説明

マルチウェルプレート

マルチウェルプレート(21,41)は、複数のウェル(23,43)を備え、各ウェル(23,43)は、開放した上端(25,45)と、ウェル底部(28,48)で覆われた下端(27,47)とを備えている。各下端(27,47)には、直径dmm(dは、0.5mm超で3mm未満)の貫通孔(29,49)が設けられて、各貫通孔(29,49)は、頂面が平坦な壁部(33,53)で囲まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲の独立項のプレアンブル部分に記載したタイプのマルチウェルプレートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
マルチウェルプレートは、複数のサンプルを同時に分析するために、実験施設では、長年にわたって使用されてきている。一般的なのは、プレート1枚当たり、ウェルを4個、24個、48個、96個、或いは384個設けたもので、当初、これらのプレートは固体の底部を備え、液体サンプルは、ピペットでウェルに加え、ピペットでウェルから取り出していた。
【0003】
その後、底部に貫通孔が設けられたウェルを有するプレート(下向きに突出するリップが設けられている場合には、「ドリップ」と称される)が開発された。こうしたマルチウェルプレートでは、サンプルが、ウェルを通過して流れることが可能となり、((サンプルの量が、ウェルの容積によって限定されることがなくなったので)多量のサンプルを処理できるようになった。
【0004】
その後、各ウェルに、ウェルの横断方向に延在する微孔質フィルター又は膜が設けられ、ウェルを通過するサンプルの全量が、フィルター又は膜を必然的に通過するようなフィルターウェル又は膜ウェルを有するマルチウェルプレートが開発された。
【0005】
さらに開発が進んだマルチウェルプレートは、ウェルの底部に貫通孔、すなわちドリップと、フィルター又は膜とを備え、各ウェルには、媒質、例えばクロマトグラフィー用のゲル又はスラリー或いはクロマトグラフィー用の粒子が少なくとも部分的に充填されたている。保存中に媒質を湿った状態に保つために、ウェルは部分的に液体が充填され、充填後は、ウェルの上端と下端の双方を封止して、液体が失われないようになっている。
【0006】
こうしたウェルの問題点としては、環境に配慮した方法で、ウェルの両端を確実に封止するのが困難なことを挙げることができる。ウェルの上端をフィルムで封止することは公知で、この場合、フィルムは通常ポリマー製とし、アルミ箔とラミネートすることも多く、このフィルムを、マルチウェルプレートの上面の実質的に全体を覆うよう延在させて、マルチウェルプレートの上面に設けられた複数の貫通孔の間の材料に付着させる。この種の箔は、接着剤又はヒートシールによって付着させることができる。この過程では、表面が溶融可能で、溶融すると、マルチウェルプレートを構成する材料と結合する表面を備えたフィルムを用意する。ウェルの下端に設けられたドリップを、こうした箔を用いて封止しようとすると、接着剤又はヒートシールがドリップの貫通孔を部分的又は完全に閉塞してしまうことが多いため、不十分な結果しか得られていない。その結果、ウェルの下端は、比較的ぶ厚い弾性材料でできたマット又はガスケットにドリップを押しつけて液密に封止することによって封止されてきた。こうしたマット又はガスケットは、支持部材を用いてマルチウェルプレートに付着させることが必要であり、マット又はガスケットとその支持部材は、ウェルのもう一方の端部を封止するのに用いたフィルムより、はるかに高価なものとなる。こうしたマット又はガスケットは、衛生上の理由で1度しか使えず、その後廃棄するため、ガスケットを使用すると、大量の廃棄物が生じることになる。
【特許文献1】米国特許第6309605号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0247490号明細書
【特許文献3】国際公開第2002/057665号パンフレット
【特許文献4】国際公開第01/92461号パンフレット
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、従来技術の諸問題の少なくとも一部を、請求項1の特徴記載部分に記載した特徴を備えた装置によって、解決する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1a)及び1b)は、従来技術のマルチウェルプレート(1)を示す。マルチウェルプレート(1)は、円筒形又はやや傾斜のついたウェル(3)が複数設けられた長方形の本体(2)を備えている。各ウェル(3)は、開放した上端(5)と下端(7)とを備えている。各下端(7)には、貫通孔(9)が設けられている。マルチウェルプレートのこの例では、各貫通孔(9)には、リップ(11)が設けられ、このリップ(11)が貫通孔(9)を取り囲み、ウェル(3)の内部(13)から外側に向かって突出している。
