説明

マスキングフィルム貼合導光板原板

【課題】マスキングフィルムの端部浮きを防止すると共に、常にマスキングフィルムを容易に剥離することができるマスキングフィルム貼合導光板原板を提供する。
【解決手段】マスキングフィルム貼合導光板原板1は、導光板原板2と、この導光板原板2の両面にそれぞれ貼合されたマスキングフィルム3A,3Bとから構成されている。導光板原板2に対するマスキングフィルム3A,3Bの通常粘着力は、10〜120gf/25mmである。通常粘着力は、マスキングフィルム3A,3Bを導光板原板2に貼合した直後の粘着力である。導光板原板2に対するマスキングフィルム3A,3Bの加熱後粘着力は、120gf/25mm以下である。加熱後粘着力は、マスキングフィルム3A,3Bが貼合された状態の導光板原板2を70℃で40分加熱した後の粘着力である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光板原板の表面にマスキングフィルムが貼合されてなるマスキングフィルム貼合導光板原板、マスキングフィルム貼合導光板原板を用いたパターン付き片面マスキングフィルム貼合導光板の製造方法及びパターン付き導光板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のマスキングフィルム貼合導光板原板としては、例えば特許文献1に記載されているように、導光板原板の表面に傷付き防止用のマスキングフィルムを貼着したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−131783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、マスキングフィルム貼合導光板原板の在庫保管時や運搬時や加工時等には、マスキングフィルムの端部が導光板原板から自然に剥がれる、いわゆるマスキングフィルムの端部浮きが発生することがある。また、例えばマスキングフィルム貼合導光板原板にパターンを形成した後に、パターンを加熱乾燥させたり、或いはマスキングフィルム貼合導光板原板の保管中や輸送中に、マスキングフィルムが貼合されたままの状態で高温に晒されたりすることがある。そのような後でマスキングフィルムを導光板原板から剥がそうとしても、マスキングフィルムが容易に剥がれないことがある。
【0005】
本発明の目的は、マスキングフィルムの端部浮きを防止すると共に、常にマスキングフィルムを容易に剥離することができるマスキングフィルム貼合導光板原板、パターン付き片面マスキングフィルム貼合導光板の製造方法及びパターン付き導光板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、導光板原板の表面にマスキングフィルムが貼合されてなるマスキングフィルム貼合導光板原板であって、導光板原板の表面に対するマスキングフィルムの通常粘着力は、10〜120gf/25mmであり、導光板原板の少なくとも非パターン形成面に対するマスキングフィルムの加熱後粘着力は、120gf/25mm以下であり、加熱後粘着力は、マスキングフィルムが貼合された状態の導光板原板を70℃で40分加熱した後の粘着力であることを特徴とするものである。
【0007】
このように本発明のマスキングフィルム貼合導光板原板においては、導光板原板の表面に対するマスキングフィルムの通常粘着力を10gf/25mm以上とすることにより、マスキングフィルム貼合導光板原板の在庫保管時や運搬時や加工時等に、マスキングフィルムが導光板原板から自然に剥がれることが起きにくくなるため、導光板原板に対するマスキングフィルムの端部浮きを防止することができる。また、導光板原板の表面に対するマスキングフィルムの通常粘着力を120gf/25mm以下とすることにより、マスキングフィルムを意図的に剥離しようとするときに、マスキングフィルムを導光板原板から容易に剥離することができる。
【0008】
