説明

マットレス装置及びその製法

【課題】この発明はオーバトップ構造において、上鏡部材の取り付けを簡単かつ確実に行うことができるようにしたマットレス装置を提供することにある。
【解決手段】外装体は11、スプリングユニット1の外周面を被覆したまち部材12と、スプリングユニットの上面と下面とを被覆するとともに周縁部がまち部材の上端部と下端部とに連結される上鏡部材13及び下鏡部材14とを有し、
上鏡部材と下鏡部材との少なくともどちらか一方の鏡部材の周縁部と上記まち部材の端部とは、二つ折りされ一方の端部が上記まち部材の端部に連結され他方の端部が上記鏡部材の周縁部に連結されたた連結部材17と、連結部材の折り曲げ部に一端部が縫合されるとともに鏡部材の下面に接着固定される接着部材24とによって連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はクッション体を外装体で被覆して構成されるマットレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
外観の豪華さと柔らかな感触を呈するマットレス装置として、オーバトップ若しくはピロートップと呼ばれる構造(以下、オーバトップ構造と呼ぶ)のマットレス装置が知られている。図 はそのような構成のマットレス装置を示す。
【0003】
上記マットレス装置はクッション体としてのスプリングユニット1を有する。このスプリングユニット1は多数のコイルスプリング2を行列状に配置し、隣り合うコイルスプリング2の上端面と下端面とを図示しないヘリカル線によって連結するとともに、上下面の周縁部に枠線3をクリップ4によって取着して形成されている。
【0004】
上記スプリングユニット1の上下面にはそれぞれフェルトなどの保護シート5を介してウレタンフォームなどの弾性材6が積層されている。スプリングユニット1と弾性材6との積層体は外装体11によって被覆されている。
【0005】
上記外装体11はスプリングユニット1の外周面を被覆したまち部材12と、上面を被覆した上鏡部材13及び下面を被覆した下鏡部材14とによって形成されている。上記まち部材12、上鏡部材13及び下鏡部材14はそれぞれ外布12a,13a,14aと内布12b,13b,14bとの間に綿などの詰め物15を設け、これら外布と内布とをキルティングするとともに周縁部をテープ16によって縫合する。
【0006】
上鏡部材13をオーバトップ構造とするために、帯状布地を二つ折りにした連結部材17の一端を上記テープ16によって上鏡部材13の周縁部に一体的に縫合し、折り曲げ部17aを上記上鏡部材13の内布13bに帯状布地からなる上フランジ部材18の一端部とともに縫合し、さらに他端を上記まち部材12の上端部にテープ19によって一体的に縫合する。
【0007】
上記下鏡部材14の周縁部は上記まち部材12の下端部に上記テープ16によって一体的に縫合され、上記上フランジ部材18の他端部は上記スプリングユニット1の上面周縁部に設けられた枠線3にクリップ21によって連結されている。
【0008】
上記下鏡部材14の内布14bの周辺部には下フランジ部材22の一端部が縫合されている。この下フランジ部材22の他端は上記スプリングユニット1の下面周縁部に設けられた枠線3にクリップ23によって連結されている。
【0009】
このような構成のマットレス装置によれば、上鏡部材13の周縁部は、まち部材12の上端部と分離されているから、スプリングユニット1の上面に設けられた上鏡部材13が厚手の外観を呈し、外観的に良好である。しかも、上記上鏡部材13がスプリングユニット1に固定されていないから、この上鏡部材13がスプリングユニット1上で浮き上がり、利用者に柔らかな感触を与えるなどのことがある。
【0010】
すなわち、上鏡部材13の周縁部をまち部材12の上端部に直接縫合せず、二つ折りされた連結部材17を介して連結しているために、マットレス装置を上述した性能を有するオーバトップ構造にすることができる。
【0011】
このようなオーバトップ構造のマットレス装置は特許文献1に示されている。
【特許文献1】実開平6−24561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上記のマットレス装置においては、オーバトップ構造とするために二つ折りされた連結部材17の折り曲げ部分を上鏡部材13の内布13bに縫合していた。すなわち、上記上鏡部材13の外布13aと内布13bとを詰め物15を挟んでキルティングし、周縁部にテープ16を連結部材17の一端部とともに縫合してから、この連結部材17の中途部の折り曲げ部分を上記内布13bに、特殊なミシンを用いていわゆるすくい縫いすることで連結していた。