【0009】
図2a)〜2d)は、本発明のマルチウェルプレート(21)の第1の実施形態を示す。マルチウェルプレート(21)は、複数のウェル(23)を備え、各ウェル(23)は、(好ましくは破線で示す箔又はフィルム(26)で覆われた)開放した上端(25)と、ウェル底部(28)で覆われた下端(27)とを備えている。各ウェル底部(28)には、直径dmm(dは、好ましくは0.4mm超で3mm未満)の貫通孔(29)が設けられている。本発明のこの実施形態では、個々の貫通孔(29)には、環状のリップ(31)が設けられ、このリップ(31)が対応する貫通孔(29)を同心に取り囲んでいる。各リップの最大直径は(d+w)mm(wは、好ましくは0.4mm超で、5mm未満)で、各リップは、ウェルの内部から外に向かう方向に、ウェル底部(28)の外面(32)からの最大距離でLmm(Lは、好ましくは0.1〜2mm)突出している。各リップ(31)は、頂面が平坦で環状の壁部(33)によって取り囲まれ、各壁部(33)は、好ましくは、対応するリップ(31)と実質的に同心となるよう配置されている。
【0010】
各壁部(33)の内径は(d+w+x)mm、外径は(d+w+x+y)mmであり、xは、好ましくは1mm超で5mm未満、さらに好ましくは1.5mm超で4mm未満である。y(壁部の厚さが一定である場合には、壁部の厚さの2倍に対応)は好ましくは0.2mm超で4mm未満、さらに好ましくは、1mm超で2mm未満である。
【0011】
各壁部は、ウェル(23)の内部から外に向かう方向に、ウェル底部(28)からの距離で(L+z)mm突出している。zは、好ましくは0.1mm超で2mm未満、さらに好ましくは0.2mm超で1mm未満である。本発明のこの実施形態では、壁部(33)の内面(35)と外面(37)の両方が、ウェル(23)の長手方向の軸線と平行であり、ウェル(23)と逆方向に面している壁部の端面(39)が、ウェル(23)の長手方向の軸線と垂直である。
【0012】
各壁部の端面(39)は、適当な封止用の膜、例えば箔又はフィルム(38)を付着させる面となる。封止用の膜は、加熱して、壁部の端面(39)に押しつけると、壁部の端面の材料との間で封止状態を形成し、冷却後も液密状態が保たれるような材料を1層以上の膜としたものとすることが好ましい。或いは、膜、箔又はフィルム(38)の壁部の端面(39)と対向する面、及び/又は壁部の端面(39)の少なくとも一方を粘着性とすることもできる。
【0013】
図3a)−3d)は、本発明のマルチウェルプレート(41)の第2の実施形態を示す。マルチウェルプレート(41)は、複数のウェル(43)を備え、各ウェル(43)は、(好ましくは、破線で示す箔又はフィルム(46)に覆われた)開放した上端(45)と、ウェル底部(48)で覆われた下端(47)とを備えている。各ウェル底部(48)には、直径dmm(dは、好ましくは0.4mm超で3mm未満)の貫通孔(49)が設けられている。本発明のこの実施形態では、個々の貫通孔(49)には、環状のリップが設けられていないので、距離Lは、0mm、距離wも0mmとなる。各貫通孔(49)は、頂面が平坦で環状の壁部(53)によって取り囲まれ、各壁部は、対応するウェル底部(48)の外面(52)から外にむかって突出している。各壁部(53)は、好ましくは、対応する貫通孔(49)と同心となるように配置されている。
【0014】
各壁部(53)の内径は(d+w+x)mm、外径は(d+w+x+y)mmであり、wは0mm、xは、好ましくは1mm超で5mm未満、さらに好ましくは1.5mm超で4mm未満である。y(壁部の厚さが一定である場合には、壁部の厚さの2倍に対応)は、好ましくは0.2mm超で4mm未満、さらに好ましくは、1mm超で2mm未満である。
【0015】
各壁部(53)は、ウェル(43)の内部から外に向かう方向に、距離(L+z)mm突出しており、この実施形態では、Lは0mmである。zは好ましくは、0.1mm超で2mm未満、さらに好ましくは、0.2mm超で1mm未満である。本発明のこの実施形態では、壁部(53)の内面(55)と外面(57)の両方が、ウェル(43)の長手方向の軸線と平行であり、ウェル(43)と逆方向に面している壁部の端面(59)が、ウェル(43)の長手方向の軸線と垂直である。
【0016】