さらに、例えば導光板原板のパターン形成面からマスキングフィルムを剥離し、そのパターン形成面に溶剤インクでドットパターンを印刷する場合には、インクを乾燥させるために、導光板原板の非パターン形成面にマスキングフィルムが貼合されたままのマスキングフィルム貼合導光板原板を加熱する必要がある。また、マスキングフィルム貼合導光板原板の保管中や輸送中に、マスキングフィルム貼合導光板原板が高温に晒されることもある。ここで、マスキングフィルムが貼合された状態の導光板原板を70℃で40分加熱した後の粘着力を加熱後粘着力としたときに、導光板原板の少なくとも非パターン形成面に貼合されたマスキングフィルムの加熱後粘着力を120gf/25mm以下とすることにより、マスキングフィルム貼合導光板原板が加熱されたり高温に晒された後でも、マスキングフィルムを意図的に剥離しようとするときに、マスキングフィルムを導光板原板から容易に剥離することができる。
【0009】
また、本発明のパターン付き片面マスキングフィルム貼合導光板の製造方法は、上記のマスキングフィルム貼合導光板原板を用意する工程と、導光板原板のパターン形成面に貼合されたマスキングフィルムを剥離する工程と、導光板原板のパターン形成面にパターンを形成する工程とを含むことを特徴とするものである。
【0010】
このように本発明のパターン付き片面マスキングフィルム貼合導光板の製造方法においては、上記のマスキングフィルム貼合導光板原板を用いることにより、在庫保管時や運搬時や加工時等に導光板原板に対するマスキングフィルムの端部浮きを防止することができると共に、導光板原板の両面のうちパターン形成面に貼合されたマスキングフィルムを意図的に剥離するときに、マスキングフィルムを導光板原板から容易に剥離することができる。
【0011】
好ましくは、パターンを形成する工程では、溶剤を含有するインクでパターン形成面にドットパターンを印刷し、その後に導光板原板を加熱してインクを乾燥させる。この場合にも、上記のマスキングフィルム貼合導光板原板を用いることにより、導光板原板を加熱してインクを乾燥させた後、導光板原板の両面のうち非パターン形成面に貼合されたマスキングフィルムを意図的に剥離するときに、マスキングフィルムを導光板原板から容易に剥離することができる。
【0012】
このとき、導光板原板を50〜70℃で20〜40分加熱することが好ましい。上述したように、マスキングフィルムが貼合された状態の導光板原板を70℃で40分加熱した後の粘着力を加熱後粘着力と定義したので、導光板原板を50〜70℃で20〜40分加熱した後には、マスキングフィルムを導光板原板から容易に且つ確実に剥離することができる。
【0013】
さらに、本発明のパターン付き導光板の製造方法は、上記のマスキングフィルム貼合導光板原板を用意する工程と、導光板原板のパターン形成面に貼合されたマスキングフィルムを剥離する工程と、導光板原板のパターン形成面にパターンを形成する工程と、導光板原板の非パターン形成面に貼合されたマスキングフィルムを剥離する工程とを含むことを特徴とするものである。
【0014】
このように本発明のパターン付き導光板の製造方法においては、上記のマスキングフィルム貼合導光板原板を用いることにより、在庫保管時や運搬時や加工時等に導光板原板に対するマスキングフィルムの端部浮きを防止することができると共に、導光板原板の両面のうちパターン形成面に貼合されたマスキングフィルムを意図的に剥離するときに、マスキングフィルムを導光板原板から容易に剥離することができる。また、例えばマスキングフィルム貼合導光板原板が高温に晒された後、導光板原板の両面のうち非パターン形成面に貼合されたマスキングフィルムを意図的に剥離するときに、マスキングフィルムを導光板原板から容易に剥離することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、導光板原板に対するマスキングフィルムの端部浮きを防止すると共に、常にマスキングフィルムを導光板原板から容易に剥離することができる。これにより、パターン付き片面マスキングフィルム貼合導光板及びパターン付き導光板の製造が行い易くなり、生産性の面で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係わるマスキングフィルム貼合導光板原板の一実施形態を示す側面図である。
【図2】図1に示したマスキングフィルム貼合導光板原板を用いてパターン付き導光板を製造する手順を示すフローチャートである。
【図3】図1に示したマスキングフィルム貼合導光板原板を用いてパターン付き導光板を製造する工程を示す側面図である。