【0013】
上記連結部材17の折り曲げ部と内布13bを連結することで、上鏡部材13が浮いた外観を呈するオーバトップ構造でありながら、上記上鏡部材13がスプリングユニット1の上面で動く範囲が制限される。そのため、上鏡部材13がスプリングユニット1の上面で大きくずれ動き、マットレス装置の外観や機能を損なうのを防止することができることになる。
【0014】
しかしながら、内布13bと連結部材17の折り曲げ部とをミシンですくい縫いするには高度な技術が必要であるばかりか、熟練者であっても手間がかかるため、生産性が非常に悪いということがあった。ちなみに、熟練者がミシンを用いてすくい縫いする場合、一日で15枚程度しか縫製することができなかった。
【0015】
この発明は、連結部材の折り曲げ部分と上鏡部材の下面との連結を、ミシンを用いずに能率よく確実に行うことができるようにしたマットレス装置及びその製法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明は、クッション体を外装体によって被覆した構成のマットレス装置であって、
上記外装体は、上記クッション体の外周面を被覆したまち部材と、上記クッション体の上面と下面とを被覆するとともに周縁部が上記まち部材の上端部と下端部とに連結される上鏡部材及び下鏡部材とを有し、
上記上鏡部材と下鏡部材との少なくともどちらか一方の鏡部材の周縁部と上記まち部材の端部とは、
二つ折りされ一方の端部が上記まち部材の端部に連結され他方の端部が上記鏡部材の周縁部に連結された連結部材と、
この連結部材の折り曲げ部に一端部が縫合されるとともに上記鏡部材の下面に接着固定される接着部材と
によって連結されていることを特徴とするマットレス装置にある。
【0017】
上記接着部材は上記連結部材と上記鏡部材の下面との間に折り込まれて上記鏡部材の下面に上記連結部材とともに接着固定されることが好ましい。
【0018】
一端が上記連結部材の折り曲げ部に縫合され他端部が上記クッション体に取り付けられたフランジ部材を有することが好ましい。
【0019】
上記接着部材は加熱加圧されることで上記鏡部材に接着固定される熱接着テープであることが好ましい。
【0020】
上記連結部材は上記外装体と同じデザインの布地によって形成されていることが好ましい。
【0021】
この発明は、クッション体が外装体によって被覆され、上記外装体は、上記クッション体の外周面を被覆したまち部材と、上記クッション体の上面と下面とを被覆するとともに周縁部が上記まち部材の上端部と下端部とに連結される上鏡部材及び下鏡部材とを有するマットレス装置を製造する方法であって、
二つ折りされた連結部材の折り曲げ部分に接着部材の一端部を縫合する工程と、
上記連結部材の一端部を上記上鏡部材と下鏡部材との少なくともどちらか一方の鏡部材の周縁部に縫合する工程と、
上記接着部材を上記鏡部材の下面に接着固定する工程と、
上記連結部材の他端部を上記まち部材の端部に縫合する工程と
を具備したことを特徴とするマットレス装置の製法にある。
【0022】
上記連結部材の折り曲げ部にフランジ部材の一端部を縫合する工程と、
上記フランジ布の他端部を上記クッション体に取り付ける工程と
を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、連結部材の折り曲げ部に接着部材の一端部を縫合し、この接着部材を上鏡部材の下面に接着固定するようにした。そのため、上記連結部材の折り曲げ部を上鏡部材の下面に直接縫合する場合に比べ、上記折り曲げ部を上記上鏡部材の下面に容易に、しかも確実に連結することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明の一実施の形態を図1乃至図3を参照して説明する。なお、図4に示す従来のマットレス装置と同一部分には同一記号を付して説明を省略する。
図1と図2に示すように、この発明は図 に示す構造に比べてオーバトップ構造を構成する上鏡部材13とまち部材12との連結部材17による連結構造が相違している。すなわち、連結部材17は帯状の布地を二つ折りし、その一端部が上鏡部材13の外布13aと内布13bとの周縁部にテープ16によって一体的に縫合されている。
