マスクおよびマスクパターンの寸法測定方法
【課題】 マスクパターンの寸法を精度良く測定する。
【解決手段】 測定対象パターン11の先端部近傍に、寸法測定用の補助パターン12を形成する。この補助パターン12を基準にして測定対象パターン11のパターンエッジの位置を測定し、設計値からの変動量を測定することによって測定対象パターン11の寸法を求める。補助パターン12は、測定対象パターン11が転写されてウェーハ上に回路パターンが形成されたときに、その回路パターンの本来有すべき機能を維持させるような形状と寸法で形成されるとともに、その回路パターンの本来有すべき機能を維持させるような位置に形成される。
【解決手段】 測定対象パターン11の先端部近傍に、寸法測定用の補助パターン12を形成する。この補助パターン12を基準にして測定対象パターン11のパターンエッジの位置を測定し、設計値からの変動量を測定することによって測定対象パターン11の寸法を求める。補助パターン12は、測定対象パターン11が転写されてウェーハ上に回路パターンが形成されたときに、その回路パターンの本来有すべき機能を維持させるような形状と寸法で形成されるとともに、その回路パターンの本来有すべき機能を維持させるような位置に形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマスクおよびマスクパターンの寸法測定方法に関し、特に、半導体デバイスの回路パターン形成に使用されるマスク、およびマスクに形成されたマスクパターンの寸法測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体デバイスの微細化、高集積化に伴い、その製造に用いられるフォトマスク(「マスク」という。)のマスクパターンの寸法精度にも、これまで以上に厳しい品質が要求されている。
【0003】
一般的なマスクパターンの寸法保証項目には、面内均一性、リニアリティ、疎密性、XY差等があるが、近年の先端デバイス用のマスクには、これらに加えて、マスクパターンの先端位置の設計値からの変動量が非常に重要視されている。これは、デバイス製造において、ラインパターンの先端部がウェーハ上に転写されて形成される回路パターン部分に、その部分を配線端として他層とのコンタクトをとるためのホールパターンが重なることが多いためである。例えば、ラインパターン先端部の位置の変動量が大きいマスクを用いてデバイス製造を行ってしまった場合には、ラインパターンとホールパターンの十分なコンタクト面積が確保できず、コンタクト不良を引き起こすといった問題が生じ得る。
【0004】
現在の先端デバイスにおいては、いっそうの高集積化、多機能化が進められており、設計時に余裕をもってラインやコンタクトホールを描くことができなくなっている。そのため、デバイスの回路パターンを形成するためのマスクのマスクパターンは精度良く形成されている必要がある。一方、マスク製造においては、マスクパターンの形成時に、その先端部の解像不足によってそのパターンエッジの位置が設計値から変動してしまうといったことが起きる場合がある。したがって、デバイスを高品質で製造するためには、製造に先立ち、マスクに形成されたマスクパターンの寸法を精度良く測定し、保証しておく必要がある。
【0005】
従来、マスクパターンの寸法測定には、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope,SEM)が広く用いられてきた。SEMを用いてマスクパターンの寸法を測定する場合、SEMの画面に映し出して測定可能な寸法の上限は、通常の精度保証に必要な測定倍率(例えば5万倍)の下ではおよそ約3μm程度である。
【0006】
図11はマスクパターンの一例を示す図である。
例えばデバイスに図11に示すような形状の回路パターンを有する層が存在しており、それを形成するためのマスクパターン100の長手方向の寸法(2.5μm〜3.0μm程度)を保証する必要がある場合を想定する。このような場合には、SEMの画面にマスクパターン100の全体を映し、その左端から右端までの寸法Lを測定することになる。場合によってはSEMの測定倍率を下げて画面にマスクパターン100の全体を映し、その寸法を測定することになる。
【0007】
また、SEMは、このようなマスクパターンの寸法測定のほか、露光後の回路パターンの寸法測定等にも用いられている。例えば、従来、大寸法と微小寸法の位置ずれ検出用パターンを形成し、大寸法の位置ずれ検出用パターンは光学式測定器を用いて、また、微小寸法の位置ずれ検出用パターンはSEMを用いて、それぞれ位置ずれを測定する方法等が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−297588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来、SEMを用いたマスクパターンの寸法測定では、画面内寸法差の再現性の問題、寸法の経時変化の問題、倍率間寸法差の経時変化の問題等により、測定されるマスクパターンの寸法に誤差が生じてしまう場合があった。
【0009】
ここで、画面内寸法差の再現性の問題とは、例えばSEMの画面の中央にマスクパターンを映して寸法測定を行った場合と、画面の端の方に映して寸法測定を行った場合とでは、そのマスクパターンが同一であっても得られる寸法に差が生じ、さらにその寸法差に再現性が認められないような場合をいう。したがって、ひとつのマスクパターンの全体を画面内に映した場合には、測定倍率に依ってそのマスクパターンの両端が画面の端に位置するようになることがあるため、そのマスクパターンの両端間の寸法を測定したときには、その寸法は、実際の寸法と異なってしまっている場合がある。
【0010】
また、寸法の経時変化の問題とは、同一のマスクパターンについて測定する寸法が、測定のたびに、例えば測定日ごとに、変化してしまうような場合をいう。これは、SEMの更正原理上、パターンサイズが大きくなるほどその変化量が大きくなってしまう。
【0011】
また、倍率間寸法差の経時変化の問題とは、同一のマスクパターンについて測定する寸法が、測定倍率を変化させたときに差を生じてしまい、さらにその関係が測定のたびに、例えば測定日ごとに、変化してしまうような場合をいう。したがって、マスクパターンの大きさに応じてその全体が画面内に入るように通常の測定倍率よりも下げたときには、そのマスクパターンの寸法を通常の測定倍率で測定していたとしたら得られていたであろう寸法との間に差が生じてしまうこともある。そのため、そのままでは他のマスクパターンの寸法との比較が行えない。
【0012】
SEMを用いたマスクパターンの寸法測定においては、このような複数の要因が同時に発生していることが多く、また、その要因を分離したり特定したりすることも極めて困難である。このように、従来のマスクパターンの寸法測定では、たとえマスクパターンが設計通りに形成されていたとしても、寸法測定装置であるSEMに起因して測定誤差が発生してしまうことがあり、信頼性のあるマスクパターンの寸法が得られない場合があった。
【0013】
また、図12はマスクパターンの別の例を示す図である。
