説明

マンホールの補修用カッター装置

【課題】 マンホールを補修する場合に、該マンホールの周辺地盤を切削・除去する為のカッター装置であって、マンホールの大きさが代わっても対応可能なカッター装置の提供。
【解決手段】 回転軸3を中心として回転する回転フレーム2の半径方向にはスライド部11を設けると共に該スライド部11に沿って移動するカッターホルダー10を取付ける。このカッターホルダー10にはカッター1を着脱可能に取着し、このカッター1は所定曲率にて湾曲したカッター本体と4該カッター本体4の下端にはカッター刃5を設け、又カッター本体4の上端には上記カッターホルダー10に固定するカッター取付け部6を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマンホールを補修する場合、該マンホールの周囲のコンクリート層(周辺地盤)を切削する為のカッター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
構築して長期間経過したマンホールは、大型車輌の通過、寒冷地における凍結現象、又下水道のマンホールであるならば下水に含まれる腐食成分によりコンクリートが傷みが発生し、従ってある時期になれば補修又は交換しなくてはならなくなる。ところで、マンホールを補修する場合、従来はマンホールの周囲を掘削し、土留めを施してマンホールの交換部分を露出させてから、傷んだ部分を撤去し、新たな部分と交換していた。
【0003】
しかし、このような施工法では、掘削とそれに続く土留めを必要とする為に、マンホールの交換工事が完了するまでに2日〜4日を要し、その間は道路の通行規制が必要となる。そこで、近年では上記マンホールの周囲を掘削することなく、該マンホールの周辺地盤とマンホールの縁を切削することで、既存のマンホール部材を新たなマンホール部材に簡単にしかも短時間で交換することが出来る施工方法が採用されている。
【0004】
図4はマンホール補修工事の主な施工手順を示す概略図である。
(a)はマンホール(イ)を中心として、周辺地盤(ロ)を切削する場合である。この際、円筒状のカッター(ハ)が使用され、該カッター(ハ)は車輌のアームに吊設されると共に回転することが出来る。そしてカッター(ハ)は回転しながら降下することで、周辺地盤(ロ)が切削される。
【0005】
(b)は切削した周辺地盤(ロ)を除去する作業工程であり、マンホール(イ)の蓋(ニ)を取除いて外周枠(ホ)にエクスパンダー(ヘ)を直径方向に張設して固定し、該エクスパンダー(ヘ)をワイヤー(ト)にて吊上げることが出来る。この際、リング状に切削された周辺地盤(ロ)は外周枠(ホ)と共に持ち上がって除去される。そして、周辺地盤(ロ)が除去された後は奇麗に清掃される。
【0006】
(c)は新たなエンボスリング(ホ)をマンホール(イ)の上端にセットした状態であり、周辺地盤(ロ)が除去された穴(チ)との間には空間(リ)が形成される。そして、該空間(リ)には(d)に示すようにモルタル(ヌ)が流し込まれてエンボスリング(ホ)は固定される。モルタル(ヌ)は路面(ル)と同一面になるように調整して空間(リ)に流し込まれる。
【0007】
ところで、マンホール(イ)の周辺地盤(ロ)を除去するために切削するカッター(ハ)は筒状であり、マンホール(イ)の大きさ如何に関わらずその直径は一定である。従って、マンホール(イ)の外径が小さくても必要以上に大きな周辺地盤(ロ)を切削除去することに成り、逆にマンホール(イ)の外径が大きい場合には、外周一杯の状態で切削除去することに成り、穴(チ)とエンボスリング(ホ)をセットした後の空間(リ)が小さくて、モルタル(ヌ)にてエンボスリング(ホ)を十分な強度で固定することが出来なくなる。従って、実際には、外径の異なる複数のカッターが必要となる。