【0025】
上記連結部材17の折り曲げ部17aには上フランジ部材18と接着部材24との一端部が一体的に縫合されている。なお、連結部材17の一端部を上鏡部材13の周縁にテープ16によって縫合する作業と、連結部材17の折り曲げ部に上フランジ部材18と接着部材24との一端部を縫合する作業は、どちらを先に行ってもよいが、後者を先に行った方が作業性がよい。
【0026】
上記接着部材24は、たとえば布地に熱硬化性の樹脂が設けられてなり、加熱しながら加圧することで、上記樹脂が溶融硬化して他の布地に接着することができる、いわゆる熱接着テープが用いられている。つまり、接着部材24は布地に設けられた樹脂によって他の布地に接着固定できるようになっている。
【0027】
上記接着部材24の他端部は上記上鏡部材13の下面の内布13bに接着固定される。つまり、上記接着部材24の他端部を上記内布13bに重ね、その重合部分を加熱しながら加圧することで、上記接着部材24の他端部が上記内布13bに接着固定される。
【0028】
接着部材24の他端部を上鏡部材13の下面に接着固定したならば、上記上フランジ部材18の他端部をスプリングユニット1の上面の周縁部に設けられた枠線3にクリップ23によって連結してから、上記連結部材17の他端をまち部材12の上端にテープ19によって縫合する。それによって、スプリングユニット1が外装体11によって被覆され、オーバトップ構造のマットレス装置となる。
【0029】
このような構造のマットレス装置によれば、上鏡部材13の下面周辺部には、一端部が連結部材17の折り曲げ部17aに連結された接着部材24の他端部が接着固定されている。上記連結部材17の折り曲げ部17aは上フランジ部材18によってスプリングユニット1に連結固定されている。さらに、上記連結部材17の他端部はまち部材12のテープ16によって上端部に連結されている。
【0030】
そのため、上鏡部材13は周縁部がまち部材12の上端部に連結されていないため、まち部材12の上端部と分離され、外観的に良好であるばかりか、スプリングユニット1上で浮き上がっているため、利用者に柔らかな感触を与えることができる。
【0031】
しかも、上鏡部材13の下面周辺部は、一端部が連結部材17の折り曲げ部17aに連結された接着部材24が接着固定されている。上記連結部材17の折り曲げ部17aは上フランジ部材18によってスプリングユニット1に連結固定されている。
【0032】
そのため、上鏡部材13はスプリングユニット1の上面に浮いた状態で設けられているものの、この上面で大きくずれ動くことがないから、オーバトップ構造のマットレス装置としての機能を良好に発揮することができる。
【0033】
上記連結部材17の折り曲げ部17aを上鏡部材13の周辺部の下面に連結固定するために接着部材24を用いるようにした。接着部材24は、上鏡部材13の下面の内布13bに押し当て、その部分をたとえばアイロンなどによって加熱しながら加圧することで、上鏡部材13の内布13bに接着固定することができる。
【0034】
そのため、上記連結部材17の折り曲げ部17aを上記内布13bに特殊なミシンを用いてすくい縫いする場合に比べ、低い熟練度で確実かつ迅速に作業することができるから、生産性を大幅に向上させることが可能となる。
【0035】
接着部材24を用いれば、1枚の上鏡部材13にかかる作業時間が約2分程度であり、特殊なミシンを用いてすくい縫いする場合に比べ大幅に作業時間を短縮できることが確認された。
【0036】
上記一実施の形態では接着部材として布地に熱硬化性の樹脂が設けられた、熱接着テープを挙げたが、接着部材は布地に接着剤が塗布されたもののように、熱を用いずに接着できるものであっても差し支えなく、要は上鏡部材に接着固定できる部材であればよい。
【0037】
また、上鏡部材だけをオーバトップ構造としたが、マットレス装置は上下両面を交互に使用するから、下鏡部材の取り付け構造もオーバトップ構造としても差し支えなく、要は少なくともどちらか一方の鏡部材がオーバトップ構造であればよい。
【0038】
図4と図5はこの発明の他の実施の形態を示す。この実施の形態は図5に示すように連結部材17の折り曲げ部17aに一端が縫合された接着部材24を上鏡部材13の内布13bと上記連結部材17との間に折り込む。
【0039】