マスクに形成されるマスクパターンには、その周辺に他のマスクパターンが存在していないような孤立パターン200もある。このような孤立パターン200についても、本来はその先端部のパターンエッジの位置を保証する必要がある。
【0014】
マスクパターンは、所定の測定倍率でそれ自体がSEMの画面に入りきらなくても、その測定倍率でその先端部とその周辺にある他のマスクパターンを映し出すことにより、他のマスクパターンを基準としたその先端部の相対的な位置の把握が可能な場合がある。
【0015】
しかし、孤立パターン200の場合には、その周辺に基準となるような他のマスクパターンが存在していないため、その先端部の位置を把握することができなかった。孤立パターン200とともに他のマスクパターンが映るようになるまで測定倍率を下げれば、上記のような倍率間寸法差の問題等も起こる。そのため、このような孤立パターン200については、その精度保証が実質不可能であるのが現状である。
【0016】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、マスクパターンの寸法を精度良く測定することのできるマスクおよびマスクパターンの寸法測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明では上記課題を解決するために、図1に例示する構成で実現可能なマスクが提供される。本発明のマスクは、マスクパターンを有するマスクにおいて、前記マスクパターンの近傍に前記マスクパターンの寸法を測定するために用いる補助パターンを有することを特徴とする。
【0018】
図1に例示するようなマスク10によれば、寸法を測定すべきマスクパターンである測定対象パターン11の近傍に、その寸法測定用の補助パターン12が配置される。これにより、補助パターン12を基準にして測定対象パターン11の位置を測定し、それを基に測定対象パターン11の寸法を求めることが可能になる。
【0019】
また、本発明では上記課題を解決するために、マスクパターンの寸法測定方法において、前記マスクパターンの近傍に配置された補助パターンに対する前記マスクパターンの位置を測定することによって、前記マスクパターンの寸法を求めることを特徴とするマスクパターンの寸法測定方法が提供される。
【0020】
このようなマスクパターンの寸法測定方法によれば、マスクパターンの近傍に配置された補助パターンを基準にして測定対象パターンの位置を測定し、それを基にマスクパターンの寸法を求めることが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、寸法を測定すべきマスクパターンの近傍に補助パターンを配置し、この補助パターンに対するマスクパターンの位置を測定して、その寸法を測定するようにした。これにより、マスクパターンの設計値からの変動量を正確に測定することができ、マスクパターンの寸法を精度良く求めることができる。また、マスクパターンの寸法を精度良く求めることができることにより、高品質なデバイスの製造が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1はマスクの構成例を示す要部平面図である。
この図1に示すマスク10には、例えば石英等のガラス基板上にクロム(Cr)やモリブデンシリサイド(MoSi)で遮光膜が形成されて、ウェーハ上への転写時に光を透過する透光部と光を遮断する遮光部とが形成されている。このマスク10の透光部として、寸法を測定すべき測定対象パターン11、およびその先端部近傍に測定対象パターン11の寸法測定用の微小な補助パターン12が形成されている。
【0023】
測定対象パターン11は、デバイス製造においてウェーハ上に転写される回路パターンに対応して形成されている。
また、補助パターン12は、測定対象パターン11が転写されてウェーハ上に回路パターンが形成されたときに、その回路パターンの本来有すべき機能に影響を与えることなく転写後もその機能を維持させるような形状および寸法で形成される。さらに、補助パターン12は、その回路パターンの本来有すべき機能に影響を与えることなく転写後もその機能を維持させるような位置に形成される。
【0024】
したがって、補助パターン12は、適当な位置に、転写後の回路パターンの寸法に影響しないような寸法で形成されていることが望ましく、ウェーハ上への転写の際にパターン解像しないことが最も望ましい。そのため、マスク10の設計時には、補助パターン12の寸法、および測定対象パターン11との距離について十分に考慮する必要がある。なお、補助パターン12の寸法および距離についての詳細は後述する。
【0025】
このように、測定対象パターン11とともに補助パターン12を形成することにより、マスク10の形成後は、この測定対象パターン11と補助パターン12の間の距離をSEMを用いて測定することで、測定対象パターン11の寸法を精度良く求めることが可能になる。以下に、SEMを用いたマスク10のマスクパターンの寸法測定方法について説明する。
【0026】
図2はマスクパターンの寸法測定方法の説明図である。
測定対象パターン11の寸法を測定する場合、まず、測定対象パターン11のパターンエッジ(補助パターン12と対向するパターンエッジ)11aと、補助パターン12の図中左側(測定対象パターン11から遠い側)のパターンエッジ12aとの間の距離W1を測定する。
【0027】
続いて、同様に、測定対象パターン11のパターンエッジ11aと、補助パターン12の図中右側(測定対象パターン11に近い側)のパターンエッジ12bとの間の距離W2を測定する。
【0028】
そして、測定対象パターン11のパターンエッジ11aと、補助パターン12の重心位置(パターンエッジ12a,12bの中間位置)との間の距離W(=(W1+W2)/2)を算出する。
【0029】
このようにして距離Wを算出した後、この距離Wについて、測定対象パターン11のパターンエッジ11aと補助パターン12の重心位置との間の距離の設計値W´からのずれ量(=W−W´)を算出する。このずれ量が測定対象パターン11のパターンエッジ11aの位置の変動量になる。
【0030】
なお、距離W1,W2のいずれかを測定対象パターン11と補助パターン12との間の距離として用い、測定対象パターン11のパターンエッジ11aの位置の変動量を算出することも可能であるが、上記のように補助パターン12の重心位置を基準に距離Wを算出することにより、補助パターン12自体の寸法誤差の影響を除去することができる。
【0031】
図2には測定対象パターン11の一方の先端部のみ示したが、図1に示した測定対象パターン11のもう一方の先端部についても同様、これに対向する補助パターン12との位置関係を求めることにより、そのパターンエッジの位置の変動量を算出する。そして、両パターンエッジの位置の変動量から、測定対象パターン11の寸法を求める。
【0032】
このように、測定対象パターン11の先端部近傍に補助パターン12を設けることにより、測定対象パターン11のパターンエッジの位置変動を精度良く定量化することができ、測定対象パターン11の寸法を正確に求めることが可能になる。
【0033】