【特許文献1】特開平10−183655号に係る「マンホールの交換方法及びその方法に使用する二重ケーシング」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、マンホールの補修に際して使用するカッター装置には上記のごとき問題がある。本発明が解決しょうとする課題はこの問題点であり、除去される周辺地盤の外径をマンホールの大きさに応じて調整して切削することが可能なカッター装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るカッター装置は、従来のような下端に切削刃を備えた筒状カッターではなく、円弧状に湾曲した複数のカッターを備え、各カッターは回転フレームの回転軸から一定距離(半径)上に配置されている。そして、その位置を変えることが出来るように回転フレームの半径方向に設けたスライド部にスライド可能に取付けられているカッターホルダーに取着されている。すなわち、カッターホルダーにカッターの上端の取付け部が固定されて下方へ延びている。
【0010】
複数の各スライド部に取付けられたカッターホルダーは半径方向に移動し、全てのカッターは同一半径上に配置される。ここで、カッターホルダーはスライド部に沿って移動する具体的な機構は特に限定しないが、一般的にはネジ機構が用いられる。すなわち、ネジが回転することでカッターホルダーがガイド部に沿って移動するように構成している。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るカッター装置はカッターがカッターホルダーに取付けられて、該カッターホルダーは半径方向に延びるスライド部に沿って移動することが出来る。従って、マンホールの直径に応じてカッターの位置を調整することが出来、単一のカッター装置であらゆる大きさのマンホールの周辺地盤を切削することが可能となる。
【実施例】
【0012】
図1、図2は本発明に係るカッター装置を示す実施例であり、(a)は正面図、(b)は平面図を表している。同図の1はカッター、2は回転フレーム、3は回転軸を夫々示し、カッター1は所定の曲率で湾曲した細長い板状態であり、下端にはカッター刃が固定して構成されている。
【0013】
図3は1枚のカッターを単独で表しており、カッター1はカッター本体4、カッター刃、及び取付け部6から成り、カッター本体4は所定の曲率で湾曲した細長い金属板で、その下端にはダイヤモンドチップで構成したカッター刃5が固定されている。カッター刃5はカッター本体4の下端に間に空間7を設けて取着され、しかも厚さはカッター本体4より大きく成っている。しかし、カッター本体4になじんで湾曲した形状と成っているが、カッター刃5の外周曲率半径rは内周曲率半径Rより小さく成っている。
【0014】
又、カッター本体4の上端には取付け部6が垂直をなして設けられ、コーナーには補強用のリブ8を形成している。上記取付け部6は長方形のブロック体でスライド部にネジ止めする為にネジが挿通する穴9,9・・が貫通している。取付け部6は回転フレーム側に設けているカッターホルダー10に固定され、そしてカッター本体4は回転フレーム2に対して垂直下方へ延びることに成る。
【0015】
ところで、円盤状の回転フレーム2の中心には回転軸3が設けられ、回転フレーム2は回転軸3を中心として回転することが出来る。そして回転フレーム2の下側面にはスライド部11,11・・が90°間隔で半径方向へ延び、このスライド部11,11・・にはカッターホルダー10,10・・がスライド可能な状態で取付けられている。該カッターホルダー10,10・・がスライド部11,11・・に沿ってスライドするために、該スライド部11,11・・の中心部にはネジ12,12・・が軸支されている。
【0016】
上記ネジ12,12・・はその両端部が軸受けに軸支され、回転フレーム2の中心側には歯車13,13・・が設けられ、該歯車13,13・・は回転軸3と同心を成して取着されている傘歯車14と噛合っている。該傘歯車14は回転フレーム2に取付けられているが単独で回転することが出来、該傘歯車14が回転するならば、噛合っている歯車13,13・・が回転してネジ12,12・・を回すことに成る。
【0017】
上記カッターホルダー10,10・・の中心部にはネジ穴が設けられ、スライド部11,11・・に取付けられているカッターホルダー10,10・・のネジ穴には上記ネジ12,12・・が螺合している。従って、ネジ12,12・・が回るならば、カッターホルダー10,10・・はスライド部11,11・・に沿ってスライドすることが出来る。すなわち、傘歯車14が回転することでカッターホルダー10,10・・がスライドし、ひいてはカッターホルダー10,10・・に固定されているカッター1,1・・がスライドしてその位置を変える。
