説明

マルチフィルム敷設装置

【課題】 従来、トラクタに備えるマルチフィルム敷設装置では、圃場端でフィルムを切断後、新たな工程前にトラクタから降りて、フィルムを押える必要が有り手間を要するものであった。
【解決手段】マルチフィルム敷設装置には、マルチフィルム(7)を自動で繰り出すローラ(8)と、左右幅方向に一部を残して切断するフィルムカッター(16)と、前記フィルムカッター(16)で一部を切断した切断部下手側のフィルム(7)を押さえる押圧ローラ11を設ける。圃場で一工程作業後は、マルチフィルム(7)を所定長さ繰り出した後、旋回時に同フィルム(7)を引張って切り離す構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、農作業に用いるマルチフィルムの敷設装置の構成に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示されているように、マルチフィルム被覆後に切断するフィルム切断装置は、フィルム被覆装置が被覆行程終端に達すると、レバー操作により、フィルムカッターを下降させ、フィルムの上側から押し切りすることによってフィルム全体を完全に切り離すようにしている。
【特許文献1】特開平8−116804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
圃場端部のトラクタが旋回できる一定範囲(枕地)内は、耕耘しながらマルチフィルムを被覆することができない範囲であり、この被覆できない部分をトラクタが旋回した後被覆するために、マルチフィルムをある程度引き出してから切断する必要があり、圃場端部に行くたびにトラクタから降りる必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
即ち、マルチフィルム(7)を巻き収納したマルチフィルム繰出ロール(8)を備え、耕耘後の耕地面に前記マルチフィルム(7)を繰り出しながら被覆するマルチフィルム敷設装置において、前記敷設装置には、マルチフィルム(7)を左右幅方向に一部を残して切断するフィルム切断手段(16)と、前記フィルム切断手段(16)で切断した切断部下手側のフィルム(7)を押さえる押圧ローラ(11)を設けてあることを特徴とするマルチフィルムの敷設装置とした。
【0005】
フィルム被覆行程終端に達すると、フィルム切断手段(16)を作動させることにより、フィルム(7)がその一部を残して切断される。そして、マルチフィルム(7)を繰出ロール(8)から所定長さ繰り出した後、機体旋回動作に入ると、同フィルム(7)が引っ張られ、切れ残っていたフィルム(7)が前後に切り離されることになり、トラクタから降りることなくマルチフィルム(7)の被覆作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0006】
以上要するに、本発明によれば、被覆後のフィルム切断時には、マルチフィルム(7)を一部のみ残して切断処理するものであるから、マルチフィルム(7)を所定長さ繰り出した後、旋回時にマルチフィルム(7)を引張って、切り残しの部分を確実に切り離すことができ、トラクタから降りることなくマルチ被覆作業を継続して行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
トラクタの車体後部には、昇降リンク機構1を介してロータリ作業機2を装着し、作業機2の後側には、作業機用フレーム3を介して培土器4やゲージホイル5等を装着して畝を成形するように構成して設け、この作業機用フレーム3の後方にはフィルム敷設装置を支持するための支持フレーム6を突設して、一定幅のマルチフィルム7をロール巻にして支架するフィルム繰出ロール8、このフィルム繰出ロール8から繰り出されるマルチフィルム7を案内する案内ローラ9、この繰り出されるマルチフィルム7を対地面側に押圧する押圧ローラ10,11等を有するフィルム敷設装置12を装備している。
【0008】
更に、前記押圧ローラ11の後側には、覆土盤13を設けて、フィルムの左右両側縁部上に覆土して剥離を防止するようにしている。
フィルム切断装置(フィルムカッタ−)16は、トラクタの操縦席近傍に備えたスイッチの操作により電動モータ17を駆動することによって左右横方向に架設されたレール18上をガイドローラ19等のスライド装置を介して横移動し、カッター20をフィルム7に作用させながら一部を残して切断処理するように構成している。
【0009】
この発明のフィルム切断手段は、図2に示すように、カッター20は円盤で外周を鋸刃形状とし、これを作用させることにより、マルチフィルムにミシン目状の切り目ができるように構成している。
【0010】