また、補助パターン12を設けることにより、補助パターン12および測定対象パターン11の先端部を画面中央付近に映した状態でそのパターンエッジの位置の変動量を測定することができるので、画面内寸法差に起因する測定誤差を大幅に低減することが可能になる。
【0034】
さらに、この補助パターン12は微小であるため、SEMにおける経時的な寸法の変化量を小さくすることができ、その寸法の経時変化に起因する測定誤差を大幅に低減することが可能になる。
【0035】
さらに、測定対象パターン11が2.5μm〜3.0μm程度の比較的大きなものであっても、測定対象パターン11の先端部を画面中央付近に映した状態で、さらにサブミクロン前後の他のマスクパターンと同倍率で、測定が可能になるため、倍率間寸法差およびその経時変化に起因する測定誤差を解消することが可能になる。
【0036】
次に、マスク10の設計時に考慮すべき補助パターン12の寸法、および測定対象パターン11と補助パターン12の間の距離について説明する。ここでは、図3に示したマスクパターンをモデルにして光強度シミュレーションを行っている。
【0037】
図3は光強度シミュレーションに用いた評価用マスクの要部平面図である。
この図3に示す評価用マスク20には、測定対象パターン21およびその両先端部近傍に補助パターン22が形成されている。測定対象パターン21は、0.6μm×2.5μmサイズで形成されている。このような評価用マスク20について、上記のように、転写後の回路パターンの寸法に影響しない補助パターン22の寸法(S)、測定対象パターン21と補助パターン22の両パターンエッジ間の距離(D)を光強度シミュレーションにより求めた。シミュレーション条件を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
マスクタイプは、Crを遮光膜材料に用いたバイナリーマスク(No.1)と、MoSiをシフター材料に用いたハーフトーン型位相シストマスク(以下「ハーフトーンマスク」という。)(No.2)の2種類とした。いずれのマスクタイプについても、露光波長は、光源にArFエキシマレーザを使用したときの波長(193nm)としている。なお、このときのハーフトーンマスクの透過率は約6%になる。また、レンズの開口数(NA)は0.70とし、光源とレンズのNA比(σ)は、バイナリーマスクで0.80、ハーフトーンマスクで0.85/0.425としている。
【0040】
補助パターン22は、いずれのマスクタイプについても、寸法Sを0.1μm,0.2μm,0.3μmのいずれかとし、距離Dを0.2μm,0.4μm,0.6μm,1.2μm,2.4μmのいずれかとして、シミュレーションを行っている。なお、この表1に示した寸法Sおよび距離Dの値は、評価用マスク20上の寸法値である。
【0041】
また、この光強度シミュレーションは、いずれのマスクタイプについても、ウェーハ上に4分の1の倍率で縮小露光する場合について行っている。
図4から図6にバイナリーマスクの光強度シミュレーション結果を示す。ここで、図4はバイナリーマスクのS=0.1μmのときの光強度シミュレーション結果を示す図、図5はバイナリーマスクのS=0.2μmのときの光強度シミュレーション結果を示す図、図6はバイナリーマスクのS=0.3μmのときの光強度シミュレーション結果を示す図である。
【0042】
図4から図6において、横軸は露光装置のデフォーカス量(μm)を表し、縦軸はウェーハ上に形成される回路パターンと、補助パターン22を設けなかったときにウェーハ上に形成される回路パターンとの間の寸法変動量(nm)を表している。図4から図6には、寸法Sが0.1μm,0.2μm,0.3μmのときのそれぞれについて、距離Dを0.2μm,0.4μm,0.6μm,1.2μm,2.4μmとした場合における露光装置のデフォーカス量と回路パターンの寸法変動量の関係をプロットしている。
【0043】
図4から図6に示した光強度シミュレーション結果より、ウェーハ上に形成される回路パターンの寸法変動量が0になるような補助パターン22の配置条件は存在しない。そこで、ここでは補助パターン22を形成することによる回路パターンの寸法変動量の許容値を両側合わせて1nm以下と仮定する。なお、寸法変動量がこの程度の許容値内であれば、転写後の回路パターンの寸法に影響しないということができる。
【0044】
寸法Sが0.1μmのときに回路パターンの寸法変動量が1nm以下となるのは、図4より、距離Dが0.6μm,1.2μm,2.4μmのときである。寸法Sが0.2μmのときに回路パターンの寸法変動量が1nm以下となるのは、図5より、距離Dが1.2μm,2.4μmのときである。寸法Sが0.3μmのときに回路パターンの寸法変動量が1nm以下となるのは、図6より、距離Dが1.2μm,2.4μmのときである。したがって、バイナリーマスクについての補助パターン22の配置条件は、寸法S≦0.3μm,距離D≧1.2μmとすることができる。
【0045】
ここで、マスク製造の観点から補助パターン22の配置条件を考えると、寸法Sについては、最大値すなわちマスク製造におけるパターン解像性のマージンが確保できる状態が適当である。また、距離Dについては、補助パターン22が測定対象パターン21から大きく離れず、SEMの測定誤差が最も低減できる最小値を選択するのが良い。したがって、バイナリーマスクの場合、補助パターン22の適正配置条件として、寸法S=0.3μm,距離D=1.2μmを得ることができる。
【0046】
図7から図9にハーフトーンマスクの光強度シミュレーション結果を示す。ここで、図7はハーフトーンマスクのS=0.1μmのときの光強度シミュレーション結果を示す図、図8はハーフトーンマスクのS=0.2μmのときの光強度シミュレーション結果を示す図、図9はハーフトーンマスクのS=0.3μmのときの光強度シミュレーション結果を示す図である。
【0047】
図7から図9において、横軸は露光装置のデフォーカス量(μm)を表し、縦軸はウェーハ上に形成される回路パターンと、補助パターン22を設けなかったときにウェーハ上に形成される回路パターンとの間の寸法変動量(nm)を表している。図7から図9には、寸法Sが0.1μm,0.2μm,0.3μmのときのそれぞれについて、距離Dを0.2μm,0.4μm,0.6μm,1.2μm,2.4μmとした場合における露光装置のデフォーカス量と回路パターンの寸法変動量の関係をプロットしている。
【0048】
図7から図9に示した光強度シミュレーション結果より、ウェーハ上に形成される回路パターンの寸法変動量が0になるような補助パターン22の配置条件は存在しないため、上記のバイナリーマスクの場合と同様、補助パターン22を形成することによる回路パターンの寸法変動量の許容値を1nm以下と仮定する。
【0049】
寸法Sが0.1μmのときに回路パターンの寸法変動量が1nm以下となるのは、図7より、距離Dが1.2μm,2.4μmのときである。寸法Sが0.2μmのときに回路パターンの寸法変動量が1nm以下となるのは、図8より、距離Dが1.2μm,2.4μmのときである。寸法Sが0.3μmのときに回路パターンの寸法変動量が1nm以下となるのは、図9より、距離Dが2.4μmのときである。