【図4】実施例及び比較例で使用したマスキングフィルムの物性、通常粘着力及び加熱後粘着力と評価結果とを示す表である。
【図5】マスキングフィルムの通常粘着力及び加熱後粘着力を測定する方法を示す斜視図である。
【図6】マスキングフィルムの端部浮きの定義を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係わるマスキングフィルム貼合導光板原板、パターン付き片面マスキングフィルム貼合導光板及びパターン付き導光板の製造方法の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係わるマスキングフィルム貼合導光板原板の一実施形態を示す側面図である。同図において、本実施形態のマスキングフィルム貼合導光板原板1は、導光板原板2と、この導光板原板2の両面にそれぞれ貼合されたマスキングフィルム3A,3Bとから構成されている。
【0019】
導光板原板2は、例えばポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル・スチレン共重合体、シクロオレフィン系樹脂等の透明材料で形成されている。導光板原板2の厚みは、例えば1〜4mmである。導光板原板2の一方の主面は、溶剤を含有するインク(溶剤インク)によるドットパターン(後述)が印刷される印刷面(パターン形成面)2aであり、導光板原板2の他方の主面は、ドットパターンが印刷されない非印刷面(非パターン形成面)2bである。
【0020】
マスキングフィルム3A,3Bは、導光板原板2の印刷面2a及び非印刷面2bを傷が付かないように保護するためのものである。マスキングフィルム3A,3Bは、ポリプロピレン(PP)樹脂やポリエチレン(PE)樹脂等のポリオレフィン(PO)樹脂で形成された基材と、ポリオレフィン(PO)エラストマーやエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)等で形成された粘着層とからなっている。マスキングフィルム3A,3Bの厚みは、例えば80〜90μmである。
【0021】
このようなマスキングフィルム貼合導光板原板1を製造するときは、まずPMMA等の原料をシート状に押出成形して、導光板原板2を作製する。そして、導光板原板2の両面にマスキングフィルム3A,3Bをシート温度40〜100℃で貼合する。そして、マスキングフィルム3A,3Bが貼合された導光板原板2を原板製品サイズにカットすることで、マスキングフィルム貼合導光板原板1が得られる。
【0022】
導光板原板2に対するマスキングフィルム3A,3Bの通常粘着力は、10〜120gf/25mmであり、好ましくは10〜100gf/25mmである。マスキングフィルム3A,3Bの通常粘着力は、マスキングフィルム3A,3Bを導光板原板2に貼合した直後のマスキングフィルム3A,3Bの粘着力である。導光板原板2に対するマスキングフィルム3A,3Bの加熱後粘着力は、120gf/25mm以下、好ましくは100gf/25mm以下である。マスキングフィルム3A,3Bの加熱後粘着力は、マスキングフィルム3A,3Bが貼合された状態の導光板原板2を70℃で40分加熱した後のマスキングフィルム3A,3Bの粘着力である。
【0023】
ここで、通常粘着力及び加熱後粘着力は、何れも導光板原板2及びマスキングフィルム3A,3Bの幅を25mmとした場合の粘着力として表わされる。また、マスキングフィルム3A,3Bが貼合された状態の導光板原板2を70℃で40分加熱した後の粘着力を加熱後粘着力としたのは、後述する溶剤インクにより導光板原板2の印刷面2aにドットパターンを印刷した後に溶剤インクを乾燥させるためには、マスキングフィルム貼合導光板原板1を70℃程度で40分程度加熱することが多いという理由による。
【0024】
また、マスキングフィルム3A,3Bの引張強度は、10〜200MPaであり、マスキングフィルム3A,3Bのヤング率は、100〜1000N/mmである。
【0025】
次に、上記のマスキングフィルム貼合導光板原板1を用いてパターン付き導光板を製造する方法について、図2により説明する。パターン付き導光板は、特に図示はしないが、液晶表示装置に搭載されるものである。具体的には、パターン付き導光板は、バックライトの一部を構成し、光源により液晶パネルを照明するために用いられるものである。