そして、重合した内布13b、接着部材24及び連結部材17をアイロンなどで加圧加熱することで、上記内布13bの下面に、上記接着部材17を介して上記連結部材17を接着固定する。
【0040】
つまり、連結部材17は、その折り曲げ部17aと、上鏡部材13の周縁部にテープ16によって縫合された一端部との間の部分が接着部材17によって内布13bに接着固定される。言い換えれば、接着部材24は上鏡部材13の下面に上記連結部材17とともに接着固定される。
【0041】
このような構成によれば、上記一実施の形態と同様、上鏡部材13はスプリングユニット1の上面に浮いた状態で設けられているものの、この上面で大きくずれ動くことがないから、オーバトップ構造のマットレス装置としての機能を良好に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明の一実施の形態を示すマットレス装置の一部を拡大した断面図。
【図2】上鏡部材の下面に接着部材を接着する前の状態を示す断面図。
【図3】マットレス装置の斜視図。
【図4】この発明のほかの実施の形態を示すマットレス装置の一部を拡大した断面図。
【図5】上鏡部材の下面に接着部材を接着する前の状態を示す断面図。
【図6】従来のマットレス装置の一部を拡大して示す断面図。
【符号の説明】
【0043】
1…スプリングユニット(クッション体)、11…外装体、12…まち部材、13…上鏡部材、14…下鏡部材、17…連結部材、18…上フランジ部材、21…下フランジ部材、24接着部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッション体を外装体によって被覆した構成のマットレス装置であって、
上記外装体は、上記クッション体の外周面を被覆したまち部材と、上記クッション体の上面と下面とを被覆するとともに周縁部が上記まち部材の上端部と下端部とに連結される上鏡部材及び下鏡部材とを有し、
上記上鏡部材と下鏡部材との少なくともどちらか一方の鏡部材の周縁部と上記まち部材の端部とは、
二つ折りされ一方の端部が上記まち部材の端部に連結され他方の端部が上記鏡部材の周縁部に連結された連結部材と、
この連結部材の折り曲げ部に一端部が縫合されるとともに上記鏡部材の下面に接着固定される接着部材と
によって連結されていることを特徴とするマットレス装置。
【請求項2】
上記接着部材は上記連結部材と上記鏡部材の下面との間に折り込まれて上記鏡部材の下面に上記連結部材とともに接着固定されることを特徴とする請求項1記載のマットレス装置。
【請求項3】
一端が上記連結部材の折り曲げ部に縫合され他端部が上記クッション体に取り付けられたフランジ部材を有することを特徴とする請求項1記載のマットレス装置。
【請求項4】
上記接着部材は加熱加圧されることで上記鏡部材に接着固定される熱接着テープであることを特徴とする請求項1記載のマットレス装置。
【請求項5】
上記連結部材は上記外装体と同じデザインの布地によって形成されていることを特徴とする請求項1記載のマットレス装置。
【請求項6】
クッション体が外装体によって被覆され、上記外装体は、上記クッション体の外周面を被覆したまち部材と、上記クッション体の上面と下面とを被覆するとともに周縁部が上記まち部材の上端部と下端部とに連結される上鏡部材及び下鏡部材とを有するマットレス装置を製造する方法であって、
二つ折りされた連結部材の折り曲げ部分に接着部材の一端部を縫合する工程と、
上記連結部材の一端部を上記上鏡部材と下鏡部材との少なくともどちらか一方の鏡部材の周縁部に縫合する工程と、
上記接着部材を上記鏡部材の下面に接着固定する工程と、
上記連結部材の他端部を上記まち部材の端部に縫合する工程と
を具備したことを特徴とするマットレス装置の製法。
【請求項7】
上記連結部材の折り曲げ部にフランジ部材の一端部を縫合する工程と、
上記フランジ布の他端部を上記クッション体に取り付ける工程と
を有することを特徴とする請求項5記載のマットレス装置の製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−212044(P2006−212044A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−12867(P2005−12867)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(000010032)フランスベッド株式会社 (95)
【Fターム(参考)】