【0050】
そして、バイナリーマスクの場合と同様に補助パターン22の配置条件を求めると、寸法S=0.3μm,距離D=2.4μmが得られる。しかし、補助パターン22を0.6μm×2.5μmサイズの測定対象パターン21から2.4μm離して配置することは、寸法測定上メリットがなく、従来の状況と大差ない。したがって、ハーフトーンマスクの場合、その補助パターン22の適正配置条件は、寸法S=0.2μm,距離D=1.2μmとすることができる。
【0051】
なお、上記のようにバイナリーマスクかハーフトーンマスクかによって、測定対象パターン21に対する補助パターン22の適正配置条件は変化する。基本的に、マスクの安定製造のために寸法Sを大きくすれば、補助パターン22からの透過光による回路パターン寸法の変動を防止するため、距離Dも大きくする必要が生じる。補助パターン22の形成の際には、このような関係を考慮して、マスクの種類ごと、および測定対象パターン21ごとに、その寸法Sおよび距離Dを設定する必要がある。
【0052】
また、ここでは露光時の縮小倍率を4分の1とした場合についての光強度シミュレーション結果について説明したが、縮小倍率を変更する場合には、改めて補助パターン22の寸法Sおよび距離Dの条件を設定する必要がある。
【0053】
以上のような光強度シミュレーション結果を基にマスクを形成することにより、補助パターンを利用して測定対象パターンのパターンエッジの位置の変動量を測定することができ、マスクパターンの寸法を精度良く求めることができるようになる。
【0054】
また、上記のような補助パターンを形成することにより、従来はその測定が実質不可能であった孤立パターンについても、そのパターンエッジの位置の変動量を測定することが可能になる。
【0055】
図10は孤立パターンが形成されたマスクの構成例を示す要部平面図である。
この図10に示す孤立パターン30には、転写されてウェーハ上に形成される回路パターンに対応した測定対象パターン31、およびその先端部近傍に補助パターン32が形成されている。
【0056】
このように、孤立した測定対象パターン31についても、その先端部近傍に補助パターン32を形成することにより、その周辺に他のマスクパターンが存在していなくても、適切な測定倍率で、そのパターンエッジの位置の変動量を精度良く測定することが可能になる。
【0057】
以上説明したように、本発明では、測定対象パターンの近傍にその寸法測定用の補助パターンを配置することにより、パターンエッジの位置の変動量を精度良く測定してマスクパターンの寸法を正確に求めることが可能になり、パターン寸法の保証方法として有効である。さらには、パターンエッジの位置の変動量を厳しく管理することができるようになるので、デバイス製造におけるコンタクト不良の発生を低減することができ、高品質なデバイスが製造可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】マスクの構成例を示す要部平面図である。
【図2】マスクパターンの寸法測定方法の説明図である。
【図3】光強度シミュレーションに用いた評価用マスクの要部平面図である。
【図4】バイナリーマスクのS=0.1μmのときの光強度シミュレーション結果を示す図である。
【図5】バイナリーマスクのS=0.2μmのときの光強度シミュレーション結果を示す図である。
【図6】バイナリーマスクのS=0.3μmのときの光強度シミュレーション結果を示す図である。
【図7】ハーフトーンマスクのS=0.1μmのときの光強度シミュレーション結果を示す図である。
【図8】ハーフトーンマスクのS=0.2μmのときの光強度シミュレーション結果を示す図である。
【図9】ハーフトーンマスクのS=0.3μmのときの光強度シミュレーション結果を示す図である。
【図10】孤立パターンが形成されたマスクの構成例を示す要部平面図である。
【図11】マスクパターンの一例を示す図である。
【図12】マスクパターンの別の例を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
10 マスク
11,21,31 測定対象パターン
11a,12a,12b パターンエッジ
12,22,32 補助パターン
20 評価用マスク
30 孤立パターン
【技術分野】
【0001】
本発明はマスクおよびマスクパターンの寸法測定方法に関し、特に、半導体デバイスの回路パターン形成に使用されるマスク、およびマスクに形成されたマスクパターンの寸法測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体デバイスの微細化、高集積化に伴い、その製造に用いられるフォトマスク(「マスク」という。)のマスクパターンの寸法精度にも、これまで以上に厳しい品質が要求されている。
【0003】
一般的なマスクパターンの寸法保証項目には、面内均一性、リニアリティ、疎密性、XY差等があるが、近年の先端デバイス用のマスクには、これらに加えて、マスクパターンの先端位置の設計値からの変動量が非常に重要視されている。これは、デバイス製造において、ラインパターンの先端部がウェーハ上に転写されて形成される回路パターン部分に、その部分を配線端として他層とのコンタクトをとるためのホールパターンが重なることが多いためである。例えば、ラインパターン先端部の位置の変動量が大きいマスクを用いてデバイス製造を行ってしまった場合には、ラインパターンとホールパターンの十分なコンタクト面積が確保できず、コンタクト不良を引き起こすといった問題が生じ得る。
【0004】
現在の先端デバイスにおいては、いっそうの高集積化、多機能化が進められており、設計時に余裕をもってラインやコンタクトホールを描くことができなくなっている。そのため、デバイスの回路パターンを形成するためのマスクのマスクパターンは精度良く形成されている必要がある。一方、マスク製造においては、マスクパターンの形成時に、その先端部の解像不足によってそのパターンエッジの位置が設計値から変動してしまうといったことが起きる場合がある。したがって、デバイスを高品質で製造するためには、製造に先立ち、マスクに形成されたマスクパターンの寸法を精度良く測定し、保証しておく必要がある。
【0005】
従来、マスクパターンの寸法測定には、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope,SEM)が広く用いられてきた。SEMを用いてマスクパターンの寸法を測定する場合、SEMの画面に映し出して測定可能な寸法の上限は、通常の精度保証に必要な測定倍率(例えば5万倍)の下ではおよそ約3μm程度である。
【0006】
図11はマスクパターンの一例を示す図である。
例えばデバイスに図11に示すような形状の回路パターンを有する層が存在しており、それを形成するためのマスクパターン100の長手方向の寸法(2.5μm〜3.0μm程度)を保証する必要がある場合を想定する。このような場合には、SEMの画面にマスクパターン100の全体を映し、その左端から右端までの寸法Lを測定することになる。場合によってはSEMの測定倍率を下げて画面にマスクパターン100の全体を映し、その寸法を測定することになる。