また、図3及び図4に示す切断手段では、フィルム繰出ロール8のフィルム繰出し側直後の部分に、カッター20がスライドするレール18を設けてあり、そして、カッター20は、円形とすると共にガイドローラ19等のスライド装置に保持され、ワイヤー21を引っ張ることによりスライドする構成であり、また、引っ張られたワイヤー21は、巻尺のような巻き取り器22により引き戻されるようになっている。
【0011】
尚、このとき、マルチフィルム7の両端が切れないようにするため、前記レール18にはストッパー23を設けている。このような切断装置の作用により、マルチフィルム7には、左右両端の一部を残し、つまり、図4に示すように、左右端部に非切断部分X,Xを残した状態で一定幅の切り目Cが入るように切断されることになる。
【0012】
またマルチフィルム7の繰出し手段として、図5と図6に示すように、フィルム繰出ロール8の軸8aにロール駆動モータ26を備え、またフィルム押圧ローラ11のローラ軸11aにはローラ駆動モータ27をそれぞれ備えて、各駆動モータ26,27の駆動によってフィルム繰出ロール8及び押圧ローラ11を回転させ、マルチフィルムを自動的且つ強制的に繰り出すように構成している。そして、ローラ駆動モータ27によるローラ軸11aの回転を繰出ロール軸8aより早く回転させるようにすれば、フィルムを軽く引張った状態を維持でき、繰出しが容易となり、フィルム7の切断も容易に行うことができる。
【0013】
また、このような構成のフィルム繰出し手段は、前記フィルム切断装置16による切断処理作用後に、これと(切断作用完了検出結果)連動して繰出し作動させることができ、また、前記カッターと同様、トラクタ側の操作スイッチによって独自に作動させることもできる。
【0014】
次に、フィルム切断装置の別実施例について説明する。
図7の構成例は、カッタ移動モータ17により螺旋軸28を回転させることで、カッター20を螺旋軸に沿って横移動させ、マルチフィルムに作用させて切断処理する構成であり、図8例は、電熱線30によってマルチフィルムを溶解切断する構成である。この電熱線30はモータ17によりクランク機構31を介して上下動し、切断時には電熱線が下動することによってフィルムに作用し切断処理する。
【0015】
また、図9例は、フィルム被覆装置の後部に左右横方向に移動可能なアクチュエータ32及び噴射ノズル33を設け、タンク及びポンプ34より送られた高圧水をマルチフィルムに噴射し切断処理する構成である。
【0016】
従来、マルチフィルムの固定方法としては、マルチフィルムの両側に覆土してフィルムの始端を固定するものや、杭を打ち込んで固定するものなどがあるが、覆土式に関しては、始端部での覆土量が少なく、十分な固定ができない課題がある。そこで、マルチフィルムの被覆作業開始にあたっては、図10に示すように、マルチフィルム7の始端部を押さえておくための杭36を設け、この杭36を土中に打ち込むことによってフィルムの始端部を地面に固定するようにしている。そして、その杭は数メートルの長さ(十分に覆土が行われる程度)を有するロープ37で本体と結ぶことで、杭の回収が容易にできるようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来のマルチフィルム敷設装置を備えたトラクタの後部の側面図。
【図2】フィルム切断装置の斜視図。
【図3】フィルム被覆切断装置の要部の斜視図。
【図4】マルチフィルムの切断状態を示す平面図。
【図5】フィルム被覆切断装置の側面図。
【図6】同上要部の平面図。
【図7】別実施例を示すフィルム切断装置の斜視図。
【図8】別実施例を示すフィルム切断装置の斜視図。
【図9】別実施例のフィルム切断装置を備えたフィルム被覆装置の側面図。
【図10】フィルム被覆装置の側面図。
【符号の説明】
【0018】
C 切れ目
X 非切断部
7 マルチフィルム
8 フィルム繰出ロール
11 押圧ローラ
12 フィルム被覆装置
16 フィルム切断装置
20 カッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチフィルムを巻き収納したマルチフィルム繰出ロール(8)を備え、耕耘後の耕地面に前記マルチフィルム(7)を繰り出しながら被覆するマルチフィルム敷設装置において、前記敷設装置には、マルチフィルム(7)を左右幅方向に一部を残して切断するフィルム切断手段(16)と、前記フィルム切断手段(16)で切断した切断部下手側のフィルム(7)を押さえる押圧ローラ(11)を設けてあることを特徴とするマルチフィルムの敷設装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−271309(P2006−271309A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98363(P2005−98363)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】