【0026】
図2において、まず図3(a)に示すように、マスキングフィルム貼合導光板原板1を最終製品の外形となるように加工し、端面研磨を行う(工程S101)。例えば最終製品が40インチタイプである場合は、マスキングフィルム貼合導光板原板1の外形寸法は500mm×900mmとなる。このとき、マスキングフィルム3A,3Bの通常粘着力が10gf/25mm以上であるため、マスキングフィルム3A,3Bの端部が導光板原板2から自然に剥がれる、いわゆるマスキングフィルム3A,3Bの端部浮き(図6参照)が発生することは殆ど無い。従って、導光板原板2の印刷面2a及び非印刷面2bの端部を十分保護することができる。
【0027】
続いて、図3(b)に示すように、導光板原板2の印刷面2aに貼合されたマスキングフィルム3Aを剥離する(工程S102)。このとき、マスキングフィルム3Aの通常粘着力が120gf/25mm以下であるため、マスキングフィルム3Aを導光板原板2から容易に剥がすことができる。これにより、マスキングフィルム3Aがきれいに剥がれずに粘着層が印刷面2aに筋状に残ってしまったり、作業者がマスキングフィルム3Aを手で剥がすことで作業者に負荷がかかりストレスになるといった不具合は殆ど発生しない。
【0028】
続いて、図3(c)に示すように、溶剤インクにより導光板原板2の印刷面(反射面)2aにドットパターン4をスクリーン印刷する(工程S103)。そして、ドットパターン4が印刷されたマスキングフィルム貼合導光板原板1を50〜70℃の乾燥炉で20〜40分加熱することにより、溶剤インクを乾燥させる(工程S104)。このとき、上述したように粘着層の筋残りの発生が防止されるため、ドットパターン4の印刷ムラが生じることは殆ど無い。また、マスキングフィルム貼合導光板原板1を50〜70℃で20〜40分だけ加熱するので、短時間で確実に溶剤インクを乾燥させることができる。
【0029】
続いて、ドットパターン4が印刷されたマスキングフィルム貼合導光板原板1を常温(20〜25℃)まで冷却する(工程S105)。これにより、パターン付き片面マスキングフィルム貼合導光板6が得られる。
【0030】
続いて、図3(d)に示すように、導光板原板2の非印刷面2bに貼合されたマスキングフィルム3Bを剥離する(工程S106)。以上により、パターン付き導光板5が生成される。このとき、マスキングフィルム3Bの加熱後粘着力が120gf/25mm以下であるため、マスキングフィルム3Bを導光板原板2から容易に剥がすことができる。これにより、マスキングフィルム3Bがきれいに剥がれずに粘着層が非印刷面2bに筋状に残ってしまうことは殆ど無い。このため、非印刷面2bの外観不良が防止されると共に、非印刷面2bに塵や埃が付着しにくくなるため、パターン付き導光板5の性能に影響を与えることも殆ど無い。
【0031】
なお、ここでは、マスキングフィルム貼合導光板原板1を加熱して溶剤インクを乾燥させた後、マスキングフィルム貼合導光板原板1を乾燥炉から出して冷却し、その後マスキングフィルム3Bを剥離するようにしたが、マスキングフィルム貼合導光板原板1を乾燥炉から出した直後に、マスキングフィルム3Bを剥離しても良い。
【0032】
以上において、工程S101は、マスキングフィルム貼合導光板原板1を用意する工程である。工程S102は、導光板原板2のパターン形成面2aに貼合されたマスキングフィルム3Aを剥離する工程である。工程S103〜S105は、導光板原板2のパターン形成面2aにパターン4を形成する工程である。工程S106は、導光板原板2の非パターン形成面2bに貼合されたマスキングフィルム3Bを剥離する工程である。
【0033】
以上のように本実施形態にあっては、導光板原板2に対するマスキングフィルム3A,3Bの通常粘着力を10〜120gf/25mmとしたので、マスキングフィルム貼合導光板原板1の運搬時、在庫保管時や加工時に導光板原板2に対するマスキングフィルム3A,3Bの端部浮きを防止することができると共に、マスキングフィルム3A,3Bを導光板原板2から意図的に剥離しようとするときに、マスキングフィルム3A,3Bを容易に剥離することができる。
【0034】