【0007】
また、SEMは、このようなマスクパターンの寸法測定のほか、露光後の回路パターンの寸法測定等にも用いられている。例えば、従来、大寸法と微小寸法の位置ずれ検出用パターンを形成し、大寸法の位置ずれ検出用パターンは光学式測定器を用いて、また、微小寸法の位置ずれ検出用パターンはSEMを用いて、それぞれ位置ずれを測定する方法等が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−297588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来、SEMを用いたマスクパターンの寸法測定では、画面内寸法差の再現性の問題、寸法の経時変化の問題、倍率間寸法差の経時変化の問題等により、測定されるマスクパターンの寸法に誤差が生じてしまう場合があった。
【0009】
ここで、画面内寸法差の再現性の問題とは、例えばSEMの画面の中央にマスクパターンを映して寸法測定を行った場合と、画面の端の方に映して寸法測定を行った場合とでは、そのマスクパターンが同一であっても得られる寸法に差が生じ、さらにその寸法差に再現性が認められないような場合をいう。したがって、ひとつのマスクパターンの全体を画面内に映した場合には、測定倍率に依ってそのマスクパターンの両端が画面の端に位置するようになることがあるため、そのマスクパターンの両端間の寸法を測定したときには、その寸法は、実際の寸法と異なってしまっている場合がある。
【0010】
また、寸法の経時変化の問題とは、同一のマスクパターンについて測定する寸法が、測定のたびに、例えば測定日ごとに、変化してしまうような場合をいう。これは、SEMの更正原理上、パターンサイズが大きくなるほどその変化量が大きくなってしまう。
【0011】
また、倍率間寸法差の経時変化の問題とは、同一のマスクパターンについて測定する寸法が、測定倍率を変化させたときに差を生じてしまい、さらにその関係が測定のたびに、例えば測定日ごとに、変化してしまうような場合をいう。したがって、マスクパターンの大きさに応じてその全体が画面内に入るように通常の測定倍率よりも下げたときには、そのマスクパターンの寸法を通常の測定倍率で測定していたとしたら得られていたであろう寸法との間に差が生じてしまうこともある。そのため、そのままでは他のマスクパターンの寸法との比較が行えない。
【0012】
SEMを用いたマスクパターンの寸法測定においては、このような複数の要因が同時に発生していることが多く、また、その要因を分離したり特定したりすることも極めて困難である。このように、従来のマスクパターンの寸法測定では、たとえマスクパターンが設計通りに形成されていたとしても、寸法測定装置であるSEMに起因して測定誤差が発生してしまうことがあり、信頼性のあるマスクパターンの寸法が得られない場合があった。
【0013】
また、図12はマスクパターンの別の例を示す図である。
マスクに形成されるマスクパターンには、その周辺に他のマスクパターンが存在していないような孤立パターン200もある。このような孤立パターン200についても、本来はその先端部のパターンエッジの位置を保証する必要がある。
【0014】
マスクパターンは、所定の測定倍率でそれ自体がSEMの画面に入りきらなくても、その測定倍率でその先端部とその周辺にある他のマスクパターンを映し出すことにより、他のマスクパターンを基準としたその先端部の相対的な位置の把握が可能な場合がある。
【0015】
しかし、孤立パターン200の場合には、その周辺に基準となるような他のマスクパターンが存在していないため、その先端部の位置を把握することができなかった。孤立パターン200とともに他のマスクパターンが映るようになるまで測定倍率を下げれば、上記のような倍率間寸法差の問題等も起こる。そのため、このような孤立パターン200については、その精度保証が実質不可能であるのが現状である。
【0016】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、マスクパターンの寸法を精度良く測定することのできるマスクおよびマスクパターンの寸法測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明では上記課題を解決するために、図1に例示する構成で実現可能なマスクが提供される。本発明のマスクは、マスクパターンを有するマスクにおいて、前記マスクパターンの近傍に前記マスクパターンの寸法を測定するために用いる補助パターンを有することを特徴とする。
【0018】
図1に例示するようなマスク10によれば、寸法を測定すべきマスクパターンである測定対象パターン11の近傍に、その寸法測定用の補助パターン12が配置される。これにより、補助パターン12を基準にして測定対象パターン11の位置を測定し、それを基に測定対象パターン11の寸法を求めることが可能になる。
【0019】
また、本発明では上記課題を解決するために、マスクパターンの寸法測定方法において、前記マスクパターンの近傍に配置された補助パターンに対する前記マスクパターンの位置を測定することによって、前記マスクパターンの寸法を求めることを特徴とするマスクパターンの寸法測定方法が提供される。
【0020】
このようなマスクパターンの寸法測定方法によれば、マスクパターンの近傍に配置された補助パターンを基準にして測定対象パターンの位置を測定し、それを基にマスクパターンの寸法を求めることが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、寸法を測定すべきマスクパターンの近傍に補助パターンを配置し、この補助パターンに対するマスクパターンの位置を測定して、その寸法を測定するようにした。これにより、マスクパターンの設計値からの変動量を正確に測定することができ、マスクパターンの寸法を精度良く求めることができる。また、マスクパターンの寸法を精度良く求めることができることにより、高品質なデバイスの製造が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1はマスクの構成例を示す要部平面図である。
この図1に示すマスク10には、例えば石英等のガラス基板上にクロム(Cr)やモリブデンシリサイド(MoSi)で遮光膜が形成されて、ウェーハ上への転写時に光を透過する透光部と光を遮断する遮光部とが形成されている。このマスク10の透光部として、寸法を測定すべき測定対象パターン11、およびその先端部近傍に測定対象パターン11の寸法測定用の微小な補助パターン12が形成されている。
【0023】
測定対象パターン11は、デバイス製造においてウェーハ上に転写される回路パターンに対応して形成されている。
また、補助パターン12は、測定対象パターン11が転写されてウェーハ上に回路パターンが形成されたときに、その回路パターンの本来有すべき機能に影響を与えることなく転写後もその機能を維持させるような形状および寸法で形成される。さらに、補助パターン12は、その回路パターンの本来有すべき機能に影響を与えることなく転写後もその機能を維持させるような位置に形成される。
【0024】