各壁部の端面(59)は、適当な封止用の膜、例えば箔又はフィルム(58)を付着させる面となる。封止用の膜は、加熱して、壁部の端面(59)に押しつけると、壁部の端面の材料との間で封止状態を形成し、冷却後も液密状態が保たれるような材料を1層以上の膜としたものとすることが好ましい。或いは、膜、箔又はフィルム(58)の壁部の端面(59)と対向する面、及び/又は壁部の端面(59)の少なくとも一方を粘着性とすることもできる。
【0017】
本発明を、壁部が環状である実施形態の例を挙げることによって説明してきたが、壁部は任意の形状、例えば、四角形、六角形、八角形などとすることもできる。壁部が環状でなく、壁部を内径又は外径というかたちで説明できない場合には、各壁部は、対応する貫通孔からの最低距離が(w+x)/2mm、壁部の厚さがy/2mmとなるようにすることが好ましい。
【0018】
また、壁部の外面と内面は、ウェルの長手方向の軸線と垂直ではなく、壁部の厚さが、ウェルから延在するにしたがって薄くなるよう傾斜していてもよい。
【0019】
上述の実施形態は、本発明を例示する目的で示したものであり、これらの実施形態は、請求の範囲によって定義される権利範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1a及び1bは、従来技術のマルチウェルプレートの一例の側面図及び平面図である。
【図2a−2c】図2a)〜2c)は、本発明のマルチウェルプレートの第1の実施形態の部分断面図を含む斜視図である。
【図2d】図2d)は、本発明の第1の実施形態のウェルの下端の拡大断面図である。
【図3a−3c】図3a)〜3c)は、本発明のマルチウェルプレートの第2の実施形態の部分断面図を含む斜視図である。
【図3d】図3d)は、本発明の第2の実施形態のウェルの下端の拡大断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のウェル(23,43)が設けられたマルチウェルプレート(21,41)であって、各ウェル(23,43)が、開放した上端(25,45)と、ウェル底部(28,48)で覆われた開放した下端(27,47)を備え、各下端(27,47)に、直径dmm(0.4mm<d<3mm)の貫通孔(29,49)が設けられており、
各貫通孔(29,49)が、頂面が平坦な壁部(33,53)で囲まれ、各壁部(33,53)の対応する貫通孔(29,49)との最短近接距離が(w+x)/2mmであって、wが0mm又は1mm超で5mm未満、xが1mm超で5mm未満であり、
各壁部がそれぞれの下端(27,47)から距離(L+z)mm突出していて、Lが0mmであるか或いは0.1mm超で2mm未満であり、zが0.1mm超で2mm未満であり、
各壁部(33,53)が壁部の端面(39,59)を備え、膜(38,58)がこの壁部の端面(39,59)を液密に封止するよう接合されている
マルチウェルプレート。
【請求項2】
xが1.5mm超で4mm未満である、請求項1記載のマルチウェルプレート。
【請求項3】
壁部の厚さがy/2であって、yが1mm超で4mm未満である、請求項1又は請求項2記載のマルチウェルプレート。

【図1】
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【図2a−2c】
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【図2d】
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【図3a−3c】
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【図3d】
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【公表番号】特表2009−511079(P2009−511079A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536541(P2008−536541)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際出願番号】PCT/SE2006/001158
【国際公開番号】WO2007/046743
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(597064713)ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・アクチボラグ (109)
【Fターム(参考)】