また、導光板原板2に対するマスキングフィルム3A,3Bの加熱後粘着力を120gf/25mm以下としたので、ドットパターン4が印刷されたマスキングフィルム貼合導光板原板1(パターン付き片面マスキングフィルム貼合導光板6)が加熱された後でも、マスキングフィルム3Bを導光板原板2から意図的に剥離しようとするときには、マスキングフィルム3Bを容易に剥離することができる。また、マスキングフィルム貼合導光板原板1の保管中や輸送中に、マスキングフィルム貼合導光板原板1が高温に晒されても、マスキングフィルム3A,3Bを導光板原板2から容易に剥離することができる。
【0035】
以上により、パターン付き片面マスキングフィルム貼合導光板6及びパターン付き導光板5の製造にかかる手間が軽減されると共に、パターン付き導光板5の性能低下等を避けることができる。
【0036】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、導光板原板2の両面に貼合されたマスキングフィルム3A,3Bの加熱後粘着力を120gf/25mm以下としたが、導光板原板2の印刷面2aに貼合されたマスキングフィルム3Aについては、溶剤インクによるドットパターンの印刷のために加熱前に剥離されることから、導光板原板2の非印刷面2bに貼合されたマスキングフィルム3Bの加熱後粘着力のみを120gf/25mm以下としても良い。
【0037】
また、上記実施形態では、溶剤インクにより導光板原板2の印刷面2aにドットパターン4をスクリーン印刷したが、パターンの形成法としては、特に溶剤インクによるスクリーン印刷には限られない。例えば、UV硬化型のスクリーン印刷やインクジェット印刷、レーザー描画等によって導光板原板2のパターン形成面2aにパターンを形成しても良い。この場合には、マスキングフィルム貼合導光板原板1の加熱処理が不要となる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明に係わるマスキングフィルム貼合導光板原板の一実施例について説明する。
【0039】
(1)実施例
図4に示すような実施例1〜5のマスキングフィルムを用意した。実施例1のマスキングフィルム(フィルムA、東レフィルム加工株式会社製、「トレテック 7232」)では、基材がPO樹脂で形成され、粘着層がEVAで形成され、厚みが90μmである。実施例2のマスキングフィルム(フィルムB、DIC株式会社製、「DIFAREN K8510」)では、基材がPE樹脂で形成され、粘着層がPOエラストマーで形成され、厚みが80μmである。実施例3のマスキングフィルム(フィルムC、トレディガー社製)では、基材がPO樹脂で形成され、粘着層がPOエラストマーで形成され、厚みが80μmである。実施例4のマスキングフィルム(フィルムD、Novacel社製)では、基材及び粘着層の材質が不明であり、厚みが85μmである。実施例5のマスキングフィルム(フィルムE、フタムラ化学株式会社製、「SAF-020M」)では、基材及び粘着層の材質が不明であり、厚みが30μmである。
【0040】
これらのマスキングフィルムを別に作製した導光板原板の両面に貼合して、マスキングフィルム貼合導光板原板を得た。なお、導光板原板の材質としては、PMMA(住友化学株式会社製「スミペックスEXN」)を用いた。
【0041】
そして、図5(a)に示すように、各マスキングフィルム貼合導光板原板11を300mm×25mmの寸法に切り出した。そして、図5(b)に示すように、各マスキングフィルム貼合導光板原板11を立てた状態でオートグラフAGS−50NX(島津製作所製)に固定した。そして、導光板原板12に貼合されたマスキングフィルム13の通常粘着力を測定した。具体的には、ロードセル50N、引張速度300mm/minで180度方向に剥離したときの粘着力を測定した。この測定方法は、JIS K6854−2に準拠したものである。このとき、導光板原板12の一端部をクランプ部材14でクランプし、180度方向に剥離されたマスキングフィルム13の先端部をクランプ部材15でクランプした状態で、マスキングフィルム13を上方に引っ張る。
【0042】
また、各マスキングフィルム貼合導光板原板11を、上記と同様に300mm×25mmの寸法に切り出した。そして、各マスキングフィルム貼合導光板原板11を70℃の恒温槽に40分放置した後、通常粘着力と同様の測定方法によりマスキングフィルム13の加熱後粘着力を測定した。