したがって、補助パターン12は、適当な位置に、転写後の回路パターンの寸法に影響しないような寸法で形成されていることが望ましく、ウェーハ上への転写の際にパターン解像しないことが最も望ましい。そのため、マスク10の設計時には、補助パターン12の寸法、および測定対象パターン11との距離について十分に考慮する必要がある。なお、補助パターン12の寸法および距離についての詳細は後述する。
【0025】
このように、測定対象パターン11とともに補助パターン12を形成することにより、マスク10の形成後は、この測定対象パターン11と補助パターン12の間の距離をSEMを用いて測定することで、測定対象パターン11の寸法を精度良く求めることが可能になる。以下に、SEMを用いたマスク10のマスクパターンの寸法測定方法について説明する。
【0026】
図2はマスクパターンの寸法測定方法の説明図である。
測定対象パターン11の寸法を測定する場合、まず、測定対象パターン11のパターンエッジ(補助パターン12と対向するパターンエッジ)11aと、補助パターン12の図中左側(測定対象パターン11から遠い側)のパターンエッジ12aとの間の距離W1を測定する。
【0027】
続いて、同様に、測定対象パターン11のパターンエッジ11aと、補助パターン12の図中右側(測定対象パターン11に近い側)のパターンエッジ12bとの間の距離W2を測定する。
【0028】
そして、測定対象パターン11のパターンエッジ11aと、補助パターン12の重心位置(パターンエッジ12a,12bの中間位置)との間の距離W(=(W1+W2)/2)を算出する。
【0029】
このようにして距離Wを算出した後、この距離Wについて、測定対象パターン11のパターンエッジ11aと補助パターン12の重心位置との間の距離の設計値W´からのずれ量(=W−W´)を算出する。このずれ量が測定対象パターン11のパターンエッジ11aの位置の変動量になる。
【0030】
なお、距離W1,W2のいずれかを測定対象パターン11と補助パターン12との間の距離として用い、測定対象パターン11のパターンエッジ11aの位置の変動量を算出することも可能であるが、上記のように補助パターン12の重心位置を基準に距離Wを算出することにより、補助パターン12自体の寸法誤差の影響を除去することができる。
【0031】
図2には測定対象パターン11の一方の先端部のみ示したが、図1に示した測定対象パターン11のもう一方の先端部についても同様、これに対向する補助パターン12との位置関係を求めることにより、そのパターンエッジの位置の変動量を算出する。そして、両パターンエッジの位置の変動量から、測定対象パターン11の寸法を求める。
【0032】
このように、測定対象パターン11の先端部近傍に補助パターン12を設けることにより、測定対象パターン11のパターンエッジの位置変動を精度良く定量化することができ、測定対象パターン11の寸法を正確に求めることが可能になる。
【0033】
また、補助パターン12を設けることにより、補助パターン12および測定対象パターン11の先端部を画面中央付近に映した状態でそのパターンエッジの位置の変動量を測定することができるので、画面内寸法差に起因する測定誤差を大幅に低減することが可能になる。
【0034】
さらに、この補助パターン12は微小であるため、SEMにおける経時的な寸法の変化量を小さくすることができ、その寸法の経時変化に起因する測定誤差を大幅に低減することが可能になる。
【0035】
さらに、測定対象パターン11が2.5μm〜3.0μm程度の比較的大きなものであっても、測定対象パターン11の先端部を画面中央付近に映した状態で、さらにサブミクロン前後の他のマスクパターンと同倍率で、測定が可能になるため、倍率間寸法差およびその経時変化に起因する測定誤差を解消することが可能になる。
【0036】
次に、マスク10の設計時に考慮すべき補助パターン12の寸法、および測定対象パターン11と補助パターン12の間の距離について説明する。ここでは、図3に示したマスクパターンをモデルにして光強度シミュレーションを行っている。
【0037】
図3は光強度シミュレーションに用いた評価用マスクの要部平面図である。
この図3に示す評価用マスク20には、測定対象パターン21およびその両先端部近傍に補助パターン22が形成されている。測定対象パターン21は、0.6μm×2.5μmサイズで形成されている。このような評価用マスク20について、上記のように、転写後の回路パターンの寸法に影響しない補助パターン22の寸法(S)、測定対象パターン21と補助パターン22の両パターンエッジ間の距離(D)を光強度シミュレーションにより求めた。シミュレーション条件を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
マスクタイプは、Crを遮光膜材料に用いたバイナリーマスク(No.1)と、MoSiをシフター材料に用いたハーフトーン型位相シストマスク(以下「ハーフトーンマスク」という。)(No.2)の2種類とした。いずれのマスクタイプについても、露光波長は、光源にArFエキシマレーザを使用したときの波長(193nm)としている。なお、このときのハーフトーンマスクの透過率は約6%になる。また、レンズの開口数(NA)は0.70とし、光源とレンズのNA比(σ)は、バイナリーマスクで0.80、ハーフトーンマスクで0.85/0.425としている。
【0040】
補助パターン22は、いずれのマスクタイプについても、寸法Sを0.1μm,0.2μm,0.3μmのいずれかとし、距離Dを0.2μm,0.4μm,0.6μm,1.2μm,2.4μmのいずれかとして、シミュレーションを行っている。なお、この表1に示した寸法Sおよび距離Dの値は、評価用マスク20上の寸法値である。
【0041】
また、この光強度シミュレーションは、いずれのマスクタイプについても、ウェーハ上に4分の1の倍率で縮小露光する場合について行っている。
図4から図6にバイナリーマスクの光強度シミュレーション結果を示す。ここで、図4はバイナリーマスクのS=0.1μmのときの光強度シミュレーション結果を示す図、図5はバイナリーマスクのS=0.2μmのときの光強度シミュレーション結果を示す図、図6はバイナリーマスクのS=0.3μmのときの光強度シミュレーション結果を示す図である。
【0042】
図4から図6において、横軸は露光装置のデフォーカス量(μm)を表し、縦軸はウェーハ上に形成される回路パターンと、補助パターン22を設けなかったときにウェーハ上に形成される回路パターンとの間の寸法変動量(nm)を表している。図4から図6には、寸法Sが0.1μm,0.2μm,0.3μmのときのそれぞれについて、距離Dを0.2μm,0.4μm,0.6μm,1.2μm,2.4μmとした場合における露光装置のデフォーカス量と回路パターンの寸法変動量の関係をプロットしている。
【0043】
図4から図6に示した光強度シミュレーション結果より、ウェーハ上に形成される回路パターンの寸法変動量が0になるような補助パターン22の配置条件は存在しない。そこで、ここでは補助パターン22を形成することによる回路パターンの寸法変動量の許容値を両側合わせて1nm以下と仮定する。なお、寸法変動量がこの程度の許容値内であれば、転写後の回路パターンの寸法に影響しないということができる。
