によって、分注行程における気泡の混入を無くし、測定データの信頼性を格段に向上させることができる。
【0049】
特に、略水平方向に回転中心軸を有する回転ドラム101を用いることにより、マイクロプレート201を略水平に保った状態で、マイクロプレート201を回転ドラム101の側面の保持部104に取り付けることができる。このため、マイクロプレート201のウエル201b内の液体が、取付時にこぼれることがない。この結果、ウエル201b内の液体に含まれる気泡の除去を行うことができる。
【0050】
また、マイクロプレート201を回転ドラム101の外側に向けて保持させて回転させることで、ウエル201b内に注入された液体の除去を行うことができる。このような遠心脱水を用いた処理によってマイクロプレート内の液を99%以上除去することができるため、信頼性の高いデータを得ることができる。また、マイクロプレート内の液を十分に除去できるため、この装置を、細胞系のアッセイやElisaアッセイ系のみ成らず、様々なアッセイに導入することが可能となる。
【0051】
また、本実施の形態によれば、、マイクロプレート201の保持する向きを変更可能とした簡単な構造によって、1つのマイクロプレート処理装置1で、ウエル201b内の液体からの気体の除去と、ウエル201bからの液体の除去との2つの処理を切り替えて行うことが可能である。したがって、この装置を使用することで、様々なアッセイ系において、データの信頼性・再現性を格段に向上させることができる。
【0052】
また、本実施の形態によれば、昇降機構106の高さを変更することで、マイクロプレート201に対して行われる処理を、気泡を除去するための処理と、液体を除去するための処理とのいずれか一方に切り替えることが可能となる。マイクロプレート201の主面2011aの向き等を変更するための複雑な機構等が不要であり、ステージ105あるいは回転ドラム101を昇降させるための簡易な構造によって処理の切替を実現することができる。
【0053】
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように、本発明にかかるマイクロプレート処理装置は、マイクロプレートに対して液体等を用いた処理を行うための処理装置として適しており、特に、マイクロプレートのウエルの試薬等によるコーティング処理や、ウエルの洗浄液による洗浄処理等を行う装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態におけるマイクロプレート処理装置の構成を示す一部切り欠き斜視図
【図2】同マイクロプレート処理装置の構成を示す側面図
【図3】同マイクロプレート処理装置の回転ドラムの中心回転軸方向の側面図
【図4】同マイクロプレート処理装置による処理対象であるマイクロプレートの一例を示す図
【図5】同マイクロプレート処理装置による処理対象であるマイクロプレートのウエルの断面模式図
【図6】同マイクロプレート処理装置の動作を説明するための図
【図7】同マイクロプレート処理装置の保持部104に、マイクロプレートが保持されている状態を示す図
【図8】同マイクロプレート処理装置の動作を説明するための図
【図9】同マイクロプレート処理装置の保持部104に、マイクロプレートが保持されている状態を示す図
【符号の説明】
【0056】
1 マイクロプレート処理装置
50 試薬
51 気泡
101 回転ドラム
101a 回転中心軸
102 カバー
103 回転機構
104 保持部
104a 溝
105 ステージ
105a ガイド部材
105b 搬送部
106 昇降機構
201 マイクロプレート
201a 基部
201b ウエル
2011a 主面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のウエルを備えたマイクロプレートを処理するマイクロプレート処理装置であって、
略水平方向に回転中心軸を有する回転ドラムと、
前記回転ドラムを、前記回転中心軸を中心として回転させる回転機構と、
前記回転ドラムの側面に設けられており、前記マイクロプレートを、当該マイクロプレートのウエルが設けられている面が前記回転ドラムの内側を向くように保持することが可能な保持部とを備えたマイクロプレート処理装置。
【請求項2】
複数のウエルを備えたマイクロプレートを処理するマイクロプレート処理装置であって、
略水平方向に回転中心軸を有する回転ドラムと、
前記回転ドラムを、前記回転中心軸を中心として回転させる回転機構と、
前記回転ドラムの側面に設けられており、前記マイクロプレートを、当該マイクロプレートのウエルが設けられている面が前記回転ドラムの内側および外側を向くように保持することが可能な保持部とを備えたマイクロプレート処理装置。
【請求項3】
マイクロプレートを略水平に載置可能なステージと、
前記保持部が前記マイクロプレートを水平に保持可能な状態において、前記ステージ上に配置されたマイクロプレートの高さが前記保持部と同じ高さとなるよう、前記ステージと前記回転ドラムとの相対的な高さ関係を上下に変化させる昇降機構と、をさらに備えた請求項2記載のマイクロプレート処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−264927(P2009−264927A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114910(P2008−114910)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000113573)マイクロニクス株式会社 (13)
【出願人】(508128129)株式会社C.A.N. (4)
【Fターム(参考)】