【0043】
各マスキングフィルムの通常粘着力及び加熱後粘着力の測定結果は、図4に示す通りである。実施例1のマスキングフィルムでは、貼合温度が42℃であり、通常粘着力が30gf/25mmであり、加熱後粘着力が84gf/25mmである。実施例2のマスキングフィルムでは、貼合温度が42℃であり、通常粘着力が10gf/25mmであり、加熱後粘着力が14gf/25mmである。実施例3のマスキングフィルムでは、貼合温度が61℃であり、通常粘着力が26gf/25mmであり、加熱後粘着力が22gf/25mmである。実施例4のマスキングフィルムでは、貼合温度が59℃であり、通常粘着力が44gf/25mmであり、加熱後粘着力が24gf/25mmである。実施例5のマスキングフィルムでは、貼合温度が62℃であり、通常粘着力が14gf/25mmであり、加熱後粘着力が22gf/25mmである。
【0044】
さらに、実施例1〜5のマスキングフィルムの機械物性として、各マスキングフィルムの引張強度及びヤング率を測定した。引張強度の測定方法は、JIS Z1702に準拠したものであり、ヤング率の測定方法は、JIS K7127に準拠したものである。
【0045】
各マスキングフィルムの引張強度及びヤング率の測定結果は、図4に示す通りである。各マスキングフィルムについて、引張強度は10〜200MPaであり、ヤング率は100〜1000N/mmである。
【0046】
(2)比較例
図4に示すような比較例1,2のマスキングフィルムを用意した。比較例1のマスキングフィルム(フィルムF、積水化学工業株式会社製、「#6281KL」)では、基材がPE樹脂で形成され、粘着層がEVAで形成され、厚みが90μmである。比較例2のマスキングフィルム(フィルムG、トレディガー社製)では、基材がPO樹脂で形成され、粘着層がPOエラストマーで形成され、厚みが80μmである。
【0047】
これらのマスキングフィルムを使用し、上記実施例1〜5と同様にしてマスキングフィルム貼合導光板原板を得た。そして、上記実施例1〜5と同様の方法により、各マスキングフィルムの通常粘着力及び加熱後粘着力を測定した。また、上記実施例1〜5と同様の方法により、各マスキングフィルムの引張強度及びヤング率を測定した。
【0048】
各マスキングフィルムの通常粘着力及び加熱後粘着力の測定結果は、図4に示す通りである。比較例1のマスキングフィルムでは、貼合温度が42℃であり、通常粘着力が16gf/25mmであり、加熱後粘着力が189gf/25mmである。比較例2のマスキングフィルムでは、貼合温度が42℃であり、通常粘着力が5gf/25mmであり、加熱後粘着力が7gf/25mmである。
【0049】
また、各マスキングフィルムの引張強度及びヤング率の測定結果は、図4に示す通りである。各マスキングフィルムについて、引張強度は10〜200MPaであり、ヤング率は100〜1000N/mmである。
【0050】
(3)評価
図4から明らかなように、実施例1〜5では、マスキングフィルムの通常粘着力が10〜120gf/25mmであるため、導光板原板に対するマスキングフィルムの端部浮きが発生しなかった。
【0051】
ここで、図6に示すように、導光板原板2の一方の主面全体にマスキングフィルム3が貼合された状態では、マスキングフィルム3が導光板原板2に完全に密着(圧着)した領域(圧着領域)Pと、マスキングフィルム3が導光板原板2に密着していない領域(未圧着領域)Qとが存在することがある。マスキングフィルム3の未圧着領域Qは、マスキングフィルム3が導光板原板2から浮いていて、導光板原板2とマスキングフィルム3との間に空気層が形成されている領域であり、導光板原板2のエッジ付近に形成される。
【0052】
このとき、導光板原板2のエッジからの未圧着領域Qの最大長さWが5mm以下であるときは、マスキングフィルム3の端部浮きが無いものと定義し、導光板原板2のエッジからの未圧着領域Qの最大長さWが5mmよりも大きいときは、マスキングフィルム3の端部浮きがあるものと定義する。
【0053】