【0044】
寸法Sが0.1μmのときに回路パターンの寸法変動量が1nm以下となるのは、図4より、距離Dが0.6μm,1.2μm,2.4μmのときである。寸法Sが0.2μmのときに回路パターンの寸法変動量が1nm以下となるのは、図5より、距離Dが1.2μm,2.4μmのときである。寸法Sが0.3μmのときに回路パターンの寸法変動量が1nm以下となるのは、図6より、距離Dが1.2μm,2.4μmのときである。したがって、バイナリーマスクについての補助パターン22の配置条件は、寸法S≦0.3μm,距離D≧1.2μmとすることができる。
【0045】
ここで、マスク製造の観点から補助パターン22の配置条件を考えると、寸法Sについては、最大値すなわちマスク製造におけるパターン解像性のマージンが確保できる状態が適当である。また、距離Dについては、補助パターン22が測定対象パターン21から大きく離れず、SEMの測定誤差が最も低減できる最小値を選択するのが良い。したがって、バイナリーマスクの場合、補助パターン22の適正配置条件として、寸法S=0.3μm,距離D=1.2μmを得ることができる。
【0046】
図7から図9にハーフトーンマスクの光強度シミュレーション結果を示す。ここで、図7はハーフトーンマスクのS=0.1μmのときの光強度シミュレーション結果を示す図、図8はハーフトーンマスクのS=0.2μmのときの光強度シミュレーション結果を示す図、図9はハーフトーンマスクのS=0.3μmのときの光強度シミュレーション結果を示す図である。
【0047】
図7から図9において、横軸は露光装置のデフォーカス量(μm)を表し、縦軸はウェーハ上に形成される回路パターンと、補助パターン22を設けなかったときにウェーハ上に形成される回路パターンとの間の寸法変動量(nm)を表している。図7から図9には、寸法Sが0.1μm,0.2μm,0.3μmのときのそれぞれについて、距離Dを0.2μm,0.4μm,0.6μm,1.2μm,2.4μmとした場合における露光装置のデフォーカス量と回路パターンの寸法変動量の関係をプロットしている。
【0048】
図7から図9に示した光強度シミュレーション結果より、ウェーハ上に形成される回路パターンの寸法変動量が0になるような補助パターン22の配置条件は存在しないため、上記のバイナリーマスクの場合と同様、補助パターン22を形成することによる回路パターンの寸法変動量の許容値を1nm以下と仮定する。
【0049】
寸法Sが0.1μmのときに回路パターンの寸法変動量が1nm以下となるのは、図7より、距離Dが1.2μm,2.4μmのときである。寸法Sが0.2μmのときに回路パターンの寸法変動量が1nm以下となるのは、図8より、距離Dが1.2μm,2.4μmのときである。寸法Sが0.3μmのときに回路パターンの寸法変動量が1nm以下となるのは、図9より、距離Dが2.4μmのときである。
【0050】
そして、バイナリーマスクの場合と同様に補助パターン22の配置条件を求めると、寸法S=0.3μm,距離D=2.4μmが得られる。しかし、補助パターン22を0.6μm×2.5μmサイズの測定対象パターン21から2.4μm離して配置することは、寸法測定上メリットがなく、従来の状況と大差ない。したがって、ハーフトーンマスクの場合、その補助パターン22の適正配置条件は、寸法S=0.2μm,距離D=1.2μmとすることができる。
【0051】
なお、上記のようにバイナリーマスクかハーフトーンマスクかによって、測定対象パターン21に対する補助パターン22の適正配置条件は変化する。基本的に、マスクの安定製造のために寸法Sを大きくすれば、補助パターン22からの透過光による回路パターン寸法の変動を防止するため、距離Dも大きくする必要が生じる。補助パターン22の形成の際には、このような関係を考慮して、マスクの種類ごと、および測定対象パターン21ごとに、その寸法Sおよび距離Dを設定する必要がある。
【0052】
また、ここでは露光時の縮小倍率を4分の1とした場合についての光強度シミュレーション結果について説明したが、縮小倍率を変更する場合には、改めて補助パターン22の寸法Sおよび距離Dの条件を設定する必要がある。
【0053】
以上のような光強度シミュレーション結果を基にマスクを形成することにより、補助パターンを利用して測定対象パターンのパターンエッジの位置の変動量を測定することができ、マスクパターンの寸法を精度良く求めることができるようになる。
【0054】
また、上記のような補助パターンを形成することにより、従来はその測定が実質不可能であった孤立パターンについても、そのパターンエッジの位置の変動量を測定することが可能になる。
【0055】
図10は孤立パターンが形成されたマスクの構成例を示す要部平面図である。
この図10に示す孤立パターン30には、転写されてウェーハ上に形成される回路パターンに対応した測定対象パターン31、およびその先端部近傍に補助パターン32が形成されている。
【0056】
このように、孤立した測定対象パターン31についても、その先端部近傍に補助パターン32を形成することにより、その周辺に他のマスクパターンが存在していなくても、適切な測定倍率で、そのパターンエッジの位置の変動量を精度良く測定することが可能になる。
【0057】
以上説明したように、本発明では、測定対象パターンの近傍にその寸法測定用の補助パターンを配置することにより、パターンエッジの位置の変動量を精度良く測定してマスクパターンの寸法を正確に求めることが可能になり、パターン寸法の保証方法として有効である。さらには、パターンエッジの位置の変動量を厳しく管理することができるようになるので、デバイス製造におけるコンタクト不良の発生を低減することができ、高品質なデバイスが製造可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】マスクの構成例を示す要部平面図である。
【図2】マスクパターンの寸法測定方法の説明図である。
【図3】光強度シミュレーションに用いた評価用マスクの要部平面図である。
【図4】バイナリーマスクのS=0.1μmのときの光強度シミュレーション結果を示す図である。
【図5】バイナリーマスクのS=0.2μmのときの光強度シミュレーション結果を示す図である。
【図6】バイナリーマスクのS=0.3μmのときの光強度シミュレーション結果を示す図である。
【図7】ハーフトーンマスクのS=0.1μmのときの光強度シミュレーション結果を示す図である。
【図8】ハーフトーンマスクのS=0.2μmのときの光強度シミュレーション結果を示す図である。
【図9】ハーフトーンマスクのS=0.3μmのときの光強度シミュレーション結果を示す図である。
【図10】孤立パターンが形成されたマスクの構成例を示す要部平面図である。
【図11】マスクパターンの一例を示す図である。
【図12】マスクパターンの別の例を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
10 マスク
11,21,31 測定対象パターン
11a,12a,12b パターンエッジ