【0018】
図1において、カッター1,1・・の最大直径の場合と最小直径の場合を表しているが、両直径の範囲内でカッター1,1・・はスライドすることが出来、その直径を適度に調整して位置決めされる。ところで、カッター1,1・・の位置調整は、ハンドル15にて行うことが出来る。すなわち、ハンドル15の先端には同じく歯車13が取着され、該ハンドルを回転することで傘歯車14が回転し、該傘歯車14に噛合っている他の歯車13,13・・が回転する。従って、歯車13,13・・と一体に成っているネジ12,12・・が回り、カッターホルダー10,10・・はスライド部11,11・・に沿って移動することが出来る。
【0019】
ここで、ハンドル15にはクランプレバー16が設けられ、該クランプレバー16をロックすることでハンドル15の回転は阻止される。各カッター1,1・・が所定の半径位置に定まったところで回転フレーム2は回転軸3を中心として回転する。そして、回転しながら降下しマンホールの周辺地盤を切削することが出来る。勿論、切削が完了したところで回転フレーム2は上昇する。
【0020】
同図に示す実施例では、4枚のカッター1,1・・を取付けているが、本発明ではカッター1,1・・の枚数は限定しない。そして、各カッター1,1・・が損傷した場合には、カッターホルダー10,10・・から取外して交換することが出来る。従来の筒状カッターとは異なり、損傷に際しては1枚ないし2枚のカッターを交換すればよく、交換費用は安くなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るカッター装置を示す正面図。
【図2】本発明に係るカッター装置を示す平面図。
【図3】カッターの具体例。
【図4】マンホールの補修作業工程。
【符号の説明】
【0022】
1 カッター
2 回転フレーム
3 回転軸
4 カッター本体
5 カッター刃
6 取付け部
7 空間
8 リブ
9 穴
10 カッターホルダー
11 スライド部
12 ネジ
13 歯車
14 傘歯車
15 ハンドル
16 クランプレバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホールを補修する場合に、該マンホールの周辺地盤を切削・除去する為のカッター装置において、回転軸を中心として回転する回転フレームの半径方向にはスライド部を設けると共に該スライド部に沿って移動するカッターホルダーを取付け、このカッターホルダーにはカッターを着脱可能に取着し、このカッターは所定曲率にて湾曲したカッター本体と該カッター本体の下端にはカッター刃を設け、又カッター本体の上端には上記カッターホルダーに固定するカッター取付け部を設けたことを特徴とするマンホールの補修用カッター装置。
【請求項2】
マンホールを補修する場合に、該マンホールの周辺地盤を切削・除去する為のカッター装置において、回転軸を中心として回転する回転フレームの半径方向にはスライド部を設けると共にスライド部に沿って延びるネジを軸支し、ネジの先端には歯車を設けて回転軸と同心を成して回転可能に取付けた傘歯車に噛合わせ、そして上記スライド部には上記ネジの回転に伴って移動するカッターホルダーを取付け、このカッターホルダーにはカッターを着脱可能に取着し、このカッターは所定曲率にて湾曲したカッター本体と該カッター本体の下端にはカッター刃を設け、又カッター本体の上端には上記カッターホルダーに固定するカッター取付け部を設けたことを特徴とするマンホールの補修用カッター装置。
【請求項3】
上記傘歯車に噛合う歯車を取着したハンドルを取付け、該ハンドル操作にて上記傘歯車を回転させるようにした請求項2記載のマンホールの補修用カッター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−265938(P2006−265938A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85627(P2005−85627)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(595085099)エイトシステム株式会社 (2)
【Fターム(参考)】