そのようにマスキングフィルムの端部浮きを定義したのは、以下の理由による。即ち、導光板原板にマスキングフィルムを貼合した後に、回転丸鋸でマスキングフィルム貼合導光板原板を製品原板サイズにカットする。このとき、カットしたマスキングフィルム貼合導光板原板のエッジ付近でマスキングフィルムが僅かに剥がれてしまうことがあるが、その剥がれた部分の長さが導光板原板のエッジから5mm以下であれば、特に問題は無いからである。
【0054】
また、実施例1〜5では、マスキングフィルムの加熱後粘着力が120gf/25mm以下であるため、マスキングフィルム貼合導光板原板の加熱後でも、マスキングフィルムを導光板原板から容易に剥離することができた。
【0055】
また、比較例1では、マスキングフィルムの通常粘着力が10〜120gf/25mmであるため、導光板原板に対するマスキングフィルムの端部浮きが発生しなかったが、マスキングフィルムの加熱後粘着力が120gf/25mmよりも高いため、マスキングフィルムを導光板原板から剥離することが困難であった。比較例2では、マスキングフィルムの加熱後粘着力が120gf/25mm以下であるため、マスキングフィルム貼合導光板原板の加熱後でも、マスキングフィルムを導光板原板から容易に剥離することができたが、マスキングフィルムの通常粘着力が10gf/25mmよりも低いため、導光板原板に対するマスキングフィルムの端部浮きが発生した。
【0056】
以上により、導光板原板に対するマスキングフィルムの通常粘着力を10〜120gf/25mmにし、導光板原板に対するマスキングフィルムの加熱後粘着力を120gf/25mm以下にするという本発明の有効性を実証することができた。
【符号の説明】
【0057】
1…マスキングフィルム貼合導光板原板、2…導光板原板、2a…印刷面(パターン形成面)、2b…非印刷面(非パターン形成面)、3A,3B…マスキングフィルム、4…ドットパターン、5…パターン付き導光板、6…パターン付き片面マスキングフィルム貼合導光板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導光板原板の表面にマスキングフィルムが貼合されてなるマスキングフィルム貼合導光板原板であって、
前記導光板原板の表面に対する前記マスキングフィルムの通常粘着力は、10〜120gf/25mmであり、
前記導光板原板の少なくとも非パターン形成面に対する前記マスキングフィルムの加熱後粘着力は、120gf/25mm以下であり、
前記加熱後粘着力は、前記マスキングフィルムが貼合された状態の前記導光板原板を70℃で40分加熱した後の粘着力であることを特徴とするマスキングフィルム貼合導光板原板。
【請求項2】
請求項1記載のマスキングフィルム貼合導光板原板を用意する工程と、
前記導光板原板のパターン形成面に貼合された前記マスキングフィルムを剥離する工程と、
前記導光板原板の前記パターン形成面にパターンを形成する工程とを含むことを特徴とするパターン付き片面マスキングフィルム貼合導光板の製造方法。
【請求項3】
前記パターンを形成する工程では、溶剤を含有するインクで前記パターン形成面にドットパターンを印刷し、その後に前記導光板原板を加熱して前記インクを乾燥させることを特徴とする請求項2記載のパターン付き片面マスキングフィルム貼合導光板の製造方法。
【請求項4】
前記導光板原板を50〜70℃で20〜40分加熱することを特徴とする請求項3記載のパターン付き片面マスキングフィルム貼合導光板の製造方法。
【請求項5】
請求項1記載のマスキングフィルム貼合導光板原板を用意する工程と、
前記導光板原板のパターン形成面に貼合された前記マスキングフィルムを剥離する工程と、
前記導光板原板の前記パターン形成面にパターンを形成する工程と、
前記導光板原板の非パターン形成面に貼合された前記マスキングフィルムを剥離する工程とを含むことを特徴とするパターン付き導光板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−38060(P2013−38060A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−49657(P2012−49657)
【出願日】平成24年3月6日(2012.3.6)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】