12,22,32 補助パターン
20 評価用マスク
30 孤立パターン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクパターンを有するマスクにおいて、
前記マスクパターンの近傍に前記マスクパターンの寸法を測定するために用いる補助パターンを有することを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記補助パターンは、前記マスクパターンの端部近傍に前記端部に対向して形成されていることを特徴とする請求項1記載のマスク。
【請求項3】
前記補助パターンは、前記マスクパターンが基板に転写されて形成される回路パターンの有すべき機能が転写後に維持される形状および寸法を有するとともに、前記回路パターンの有すべき機能が転写後に維持される位置に形成されていることを特徴とする請求項1記載のマスク。
【請求項4】
前記補助パターンは、前記マスクパターンが基板に転写されるときにパターン解像されない寸法で形成されていることを特徴とする請求項1記載のマスク。
【請求項5】
マスクパターンの寸法測定方法において、
前記マスクパターンの近傍に配置された補助パターンに対する前記マスクパターンの位置を測定することによって、前記マスクパターンの寸法を求めることを特徴とするマスクパターンの寸法測定方法。
【請求項6】
前記補助パターンは、前記マスクパターンの端部近傍に前記端部に対向して形成されていることを特徴とする請求項5記載のマスクパターンの寸法測定方法。
【請求項7】
前記マスクパターンの近傍に配置された前記補助パターンに対する前記マスクパターンの位置を測定し、前記マスクパターンの位置と設計値との差に基づき、前記マスクパターンの寸法を求めることを特徴とする請求項5記載のマスクパターンの寸法測定方法。
【請求項8】
前記補助パターンに対する前記マスクパターンの位置を測定する際には、
前記補助パターンに対する前記マスクパターンのパターンエッジの位置を測定することによって、前記補助パターンに対する前記マスクパターンの位置を測定することを特徴とする請求項5記載のマスクパターンの寸法測定方法。
【請求項9】
前記補助パターンに対する前記マスクパターンの位置を測定する際には、
前記補助パターンの重心位置と前記マスクパターンのパターンエッジとの間の距離を測定することによって、前記補助パターンに対する前記マスクパターンの位置を測定することを特徴とする請求項5記載のマスクパターンの寸法測定方法。
【請求項10】
前記補助パターンの重心位置と前記マスクパターンのパターンエッジとの間の距離を測定する際には、
前記補助パターンのパターンエッジのうち前記マスクパターンのパターンエッジから遠い側のパターンエッジと、前記マスクパターンのパターンエッジとの間の距離を測定し、
前記補助パターンのパターンエッジのうち前記マスクパターンのパターンエッジに近い側のパターンエッジと、前記マスクパターンのパターンエッジとの間の距離を測定し、
測定された前記遠い側のパターンエッジと前記マスクパターンのパターンエッジとの間の距離と、測定された前記近い側のパターンエッジと前記マスクパターンのパターンエッジとの間の距離との平均値を算出することによって、前記補助パターンの重心位置と前記マスクパターンのパターンエッジとの間の距離を測定する、
ことを特徴とする請求項9記載のマスクパターンの寸法測定方法。
【請求項1】
マスクパターンを有するマスクにおいて、
前記マスクパターンの近傍に前記マスクパターンの寸法を測定するために用いる補助パターンを有することを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記補助パターンは、前記マスクパターンの端部近傍に前記端部に対向して形成されていることを特徴とする請求項1記載のマスク。
【請求項3】
前記補助パターンは、前記マスクパターンが基板に転写されて形成される回路パターンの有すべき機能が転写後に維持される形状および寸法を有するとともに、前記回路パターンの有すべき機能が転写後に維持される位置に形成されていることを特徴とする請求項1記載のマスク。
【請求項4】
前記補助パターンは、前記マスクパターンが基板に転写されるときにパターン解像されない寸法で形成されていることを特徴とする請求項1記載のマスク。
【請求項5】
マスクパターンの寸法測定方法において、
前記マスクパターンの近傍に配置された補助パターンに対する前記マスクパターンの位置を測定することによって、前記マスクパターンの寸法を求めることを特徴とするマスクパターンの寸法測定方法。
【請求項6】
前記補助パターンは、前記マスクパターンの端部近傍に前記端部に対向して形成されていることを特徴とする請求項5記載のマスクパターンの寸法測定方法。
【請求項7】
前記マスクパターンの近傍に配置された前記補助パターンに対する前記マスクパターンの位置を測定し、前記マスクパターンの位置と設計値との差に基づき、前記マスクパターンの寸法を求めることを特徴とする請求項5記載のマスクパターンの寸法測定方法。
【請求項8】
前記補助パターンに対する前記マスクパターンの位置を測定する際には、
前記補助パターンに対する前記マスクパターンのパターンエッジの位置を測定することによって、前記補助パターンに対する前記マスクパターンの位置を測定することを特徴とする請求項5記載のマスクパターンの寸法測定方法。
【請求項9】
前記補助パターンに対する前記マスクパターンの位置を測定する際には、
前記補助パターンの重心位置と前記マスクパターンのパターンエッジとの間の距離を測定することによって、前記補助パターンに対する前記マスクパターンの位置を測定することを特徴とする請求項5記載のマスクパターンの寸法測定方法。
【請求項10】
前記補助パターンの重心位置と前記マスクパターンのパターンエッジとの間の距離を測定する際には、
前記補助パターンのパターンエッジのうち前記マスクパターンのパターンエッジから遠い側のパターンエッジと、前記マスクパターンのパターンエッジとの間の距離を測定し、
前記補助パターンのパターンエッジのうち前記マスクパターンのパターンエッジに近い側のパターンエッジと、前記マスクパターンのパターンエッジとの間の距離を測定し、
測定された前記遠い側のパターンエッジと前記マスクパターンのパターンエッジとの間の距離と、測定された前記近い側のパターンエッジと前記マスクパターンのパターンエッジとの間の距離との平均値を算出することによって、前記補助パターンの重心位置と前記マスクパターンのパターンエッジとの間の距離を測定する、
ことを特徴とする請求項9記載のマスクパターンの寸法測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−30221(P2006−30221A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204053(P2004−204053)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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